36 名前:第13話『束の間の安寧』 :2007/11/20(火) 00:59:38.60 ID:1lOh9YyH0

>>19で@を選んだ場合】

从'ー'从「……」

(;^ω^)「……」


(;^ω^)「ワタナベ先生」


 ふと目が合ってしまった。
このまま知らん振りをするのもなんだか悪いような気がして、ブーンは公園の中に入る。
あいかわらずブランコをこいでいたアヤカスフィールもブーンが近づくのをみて足を地面につき、ブランコの動きをとめた。
39 名前:第13話『束の間の安寧』 :2007/11/20(火) 01:03:49.96 ID:1lOh9YyH0

( ^ω^)「ワタナベ先生、こんばんわですお。風邪は大丈夫ですかお?」

从'ー'从「……こんばんは、ブーン君。今は元気だよ。こんな時間に何してるの? サーヴァントに襲われたら大変だよぉ」

(;^ω^)「…………それはワタナベ先生も同じですお」

从'ー'从「わたしはダイジョーブだよ。体調もいいしね。ちょっと静かなところで散歩したかったんだ。
   さっきブランコ漕いでたららロリコンなおにーさんが声かけてきてね。気持ちわるかったから思わず撃っちゃった」


 見ると、草むらの影にボロゾウキンのようになった男が延びていた。痙攣しているので生きてはいるようだが、「無事」とは言い難い。


(;^ω^)「(正当防衛、でいいのかお?)」

从'ー'从「……ショボンさんとか、他の魔術士には言わないでね。フツーの人に魔術を使ったことがバレたらおこられちゃう」

( ^ω^)「……大丈夫だお。ブーンは口が堅いから絶対しゃべったりしないお」

从'ー'从「えへへっ、ありがとっ」


 無邪気に笑い、そして心配そうな顔をしてブーンの顔をうかがうアヤカスフィール。
おそるおそる口を開いた。


40 名前:第13話『束の間の安寧』 :2007/11/20(火) 01:07:12.72 ID:1lOh9YyH0

从//ー//从「そ、それでね……あの日のこと、誰にも言ってない?」

( ^ω^)「あの日のこと?」

从//ー//从「うん。ブーン君のサーヴァント、ライダーの使い魔にのって校舎で落ちたときに……ね……その……」

( ^ω^)「(…………あぁ、アレかお)」


 ここで思い当たる。彼女見た目こそ小学生だが、中身は花も恥らう18歳。バーロー状態なのだ。
あの時はブーンも気に留めなかったが、その事実を元に考えると、彼女が気にしないほうが不自然ともいえた。


( ^ω^)「大丈夫だお。ブーンは絶対に言わないし、ツンもクーも言いふらしたりなんかしないお」

从'ー'从「そっかぁ……うん。ありがとっ!」


42 名前:第13話『束の間の安寧』 :2007/11/20(火) 01:09:55.38 ID:1lOh9YyH0

从'ー'从「それじゃあまた明日学校でね。寄り道しないで真っ直ぐ帰るんだよぉ」

( ^ω^)「ワタナベ先生も気をつけてだお」

从'ー'从「うん。それとね、ブーン君……」



从'ー'从「学校の外では“アヤカ”でいいよ」


 そう言い越し、アヤカスフィールは元気よく走り出し、転んだりしたものの手をふりながら遠ざかっていった。


( ^ω^)「さて……ブーンも帰るお」


…………
……



43 名前:第13話『束の間の安寧』 :2007/11/20(火) 01:13:03.87 ID:1lOh9YyH0

コンコン


川 ゚ -゚)「ブーン、ちょっといいか?」


 夕食後、部屋に戻っていたブーンはクーが呼びかけに応じ、手にしたビニールテープの束を机に置いては立ちあがる。


川 ゚ -゚)「食後に休んでいるのに呼び出して申し訳ない」

( ^ω^)「気にしなくていいお。ちょっとポンポンを作ってただけだお」

川 ゚ -゚)「ポンポン?」

( ^ω^)「ダンスの小道具だお、後で見せるお。で、どうしたんだお」

川 ゚ -゚)「ドクオが裁縫具を探しているんだが、どこだかわかるか?」

( ^ω^)「おっおっお、それなら知ってるお。ちょっととってくるお」




(;^ω^)「……ないお」



44 名前:第13話『束の間の安寧』 :2007/11/20(火) 01:13:41.31 ID:1lOh9YyH0

 仏間にある年代ものの箪笥。
元はクッキー缶だった裁縫箱はずっとその最下段にしまわれていたのだが、そこには缶ひとつ分のスペースはあるものの
肝心の本体はない。右側だけではなく左も。上段も引き上げてみるが缶の姿は見つからない。

 台所を通って居間に戻る。日々のドクオの掃除のために片付いた台所に錆のついた缶の姿はない。
居間に入ると、洗濯物の山の中に『凶戦士<バーサーカー>』のサーヴァント、ドクオが座っていた。


('A`)「悪いね、わざわざ呼び出しちゃって。ツンの裾のボタンが外れかけてたから直しておこうと思ったんだけど……」

( ^ω^)「ブーンを呼ぶのはいいけど、針とかが入ったクッキー缶がどこにもないんだお」

('A`)「仏間の箪笥の下だよね……この前使ったときはあったのになぁ」

川 ゚ -゚)「ツンが使ってるという可能性はないのか?」

('A`)「かもしれないけど……さっき、『絶対入ってくるな』って言い残して地下に行っちゃった」


 クー達を向いて話しながらもドクオの手は緩まない。この家に来て二週間たらずだというのに
彼の家事動作は、さながらずっと家を切り盛りしてきたかのように無駄がない。


46 名前:第13話『束の間の安寧』 :2007/11/20(火) 01:15:49.88 ID:1lOh9YyH0

('A`)「ところで、魔力供給の練習はうまくいってる?」

( ^ω^)「順調だお。ドクオに言われたとおり、長く送り続けられるように練習してるお」

川 ゚ -゚)「先日のアーチャーとの戦いでビークルを呼び出したときもほとんど問題がなかった。
   これなら前線に出て戦える。戦いの嫌いなドクオにこれまで任せきりで悪かった」

('∀`)「へへ、クーとブーンを守るためなら俺がんばっちゃうよ」

( ^ω^)「そういえば……」



( ^ω^)「ドクオは、何で戦いが嫌いなのに聖杯戦争に参加したんだお?」

('A`)「……え?」



47 名前:第13話『束の間の安寧』 :2007/11/20(火) 01:16:51.25 ID:1lOh9YyH0

( ^ω^)「クーから聞いたけど、サーヴァントになった英雄はみんな何かしらかなえたい目的があって
   わざわざ人間に“使われる”らしいお。ドクオは戦いが嫌いなのに、何でわざわざ聖杯戦争に参加したんだお?」

川 ゚ -゚)「生前のルーツにまで遡る話だから無理強いはしないが、私も興味があるな」

('∀`)「……そんなの決まってる。クーと出会うためさ」

川 ゚ -゚)「(……生前、私は『ドクオ・ナティウ』なんて人間とは会ってないんだが……)」

( ^ω^)「(というか、この設定ってイマイチ生かしきれてないお…)」


('A`)「ま、ボクのことは置いといて……クーはどんな目的があるの?」

川 ゚ -゚)「私か。私は…………」


ピコーンピコーンピコーン

('A`)「(……!!)

…………
……




48 名前:第13話『束の間の安寧』 :2007/11/20(火) 01:18:09.75 ID:1lOh9YyH0
 内藤家から二つ隣──とはいえ、十数メートル近く離れた民家の屋上。
60センチほどの小型の弓を傍らに置き、アサシンは気配を隠して屋敷を見つめていた。


(,,゚Д゚)「(頃合か)」


 あたりに他のサーヴァントの気配はない。屋敷に張られた結界は相変わらずしっかりと屋敷を覆っている。
アサシンはその懐から巻物を取り出すと、その中に挟んであった半紙を蛇腹に折りたたんみ、短い矢に結わえた。
風を読み、矢を番えて空に向ける。大きく放物線を描くように、薄っすらと魔力を帯びた矢は飛んでいった。


(,,゚Д゚)「(しかし、“でんわ“というモノがありながらわざわざ矢文を射つ必要があるのかゴルァ…)」


 再び身をかがめて屋敷の様子を伺う。障子が開かれ、恐る恐るドクオが出てくるのを確認して、
アサシンは音もなくその場から姿を消した。

…………
……


51 名前:第13話『束の間の安寧』 :2007/11/20(火) 01:22:21.19 ID:1lOh9YyH0

('A`)「……これは」


 屋敷に張られた結界。センサーの作動を感じてドクオは身構え、結界内の警戒を高めながら恐る恐る
障子戸を開ける。縁側に刺さった一本の細い矢。二撃目はこない。屋敷の外の気配も探るが、異変は感じられない。
 矢自体におかしな魔力はみられず、ドクオはそれを抜くと部屋の中に戻った。


('A`)「こんなん出ました」


 室内にはブーンを後ろに回し、武装したクー。そして地下室から飛び出してきたツンがいて、それぞれ緊張を緩める。


( ^ω^)「これ一本だけなのお?」

('A`)「うん。周辺に気配は感じられないし、仕事を終えてもう退散したみたいだね」

川 ゚ -゚)「牽制か何かか?」

('A`)「違うとおもう。ほら、矢の先っぽに紙がくくりつけてあるでしょ? 矢文ってヤツだね。変な魔力も感じられない」

ξ゚听)ξ「開けてみなさいよ」

53 名前:第13話『束の間の安寧』 :2007/11/20(火) 01:25:25.21 ID:1lOh9YyH0

 ドクオが紙をはずして広げ、3人が覗き込む。


川 ;゚ -゚)「(……“カンジ”は読めん)」

(;^ω^)「(ミミズが這っているお)」

ξ;゚听)ξ「(達筆だわ……)」

('A`)「……どこまでも武人・武蔵坊弁慶だなぁ。暗殺者のサーヴァントなんて似合わなさすぎるよ」

ξ゚听)ξ「ドクオ、あんた読めるの?」

('A`)「うん。字体が昔のものと今のものとが混ざってわかりづらいけどね。
   簡単にまとめると、『明日の夜、ラウン寺とこの家。それぞれ1対1で勝負だ』、ってさ」

川 ゚ -゚)「……1対1?」

('A`)「うん。丁寧にも『魔術士<キャスター>』と同盟を結んだことや、アサシンがこっちにくることまで書かれてる」

ξ゚听)ξ「……馬鹿げた申し出ね」

川 ゚ -゚)「断るのか、ツン」

ξ゚听)ξ「まさか」

56 名前:第13話『束の間の安寧』 :2007/11/20(火) 01:28:04.58 ID:1lOh9YyH0
ξ゚听)ξ「あいつらがここまで情報公開したのが馬鹿げている、って言ってるの。
   タイマンだけならともかく、組んだ仲間や相手の陣地でのタイマンを進んで申し出るってのが
   正気の沙汰じゃないわ。これで逃げ出すのなんてありえない」

('A`)「じゃあ……」

ξ゚听)ξ「もちろん、受けるわ。相手が相手だから、まさか約束を反故にするって事もないでしょう。
   ブーン、クー。かまわないわね?」


 二人の視線が重なり、ともに首を縦に振る。


( ^ω^)「オッケーだお」

川 ゚ -゚)「もちろんだ」

ξ゚听)ξ「決まりね」

('A`)「(ボクの意見、なんて聞いてもらえないんだろうな……)」


 ドクオのおもったとおり、彼の意見は求められることなく変則のタイマン勝負は決定した。

【第13話・終了】
                 →第14話へ続く

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