3 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 00:53:51.59 ID:L015FEs+0
 ここはVIP中2年B組の教室。5時間目開始から結構立つのに、担任(アヤカ)もクラスメイト(ブーン)も現れない


(=゚ω゚)ノ「15分もたったのにワタナベ先生が来ないよぅ」

( ^^ω)「授業なくて最高マホ!」

(=゚ω゚)ノ「ブーンの姿も見えないよぅ……どこにいったんだよぅ」

(=ω=.)「自習イェイイェーイ!」

(=゚ω゚)ノ「さっきから聞こえてくる銃声みたいなの、何なんだろう……しっちゃかめっちゃかだよぅ」

女生徒6号「自習オブジイヤーです〜」

(>ω<)「ノープロブレムなのです。イヨゥも大富豪トゥギャザーするです」

(=゚ω゚)ノ「……ま、いっか。参加するよぅ! スリーポイント大革命!!」


 ……別に普段とかわらなかった。



4 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 00:57:50.33 ID:L015FEs+0
 そんな騒々しい普段どおりの2年B組の頭上7M。校舎の屋上ではクーが一人、敵の狙撃と相対していた。


川 ゚ -゚)「ブーン、アヤカスフィール。もっと頭を下げるんだ」


 言いながらクーは飛んできた弾をはじく。狙いがあからさまに彼女からブーン達へ移って約5分。
クー自身を、後ろの3人を。ときには連射でして飛んでくる敵の銃弾。数発クーにかすったものもあったが、距離の問題もあってか
彼女にほとんど被害はない。せいぜい、左の篭手が消滅させられたことくらいだ。

 だが、それはあくまでサーヴァントであるクーだからの話である。
人間である彼らが一発食らってしまえば、まず命の保障はない。


川 ゚ -゚)「(マスターを直接狙ってくるとは……)」

从'ー'从「ツンちゃん、敵の場所まだー?」

ξ゚听)ξ「1分おきに聞かないでよ。ドクオ、どうなの?」


 令呪を介して、敵を探しに出ているドクオに問いかける。


('A`)『だいたいこの辺りだと思うんだけど……まだわかんなハフゥ!!』

ξ゚听)ξ「……ドクオ?」

8 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 01:04:11.97 ID:L015FEs+0
('A`)『……ごめん。今アヤカスフィールのサーヴァント、阿部さんと合流したよ
   だいたい場所は絞れてるから、今から二手に分かれて探してみる』

ξ゚听)ξ「……わかった。早いとこ頼むわよ」
('A`)『うん。待ってて』




('A`)「……それじゃあ、今から二手に分かれて探しましょう」


 ツンとの念波を切り、ドクオは顔をあげた。
手にはライトセイバー。光る切っ先は阿部に向かって伸びている。


阿部さん「別に分かれなくても二人で行動すればいいんじゃないのか?」

('A`)「……無言で忍び寄って相手の尻をなでるような相手と一緒に行動するのはちょっと……」

阿部さん「やれやれ、信用されていないんだな」

('A`)「ボクが見つけたらツンとアヤカスフィールを経由して伝えますから、阿部さんが見つけたらそのまま叩いてください」


 そう言うとドクオは何度も振り返りながら、山のすそにある廃ビル郡に入っていった。


阿部さん「(……ああいったタイプも悪くはないな)」

10 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 01:08:39.65 ID:L015FEs+0
 こっそり後を尾けて適当な場所で押し倒そうかとも一瞬考えたが、自らのマスター・アヤカスフィールの事を考えて断念する。
もし今バーサーカー(=ドクオ)に手を出したら、現在クーに守られている彼女も無事では済まないだろう。


阿部「(まぁ、いつかはぶつかる相手だ。とりあえずは当面の敵だな)」


 相手が男であることを願いながら、阿部も行動を開始した。





( <●><●>)「(……来たか)」


 十数年前の都市開発。完成間際で工事の不備が発覚し、結局そのままうちすてられた数棟の廃団地。
高さは4階建てで11メートル。狙撃対象である学校の屋上よりも低いが、地形の関係から決して狙撃では不可能ではない

 そのうちのひとつ、最上階の部屋にアーチャー達はいた。
今は肩からライフルを下ろし、その銃口を取り外して丹念に磨いている。


( <●><●>)「(面倒だな……)」

13 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 01:13:47.59 ID:L015FEs+0
 『至宝の照準機<ミッドナイト・ゴーグル>』を通して遥か遠くのライダー(クー)を見る。
傷つき、疲弊しているがその眼と身体は死んでいない。マスターを狙い始めてか、逆に集中力は上がっている。
時間がたてばわからないが、普通の狙撃ではしばらくしとめるのは不可能そうだった。


( <●><●>)「……マスター。現在、この建物内に敵サーヴァントが侵入した。さらにその仲間が近くに一人。
   おそらく、狙撃をしたらすぐに感づかれるだろう……」

( ФωФ)「……どうしろというのだ」

( <●><●>)「選択肢は3つ。ひとつは逃亡。ひとつは、1対2での接近戦。もうひとつは敵サーヴァント接近前に
   相手のマスターを殺傷すること。今のままでは、どれも分が悪い」

( ФωФ)「こ、この役立たずめ。絶対有利な狙撃で相手を倒せずして、何がサーヴァント『アーチャー』だ」

( <●><●>)「声が大きい。気取られるぞ」

( ФωФ)「くっ……」


 口汚い罵倒を受け流す。召還されて5日、いい加減このマスターにも慣れてきた。


( <●><●>)「周囲への被害が大きくていいのならまだ方法はあるが」

 話しながらも、アーチャーの視線は自らの愛銃に向けられている。
空のトリガーの引き、具合を確かめる。砲身を指でなぞり、異常がないことを確認。銃口をはめこみ、留具を締めた。


( <●><●>)「それでいいのなら、『ライダー』もろとも3人の魔術士を葬る事は可能だ」

 
17 名前:第11話『うたわれるもの』・上の訂正 :2007/11/01(木) 01:23:05.49 ID:L015FEs+0
( ФωФ)「……なぜ、それを最初からやらなかった」

( <●><●>)「言っただろう。普通の狙撃なら死体3つで済むが、宝具をつかうとそれだけではすまない」

( ФωФ)「むぅ…………」


 苦い顔で思い悩むロマネスクに、アーチャーが淡々と続ける。


( <●><●>)「迎え撃つにしても逃げるにしても時間の余裕はない。宝具狙撃をするのならなおさらだ」

( ФωФ)「……構わん」


 静かにつぶやくロマネスク。


( ФωФ)「スナオゥも、ワタナベルンも。我輩の前に立ちふさがる忌々しい芽を根こそぎ消してしまえ」

19 名前:第11話『うたわれるもの』・上の訂正 :2007/11/01(木) 01:27:09.62 ID:L015FEs+0
( <●><●>)「委細承知」


 枠も何もない作りぱなしの窓。伸ばした左腕を筒に這わせて砲身を固定。
『至宝の照準機<ミッドナイト・ゴーグル>』をライフルに合わせ、細めた目でターゲットの姿を確認する。
頬骨でからつたわる、ごつごつとした冷たい鉄の感触が愛おしい。


( <●><●>)「(対象までの距離、6342M。風速、北北東2.5M毎時。
   対象の耐久性、3人分の枷。威力最大、上部射程開放。直撃よりも、やや下方修正」


 頭の中で軌道をイメージ。
握りこぶしを胸に当て、ポケットから通常のもの弾丸と比べて軽く、黒と赤の弾丸を取り出し、静かにライフルへと装填する。


( <●><●>)「ハイル・ジーク────」


 息を止める。静かに殺した殺気が膨れ上がり、6000M離れたライダー達に突き刺さる。






阿部さん「(おっ、これは……)」

(;'A`)「(……マズい!! ツン、クー!!)」
23 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 01:31:26.69 ID:L015FEs+0

(;'A`)『敵がいたよ。宝具でそっちを狙ってる!』

ξ゚听)ξ「クー。強いのが一発来るって」

川 ゚ -゚)「…………半端ない殺気だな。これでは受けれない」


 痛んだダガーを鞘に仕舞う。


川 ゚ -゚)「(この一撃を凌げば、あとは二人が何とかしてくれるはず……よし)」



川 ゚ -゚)「ブーン、ツン、アヤカスフィール、こっちだ。跳ぶぞ!!」



24 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 01:34:19.65 ID:L015FEs+0
( ^ω^)「わかったお」

从'ー'从「わぁ、クーの宝具かぁ。楽しみぃ〜」

ξ゚听)ξ「あんたは目ぇ閉じてなさい」


 物陰からクーの元に寄っていく。ツンがアヤカスフィールの目を覆い、ブーンの魔力をうけてクーが別世界との扉を開く。


川 ゚ -゚)「ビーグル・ワン!」





▼・ェ・▼<アオーン(←空気呼んで小さめ)


 彼女の愛イヌ、ビーグル・ワンが召還された。


川 ゚ -゚)「(さて、来るなら来い)」

…………
……

27 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 01:37:48.76 ID:L015FEs+0


 はじまりは、ただの銃弾だった。



 潤沢な知識と人並みならない人望を併せ持った露西亜の若き中佐が、自領地内での勲章授与式で何者かに狙撃された。


 これを皮切りに、露西亜の将校が狙撃によって負傷する事件が続いた。それも、自軍のど真ん中である。



 どうやら、敵国にとんでもない狙撃兵がいるらしい。誰かがつぶやいた言葉が広まるのは早かった。




28 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 01:40:17.65 ID:L015FEs+0
 1人の誤解が2人に伝わり、2人の話が4人に流れて、4人の話題が16人に飛び火し、16人の噂が196人へと知れ渡る。



 いつしか、存在しないはずの『彼』の伝説は露西亜や独逸、世界中の軍隊へ広まった。



( <●><●>)「……ドライ ツヴァイ アイン……」


( <●><●>)「     『うたわれるもの<ヴェア・ビバーク>』     」


 ドイツの戦史上にのみ残る、伝説の狙撃兵。
 彼の人差し指が宝具の引き金を引いた。







川 ゚ -゚)「……来るッ!!」

@ビークルに乗って上空へ飛び、回避
Aビークルに乗って宝具を発動させ、真っ向から突撃する
>>32
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/01(木) 01:44:14.05 ID:V8o6UKIFO
1
34 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 01:47:46.05 ID:L015FEs+0

川 ゚ -゚)「掴まれっ!」


 飛び乗ったクーがビークルをしゃがまさせる。ブーンがクーの腰につかまり、ツンとアヤカスフィールもそれに習う。


川 ゚ -゚)「よし。頼むぞ、ビーグル!」

▼・ェ・▼<オンッ!


 クーの声に応えて、低く啼いてビークルが真上に大きくジャンプする。
直後、今まで彼らがいた屋上を光の弾幕が通過していった。


( ^ω^)「……ワーオ」

从'ー'从「すごぉい!」

川 ゚ -゚)「なかなかの威力だ……3人いては護りきれない。避けて正解だったな」


 屋上から上空およそ10M。ゆっくり上昇していったビークルの勢いがゆっくりと消えていく。

36 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 01:50:21.38 ID:L015FEs+0

ξ;゚听)ξ「……ねぇ、これからもしかして」


川 ゚ -゚)「もちろん落ちるぞ」

从'ー'从「……」

( ^ω^)「……」


 勢いが完全に止まった。そして




川 ゚ -゚)「しっかりつかまってくれ」

 そのまま4人を乗せたビークルの身体は自由落下する




( ;ω;) ξ;凵G)ξ 从;ー;从「「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」

39 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 01:55:12.86 ID:L015FEs+0

 弾幕が通過した屋上。給水塔は跡形もなく吹き飛び、階段への道も瓦礫で埋まっている。
金網は破け、原型をとどめているタイルはひとつたりとも存在してない。
 ずぅん、と着地の衝撃が校舎に響く。瓦礫が屋上の外にまではじけ飛ぶ


川 ゚ -゚)「……追撃は、こないみたいだな」


 着地するやいなやビークルから飛び降り、3人やビークルを守るように身構えていたクーがその構えを解く。


川 ゚ -゚)「ツン、ドクオに連絡を頼む。」

ξ゚听)ξ「…………」

( ゜ω゜)「…………」

从゜―゜从「…………」


 3人の魂が半分抜けていた。


40 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 02:00:36.05 ID:L015FEs+0

ξ゚听)ξ「……死ぬかとおもったわ」

( ^ω^)「未整備状態のジェットコースターより怖かったお」

川 ゚ -゚)「すまなかったな。先に説明しておくべきだった」

ξ゚听)ξ「気にしないで。そんな余裕なかったし……ドクオ、聞こえる? アーチャーと相手マスターは?」

('A`)『今マスターを捕獲。阿部さんが逃げたアーチャーを追ってる。これで戦闘は終了だね』

ξ゚听)ξ「わかった。お疲れさん」


 念波を切り、足首を軽く回してビークルから降りるも、そのままへたりこんで瓦礫の上にしゃがみこんでしまう。


ξ゚听)ξ「……ダメ。力入らない」

( ^ω^)「同じくだお」

川 ゚ -゚)「つかまれ、ブーン」



 
42 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 02:03:10.99 ID:L015FEs+0

 クーが手を伸ばし、腰の抜けたというブーンをビークルから降ろす。
続けてアヤカスフィールにも手を差し出すが、彼女は動かない。


川 ゚ -゚)「どうした、アヤカスフィール・フォン・ワタナベルン。腰がたたなくとも別に恥じる事はない。
   その小さな体では尚更だろう」

从'―'从「……来ないで」



 風に乗って、ほのかなアンモニア臭がクーの鼻腔に届いた。


川 ゚ -゚)「…………」

▼#・ェ・▼
44 名前:第11話『うたわれるもの』 :2007/11/01(木) 02:08:32.92 ID:L015FEs+0
その後、屋上からこっそり逃げだし、ブーン達はそしらぬ顔で教室へと戻った。
 着替えを終えたアヤカスフィールは阿部やメイドとともに終始無言で帰宅した。


( ^ω^)「ただいまー。トイレで紙がなくて遅れたお」

(=゚ω゚)ノ「おかえりだよぅ。屋上で何かあったみたいで、今から帰宅らしいよぅ」

( ^^ω)「ラッキーだホマ」

( ^ω^)「(……ワタナベ先生表情が凍ってたお……
   でも、別におもらしくらいであそこまで落ち込まなくてもいいのに……ブーンだっておもいっきり漏らしたお)」






ξ;゚听)ξ「(ストック切れてて夜型してきたけど、まさかこんな形で役に立つとは……)」


【第11話・終了】
                 →第12話へ続く

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