4 名前:第10話『遊撃』 :2007/10/23(火) 01:19:36.08 ID:mtIaK3WM0
从'ー'从「きたよっ」

阿部さん「むうんっ!」


 アヤカスフィールの声とほぼ同時に阿部がスパナを構え、僅かに動かす。鈍い音がして地面のタイルが割れ、


ターン


 また遅れて、銃声がした。


从'ー'从「ナイスだよ、阿部さん」

阿部さん「なぁに。早く結界を張ってくれ」

从'ー'从「うん。オッケー」



5 名前:第10話『遊撃』 :2007/10/23(火) 01:23:29.57 ID:mtIaK3WM0
 眼を瞑り、銃弾が飛来する方向を向く阿部。


阿部「(あぁ……次は少年か)」




 半径400Mと200M。アヤカスフィールは自分を中心に二つの魔力結界を張っていた。結界、といっても本当に薄いもので、
強度は濡れたトイレットペーパーにも劣る。狙撃に対しては何の防御効果も果たすことはない。あっさりと破れ飛ぶ。

 だが。

 これがあれば、どの角度で狙撃がくるのか、どのタイミングで自分に到達するのか。それを知ることができる。
十数キロ単位で離れた場所からの超遠距離狙撃攻撃。それをゼロコンマ1秒のうちに判断し、対応する。人間技ではない。


阿部「(狙いは変わって右。入射角はさっきより低め……内藤少年への兆弾か)」


 意識と感覚を共有するアヤカスフィールからの情報を感じ取り、『セイバー』こと阿部隆和は判断する。
 両目を開き、右に動いてブーンの前に移動。スパナを下げ、その先で銃弾を弾き返した。
7 名前:第10話『遊撃』 :2007/10/23(火) 01:25:37.21 ID:mtIaK3WM0
( ^ω^)「……あ、ありがとうだお」

阿部さん「なぁに、この礼は成長払いと言う事にしておこう」

(;^ω^)「(なんか怖いお)」

从'ー'从「ブーン君、こっちこっち」

ξ゚听)ξ「早く」


 階段ある建物、影に移動した二人が手招きをしている。ブーンもそれに従った。再びスパナで銃弾を受ける阿部。

ターン

銃声は変わらず、遅れてやってきた。


阿部さん「早くしてくれよ。受け続けるだけ、というのは柄じゃないんでね」


8 名前:第10話『遊撃』 :2007/10/23(火) 01:28:51.94 ID:mtIaK3WM0

 キンコンカンコン


いつもの始業チャイムなのだが、戦場となった屋上においてはこと場違いに聞こえる。


(;^ω^)「5時間目、はじまっちゃったお」

ξ゚听)ξ「ンな事言ってる場合じゃないでしょ。下手したらここで死ぬハメになるわよ」

( ^ω^)「え?」

ξ゚听)ξ「あたし達はここから反撃することができない。アヤカのセイバーを狙撃手にむかわせても
   セイバー──阿部孝和が敵を見つけて倒す前に、あたし達が死んでるわ」

从'ー'从「いくら阿部さんだって守りながら攻撃はできないよ。ここから無理矢理脱出しようとしたら、
   間違いなく生徒や一般人に見つかっちゃう……ワオ、ピンチだねぇ」

ξ゚听)ξ「……そうならないため、アンタはあたし達を巻き込んだんでしょ」

从'ー'从「まぁね」

10 名前:第10話『遊撃』 :2007/10/23(火) 01:31:19.65 ID:mtIaK3WM0

 頭部と肩部。連続射撃を阿部はおされ気味になりながらもさばく。遅れてくる2つの銃声。
町中に聞こえているこの音を、住民たちはどう思っているのだろうか。



ξ゚听)ξ「……ドクオ、聞こえる?」


 ツンは左腕の令呪に右手を這わせ、家にいるはずのドクオに呼びかける。





('A`)『聞こえるよー。どうしたの?』

ξ゚听)ξ「学校で敵サーヴァントに狙撃されてるわ。今、アヤカスフィール達と一緒にいるけど動けない。
   クーと一緒に来て。探して叩きに行くわよ」

('A`)「……オッケー」

13 名前:第10話『遊撃』 :2007/10/23(火) 01:34:24.05 ID:mtIaK3WM0

ξ゚听)ξ「……ドクオと念話が通じたわ。今、こっちにむかってるって」

从'ー'从「そっかぁ。じゃあ、片方がここで防御に専念。もう片方が狙撃手──『アーチャー』を探し出して撃破。それでいいよね」

( ^ω^)「そういえば、令呪を使えばすぐにクー達に来てもらえることができるんじゃなかったのかお?」

ξ゚听)ξ「そうよ。令呪に手をあてて、強く思えば空間を飛び越えてサーヴァントを呼び出すのは可能……って」

ξ;゚听)ξ「ちょっと待ちなさい」


 今まさに令呪に手をあてようとしているブーンに釘を制す。


ξ゚听)ξ「令呪は3回しか使えないのよ。あと5分もすれば二人ともやってくる。わざわざ使う必要はないわ。
   もっとピンチまで取っておかないとダメ」

(;^ω^)「ピンチ……って。今は結構ピンチなんじゃないのかお?」

从'ー'从「大丈夫だよ、ブーン君」

5 名前:第10話『遊撃』 :2007/10/23(火) 01:36:15.86 ID:mtIaK3WM0


 結界の張り直しに集中していたアヤカスフィールがこちらを見ずに答える。



从'ー'从「あたしとツンちゃんが組むんだよ。負けるわけがないって」

ξ゚听)ξ「二人同時に敵にまわした事、後悔させてあげるわ」



 8発目の弾丸が屋上の端岸に当たる。飛んでくるコンクリートの破片を阿部が叩き落した。

…………
……

17 名前:第10話『遊撃』 :2007/10/23(火) 01:39:33.55 ID:mtIaK3WM0



川 ゚ -゚)「無事か、ブーン!」


 狙撃と反対側校舎を上ってクーがあらわれた。飛来する弾丸を避け、給水塔からブーン達の傍に着地する。


( ^ω^)「クー!」

ξ゚听)ξ「早かったわね。ドクオは?」

川 ゚ -゚)「戦闘は無理だから、と斥候に出た」

阿部さん「そうか、バーサーカーはこないのか……」


 心なしか肩を落とす阿部。


19 名前:第10話『遊撃』 :2007/10/23(火) 01:42:11.98 ID:mtIaK3WM0

ξ゚听)ξ「かくかくしかじか」

川 ゚ -゚)「……なるほど。現状はわかった」

从'ー'从「じゃあ、これで作戦開始だね。いくよ〜」





@阿部さんが戦い、クーが護るようです
Aブーン達が戦い、阿部さんが護るようです
B斥候のドクオがアーチャーを倒してくれるのを期待する(選択不能)


ξ゚听)ξ「ってのが今考えられる策ね。ブーンはどれがいいと思う?」

( ^ω^)「えっと……
>>23に従うお」


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/23(火) 01:43:38.01 ID:k5iZyO4N0

24 名前:第10話『遊撃』 :2007/10/23(火) 01:45:09.17 ID:mtIaK3WM0
@

川 ゚ -゚)「アヤカスフィール。私はどちらかというと遊撃より防衛のほうが得意だ。
   わたしをここに残し、あなた方があの狙撃主……アーチャーを倒しに行ってくれないか」

从'ー'从「だって。どうする、阿部さん?」

阿部さん「それでかまわない。ライダー、お嬢を頼むぞ」

川 ゚ -゚)「ブーンが言うんだ。今日に限っては無傷でお返ししよう」

阿部さん「さて、それじゃあ行きますか」


 霊体に戻った阿部さんの身体が消える。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/23(火) 01:49:08.81 ID:mtIaK3WM0
从'ー'从「それじゃあ頼んだよ。敵の位置情報はこっちから伝えるからね」


 任せておけ、と阿部の声だけが聞こえた。



川 ゚ -゚)「さて、それではここで持ちこたえるとしよう」



 3人を後ろに背負い、正面から狙撃と向き合う。


川 ゚ -゚)「いくぞっ!」


左手のダガーを素早く振るい、弾丸を弾いた。


28 名前:第10話『遊撃』 :2007/10/23(火) 01:51:08.92 ID:mtIaK3WM0

川 ゚ -゚)「ブーン。ツン達と一緒に動くなよ。魔力の供給も頼む」

ξ゚听)ξ「……というよりあなた、普通に音速越の銃弾を見切れるの?」

川 ゚ -゚)「眼ではさすがに捉えきれないがな。我が王女のおかげで不可視の攻撃には慣れている。
   一撃一撃もそこまで重くはないし、弾き飛ばすくらいなら当面は大丈夫だ」


 言いながら腕をはねあげる。ガンッと音がして、兆弾が給水塔の上部に穴をあけた。


ξ;゚听)ξ「…………」

从;'ー'从「…………」

(;^ω^)「…………」

川;゚ -゚)「……大丈夫だ。3人には当てない」

…………
……


30 名前:第10話『遊撃』 :2007/10/23(火) 01:55:02.15 ID:mtIaK3WM0


( <●><●>)「(……遊びすぎたか)」


 一撃で仕留めるつもりはなかった。魔力を帯びた弾丸とはいえ、十数キロも離れていては人間ならともかく、
サーヴァント相手に致命傷にはならない。少しずつ弱らせ、3体のサーヴァントがそろった瞬間、宝具で全滅させる。

 ところが、一発も攻撃はあたっていない。セイバーの魔術士、アヤカスフィールの援護もあってか
完全に軌道は読まれている。次に出てきた少年、内藤ホライゾンのサーヴァント・ライダーにもどういうわけか
一向に直撃する予感はない。セイバーが校舎を飛び降りて3分。最短で、10分もすれば相手はここを突き止めるだろう。


( ФωФ)「セイバーが向かってきているといったが……大丈夫なんだろうな? セイバーを倒しきれないなら、
   ワタナベルンを撃ち殺してもかまわんぞ」

( <●><●>)「……そうですね。仕方ない」


 狙撃手に狙われている。この恐怖にあの魔術士、アヤカスフィール=フォン=ワタナベルンは耐えた。
他の二人も狙撃を取り乱さずに狙撃手を叩くセイバーと、自分達を守るライダーを信じて動かない。

 危険な存在だ。

33 名前:第10話『遊撃』 :2007/10/23(火) 01:59:27.53 ID:mtIaK3WM0



 アーチャーはポケットの中にある、ハーケンクロイツの紋章の入った黒の銃弾を触って確認した。


( <●><●>)「(……総統のためなら、この幻の世界など関係はない)」


 再び銃弾を装填。狙いはライダー……ではなく、そのマスター・内藤の胸部。

 その瞳に、「人間」を狙う負い目は欠片もなかった。




【第10話・終了】
                 →第11話へ続く


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