38 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:28:53.43 ID:tRKY7Y7v0
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

川 ゚ -゚)「無事だったんだな……よかった」


 頭から流れ出た血液が雪におち、泥にまじって訃音なマーブル模様がどんどん広がっていく。


(幼;ω;)「ママ、ママ!!」

川 ゚ -゚)「イヤなものだな……大切な相手を残して死ぬ、というのは。
   あのときのアイツの気持ち、今ならわかる……」


 幼いブーンの震える手をやさしく包み、夫の名前をつぶやく。30年も生きていない若い母は自分の意識が
──ひいては、その命が長く持たないことを理解し、受け入れはじめていた。


川 ゚ -゚)「ホライゾン……元気で……」


 最後に一度、強くブーンの手を握る。目を閉じ、その後内藤(旧姓:素直)クウの意識が戻ることはなかった。
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎



( ;ω^)「……珍しいお」


 幼い日の自分、そして6年前の事故。夢に見るのは数年ぶりだった。

39 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:29:45.93 ID:tRKY7Y7v0

( ^ω^)「(…………水でも飲んでくるかお)」


 目についた薄手の半纏を羽織って部屋を出る。
ブーンの部屋から台所に行くには仏間を横切るか縁側を通るかしかない。
意図的に仏間を避け、縁側を通ることにする。満月だからか、虫の鳴き声は聞こえない。
十月にしてはつめたい風が吹いていた。


( ^ω^)「んー、冷たい夜の空気はおいしいお」

(,,゚Д゚)「全くだな」


 二人して庭を眺める。
蒼黒の空に輝く白い月。月明かりが庭に降り注ぎ、木々や土蔵を照らしている。

41 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:30:52.35 ID:tRKY7Y7v0

( ^ω^)「さて、ブーンは台所に水を飲みにいくお」

(,,゚Д゚)「それじゃあ俺は本来の仕事をやるとするか」

( ^ω^)「……」

(,,゚Д゚)「……じゃ、そういう事で」

( ^ω^)「じゃ、そういう事で……」


( ゚ω゚)「じゃないお!」


 あまりに男が場に馴染みすぎていたので、ブーンのおどろくタイミングはかなり遅れていた。



42 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:32:05.74 ID:tRKY7Y7v0

( ゚ω゚)「ど、泥棒かお?!」

(,,゚Д゚)「待て、おちつけ。俺は怪しい人間じゃないぞゴルァ」

(,,゚Д゚)「(というか、そもそも『サ―ヴァント』だから人間じゃねぇがな…)」

( ゚ω゚)「嘘だお! 怪しい人はみんなそう言うんだお。ママはそう言ってたお」

(,,゚Д゚)「ちっ……関係者以外にこういうのは禁じ手なんだが……」


 結界内で生活してるんだから一般人じゃねぇだろ。
心の中で言い訳をし、男はゆったりと具足をつけた足でブーンの膝を軽く小突く。
それだけで膝から上体へ、ブーンの体から力が急速に抜けていった。


(;^ω^)「あ、あれ……おかしいお……」


 たまらず片膝をつく。男はしゃがんで両手を肩にやり、ブーンと視線をあわせ、なだめるように口を開いた。


43 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:33:26.57 ID:tRKY7Y7v0

(,,゚Д゚)「安心しろ、足を痺れさせただけだゴルァ。な、危ないヤツじゃないだろ?」

( ゚ω゚)「何を言うかお! あきらかブーンを攻撃してるじゃないかお!」

(,,゚Д゚)「おいおい。もし俺が本当に危ないヤツだったら、これだけじゃ済まないだろ。
   人探しをしてるだけなんだ。ここにいない事がわかったらすぐ帰るからよ、ちょこっとだけ協力してくれや」

(;^ω^)「…………わかったお」


 決して男の言い分に納得したわけではなかったが、このままでは本当にマズい事になりかねない。
そう判断して、ブーンはとりあえず男に同意した。



44 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:33:55.64 ID:tRKY7Y7v0

( ^ω^)「それで、ブーンは何を協力すればいいんだお」

(,,゚Д゚)「質問に答えてくれるだけでいい。今、この家に住んでいるのはお前のほかに何人、魔術師がいる?」

( ^ω^)「…………魔術師、かお?」

(,,゚Д゚)「ああ。これだけの結界を屋敷に張れる魔術士なら、マスターになる可能性は十分だ。
   もしかしたらすでにサーヴァントを召還してマスターになっているかもしれない」

( ^ω^)「(何言ってるんだお、こいつは?)」


 サーヴァントだのマスターだの、聞き覚えのない言葉をポンポンと口に出す男。


( ^ω^)「(いや……)」



45 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:34:27.85 ID:tRKY7Y7v0

 先程は気が動転していたからわからなかったが、あらためて男の言動を鑑みると、それがどれだけ異常なのかに気づく。
『魔術士』という普通の人間が知るはずのない単語を口にし、並の魔術士ならよっぽど注意深く探らないと
存在にすら気づけないツンの結界をたやすく看破し、その警報装置を発動させずに屋敷に侵入している。
そしてなにより、ラウン寺にいる僧侶がきている僧衣にも似た服を着た男の体から溢れる魔力は
ブーンの知る常識を……魔術師とよばれる人間としての常識を、はるかに超えていた。


(,,゚Д゚)「……ん、黙んまりか? もしかして、やっぱり答えたくなくなった、とか……そんな事を言う気かゴルァ」

(;^ω^)「ぶ、ブーンだお」

(,,゚Д゚)「へ?」


 あっけにとられている男に畳み掛けるよう、相手の目を見据えてブーンは続ける。



46 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:35:50.37 ID:tRKY7Y7v0

( ^ω^)「この屋敷の結界を張ったのはブーンだお。そしてブーンは魔術士だけど普通の男子中学生で、
   ポケモンマスターでもアイドルマスターでも東方不敗マスターアジアでもないし、ついでにタッチタイプもできないお!
   あとここに住んでるのはブーンの家族だけで、他に魔術士はいないお! だから、さっさと」

(,,゚Д゚)「……あのなぁ……」


 男が手を後ろをまわすと何がどうなったのか。その手には白太刀の大薙刀が握られていた。


(,,゚Д゚)「いくら俺が魔術に明るくない『アサシン』のサーヴァントでもよ、お前の力くらいはわかる。
   お前の身のこなし、体内の魔力。どう考えてもこんな結界は張れねぇよ」


 そういいながら手首の力だけで薙刀を軽く振り上げると、やる気なさげに振り下ろした。


(;゚ω゚)「うわぁぁぁぁぁ!!」


 手の力だけで縁側から転げ落ちるように退避する。そのまま這って逃げようとするも、その先には
当然のように刃先を前にした男が待ち構えていた。

48 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:38:55.69 ID:tRKY7Y7v0

(,,゚Д゚)「もう一度だけ聞くぞゴルァ……この結界を張った魔術士はどこだ」

(;^ω^)「(こ、これはピンチだお……)」


 チラリと後ろを見ると、さきほどの薙刀はブーンがいたすぐ横を通過していた。ただの脅しだったのか。
だが、二度目の脅しはなさそうだ。元からよくない目つきがさらに悪くなっている。


(,,゚Д゚)「結界張ったヤツ……知り合いをかくまおうとする態度は立派だが、別に調べるだけと言ってるだろ?
   早く教えてくれ。俺だってヒマじゃないんだ」

??「ならばさっさと帰ることだな」


 二人の上からそんな声がした。それとほぼ同時に



巨大な円錐がおちてきた。



49 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:39:27.26 ID:tRKY7Y7v0

 轟音とともに、二人の間に割って入る形で地面に突き刺ささる。
砂埃が舞い上がり、思わずブーンは目を閉じた。


???「大丈夫か」


 どこか懐かしい声。目を開き、自らに問いかける声でブーンは顔をあげる。

 おそらくはさっきの轟音の正体であろう細長い逆円錐。簡単に地面へ突き刺さっている事を考えると、
そう軽いものではなさそうだ。大きさはざっと3M。月の光を浴びて鈍く輝いている。
 そして円錐に手をあて、女が立っていた。長く伸びる金色の髪。後ろを向いているので顔はわからない。
腰にさげたレイピアを引き抜き、薙刀の男を牽制するようにその切っ先を向ける。
注意はそのままで、女はブーンに顔をむけた。


川 ゚ -゚)「『ライダー』のサーヴァント、召還に応えてここに馳せ参じた」


 西洋風の蒼い軽鎧がカラリと音をたてる。何も言わずにブーンは傍らに立つ女を見つめる。
声を出したかった。だが、様々な感情が入り混じっていっぱいいっぱいになった頭がそれを妨げる。
さっきの薙刀男も、降ってきた円錐が飛ばした土で汚れてしまった服も、屋敷のどこかにいるツンの事も考えられない。


50 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:40:14.71 ID:tRKY7Y7v0

川 ゚ -゚)「問おう、少年。貴方が私のマスターか」


 どこかで聞いたような言い回し。声を出すにはちょうどいい、イエスとノーの選択肢。
だが、ブーンの口から出た言葉はそのどちらでもなかった。





( ゚ω゚)「……ママ…………かお?」
川 ゚ -゚)「────」






 奇妙な沈黙は、薙刀男の一振りで突き破られた。


52 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:41:06.50 ID:tRKY7Y7v0

 レイピアを構えた女──ライダーの仕業ではない。全く別の方向から飛んできた光弾を
男は薙刀で弾き飛ばす。


ξ゚听)ξ「こんな時間に人の家で何をしているのかしら、『アサシン』のサーヴァントさん?」

(,,゚Д゚)「……調査の手間が省けたな」


ツン。
そしてその後ろで小さくなっているドクオを見つめて薙刀男───アサシンはニヤリと笑う。


(,,゚Д゚)「ブーンといったか……お前、なかなかやるなゴルァ。俺の事を──聖杯戦争について
   何も知らないフリをして最後まであの女魔術師を匿い、さらにサーヴァントまで召還するなんてな」


 そう言うとアサシンは大薙刀を引いた。



(,,゚Д゚)「さすがに敵の本拠地で1対2じゃ厳しい。ここはひかせてもらうぞゴルァ」

川 ゚ -゚)「逃げるか、アサシン」

(,,゚Д゚)「俺なんかよりアンタを呼び出したばかりのマスターを気にかけてやんな、ライダーさんよ。
   それに、聖杯戦争は今はじまったばかりだ。すぐ決着をつける必要はないだろ」
54 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:43:37.76 ID:tRKY7Y7v0
 言うがいなや、アサシンは何もない空へ飛び上がる。腕を伸ばし、あきらかに物理を虫した不可解な動きで
塀の上へ移動し、それから闇にまぎれるように姿を消した。


( ゚ω゚)「…………」

川 ゚ -゚)「大丈夫ですか、マスター。私がわかりますか?」

( ゚ω゚)「ママ……」

川 ゚ -゚)「違います。私は『ライダー』のサーヴァント。生前の名前は……おっと」


そこまで言いかけ、ライダーと名乗った女は立ち上がってツン達と対峙する。



55 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:44:16.02 ID:tRKY7Y7v0

川 ゚ -゚)「『バーサーカー』のサーヴァント、およびそのマスター。私のマスターは戦える状態にないが
   それでも聖杯戦争を遂行するというのなら……来い。私ひとりでも相手になろう」

ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと待って。そこにいるブーンは私の弟子だし、今すぐあなたと戦う気はないわ」

川 ゚ -゚)「……本当か」

ξ゚听)ξ「もちろんよ。それに恥ずかしながら、ウチのサーヴァントは臆病だから、いきなり戦うなんて」


 そう言ってるツンのそばを疾風が駆ける。その正体は……


ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっとドクオ!」



56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/03(火) 00:44:35.64 ID:3AfpsILM0
支援

57 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:44:51.64 ID:tRKY7Y7v0
川 ゚ -゚)「来るか……」


 さしておどろいた風もみせず、ライダーは一直線に向かってくるドクオを見据える。


川 ゚ -゚)「はっ!」


 裂帛の気合とともにライダーの突き出したレイピアを避け、その懐にもぐりこむ。いつのまにか構えていた
ライダーの右のダガーをドクオは素手でいとも簡単に叩き落とし、そのまま……














('∀`)「シンジラレナーイ、奇跡だ、ワッホーウ!!!」


 強く、ライダーを抱きしめた。


58 :第1話『再会の夜』:2007/07/03(火) 00:45:17.48 ID:tRKY7Y7v0

川;゚ -゚)「なっ、何をするバーサーカー」

('∀`)「会いたかった、会いたかったよぉぉぉぉ!!」

ξ゚听)ξ「へ??」


振りほどこうと必死なサーヴァント、ライダー。
離されまいと、必死にライダーに抱きつく『バーサーカー』のサーヴァント、ドクオ。
呆然とへたりこんでいる従兄弟、内藤ホライゾン。


ξ゚听)ξ「(どうしたものかしらね……)」


 真夜中の庭。
 3人を見ながらツンは珍しく溜息をついた。
もっとも、これから聖杯戦争の続く一ヶ月で何度もつくことになるのだが…



【第1話・終了】
                 →第2話へ続く

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