169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 21:57:02.04 ID:s8Q6nqpy0
それからの数日間、何も変わらぬ毎日が過ぎていった。



それは前触れも無い、ある日長岡が空を助け連れ帰ってきたその時だった。

ビリビリと城下町全体が震える。
繰り返しの町では聞いたことのない呻き声がこの城下町全体に響いた。

なにか、獣のような呻き声・・・
そして突如、僕の視界になにか得体の知れない巨大な物体が入ってきた。
そして、目の前にいたのは、

この町にある様々な家屋よりも
江戸城よりも
果てしなく巨大な


怪物…

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 21:58:35.47 ID:s8Q6nqpy0
その巨体は無数の牙が備わった口を大きく開け、尖った耳に茶色の毛を奮い立たせている。
犬や狼の類いだろうか。
僕は恐怖よりも、鎖の支配を越えた世界に感嘆としていた。
そしてまた響いた大音量の呻き声。
その瞬間、周りの人々が一気にバタバタと倒れた。

この景色はが長岡が空を助けに行った後の感覚に似ていた。
体にかかる脱力感―。

そのうち自分の体からも力が抜けていく事もわかった。
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:05:34.89 ID:s8Q6nqpy0
そして、蘇る恐怖。
毎日を繰り返す世界から、巨大な化け物が訪れた世界へ。


力がゆっくりと失われていくにもかかわらず体中の震えが止まらない。


思わず僕の口からお粗末な声が出る。





(;´・ω・`)「うわあぁ…………………!」




178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:08:06.38 ID:s8Q6nqpy0
あれ?



喋れたような…


( ;´・ω・`)「……あっ・・・・・・」


声が出せる。


涙がこみ上げてきた。
今まで出すこともできなかった。

嬉しさと悲しさが混ざったような気持ちが心を覆う。

( ;´;ω;`)「・・・・・・・・・・…あぁ…ああああ!!」

179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:10:12.15 ID:s8Q6nqpy0
震えが止まらない。


紛れもなく自分の意思で喋る声。

一度も出したことのなかった涙。

今まで望んできた自由がこんな形で手に入るとは思わなかった。
何度も何度も叫ぶ。
声の出し方がわからずただただ叫び続ける。


ぐしょぐしょになった顔を左手で拭う。
体の自由までもが手に入った…と思ったが、どうやらそのほかのパーツは動かない。

目線を手に向け、自由になった左手で体中を調べる。
手触りで伝わる情報によると、後頭部と左手首の鎖が外れていた。

鎖が付いていない箇所だけ自由が与えられたようだ。
鎖が外れたのはあの怪物のせいなのか?

辺りを見渡すと、町を半壊させたあの怪物はすでに消えていた。

180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:13:06.33 ID:s8Q6nqpy0
まだ理解が追いついていないことが多すぎて、僕はその場に佇む事しかできなかった。
涙が止まるまで何度も目を擦り、嗚咽の混じった叫び声を漏らす。
そして、ようやく僕は一つの記憶を思い出した。

空は、彼女は無事なのだろうか。

顔を上げあたりを見渡す。
周囲の町民が倒れこむ中、彼女は一人だけ立ち続けていた。
虚ろな目で静かに空を見上げている。

彼女の鎖はまだ繋がっている。
つまり、鎖は彼女を立たせていることになるのか。
本当に分らない事が多すぎる。


しかし、僕がやる事は初めから分りきっていた。

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:14:40.52 ID:s8Q6nqpy0
左手で足首に付いた枷を掴む。
意外にも鎖はあっさりと取れた。その要領でもう片方も。

しかし、右手に付いたは枷は頑なに取れず、うんともすんとも言わなかった。

右手を諦めて、僕は前に進む。
初めての感触。自分の体を自分で動かす喜び。
まだスピードは出せない。 ずるずると足を引きずる。
未だに収まらない脱力感。



それでも進まなくては。
彼女の元へ。


184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:16:30.13 ID:s8Q6nqpy0
僕はたった2mの距離を必死に進んだ。
体が重い。


右手に付いている鎖が僕の足枷となり、思うように前に進まない。

進め。

進め。

鎖が右手を連れ込もうとする。 その力に歯を食いしばり抗う。
右手から止め留めなく血が吹き出た。

かまわない。
僕は彼女を救うんだ。
そのためならこんな体なんか。
あと少しだ……!
僕は叫ぶ。

( ;´・ω・`)「空!!」


彼女の肩を左手で強く掴んだ。
僕は彼女に触れることができた。その手から温もりや繊細な美しさが伝わってくる。

そして左手にありったけの力込めて彼女を引っ張り、思いっきり抱きしめる。
187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:17:51.43 ID:s8Q6nqpy0
こんなにも美しい人だったのか…傍に寄って改めて知った。
繊細で、清楚で、近寄ることすら罪に思えるほど。

僕は彼女の鎖に目を向け、力の限り引きちぎった。
彼女は僕に目を向けられず、ただ、遠くを見つめている。
笑いもせず、泣きもせず。

この町の家屋も先ほどの怪物に遣られてしまったのか、所々で損壊が見られる。
彼女が何を見ていたのか僕にはわからなかった。

僕は空の枷を掴みありったけの力を入れて外した。
連続してバキンと音がする。
両手両足首の鎖が切れた。

川 ゚ -゚)「…」

背中の鎖を強く掴んで、千切った。
金属の弾けた音がした。


188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:19:06.29 ID:s8Q6nqpy0
やった…

…ついに彼女に自由を…


川;゚ -゚)「……あ…」

彼女から言葉が漏れた。

この時をどんなに待ちわびただろう。
来る日も来る日も彼女の姿を追っていた。
ただ起こりえもしない奇跡によがり。

彼女は両手の鎖から僕の顔のほうに目を向ける。

また、見ることができた。あの瞳に。
しかし、あの時見た、悲しい瞳はもうなかった。




川 ゚ -゚)



川^−^)「ありがとう。」

189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:20:45.55 ID:s8Q6nqpy0
彼女の声が、心に澄み渡った。
足りなかった物が、こみ上げてきた。
僕は…

僕は彼女を救えたのだ。
この狂気の江戸から、たった一人の大切な人を。

僕は空とずっと見つめあった。
ただ嬉しくて嬉しくて。
この世界の終わりを祝して。

( ;´・ω・`)「さぁ、一緒にこの街を出…」



その瞬間、僕の右手は鎖に引っ張られて行った。

190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:22:12.40 ID:s8Q6nqpy0
右腕の痛みを思い出した。 忘れかけていた支配の力。

あと少しだったのに・・・
空・・・
僕は・・・

本当に僕はあなたをを救えたのだろうか?……


僕は真実を知ることができなかった。

鎖の意味は?
毎日が繰り返される理由は?
あの怪物は?
鎖を切ったその先は?


空の無事は?


( ;´・ω・`)「空…」


僕の気持ちを声に出すその瞬間、
僕の目にはあるものが入ってきた。
199 名前:本日3度目のさるさん:2010/03/02(火) 22:37:33.98 ID:s8Q6nqpy0
それは見事な桜並木であった。川沿いに並ぶ満開の桜の木は
その時を止めてしまうほど美しく、そして大きかった。
さあぁっと吹きぬく風に靡く花々は凛と咲き誇り、
言葉では表現することができないほどの絢爛な姿を僕に見せ付けた。

川沿いは僕の店からだと死角になっている為、見れることが無かった。

なんだ…こんな近くにあったのか、と思うとなんだか可笑しくなった。
確かに、甘い団子でも食べて、眺めていたい。
なんとなく納得できる。

僕は静かに微笑み眠りについた。


・・・・・・・・・・・・

 

200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:40:02.95 ID:s8Q6nqpy0
『お花見ざむらい』

むかし、あるところに 長岡 助流介というさむらいがいました。
長岡は正義かんが強い男で、悪いことはぜったいにゆるさないさむらいでした。
そんなかれはお花見が大好きで、お花見のきせつになっては江戸の町をおさんぽします。

ある晴れたお花見日和の日、長岡はとっても悪い、ざい人 斉藤 又吉が逃げ出したといううわさを聞きました。

それを聞いて怒った長岡は急いで又吉の元へかけつけました。
しかし、すでに又吉はにげていて、町の人によると、又吉は町の娘をつれさって林へにげたそうです。

長岡は町の娘を助けるために林へむかいました。
林には満開のさくらが咲いていました。
その林のおくに、又吉はいました。

長岡は言いました。
「やいやい。悪いざい人め。その娘をはなすんだ。」
それに対して又吉も言いかえしました。
「なにおう?ならばおまえをきってやる。」
202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:41:59.28 ID:s8Q6nqpy0
二人は一歩も引かずたたかいましたが、長岡はさくらが大好きなのでさくらをきずつけないように
さくらを守りながらたたかいました。
しかし、又吉はおかまい無しにさくらの木をバッサバサ切りたおし林をこわしていきました。
これにはさくらの木もカンカンです。
さくらの木は木のえだを又吉の手にからみつきうごけなくしました。

そのしゅんかんを長岡は見のがさず又吉にきりかかり、又吉をたおしました。

そして長岡は町の娘をつれて帰……


ガルルルルルルッ!!

(;・∀・)「うわああああああ!!野良犬だ!あぶねぇあぶねぇ!!」

(;・∀・)「こっちくんな!!・・・・・・・ああ!!セットが!」

(;・∀・)「しっしっ!!お弁当の肉やるから帰れ!!」

キャインキャイン……

(;・∀・)「あーびっくりした。・・・お?」

(*゚ー゚)

(;・∀・)「・・・・・どうしたの?お嬢ちゃん?」

203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:44:03.11 ID:s8Q6nqpy0
(*゚ー゚) 「お兄さんってさ〜誰も来ないのに毎日ここに来てお人形劇やってるよね」

(;・∀・)「え・・・まぁ、うん、そだね。知ってるの?」

(*゚ー゚) 「今のお話は知らないけど、前やってた我侭な王様のお話なら知ってるよ」

(*゚ー゚) 「家来にわがままな命令出して家来をころして、その悪さにみんな怒って王様を処刑して〜」

(*゚ー゚) 「それで反省した王様は神様にお願いしてもらって、生き返ってもう一度王様になって」

(*゚ー゚) 「今度は皆の為だけにがんばって、最後は美しいお姫様と結婚する話」

( ・∀・)「おっすごいすごい!!ちゃんと覚えてくれてたんだ〜」

(*゚ー゚)「えへへ〜えらいでしょ〜まぁあんまり面白くなかったけど」

(;・∀・)「ガフッ!!」
207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:46:08.06 ID:s8Q6nqpy0
( ・∀・)「じゃあご褒美に・・・・これ、あげるよ」

(*゚ー゚)「あれ、これって結婚したお姫様じゃん!いいの〜?」

( ・∀・)「うん。さっき、犬が来たときに糸がぜんぶ切れちゃってね新しく作らないと駄目だから。」

(*゚ー゚)「そうなんだ。じゃあそっちの王様もちょうだい!」

(;・∀・)「これは駄目!まだ直せるから」

(*゚ー゚)「え〜・・・まぁいいや。・・・・ねぇ明日もここにいるの?」

(;・∀・)「う〜ん明日はどうだろう…直さないといけないし。・・・でも毎日いるから見においでよ」

(*゚ー゚)「うん!!わかった!!待ってるね!」

( ・∀・)「ありがとう!気をつけて帰るんだよ!」

(*゚ー゚)「うん!じゃあまたねー。」

( ・∀・)「ばいばーい・・・・・・・・」

( ・∀・)「・・・・・・」

( ・∀・)「・・・さてと、コイツの紐から直すかな。」
208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:47:09.96 ID:s8Q6nqpy0
また朝が来た。

開店早々店に入る、常連客。





【(´・ω・`)僕が最後見た江戸桜のようです】





終わり。

 

 

 

212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 22:49:10.79 ID:s8Q6nqpy0
お疲れ様です。
サイバーテロの中、わざわざお越しいただき誠にありがとうございます。
やたらさるさんを喰らったのは韓国が遠まわしに猿呼ばわりでもしているのでしょうか?

何人か気付かれましたが、
2つ目の作品は自分の処女作、
『( ´・ω・)僕は不思議な街の住人のようです 』
ttp://georgenagaoka0807.blog87.fc2.com/blog-entry-140.html

のリメイク作品となっています。
前回は西洋の世界にカワイソスでしたが今回は江戸時代を背景にショボンでやってみました。
あまりにもリメイク前が見るに耐えない文章だったので改善しました。申し訳ない。
それでも、この程度ですが。



それでは、またどこかで。
支援ありがとうございました。

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