101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:39:46.70 ID:s8Q6nqpy0
時は1680年―――延宝 八年。徳川家康が築いた江戸時代は勢いを衰えることなく続き、
安定した平穏な時代は商業は著しく発展させていった。
家綱が没し、家綱の遺言により綱吉が将軍となり、天和の世へ全国を支配していく。

舞台はこの年の江戸の城下町。しかしここは江戸であって江戸ではない。



これは、とある男女の物語である。




【(´・ω・`)僕が最後見た江戸桜のようです】



103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:41:23.39 ID:s8Q6nqpy0
誰が聞くのかはわからない。けれど僕は僕の物語を話そう。
ただ独り言のように。


(´・ω・`) いらっしゃい旦那!!


ここは江戸城の城下町。
遠くに聳え立つ江戸城の足元にしか及ばない城下町の甍の波。その屋根の下で町民は生活をしている。
本通りには上方から移住してきた商人や職人達が集まり町を形成し賑わせていた。
江戸には蚊帳売、呉服屋、酒屋、役者、牢人、大工、畳屋、蕎麦屋・・・など様々な職業、身分が集まり、交錯する。
町は人ごみで溢れかえり、歩く人々は士農工商を問わず目に入る。
商人たちの商人魂を込めた商売文句は通り全体に響き渡り、静まることを知らない。

こうしてこの城下町は動いている。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:42:23.58 ID:s8Q6nqpy0
そこでの僕はというと、この町の大通りで小さな菓子屋を営んでいる。
店の中は小豆を煮る独特な匂いが漂い、成人男性の腹ぐらいの位置の高さの台の上には漆を塗った陶器が並び、
その上に色とりどり鮮やかな絵を彩る和菓子をずらりと並べている。
店の壁沿いには客が椅子に腰をかけ、ゆっくりと苦い緑茶を飲みながら甘い団子をいただけるように
木製のベンチのような台を置き、そして藍色に染まった畳一畳分の布に白い文字で
「花見団子」と、でかでかと書いた看板が貼ってあった。

(´・ω・`) またいつものですね!!wwわかりやしたぁ!!少々お待ちをww

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:43:36.40 ID:s8Q6nqpy0
江戸の男は年齢に関係なく「江戸っ子」というスタイルを持っている。
この国を・・・いや、この時代に倣って言うならば天下の人々の活を象徴する「粋」。
江戸は「粋」を産み出した地であり、その「粋」は眠ることを知らずこの町に騒がしさを与えている。
僕もその「粋」を余すことなく出しきる日々を送っている。
僕が「粋」に副って言葉を発すると、客の商人や武士たちも「粋」で返してくる。

そのおかげで僕の店は客足が絶つことは無く、常に客と他愛も無い世知話をしながら串に刺さった団子を売っている。
さらに言えば今は花見シーズン真っ盛りなので、この日の午前だけで、用意していた団子の半分以上が売れた。
花より団子とは言ったものだ。

しかし、僕には店の売り上げなど知ったことではないし思い切った話、この店がなくなっても構わない。
本当に意味も必要も無いのだ。


この不思議にも繰り返す日々には。

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:44:53.92 ID:s8Q6nqpy0
(´・ω・`) まいどー!!

僕は老いた常連客の後姿を見届けると、ゆっくりと店の中へ入っていった。
あの老人は常連客であって、常連客ではない。
まぁ、彼自ら常連客だと名乗っているのだからおそらくそうなのだろう。
しかし、僕は彼が常連客なのかどうか知るよしが無いのだ。

何故なら




この町は毎日同じ日を繰り返しているから。


109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:46:09.64 ID:s8Q6nqpy0
この町には3つの奇妙な謎がある。
謎といっても奉行の悪事や、天下の家康公が残した埋蔵金の在り処の噂といった個人の謎ではない。
この江戸全土に広がる奇妙な謎だ。

まず一つ目。それは



「この町は毎日同じ日をを繰り返す」ということ。


これは毎日が同じように単純でつまらない、退屈な生活だ・・・と感じる精神からくる意識ではなく、
実際に同じ日を繰り返しており、人々の行動から言葉、表情、
その日に起こる出来事、雲や水の動きまで全てが毎日と一緒だった。

しかし、毎日が繰り返されていることに誰も気付いていないのか、毎日同じ行動をする。

いや、恐らくみんな僕と同じく気が付いているのだろう。しかし、ただ同じ行動を繰り返すしかないんだ。

もう一つの謎がある限り―

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:47:24.31 ID:s8Q6nqpy0
「鎖」


この町の人間の体は複数の太く、長く、黒く、冷たい鎖で繋がれている。後頭部と両手足首に。

鎖は空高く上り、天まで果てしなく繋がっている。
その鎖は繋がれた者の全ての行動を支配する。
人や動物の口から発する声、驚きや笑いを表現するための表情、脚の動きからまばたきの回数まで、
全て、この鎖が支配していることなのだ。

もちろん、行動まで全て規制されているから鎖について他の人々と話し合う事や毎日の日々と違うことをする事は愚か、
鎖に触る、鎖を外す、といった行動も勿論できない。

犬や馬、鳥までもが鎖で縛られたこの町。
何もかもが同じ時間に同じ事を誤ることなく動く町。

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:48:44.17 ID:s8Q6nqpy0
しかし、この思考だけは鎖で縛られることは無かった。
体がどんなに規則的に動かされていても、意思だけは鎖によって支配されない。
だから、僕は毎日この思考が聞こえる誰かに、
自分の状況を知ってもらうために脳内で説明を繰り返している。


しかし、その誰かはいつまで経ってもこの町に訪れず、
いつもこの語りは不毛に終わるのである。


僕は毎日この町を、日々を脱出する事だけを考えていた。 
いや、できなくても構わない。 僕は真実が知りたい。
体が支配されている以上、何もできない。
もしかしたら他の人々も僕と同じ事を考えているかもしれない。


しかし、それを知る方法はないのだ。
僕らには抵抗する術などないのだから。
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:49:32.38 ID:s8Q6nqpy0
ならばいっそこの思考まで全て支配して欲しい。
そうすれば考える事も無くなるので幾分僕も楽になるだろう。

ここは江戸であって江戸ではない。
神のみぞ知る隔離された異空間なのだ。


僕は知っている。


今日、この先起こる出来事を。


114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:50:38.62 ID:s8Q6nqpy0
騒がしい大通りに馬を引き連れた数人の男たちが現れた。
騒がしい道は途端に静かになり、町民は通りの脇に逸れている。

(・∀ ・) ………

男たちが引き連れた鞍の付いていない馬には一人の男が跨がっていた。
その表情は冷ややかに微笑んでいた。

ぼろぼろの布切れを身にまとい、体を縄で縛られ両手は後ろ手にされている。
その男の首からぶら下げている一枚の木の板には



『斉藤 又吉 二十五歳 罪状 鋸挽き』
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:51:45.93 ID:s8Q6nqpy0
これはいわゆる「市中引き回し」と呼ばれる晒し行為だ。
鋸挽き・・・名前から想像される極刑。

彼が何の罪を犯したのか知らないが、その刑罰に相応した事をしてしまったのだろう。
もちろん、この罪人も一行も鎖で繋がれている。

鎖に縛られ、縄に縛られ・・・この男はどこまで縛られているのだろうか・・・。
一行が通過している間、大通りは静かにざわめいている。


この後、この又吉が暴れだすまでは。
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:52:39.98 ID:s8Q6nqpy0
(・∀ ・) 水が飲みてぇ

彼の一言にその行列は止まった。
しばらくの沈黙。
そのうち、後ろで馬に跨っていた身なりの良い男が、
飲ませてやれ、と言った。
一行の内の一人が近くの井戸から水を掬い、又吉の元まで運んだ。

(・∀ ・) 俺ぇ・・・一人じゃ飲めねぇから口に入れてくれよぉ

又吉の注文に水を運んできた男は一瞬だけ眉をしかめたが、ゆっくりと碗を又吉の顔へ運んでいく。

運んではいけない。

運んでしまったらその罪人は暴れだしてしまう。
しかし全ては鎖の仕組んだこと。事象を変えることなどできやしない。



119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:53:39.59 ID:s8Q6nqpy0
又吉が勢い良く頭を振り、水を運んだ男の頭と又吉の頭がぶつかった。
ごがん、と鈍い音が通りに響いた後、水汲みの男は血を流しながらその場に倒れた。
この男もいつまで頭突きを喰らい続けるのだろうか。

又吉が頭突きをしたところで辺りは騒然とした。
そして又吉は馬の背に立ち上がり、縛られていたはずの縄をいとも簡単に外し、
頑なに縛り付けていた縄はするすると地に落ちていった。

(・∀ ・) うひゃひゃひゃwwwまさかこんな縄で俺を縛り付けられると思ったかぁ?与力のアホ共がぁ

気色悪く笑う又吉に、周りにいた男たちは刀を構え一歩だけ後ろに下がった。
どうやら彼らにとって又吉を野放しにしたことは起こってはならない不測の事態だったのだろう。


120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:55:38.90 ID:s8Q6nqpy0
ええい!!何をしている。とっとと捕まえろ!!

と身なりの良い男が叫んだ。その号令にあわせて刀を持った男たちが一斉に切りかかった。
そのころの僕はというと店に隠れ、その様子を影でこっそりと見ていた。
できるのならばもっと外で見ていたいのだが、
鎖のせいでこんな薄暗い家屋の中で見る羽目になってしまっている。

その後の又吉はとても素晴らしい。
切りかかってきた男たちを滑るようにかわし、一人の顔面に強い蹴りを入れると
その男が持っていた刀を右手に構える。周りの男たちはすっかり足が竦んでいるようだった。
その後の展開はもはや芸術の領域。

刀と刀が絡み合う殺陣の中に笑う、たった一人の狂気が首、胸、腹、手足、顔を赤く塗りつぶし
一人、また一人と地面に体を擦り付けた。

弛まぬ事無く又吉を動かしているあの鎖の芸当なのだろう。
全てを操る鎖。いったい、この地獄絵図に何の意味があると言うのか。


121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:56:44.75 ID:s8Q6nqpy0
(・∀ ・) うひゃひゃひゃwwwたいしたことねぇなwww
      この天下の大強盗、斉藤又吉を満足させられる奴はいねぇのかよwww

あっという間にその通りは死体の山になっていた。残ったのは馬に乗っていた与力だけだった。
その与力も又吉の狂気に恐れをなし、馬の向きを変え一目散に逃げ出した。


しかし、又吉が投げつけた刀が見事に与力の首を飛ばし、馬の背に乗った亡骸はゆっくりと地面に落ちていった。
鎖に縛られた僕にとって、そのチャンバラを見るのは数少ない楽しみであった。
結果はいつも変わらないのに。

(・∀ ・) さてと・・・どうするかな・・・

又吉はそう呟くと、あたりを見渡した。
大通りに響き渡る幾つもの叫び声。その中には僕のお粗末な声も混じっている。
武器を持っていない商人たちは又吉と目が合うことを恐れ、家屋に引っ込んだ。

例え鎖が無かったとしてもこの状況で彼に立ち向かう奴はいないだろう。
無論、「僕」もそうした一人だ。

(・∀ ・) お!いいねぇいいねぇ

又吉の視線の先には長い髪の華奢な少女が立っていた。少女の名前は空。
彼女は僕の店の向かいにある鍛冶屋の看板娘だ。
18歳ぐらいの体つきが美しく、彼女目当てでこの店に通う武士も多いと聞く。

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:58:08.33 ID:s8Q6nqpy0
僕と空は通りを挟んでの御向かいさんではあるが、なにぶんお互いの鎖のせいで話すことも、目が会うことも無かった。
しかし、僕の目から見ても空は美しい。

川;゚ -゚) ひっ!

怯える少女の下に又吉がゆっくりと近づいていく。
少女は家に逃げ、その少女の父親らしき人物が刀を構え、盾になるがあっけなく斬り付けられる。

少女が隠れた家に又吉が入り込んで間も無く、
又吉は乱暴に戸を開け、中から少女の髪を掴み外へ引きずり出す。
あんなにうまくいくわけが無いと思うが、所詮は鎖の支配。理由など無い。

(・∀ ・) いいよぉいいよぉ。なかなかの上物だ。うひゃひゃwwwwここで暴れてよかったぁwww

不気味に笑うと彼女を抱え上げ、乗っていた馬に乗りこの大通りを走り去っていった。
その走り去る姿から、うひゃひゃひゃと笑い叫ぶ声と少女の泣き叫ぶ声が聞こえ、
その声はだんだん小さくなっていき、風の音だけを残していった。

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 20:59:13.00 ID:s8Q6nqpy0
嵐が去った後、ゆっくりと僕の鎖は外に出た。
目に映る惨状。ほんの数十分前まで活気付いていた通りが赤黒く染まってしまった。
最初の内はこの景色を見るだけで精神的に負担があったが、
今となっては匂いも感じ取れるほど余裕ができた。


まったく慣れとは恐ろしい。

一人の男の死体が横たわっている真正面の家屋から、髪の長い女性がよろよろと出てきた。
あの女性はその死体の妻だろう。かろうじて一命は取り留めていたようだ。

数人の町民が彼女の元へ駆けつけて手助けをする。もちろんその町民の中に僕もいる。
台の上に寝かせると、彼女は強く僕の腕を握り締める。

彼女は鳴き声と嗚咽が混じった声で叫んだ。
誰か、誰か私の娘を助けてください。と。

沈黙。誰も喋らない。
喋れないし、喋らない。
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 21:00:17.47 ID:s8Q6nqpy0
そのうち、一人の町人が彼女に声をかける。

:辛いだろうが…相手は罪人だ。ましてや武器を持ってる

:俺たちが助けに行っても死体が増えるだけさ…

そして「僕」も声を放つ。

(´・ω・`) 町奉行が何とかしてくれるまで、無事を祈るしかないな…

僕の一言が言い終わると、仰向けの彼女は涙と血で汚れた顔を更に醜くさせた。
僕はいつまでこの女性にこんな酷い言葉を浴びせないといけないのだろうか。


126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 21:01:38.35 ID:s8Q6nqpy0
そして、この後決まって現れる人物がいる。
ああ、もうすぐ1日が終わるのか。
  _
( ゚∀゚) ちっ…一足遅かったか…

そこに、一人の若者が現れた。
身長は170cmくらいだろうか…。腰には立派に光る刀が刺さっている。
彼は女性の肩に触れると、一つだけ尋ねた。
  _
( ゚∀゚) 又吉が向かったのはこの橋の先か…?

声の元へ顔を向けた町人達は、見覚えの無いその顔に首をかしげた。
首には傘を、背中には大きな荷物を背負い、小袖を纏ったその風貌は旅人なのだと人目でわかった。
橋の向こうに目を向けるその男の体には大きな鎖が5本繋がっていた。


127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 21:03:06.30 ID:s8Q6nqpy0
:ああ…そうだが、お前は誰だ?
  _
( ゚∀゚) 俺の名は長岡。おせっかいな旅人さ。

自己紹介を短絡に終わらせると、彼は腰に刺さった鞘を深く握り締め、
倒れた女性に向かって一言だけ告げる。
  _
( ゚∀゚) いいか。あの子は…俺が必ず助ける。どうか任せてくれ。

鍛冶屋の妻は止まらない涙を流しながら、首を大きく2回縦に振った。
彼女の耳元でそう囁くと、長岡は目つきを変え一目散に又吉が残した馬の蹄の後を辿り駆けていった。
彼の姿がだんだん小さくなり、見えなくなった途端、
僕の体の力が抜け落ち、ゆっくりと意識が遠退いていく。

それは、僕だけでなくこの町の人々全てだ。
同じタイミングに同じく意識が途絶える。
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 21:04:15.16 ID:s8Q6nqpy0
これも毎日のことである。
意識を失うこの時までがこの鎖の支配。理由はわからない。
例えこの先にこの大通りで何か事が起こったとしても、僕らにはわかりようも無いのだ。
そして、僕らが次に目を覚ますのはそれから少しだけ時間がたった後。

目覚めた時一番に目に入るのは、空を助けて帰ってきた長岡の姿。
  _
( ゚∀゚) みんな!!連れて帰ったぞ!!

彼の大きな声になんだなんだと家屋から町民が顔を出した。

:すごいぞ!あんた、よく無事で帰ってこれたな!」

:お前は街の英雄だ!又吉はどうなったんだ!?
  _
( ゚∀゚) 俺が倒した。今頃町奉行にしょっぴかれている頃だろう。

彼、長岡は町民の歓喜に包まれ、人々の尊敬の眼差しを受けた。
僕たちは彼らの帰宅を見届けた後、
また力が抜け、意識を失う。

どうやら僕は彼が空を助けた事を確認するためだけに目覚めるようだ。

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/02(火) 21:05:07.80 ID:s8Q6nqpy0
そして次に目を覚ますのはまた同じ日の朝なのである。
日が変わると、あれだけの惨事を受けた大通りが綺麗に元に戻っており、
連れ去られたはずの空もいつも通りの生活をしている。


これがこの町の一日。
もう何度同じ日々を繰り返したのか覚えていない。
通りが賑わい、又吉が連れてこられ、暴れ、そして空を拐い、長岡が助けに行く。
こんな毎日を永遠と繰り返し続ける。

僕は、耐えられなかった。
けれど、どんなに願ってもどうすることもできない。

辛い。

苦しい。

重く圧し掛かる負の感情が心の中で積み上げられていく。


僕はいったい…


何なんだ?

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