3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:05:21.63 ID:gseq5ON20


第5話



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:07:43.74 ID:gseq5ON20


冷たく大きな風が吹き荒び、土埃りを巻き上げる。それが、肌の傷にしみた。


( ^ω^)「いてて・・・」





5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:09:02.01 ID:gseq5ON20

ブーンの体の傷は、大分良くなっていた。
なんとか、歩けるくらいには回復している。


幸いな事に、骨や内蔵を傷つけてはいなかった。

あの時は、血を失いすぎて倒れたが、
傷を塞ぎ、栄養をとり血を増やせば、それほど重大な障害は残らなさそうだった。


あの無謀な挑戦から、数日が過ぎていた。


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:10:14.44 ID:gseq5ON20

本来なら、ガライの町まで引き返し休養をとる事がいいのだが、
快調に向かっているとはいえ、今のブーンの体力では、
長距離あるガライの町まで移動するのは、厳しい。


現在は、岩山の洞窟付近の森で、野宿している。


今、ブーンが一人で魔物に襲われたら、ひとたまりもないだろう。


では何故、こんな魔物のいるところで野営できるのか。
それは。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:12:05.80 ID:gseq5ON20

ガサッ

( ^ω^)「!」


( ゚∀゚)「おー、危険な事なかったか」

( ^ω^)「お、ジョルジュ」



( ゚∀゚)


この男、ジョルジュのおかげである。


あの時・・・。


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:14:04.54 ID:gseq5ON20

(メ^ω^)『・・・う・・・・・・』

( ゚∀゚)『お、4度目のお目覚めかい。まーた気絶すんなよ』

(メ^ω^)『・・・きみ・・・ここは・・・危険だお』

(メ^ω^)『岩山の洞窟も近いし・・・もっと安全・・・なところへ・・・』

( ゚∀゚)『まぁ大丈夫だよ。平気さ。今、薬草擦ってるからな』 ゴリゴリ

(メ^ω^)『うぐ・・・』


ザクッ ザクッ・・・


(メ^ω^)『!?』

( ゚∀゚)『ん?』


がいこつ『クカカァッ!!』


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:15:30.34 ID:gseq5ON20

(メ;^ω^)『こ、こいつは・・・あのときの・・・魔物・・・ 追ってきたのかお・・・!?』

がいこつ『カカキ・・・』

(メ;^ω^)『ま・・・ずいお・・・きみ・・・にげろお・・・!』

(メ;^ω^)『こいつは・・・危険・・・だお・・・』

( ゚∀゚)『ふぅん、アンタ、こいつにやられたのかい?』


がいこつ『ガカカッ』

(メ;^ω^)『あ・・・ぶな・・・!』


丸腰のジョルジュに、魔物が襲いかかる。
ブーンは、声にならないかすれた声をあげる。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:17:22.91 ID:gseq5ON20

( ゚∀゚)『・・・おいおい、俺に襲いかかるのか。良い度胸だ』

( ゚∀゚)『ちっ・・・ 知能もねえ骨っぴきが・・・』

( ゚∀゚)『・・・つぇいッッ!!』バグォッ

がいこつ『・・・・・・キガッ!?』バキャッ


ジョルジュの拳が、魔物の顔面にめり込み、砕く。

魔物は粉砕され、崩れ落ちた。


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:19:28.98 ID:gseq5ON20

(メ;^ω^)『・・・・・・!!?』


( ゚∀゚)『ふぅ・・・ったく』

(メ^ω^)『あ・・・あいつを一撃で・・・』

(メ^ω^)『・・・き、きみは・・・いったい・・・?』

( ゚∀゚)『ん・・・俺ァな・・・』



( ゚∀゚)『武闘家だ』


(メ^ω^)『ぶ・・・とうか・・・』



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:20:46.44 ID:gseq5ON20

( ゚∀゚)「ほれ、薬草汁。飲めよ」

( ^ω^)「ありがとうだお」


ブーンは、椀に入った薬草の煮汁を飲んだ。
苦いが、こうして湯に溶かして飲むと、胃に優しく、効きが早い。


あれ以来、ブーンはジョルジュに付き添ってもらっていた。
怪我がおおよそ良くなるまで。


何度か魔物に襲撃されたが、全てジョルジュがなんなく撃退した。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:22:23.68 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「ふぅ・・・」

( ^ω^)「それにしても、ジョルジュ。君は、どこであんな武術を身につけたのかお」

( ゚∀゚)「ん、まぁ、世界を廻っていろいろとな」

( ^ω^)「何も武器を持たないで、あの強さ。 ・・・ぶとうか、って言ってたお?」

( ゚∀゚)「へへ・・・そうだろ。俺はぶとうか」

( ゚∀゚)「強くなる為に、世界を旅してる。この拳一つで、最強を目指すんだ」


ジョルジュは、肘を曲げ、腕をペシペシと叩いた。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:24:09.20 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「すごいお。じゃあ、ジョルジュも、竜王を倒す旅を?」

( ゚∀゚)「・・・んー、まぁそんなとこだ」


ジョルジュは、ポリポリと頬を掻いた。
二人で囲む焚き火の炎が、パチパチと音を立てる。


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:25:48.77 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「君に助けてもらって、命が救われたお」

( ^ω^)「怪我してる今も、こうして側にいてもらえて、本当に頼もしいお」

( ゚∀゚)「いいってことよ、気にすんな!ハハハ」


ブーンはこの気っぷのいい男に、今は亡き友の面影をみた。
どことなく、似ていると思った。

また、あの時のシーンが、脳内で再生されかける。

ブーンは思考を振りほどく様に、ジョルジュに話しかけた。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:27:13.29 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「ジョルジュは、なんであんなところにいたんだお?」

( ^ω^)「あんな、魔物の住処の近くに・・・」

( ゚∀゚)「いったろ? 強くなる為にって。俺も、あの洞窟で修行しようと思ってな」

( ゚∀゚)「そうしたら、お前さんがあそこに倒れてたんだ」

( ^ω^)「そうかお・・・」

( ^ω^)「・・・・・・」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:28:48.16 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「・・・ジョルジュ・・・」

( ゚∀゚)「ん、なんだ?」

( ^ω^)「ブーンを・・・鍛えてくれないかお?」

( ゚∀゚)「あん・・・?」

( ^ω^)「ブーンは、竜王を倒す旅をしているお」

( ^ω^)「でも、あの洞窟で、このザマだお」

( ^ω^)「まだまだレベルが足りないお」

( ^ω^)「でも、ブーンは強くならなくちゃいけないんだお!」

( ゚∀゚)「・・・・・・」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:30:48.86 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「竜王を倒すためには、もっと強さが必要だお」

( ^ω^)「ジョルジュなら、この上ない師匠と見込めるお!お願いだお!」

( ^ω^)「ブーンに、戦い方を教えてくれお!」

( ゚∀゚)「・・・・・・ブーン・・・今は俺も修行中の身だ」

( ゚∀゚)「わりぃが俺は、人にモノを教えるほど・・・」

( ;^ω^)「・・・どうしても駄目かお?」

( ゚∀゚)「む・・・」

( ;^ω^)「この通りだお!」


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:32:18.58 ID:gseq5ON20

( ゚∀゚)「・・・・・・」


( ゚∀゚)「・・・わかったよ、ブーン」

( ゚∀゚)「俺の指導は、厳しいぜ。覚悟しろよ」ニヤッ

(*^ω^)「!! ジョルジュっ!!」


かくしてブーンは、さすらいの武闘家――――ジョルジュに師事することになった。



それから、さらに数日――――――。
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:33:38.54 ID:gseq5ON20

( ;^ω^)「はっ、はっ!ぜぇ、ぜぇ」

( ゚∀゚)「それそれ、打ち込んでみろ。一本取れたら、今日の練習は仕舞いだ」

( ;^ω^)「くぉおおっ!!」


ブーンは、たけざおを振りかぶり、ジョルジュに打ち込む。

模擬ゆえにたけざおを使用しているが、それなりの硬度をもつ。
もちろん当たりどころが悪ければ、致命傷をも与えるだろう。

しかし、ブーンは本気で、全力で打ち込んだ。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:34:54.60 ID:gseq5ON20

( ゚∀゚)「・・・甘いッッ!!」ダンッ

( ;゜ω゜)「うぁ・・・あぅっ?!」クルリ


( ; ω )「ぐはっ!!」ダアァン!!


もとより、相手はジョルジュ。手加減など出来ようはずもなかった。
軽くいなされ、ブーンは地面に叩き付けられる。
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:36:32.64 ID:gseq5ON20

( ;^ω^)「いてて・・・あぅ」

( ゚∀゚)「ほれほれ、いつまで寝てんだ?」ドゥッ

( ;゜ω゜)「・・・あ、がハッッ」


ジョルジュは寝転ぶ男の腹に、強烈な足刀蹴りを加える。
ブーンは血と唾液のまざりあったものを吐き出した。


( ゚∀゚)「命のやり取りの実戦じゃあ、敵は待ってくれねえぜ。倒れたら、すぐ起きる」

( ゚∀゚)「そして、すぐに周囲の状況を確認するんだ」

( ;^ω^)「ぐぉ・・・ は、はい。ですお」

( ゚∀゚)「そぅれ、もういっちょ来い。早くしねえと、いつまでたっても飯が食えんぞ」

( ^ω^)「・・・ぬぅおおお!!」シュッ

( ゚∀゚)「振りかぶり過ぎだ。足下がお留守」ビシィッ

( ;゜ω゜)「いでぇっ!?」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:38:38.99 ID:gseq5ON20

練習後。


川の水で喉を潤した。ついでに腫れた顔を冷やす。
水面に映る自分の顔は、ひどいものに見えた。


あの洞窟で負った傷が癒えるや否や、ブーンはジョルジュとの稽古に励んだ。
また新しい生傷が増えてゆく。
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:39:51.35 ID:gseq5ON20

( ;^ω^)「・・・ふー・・・」

( ゚∀゚)「結局、一本も取れなかったな」

( ^ω^)「ジョルジュが強すぎるんだお。手加減無しにも程があるお」

( ゚∀゚)「これでも加減はしてるんだがな。 まぁいいや。ほれ、早く飯の支度しろ」

( ^ω^)「なこといったって、材料が無いお」

( ゚∀゚)「ほいほい、わーったよ」


ジョルジュは、川にザブサブと入りだした。


( ^ω^)「・・・・・・?」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:43:00.26 ID:gseq5ON20

(♯゚∀゚)「・・・ケエエエエイハァッ!!」


川底に、強烈な打拳を放つ。

小さい魚が、ぷかぷかと浮いてきた。


( ;^ω^)「・・・・・・」(ゴクリ)


ブーンは食事の支度に取りかかる。

川魚を串に刺し、焚き火に当てる。
塩でもすり込みたいところだが、調味料は既にきらしてしまっていた。

それでも魚は香ばしい匂いを放ちながら焼けてゆく。

魚の脂が、炭に落ちてジュウ、バチバチと音を立てる。


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:45:17.97 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「焼けたお、ジョルジュ」

( ゚∀゚)「おう。 お、俺大きい方の魚がいい」

( ^ω^)「おおきいのはまだ焼けてないお。何匹もあるから、慌てるなお」

( ゚∀゚)「・・・ホッホフっ! うめぇ!!」ハグハグ

( ^ω^)「ハフ・・・ うん、おいしいお」


新鮮な、熱く焼けた魚。切れた口内の傷が、少し痛む。

ブーンは、ガライのタカオカ亭の味を思い出した。
はやく、帰ってあの味を貪りたい。
思わず、よだれがこみ上げる。
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:47:01.05 ID:gseq5ON20

( ゚∀゚)「明日は、あの洞窟だな。もちお前一人でな」

( ^ω^)「わかったお」


ジョルジュとの組み手、そして洞窟の探検。
このメニューを日ごと交代で行っていた。


最初は、あの洞窟にいくと、あの時の恐怖が蘇り、足がすくんだ。
しかし今では、それなりに余裕をもって巡回できるようになった。

コツは、無理をしないこと。
無理をして、いいやいいやで進んでいくと、ブーンが初めて挑んだ時のようになる。
あれは、まさに暴挙だった。

魔物の相手の仕方も、洞窟の迷路のような道順も、次第に覚えて来た。


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:48:50.26 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「でもジョルジュに揉まれて、大分それなりになってきたお」

( ゚∀゚)「そうだなぁ、お前は覚えが早いよ」

(*^ω^)「そうかお」

( ゚∀゚)「ばか、いい気になるな。まだまだお前は俺の足下にも及ばねえんだ」

( ゚∀゚)「そして俺は、竜王の足下にも及ばない。宿敵との差は、未だ絶望的だぜ」

( ^ω^)「・・・そうだお」

( ゚∀゚)「熱ッ!魚あちぃっ!」ハグ

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:50:21.66 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「竜王・・・竜族の王か・・・」

( ^ω^)「いったい・・・どんな恐ろしい奴なんだお」

( ゚∀゚)「・・・・・・」ムシャムシャ

( ゚∀゚)「ふむ。竜(ドラゴン)ねぇ・・・」

( ゚∀゚)「ブーン、知ってるか」

( ゚∀゚)「太古の昔、竜族と人間は仲良しだったんだぜ」

( ^ω^)「お?」

( ゚∀゚)「今じゃあ考えられねえけどな」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:51:16.37 ID:gseq5ON20

( ゚∀゚)「その昔、竜族と人は、密接な関係にあったんだ」

( ゚∀゚)「竜族も、その姿を人間の形に変えられるように進化したりしてな」

( ゚∀゚)「でも、人間は環境を変える」

( ゚∀゚)「人間ばかりでしか生きられないような生活圏を作り上げて行っちまった」

( ゚∀゚)「魔力を帯び、力をつけた竜族は、次第に脆弱な人間から離れ」

( ゚∀゚)「敵対するようになっちまったんだ」

( ^ω^)「ほお・・・」

( ^ω^)「おもしろい話だお」

( ゚∀゚)「モグモグ」


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:52:42.27 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「ジョルジュは博識だお」

( ゚∀゚)「なぁに、旅先で聞きかじった知識だよ」

( ^ω^)「戦闘も強いし・・・尊敬するお!」

(*゚∀゚)「はは、よせやい。――――魚、もう一匹もらうぜ」ハグバリバリ
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:54:19.76 ID:gseq5ON20

( ゚∀゚)「・・・まぁでも、確かにお前はずいぶん強くなったよ」

( ゚∀゚)「俺に敵わねえのはしょうがねえにしても」

( ゚∀゚)「あの辺のモンスターを相手に生還できりゃ、上出来さ」

( ^ω^)「へへ」

( ゚∀゚)「こりゃ、俺の指導も、もういらねえかもな」

( ^ω^)「お?」


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:55:31.21 ID:gseq5ON20

( ゚∀゚)「戦闘の基本はもう大体教えた。あとは基礎練でそのレベルを充実させて、
     剣術やお前なりのスタイルを磨いていきゃあいいさ」

( ^ω^)「おお・・・」

( ゚∀゚)「俺も、いつまでもこんなとこに留まってる訳にはいかねえからな」

( ^ω^)「何かする事があるのかお?」

( ゚∀゚)「まぁな」


ジョルジュは、魚の骨をブッと吐き出し、口を拭った。
立ち上がり、体をゴキゴキと鳴らす。
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:56:58.55 ID:gseq5ON20

( ゚∀゚)「俺は寝るぜ。見張り、頼むよ」

( ゚∀゚)「明日お前が、あの洞窟から生きて帰ってくりゃあ――――――」

( ゚∀゚)「俺の指導は終わりだ。卒業だよ」

( ^ω^)「・・・お」

( ゚∀゚)「最後だ、気を抜くなよ。んじゃ、また明日」


そっけないそぶりで、ジョルジュは、寝やすそうな場所に寝転んだ。
横になり、目を閉じた。
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 21:59:01.77 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「・・・・・・」

( ^ω^)(明日かお)

( ^ω^)(・・・・・・)

( ^ω^)(ジョルジュ、今まで世話になったお)

( ^ω^)(君の恩に報いる為にも――――――)

( ^ω^)(必ず、生きて帰ってくるお。みててくれお)


風が吹き、焚き火がパチパチと火の粉を巻き上げる。

魚の骨の食い残しを、野ネズミがさらっていった。
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:01:37.83 ID:gseq5ON20


( ^ω^)(・・・・・・)



洞窟の中を、慎重に、慎重に。
些細な音も聞き逃さないよう、耳をすます。

たいまつをゆっくりまわし、周囲に関心を払いながら進む。

なるべく、自分の足音は最小限になるようにして歩く。
洞窟内では、小さい音も反響して響くのだ。


苔むした洞窟内を、ゆっくり進んでゆく。

しとしとと、水が滴り落ちる。


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:02:50.31 ID:gseq5ON20

( ^ω^)(慎重に・・・集中するんだお)


大分、この洞窟の地理を覚えていた。
それでも完全には把握できていない。

しかし、今日という日で、この洞窟を制覇できるだろう。



ガツッ


( ^ω^)(!)


まほうつかい「ヒヒッ・・・」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:04:50.82 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「魔物かお」

まほうつかい「ヒィ・・・ヒャアッ!」


ブーンは、敵が動く前に、素早く切り込む。
剣撃が一閃する。魔物の肉を切り裂き、血が飛び散る。

まほうつかい「ギャッ・・・!」

まほうつかい《・・・シャアッ!》


魔物の手のひらに、炎熱が収束する。

ギラだ。

いつか、ドクオが使役した魔術と同じものだろう。


( ^ω^)「むっ!」


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:06:12.75 ID:gseq5ON20

ブーンは、身を屈め、上体を低くする。


まほうつかい「ヒャアッ」


閃光となり、魔物の腕から放出された。

しかし、それはブーンからは外れる。


ブーンは身を転じ、魔法をかわした。


(♯^ω^)「はぁッ!」スシャッ

まほうつかい「ぐ、げいっ・・・!」


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:07:09.67 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「・・・・・・」


ブーンは、剣を鞘にしまおうとする。

いや。


( ^ω^)「・・・・・・!」ピッ

その前に、剣を思い切り投げつけた。


ドロル「・・・・・・ォォ」ブシュッ


先ほどの魔物の放った魔法で、苔が燃えている。
その炎に照らし出され姿を現した魔物に、剣が突き刺さる。


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:08:27.82 ID:gseq5ON20

ドロル「・・・・・・」グジュッ・・・

( ^ω^)「ふぅ・・・」


ブーンは、剣を魔物から引き抜く。
ドロリと魔物の体液が滴り落ちた。


( ^ω^)「・・・あとで、剣を研がないといけないお」


ブーンは、先へ進んでゆく。
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:09:40.82 ID:gseq5ON20

( ゚∀゚)「・・・・・・」





( ゚∀゚)「・・・・・・」





( ゚∀゚)「!」


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:10:54.30 ID:gseq5ON20

( ^ω^)「ただいまだお」

( ゚∀゚)「おお」

( ゚∀゚)「どうだった?洞窟の中は」

( ^ω^)「快適だったお」

( ゚∀゚)「ハハハ、それだけ言えりゃあ上等だ」

( ^ω^)「・・・なんとか、生きてかえれたお」

( ゚∀゚)「うむ。・・・ん?それはなんだ?」

( ^ω^)「鉄の盾だお。洞窟で拾ったんだお」

( ゚∀゚)「へえ、なかなかサマになってるじゃねえか」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:12:19.56 ID:gseq5ON20

( ゚∀゚)「合格だ。もう、俺はお前に教える事はねえ」

( ゚∀゚)「あとは、自分の力のみで精進しな」

( ^ω^)「ジョルジュ・・・」


( ^ω^)「今まで、いろいろと世話になったお」

( ^ω^)「本当に・・・なんて言っていいのか・・・」

( ゚∀゚)「ふふ。いや、まぁ、俺もなんだかんだで楽しかったぜ。
     まさか、旅中に弟子を持つなんざ、思ってもみねえ」

( ^ω^)「ジョルジュ・・・これは、ほんの気持ちだお。
      こんな形でしか感謝を表せないけど・・・路銀の足しにでもしてくれお」


ブーンは、貨幣の入った袋を取り出した。
しかし、ジョルジュはそれを断る。


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:13:51.39 ID:gseq5ON20

( ゚∀゚)「ばか、そんなもんいらねえよ。そんな金があるなら、もっといい装備を買うこったな」

( ^ω^)「ジョルジュ・・・」

( ゚∀゚)「くっく・・・。あまり長くいると、感傷的になっちまって気持ち悪ぃや。
     こういうのは、苦手なんだ。俺はもういくぜ」

( ^ω^)「お・・・どこにいくんだお?」

( ゚∀゚)「そうだな・・・これからは、メルキドにでもいってみるか」

( ゚∀゚)「なんでも、あそこにゃあ魔物の襲撃から備える為の、
     秘密の武力兵器があるらしい。そいつを、拝んでみてえ」

( ^ω^)「そうなのかお」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:16:29.29 ID:gseq5ON20

( ゚∀゚)「ブーン」

( ゚∀゚)「またどっかで・・・」

( ゚∀゚)「・・・・・・」

( ゚∀゚)「会えるといいな」


( ^ω^)「だお!」



ジョルジュは去っていった。


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:17:42.80 ID:gseq5ON20

( ^ω^)(ジョルジュ・・・ありがとうだお)

( ^ω^)(またいつか――――――きっと会いたいお)


いや、会える。


なんとなく、そんな気がした。


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:18:45.47 ID:gseq5ON20

ブーンは、空を見上げる。相変わらず、薄暗い曇天。


風がいつにも増して強い。

しかし、不思議な暖かみが、胸の内に宿る。



ブーンも、旅支度を整える。

荷物を整理し、背負う。


ジョルジュとはまた違った方向へ、歩き出して行った。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:20:23.14 ID:gseq5ON20








78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:21:56.78 ID:gseq5ON20


『磯料理、タカオカ亭』



从; ゚∀从「あー忙しい忙しい!!」バタバタガチャガチャ

客「ハインちゃん、タコと根菜の二晩煮込み一つ!」

客「こっち、酒追加してくれぇ」

客「鰈のフライと、海藻とホタテのビネガー・オイルサラダ!」

从; ゚∀从「あ゛ーはいはい!今参りまーす!」ドタドタ

从; ゚∀从「ぐおおお!人手足りねえ!ちっきしょう!」


79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:23:17.60 ID:gseq5ON20

ガチャッ


从 ゚∀从「お、いらっしゃ・・・」

从 ゚∀从「!」


( ^ω^)「・・・ただいまだお」


从 ゚∀从「・・・おかえり」ニカッ



ガライの町一番の繁盛店の明かりは、その日、夜遅くまで灯された。



to be continue...!!
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 22:27:26.38 ID:gseq5ON20

( ^ω^)ブーンの今のステータス

LV11

どうのつるぎ
くさりかたびら
てつのたて


今回登場した敵

まほうつかい:魔力を有した人間が、魔物化したもの。呪文を使い、人間を襲う。
         知能は低くなったが、ある程度人語を理解し、旅人の会話などを盗み聞きする。

ドロル:粘性を帯びた魔物。大型のナメクジのような形をしているが、口内には鋭い牙も持つ。
     大抵の冒険者は、これを見たら、実力はどうあれ腰を抜かす。

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