- 6
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:14:18 ID:rb0n12DI0
25話
.
- 7
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:15:49 ID:rb0n12DI0
ガライの町から遠く離れ、潮風の匂いも恋しい。
渇いた砂混じり黄土色の風が、びゅうと音を立てて吹き付ける。
砂が目に入らないように気をつけて歩く。
( ^ω^)
.
- 9
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:18:17 ID:rb0n12DI0
今、ブーンはメルキドという国に向かう。
堅牢な軍事防衛力を持つ事から、“城塞都市”の名を冠する国だ。
やはり武器や戦用品を多く取り扱い、その質も高いという。
わざわざ危険を冒しても、この国に武器を仕入れにくるという国や商人は多い。
( ^ω^)「おっ・・・」
道中、遠くに岩山の洞窟が見えた。
懐かしい。
あのあたりで、ジョルジュと修行していた日々を思い出す。
.
- 10
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:19:34 ID:rb0n12DI0
今彼は、何処で何をしているのだろうか。
彼も修行の身だと言っていた。
きっとどこかで魔物を相手に、雄拳を奮(ふる)っているに違いない。
あの豪傑が、そこらで野たれ死んでいるなんて想像できない。
当時は、まるで歯が立たなかったが、今の自分ならどうだろう。
少しは近づけただろうか。
確かめてみたい気もする。
何のしがらみもなく、純粋に自分の力量を試してみたい。
そんな事を思うのは、自分が戦士として、
武人(もののふ)として生きてきたからなのだろうか。
.
- 11
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:20:43 ID:rb0n12DI0
旅立つ前の自分なら考えられない事だ。
とても、闘いの技量の研を競おうなどと。
だが。
( ゚∀゚)『ブーン、今日の練習はこいつだ』
( ^ω^)『木?これをどうするんだお』
森の中。ジョルジュは、一本の木をペシペシと叩く。
.
- 12
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:22:30 ID:rb0n12DI0
( ゚∀゚)『こいつを、どういう方法でもいい。ぶっ倒せ。
ただし、武器は使うな。素手で、だ』
( ;^ω^)『素手なんて無理に決まってるお』
( ゚∀゚)『出来る。俺が出来るんだから出来る』
( ^ω^)『人外規格のジョルジュと一緒にするなお』
( ゚∀゚)『いいか、ブーン。確かにお前は武器をもって闘うが』
( ゚∀゚)『自分の肉体さえ鋼の境地に達しさえすれば』
( ゚∀゚)『何ものをも打ち砕く最強の力が宿る・・・』
ス・・・
(♯゚∀゚)『せいああああッッ!!』 ドウッ!
.
- 13
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:23:38 ID:rb0n12DI0
ジョルジュは、ブーンに与えた木の4倍はある大樹に向かって拳を放つ。
凄まじい振動と共に、葉が散り行き、メキメキと倒れていった。
( ;゜ω゜)
( ゚∀゚)『武器よりも先に、まずは身体の錬磨だ。修行はそこから始まる』
( ゚∀゚)『・・・おっ!木にとまってた鳥が気絶して落ちてきたぞ!
やったぁ。後で、コイツうまいこと料理してくれ』
( ;゜ω゜)『はい』
.
- 14
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:25:33 ID:rb0n12DI0
( ;^ω^)「・・・・・・」
とてもじゃないが、あの鉄人にはまだ敵う気がしない。
稽古をつけて貰った時代も、彼は一度も本気を出さなかった。
いったい彼は、どこであんな武力を身につけたのだろう。
だが、いつか追いついてみせると剣に誓う。
ジョルジュにも、モナーにも。 竜王にも。
.
- 15
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:26:21 ID:rb0n12DI0
( ^ω^)「お・・・・・・」
砂塵が多くなってきた。
ここから先は、砂漠地帯に突入する。
出て来る敵も、屈強な魔物ばかり。
用心しなければならない。
.
- 16
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:27:09 ID:rb0n12DI0
( ^ω^)「ふぅ」
( ^ω^)「それにしても、メルキドはまでの道のりは遠いお」
(::::( ^ω^)「そろそろここらで休
跳んだ。
背後に殺気を感じて、考えるより先に、足が瞬間的に地を蹴った。
砂埃が派手に舞う。
(♯^ω^)))「ふっ・・・!」ザリザリ
かげのきし「ヴォォォォ・・・・・・」
.
- 17
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:28:36 ID:rb0n12DI0
魔物だ。全身が真っ黒・・・というよりは、影にぼやける様な姿。
こちらにじりじりと、躙(にじ)りよって来る。
(♯^ω^)「おおッッ!!」ザヒュッ
かげのきし「フォォォァ・・・・・・」シュッ
(♯^ω^)「シッ!!」シャウッ
かげのきし「ォォォォ・・・・・・」ヒュン
ブーンの鋭い連撃を、奇妙な動きでスラリと躱す。
相当素早い敵だ。警戒の念を強める。
.
- 18
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:29:43 ID:rb0n12DI0
( ^ω^)「・・・・・・」
かげのきし「シュァォォォォ」
「ォォォォォォ」
( ;゜ω゜)「!!」
魔物が、煙のように消えた。
そして、背中に熱のような痛みが走る。
背後から攻撃されたようだ。
(( ; ω )「グおッ・・・!」
かげのきし「・・・ーラ・・・ォォ」
.
- 19
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:30:35 ID:rb0n12DI0
どうやら、この魔物は煙のように消え、相手の死角から攻撃してくるようだ。
(♯^ω^)「だったら・・・」
少しずつ、間合いを詰める。
そして剣を振りかざした。
「ゥぅぅォォ・・・」
目の前から消えた。今だ。
.
- 20
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:31:43 ID:rb0n12DI0
(♯^ω^)「ふおおおおッッ!!」
そのまま、切り掛かった慣性のまま、
回転して背後に斬撃を繰り出す。
かげのきし「ギシュォォォォオオ・・・・・・!」
手応えあり。
魔物は胴から寸断され、地に落ちる。
二つになったそれは、ブスブスと燻り消えてゆく。
.
- 21
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:32:58 ID:rb0n12DI0
( ;^ω^)「ぐ・・・・・・」
背中を切られた。
戦闘には勝ったが、思ったより傷が深い。
剣を振るえなくは無いが、万全の状態とは言い難い。
背中は包帯がしにくいので、難儀する。
薬草を貼り、その上から巻いてゆく。
そろそろ辺りも暗くなってきた。
砂丘では、外敵から身を隠せる様な場所がない。
それなりに負傷している今、
血の匂いに引きつられた魔物の相手はしたくはなかった。
どうするか。
.
- 22
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:34:01 ID:rb0n12DI0
( ^ω^)「・・・・・・そうだお」
( ^ω^)「確かこの近くに、魔物の襲撃によって滅ぼされた町があったはずだお」
( ^ω^)「そこに行ってみるかお・・・」
少なくとも、この砂漠のど真ん中よりは、身を隠す場所はあるだろう。
もしかしたら廃屋などで風を凌いで一晩を過ごせるかもしれない。
そうなれば儲けたものだ。
( ^ω^)「もうちょっと頑張って、そこまで歩くかお」
( ^ω^)「確か、町の名は・・・」
ブーンは、ガサガサとひしゃげた古い地図を取り出す。
( ^ω^)「 ドムドーラ 」
.
- 23
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:35:52 ID:rb0n12DI0
日は、完全に沈んだ。
辺りは暗く、風の荒ぶる音だけが耳につく。
即席のたいまつに火打石で火を灯し、進む。
( ^ω^)「見えたお」
廃墟が見えた。
意味を為さなくなった門をくぐり、町の中へ入る。
.
- 24
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:37:03 ID:rb0n12DI0
( ^ω^)「・・・・・・」
荒廃し、人々の記憶の残骸が散らばる。
そこら中に、人とも獣とも知れぬ骨が転がっていた。
地は濁り、毒のたまりができ、異臭を放つ。
竜王の悪しき魔力だ。
これまでに、いくつもの国や町村が竜王軍によって滅ぼされてきた。
最近、魔物の襲撃が顕著になっている。
ラダトーム、リムルダール、メルキドの三国戦争は記憶に新しい。
現存する国々も、常に恐怖に脅かされている。
ここには、悲しみが風にのって流れているのだと、ブーンは思った。
.
- 26
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:39:16 ID:rb0n12DI0
( ^ω^)「どうやら、ここで一夜を明かせそうだお」
ブーンは、他の家と比べ大きな、一軒の廃屋を選び、中に入る。
部屋に張り巡らされる大量のクモの巣に、目を丸くする。
棒で払い、通りをよくしよう。
埃っぽいので、少しでもと換気の為に窓を開けた。
部屋に埃をかぶった肖像画が飾られている。
埃を払うと、壮年の男と、近い年齢の女性。
それと小さな少女が描かれていた。
恐らくこの家の元の持ち主の家族だろう。
その近くに、三人分ほどの人骨がそこかしこに散乱しているのに気付く。
.
- 27
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:40:40 ID:rb0n12DI0
クローゼットがあったので、その中に荷物を隠して、一息つく。
( ^ω^)「ちょっと歩いて何か使えそうなものや、
食べられそうな物でも探してみるかお」
体の埃や泥を払い、家屋を出た。
ブーンはフラリと町を探索する。
無論、武器の携帯は忘れない。
探すと言っても、金目の物などは恐らく、もう無いだろう。
滅ぼされてから数年の間にも、
ここを訪れた旅団や商人がいたはずだ。
自分が探すのは、もっと実用的で旅道具として使える様な些細なものでいい。
.
- 28
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:41:45 ID:rb0n12DI0
それにしても、路銀を入れた財布を無くしてしまったのは痛い。
これから行くメルキドで、十分な装備を整えようと思っていた矢先だ。
メルキドの武器は質が高い事で名を馳せるが、
その分値段も高くつくと聞く。
自分の持ち合わせでは足りないかもしれない。
いや、どう考えても足りない。
だが、まあそれは行ってから考える事にする。
今はまず、生きてメルキドに辿り着く事が先決だ。
それに気を配ろう。
.
- 29
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:43:32 ID:rb0n12DI0
( ^ω^)(!)
何かの気配を感じる。
それも、これは恐らく魔物の。
ブーンは、たいまつの火を消した。
普通の動物と竜王の魔力を帯びた魔物とでは、気配が違う。
魔物特有の臭いがあるのだ。
熟練してくると、どんなタイプの魔物かも嗅ぎ分ける事ができるという。
目に見える範囲では、脅威の存在は見当たらない。
つまり、かなり離れた場所から瘴気を放っているという事だ。
.
- 30
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:44:32 ID:rb0n12DI0
( ^ω^)(この魔物の尖った様な気配・・・)
( ^ω^)(これは並の魔物じゃないお)
肌で感じる気配から、敵の危険度を伺い知る。
( ;^ω^)(これは・・・まずったかお)
( ;^ω^)(敵がこっちの存在に気付いていないならば・・・このまま引き返すお)
( ;^ω^)(だけどもし気付かれていたら)
( ;^ω^)(そしてある程度知能の高い魔物だったら・・・)
( ;^ω^)(尾けられて・・・拠点、寝静まった頃に襲われるなんて事もある)
( ;^ω^)(出歩いたのは失敗・・・かお?)
.
- 31
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:45:56 ID:rb0n12DI0
自分が魔物の気配を感ずるように、
相手も自分の存在を認識している可能性はある。
ましてや、レベルの高い魔物であるならその確率も高い。
ズチャ・・・
ズチャ・・・
( ;゜ω゜)
いる。
.
- 32
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:46:50 ID:rb0n12DI0
自分と、損壊した家屋を一つ隔てた先に、死角で見えない位置に。
肌で感じる魔の気配に、ブーンの心はぶるりと揺れる。
強い。
近づくにつれ、脳内で相手の強大さを修正し、理解してゆく。
ズチャ・・・
ズチャ・・・
.
- 33
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:47:54 ID:rb0n12DI0
敵の力量を見定める感性は、冒険において非常に重要である。
過去、魔物を目前にして鳥肌が立つ程の戦慄を、二度経験している。
洞窟のドラゴン。
それに、リムルダームの魔鳥。
今、それに近しいレベルの“魔”が全身を撫でる。
ズチャ・・・
ズチャ・・・
.
- 34
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:49:00 ID:rb0n12DI0
果たして、こちらの存在を察知しているか。
どうする。
走って逃げるか。
ならぬ。
位置を、存在を完璧に気取られる。
自分の足は速いが、傷の痛みを抱えては迅速に走れない。
人外野生の走力を前に、それはいかにも厳しい。
ズチャ・・・・・・
( ;゜ω゜)(・・・・・・)
握り込む剣の柄に、汗が滲む。
鼓動が、高まる。
.
- 35
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:50:25 ID:rb0n12DI0
いつしか、風は止んでいた。
凍り付く静寂。
目は、闇に慣れた。
.
- 36
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:52:04 ID:rb0n12DI0
あくまのきし「 ゴアがぉオオォオおおおおぉおxオオぉぉッッ!! 」
(( ;゜ω゜))「うおおおおおおおッッ!!!!」
石壁をぶち抜いて、錆び付いた鎧の巨体が飛び出してくる。
瞬間躱し、巻き上がる砂埃の中、横転する。
.
- 37
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:53:04 ID:rb0n12DI0
あくまのきし「・・・エセエエエエエエエッッ」
魔物は、巨大な斧を振り回す。
((( ; ω )「くっ!!」ドガァッ
盾で斧を受け、軌道をずらす。
途轍も無い衝撃で、肘が外れそうになった。
受け流し、方向の逸れた斧は、たやすく家屋の煉瓦を粉砕する。
.
- 39
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:54:21 ID:rb0n12DI0
( ;^ω^)「おッ・・・おお・・・」
あんな一撃をまともに食らえば、ただでは済まない。
だがこうして相対してしまった今、避けるばかりでは勝つ事は出来ない。
(♯^ω^)「ハアアああおッッ!!」ドヒュッ シュバッ
負けじと、剣撃を繰り出す。
あくまのきし「クアアアアアアアアアッッ」ガギッ ガキッ
大きな斧を薙いで払ってくる。
敵も武器の扱いは慣れているようだ。
力では敵。 だが技量と疾さでは、こちらが勝るか。
.
- 40
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:55:55 ID:rb0n12DI0
凄絶な打ち合いで、互いの交錯の度に火花が散る。
一合、二合。三合。
四合。五合、六合。
(♯^ω^)「うおおおおッッ・・・・・・!!」
互角に斬り結んでゆくが・・・
腕に痺れと疲労が蓄積する。
背の傷も開いたようだ。流血と痛みを感じる。
長引けば、不利。
.
- 41
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:57:05 ID:rb0n12DI0
あくまのきし「ヨロイヲ・・・・・・カエセ・・・」
(♯^ω^)(・・・・・・?)
(♯^ω^)(なんだおコイツ・・・ヨロイ・・・鎧を返せ・・・?)
あくまのきし「ロトノゆうしゃアアアアアアアアアア」
(♯^ω^)「・・・・・・っッ!?」
と、その時。
バキャッ!!
(( ;゜ω゜)「お・・・・・・ッッ!!?」
.
- 42
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 21:58:05 ID:rb0n12DI0
剣が、砕けた。
豪撃を受け続け、振るい方を過ったか。
刃が根元から折れ、柄にも皹(ひび)が入る。
もう剣としての役割は成さない。
.
- 44
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:03:31 ID:rb0n12DI0
( ;゜ω゜)(ば・・・馬鹿な・・・っ)
武器を失った。 血の気が引き、汗が一気に湧く。
あくまのきし「・・・・・・・・・」 ズチャッ・・・
敵は距離を詰めてくる。
あくまのきし「ヨロイをカエセ・・・・・・」
( ;゜ω゜)
.
- 45
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:04:35 ID:rb0n12DI0
( ;^ω^)『ジョルジュ、やっぱり厳しいお!』
( ^ω^)『こんな木を素手で倒すなんて』
( ^ω^)『何年叩いても倒れる気がしないお』
( ゚∀゚)『いいんだよ。そうやって木を打ち続ける事自体が修行なんだから』
( ^ω^)『もう拳が擦り切れ、まめも潰れて血だらけ。
腫れ上がってボロボロだお』
( ゚∀゚)『泣き言ばっかいうんじゃねー、このタコ!』
ドゴン
( ;゜ω゜)『あだぉ!!』
( ゚∀゚)『いいか、いったろ。まずは己の肉体を武器にするんだ』
( ゚∀゚)『柔らかい拳も、酷使し鍛え上げればいつか鋼の強度を得る』
.
- 46
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:05:59 ID:rb0n12DI0
( ゚∀゚)『もしお前が戦いで武器を奪われちまったとき』
( ゚∀゚)『そうなると頼れるのはお前の身一つなんだぜ』
( ゚∀゚)『長い事、戦場に身を置くなら、そんな事はザラにあるだろうさ』
( ^ω^)『おお・・・』
( ゚∀゚)『もし俺との修行が終わっても』
( ゚∀゚)『身体の鍛錬は怠っちゃいけねーぜ』
( ゚∀゚)『毎日毎日、石や木を叩くんだ。いいな?』
( ^ω^)『わかったお!』
.
- 47
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:07:16 ID:rb0n12DI0
( ; ω )
やる。やるしかない。
素手で、この化け物と闘うしかない。
あれから、ジョルジュの教えの通り、
たゆまず拳足の錬磨を続けてきた。
やれる。やれる。
ブーンは身構える。
あくまのきし「ヴォオオオオオオォッ!!」
(♯゜ω゜)「フオオオオおッッ!!」
.
- 48
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:08:20 ID:rb0n12DI0
魔物の熾烈な斧撃が繰り出される。
が、あえて前に突進していった。
あくまのきし「ゴグッ!!?」
(♯ ω )「おおおおっっ・・・!」
斧を躱し、そのまま体当たり、一緒に地面に倒れ込んだ。
敵の体に馬乗りになる。
(♯゜ω゜)「くらえおッッ!!」
.
- 50
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:10:03 ID:rb0n12DI0
左手で敵の斧を持つ腕を押さえつけ、
右手を思い切り顔面を殴りつける。
腕力は魔物の方があれど、馬乗りで押さえつけた状態ではブーンが勝る。
あくまのきし「グゴッ・・・、グアアアア」
(((♯^ω^))つ「ああああああああっ!!」
ドゴッ バゴン バキャッ ズドッ
乱打の重い音が響く。
ブーンの拳から血がほとばしり、骨が見える。
だが、殴るのは止めない。
痛み等考えている暇は無い。
敵の鎧が、兜が、少しずつ変形し、皹入り、砕けていく。
.
- 51
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:11:12 ID:rb0n12DI0
あくまのきし「ウがアアアアっっ!!」
バキッ
((♯;゜ω゜)「うおっ・・・・・・!」
グラ
敵の拳を頬に喰らう。
歯のいくつかが欠ける感触。
魔物の渾身の力で、身をよじる。
体勢が崩れ、馬乗りの姿勢から離れた。
双方瞬時に起き上がり、身構える。
口元に血が滲んだ。
.
- 52
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:12:31 ID:rb0n12DI0
(メ; ω )(ち・・・)
(メ; ω )(あのまま、決めてしまいたかったお・・・!)
あくまのきし「・・・・・・よろいヲ・・・カエセ・・・・・・」
(メ;^ω^)「・・・・・・」
この魔物は何を言っているのか。
先ほど、ロトの勇者と言っただろうか。
(メ;^ω^)(は・・・そういえば)
以前、勇者の情報の聞き込みをしている時の事を思い出す。
.
- 53
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:13:52 ID:rb0n12DI0
('_L')『ロトの勇者ですが・・・彼は、それはそれは立派な鎧をお持ちでしたよ。
私も間近にみせてもらいました』
('_L')『あの伝説のロトが身につけていたという、そりゃあもう伝説の鎧だとか』
( ^ω^)『へえ』
('_L')『なんでも、とある没落した廃街で見つけたらしいんですが・・・』
('_L')『そこで強力な魔物と死闘を繰り広げたそうです』
('_L')『倒してみると、魔物がいた場所に、その鎧があった』
('_L')『魔物が鎧を守護していたんですね』
( ^ω^)『伝説の鎧かお・・・かっこいい響きだお!』
(´・ω・`)『へえー、すごいね。 マスター、もう一杯』
('_L')『ショボンさん。アンタもう、飲み過ぎでしょ』
.
- 54
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:14:43 ID:rb0n12DI0
(メ;^ω^)(そういう事かお・・・)
(メ;^ω^)(ロトの勇者は、ここで伝説の防具を見つけたんだお)
(メ;^ω^)(おそらくこの魔物は、竜王の命で鎧を見張っていた)
(メ;^ω^)(だけど、モナーはそれを打ち破り、見事鎧を手にしたんだお)
(メ;^ω^)(しかしそれから数年の内・・・)
(メ;^ω^)(世界に蔓延する竜王の魔力により、“守護者”は蘇った)
(メ;^ω^)(鎧だけは失われたまま・・・)
(メ;^ω^)(だからこの魔物は、鎧に執着するんだお)
.
- 55
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:15:45 ID:rb0n12DI0
あくまのきし「ヨ・ロ・イ・ヲカエエエエセエエ・・・・・・!」
(メ ^ω^)「・・・生憎だお。ブーンはそんな大層な鎧は持ってないお」
あくまのきし「シャガアアアアアア」
斬撃を躱す。
いや、躱しきれない。
敵が斧を振るうたび、鮮血が散る。
だが、肉は斬られるが、骨は断たれず。
魂は、折られず。
.
- 56
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:17:10 ID:rb0n12DI0
魔物は、斧を振り上げる。
(メ ω )「武器がなくとも・・・ 伝説の装備なんか無くとも・・・
ロトの血なんか流れていなくとも・・・!」
あくまのきし「ガアアアアアアアアアアアアアアアアア」
(♯゜ω゜)づ「ブーンは・・・・・・すべてを超えてやるんだおおおおおおッッ!!!!」
放たれた斧に、完璧にタイミングを合わせる。
刃の真横から拳をあてる。
巨大な斧が、砕けた。
.
- 57
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:19:49 ID:rb0n12DI0
あくまのきし「・・・・・・ッッ!!?」
((♯゜ω゜)づ 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」 ドドドドドドドドドド!!!!
ジョルジュ直伝、拳足の連撃。
魔物の体は次第に破壊され・・・そして――――――
あくまのきし「ゴ・・・・・・ハ・・・・・・・」
遂に沈黙。
顔面にとどめの一撃を浴びせた瞬間、
全体の鎧がガラリと崩れた。
鎧の中身がさらさらと砂になり、風にのって飛んでいく。
.
- 59
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:21:12 ID:rb0n12DI0
(メ; ω )「か・・・・・・ ハァッ・・・! はぁっ・・・!」
(メ; ω )「う・・・」
(メ; ω )「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
深淵の闇の中で、勝利の咆哮を放つ。
立ち尽くすブーンの体から、熱と蒸気がほとばしる様に。
呼吸も荒ぶり、白い吐息が宙に消える。
.
- 60
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:22:03 ID:rb0n12DI0
(メ ω )(ジョルジュ・・・君との日々で・・・ブーンは確実に強くなれたお)
(メ^ω^)「君のおかげで・・・」
(メ^ω^)「ブーンは今、ここに生(い)るお」
この幽暗の空を、何処かでジョルジュも見上げているだろうか。
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- 61
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:23:01 ID:rb0n12DI0
翌朝。ブーンは廃墟で火を起こす。
(メ ^ω^) パチパチ・・ 焚火
捕まえたトカゲを串に刺し、炙る。
トカゲの肉は、意外と旨い。
精もつくので、英気回復にちょうどいい。
相変わらず、曇天に今日も風が強く吹き曝(さら)す。
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- 62
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:24:19 ID:rb0n12DI0
(メ ^ω^)「トカゲうめーお」
(メ ^ω^)「尻尾を焦がしてカリカリにするのが旨いんだお」
(メ ^ω^)「あち・・・ふぅ」
これからブーンは、武具を求めて異国の地へ向かう。
だが、冒険に本当に必要な物とは、上等の武器だけではない。
己自身の、肉体と意志の、確固たる強さだ。
ブーンは今、本当の戦士としての真の力を、手に入れつつあるのか。
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- 63
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:25:50 ID:rb0n12DI0
(メ ^ω^)「さて・・・・・・」
(メ ^ω^)「いくかお」
火を消し、荷をかつぐ。
一晩世話になった家に、一礼する。
(メ ^ω^)「必ず、貴方達の仇を・・・とってみせるお」
家にあった骨を三人分寄り添うようにまとめて、その上から布をかぶせた。
部屋の肖像画の家族達が、微笑んだ様な気がした。
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- 64
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:30:23 ID:rb0n12DI0
いつか、この街に新たな命と、活気が戻る様に祈る。
(メ ^ω^)
そしてまた、荒涼なる大地へと踏み出していく。
無限の絶望がひしめく、このアレフガルドに。
傷つきながらも、震える事の無い足取りで。
自信に満ちた、精悍な顔つきで。
to be continued...!!
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- 72
名前:名も無きAAのようです:2011/08/10(水) 22:42:17 ID:rb0n12DI0
( ^ω^)ブーンの今のステータス
LV22
はがねのよろい
てつのたて
今回登場した敵
かげのきし:死人の魂にのみ、竜王の魔力が吸着した。
実体がなく、煙のように移動するので、それを捉えるのは困難である。
核となる魂の部分のみを正確に斬らなければ倒せない。
あくまのきし:伝説のロトの勇者の防具、“ロトの鎧”を守っていた魔物。
だが数年前にモナーに破れ、その後また魔力により復活した。
自身も鎧を装備しており、大きな斧を振るい攻撃してくる。
今回ブーンに完膚なきまでに壊されたので、また蘇る事は無いだろう。
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