- 288 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 20:54:56 ID:ZFVLZoXo0
第24話
.
- 290 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 20:58:57 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)
ブーンは、ほの暗い地下室を下りてゆく。
埃っぽい、渇いた石壁の匂いがする。
そして、時代ありげな鉄の扉に突き当たった。
扉を叩くと、ぱらぱらと砂が落ちる。
中から入室を促す声がした。開けて入る。
.
- 291 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:01:12 ID:ZFVLZoXo0
爪゚A゚)「誰じゃ?」
暗い部屋に、ランプの明かりがふわりと灯る。
一人の老人がいた。
( ^ω^)「すいませんお。旅の者ですが」
爪゚A゚)「こんな所に何用じゃな?」
( ^ω^)「突然の訪問、相済みませんお」
( ^ω^)「あなたは・・・“三人の賢者”の末裔の方ではありませんでしょうか?」
爪゚A゚)「ぬぬ、いかにも」
爪゚A゚)「ということは、主もロトの勇者の足跡をおっている冒険者じゃな」
( ^ω^)「そうですお」
.
- 292 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:03:37 ID:ZFVLZoXo0
爪゚A゚)「よくここが解ったの。なかなか人目につかないこの場所を」
( ^ω^)「かなり探しましたお。人づての情報を集めて・・・」
( ^ω^)「まさか、ラダトーム城の裏の地下のこんな場所にお住まいとは」
爪゚A゚)「それは御苦労じゃったな。何も無いが、ニラ茶でも入れよう」
( ^ω^)「ありがとうございますお!」
ブーンは荷物を下ろし、椅子に腰をかけた。
.
- 293 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:06:25 ID:ZFVLZoXo0
爪゚A゚)「わしは、ぬー という。お主は?」
( ^ω^)「僕はブーンという者ですお」
爪゚A゚)「ブーン・・・?もしや」
爪゚A゚)「あいや、お主がラダトームの姫君を救い出したという戦士か!」
( ^ω^)「いろいろなものに助けられて・・・なんとか、ですお」
爪゚A゚)「そうかそうか、あの噂の戦士であったか」
爪゚A゚)「風聞(ふうぶん)に疎いこのわしでも、お主の活躍は耳にしておったわぃ」
茶をすすり、ぬーが高い声を上げる。
.
- 294 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:08:09 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)「いえいえ・・・それより」
( ^ω^)「ぬーさんがお守りになられて来たのは、“太陽の石”で間違いないですかお?」
爪゚A゚)「うむ、そうじゃ」
爪゚A゚)「その調子じゃと、他の賢者達のもとにも訪れたようじゃな」
( ^ω^)「ええ・・・」
( ^ω^)「太陽の石は、ロトの勇者に託されたと聞きますが・・・
それはまだ、今もここに残りがあったりしますかお?」
爪゚A゚)「・・・・・・」
ぬーは、部屋の奥にかえし、物品をガサガサと漁る。
そして大きな棚をどかそうとした。
.
- 295 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:10:14 ID:ZFVLZoXo0
爪;゚A゚)A 「ふひーー!!ちょっと、手伝ってくれんかの」
( ;^ω^)「は、はい。大丈夫ですかお?」
ブーンが力を添えると、棚は簡単に動く。
棚のもとあった位置の下には、土。
それを少しばかり掘り返すと、中から古びた壷がでてきた。
爪゚A゚)「この中に・・・太陽の石がある」
( ^ω^)「・・・・・・」
ぬーが、蓋を開け、中に手を伸ばす。
.
- 296 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:11:27 ID:ZFVLZoXo0
爪゚A゚)「・・・・・・」
( ^ω^)「・・・・・・」
爪゚A゚)「これじゃ!」
( ^ω^)「おおっ、これが!」
キラキラと黄金色の光を放ち、煌めく石。 だが。
( ^ω^)「・・・・・・小さいですおね」
爪゚A゚)「・・・・・・うむ、ちいさい」
それは、小指の爪程の大きさしかなかった。
ぬーはそれを、大事そうに机の上に置く。
.
- 297 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:12:26 ID:ZFVLZoXo0
爪゚A゚)「ロトの勇者に渡した石は、これの十倍ほどは大きかったが・・・」
爪゚A゚)「なにせ、残りはこれっぽっちの欠片しか残っておらん」
( ^ω^)「・・・このサイズで、果たして大丈夫なんでしょうか・・・?」
爪゚A゚)「それはわしにも解らん。
“橋渡し”の方法を知る賢者であれば解ろうが・・・ううむ」
( ^ω^)「づーさんかお・・・」
.
- 298 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:14:53 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)「ですが、これだけしか残ってない以上仕方ないですお・・・ぬーさん」
( ^ω^)「この残りの太陽の石・・・頂いても良いですかお?」
( ^ω^)「きっと自分が、ロトの勇者の後継を追ってみせますお!」
( ^ω^)「どうか、ブーンにこの石を預けてくださいお!」
爪゚A゚)「うむ。お主が、あの姫を救い出した剛胆の者であれば、
もはや希望はお主しかおらん」
爪゚A゚)「遠慮なく、持っていくがいい。
ロトの勇者に石を渡した事で、わしの使命は終えた訳じゃしな」
爪゚A゚)「ロトの勇者にかわり、再び人類の剣となってみせよ、ブーン!」
( ^ω^)「ありがとうございますお!」
.
- 299 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:17:58 ID:ZFVLZoXo0
ブーンは、ぬーに礼を言い、地下から出る。
埃っぽい地下にいたので、外の清新な空気で呼吸が洗われる。
( ^ω^)「これで・・・魔の島に渡る方法を手に入れたお・・・」
( ^ω^)「あとは、これをもってづーさんに会いにいけば」
( ^ω^)「竜王のもとへ到達できる・・・」
( ^ω^)「だけど・・・」
本当に、いいのか?
.
- 300 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:19:23 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)
“今”の自分で竜王に挑んだとして・・・果たして勝算はあるだろうか。
少なくとも現時点の実力で、ロトの勇者を超えていなければ、
竜王に勝つなど夢のまた夢。
宿敵は、勇者モナーが闘ったときよりもさらに力を蓄えているのだ。
今の自分で・・・本当に大丈夫だろうか?
.
- 301 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:20:10 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)(・・・・・・)
冷たい風が、ざあと吹いた。
並木の葉が散りゆき、哀愁を誘う。
ラダトームの城下町へ、ふらりと足が向いた。
.
- 302 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:21:51 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)
先日、魔物の襲撃を受けたラダトーム。
民家や建造物のあちこちが破壊されていた。
それを立て直す為に住人達が協力して働いている。
皆、苦しみの中、懸命に生き抜こうとしている。
.
- 303 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:22:57 ID:ZFVLZoXo0
気がつけば、自分のもとの家の前まで来ていた。
今は、違う人間が住んでいるのだろう。
窓から、中に人がいるのが見えた。
笑いながら談笑している。
悲惨な目に合いながらも、食いしばり必死で生きようとする人々がいる。
それを守る力が、今の自分にあるか。 解らない。
正義感に突き動かされ、ここまでやってきた。
最終的な目標をいざ目の前にして、ブーンの心に迷いが生まれた。
.
- 304 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:24:32 ID:ZFVLZoXo0
墓地にやって来ていた。
母と、ギコと、しぃが眠る。
この3つの墓は隣り合わせにあった。
( ^ω^)「ギコ・・・」
( ^ω^)「お前の意思を継いで、ここまできたお」
( ^ω^)「ブーンは、やれるかお?」
.
- 305 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:25:40 ID:ZFVLZoXo0
(,,゚Д゚) お前ならやれるさ ブーン
( ^ω^)「そうかお」
(,,゚Д゚) なんだい 弱気になっちまったのか 臆病風が吹いてるのか
( ^ω^)「そうじゃないお・・・ただ・・・今の自分の力で竜王を倒せるのか」
(,,゚Д゚) なら、倒せると思えるようになるまで、力をつけりゃいいじゃないか
( ^ω^)「・・・・・・」
.
- 306 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:27:12 ID:ZFVLZoXo0
(*゚ー゚) そうよ ブーン
( ^ω^)「しぃさん」
(*゚ー゚) あなたがこれまでしてきた努力が、決して伝説の勇者にも劣るとは思わないわ
( ^ω^)「そう、かお」
(*゚ー゚) もう少し もう少しだけ、積み重ねればいいのよ
( ^ω^)
.
- 307 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:28:27 ID:ZFVLZoXo0
J( 'ー`)し あなたならできるわ ブーン
( ^ω^)「カーチャン」
J( 'ー`)し 自分を信じて 真っすぐその道を歩みなさい
( ^ω^)
J( 'ー`)し あなたは私の いえ私たちの 人類の すべての人々の
J( 'ー`)し 希望です
( ^ω^)
.
- 308 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:30:00 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)
墓石の前に立ち、幻をみた。
だが、この心に残るものは決して夢幻などではない。
ふつふつと湧き起こる、以前よりも確かで揺るぎない闘志は。
.
- 309 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:30:47 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)「ギコ。しぃさん。カーチャン」
( ^ω^)「ありがとう」
( ^ω^)「ブーンはやるお」
( ^ω^)「どんな困難や壁が立ちはだかっても」
( ^ω^)「絶対に、竜王を」
( ^ω^)「倒してみせるお」
冷たい木枯らしが吹いた。
渇いた葉塵が風に乗り、宙に消えてゆく。
.
- 311 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:32:07 ID:ZFVLZoXo0
ガライの町 『 磯料理、タカオカ亭 』
从 ゚∀从「ふぅ・・・客がはけた」
从 ゚∀从「やっと昼時を終えて一段落ついたな」
ギイィッ・・・
从 ゚∀从「お、いらっしゃい・・・」
.
- 312 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:33:24 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)「こんにちは、ですお」
从 ゚∀从「おっ・・・ブーン!!」
从 ゚∀从「しばらくだねえ!どうやら、まだ元気に冒険は続けられてるみたいだね」
( ^ω^)「おかげさまですお」
从 ゚∀从「何の用事で、この町に?」
( ^ω^)「いや・・・特に、意味は無いんですけども」
( ^ω^)「ハインさんの料理が食べたくなっちゃって」
从 ゚∀从「嬉しい事いってくれるじゃない」
.
- 313 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:34:38 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)「それとコレ・・・道中の山でとってきた鴨ですお。お土産で」
从 ゚∀从「マガモかぁ。さすが血抜きも上手い具合にしてあるね。
こいつぁいい、料理したげるよ」
从 ゚∀从「それにしてもアンタ・・・」
从 ゚∀从「見るたんびに、こう何と言うか・・・雰囲気が変わってくね」
( ^ω^)「お・・・そうですかお?」
从 ゚∀从「うん、なんか、ゴツゴツって感じ」
( ;^ω^)「ゴツゴツ」
从 ゚∀从「なんていうのかな。渋い強い男みたいな」
( ;^ω^)「渋い強い男()」
从; ゚∀从「ごめん。あんまり口が上手い方じゃないんだ」
.
- 315 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:36:21 ID:ZFVLZoXo0
牙獣との競り合いで、生傷が増える。
冷たい吹きさらしで、皮膚は硬くなり。
筋骨は、以前にも増して隆々とす。
そして、数多の戦闘の中で研ぎ澄まされた、
ブーンの警戒心、精神力が醸し出す雰囲気。
心体ともに研鑽が積まれたブーンには、もはや一分の隙も無い。
初めてこの町に寄った頃のブーンとは、比肩するべくも無い。
見る人には、まるで別人かのように思える程だろう。
.
- 316 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:37:36 ID:ZFVLZoXo0
从 ゚∀从「じゃあ、早速料理していいかい?」
( ^ω^)「もちろんですお!ハインさんの料理を楽しみにして来ましたお!」
从 ゚∀从「おお、おお」
从 ゚∀从「待ってな。すぐ作っちゃるよ」ガチャガチャ
从 ゚∀从「そういや、旅の調子はどうなんだい?」ジャー
( ^ω^)
( ^ω^)「・・・竜王のもとへ、辿り着く方法を見つけましたお」
从 ゚∀从「!!」
.
- 318 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:40:12 ID:ZFVLZoXo0
从 ゚∀从 パリパリ
( ^ω^)
从 ゚∀从「死んじゃうぜ」サクサクサク
( ^ω^)「死にませんお」
从 ゚∀从 シャクシャク
( ^ω^)
从 ゚∀从 トントントン
( ^ω^)「生きて、帰ってきますお。ここに」
从 ゚∀从
.
- 319 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:41:29 ID:ZFVLZoXo0
从 ゚∀从「ブーン」
( ^ω^)「ハインさん・・・約束通りブーンが生きて帰ってきたら」
从 ゚∀从
( ^ω^)「この店で、働かせて下さいお。いいですかお?」
从 ゚∀从
从 ゚∀从「もちろんさ!」
( ^ω^)「おっおっ」
从 ゚∀从「そんときゃ、徹底的にウチの店の味を叩き込んでやるからね」
从 ゚∀从「にひひっ」サクサクトントン
( ^ω^)
.
- 321 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:43:44 ID:ZFVLZoXo0
包丁が、まな板を叩く音。
店全体に漂う芳香。
窓から見える海。
ハインの、料理している姿。
それらのすべてが、ブーンの心を落ち着けてゆく。
ここに居るときは、存在そのものが穏やかになるような、そんな感覚に。
.
- 322 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:44:56 ID:ZFVLZoXo0
从 ゚∀从「はいよ・・・完成っと」
( ^ω^)「待ってましたお!」
从 ゚∀从「海老と貝類の揚げ物トマト風煮」
从 ゚∀从「鮪のステーキ、玉ねぎとチーズのソース」
从 ゚∀从「それとシンプルに、鴨肉のソテー白ワサビ添え」
(*^ω^)「うひょーーーー美味そーだお!」
从 ゚∀从「フフ、ブーンの好みっぽい料理をつくったつもりだよ!」
(*^ω^)「ありがとうございますお! いっただきますだお!」
.
- 323 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:47:09 ID:ZFVLZoXo0
久しく離れていたタカオカ亭の味。
噛み締めるごとに、感慨深い。
懐かしき美味で涙が溢れそうになる。
( ;゜ω゜)「うめえええええええええ」
新鮮な魚介の風味豊かな味わい。
ソースの酸味が、唾液の胃液の分泌を余儀なくする。
鴨の肉の咀嚼するごとに溢れ出すジューシィさに、
鮮烈なワサビの香気が抜群に相性が良い。
とまらない。
矢継ぎ早に料理を口に放り込んでいくブーン。
なに、もっとちゃんと味わえなどど言うべからず。
料理は心で味わうものだ。
.
- 324 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:48:42 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)「がつがつがつがつがつ!」
从; ゚∀从「いつみても半端ねえ食いっぷりだ」
从 ゚∀从「そんな大食漢じゃ、旅の食料も困るんじゃないのか」
( ^ω^)「もぐもご。うーんわかひかによぐ(ゴクン)食べますお。
でも、意外となんとかなるもんですお」
( ^ω^)「味はともかく、山や川、森にも食べられるものは沢山ありますから」
从 ゚∀从「そうだねえ」
( ^ω^)「まあ、3日間食料に出くわさなかったときは死ぬかと思ったけど」
从 ゚∀从「おー大変だな」
( ^ω^)「渇きに耐えきれず、自分の尿を飲んだ事もありますお」
从; ゚∀从「お前スゲーな。食事中に」
.
- 325 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:49:38 ID:ZFVLZoXo0
从 ゚∀从「まー、でも最近はこっちの暮らしもきつくなってきてるみたいだね」
从 ゚∀从「ここは港町で漁業が盛んだからそれほど影響も少ないけど」
从 ゚∀从「なんせずっと空が曇ってるからね。食物の不作が続いてるらしい」
( ^ω^)「・・・・・・」モシャモシャ、ゴクン
从 ゚∀从「せめて空がスカッと晴れてくれればな・・・」
从 ゚∀从「こんな気分にもならなくて済むのに」
( ^ω^)「青空・・・かお」
.
- 326 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:50:23 ID:ZFVLZoXo0
从 ゚∀从「これから、すぐにあの島にいくのかい?」
( ^ω^)「ばくばくばく・・・」
( ^ω^)「・・・その前に、メルキドに行こうと思ってますお」
从 ゚∀从「メルキド?」
( ^ω^)「だお」ムシャムシャ
( ^ω^)「あの周辺の魔物は、他の地域よりも比較的強いと言われるお。修行がてらに」
( ^ω^)「それにメルキドは、良い武器防具を作ってる事で有名ですお」
( ^ω^)「今のブーンの装備じゃ不安だお。それを、充実させようかと思って」
从 ゚∀从「ふーん、あすこも確か魔物の襲撃を受けたんだよね」
( ^ω^)「らしいですおね。でも戦勝に終えたとか」
.
- 327 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:52:15 ID:ZFVLZoXo0
从 ゚∀从「ブーン、これも食いなよ」
( ^ω^)「これは、何ですお?」
从 ゚∀从「ルコの実と生ウニのサラダ、スペシャルタカオカ亭ソース!」
( ;゜ω゜)「ルコの実・・・?それってめちゃくちゃ貴重な・・・」
从 ゚∀从「ああ。おっかさんから預かったもんさ」
( ;゜ω゜)「そ、そんな大切なもの」
从 ゚∀从「いいんだよ」
.
- 328 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:53:08 ID:ZFVLZoXo0
从 ゚∀从「ルコの実は、別名“生命の木の実”」
从 ゚∀从「これを食べれば、寿命が延びるって言い伝えがある」
( ^ω^)「・・・・・・」
从 ゚∀从「ブーン」
从 ゚∀从「絶対に、生きて帰ってきてよ」
( ^ω^)「・・・頂きますお」
( ^ω^) シャクシャク
( ω )「・・・・・・おいしいですお」
( ω )「今まで味わったどの料理より・・・一番美味しいですお」
从 ゚∀从「そいつぁよかった!」
.
- 329 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:54:41 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)「・・・そろそろ行くお。ご馳走さまですお」
从 ゚∀从「ああ」
( ^ω^)「じゃあ勘定を」
从 ゚∀从「いいよいいよ。今のアンタからとろうなんて」
( ^ω^)「そういう訳にもいきませんお。奢ってもらってばかりじゃあ・・・」
( ^ω^)「それに、ラダトームの王様から、十分な路銀を頂いたんですお!
・・・ん、アレ?」ガサゴソ
从 ゚∀从「むしろこっちが感謝したいくらいさ。
アタシらの為に命張ってくれてるんだからね」
.
- 330 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:56:32 ID:ZFVLZoXo0
( ;゜ω゜)「・・・・・・無いお」
从 ゚∀从「え?」
( ;゜ω゜)「さ、財布が・・・路銀を入れた財布が」
( ;゜ω゜)「盗まれるタイミングなんて無かったお。
という事は・・・お、落としたのかお!?」
从; ゚∀从「あーあ」
( ;゜ω゜)「あ!鴨を捕まえるときに色々罠とかの準備をしたときに・・・もしかして」
从 ゚∀从「やっちまったね」
( ;´ω`)「おぉーん・・・」
.
- 331 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:57:49 ID:ZFVLZoXo0
从 ゚∀从「無一文て訳かい。それじゃあ、宿賃も払えないね」
( ;´ω`)「ショックだお・・・これからどうするお」
从 ゚∀从「とりあえず、今日のところはここに泊まっていきなよ」
( ;´ω`)「ハインさん・・・何から何まですいませんお」
从 ゚∀从「荷物とか、二階のアタシの部屋に置いちゃって」
( ^ω^)「いや、この食堂で雑魚寝でいいですお。荷物も自分で見張りますお」
从 ゚∀从「いいよ。旅で疲れてるんだろう。柔らかい寝床の方がいいだろ・・・」
( ^ω^)「大丈夫ですお。寝床の不安定さなんて、慣れっこですお。
寒空の下で夜を過ごす事を考えれば、全然ありがたいですお!」
从 ゚∀从「ブーン・・・アンタもなかなか鈍いねぇ」
( ^ω^)「おっ?」
.
- 332 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 21:59:57 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)
从 ゚∀从
( ;゜ω゜)
从 ゚∀从
( ;゜ω゜)「あの・・・・・・ベッドは」
从 ゚∀从「ひとつだよ」
( ;゜ω゜)
从*゚∀从
.
- 333 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 22:02:28 ID:ZFVLZoXo0
( ;^ω^)「い、いやいや!おおおおおおそんなわけには!」
从 ゚∀从「ブーン・・・アンタ、女を知ってるかい?」
从*゚∀从+「アタシの勘じゃ、まだじゃないのぅ?」キュピーン
( ;^ω^)「どどどどどど」
.
- 334 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 22:03:21 ID:ZFVLZoXo0
( ;^ω^)「いや、そうじゃなくて・・・ハインさん」
从 ゚∀从「いいじゃない。アタシ、アンタに惚れちまったよ」
从 ゚∀从「男が生きるか死ぬかの戦地に赴くんだ。
慰みな訳じゃない。それくらいしてやりたいんだよ」
( ;^ω^)「本気ですかお」
从 ゚∀从「ああ。それとも嫌だったら」
( ;^ω^)「いいいいややじゃありませんお!全然いやじゃありませんお!」
( ;^ω^)「自分も・・・自分はっ、嬉しいくらいですお・・・!だけど・・・」
从*゚∀从「だったら」
.
- 335 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 22:05:40 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)「・・・・・・だけど・・・」
( ^ω^)「・・・自分は・・・もしかしたら・・・」
从 ゚∀从「ブーン」
从 ゚∀从「本当に生きて帰ってくるつもりなら、できるだろう」
( ^ω^)「!!」
从 ゚∀从「世界の為に。 自分の為に。 そして、アタシの為に」
从 ゚∀从「その為の、 “約束”さ。 な、ブーン?」
.
- 336 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 22:07:22 ID:ZFVLZoXo0
( ω )
从 ゚∀从
( ω )「ハイン・・・さん」
从 ゚∀从
たまらなく嬉しかった。
胸の奥に、熱い想いがこみ上げる。
自分の事を心から案じ、慈しんでくれる女性が居る事に。
そして、自分たちが生きる未来の事をも。
せり上がってくる感情を、高ぶる恋情を。
抑えきれない。
.
- 337 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 22:08:32 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)「ハインさん・・・愛して、いますお」
从 ゚∀从「ブーン」
.
- 338 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 22:09:48 ID:ZFVLZoXo0
その夜。 ブーンとハインは一つになった。
引き締まった筋肉と、柔らかな肌。
対照的なそれらが、温もりをともなって擦(す)り合わせられる。
手を取り合い、抱きしめ合う。
手だけは同じだった。
冒険のさなか、薄傷で堅くなった手。
包丁を握り冷水でひび割れた手。
どちらも、これまで生きてきた証が刻まれている。
人生を物語る手だった。
.
- 339 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 22:10:58 ID:ZFVLZoXo0
互いの呼吸が交じり合う。
心臓の鼓動が重なり合う。
ベッドの白地に、破瓜の血が流れる。
驚きはしなかった。ただ、心から嬉しかった。
母のとは違う、幸せな暖かみが、全身を駆け巡る。
.
- 340 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 22:12:03 ID:ZFVLZoXo0
二人は、涙を流す。
決して惜別の涙ではない。
例え束の間の温情だとしても。
これほどの幸せを感じる事は今までに無かった。
全てを守り通す為に、命をかけて剣を振う戦士。
その帰りをきっと待つと言ってくれた、女性。
体だけでない、心が結ばれてゆくのを感じる。
狂おしい程の多幸感に身を包まれたとき、人は涙を流すのだろう。
そこにある愛情を確かめるように、何度も口づけを重ねる。
.
- 342 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 22:13:02 ID:ZFVLZoXo0
(*-ω-)
从*-∀从
愛おしい。 守りたい。
この女性を。この女性のとりまく全てを。
それこそが、やはり自分の生きる意味だと思えた。
寂寥(せきりょう)など要らぬ。
ただ少しだけ、離れるだけだ。
いつの日か、またこの温もりと触れ合えるのだから。
.
- 344 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 22:14:43 ID:ZFVLZoXo0
輝かしい人々の未来の為に。
いずれ訪れる平和を分かち合う為に。
二人は、再会の契りを交わす。
もう迷いなど微塵も無い。欠片も抱く事は無い。
今、この胸に生まれるものは、確かな愛と、純粋な情熱だけだった。
to be continued...!!
.
- 345 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 22:19:39 ID:ZFVLZoXo0
( ^ω^)ブーンの今のステータス (脱童貞)
LV21
はがねのつるぎ
はがねのよろい
てつのたて
今回登場した敵
無し
.
戻る