4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 21:54:35.82 ID:yYPWI8LE0


第19話



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 21:56:43.59 ID:yYPWI8LE0


夜に活気づく場所といえば酒場である。

ブーンは、リムルダールの町の繁華街の一角を彷徨う。


( ^ω^)


繁華街と言っても、明かりは少なく、
道ゆく人の数もそれ程ではない。

路地裏に座り横たわる浮浪者が、酒瓶を枕にして寝ているのが印象的だった。


枯れ草がチリチリと寂しげな風に舞う。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 21:57:50.57 ID:yYPWI8LE0



( ^ω^)「お、あった。ここかお」


そして、一軒の酒場に入っていく。
赤錆て鈍色(にびいろ)になった鈴が、切なげな音を鳴らした。




('_L')「いらっしゃい」


静かで、全体的に明かりが少なく、暗い佇まいの店だった。

幾人かが、談笑しながら酒を飲んでいる。




9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 21:59:26.91 ID:yYPWI8LE0


('_L')「何になさいますか?」

( ^ω^)「葡萄酒を、一杯貰うお」


酒場のマスターは、手慣れた振る舞いでグラスに酒をとくとくと注ぐ。
どうぞ、といって差し出した。


ブーンはそれを口をつけ、息をつく。
葡萄の香りと、渋みのある味わいが、心を落ち着かせる。


( ^ω^)「マスター、ここは色んな情報が集まると聞くお」

('_L')「ええ、ちまたの噂は、大体ここに集まりますね」

( ^ω^)「じゃあ、聞きたい事があるお。ロトの勇者について・・・」


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:01:33.41 ID:yYPWI8LE0



(´・ω・`)


(´・ω・`)「・・・おや。ブーンさんじゃないか」

( ^ω^)「おっ!?ショボン先生!」


カウンターの席を、数席あけて座っていた男性に話しかけられた。
それは、以前ブーンの主治医であった、ショボン医師だった。

入店した時は、暗がりで気がつかなかった。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:02:47.78 ID:yYPWI8LE0


(´・ω・`)「やぁ、偶然だね。その後の経過はどうだい?」

( ^ω^)「先生のおかげ様で、良くなりましたお。
      完治じゃないですけど、もう軽い運動もできますお」

(´・ω・`)「そうかい。それはよかった」


そういってショボンは、酒をクイッと口に含んだ。
飲み方が、サマになっている。


( ^ω^)「今日は、仕事の方はもう終わりなんですかお」

(´・ω・`)「ああ。今は、大変な患者さんも抱えていないし、
      一応臨時の医師も病院に呼んでいるからね」

(´・ω・`)「それに、明日は休みだ。久々に羽をのばせるよ」


そして、ぐっと景気よく、杯の酒を飲み干した。




14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:05:08.93 ID:yYPWI8LE0


('_L')「久々といっても、ここにはしょっちゅう来てるじゃないですか」

(´・ω・`)「ははは、まぁ、いいじゃない。日々の息抜きは必要さ」

( ^ω^)「おっおっ。ショボン先生は、お酒が好きなんですおね」


(´・ω・`)「ああ・・・・・・酒は良い。酒はいいよ」

(´・ω・`)「心の中に溜まった汚れのような物を、洗い流し浄化してくれる」

(´・ω・`)「酒と触れ合うこの時が一番、心安らぐ時なんだ」


ショボンが、ほうっとした遠い目になる。
そして、マスターにおかわりを要求した。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:07:09.60 ID:yYPWI8LE0


( ^ω^)「先生は、飲み方がカッコいいですお」

(´・ω・`)「はは、そうかい」

(´・ω・`)「それと、ここでは“先生”とは呼ばないでくれないか」

(´・ω・`)「ここに居る時は、仕事の事を忘れて飲みたいんだ」

( ^ω^)「おっ・・・わかりましたお、ショボンさん!」




(´・ω・`)「ふぅ。しかし、今日の酒はいつにも増して沁みるね」

( ^ω^)「そんなにお酒が好きなら、ショボンさんも、
      酒場のマスターになったらいいんじゃないですかおw」



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:09:20.57 ID:yYPWI8LE0


(´・ω・`)「・・・・・・」

( ;^ω^)「おっ、何かまずいこと言いましたかお」

(´・ω・`)「いや、そんな事は無い」

(´・ω・`)「自分の酒場の店を持つ、か・・・そんな事も、時々頭を過(よぎ)るんだ」

( ^ω^)「おお・・・?」

(´・ω・`)「この町では、自分の親の仕事を継ぐのが普通だ」

(´・ω・`)「自分は医者の息子だ。だから、医学を学ぶほかなかった」

(´・ω・`)「丁寧に敷かれた道の上を、ずっと歩き続けて来たんだよ」


ショボンの顔が、ランプの明かりに照らされ、酔いの所為か少し赤く見える。




21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:11:16.46 ID:yYPWI8LE0


( ^ω^)「ショボンさんは、すごい医者だと思いますお。
      患者さん達も皆、尊敬してますお」

(´・ω・`)「もちろん、医者の仕事もやるからには真剣に、誇りをもって取り組むさ」

(´・ω・`)「・・・昔、ラダトームのとある酒場にいったんだ」

(´・ω・`)「そこで、初めて酒を飲んだ。美味かった」

(´・ω・`)「感激して、それから酒を飲むようになったよ」

(´・ω・`)「医者としての自分が嫌いな訳じゃない」

(´・ω・`)「ただ、そういう夢想いの様な感情が、ときどき胸をくすぐるんだ」

( ^ω^)「・・・・・・」




22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:13:27.99 ID:yYPWI8LE0


( ^ω^)「だったら・・・やってみたらいいんじゃないですかお?」

(´・ω・`)「・・・・・・」

( ^ω^)「ショボンさんの人生ですお。
      やりたいようにやるのが、一番だと思いますお」

(´・ω・`)「・・・そう簡単には上手くいかないよ。酒場経営のあれこれなんて、
      今までまるで勉強して来なかった」

(´・ω・`)「この年になって、今更仕事を鞍替えするなんて、とても出来ないさ」

(´・ω・`)「それに・・・自分の親も、僕が医者として大成する事を望んでいる」


ショボンは自分に言い聞かせるように語る。
酒に魅入られた先ほどの目とは、また違う遠い目を見せた。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:16:42.54 ID:yYPWI8LE0


( ^ω^)

( ^ω^)「・・・ショボンさん」

(´・ω・`)「ん」

( ^ω^)「自分は、この旅を終えたら、やりたい事がありますお」

(´・ω・`)「ほう。何だい?」

( ^ω^)「料理屋を、やりたいんです」


ブーンは、すり切れて幾つもの傷のある手の甲をなぞる。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:19:18.77 ID:yYPWI8LE0


( ^ω^)「その夢があるから、自分はやれる。頑張れる」

( ^ω^)「困難にくじけそうになった時、いつもそれを思い出すんですお」

(´・ω・`)「・・・・・・」

( ^ω^)「一度きりしかない人生だお。
      きっと、自分の心に正直に生きたらいい」

( ^ω^)「それがきっと、希望ってやつですお」

( ^ω^)「この世界の人々が忘れかけている、希望なんですお」

(´・ω・`)「・・・・・・」

( ^ω^)「今は自分は、それを取り戻す為に旅をしてるお。
      それが叶ったとき、初めて・・・・・・」

( ^ω^)「きっと、人々と共に、自分の夢を心から満喫できるはずですお!」


( ^ω^)「希望は良いものだお。ショボンさんも、無理だと決めつけないで。諦めないで」

( ^ω^)「挑戦してみたらいいんじゃないかって、ブーンは思いますお」


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:22:09.74 ID:yYPWI8LE0



(´・ω・`)「・・・そうだね」

( ;^ω^)「あ。すいませんお、若輩者が・・・・・・」

(´・ω・`)「いや、いいさ。なんだか、君の様な人間を見るのは久しぶりだ」

(´・ω・`)「前向きで、純粋で、自分を信じられる。
      そんな情熱的な事を、恥も臆面もなく言いのけてしまう」

(´・ω・`)「羨ましいよ。なにか、嬉しくなってしまうね。
      職業柄、暗い気持ちの人とばかり触れ合うものだから」


ショボンは微笑んで、グラスに口をつける。


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:24:19.96 ID:yYPWI8LE0


(´・ω・`)「今日は、僕が奢るよ。
      ロトの勇者の情報を得る為に、ここに来たんだろう?」

(´・ω・`)「酒の美味さも、じっくり味わっていくと良い。
      ここのお酒も、美味しいからね」

(*^ω^)「おおっ、ありがとうございますお!」

('_L')「お褒め頂いて恐縮ですが、あんまり飲み過ぎないようにしてくださいよ。
    また家まで運ぶなんてしたくありませんからね」

(´・ω・`)「はは、解ってるよ。さ、もう一杯頂こう」



(´・ω・`)(・・・・・・)

(´・ω・`)(“希望”――――――か・・・・・・)



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:27:55.55 ID:yYPWI8LE0


宿屋の自分たちの部屋に、ブーンはフラフラとしながら帰る。
途中、よろけて何処かに頭をぶつけた。


(*^ω^)「ツン、帰ったお」

ξ゚听)ξ「ブーン!遅かったじゃない!」

ξ゚听)ξ「まぁ、お酒臭いわ。随分飲んできたんじゃないの?」

(*^ω^)「うう・・・結構飲んだお・・・」

ξ゚听)ξ「ロトの勇者の情報が得られた?」

(*^ω^)「おお。耳寄りな情報を手に入れてきたお!」

ξ゚听)ξ「よかったわね!」

ξ゚听)ξ「それより、約束でしょ。今日は、ほら、ね?」


ツンは、ブーンの腰に手を回す。




33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:29:39.98 ID:yYPWI8LE0


(*^ω^)「う・・・ツン、今日は結構酔ってるんだお。
      また明日に・・・」

ξ゚听)ξ「ブーン・・・言ったじゃない。今日は二人でするって」

ξ゚听)ξ「楽しみにしてたのよ・・・・・・」

(*^ω^)「わ、わかったお・・・」

ξ゚听)ξ「うふふっ」


ツンは、ブーンの手を握る。部屋の蝋燭の火が、ユラリ揺らめいた。




36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:32:15.40 ID:yYPWI8LE0



(||| ^ω^)「おはようだお」

|  ^o^ | 「おはようございます。きのうはおたのしみでしたね」

ξ゚听)ξ「おはよう」

(||| ^ω^)(酒を飲み過ぎたのと、睡眠不足とアレで、頭と腰がいたいお・・・)


ブーンは、宿屋の主人に水を1杯、要求した。
朝一番の冷たい水は、多少の気分を良くしてくれる気がする。



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:34:52.06 ID:yYPWI8LE0


|  ^o^ | 「それにしても、こんなびじょとまいばんダンスのれんしゅうなんて、うらやましいですなあ」

(||| ^ω^)「あ、はは・・・・・・」

ξ///)ξ「もう、ご主人たら、お上手ですわ」



ブーンは、暇のある時は、ツンにダンスの稽古をつけてもらっていた。


それは、無事にツンをラダトームまで送り届けられたら、
一緒にダンスを踊ろう、という約束からくるものだった。

なので、こうしてとき夜につけ、華麗な舞いの練習をしているのだ。
ツンは、それを熱心に手取り足取り、丁寧に教えてくれる。

姫は美しい。ブーンも悪い気はしないが、
少なくとも今は、それよりも二日酔いの苦痛の方が勝るのである。




39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:37:26.20 ID:yYPWI8LE0


( ^ω^)「・・・・・・お」

( ・∀・)「おっと」


酔いで気分の悪いときに、一番見たくない顔に出会った。


( ・∀・)「やあ、おはよう、我が宿命のライバルよ。少しは剣の腕が上がったかい?w」

( ^ω^)「ライバル() ハハッワロワロス。おかげさまで」


同じ宿に泊まっていた。

違う宿屋に鞍替えしようかとも思ったが、
この宿屋は料金が安い。

それに、たったそれだけの事でこちらが動かねばならないのも癪だ。
それなら相手が移動してくれればいい。

と、恐らく向こうも考えているのだが。

しかし、些細な事にツンを付き合わせるのもアレだ。我慢だ。



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:40:11.18 ID:yYPWI8LE0


( ・∀・)「で、竜王を倒すっていう話の方はどうなんだい」

( ^ω^)「いい情報を仕入れてきたお。順調だお」

( ・∀・)「そうかい。そりゃ良かった」

( ・∀・)「ま、しかし肝心の強さがなけりゃお話にもならない」

( ・∀・)+「剣術をもっと磨きたかったら、いつでもきなさい。
       稽古をつけてあげよう(暗黒イケメン微笑)」

( ^ω^)「ぐぬぬ」


重傷を負っていたとはいえ、一度立ち会いで辛酸を舐めさせられたのは痛い。

事あるごとにそれをチクチクとネタにされる。

本調子であれば、こんなおちゃらけた奴に負ける筈が無いが、
過去は変えられないのが人生の理である。



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:42:32.10 ID:yYPWI8LE0


ξ゚听)ξ「ちょっと貴方!ブーンを侮辱するのは辞めなさい」

ξ゚听)ξ「彼が本気になれば、貴方なんて一蹴よ!」

( ・∀・)「いつも思うが、美しく気品にあふれた女性だ」

( ・∀・)「まるで、どこかの姫君のようだ」

( ;^ω^)ξ;゚听)ξ「えっ」ドキッ

( ・∀・)「くそ、なぜこんな白豚に・・・でも」


そして、二階から女性が降りて来た。




43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:44:46.32 ID:yYPWI8LE0


ζ(゚ー゚*ζ「モララー様、ここに居られたんですか!部屋にもいないので」

( ・∀・)「おはよう、デレ。今日も可愛いね」

( ・∀・)「今日は確か、湖畔の方で食事の予定だったね」

ζ(゚ー゚*ζ「ええ、楽しみです!モララー様!」

( ・∀・)「じゃあ、行こうか。魚の料理が美味いらしいんだ」


( ・∀・)「・・・僕のお姫様も、なかなかのもんだろう」


戦士と女性は、出て行った。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:47:17.57 ID:yYPWI8LE0


( ^ω^)「ツン、僕らもいくかお」

ξ゚听)ξ「ええ、今日はどうするの?」

( ^ω^)「民家の集落でロトの勇者の情報収集と」

( ^ω^)「旅支度、食料の買い込みだお。当面の予定が立ったんだお」

ξ゚听)ξ「まあ、本当!」


( ^ω^)「・・・それと、剣術の稽古・・・かお」




47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:50:38.36 ID:yYPWI8LE0


ブーンは、ふいと空を見上げる。


見慣れた薄暗い空が広がるが、珍しく風の穏やかな日だった。


いや、無風といっていい。


まるで何かの前兆のように。



何故か、空の遠くに羽ばたく鳥がいつにも増して多い気がした。




to be continued...!!



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/30(水) 22:53:35.99 ID:yYPWI8LE0


( ^ω^)ブーンの今のステータス


LV19

はがねのつるぎ
はがねのよろい
てつのたて


今回登場した敵

特に無し


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