- 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:01:33.16 ID:2tb6AHCL0
第13話
- 121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:03:19.75 ID:2tb6AHCL0
( ^ω^)「・・・・・・」
メラメラとたいまつの火が、洞窟内を照らす。
たいまつにも先ほどの沼地の毒が染み込んでいるのか、
気持ちの悪い焦げた臭いが鼻につく。
沼地の洞窟内を、警戒しつつ進む。
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:06:11.81 ID:2tb6AHCL0
遠目の利く明るい平地での戦闘とは違う。
この闇中ではいきなり魔物が出現し、攻撃を仕掛けてくるかもしれない。
魔物は自分より、夜目が効くのだ。
故に、常に臨戦態勢。
緊張を解く事は許されない。精神を削る。
自分のあらゆる感覚・・・五感すべてを研ぎすます。
決して急いではならない。ゆっくりと、慎重に。
このピリッとした刺すような独特の空気は、以前にも経験している。
岩山の洞窟だ。
- 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:08:36.68 ID:2tb6AHCL0
( ゚∀゚)『いいか、ブーン。こういった暗いダンジョンを進むにはな・・・』
( ゚∀゚)『自分の体全体が、目になったと思え』
( ^ω^)『お・・・目かお』
( ゚∀゚)『そう。目だけじゃねえ、耳、鼻、全部になったようにな』
( ゚∀゚)『肌で臭いを、鼻で光を。目で音を感じ取れるようになれ』
( ^ω^)『また難しい事を・・・』
( ゚∀゚)『まぁ決して、視覚だけに頼っちゃいけねえってことだ』
( ゚∀゚)『それが、野生に生きるコツ・・・だ』
( ^ω^)『・・・わかったお!』
- 125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:10:35.84 ID:2tb6AHCL0
あの時の経験が、今ここで活きている。
ジョルジュとの修行の日々が無ければ、おそらく今生きてはいまい。
冒険や戦闘に役立つ知識を、いくつも教えて貰った。
今彼は、何処で何をしているのだろうか。
確か、メルキドにゆくと言っていたが。
と、そこまで考えて、思考を破棄した。
これは雑念だ。
今は、この暗闇にとけ込む事に気を砕くのだ。
そして、ほら。ぬるりとした気配が。
- 128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:12:59.91 ID:2tb6AHCL0
( ^ω^)「む」
メーダ「ヌロゥオオオ・・・」
タコのような魔物。大きな目玉をギョロリとひかる。
壁際に、ねっとりとくっついていた。
( ^ω^)「・・・ふっっ!!」ビョバァッ
すかさず斧を振り上げる。
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:15:55.25 ID:2tb6AHCL0
メーダ「ヌグルゥゥゥゥ・・・!!」
触手の何本かを切り裂いた。
しかし、怯まず魔物はそのままこちらに突進してきた。
(( ;゜ω゜)「・・・ウグッ!!」ドスッ
(♯^ω^)「・・・おおっ!!」ヒュッ
メーダ「グプッ・・・・!」
ブーンの斧が、魔物の胴体の芯をとらえる。
斧が肉にめり込む。柔かい感触。
- 133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:18:25.59 ID:2tb6AHCL0
( ^ω^)(やったお!)
しかし、その交錯の瞬間。
メーダ「・・・・・・ボビュッ!!」バシャッ
魔物が黒い墨のような液体を勢い良く吐き出す。
ブーンの手持ちのたいまつにあたり、それを落としてしまう。
( ;゜ω゜)(しまった!!)
- 137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:21:42.13 ID:2tb6AHCL0
その液体はたいまつの先端にあたり、ジュウと火を消した。
( ; ω )「・・・・・・」
ブーンは、その魔物いた辺りを、足で探る。
いた。グニャリとした感触。どうやら、瀕死のようだ。
それを、思い切り踏みつぶした。グチャリ、と音がする。
そして――――――本当の闇と静寂が訪れる。
- 138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:23:27.19 ID:2tb6AHCL0
( ; ω )(迂闊だったお・・・火の元を落とされるとは)
( ; ω )(予備のたいまつはもうない・・・)
( ;^ω^)(このまま進むしかないお)
明かりを失ってしまった。これは非常に危険である。
この洞窟の出口へいくその道順は、そこまで難しいルートではない。
ほぼ一本道をまっすぐ進めば、その出口に到着できるような場所だ。
だが、こうして光をうしなってしまうと、解らない。
先程の戦闘で、方向感覚も解らなくなってしまった。
これはまずい。
- 139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:27:01.81 ID:2tb6AHCL0
( ^ω^)「・・・手探りで・・・いくしかないお」
壁に手をあて、なぞるように進む。
願うのは、少しでも早くこの目が暗闇に慣れる事である。
( ^ω^)(・・・今度から、たいまつは腕に括りつけておくかお)
今度。今度はあるか。
( ;^ω^)「・・・・・・」
- 140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:30:55.66 ID:2tb6AHCL0
初めて、岩山の洞窟に挑んだ時の事を思い出す。
あのときも、たいまつを落とし、運良く命からがら脱出した。
恐怖がじわじわと蘇り、ブーンの心を浸食する。
( ^ω^)「・・・・・・」
ダメだ。恐怖こそ、冒険において一番捨てねばならぬ感情。
払拭するように、何も考えないようにする。
だが、それでも緊張は高まる。
そうしてしばらく進んでいった。
- 145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:34:50.31 ID:2tb6AHCL0
( ^ω^)
( ^ω^)
( ^ω^)(!)
- 148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:36:14.55 ID:2tb6AHCL0
手探りで進む。その触れた感触に、違和感が。
( ^ω^)(・・・これは・・・何だお)
( ^ω^)(今までの岩肌とは違う・・・)
( ^ω^)(何かこう、人工的に作られた・・・)
( ;^ω^)(・・・・・・)
( ;^ω^)(・・・・・・これは・・・)
( ;^ω^)(扉かお?)
- 152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:39:18.09 ID:2tb6AHCL0
それは、どう触れても自然のものではなかった。
ゴツゴツとしない、滑らかで直線的な感触。
ところどころ、垂直に交わる溝。
扉ならば、かなり大きい物だと予想される。
自然発生的にできたものでは、まずない。
だが。
なぜここに、扉が存在するのか?
- 153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:42:07.37 ID:2tb6AHCL0
果たして、人間がこんな危険な魔物の住処に、
人間の御用のものをつくるだろうか。
ありえない。
過去の遺物?それもない。
ここは海の底だ。
こんな場所に、人間の住処や倉庫などを置く訳が無い。
とすれば。考えられる事は一つ。
( ;^ω^)
ブーンは、とある事を思い出した。
- 158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:45:28.03 ID:2tb6AHCL0
( ゚д゚ )『ミタんだ・・・この目で』
( ^ω^)『ほう・・・・・・』
( ゚д゚ )『あれは数年前・・・俺が近くの山に猟りに出かけた時のことだ』
( ゚д゚ )『その山へ、ラダトームの騎士団がいた』
( ゚д゚ )『驚いたよ、まさか姫様をミれるなんて』
( ゚д゚ )『ラダトームのお姫様が、何かの用事で、騎士団を召して移動中だったんだ』
( ゚д゚ )『騎士やお姫様なんて初めてミタから興奮したけど』
( ゚д゚ )『その内に、大きな・・・魔物が飛んでやって来たんだ』
( ^ω^)『・・・魔物?』
( ゚д゚ )『ああ・・・でっけぇのだ』
- 162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:50:45.68 ID:2tb6AHCL0
( ゚д゚ )『俺は怖くて、遠目でぶるぶる震えてミテたんだ』
( ゚д゚ )『そいつは、騎士団を踏みつぶし、蹴散らし、姫をくわえて・・・』
( ゚д゚ )『そのまま、また飛び去っていったんだ』
( ^ω^)『・・・・・・』
( ^ω^)『どこへ、飛び去っていったんですかお?』
( ゚д゚ )『東だ・・・』
( ^ω^)『東・・・』
( ゚д゚ )『東の・・・あれは、リムダールか、マイラの方へ飛び去っていったと思う』
- 166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:55:16.09 ID:2tb6AHCL0
( ^ω^)『ふむ・・・』
( ゚д゚ )『それ以来、ラダトーム王・・・ラルス16世は、竜王に侵攻をかけにくくなった』
( ゚д゚ )『なにせ、自分の娘が、人質に囚われてるんだからな』
( ゚д゚ )『殺された訳でもない・・・殺せば、王は憤激し、何に代えても
竜王を倒そうと躍起になる』
( ゚д゚ )『でも、どこかに囚われているだけ・・・これは、殺すよりタチが悪いぜ』
( ゚д゚ )『攻め入れば、姫に危害を加えるかもしれない・・・』
( ゚д゚ )『しかし、一国の王としては、それを止める訳にもいかない・・・
ラダトームの民間傭兵募集も、そういった意味も含んでるのかもな』
( ゚д゚ )『軍を派遣せずに済むからな』
( ^ω^)『それが、魔王軍の狙いですかお』
( ゚д゚ )『わからねえが、そうかもしれない』
- 170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:56:34.06 ID:2tb6AHCL0
( ^ω^)「・・・・・・」
ガライの町でたち聞いた情報。
大国の姫君が、魔物に連れ去られたという話。
ここは、ガライからは東に位置する。
( ;^ω^)(まさか)
( ;^ω^)(いや・・・そんな)
大きな扉を、押してみる。ビクとも動かない。
鍵がかかっているのか?
と、そのとき。
- 177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 00:59:57.96 ID:2tb6AHCL0
( ^ω^)「!?」
ブーンの懐から、うっすらと、青白い光が放たれる。
( ^ω^)「これは・・・」
その光の源は・・・以前、雨の祠で、じぃに貰ったもの。
“魔法の鍵”だった。
- 183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 01:02:36.42 ID:2tb6AHCL0
それの、はめ込まれた水晶が、微細な光を放っているのだ。
そして、その光に共鳴するかのように。
扉全体もまた、光を放ち始める。
( ;^ω^)「おおっ・・・!?」
扉全体が輝く事で、その全容が伺い知れた。
縦横に、十数メートルはあるかという、巨大な扉。
- 187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 01:03:50.28 ID:2tb6AHCL0
( ;^ω^)「・・・この扉は・・・」
( ;^ω^)「・・・・・・結界・・・かお」
ブーンは、この光に見覚えがあった。
ガライにいた頃、ハインと一緒に見た、ガライの墓、その封印。
それとまさしく同じ光だ。
大きな扉の青白い輝きは、荘厳で神秘的に。
そして、この扉の馬鹿げた大きさ。このサイズが示すものとは。
- 190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 01:06:05.18 ID:2tb6AHCL0
( ;^ω^)「・・・・・・」
『・・・・・・誰?』
( ;^ω^)「!!」
『そこに・・・誰かいるの?』
- 196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 01:08:33.71 ID:2tb6AHCL0
扉の向こう側から、微かに聞こえる。
それは、人間の声だ。
( ;゜ω゜)「ひ・・・ひとがいるのかお?!」
『・・・あなたは・・・人間・・・?』
( ;^ω^)「そうだお!?君はいったい・・・」
『ああ・・・助けて。お願い・・・いや、でもだめ』
『あなたがここに入ってくれば・・・あなたは死ぬわ』
『殺される。きっと』
( ;^ω^)「!」
- 204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 01:11:17.72 ID:2tb6AHCL0
『でも・・・ここから出たい。出たいの』
『どうしたらいいの・・・』
( ^ω^)「・・・・・・」
『誰か・・・誰か・・・・・・』
『 ・・・・・・・・・助けて・・・・・・・・・ 』
( ^ω^)
- 213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 01:13:30.75 ID:2tb6AHCL0
扉の中から、それは聞こえた。
震える、女性の声。
そして、その声の裏に聞こえる・・・低く、獰猛なうなり声を。
( ^ω^)「・・・・・・」
( ^ω^)「・・・大丈夫だお」
『・・・・・・』
( ^ω^)「助けるお。君を、救うお」
( ^ω^)「この暗闇から・・・解き放ってみせるお」
- 220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 01:15:28.55 ID:2tb6AHCL0
光が強まる。
ビキビキと音を立て、扉全体が震え出した。
( ^ω^)
ロトの勇者は、ここに気が付かなかった。
熟練の腕を持つ彼は、そのまま正しいルートを辿っていったのだ。
自分の成すべき事は、彼の後を追う事。
ここは関係ない、とも言える。
しかし。
ロトの勇者がここを見つけたら、どうしたであろうか。
- 233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 01:19:21.13 ID:2tb6AHCL0
自分の――――――自分が目指すべき道は。
決して、彼の足跡をなぞる事だけではない。
ブーンは決意する。
自分の腕の未熟を知らぬとは言えぬ。
死への恐怖がない訳ではない。
しかし、勇者は。
本当の勇者とは、いったい何だろう。
- 240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 01:22:03.24 ID:2tb6AHCL0
( ^ω^)
扉は、大きな光と音を放ち、
青白い光が、砕けた。
物々しい扉が、ギシギシと開く。
その先へ。
一歩踏み出す。
- 249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 01:26:06.62 ID:2tb6AHCL0
彼を超える為に。
全てを超える為に。
( ^ω^)「今、助けるお」
( ^ω^)「――――――姫君様」
その一歩こそが、勇者の証であると信じて。
今その胸に、正義を抱く。
本当の――――――真の勇者に、なるために。
to be continue...!!
- 261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/05(土) 01:30:54.26 ID:2tb6AHCL0
( ^ω^)ブーンの今のステータス
LV16
てつのおの
はがねのよろい
てつのたて
今回登場した敵
メーダ:多くの触手をもつ軟体の魔物。魔力によって空中に浮遊する事もでき、
いきなり人間の頭にとりついて窒息させる。そのぎょろりとした目が特徴。
沼地の洞窟に生息する。
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