98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:14:31.57 ID:vYMlBGXY0

第1話


100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:15:23.37 ID:vYMlBGXY0

アレフガルドの冷たく、優しさの無い風が、頬に吹き付ける。
痩せた大地を踏みしめ、歩く。


( ^ω^)


ブーンからラダトームを発ってから、十数日が経過していた。
今、ブーンは、ラダトームから北北西の方の森で、野営している。

日は暮れなずみ、夜になろうかという頃。
ブーンの目の前で、焚き火が煌々と燃え上がる。


101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:16:33.29 ID:vYMlBGXY0

( ^ω^)(足が痛いお・・・今日は結構歩いたお)

( ^ω^)(薬草がそろそろ付きそうだお・・・また野生のものを探すかお?)

( ^ω^)「・・・・・・」


ブーンは、これからの事を考えた。打倒竜王の旅、その行程を。
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:17:59.25 ID:vYMlBGXY0

まず、巷では、竜王の城に辿り着く事すら困難と言われている。

数年前、国軍が大規模な隊を編制し、船をつかって、竜王の城へ攻め込もうとした事がある。

結果、船と船員は皆、海の藻屑となった。
おそらく、ラダトームからも見えそびえる竜王の城のある島には、
何か特別な障壁のようなものが張られているのだ。
加えて、島の周りに飛び交う、凶悪な魔物の軍勢。

特別な方法が無い限り、あの陸の孤島へ到達することは不可能だろう。

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:19:27.71 ID:vYMlBGXY0

( ^ω^)「・・・・・・」 パチパチ・・ 焚火


しかし、方法はある。

ロトの勇者。彼はそれを成し遂げた。
惜しむらくもロトの勇者が捕らえられたのは、竜王の城へ辿り着いたから。

つまり、勇者の旅の道程を追えば、竜王のいるあの場所へ達する事ができる筈なのだ。

彼の噂は、各地の民にも知れている。
聞き込みをして、彼の足跡を追えば、必ず竜王の地まで着けるはず。


勇者の軌跡を辿る。これが、ブーンの出した結論だった。
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:20:35.05 ID:vYMlBGXY0

( ^ω^)「・・・はら減ったお」

( ^ω^)「携帯食料の豆も乾燥芋も、もうそろそろ尽きそうだお」

( ^ω^)「本格的に、完全自足の生活がくるお」


ガサッ


( ^ω^)「!」ピクッ


108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:21:34.10 ID:vYMlBGXY0

???「ピキッ!ピギィッ!」

( ^ω^)「ち!スライムかお!」

スラ「ピギィ!」ザザザッ

( ^ω^)「おおっ!」ドシュッ

スラ「! フイィ・・・」ボテッ

( ^ω^)「・・・ふぅ・・・」
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:22:23.43 ID:vYMlBGXY0

ここ数日で、何度も野生の魔物に襲われた。

村にいたときは、いくら腕自慢のブーンでも、
流石に野生の魔物を相手取るとなると、そう簡単にもいかなかった。

このあたりで出てくる魔物は、大体がスライム系だ。
恐らく、魔物の中でもかなり弱い部類。

しかしそれでも、油断はできない。
一度、噛まれて熱を出した事があった。

安全な寝床も無い、薬もない、食料も貴重。
朦朧とした意識の中、野営しつつ魔物の襲撃に備えねばならない。

奴らは、朝だろうが夜だろうが襲ってくるのだ。もちろん、寝ているときでさえも。


111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:23:38.69 ID:vYMlBGXY0

そして、夜になれば、寒さはいっそう厳しさを増す。
だが、焚き火をつけたままでは、魔物は寄ってくるだろう。
眠るときは火を消し、枯れ葉に身を包んだり、安全な穴や うろ を探して、隠れねばならない。

もちろん、そうまでしても確実に安全という訳でもない。
慢心を消し、精神を削り常に周囲に注意を払う。

ブーンのにとっての初めての旅とは、そういう過酷なものなのだ。


( ^ω^) パチパチ・・ 焚火
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:24:45.03 ID:vYMlBGXY0

だが、その過酷な旅が、ブーンを鍛え上げていた。

以前はスライム相手でも苦戦していたのが、
今では、油断さえしなければ、ほぼ瞬殺できる。

武器は、軽木を自分で削り、つくったこん棒。扱いもなれてきた。
今のブーンには、鉄製の武器は、重くて旅に携行するには辛いのだ。


( ^ω^)「・・・そうだ」

( ^ω^)ガサゴソ


ブーンは、一枚の紙切れを取り出した。
それは、ラダトームから、ガライの町への行き方を書いた、地図。


114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:25:40.77 ID:vYMlBGXY0

ラダトームのとある人間に聞くところ、ラダトームを発ったロトの勇者はガライの町に向かったという。
なので、ガライまでの簡単な地図をつくり、もってきていた。


( ^ω^)「この地図尺だと・・・今はちょうど、ラダトームとガライとの中腹あたりかお」

( ^ω^)「このあたりから、モンスターも凶暴で強くなると聞くお」

( ^ω^)「・・・用心しないといけないお」

( ^ω^)「そろそろ、明日に備えて寝るかお」
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:26:45.62 ID:vYMlBGXY0

ブーンは焚き火を消し、安全そうな寝床を探し始めた。
比較的安全な場所に位置取っていたブーンだったが、
ここで寝ると、消した炭の匂いを嗅ぎ付けられ、魔物に気取られるのだ。
旅のコツを、ブーンは理解し始めていた。


( ^ω^)


117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:27:51.28 ID:vYMlBGXY0

そして、明くる朝――――――



いっそう冷え込みが強い日だった。

竜王が世界を席巻し始めてから、自然の気候が変わった。
恐らく、竜王の魔力によるものなのだろう。

常に空は曇り日は照らず、冷たい風が容赦なく吹き付ける。
おかげで農作物などが思うように取れず、貧しい生活を送らざるを得ない民の心も、少しずつ冷えていった。


118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:28:39.26 ID:vYMlBGXY0

( ^ω^)


しかし、ヒリヒリと肌にひりつく冷気の感触を、今ではブーンは嫌いではなかった。

冒険心をくすぐる、荒風。

この冷たさこそが、今自分が置かれている状況をしかと認識させてくれる。
自分は今、冒険している。誰にも依らず、自分の力で生きている。生を実感するのだ。


119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:30:00.51 ID:vYMlBGXY0

とはいえ、極度の冷え込みにはもちろん備える。
寒さは体力を奪う。 冷えれば体は思うように動かないし、
霜焼け、ヒビ切れにも注意をしなければならない。

防寒具をしかと着込み、ブーンは荒野の地を踏みしめる。


次の目的地、ガライを目指して。


120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:30:43.05 ID:vYMlBGXY0

道中、魔物に襲われた。
やはり、聞き及んでいた通り、ラダトーム周辺の敵より、手強かった。


( ;^ω^)「ちっ!ドラキーかお!」

ドラ「キキキィッ!!」バササッ

(♯^ω^)つ「はああおッ!!」バシュッ!

ドラ「ギイィィッエッ!」


( ;^ω^)「な・・・なんだおコイツは!」

「クォオオオア・・・」

( ;゜ω゜)「うっうわぁああ!」

ゴースト「ァァアアア!」


121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:31:44.88 ID:vYMlBGXY0

今まで相手にして来たものとは段違いの強さ。
未だ見た事もない、魔物、その恐怖。

ブーンは、ギリギリのところでなんとかしのいでいた。


腕等に切り傷を負った。薬草を塗り当て、応急する。

多少の血を流したが、休む訳にはいかない。
むしろ血の匂いを漂わせ、一カ所に留まる事こそ、より危険なのだ。


( ;^ω^)(スライム程度ならなんとか楽に倒せるようになって、自惚れていたのかお)

( ^ω^)(もっと強く・・・もっと強くならなきゃ、いけないお)
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:32:57.40 ID:vYMlBGXY0

( ^ω^)「おお?ここは・・・」


しばらく歩くと、大きな洞窟があった。


( ^ω^)「これは・・・もしかして」

( ^ω^)「有名な、ロトの勇者を祀った洞窟かお?」


124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:34:16.12 ID:vYMlBGXY0

この洞窟はある種の聖域で、魔物も近寄れない。

洞窟内の岩肌はキラキラと蒼く煌めき、火を灯して見ると、よりいっそう美しく輝くという。

世界の観光地の一つとして名高い場所であった。
――――少なくとも、竜王の支配が訪れる前までは。
人々は心に余裕を無くし、とても観光などという安穏としたものを楽しめる状況にはなかった。


洞窟内に入ると、ふうわりと体を包み込むような、暖かみがあった。
不思議と、疲れた体を癒すような感覚にもなる。


(*^ω^)「おお・・・!」


たいまつに灯した火に照らされ、幻想的な空間になる。

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:35:07.49 ID:vYMlBGXY0

( ^ω^)「これはいいお。今日はここで休んでいくかお、魔物も出ないし」

( ^ω^)「ついでに、ちょっと観光していくかお」


奥へ、奥へと進む。
所々苔むした場所に足を取られそうになり、気をつけて歩いた。


128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:36:33.02 ID:vYMlBGXY0

すると、石盤を発見した。
何か、文字が刻まれている。

( ^ω^)「これは・・・ ロトが残した言葉かお?」


アレフガルドの人間の識字率は、それほど低くはない。
だが、それでも、貧しい暮らしを強いられる民ほど、読み書きができない傾向にあった。

ブーンは、仕事の合間にしぃに読み書きを教えてもらった日々を、ふと思い出した。


129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:37:25.01 ID:vYMlBGXY0

( ^ω^)『うーん・・・ 難しいお』

(*゚ー゚)『がんばって、ブーン。読み書きができれば、いろいろと生活に便利よ』

( ^ω^)『でも・・・ブーンは日常、あんまり使わないお・・・』

(*゚ー゚)『今はそうでも、絶対将来役に立つときがくるのよ。
     料理店のメニューだって、読めるようになるわよ』

( ^ω^)『それはうれしいお!がんばるお!』

(,,゚Д゚)『ブーンは食い物の事となると、
     とたんに張り切りだすなぁ!食い意地がはってやがる!ギコハハハっ!』

(*゚ー゚)『・・・あんたも、ちょっとは読み書きの練習しなさいよ。報告書の字がきったなくて読めないのよ!』

(;,,゚Д゚)『ぐぅ・・・』

( ^ω^)『ギコ、ばかだおwwwww』


130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:38:30.67 ID:vYMlBGXY0

密かに恋心を寄せていた女性もいたが、友との相思相愛で、身を引いた事。
それでいいと、本当に心から思えた事。

あの頃をふと思い出し、口元が緩んだ瞬間、
それと同時に、苦い記憶も蘇り、何か良く解らない表情になった。


( ^ω^)「・・・しぃさん。役に立ったお。ありがとうお」


131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:39:27.25 ID:vYMlBGXY0

ブーンは石盤を読んだ。

石盤には、こう書かれている。


132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:40:07.83 ID:vYMlBGXY0

わたしの名はロト

わたしの血を引きし者よ

ラダトームから見える魔の島にわたるには、3つの物が必要だった

わたしはそれらをあつめ、魔の島にわたり、魔王をたおした

そして今、その3つの神秘なる物を3人の賢者に託す

彼らの子孫がそれらを守っていくだろう

再び魔の島に悪が蘇った時

それらを集め戦うが良い

3人の賢者はこの地のどこかで、そなたの来るのを待っている事だろう

ゆけ 私の血を引きし者よ


133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:41:40.16 ID:vYMlBGXY0

( ^ω^)(!! これは・・・)

( ^ω^)(もしかして、魔の島とは、竜王の島・・・の事かお)

( ^ω^)(おそらく、今捕われているロトの子孫も・・・)

( ^ω^)(ここに寄った。そして、ここであの島へ行く方法のある事を見つけたんだお!)

( ^ω^)(・・・だとすればこれは)

( ^ω^)(相当な収穫だお。やはり、ここに立ち寄って正解だったお)


134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/08(土) 23:43:08.90 ID:vYMlBGXY0

大収穫だった。
魔の島までの、道のりの手がかり。

ブーンは、その言葉を地図に書き残した。


洞窟内で、焚き火をする。

その炎の光が洞窟内に反映し、神秘的な色合いをだす。

ブーンは、夕食として、木の実の干した物を食べた。
水筒の飲み水も、もう残り少ない。節約しなければならない。


しかし、この洞窟なら、魔物に襲われる心配もない。
久々に、安堵の夜が訪れる。

140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 00:01:32.79 ID:SIsG4nrx0

( ^ω^)(あと、2、3日もあればガライに着くお)

( ^ω^)(そうして、町で食料などを買い込むお)


( ^ω^)「・・・ガライに着いたら、どんな郷土料理があるのか楽しみだお」ジュルリ

( ^ω^)「・・・メニューも、読めるお」


ブーンは、町の人々の喧噪―――――町の料理、温かな寝床。
それらを夢想し、心を躍らせた。
143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 00:04:59.64 ID:SIsG4nrx0

( ^ω^)「今まで町にいたときは気づかなかったけれど・・・」

( ^ω^)「たとえ貧しくても、安心して暮らせる場所がある、っていいもんだお」

( ^ω^)「旅の辛さを知って、本当にそう思うお・・・」

( ^ω^)「・・・」

( ^ω^)「でもこれも」

( ^ω^)「なかなか乙なもんだお、ギコ」
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 00:08:39.42 ID:SIsG4nrx0

ブーンに、帰る場所は無い。旅に命を賭した。


久々に、母の夢をみた。あの頃の、貧しくも温かな安らぎのあったときの夢を。




to be continue...!!
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/09(日) 00:11:51.92 ID:SIsG4nrx0

( ^ω^)ブーンの今のステータス

LV3

こんぼう
かわのふく


今回登場した敵

スライム:ラダトーム周辺に生息する、透明で軟体のモンスター。
     比較的魔物の中では弱い部類だが、それでも訓練された人間でなければ相手は辛い。
     その液状の体で獲物を包み込み、溶かして栄養にするという。

ドラキー:こうもりの魔物。体が小さいので見えにくく、活動を活発にするのが夜なので、
     夜間に教われる人も多い。鋭い牙をもっているので、噛まれるとかなりの激痛になる。
     素早いので、常人では捕まえる事も困難である。

ゴースト:森によく潜む、亡霊の魔物。竜王が、自然にたたずむ怨念に魔力を与え、具象化させたもの。
     相対した事の無い人間ならば、腰を抜かすだろう。よく人を驚かせてから襲ってくる。

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