- 35
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:11:48.77 ID:uhbYFxcFO
第四話 戦うモン
- 36
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:12:32.79 ID:uhbYFxcFO
(;'A`)「……」
ドクオは息を潜めていた。
机や椅子のバリケードを張り巡らした小学校の昇降口。
この地区の避難場所であるここで、ドクオは入り口の見張りを買って出た。
今、町は混乱している。
突如現れたゲートとデジモン。
緊急時に備え、行政は逸早く女性や子供に避難勧告を出した。
男達は避難場所の警備や、デジモンの対処に当たる。
あまり手際の良さにドクオは違和感を覚えたが、この状況では願ったり叶ったりだ。
恐らく犠牲者は少なくなるだろう。
そしてドクオは他の二人の男と共にバリケードの外にいた。
眼鏡をかけた細い男と、金髪のチンピラ風。
二人は箒に寄り掛かり、緊張感無くずっと喋っていた。
と言っても飽きている金髪が眼鏡に喋りかけ、眼鏡がそれに律儀に返事をしているだけだったが。
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:13:13.22 ID:uhbYFxcFO
( ゚∋゚)「でよ、そしたら横堀のヤツマジでスマイル下さいとか言ってんのwwwチョーウケるwww」
( ゚д゚ )「……そうですね」
( ゚∋゚)「だろ?! その店員もマジ有り得ねーの!」
(;'A`)(有り得ないのはお前の頭だDQNが……っ)
五月蝿い金髪に若干苛立ち、箒を握り締める。
だがそれよりも、ドクオの中では緊張感が勝っていた。
先程空から降ってきたデジモンは、見たところ全て成長期のようだ。
だがもしも。
(;'A`)(今後、成熟期や完全体のデジモンが現れるとしたら……?)
相手は巨大な上に、ほぼ無尽蔵に火炎放射やミサイルをぶっ放せるやつがいるのだ。
人間に勝ち目があるとは思えない。
ドクオの顔は強張り、つい身震いしてしまう。
( ゚∋゚)「あれ? ちょっとお兄さん、何マジビビりしてんの?」
(;'A`)「え?」
- 38
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:13:45.70 ID:uhbYFxcFO
- 気が付けば金髪が隣にいた。
金髪は軽く笑い、
( ゚∋゚)「こんなんただの異常気象だって。
ちょっとしたら家帰れるっしょ」
(;'A`)「あ、ああ……」
ドクオはその時、彼なりに自分達を励まそうとしていたのだということに気付いた。
自分の事しか頭になかった事に、恥ずかしさを覚える。
( ゚д゚ )「……! ちょっと、あれって……」
眼鏡が眼前を指差す。
見れば、空から三つの影がこちらに近付いて来る。
鋼のボディと一対の羽。
昆虫を思わせる頭部に生えた二本の突起。
あれは、
( ゚д゚ )「コクワモン! 昆虫型メカデジモン!
必殺技の“シザーアームズミニ”はどんなに硬い物でも簡単に切りさいてしまうぞ!!」
( ゚∋゚)「ちょwwおまww声がジャックスパロウに似過ぎてヤベぇwww」
急に語る眼鏡に金髪は吹き出す。
その間に三体のコクワモンは三人の前に降り立った。
- 40
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:14:52.17 ID:uhbYFxcFO
『オメガテイマーハドコダ!』
(;'A`)「!」
( ゚∋゚)「はぁ? 訳分かんねぇ事抜かすんじゃねぇよ」
モップを肩に担ぎ金髪が前へ踏み出す。
( ゚∋゚)「丁度三対三だ。 一人一体片付けっぞ!」
(;゚д゚ )「あ、相手はデジモンですよ?!
それにいきなり武力介入なんて……」
(#゚∋゚)「あぁ?! 喧嘩はビビったもん負けだぞ!
こんなチビ相手にビビってんじゃねぇよ!」
尻込みする眼鏡を怒鳴り、コクワモンの前に仁王立ちする金髪。
眉根に皺を寄せ、眉尻を立て顔をしかめて見せる。
(#゚∋゚)「さっさと目の前から消えてくれますかねぇ?
マジでウザいんで」
『オメガテイマーハドコダ』
(#゚∋゚)「はぁ? そんな物知らないつってんだろ!
失せろクソチビがっ!」
- 41
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:17:46.77 ID:uhbYFxcFO
- 最後の一言と共に、箒の柄をコクワモンの頭に叩き付けた。
しかし。
『……敵対ト見ナシ、コレヨリ迎撃行動に移行スル』
平然とした様子のコクワモンは無機質に告げる。
箒の柄を掴むと、紙のように握り潰した。
驚く金髪の腹部に、鋼のパンチが打ち込まれる。
(;゚∋゚)「――ゴェェェッ?!」
ボールのように殴り飛ばされ、こちらまで転がって来る金髪。
(;゚д゚ )「だ、大丈夫ですか?!」
(;゚∋゚)「ガハッ……! オェ……」
眼鏡が駆け寄るが、金髪は倒れたまま激しく咳き込み動けない。
(;'A`)「クソッ!」
ドクオは庇うように二人の前に立つ。
だがその足は震え、腰は引けていた。
- 43
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:18:16.52 ID:uhbYFxcFO
- 金髪を殴ったコクワモンが背中の二枚の羽を広げ、
『シザーアームズミニ!』
帯電する突起をドクオ達へ向け突進してくる。
迫るコクワモン。
(;'A`)(――ちくしょうっ!!)
避けられない。
恐怖に動けないドクオが目を閉じようとした。
その時。
『――ドクオ!!』
空から降りてきた風が、コクワモンを叩き潰した。
風は駆け、一瞬で残った二体も弾き飛ばす。
『『『?!』』』
地面に倒れ伏した三体は、その中心に風の正体を見る。
そこに居たのは。
青年を背に乗せ、牙を剥く青と銀の狼だった。
- 44
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:18:48.39 ID:uhbYFxcFO
- (;゚д゚ )「ガルルモン! 獣型デジモン!
肉食獣のようなすばやさと標的を確実にしとめる正確さから、
他のデジモン達からは非常に恐れられている!
必殺技は高熱の青い炎を吐き出す“フォックスファイアー”!」
( ^ω^)「ドクオ、無事かお?!」
(;'A`)「ブーン! 俺達は無事だが、そいつまさか……」
ガルルモンの背の上で頷くブーン。
( ^ω^)「ガブモンが進化したんだお!」
『間一髪ってヤツだったね、ドクオ』
『――オメガテイマー! 抹殺スル!』
起き上がったコクワモン達はガルルモンを囲んだ。
鋭い牙の間から獰猛な唸りを漏らすガルルモン。
『ブーンもドクオも、俺の友達には手出しさせないぞ!』
『『『――シザーアームズミニ!』』』
コクワモン達が一斉に飛び掛かる。
ガルルモンは引き付け、ぶつかる寸前で真上へ跳躍した。
衝突しもつれ合うコクワモン達。
- 45
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:19:24.15 ID:uhbYFxcFO
- 宙でガルルモンは下へ口を広げ、
『フォックスファイアー!』
青い炎が放たれた。
悲鳴を上げるコクワモン達。
炎は瞬く間にコクワモン達を焼き付くし、塵も残さなかった。
敵を消し去った狼は、軽やかに着地を決める。
( ^ω^)「ふん、口ほどにもないお」
『……倒したの俺なんだけどね』
背から降りてふんぞり返るブーンに苦笑するガルルモン。
それを見てドクオは安堵の息を吐いた。
('A`)「大丈夫、みたいだな。 お前の方は」
( ^ω^)「……ドクオ。 心配掛けたお」
ブーンは笑う。
上辺だけでは無い、昔に見た晴々しい顔で。
( ^ω^)「僕は行くお。 約束を守りに」
- 47
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:21:01.24 ID:uhbYFxcFO
('A`)「行ってこい、と言ってやりたいところ何だが……悪い知らせが有る」
ドクオの表情が曇る。
(;^ω^)「お? 何だお悪い事って」
('A`)「詳しく知ってる奴が中にいる、着いてきてくれ」
(;゚∋゚)「ちょっ、ちょっと待ってくれよ」
眼鏡に肩を支えられた金髪が声を掛けた。
(;゚∋゚)「何がどうなってるんだ?
ちゃんと説明してくれ」
- 48
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:22:16.89 ID:uhbYFxcFO
(;゚д゚ )「正直私も同意見です。 このガルルモンは……?」
(;^ω^)「おっ? それは……」
('A`)「悪い、説明してる暇が無いんだ。
とりあえずそいつは味方だから安心してくれ。
ガルルモンはここに残って、また奴らが来ないか見張っててくれ」
『わかった』
('A`)「頼む、急ぐぞブーン」
(;^ω^)「おっ、おお」
(;゚∋゚)「おい!」
有無を言わさずブーンを引っ張っていくドクオ。
それを虚しく見送った二人は顔を見合せ、
(;゚∋゚)「「……は、初めまして……」」(
゚д゚;)
ぎこちない笑みでガルルモンに挨拶した。
- 49
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:23:09.17 ID:uhbYFxcFO
ドクオに連れられブーンはコンピューター室に入った。
中には十数台のパソコンと、同じ数程の男女がいた。
皆ブーンと同年代ぐらいで、パソコンに向かっている。
そのうちの一人、黒い長髪の女性がこちらに気付くと近付いて来た。
川 ゚ -゚)「無事だったかドクオ、さっき昇降口から変な音がしたから心配していたぞ」
('A`)「ああ、ごめんクーさん。
それでついさっきこっちに着いた、こいつがブーンだ。
ブーン、彼女はクーさん。 お互い初めてだよな」
川 ゚ -゚)「そうか、初めましてブーン君。
噂はドクオから良く聞いているよ」
( ^ω^)「初めましてですおクーさん。……ん?
クーさん?」
川 ゚ -゚)「私がどうかしたかね?」
改めてブーンはクーと名乗った女性を見た。
- 51
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:25:32.13 ID:uhbYFxcFO
- さらりと流れる艶やかな黒髪。
スレンダーな体型ながら主張を惜しまない胸部。
雪を連想する肌と、整えられた顔立ち。
モデル雑誌の表紙からそっくり出てきたような完璧な美女が、
( ゚ω゚)「え? ドクオの、かかか彼女さん?」
川 ゚ -゚)「そうだが、それが何か?」
( ^ω^)
(^ω^ )
( ^ω^ )
( ω ) ―〜―√ ̄\_..........
ブーンは自分がここまで心乱された経験は、今だかつて無かった。
無防備なドクオの首に腕を掛け、部屋の隅まで引き摺っていく。
- 56
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:29:24.26 ID:uhbYFxcFO
(;゚A゚)「おま! 首! 首締まってるっ!」
( ↑ω↑ )「黙れ……っ! 見損なったぞドクオっ!
一体どんな汚い手を使ってあんな美女を手込めにした……っ!」
(;゚A゚)「怖い! なんか目がSIRENみたいで怖い!」
川 ゚ -゚)「やれやれ……」
クーはブーンからドクオを奪い取ると、その頭を抱き言う。
川 ゚ -゚)「いいか? 私は脅されたりだとか無理矢理だとかでは無く、自由意思でドクオと付き合っている。
もっと噛み砕いて言うならばライク以上、即ちドクラブ(はぁと)だ」
( ↑ω↑ )「馬鹿な……! その男の何がそこまで惹き付ける?!」
川 ゚ -゚)「何か……そうだな強いて言うなら」
胸に埋まるドクオの頭を撫でつつ、
川*゚ -゚)「一人にすると何も出来なさそうな虚弱オーラかな?
私は母性本能に忠実なタイプなんだ」
)A`)「……だそうなんだが」
その時ブーンは部屋にいた何人かから、啜り泣きとドクオへの呪詛を確かに聞いた。
川 ゚ -゚)「さて、ふざけるのはこれくらいにして本題と行こう」
- 57
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:30:46.71 ID:uhbYFxcFO
- ドクオを離したクーは部屋の明かりを落とした。
暗い部屋の一角、スクリーンにプロジェクターの映像が映る。
映し出された映像はこの町の地図だ。
川 ゚ -゚)「そちらの事情はドクオから大まかだが聞かせて貰った。
そこで確認したいのだが、君はどうやってデジタルワールドへ行くつもりなんだ?」
( ^ω^)「決まってますお。 勝手にぽっかり開いてるんだから、上空のゲートから……」
川 ゚ -゚)「残念だが、それは無理なんだ。
ここにいる皆は、私が大学で集めた電脳関係のスペシャリスト達でな。
彼らの解析の結果、あのゲートはデジタルからリアルへしか通れない。
つまり一方通行なんだ」
(;^ω^)「お? じゃあ、どうすれば……?」
川 ゚ -゚)「安心したまえ、ちゃんと打開策も考えてある」
クーは指し棒を持ってスクリーンへ向かう。
スクリーン上、地図の町の端側をなぞり、
川 ゚ -゚)「この町を簡略化して見ると、小山に囲まれた三角形に捉える事が出来る。
その一角に一本ずつ、奴らがゲートの触媒にした鉄塔が立っているんだ」
- 58
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:31:29.22 ID:uhbYFxcFO
(;^ω^)「おお……?」
川 ゚ -゚)「細かい理論は省くぞ。 要はあれだけ大規模なゲートを別の次元に繋げるには、こちらに干渉する触媒が必要なんだ。
この触媒は今非常に不安定な状態で、外部からの接触で簡単にコントロールできる。
君がデジタルワールドに行くなら、この触媒の機能を改竄しなければならないわけだ」
( ^ω^)「三行で」
川 ゚ -゚)「このノートパソコンを
町外れの三本の鉄塔に
繋げ」
( ^ω^)「把握ですお」
川 ゚ -゚)「頼んだぞ。 あともう一つ伝える事があるんだが」
(;^ω^)「また難しい話ですかお?」
川 ゚ -゚)「いや、とても単純な話さ。 君が失敗した場合、――この世界は消滅する」
( ^ω^)「は?」
川 ゚ -゚)「奴らは今、開いたゲートを中心に世界を再構築しようとしている。
この世界にデジタルワールドを上書きしようとしているんだ。
そうなった場合、白いキャンパスを黒い絵の具で塗りたくったように世界は消滅する。
文字通り完全に、な」
- 60
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:32:07.25 ID:uhbYFxcFO
(;^ω^)「お、おお……?」
一気に飛躍した己の重大性に、戸惑うしかないブーン。
クーは唇を噛み締め顔を伏せた。
川 ゚ -゚)「済まない。 プレッシャーを掛ける気は無かったのだが……
現状君と君のパートナーに頼むしか、我々には手が無いんだ。
鉄塔の周りはデジモン達も警戒している。
人間だけでは近付くのすら困難だ」
クーは周りを見る。
パソコンに向かっていた人達は頷き返し、皆が立ち上がった。
川 ゚ -゚)「頼む。 世界を救ってくれ」
クー達は一斉に頭を下げた。
顔が熱くなるのを感じ慌てるブーン。
(;^ω^)「や、止めて下さいお!
そんな事されなくたって僕はやりますお!」
川 ゚ -゚)「そうか。 ありがとう」
皆顔を上げる。
- 61
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:33:27.08 ID:uhbYFxcFO
(//‰ ゚)「頑張れよ!」
(*゚ー゚)「気を付けてね!」
部屋中からの声援。
それをブーンは心強く感じた。
( ^ω^)「必ず成功させますお!」
('A`)「ブーン」
ドクオは何かを投げて寄越した。
放物線を描いて手に落ちたそれは、
( ^ω^)「ゴーグル?」
銀色のフレームのゴツいゴーグル。
('A`)「子供の時かっこつけて買った奴だ。
サイズが合わないんで使わなかったけど、お前に預けてやる。
……必ず返しに来い」
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:34:19.17 ID:uhbYFxcFO
( ^ω^)「ドクオ……」
ゴーグルを頭に通し、目に掛ける。
悪く無い心地だ。
レンズ越しのドクオが親指を立てた拳を掲げている。
それにこちらも頷き、
( ○ω○)「――行ってくるお!」
- 64
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:36:54.85 ID:uhbYFxcFO
その頃入り口では。
(*゚∋゚)「行くぞ! 進化だ!」
『ガブモン進化ー! ガルルモン!』
(*゚д゚ )「ガルルモン! 獣型デジモン!(ry」
(*゚∋゚)「うおおお!!! マジヤベェ!!!
俺めっちゃ憧れてたんですけどヤマト!!!
今金髪だし俺ぽくね?!!」
(*゚д゚ )「次!!! 私は超進化がいいんです!!!」
『おおおなんか俺進化出来そうな気がしてきたー――!!!』
(*゚∋゚)(*゚д゚ )「超進化キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
ワーガルルモンwktkwwwww」
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