5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:42:51.75 ID:uhbYFxcFO



    第三話  開いたモン





6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:43:47.29 ID:uhbYFxcFO

『……きて……』

『……起きて、ブーン!』

( ´ω`)「……おー……何だおー……?」

『もう、ブーン起きてってば! 大変なんだよ!』

( つω`)「おー……お?」

 起こされたジャージ姿のブーンが目を開けると、そこにいたのはツノモンでは無かった。
 青と銀の毛皮を被った二立の体躯。
 毛皮の下から覗くがっちりとした恐竜のような手足。
 ツノモンの唯一の名残は、頭の一本角。

( ^ω^)「お! もうガブモンに進化したんだおね! カッコいいお!」

『え、そ、そんなこと無いよ……?』

 照れているのか、赤くなった頬を掻きながら手を横に振るガブモン。

『ってそうじゃなくて!』

 はっとなったガブモンは焦った様子でブーンに向き直る。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:44:37.62 ID:uhbYFxcFO

『大変なんだブーン!』

(;^ω^)「お? さっきから何が大変なんだお?」

『それは、えっと何から説明すれば……と、とにかくこれを見て!』

 部屋の面積一杯に敷かれた布団の中、ガブモンは窓際で寝ているドクオを飛び越えるとカーテンをさっと開いた。
 窓の外にあったのは、赤に染まった空。
 しかしそれは日の光に染まっているからでは無い。

(;^ω^)「な……?!」

 空の上部を覆い尽くしていたのは、丸く空いた大穴。
 枠に赤い稲妻を纏い、その円内はどす黒い何かが渦巻いている。

(;^ω^)「何だお、あれ?!」


『ゲートが……デジタルワールドのゲートが開いたんだ!』

(;^ω^)「ゲート? どうゆう事だお?」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:46:26.62 ID:uhbYFxcFO

『力を貸してブーン! ブーンの力が必要なんだ!』

(;^ω^)「何を言ってるんだおガブモン、ちゃんと説明してくれお」

 戸惑うブーン。
 その目を見つめガブモンはゆっくりと話す。

『俺がブーンに拾われたのは偶然じゃない。 思い出したんだ、俺はブーンに生まれる前に会ったことがある』

 そしてガブモンはドクオを指差した。

『俺は元々、ドクオのデジモンだったんだ』

(;^ω^)「ドクオのって……それってまさか……」

『そう、二人が出会った時戦わせた、あのデジモンだよ。
 子供が思いを込めて育てたデジモンは、子供が大人に成長した時役目を終えてデジタルワールドへ帰っていく。
 ドクオが最後までちゃんと育ててくれたから、俺はデジタルワールドへ帰って暮らしていたんだ……』
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:47:32.06 ID:uhbYFxcFO



 ――デジタルワールドには大昔から争い続けている二つの勢力がいるんだ。
 一つは、デジタルワールドの秩序を守ろうとする天使型デジモン達。
 もう一つは、デジタルワールドを支配しようしてる悪魔型デジモン達。

 二つは長い間小競り合いを続けてたんだけど、ある日ついに決着を着ける為の総力戦が起こったんだ。
 七日七晩戦い続けて、勝ったのは天使型デジモン達。
 だけど悪魔型デジモン達を全滅させることは出来なくて、逃げ延びた奴らはチャンスを伺ってたんだ。

 もっと強大な力を得るチャンスを。
 そして目を着けたのは、このリアルワールド。
 奴らはこの世界を征服して、もう一度力を蓄える気なんだ……!





11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:50:09.47 ID:uhbYFxcFO

『……それを阻止する為に俺が送られてきた。 世界を救う“オメガテイマー”のブーンの元に』

(;^ω^)「オメガテイマー?」

『オメガテイマーっていうのはデジタルワールドの危機に現れる、世界を救う伝説のテイマーの事なんだ。
 お願いだブーン! 俺と一緒にデジタルワールドに来てくれ!』

(; ω )「――! 待って……くれお……」

『奴らがこの世界に現れる前に、デジタルワールドで止めを……』

(#゚ω゚)「――待ってくれって言ってるおっ!」

 突然大声を発するブーン。
 驚き目を丸くするガブモン。
 ブーンの顔は今まで見たことも無いような、恐ろしい憤怒の形相だった。

『ブー……ン……?』

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:51:09.37 ID:uhbYFxcFO

(#゚ω゚)「僕は……! デジタルワールドになんか行かないお!!」

『ブーン?!』

 言い捨て、ブーンは部屋を飛び出した。
 ガブモンはそれを呆然と見送る。

('A`)「……とんでもない話だな」

『……ドクオ……』

 ブーンと同じジャージ姿でドクオがのっそり起き出した。

『何時から……?』

('A`)「ガブモンが俺を飛び越した辺りから」

『……ドクオ、俺は……』

('A`)「――言わなくていい」

 ガブモンの言葉を遮るドクオ。
 その顔は微笑んでいた。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:52:04.02 ID:uhbYFxcFO

('∀`)「お前の言う通りなら、お前がデジタルワールドに帰れて本当に良かったと思う。
  子供の頃の親友に、少しでも恩返し出来たなら」

『ドクオ……』

('A`)「それより、問題はブーンだな」

『……知ってるなら教えて、ドクオ。 どうしてブーンは行きたく無いって……』

('A`)「……少し長くなるぞ」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:52:42.56 ID:uhbYFxcFO


 ――昔ブーンの友達の一人に女の子がいたんだ。
 お前も覚えているかもしれない、“ツン”って男勝りな女の子だ。
 ツンはいつもブーンと一緒で、男の子達に混じって仲良く遊んでたんだ。

 だけどある日、突然ツンは現れなくなった。
 当時の俺達は公園で遊ぶってだけの仲で、ツンの家の場所すら知らなかった。
 皆で探したけどツンは見つからなかった。

 そんな時ブーンが言ったんだ。
 “ツンはデジタルワールドへ行ったんだ、自分はそれを見た”ってな。
 皆信じなかった。 嘘吐きだって馬鹿にする奴だっていた。

 だけどブーンは何を言われても信じ続けた。
 自分もデジタルワールドへ行くんだ、って。
 それからのブーンは、端から見たら所謂オカルトマニアになった。

 異界の門を開く儀式と聞けば実行し。
 怪物が現れる湖があると聞けば確かめに行き。
 とにかく奇怪な行動ばかりを取るようになったんだ。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:54:23.54 ID:uhbYFxcFO
 そんなブーンを周りは煙たがった。
 明るかったブーンも、周りの変化に段々尖ってった。
 元々体格も良かったし、一時期は学校に来ないで喧嘩ばっかりしてた事もある。

 そんな中でブーンは、デジタルワールドの事を口にしなくなった。
 言葉には出さないけどもしかしたら……小さい頃の自分を、恨んでいるのかもしれない。




16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:54:57.78 ID:uhbYFxcFO

('A`)「――何で昔そんな事を言い出したのか、ブーンは今だに話してくれない。
  ガブモンが存在する今にしてみれば、ブーンは本当の事を言ってたのかもしれないけど……
  それでも人がデジタルワールドへ行くなんて、正直俺は荒唐無稽に感じる。
  ……信じてやりたいけど、な」

『……そんなことが……』

 眉尻を下げ、悲痛な面持ちになるドクオ。
 似た表情のガブモンは拳を握り、しかし瞳に力を宿す。

『ドクオ、聞いてくれ。 実は……』

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:55:46.76 ID:uhbYFxcFO

(; ω )「……!」


 ブーンは当てもなく、とにかく全速力で駆けた。
 振り払うように。
 逃げるように。

 息も切れ切れで立ち止まった時、気が付けばツノモンを遊ばせた公園に辿り着いていた。
 ブランコに倒れるように腰を下ろす。
 息を整えながら虚ろな目で公園内を眺めた。

 見えてきたのは、昔の自分達の姿。
 ドクオや数人の男の子の中、たった一人の女の子。
 高い鼻と白い肌、頭に揺れる二つ結んだ金の髪。

 大好きだった。
 時々意地悪で、だけど誰より強くて優しくてカッコいいあの娘が。

 憧れてた。
 彼女だけが特別に思えて、まるでヒーローのようで。

 皆が帰って、自分も帰ろうとしている男の子を女の子が引き止めた。
 あの時、なんて言ってたっけ。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:56:35.82 ID:uhbYFxcFO



 ――どうしたんだお?

 ――えっと……あ、あんたのデジモン貸しなさい!

 ――お? ツンはデジモン持ってないからバトル出来ないお?

 ――いいから早く貸しなさい!

 ――あ?! ツン返すお?!

 ――返して欲しかったら明日一人で公園に来なさい! 大事な話があるんだから、約束よ! 絶対来なさいよ?!

 ――駄目だお返してお! 待っておツン! 僕のグレイモーン! おーんおーん! ……





20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:58:03.09 ID:uhbYFxcFO

(  ω )「……ツン」

 次の日約束通り一人で行くと、同じく一人で待っていたツン。
 声を掛けようとした、その時。
 ツンの持っていたデジモンが目映く光り、ツンを包み込んだ。

 光はデジモンに吸い込まれ、収まるとツンもデジモンも消えてしまった。

(  ω )「話ってなんだったんだお? どこに行ってしまったんだお? どうして……」

 デジタルワールドは実在すると思った。
 でも本当にそこにツンはいるのだろうか。
 ふと思い付いた空想を、真実と思い込んでしまっただけなのでは無いのだろうか。

 不安になっても信じて信じて信じ抜いて。
 それでもデジタルワールドは、ツンは見つからなかった。
 最後に残ったのは何も持たない孤独な自分。

 惨めだった。
 世界中から裏切られたような気分だった。
 デジタルワールドを信じなくなってからは心の痛みは無くなった。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:58:37.14 ID:uhbYFxcFO
 その代わり、本心から喜ぶ事も無くなった。


( ^ω^)「……は、ははは」

 涙は流れなかった。
 自然と生まれたのは嘲りの笑み。

( ^ω^)「結局僕は……」

 怖がっているだけだ。
 また一人を自覚するのが。
 ツンがどこにもいない事に絶望するのが。

( ^ω^)「……戻るお」

 ガブモンには怒鳴ったりして悪いことをした。
 謝らないと。
 謝ってその後は。

( ^ω^)「……どうすればいいんだお……」

 ブランコから立ち上がり空を振り仰ぐ。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 17:59:36.06 ID:uhbYFxcFO
 そこにあるのはかつて渇望した、デジタルワールドへの入り口。
 その時。

 空に浮かんだ円の中心。
 そこから小さな影がいくつも飛び出てきた。
 影はそれぞれ勝手な方向へ飛んでいき、その内の一つがこちらに降りてきた。

( ^ω^)「あれは……?」

 近付いてくるに連れてはっきりと見えてくる影。
 大小の鉄製歯車が三つくっついて並び、真ん中の大きな歯車に付いた二つの目と口。
 あれは、

(;^ω^)「ハグルモン……確かこいつウィルス種だお。 まさか……」

『――ギギ・見ツケタゾ・オメガテイマー!』

 ハグルモンの目がブーンの姿を捉える。
 そしてブーンに向けて口を広げた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:00:07.53 ID:uhbYFxcFO

『ダークネスギア!』

 発射される黒い歯車の群れ。
 咄嗟に横に跳ぶブーン。
 ブーンの横を通った歯車はブランコに当たり、鎖を容易く千切った。

『ダークネスギア! ダークネスギア!』

(;^ω^)「おおおっ?!」

 次々飛んでくる歯車をブーンは体を捩り必死にかわしていく。
 最後の歯車を伏せてかわすと、力を溜め地面を蹴った。
 向かう先はハグルモン。

 右拳を振り上げ、

(#^ω^)「ヘブーンズナックルもといただのパンチ!!」

 ハグルモンの顔面を殴った。
 鐘のような高音が響く。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:00:45.28 ID:uhbYFxcFO

『……ギギ?』

(;゚ω゚)「――痛ってええぇぇ!!」

 何ともないハグルモン。
 対しブーンは殴った右拳の皮膚が少し剥けてしまった。
 痺れる右手を抑えよろめく。

(;^ω^)「くっそ、やっぱりアニメのようにはいかんお……!」

『観念シロ! ダークネス――』

 再び開かれる口。
 だが歯車が発射されるより早く、

『プチファイアー!』

『――ギギッ?!』

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:02:49.97 ID:uhbYFxcFO
 拳大ほどの火の玉がハグルモンの側面に命中した。
 悲鳴を上げ吹き飛ばされるハグルモン。
 雑木林から飛び出しブーンを守るように立ったのは、

(;^ω^)「ガブモン!」

『ブーン、大丈夫?!』

(;^ω^)「僕は大丈夫だお、それよりあいつは……」

『さっき話した悪魔型デジモン達の手下だよ! きっとブーンを探す為に偵察に来たんだ!』

『ギギ! ソノ通リダ!』

 地面から起き上がり再び宙に浮いたハグルモン。
 ブーンとガブモンを嘲笑うように口角を吊り上げ、

『アト半日モシナイウチ二・無敵ノ機械軍団ガ侵略ヲ開始スル!
 我ラ二下ッタ命令ハ・ソノ時二最大ノ障害ニナル“オメガテイマーノ抹殺”ダ!
 逃ゲテモ無駄ダゾ! 通信デスグニ援軍ガヤッテ来ルカラナ!』

『――そんな事させるもんか!』
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:05:40.83 ID:uhbYFxcFO
 拳を握り締め叫ぶガブモン。

『ブーンには指一本触れさせないぞ!』

 同じタイミングで開かれる口。

『プチファイアー!』

『ダークネスギア!』

 火の玉と歯車がぶつかり爆ぜる。
 飛んできた破片に目を瞑るハグルモン。
 次に目を開けた時見えたのは、迫ってくるガブモンの角だった。

『ッギ?!』

『――うおぉぉっ!』

 掲げた両手で顔を守り突っ込んできたガブモンは、ハグルモンの下へ潜り込む。
 そして角で天を突くように突き上げた。
 金属バットの打音のような快音。

 宙高く跳ね上げられたハグルモンはクルクルと舞い、甲高い音と共に地面に落ちた。
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:06:10.72 ID:uhbYFxcFO

(;^ω^)「……やったのかお?」

『しばらくは動けないと思う』

 ガブモンの言葉通り、地面に倒れたハグルモンは動く気配が無い。
 その事にほっと胸を撫で下ろすブーン。

( ^ω^)「ガブモン、どうしてここがわかったんだお?」

『ドクオがきっとここだろうって。 いじけたブーンがいつも行くのは公園だ、ってさ。
 ……他にも聞いたよ。 ツンの事とか』

( ^ω^)「……そう、かお」

 ブーンの顔が微かに曇った。
 だがそれは一瞬の事で、すぐに普段の笑ってるような顔に戻った。

( ^ω^)「笑っちゃう話だお? ガブモン。 中二病なんてのは行き過ぎると馬鹿に――」

『違うよ!』

 ブーンの言葉を、ガブモンは叫んで遮った。

『ブーン、聞いてくれ。 ツンは本当にいるんだ。 デジタルワールドに!』

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:07:03.22 ID:uhbYFxcFO
 ブーンの目が開かれる。
 それは最初は驚きに、しかし次に怒りに変わった。

(#゚ω゚)「そんな慰めは……!」

『俺をここに送ったのは誰だと思う?! ドクオとブーンの事を知ってたのは?!
 昔ブーンの無くしたデジモンはグレイモンだよね?! 僕は会ったんだ、ブーンのパートナーを名乗るデジモンと!
 金髪の女の子に!!』

(;゚ω゚)「な……」

 ブーンは体から力が抜けていくのを感じた。
 膝が、震え出す。
 そんな馬鹿な、と唇が動くが声にならない。

『ツンは言ってたよ。 “私は絶対に帰らなきゃいけない。 約束で、待ってる人がいるから”って』

 過去の声が聞こえてくる。
 そんなのはデタラメだ、と。
 だがそれを吹き飛ばすほど、力強い眼。

『――ブーンは間違ってない。 ブーンは正しかったんだ!』

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:07:41.11 ID:uhbYFxcFO

(; ω )「……お」

 ガブモンの言葉は心に刺さるようだった。
 鼻が痛い。
 気を抜いたら、崩れ落ちそうになる。

( ;ω;)「おっ……お……っ!」

 両目から雫が零れていく。
 止めようと歪んだ顔を上に向けても、止まらない。
 涙も、想いも。

( ;ω;)「僕は………!」

 止まらない。
 かつて諦めたものへ、心が溢れ出す。

( ;ω;)「―――!」

 吠える。
 届けと。
 もう一度と。

 心に浮かぶ人へ、伝わってくれと。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 18:08:55.74 ID:uhbYFxcFO

『ブーン』

 ガブモンの体が光輝く。
 その光はどんどん強くなっていく。

『伝わったよ、ブーンのツンを想う気持ち。 俺が連れていってやる。 必ず――ツンの元へ!』

 目映い光の中、ガブモンの姿が変わっていく。
 四肢と胴が伸び、しなやかな尾が生える。
 口には牙、手足には鋭き爪。

『力が湧いてくる……!』

 光を払い現れたのは、青と銀の狼。
 狼は吠える。
 再会の誓いを。

 二つの響きが、天高く突き通る。

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