30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:03:34.30 ID:JG/hJICFO



( ´ω`)「…………お?」

 開けたブーンの視界には右側に畳の壁があり、それに自分が身体を押し付けている状態だった。
 何時の間にか寝ていたらしい。
 部屋は西日が差して影のが赤に染まっており、寝たまま握っていた携帯電話を見ると午後五時だった。

( ´ω`)「おー……卵は……」

 視線で卵を探す。
 するとあったのは下半分を残して砕け、殻の破片を散らかした元卵だった。

(;^ω^)「!」

 寝惚けた意識が一気に覚醒する。
 跳ねるように身体を起こして中を覗き込めば、中身は空だ。

(;^ω^)「どこいったお?!」

 慌てて部屋を見渡す。
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:05:15.94 ID:JG/hJICFO

 赤に染まったテレビ。
 赤に染まったタンス。
 赤に染まったカーテン。
 赤に染まった三本角。
 赤に染まった本棚。
 赤に染まった机。

(;^ω^)「……三本角?」

 もう一度振り替える。
 燃える色に照らされた窓際。
 そこにいたのは。

 弾力の有りそうな赤い肌。
 ぱっちりとした二つの目。
 天辺に生えた丸い三本角。

 大人の頭程の大きさの毛の無い生物がこちらをじっと見ていた。
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:07:28.29 ID:JG/hJICFO

(;゚ω゚)「プ……プ……!」

 そして、ブーンはこの生物を知っている。
 かつて本で、ゲームで、テレビで。
 その姿を見ていた。

 その名前は、

(;゚ω゚)「 プ ニ モ ン だ あ あ ぁ ぁぁ ? ! 」

『ピー――!』

 プニモンと呼ばれた生物は、高い鳴き声で鳴くとブーンに飛び付いた。

(;゚ω゚)「pwうklpみぽtszくわせnあきこsgcふじこおrrr」

 びくりと肩を大きく震わせ、硬直してしまうブーン。
 混乱する本人を余所に腕の中、プニモンは甘えるように頬を腹辺りに擦り付けてくる。
 徐々に落ち着きを取り戻したブーンは、震える手をプニモンの頭に乗せた。
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:08:46.95 ID:JG/hJICFO

 撫でると、張りのあるゼリーのような反発力が手に返ってくる。
 プニモンはくすぐったそうに目を閉じるが、されるがままに大人しくしていた。

(;^ω^)「……お前、プニモン……なのかお?」

『ピ!』

 名前を呼ばれると嬉しそうな声で応えた。
 ボールのように跳ねて腕の中から飛び抜けると、珍しそうに部屋の物を眺め出す。
 その様にブーンは呆然と呟くしかなかった。

(;^ω^)「アンビリーバボー……」
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:09:49.01 ID:JG/hJICFO




    第二話  育てるモン





42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:10:49.33 ID:JG/hJICFO

(;'A`)「アンビリーバボー……」

 翌日の朝。
 ブーンのアパートに呼び出されたドクオの第一声は“ちょっと眼科行ってくる”だった。
 事情を説明されて対面に座った後も、落ち着かずそわそわとしている。

(;'A`)「本物なんだよな? 本物の生きたデジモンなんだよな?」

( ^ω^)「しつこいお……何ならもう一度触って確かめてみるかお?」

『カオ?!』

 そう言ってブーンが両手で掲げたのは、プニモンではなかった。
 フサフサと毛の生えた、プニモンより一回り大きい身体。
 何より特徴的なのは、頭頂部から天を突くように生えた一本角。

(;'A`)「……ツノモンだよな、こいつ……」

( ^ω^)「誰の目から見てもツノモンだお」

『ダオ!』

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:11:53.24 ID:JG/hJICFO

 元気良くブーンの真似をするツノモン。

( ^ω^)「生まれた時はプニモンだったんだけど、適当にご飯食べさせて寝かし付けたら朝には進化してたお」

(;'A`)「ゲーム通り、幼年期の成長速度は早いのか……」

 ブーンの手から飛び降りると、ツノモンはドクオを繁々と眺めた。
 身体を傾け、首が有ったら傾げているような体勢になる。

『オマエ、ダレ?』

 それは捨てられたチワワが潤んだ瞳で見つめてくるよりも、十倍の効果を持っていた。

(*'A`)「俺はドクオだよ、ド・ク・オ。 ちゃんと言えるかな?」

『ドッ、ク、オ? ………ドックオ!』

 ドックオ、と繰り返し、部屋中を駆け回るツノモン。
 その姿を見て、ドクオは真剣な表情でブーンに向き直った。
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:15:55.14 ID:JG/hJICFO

(*'A`)「なあブーン、昨日はあんなこと言ったけどやっぱりお前も大変だろ?
  絶対寂しくさせないから、俺に預けてくれないか?」

(#^ω^)「テメェの魂胆は見え見えなんだおクソビッチが! リア充はKANOJOのオパーイでもしゃぶってるお!」

(#゚A゚)「“プニモンを手に入れる”、“恋人へのセクハラ発言の制裁”
  両方やらなきゃいけないのが大学生の辛いところだな……
  覚悟はいいか? 俺はとっくに出来ているッ」

(#^ω^)「オラァー―――ッ!!」

(#゚A゚)「無駄ー――――ッ!!」

『ドックオ!』



49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:17:17.33 ID:JG/hJICFO



<#ヽ`∀´>「ファビョーン!!」

 ブーン達の隣の部屋で頬の痩けた男が叫んだ。
 その目は血走り、こめかみからは血管が膨らんで破裂しそうだ。

<#ヽ`∀´>「毎度毎度五月蝿くしやがって! ドックオとかわけ解らんニダ! もう我慢ならんニダ!!
  賠償と言わず物的に訴えてやるからそこ動くなニダ!!」

 壁越しに隣人を怒鳴り付ける。
 壁の向こうは一瞬空気が固まったあと、またどたばたと騒がしくなった。
 怒りも顕に立ち上がり、荒々しく足を踏み締める。

 音を立てて外に飛び出し、隣人の玄関をノック無しに開いた。

<#ヽ`∀´>「テメェらいい加減にっ……」
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:18:31.20 ID:JG/hJICFO

 しろ、と言おうとして言葉にならなかった。
 何故なら、

(゚A゚▼)「DO・DO・DO・DO」

 そこにいたのは、

(▼゚ω゚)「DO・DO・DO・DO」

 茶色い毛玉に動物の角を突き刺した奇妙なオブジェを、奇声とともに仰ぐように崇める、

(▼゚ω゚)「DO=KUO! DO=KUO!」(゚A゚▼)

 隣人と蛮族だったからである。
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:19:32.46 ID:JG/hJICFO

<;ヽ`∀´>「ファ……ファビョーン……」

 理解の範疇を越える出来事に遭遇した時、人は誰しもアクションを起こせないものだ。
 それは怒っていた男も同じようだ。
 彼は引き吊った表情で止まっている。

 部屋の中はカーテンを閉めきって薄暗く、オブジェは下から角を煽るように
ライトアップされていた。
 二人の狂人は儀式に割り込んできた男に気付くと、儀式を中断。
 その内の一人、元隣人は今までのトランスが嘘だったように普段と同じ柔和な声色で、

(▼^ω^)「あ、ニダーさんすみませんお! 親戚が来たものだからつい盛り上がってw」

<;ヽ`∀´>「……し、親戚、ニダ?」

(▼^ω^)「ええ、母の妹が嫁いだ先があの人の部族でしてw」

<;ヽ`∀´>「部族……」

 それまで黙っていた半裸の蛮族は、唐突にニダーと呼ばれた男を指差した。

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:21:05.35 ID:JG/hJICFO

(゚A゚▼)「ヤシノスペックキボンヌ」
 訳:そいつ誰だ?

(▼゚ω゚)「トナリノニダーデスガナニカ?」
 訳:隣人のニダーさんだお

(゚A゚▼)「アノテイドデサワグヤツハDQN、イッテヨシ」
 訳:なんかメチャクチャ怒ってるんだけど、ヤバイ人?

(▼゚ω゚)「オマエモナー」
 訳:お前が騒ぎ過ぎたせいだお

(゚A゚▼)「ショウジキスマンカッタ」
 訳:正直済まんかった

(▼゚ω゚)「プギャーwツラレテンジャネーヨww」
 訳:まあ元々怒りっぽくて陰険な人だからw気にするなおww

(゚A゚▼)「シネ、シネジャナクテシネ」
 訳:おいおい、驚かすなよ


<;ヽ`∀´>「な、何言ってるニダ?!」

55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:21:47.42 ID:JG/hJICFO

(▼^ω^)「あっ、ごめんなさいですお、なんかノってきたところで中断されてヤバイくらい興奮してるみたいでw」

<;ヽ`∀´>「そ、そそそそうニダか……急用を思い出したニダ! 次に五月蝿くしたらただじゃおかないニダ!」

 引き腰で捨て台詞を残すと、ニダーはそそくさと去っていた。
 玄関を閉めるとブーンは頬のステッカーを剥がす。

( ^ω^)つ▼「サッカー観戦の時のステッカーがこんな役に立つとは………これでしばらく何も言ってこなくなるおww」

(;'A`)つ▼(こいつここを追い出されたら行く当てあるのか……?)

 同じくステッカーを剥がすドクオの呟きは、ブーンには届かなかった。

('A`)「まあ、こんな珍妙生物周りにバレたら大騒ぎになるしな」

( ^ω^)「もう動いていいお、ツノモン」

 声とともにテーブルのオブジェがくるりとブーンに向き直る。

『ドックオ! イッテヨシ、ドックオ!』

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:23:05.47 ID:JG/hJICFO

(;'A`)「変な言葉覚えちまったな………」

『プギャー! プギャー!』

( ^ω^)「はいはいそのくらいにしとくお。 今度は下の階の人に怒られちゃうお」

『ツノモン、キボンヌ、ナニカ! ネーヨ!』

 新しい単語を覚え得意気にはしゃぎ、部屋の中を駆け回るツノモン。
 ブーンの言う事は聞こえていないようだ。

(;^ω^)「ああもう、ツノモン静かにするお!」

(;'A`)「人間で言ったらまだ幼稚園児くらいなんだろうな、こりゃ厄介だ」

(;^ω^)「困ったお、どうしたらいいお?」

 二人がしばし黙る。
 その間もツノモンの一人かけっこは止まる気配が無い。
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:23:58.56 ID:JG/hJICFO

('A`)「……三人寄れば文殊の知恵。 ここは彼女の知恵を借りてみよう」

(;^ω^)「なんか間違ってる気もするけど、頼むお」

 ドクオが携帯を取り出し、ブーンはツノモンを捕まえた。

『ツカマタ! クスグタイ!』

( ^ω^)「ツノモン、ブーンと勝負するお。 今から先に喋った方が負けだおハイスタート!」

『……!』

 素直に黙ったツノモンを確認して、ドクオはダイヤルをプッシュ。
 二回目のコールで女性の声が聞こえてきた。

『もしもし』

('A`)「もしもし、今ちょっと話したいんだけど大丈夫か?」

『構わないが、どうした? こっちにも来てないみたいだが』

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:25:50.26 ID:JG/hJICFO

('A`)「ちょっと友達がトラブってて……それで聞きたい事があるんだけど」

『何だ?』

('A`)「もし目の前に小さい……幼稚園児くらいの子供、しかも男の子をあやすとしたら、どうする?」

『……何?』

 流石に余りに予想外の質問に、電話の女性はすぐに答えられなかった。

('A`)「突拍子も無いよな、ごめん。 でもどうしても今すぐ知りたいんだ」

『それはどういう……』

 真剣さを帯びたドクオの声。
 電話の女性は戸惑ったあと、息を飲んだ。

『そうか……そういうことか』

('A`)「どうしたんだ?」

61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:26:30.90 ID:JG/hJICFO

『いや何も言わなくていい……成る程、奥手なドクオらしいと言えばドクオらしい』

(;'A`)「……?」

『ふふふだがその程度では私は靡かんっ。 今晩待っていてやるから準備を万全にし、全力で掛かってこいっ』

(;'A`)「え? 何? あれ質問は?」

『ああ、そうだったな。 そうだな私なら……玩具でとか、昼寝させる、あとは外でキャッチボールとか』

('A`)「外か……そうか、ありがとう」

『お礼は態度で示してくれればいい。 私を失望させるなよ?』

(;'A`)「あ、ああ……じゃあまた後で」

『うむ、また後で』

 首を傾げながらドクオは通話を終了した。

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:27:23.69 ID:JG/hJICFO

('A`)「外か……」

 カーテンを開く。
 ガラスの向こうの空から、暖かい陽光が三人に降り注いだ。

63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:28:28.73 ID:JG/hJICFO




 天上に達した陽光がシーソーの擦りきれた取っ手を鈍く輝かせる。
 住宅街の端、雑木林に囲まれた公園にブーンとドクオはやって来た。
 公園の広さは家一軒分程で、遊具はブランコとシーソーと滑り台。

 どれも所々塗装が剥げて、錆びている部分が目立つ。
 ドクオは手ぶらだが、ブーンは膨らんだボストンバックを抱えていた。
 人が公園内にいないことを確認し、ボストンバックのジッパーを開ける。

 その中からひょっこりと顔を出したツノモンは、辺りを見回すと目を輝かせた。

『ココドコ?! ココ、ソトカ?!』

( ^ω^)「おっお、ここは公園だお。 ここなら好きなだけ走っていいんだお」

『ホント?!』

 ボストンバックを地面に降ろすや否や、ツノモンは直ぐに飛び出した。

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:29:19.72 ID:JG/hJICFO
 真っ先に滑り台へ跳び跳ねていくと、階段では無く滑り台を登り出す。
 勢いで中腹までは登れるが、最後は堪えきれず滑り落ちた。

『コレナンダ?!』

('A`)「それは滑り台って言って、そっちじゃなくて階段から登るんだぞー」

 それを聞き今度は階段から登るツノモン。
 登頂部から台を滑り落ちると、慣性の法則で二度バウンドして着地した。

『スベリダイ、オモシロイ! プギャー!!』

 何度も跳び跳ねて喜び、登っては滑ってを繰り返す。

( ^ω^)「すっかり気に入ったみたいだおねww」

('A`)「狭い部屋に閉じ込めてちゃ可哀想だしな」

 二人はシーソーへ横座りに腰掛け、はしゃぐツノモンを眺めた。
 足を着けたまま、どちらともなくシーソーを漕ぎ出す。

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:30:23.79 ID:JG/hJICFO

('A`)「そういやお前がデジタマなんて言うから懐かしくなってな。 仕舞ってたの出してみた」

 ドクオはポケットから、擦り傷だらけの小さな玩具を取り出した。
 黒いフレームのそれは、真ん中の液晶に何も映っていない。

('A`)「さすがに電池切れだったよ。 最後はホエーモンだったかな」

( ^ω^)「……懐かしいおね」

('A`)「もう触ることも無いと思ってたもんな」

 そう言うドクオはかつて熱を上げ、自分に友達を作ってくれた玩具を指でそっと撫でた。

('A`)「……なあブーン」

 玩具を眺め、努めて普段と同じ調子でドクオは言う。

( ^ω^)「何だお」

 ツノモンを眺め、やはり普段の調子で答えるブーン。

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:31:03.81 ID:JG/hJICFO
 ふと気付けば、ツノモンが今度はブランコを漕ぎ出していた。
 二人はずっと変わらぬリズムでシーソーを漕ぎ続けている。
 ブーンが上がり、ドクオが傾く。

('A`)「やっぱりお前は」

 ドクオが上がり、ブーンが傾く。

('A`)「まだあの娘の事――」

( ^ω^)「ドクオ」

 ブーンは上がらず、ドクオは宙で止まった。
 ドクオがブーンを見る。
 視線の先、ブーンは俯いていた。
 その横顔は普段と変わらなく見えるが、声は酷く無機質に響く。

( ^ω^)「――ドクオ」

('A`)「……すまん」

67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:32:26.34 ID:JG/hJICFO

 玩具を握り締め、ドクオも俯こうとした。

『ドックオー――!』

('A`)「え」

 呼ばれて前を見る。
 そこには、手裏剣のように回転しながらドクオへ飛来してくる角付き毛玉の姿。

(;゚A゚)「なんじゃああああぁぁぁぁぁ?!」

(;^ω^)「避けるおドクオオオォォォォ!!」

 ブーンが叫んだ時にはドクオは既に回避運動に入っていた。
 上体を反らし毛玉手裏剣の下に逃げようとする。

(;゚A゚)(ヤバいはえぇぇ!!)

 しかし避けきれない。
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:35:47.52 ID:JG/hJICFO
 このままでは顔面に直撃だ。

\(;゚A゚)/(俺オワタ!!)

(;^ω^)「とうっ!!」

 ブーンが取っ手を掴み思い切り地面を蹴りつける。
 ブーンの方へ傾いていたシーソーが逆へ傾き、浮いていた空間分ドクオの体が下へスライド。
 毛玉手裏剣はドクオの鼻先と前髪をかすり、そのまま雑木林の一本へ突き立った。
 それを仰向けの体勢で見届けたドクオは、

(;'A`)「助か――」

Σ(; A ) ゚ ゚「ったばぁ!!」

 頭から地面へ落っこちた。
 ドクオの目の前に火花が飛び散る。

『ドックオ! ブランコオモシロイ、プギャー!』

 突き刺さった角にぶら下がっているツノモンは、興奮冷めやらぬといった様子でケタケタと笑い出した。

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:36:27.60 ID:JG/hJICFO
 ブーンは窺うようにドクオの顔を覗きこむ。


(;^ω^)「……大丈夫かお?」

(;A;)「……何とかな」

 言葉と裏腹に、ドクオは涙目だった。

72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 19:38:09.99 ID:JG/hJICFO




 その日ツノモンは、飽きる事無く日が暮れるまで公園で遊び続けた。
 夕飯の買い物を済ますと、家の前には途中で帰ったはずのドクオがいた。
 本人曰く、“何故か怒った彼女に追い出された”と言う。

 こうして二人と一匹は隣人不在の角部屋で夜も騒ぎ続け、疲れ果ててから眠ったのだった。

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