4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:36:30.91 ID:JG/hJICFO


 横断歩道の信号機が赤から青に変わった。
 夜の帳の降りた無人のスクランブル交差点。
 周囲に音は無く、薄暗い白線を朧気に照らしているのは街灯の白い明かりだけだ。

 そこは深夜のオフィス街。
 人が通る気配も無く、信号機が寂しく己の務めを果たそうと青のランプを点滅させ始めた時。
 不意に微かな音が響いてきた。
 断続的に響くその音は段々と大きくなっていく。

 アスファルトに散った小石達が音がする度に跳ね上がる。
 そして交差点が不意に大きな影に包まれた時。
 白線達の交わる中心に巨大な鉄塊が落とされた。

 轟音。
 鉄塊はアスファルトを砕いて浅くその身を埋めると、破片を散らかした。
 そして煙の尾を引きながらゆっくりと持ち上がり、交差点を越えていく。

 交差点には、まるで爬虫類の足跡ような跡が刻まれた。
 否。
 それは竜の足跡だった。

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:38:15.12 ID:JG/hJICFO
 闇を赤く照らす両眼。
 大木すら容易く引き千切りそうな三本の大爪。
 背中で揺れる一対の巨砲。

 見上げるほど巨大な鋼色の機竜が、オフィス街と目線を並べ二車線道路を進んでいく。
 その時、機竜の目が前方に小さな影を捉えた。
 真っ直ぐこちらに向かってくるのは、風すら切るような速度の青い影。

 青い影は速度を保ちながらビル壁を蹴り登り、夜空へと身を踊らせた。
 月に重なり浮かび上がった姿は、青と銀の狼。
 機竜と比べれば小さいが狼と呼ぶには巨大な獣は、口を食い縛るように閉じ空中で身を反らした。

 天を見上げるような体勢から顔を下、機竜のほうに向け閉じていた顎を大きく開く。
 迸る青の炎。
 狼の口から生まれたそれは、拡がりながら機竜へ向かいその巨躯を飲み込んだ。

 ビルのガラス窓がけたたましく弾け、街路樹の葉を青く染め上がる。
 しかし、炎から突き出る銀の爪。
 一閃で炎を振り払い、無傷の機竜が怒号を上げた。

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:39:09.98 ID:JG/hJICFO
 機竜の視線の先には身を低くし、今にも飛び掛かろうと力を溜める狼。
 互いに睨み、相手の出方を伺おうと静止する。
 世界が止まったような静寂が場を支配する。

 その時、微かに風が吹き炎で焦げた街灯の頭がぐらりと揺れた。
 根本が溶解しかけたそれは徐々に傾き、唸りを上げて加速。
 盛大な音を立てて歩道にその身を打ち付けた。

 弾かれたように再生される世界。
 狼は全力で地を蹴り、機竜は風を纏わせ鋼の大爪を振り上げる。
 二つの影が交錯し、そして―――
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:40:52.91 ID:JG/hJICFO



(;^ω^)9m「ハイ夢ー――!!」

 慌ただしく叫んだ青年は掛け布団を跳ね飛ばして起き上がった。
 畳の六畳間で肩を上下し額の汗を拭う。

(;^ω^)「ふうwwあんなのが現実なわけ無いお、常識的に考えてwwww」

 は、と連続して笑い青年は最後に溜め息を着いた。

( ^ω^)「成人してもあんな夢見てるようじゃ、まだまだ中二病かもわからんね。
  さぁて朝ごはんの用意を――」

 首を横に向け、見つける。
 縞模様をした巨大な卵を。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:41:58.35 ID:JG/hJICFO




    第一話  拾ったモン





11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:43:14.16 ID:JG/hJICFO


 鉄の階段を登る軽快な音が響く。
 汚れていかにも安そうな小さなアパート。
 その通路を音の主は歩き、一番奥の扉まで来るとそれを開いた。

('A`)「おーす、来たぞブーン」

 玄関に現れた青年はそう言って中に入った。
 黒い長髪の彼は黒のコートと靴を脱ぎ、奥へ進む。

(  ω )「ドクオ……いや」

 奥ではブーンと呼ばれたベージュのタートルネックの青年が後ろ向きに座っていた。
 ブーンはドクオと呼んだ青年に向き直ると、潤んだ瞳で丸く膨らんだ腹部を撫で、

(*^ω^)「ドックン、あたい出来ちゃった(はぁと」

(#'∀`)「へえキメェなあとドックン呼ぶなキメェ」

(;^ω^)「し、しどい! あたいとはお遊びだったって言うのね?!」

('A`)「帰るわ」

( ^ω^)「待て、悪かった」

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:45:07.16 ID:JG/hJICFO

 ドクオは溜め息を着くと荒々しく畳に座り込む。
 それを生まれつき笑っているような糸目で眺め、腹部を撫でるブーン。

('A`)「こっちだって暇じゃないんだ、ふざけてないで手短に頼むぜ」

( ^ω^)「おーおー天下の国立大学生様は御多忙ですおね」

('∀`)「僻みにしか聞こえないぜww暇だらけのフリーターさんww」

( ^ω^)「元ニートが優越かましてんじゃねぇおwww」

(#'A`)「違いますー! 一年間浪人してただけですー!」

( ^ω^)「おwwwんwwwなwwwじwww」

('A゚)「ちょっと表へ出ろ……久々にキレちまったぜ……」

( ^ω^)「正直すまんかった」

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:46:18.59 ID:JG/hJICFO

 またもや溜め息。

('A`)「んで? その腹のもん何だよ?」

( ^ω^)「そうなんだお、これを見てほしいんだお」

 服を膨らましていたものをブーンが取り出す。
 重たそうに慎重に両手で抱えたそれは、縞模様の巨大な卵だった。
 テレビほどの大きさのそれは、ブーンの腕の中に窮屈そうに収まっている。

( ^ω^)「どう思う?」

('A`)「すごく………大きいです……ていうか何だこれ? オモチャ?」

( ^ω^)「デジタマ」

('A`)「は?」

( ^ω^)「いや、だからデジタマ、これ………」

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:48:16.80 ID:JG/hJICFO

('A`)「…………」

(;^ω^)「あ、いや今のは僕が悪かったお! ちゃんと一から説明するからその豚を見るような蔑む目は精神的にらめぇぇ!」

 ブーンは語り出した。

 昨日酔っ払って帰路に着いた事。
 その途中道端にあったこの卵を見つけた事。
 卵が昔見たデジタマとあまりにそっくりだった為、つい持ち帰ってしまった事。

( ^ω^)「……と、三行でそういうわけ何だお」

(#'A`)「なーにが何だお、だ。 だだ酔っ払いが粗大ゴミ拾ってきたってだけじゃないか。
  相談ってのはそれ元のとこに戻すの手伝えって事じゃないだろうな?」

( ^ω^)「いやそうじゃなくて」

 ブーンは困ったお、と呟き後頭部を掻くと卵を指差した。
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:49:50.73 ID:JG/hJICFO

('A`)「?」

( ^ω^)「いや、触ってみ」

 眉間に皺を寄せながらも、言われた通り手を伸ばし触れる。
 ブーンの腹で温められたからか生暖かいそれは、触感はざらざらとした岩のようだった。

('A`)「これが一体どうしたって――」

 その時、卵が微かに動いた。
 内側から外側を叩くような振動が手に伝わる。
 驚いて手を引っ込め、目を見開いた。

(;'A`)「い、今のお前か?」

( ^ω^)「おっおw僕は何もしてないおw」

 生唾を飲み、ドクオは恐る恐るまた手を伸ばした。
 触れると再び伝わってくる鼓動のような振動。

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:51:23.65 ID:JG/hJICFO

(;'A`)「……中に何かいるのか?」

( ^ω^)「さすがに僕もデジモンとは言わないけど、何らかの生物の卵なのは間違い無いお」

(;'A`)「………」

 二の句を告げずに口をあんぐりと開けるドクオ。

( ^ω^)「しかも段々動きが激しくなってるみたいだお。 もうすぐ生まれるかもしれんお」

(;'A`)「……生まれたら、どうするんだ?」

( ^ω^)「場合によっては、拾った責任として飼おうと思うお。
  さすがにグレムリンとかだったら保健所行きだけど」

(;'A`)「テレビの観過ぎだバーローwww」

( ^ω^)「まあ要はこの卵が何なのか調べて欲しいんだお。 本屋の図鑑じゃこんなの載ってるわけないお」
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:53:13.48 ID:JG/hJICFO

(;'A`)「いや待て待て、そもそもこれ本当に道端に落ちてたのか?
  怪しい貿易商さんとかから買い取ってしまったんじゃないのか?」

( ^ω^)「そんな知り合い出店でカラーヒヨコ売ってるおっさんしかしらないお。
  ていうかあれって体の良い身売りだと思わないかお?」

('A`)「んなこと言ったら亀とか金魚どうすんだよ魚権侵害か、ってか話が逸れてる」

 うーん、とブーンが少し考えたあと、

( ^ω^)「まあ仮にこれを交番に持ってったって、生まれた子が適当な扱いを受けたら可哀想だお」

 ブーンは糸目を愛しげに更に細めながら卵を撫で、

( ^ω^)「だったら少なからず育てる気のある僕の元にいたほうが、毒殺される運命だとしても少しは幸せだと思わないかお?」

 その時ドクオはやっと気付いた。
 行き当たりばったりなこの青年が熱弁を振るう時は、それに興味がある時だけだ。

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:54:44.42 ID:JG/hJICFO
 つまり。

('A`)「……卵の中身が知りたいだけだろ、お前」

( ^ω^)「ギクン」

 わざとらしく呟いた糸目に、ドクオは三度目の溜め息を吐いた。

('A`)「わーったよ、大学の生態学の連中にでも聞いてみらぁ。
  その代わり危険なやつだったら自分でどうにかしろよ」

( ^ω^)「おっお、恩に切るお。 今度廃棄のコロッケパンご馳走するお」

('A`)「そういやバイトどうしたんだ? シフト今日だったろ?」

( ^ω^)「どうせ混まないから適当に法事で誤魔化したお」

('A`)「今度は誰を弔ったんだ?」

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:55:52.86 ID:JG/hJICFO

( ^ω^)「実家の隣(の小屋)に住んでた家族同然の内藤一郎さん(故犬)だお」

('A`)「歳が歳だから縁起でもねぇぞ。 ………でも懐かしいな」

 苦笑したドクオは、ふと窓の向こうに視線を向ける。
 外は昼下がりの陽気に包まれ、春近づく三月の空は青く澄んでいる。

('A`)「ブーンと喋ったきっかけって一郎だったな」

( ^ω^)「そうだったかお?」

 釣られて外を眺めるブーンにドクオはああ、と頷く。

('A`)「公園でお前達が遊んでるの遠巻きに眺めててさ。
  ほら、あの時俺越して来たばっかりだったし、人見知りが激しかったから。
  一人で砂山作ってたら一郎が飛び付いて来て」

 お、と頷く声が聞こえた。

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:56:52.22 ID:JG/hJICFO

( ^ω^)「思い出したお。
  気が付いたら鉄棒に繋いでた一郎が勝手に抜け出して、貧相な子供にじゃれついて――もとい、押し倒してんだお」

('A`)「んでそん時に落としたデジモンをお前が拾って、勝負しようって言ってきたんだよな」

( ^ω^)「メタルマメモンなんて実物で初めて見たもんだから、つい勝負してみたくなったんだお」

('A`)「ヌメモンだった癖になww」

( ^ω^)「うっせww最後はちゃんともんざえモンに進化させたおww」

('A`)「でもあの時のデジモンって、一種のステータスだったからなぁ。 俺も自然にグループの中に入れたわけだ」

 ドクオは視線を動かし、今度は卵を見る。
 光を反射する表面が光っていた。
 懐古を含んだ笑みを漏らし、

('∀`)「……それがデジタマってのも、悪くないかもな」
  _, ,
( ^ω^)「はぁ? 非現実的なのは顔だけにしてくれませんかお?」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 18:58:56.17 ID:JG/hJICFO

(#゚A゚)「キスすらまだのお前に言われたくないわこの童貞!」

(;^ω^)「どどど童貞ちゃうわ!」





 二人の会話は途切れることなく続き、一時間ほど喋ったところでドクオが“彼女を待たせている”と言って帰っていった。
 それを塩を撒いて見送ったブーンはその後、しばらくじっと卵を観察していたが特に変化は無かった……

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