- 4 :
◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月)
14:57:04.28 ID:cThs3pONO
- いつの間にかその国の人たちは、
犯罪が起こらないのを当たり前のように考えていた
少し前のこの国は犯罪が絶えなくて、
皆口々に物騒な世の中だと文句を垂れていた
だけど今は常に平和が傍らにある素晴らしい国
とても素晴らしい国
ある日科学者が脳を操作し、人々の思考や記憶を操作する技術を発見した
その発見は僕らの国の秩序を大きく変えた
毎日機械が人々の脳から記憶を覗き、
犯罪に繋がりそうな記憶は削除し、明日を迎える
僕らの国はレジスタンスが絶対に起こらない国となった
犯罪が起きない国は
革命も起きない国だった
教科書には
素晴らしい国だと
載っていた
教科書には
- 5 :
◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月)
14:58:37.19 ID:cThs3pONO
- (;^ω^)「ドクオ」
('A`)「深夜2時に電話するのは無礼だとは思わなかったのか」
恐らく寝ていたのだろう
受話器の向こうのドクオの不機嫌は手に取るようにわかった
でも今はそんなことに構ってられない
(;^ω^)「デリータが壊れたお」
《デリータ》とは僕らが記憶を消す際に用いる道具だ
ヘッドフォンのような形状をしていて、装着すれば軽い電流が流れる
詳しい仕組みは知ったことではないが、それによって犯罪に繋がる記憶を消しているらしい
国民はそれを毎日一度は装着することが義務付けられていて
それを怠れば額に割れたハートのマークが浮かび上がる
その割れたハートのマークを額に残したままであれば
反逆者としてすぐさま、法によって裁かれる
(;'A`)「……それヤバくね?」
- 7 :
◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月)
14:59:46.48 ID:cThs3pONO
- (;^ω^)「だからドクオのデリータを貸して欲しいお」
(;'A`)「え、明日デリータを学校に持ってくの?」
(;^ω^)「ダメかお?」
(;'A`)「俺のやつ旧式だから重いんだよな……」
(;^ω^)「明日学校終わったらデリータ修理に出すから明日だけ貸してくれれば良いんだお!」
(;'A`)「……わかったよ……んじゃ、明日学校持ってくわ」
( ^ω^)「恩に切るお!」
- 8 :
◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月)
15:00:49.57 ID:cThs3pONO
- 翌朝、ブーンは額に薄く浮かぶハートのマークを鏡を見て確認し
テレビを点けてからトーストをかじり、そのマークをなぞる
(;^ω^)「……これは結構目立つかもしんないお……」
それに答えるように、テレビに映るニュースキャスターが原稿を読み上げた
『本日はわが国にデリータが世界で初めて導入された日です
今日も恒久たる平和と正義の為に、犯罪の火種を脳から消しましょう』
犯罪の火種、とは犯罪に繋がる記憶を暗喩してることはわかった
デリータの誕生日の前日を自らのデリータの命日にした皮肉な偶然にブーンは失笑しか出来なかった
(;^ω^)「早くドクオからデリータ借りないと逮捕されちゃうお……」
- 9 :
◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月)
15:02:53.98 ID:cThs3pONO
- ブーンは最後にトーストを口に放り込み、学校鞄を持った
そしてテレビを消した後にもう一度額のマークをなぞり、ブーンはぽつりと呟いた
( ^ω^)「……そういえば何で割れたハートのマークが反逆者のマークなんだお……?」
誰がデザインしたのかはわからないが、それは以前から気になっている疑問だった
昔、日本という国は犯罪者には刺青を行うという風習があったが、それに関係しているとか?
ブーンは解せないまま、いつもより早く玄関の戸を開けた
通学路は疎らで、額のマークを見られる可能性は低かった
念のためブーンを普段から人通りの少ない道を選ぶ
- 10 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:05:09.26 ID:cThs3pONO
- (;^ω^)「警察にだけは気をつけないといけないお……」
警察に額のマークを見られれば、事情を説明すれば逮捕は無いものの
警察から厳重指導や学校や家庭に連絡が行き渡る可能性は大いにある
ブーンが電柱に身を隠すなど明らかに不自然な移動をしていると
(´・ω・`)「……なにしてんのさ」
ショボンに見つかった
Σ(^ω^;)「ヒィ!!!」
(;´・ω・`)「ちょ!!!その額のマーク……!!」
(;^ω^)「ちょwwwシーッ!!」
(;´・ω・`)「……どうかしたの?」
- 11 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:06:35.81 ID:cThs3pONO
- (;^ω^)「デリータ壊しちゃったお」
(;´・ω・`)「ちょっ、僕のパパの商品をちょっと……」
ショボンの父はデリータの開発スタッフの一人であり、
記憶治安維持連盟の会長であったことを思い出す
そのためかショボンの今の顔は非常に悲しみと戸惑いが隠せない状況にあった
(;´・ω・`)「どうすんのさ?」
(;^ω^)「ドクオのデリータを借りるお」
(;´・ω・`)「他人のデリータはデジャヴに弱いのは知ってるでしょ?また記憶蘇るかも……」
(;^ω^)「もうこの際、額のマークが消えれば良いんだお!」
(;´・ω・`)「……近いうちに家に持ってきなよ。直したげるから」
( ^ω^)「おぉ!ありがたいお!」
- 12 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:07:47.89 ID:cThs3pONO
- ショボンは肩を落とし、深くため息を吐いた
二人はいつの間にか通学路を歩いている
(´・ω・`)「今日ね、ウチの晩御飯たぶん豪華なんだ」
( ^ω^)「ほお!」
何で? と聞こうと思ったが、記憶をひっくり返せばそれはすぐわかった
今日はデリータの誕生日だからだ
(´・ω・`)「パパが帰って来れるかはわからないけど……今日はパパの努力が実った記念日だから」
ショボンの父は今や記憶治安維持連盟の会長の為、
帰宅する間も無いのだろうとブーンは無言で頷いた
(´・ω・`)「だから僕もパパみたいに頑張らなくちゃ」
- 13 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:08:47.06 ID:cThs3pONO
- その時、ハッとブーンはショボンの顔を見る
(;^ω^)「……また勉強で寝不足かお」
(´・ω・`)「ん、いつもよりは寝たよ」
ショボンはいつだってそうだ
彼の父親が残した偉業は国を変える多大な影響は、
それ以上に息子のショボンへの期待へと繋がった
ショボンは寝る時間さえも削って少しでも父日近づこうと努力していた
ショボンの目の下のクマが、それを物語っている
(;^ω^)「……ショボンはショボンなんだから、あまり無理しちゃダメだお」
(´・ω・`)「僕はこの国を守るんだ」
ショボンは遠い目で、答えた
- 15 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:10:00.58 ID:cThs3pONO
- ( ^ω^)「そういや何でショボンは今日こんなに学校来んの早いんだお?」
(´・ω・`)「ああ、今日は生徒会の仕事があるんだ」
(;^ω^)「………」
(´・ω・`)「どうしたの?」
(;^ω^)「……あまり無理したらダメだお」
(´・ω・`)「大丈夫だよw慣れてるもの」
ショボンが無理やり笑顔を作ると、二人は学校に着いた
生徒玄関の前でクーが腕を組んで待っている
クーが僕らに気付くと、彼女は声を張り上げた
川 ゚ -゚)「ショボン!大変だPCが壊れた!」
機械音痴のクーがPCの異常を訴えるのは今に始まったことではない
ショボンは適当に返事し、駆け寄って生徒玄関の向こうへ姿を消した
- 17 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:12:01.32 ID:cThs3pONO
- ( ^ω^)「………」
ブーンはその姿より少し遅れて生徒玄関へ足を進める
だが、何故かブーンは足を止めた
誰かに呼ばれたわけでもないのにグラウンドの方へ目をやると、
見たことのない私服の女性がいた
ξ゚听)ξ「………」
女性は遠い目で校舎を見上げている
少女肌白く、小柄で金色の長髪が目立つ
やがてうつ向き、校門の方へ、ブーンのもとへ歩み寄ってきたく
ふと女性が顔を上げたときにブーンと目が合った
- 18 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:13:26.22 ID:cThs3pONO
- ξ゚听)ξ「……なによ」
(;^ω^)「へ?」
ξ゚听)ξ「どきなさいよ!」
(;^ω^)「ヒィ!」
ξ゚听)ξ「何よアンタ、あたしが学校行ってないからって見下してるの!?」
(;^ω^)「そっ、そんなことは…ってか学校行ってないのかお……?」
ξ゚听)ξ「そうよ私服よ!見て分かるでしょ!?悪い!?」
(;^ω^)「わ、悪くないお!」
ξ゚听)ξ「ふんっ!!」
女性はわざとブーンに肩をぶつけ、校門を通った
ふと振り返り、ブーンに向かって声を張り上げた
ξ;;)ξ「どうせアンタも、あたしのこと忘れんでしょ!!?」
- 19 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:14:20.74 ID:cThs3pONO
- 自棄になったかのように、女性は叫ぶ
震えた声で、潤んだ瞳
彼女は乱暴に涙を拭って踵を返し、何処かへ帰った
(;^ω^)「忘れる……?」
ブーンはぶつかった肩を撫でながら、言葉を復唱した
結局その言葉の意味もわからないまま、教室へ向かった
そういえば彼女は、僕の額のマークには何も触れなかった
もちろん彼女の額にマークは無かった
それらから、彼女はマークがある人に慣れていることを意味してるように思えた
ブーンはそれとは関係無く、彼女にまた会いたいと思った
- 21 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:15:41.56 ID:cThs3pONO
- 教室にはドクオしかいなく、その机の上にはデリータが置かれていた
('A`)「おっすブーン」
(*^ω^)「おっ、持ってきてくれたのかお!」
('A`)「そりゃあ、俺は約束を守る男よ」
( ^ω^)「さっすがドクオだお!早速借りてもいいかお?」
('A`)「まあ良いけどよ……お前自分のデリータどうすんだ?修理って金かかんぞ」
( ^ω^)b「ショボンが直してくれるってお!」
(;'A`)「………お前遠慮って知らんの?」
- 22 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:16:46.65 ID:cThs3pONO
- ブーンはデリータを装着し、目を閉じた
キィ…ンと光が走るような音の直後、立ち眩みに似た感覚に陥った
それが治まると、ブーンは目を開きドクオへデリータを返した
その間に、額のマークは消えていた
('A`)「終わったか?」
( ^ω^)「終わったお」
('A`)「まあ、また何かあったら電話しろよ。深夜は流石に勘弁だが」
( ^ω^)「ありがとお」
ちらほらと、教室に人が入り始めた
それを見たドクオは鞄にデリータを仕舞った
('A`)「そういや1時間目は授業つぶれんな」
( ^ω^)「え?なんでだお?」
(;'A`)「……ホントにわかんねぇの?」
- 23 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:19:32.36 ID:cThs3pONO
- その言葉を聞いて、ブーンは記憶をひっくり返す
そういえば今日はデリータが発明された日であったことを思い出した
毎年この日になると、ショボンの父――記憶治安維持連盟会長、渋沢ムトウの臨時の演説がテレビで行われる
それは国の現状などを発表する目的でもあるため、ほとんどの国民は目を通す
学生ならば、学校で強制的に見せられることもそう珍しくは無いのだ
(´^ω^)「あーね!難しい話はやーおやーお」
('A`)「まあショボンがいずれ親父さんの跡を継ぐ可能性だってあるんだ。そう言うな」
( ^ω^)「……」
('A`)「どうした?」
- 24 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:20:38.92 ID:cThs3pONO
- ( ^ω^)「ショボンは本当にパパさんの跡を継ぎたいのかお?」
('A`)「はい?継ぎたいから今頑張ってるんじゃねぇの?」
( ^ω^)「いや、なんか周囲の『必ず息子だから跡を継ぐ』っていう期待に無理やり答えようとしてるだけな気がするんだお」
(´・ω・`)「そんなことないよ」
Σ(^ω^;)「うぉっ!!?」
Σ('A`;)「いつの間にそこに!!?」
(´・ω・`)「いや今さっき生徒会の仕事終わったから来たんだけど……」
(;^ω^)「……えっと……」
(´・ω・`)「パパは関係無いよ。僕は、侵されない正義を守るだけ」
- 25 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:22:37.24 ID:cThs3pONO
- 言葉を失う。教壇から担任の声が聞こえた
「おーいお前ら全員来たな。席に着け。委員長はテレビを講義室から持ってくるのを手伝ってくれ」
('A`)「誰だっけ委員長」
( ^ω^)(´・ω・`)「ドクオだ(お)(よ)」
ドクオは文句を垂れながら講義室へ向かう
本人は委員を決めるホームルームの際に
('A`)「なんか進路とか有利っぽいから委員長やる」
と軽く承諾したことなど、もう記憶に無いようだった
気付けばクラスの全員が教室に来ていた
先生とドクオが教室から出ると、生徒たちは席に着く
- 26 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:27:10.17 ID:cThs3pONO
- ブーンは後ろの席のショボンに話しかける
( ^ω^)「そういや今日ショボンのパパさん何話すんだお?」
(´・ω・`)「……わかんない。パパとは会ってないから」
( ^ω^)「ママさんも聞いてないのかお……?」
(´・ω・`)「母さんは…………」
そう言うと、ショボンはうつ向いた
(´・ω・`)「いない。5年前に死んじゃった」
(;^ω^)「えっ………そうなのかお………」
気まずい空気にしてしまった、とブーンは頭を掻く
だがそれよりも、何故ショボンは父を「パパ」と呼ぶのに母は「母さん」なのかということが疑問だった
様々な事情があるだろうから敢えて深くは考えない
- 30 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:31:40.20 ID:cThs3pONO
- (;'A`)「テレビ重てぇよボケ」
ドクオはテレビを教卓の上に置き、電源を点けた
まだ放送は始まっていなく、新型デリータのCMが流れている
どうやらイヤホンタイプのデリータが発売されたようだ
(´・ω・`)「あのイヤホンタイプのデリータも、パパの発明品だよ」
( ^ω^)「へぇ……凄いお!」
担任が教壇から「はい、始まるぞー!注目ー!」と声をあげた
クラス皆の視線がテレビに集中すると、とうとう放送が始まった
画面には多数の記者が一つのマイクの置かれた台を囲い座っている静かな会場が映されている
やがて台に、一人の男が現れた
ショボンの父、渋沢ムトウだ
慣れた手付きでマイクを直し、話し始めた
- 31 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:33:01.14 ID:cThs3pONO
- _、_
( ,_ノ` )「……国民の皆様。本日は言わずもがなデリータが世界で初めてわが国で導入された日です」
_、_
( ,_ノ` )「この恒久たる平和と侵されることのない正義を約束された日に、私から皆様に改めてお話したいことがあります」
_、_
( ,_ノ` )「皆様が存じ上げているように、今や我が国は犯罪発生率ほぼ0%という理想国家を築き上げてきております」
_、_
( ,_ノ` )「それら皆――……このデリータが実現させたのです」
- 35 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:41:37.61 ID:cThs3pONO
- _、_
( ,_ノ` )「このデリータにて記憶削除を行わない人間は《レジスタンス印》……俗に言う《額のマーク》が表示されます」
_、_
( ,_ノ` )「これはデリータを初めて装着した際に脳に直接電気を送り、一定期間同じ電気が送られなければ額のマークが浮かび上がるようになるという仕組みです」
_、_
( ,_ノ` )「額のマークが色濃く残る人間には、連盟から厳重指導の後、強制指導所へ隔離。それで指導を終えたら帰宅が許されます」
_、_
( ,_ノ` )「ですがそれは大抵8年の月日をかけて行うため、長く人生を無駄にすることを意味します」
_、_
( ,_ノ` )「ですがそれは当然の事……国家の秩序を乱すものに月日を与える必要は無いのです」
_、_
( ,_ノ` )「額のマークの割れたハートは、愛国心の亀裂を意味しています」
_、_
( ,_ノ` )「これまで強制指導所に送られた人間は88人。その後復帰の見込み無しと判断され死刑になった人物は1名」
_、_
( ,_ノ` )「その死刑となった1名は強制指導所に送られてもなお、国に反発しました」
_、_
( ,_ノ` )「それは愛国心の亀裂ではなく、放棄を意味するのです」
- 36 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:43:18.16 ID:cThs3pONO
- _、_
( ,_ノ` )「この国の平和は!!記憶削除を軸に連鎖しています!!」
_、_
( ,_ノ` )「皆様も以後、怠る事無く平和の維持をお願い致します」
そう神妙に礼をすると、会場の拍手が沸き上がった
担任が立ち上がり、テレビを消す
「よぉーし、お前らこれからも平和のためにデリータし忘れんなよ。さてホームルーム始めるぞ」
そう浅い言葉の後、ブーンは目の前の席のドクオの肩を叩いた
(;^ω^)「ドクオ」
('A`)「ん?」
(;^ω^)「なんかやっぱりショボンのパパさんってショボンと違う感じなんだおね」
('A`)「正直、俺あんまり渋沢ムトウ好きじゃねぇな」
(;^ω^)「なんでだお?」
- 38 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:45:28.32 ID:cThs3pONO
- ドクオは頭を掻き、ゆっくりと口を開いた
('A`)「だってよ、なんか明らかに国民を見下したような態度じゃん?」
( ^ω^)「あー…わかんなくはないお」
('A`)「まあ」
('A`)「見上げるよりは、見上す方が首が楽だわな」
そうドクオは失笑した
('A`)「それよかブーン」
( ^ω^)「なんだお?」
('A`)「お前朝誰かに会ってねぇだろうな?」
( ^ω^)「Ha?なんでだお?」
(;'A`)「……額のマーク、誰かに見られたらどうすんだよ」
( ^ω^)「ああ!」
- 39 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:47:57.57 ID:cThs3pONO
- ブーンはそこで言葉に詰まる
突然、理由はわからないが、誰かのある言葉が脳裏をよぎる
――他人のデリータはデジャヴに弱いんだよ?――
(;^ω^)「………?」
('A`)「どうした?」
(;'A`)「……まさか」
(;^ω^)「いや!誰にも会ってないお!」
それが嘘だと言うことはわかっていた
だが、誰に会ったのかは覚えていないなんて言えば話は拗れる
そう思ってブーンはそう答えたのだ
――そう……確か……今日の朝………校門前で……私服姿の……
それ以上は思い出せない
- 40 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:50:16.11 ID:cThs3pONO
- ('A`)「………」
(;^ω^)「………」
('A`)「まあ、それなら良いけどよ」
その後、特にこれといった変わったこともなく授業は行われた
授業で多少デリータのことに触れることはあったものの、
それ以上それ以下にも会話は平行だった
そして放課後、ブーンはショボンに訪ねる
( ^ω^)「今日何時ごろショボンの家に行けば良いかお?」
(´・ω・`)「ん?そうだなあ……んじゃ僕は生徒会とかあるし7時頃来てくれる?」
( ^ω^)ゞ「了解だお!」
(^ω^ )「というわけでドクオ!7時まで遊ぶお!」
(;'A`)「いや……俺今日部活あるし……」
- 41 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:53:05.75 ID:cThs3pONO
- (#^ω^)「テメェ童貞のくせに部活なんてすんじゃねぇお!!」
(#'A`)「うっせぇ俺は右手で童貞卒業したんだよバーカ!!」
女子A「えーマジ童貞!?キモーイwww」
女子B「私女だけど右手は卒業にならないと思う」
('A`)「まあ、7時までそう遠くはない」
ドクオは時計に目をやる。午後四時を差していた
( ^ω^)「んじゃ公園でボケーッと時間つぶしてるお」
(;'A`)「サラリーマンかよお前は……まあ良いけどよ」
- 42 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:55:34.80 ID:cThs3pONO
- ブーンは公園に向かった
公園に着いたのは午後四時半で、人も少なく静かにベンチに腰掛ける
ブランコに、見覚えのある影が揺れていた
ξ゚听)ξ「……」
(;^ω^)「あ!」
ξ゚听)ξ「……え?」
少女が此方に気付く。ブーンは少女と目が合ったとき、全てを思い出した
自分は、朝あの少女に出会った
だがなぜ忘れていたのだろう?
それもすぐわかった。デリータのせいだ
(;^ω^)「………」
一気に思考の津波は押し寄せる
文字の突風が疑問を吹き飛ばすようだった
なぜ彼女に関することがデリータによって忘れられたか?
それは彼女が犯罪に繋がる記憶だとデリータが判断したからだ
何故……?
ξ゚听)ξ「……はじめまして」
- 43 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:57:11.19 ID:cThs3pONO
- ( ^ω^)「……はじめましてじゃないお」
ξ;゚听)ξ「!?」
少女は明らかな動揺を見せた
ブーンは少女のもとへ歩み寄る
( ^ω^)「どうやら他人のデリータは……デジャヴに弱いらしいお」
ξ゚听)ξ「……そう、他人のデリータを使ったから……」
( ^ω^)「……君は何者なんだお?」
ξ゚听)ξ「………」
( ^ω^)「君が普通な少女なら、デリータに消されるわけないお」
少女はうつ向き、ため息を吐いた
寂しげな目でブーンを見た後、口を開く
ξ゚听)ξ「……あたしのお父さんはね、反逆者なの」
ξ-匆)ξ「……国に、死刑になったたった一人の男」
( ^ω^)「……」
繋がった
この少女は反逆者の子孫だから、デリータに犯罪に繋がる記憶と判断されたのだ
- 44 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:58:36.04 ID:cThs3pONO
- ( ^ω^)「……」
ξ )ξ「……どうせアンタもあたしのこと忘れんでしょ……」
( ^ω^)「……」
ξ;;)ξ「どっか行ってよ!!アンタが自分のデリータを使えばあたしなんて消えるんだから!!」
( ^ω^)「……」
ブーンは徐にカバンを開け、デリータを取り出し、
ξ;;)ξ「………?」
地面に叩きつけた
ξ;;)ξ「えっ!!?」
( ^ω^)「……」
- 45 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 15:59:35.73 ID:cThs3pONO
- ξ;;)ξ「アンタ馬鹿じゃないの!!?こんなんじゃもうデリータ直らないじゃない!!」
( ^ω^)「……東の方へずっと歩けば、国境を越えれるお」
ξ;;)ξ「……」
( ^ω^)「君を忘れた国から、抜け出すんだお」
ξ;;)ξ「……正気?」
( ^ω^)「正気じゃないのは」
ブーンは少なからず、
( ^ω^)「この国だお」
少女に好意を抱いていた
- 46 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 16:00:45.10 ID:cThs3pONO
- <記憶治安維持連盟>
从'ー'从「ふぇー?あれれー?」
( ゚∋゚)「どォォォしたァアアア!!!?」
从'ー'从「VIP市内にて不自然なデリータ破損があったよぉー?」
( ゚∋゚)「詳しい場所は何処だァアアア!!?」
从'ー'从「ふぇっと……スカルチノフ公園だよぉ。監視カメラを回すねぇ」
渡部がモニターに監視カメラの映像を映すと、ブーンとその足元には破損したデリータがあった
从'ー'从「あらーっ、デリータの意図的な破損は犯罪だよぉー?」
( ゚∋゚)「反逆者はァアアア!!!死ッッ!!!あるのみ!!!!」
( ФωФ)「落ち着けお前ら」
ロマネスクが後ろから口を挟む
( ФωФ)「渡部は直ちにこの映像をもとにこの少年の身柄を調べとけ」
( ФωФ)「クックルは俺と会長のもとに来い」
- 47 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 16:03:11.80 ID:cThs3pONO
- 从'ー'从「ふぇ、わかったよぉ」
( ゚∋゚)「わかったァアアア!!!」
( ФωФ)「……ったく、若いのにデリータの破壊とは馬鹿な……ん?」
ロマネスクがモニターに目をやると、少女の姿が目に映った
( ФωФ)「この少女………」
(;ФωФ)「………このガキまさか!!?」
从'ー'从「ロマたんどうしたの?」
( ФωФ)「……渡部、身柄の調査と平行して、直ちに少年の家に家宅捜査を行え」
从'ー'从「ふぇ?わかったよぉ」
( ФωФ)「……やはり、あの少女も生かすべきではなかったかな……」
( ゚∋゚)「杉浦ァアアア!!!会長のもとに報告しないのかああああ!!!」
( ФωФ)「……そうだな」
- 48 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 16:03:54.38 ID:cThs3pONO
- _、_
( ,_ノ` )「その必要は無い」
(;ФωФ)「会長!!?いつからそちらへ!!?」
_、_
( ,_ノ` )「今だ。この少女、津村の子供だな」
(;ФωФ)「……恐らくそうであります」
_、_
( ,_ノ` )「この少女の目の前でデリータを壊した少年。国に反発する可能性は高い」
_、_
( ,_ノ` )「消せ。津村のガキに関わったとなれば話は別だ」
( ФωФ)( ゚∋゚)从'ー'从「ハッ!」
- 49 : ◆BoonFbjs1s (北海道):2008/09/15(月) 16:06:05.79 ID:cThs3pONO
- _、_
( ,_ノ` )「この少年……ショボンと同い年ぐらいか……」
( ФωФ)「ではVIP市の連盟の人間を直ちに公園へ向かわせます」
_、_
( ,_ノ` )「いや、クックル!!」
( ゚∋゚)「ハッ!!!」
_、_
( ,_ノ` )「お前が始末してこい。発砲は許可しないが、多少手荒な真似はしても構わない」
( ゚∋゚)「了ォォォ解ィイイイ!!!!」
(;ФωФ)「か、幹部の人間を向かわせるんですか?保安隊で十分では……」
_、_
( ,_ノ` )「保安隊では捜査に時間がかかる。直ちに個人に向かわせた方が早い」
_、_
( ,_ノ` )「クックルは検挙率が連盟では一番優秀だ」
( ФωФ)「……この少女は、それほど危険ですか」
_、_
( ,_ノ` )「……目の前でデリータを壊すものがいたならば」
_、_
( ,_ノ` )「話は別だ」
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