196 名前:法廷記録 1/4:2013/03/25(月) 22:57:36.03 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
◆法廷記録
 
 →証拠品リスト
 
  『弁護士バッジ』
  クールの歯形が少し残っている。
 
  『しぃのブロマイド』
  水着姿のしぃが半目で写っている。
 
  『上画面』
  弾痕の場所が記されている。
   《詳細》 は
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_855.png
 
  『解剖記録』
  18時から19時までの間に、後頭部から発砲され即死。
  額に生前できてまもない打撲の痕が確認されている。後頭部から硝煙反応。
 
  『拳銃』
  二発撃った形跡が。
  柄にはしぃの指紋が残っている。
 
 
.

197 名前:法廷記録 2/4:2013/03/25(月) 22:59:26.97 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
  『割れた花瓶』
  キッチンに置かれていた、一度目の発砲により割れた花瓶。
  花が生けられていた痕跡はないが、一日以上は 『上画面』 の位置にあった。
 
  『留守電のメッセージ』
  18時36分のギコのメッセージが残されている。
  内容はしぃを呼び出すもの。 《詳細》 は下記。
 
  『目撃者の写真』
  週刊エビフライデーの記者が18時46分に撮った写真。
  しぃがギコ宅から逃げる後ろ姿を激写。
 
  『防犯カメラの映像』
  18時37分にしぃが菓子屋を出ていく様が映されている。
  そのとき勤めていた店員の証言とも合致。
 
  『紛失した携帯電話』
  猫乃ギコの携帯電話は現場から発見されなかった。
  逃走のさいにしぃが捨てたものと考えられている。
 
 
.
199 名前:法廷記録 3/4:2013/03/25(月) 23:01:09.40 ID:oUxuTfUO0
 
 
 →関係者リスト
 
  川 ゚ -゚) 素直クール(26)
  「猫乃ギコ殺害事件」の担当弁護士。
  今回が “初” の法廷。
 
  (*゚ー゚) 椎名しぃ(23)
  人気絶頂のアイドル。
  恋人殺害容疑がかけられている。
 
  (,,゚Д゚) 猫乃ギコ(28)
  本件の被害者。
  「筋骨そこそこ隆々」な体つきをしている。
 
  (=゚ω゚)ノ 伊予いよう(38)
  検事歴八年の検事。
  スロースターターで「いよいよ有罪」の異名を持つ。
 
  ( ´∀`) 裁判長(??)
  ベテランの裁判長。
  最近すまーとふぉんに夢中。
 
  ( ><) 稚内ワカンナインデス(26)
  VIP県警捜査一課所属の新米刑事。
  女性的で小心者だがお調子者でもある。
 
 
.
201 名前:法廷記録 4/4:2013/03/25(月) 23:02:39.09 ID:oUxuTfUO0
 
 
 → 『留守電のメッセージ』 の内容
 
 
  『もしもし。俺だ、ギコ』
 
  『すまんが、もう一度、俺の家に来てくれないか』
 
  『……さっき、言い忘れたことがあったんだ』
 
  『留守電でメッセージを入れるより、直接話したい』
 
  『………待ってるぞ』
 
 
  『キロク シマシタ
.   2ガツ14ニチ 18ジ36プン』
 
 
.
204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:06:08.89 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
 控え室に戻ったクールはあらためて、
 今しがた自分が背負っていたプレッシャーの重さを認識させられた。
 ほぼ有罪で間違いないしぃの窮境に、
 それをわかっていながらもハッタリをかまし続けることに対する良心の呵責。
 
 開廷前以上に、クールは「帰りたい」と思うようになっていた。
 法廷係官がすぐそこにいるのにも関わらず、むすっとしたような顔になった。
 
 
川 ゚ -゚)「……しぃさん」
 
(*゚−゚)「……はい」
 
 
 クールが言わんとすることを空気で察したのか、しぃも重苦しい顔をした。
 今の彼女を見れば、とても彼女をアイドルとは認められないだろう。
 しかし、アイドルとは得てしてそういうものなのだ。
 
 
.
206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:07:59.22 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
川 ゚ -゚)「なによりもまず確認したいのが、『拳銃』 の指紋だ。
     正直、これがある限り、いつまで経っても君への疑いは晴れないだろうと思う」
 
(*゚−゚)「……それ、ですか」
 
川 ゚ -゚)「殺したかどうか、はさておくとしよう」
 
 
川 ゚ -゚)「 “撃った” のか?」
 
(*゚−゚)「撃ってません」
 
 
 しぃは頑なになって即答した。
 クールはよけいにむすっとした。
 
 
.
209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:10:33.39 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
川 ゚ -゚)「なら、どうして指紋が残っている」
 
(*゚−゚)「………。」
 
川 ゚ -゚)「答え――」
 
(*゚−゚)「……カレの家に行ったとき」
 
川 ゚ -゚)「!」
 
(*゚−゚)「家に行ったら…… 『上画面』 の位置に、ギコくんが、頭から血を流して倒れてた。
     わけがわからなくなって、なんとか、その現状…?を、把握しようとしたんです」
 
(*゚−゚)「そのときに、足元に 『拳銃』 が転がってたのが見えて……
     何の気なしに…… “拾った” 、んです」
 
川 ゚ -゚)「…… “拾った” 、ねえ……」
 
 
 クールは腕を組んだ。
 自分が思っていたのと同じだったため、さして驚くことはなかったが。
 
 しかし、それを聞いても、表情が晴れることはなかった。
 しぃにかかっている容疑も、同様だ。
 
 
.
213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:13:03.06 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
(*゚−゚)「パニックだったなか、それが 『拳銃』 だってわかって……
     怖くなって、そのまま、それを捨てて逃げ出したんです」
 
川 ゚ -゚)「警察には通報しなかったのか?」
 
(;*゚ー゚)「なッ…、できるわけないでしょ!」
 
川 ゚ -゚)「いや、でも君が無実なら恐れることは――」
 
(;*゚ー゚)「ギコくんとの関係がバレちゃうじゃないですかっ!」
 
川 ゚ -゚)
 
 
 言われて、クールはぽかんとした。
 
 「……え、それだけのこと?」
 続けて、クールはそう思った。
 
 
.
217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:15:35.11 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
川 ゚ -゚)
 
川 ゚ -゚)「……ま、まあ… 『拳銃』 については、わかった」
 
(*゚ー゚)「……」
 
川 ゚ -゚)「次。 『紛失した携帯電話』 だが……心当たりは?」
 
(*゚ー゚)「………それって、ギコくんの、ですよね……?」
 
川 ゚ -゚)「ああ」
 
 
 
(*゚ー゚)「知らないですよ、そんなの」
 
川 ゚ -゚)「!」
 
 
.
219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:16:48.29 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
(*゚ー゚)「私、現場と拳銃を見て、びっくりしちゃって……そのまま、逃げたんですから」
 
川 ゚ -゚)「……じゃあ、携帯電話はどこに行ったんだ?」
 
(*゚ー゚)「真犯人が持ち去ったに決まってるじゃないですか!」
 
川 ゚ -゚)「真犯人、ねえ……」
 
 
 クールは腕を組んだ。
 そう都合よく「真犯人」など見つかるものか――といったような心情だ。
 
 クールがそう思っていると、今度はしぃのほうから口を開いてきた。
 おや、と思うと、彼女は先ほどまでには見られなかった、朗らかな笑顔を見せた。
 
 
.
221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:18:28.07 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
(*゚ー゚)「それはそうと弁護士さん」
 
川 ゚ -゚)「ム……なんだ」
 
(*゚ー゚)「事ある毎に『異議あり』って叫ぶのは、ナンセンスですよ」
 
川 ゚ -゚)「…」
 
 
川;゚ -゚)「…?」
 
(*゚ー゚)「せっかく若くて、私には敵わないにしても美人なんですから」
 
川 ゚ -゚)「ム」
 
(*゚ー゚)「もっと、『決めゼリフ』なんてものを作っておいたほうが、華がありますよ」
 
川 ゚ -゚)「私は、法に生きる人間だ。堅苦しくて結構」
 
(*゚ー゚)「私、一応アイドルだから。そこらへん気にするので、堅苦しいのはちょっと」
 
川 ゚ -゚)「あのなあ」
 
 
.
224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:19:44.58 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
(*゚ー゚)「そこで! ひとつ、考えたんですよ。弁護士さんに合いそうで、
     しかもインパクトが強い最高のフレーズを」
 
川 ゚ -゚)「…聞いてる?」
 
 
 
 
 
 
(* ー )「『クールにいこうではないか』」
 
 
 
 
 
.

225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:22:28.07 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
川 ゚ -゚)「?」
 
(*゚ー゚)「――なんて、どうですか! こう、ヨユウたっぷりな素振りを交えて……」
 
 しぃはそこで、「やれやれ」といいながら両方の手のひらを上に向けた。
 ややうつむいて、首を左右に振る。
 
 ――私のマネのつもりか。
 やがてそうわかると、クールは呆れたような顔を浮かべた。
 じゃっかん目を細めて、彼女は無理やり話を本筋に戻した。
 クールはもう一点、聞きたいことがあったのだ。
 
 
.
228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:24:15.65 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
川 ゚ -゚)「あと、次の証人は事件当日、被害者と会ったみたいだが――
 
(*゚−゚)「無視…」
 
川 ゚ -゚)「その人物について、心当たりはあるのか?」
 
(*゚ー゚)「心当たり?」
 
 
(*゚ー゚)「………。」
 
 
 
( `・д・)ゞ「時間です」
 
川 ゚ -゚)「……まあ、なんとかなるさ。行こう」
 
(*゚ー゚)「あ……はい」
 
 
 
 
 
 
 
 
.

229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:26:03.07 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
 
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 
          川 ゚ -゚) クールに決める逆転裁判のようです
 
 
              File.1 「 逆転のバレンタイン 」
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 
                    −2−
 
 
 
 
.
232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:30:24.44 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
 時間の十分を過ぎると、すぐに法廷が再開された。
 裁判長もいようも、定位置に就いている。
 休廷前と変わっていたのは、証人席だった。
 
 ワカンナインデス刑事が消え、いまそこには、誰もいなかった。
 そこに、新たな――「事件当日に被害者と会っていた人物」を迎え入れるのだろう。
 クールは、現状を打破するにはその証人だけが頼りとなるため、その人に期待を寄せていた。
 
 検察側の証人のはずなのに弁護側がそれを期待するとは――と、クールは少ししてから、笑った。
 裁判長の手が鳴らす乾いた音が、法廷内に鳴り響いた。
 よく通る音であり、傍聴人は皆、その音ひとつでとたんに私語を慎んだ。
 
 
( ´∀`)「さて、再開しましょう。準備はいいですね」
 
川 ゚ -゚)「むろん…だ」
 
( ´∀`)「よろしい。じゃあ――」
 
 
(=゚ω゚)ノ「弁護側に無駄に遅延行為をされているため、ちゃっちゃと事を済ませるよぅ」
 
( ´∀`)「係官、次の証人を」
 
 
.
235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:32:30.47 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
 裁判長の手の音。
 続けて、スムーズに係官が動いた。
 彼らも、「ちゃっちゃと」動くように指示されているのだろう。
 クールはそうわかり、つまらなく思った。
 
 
 
 
 
爪゚ -゚)
 
 
 
 
.
237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:34:29.98 ID:oUxuTfUO0
 
 
( ´∀`)「証人。職業とお名前を」
 
爪゚ -゚)
 
爪゚ー゚)「……杉浦、じぃ。フリーターです」
 
 
川 ゚ -゚)「(……女、か……)」
 
 杉浦じぃと名乗った彼女は、背がしぃ以上に低かった。
 栗色の髪で顔つきも幼いのだが、かぶる帽子といい服といい、深緑一色である。
 
 
(=゚ω゚)ノ「証人が召喚された理由は、たった一つだよぅ」
 
(=゚ω゚)ノ「 《額の打撲痕は事件と関係があるのか》 ……そのことについて、証言してもらうためだよぅ」
 
(=゚ω゚)ノ「だから、証人の、それ以外のことに関しては深追いはやめてもらいたいよぅ」
 
(=゚ω゚)ノ「以上を踏まえた上で、まずは 《被害者との関係》 について証言してもらうよぅ」
 
( ´∀`)「関係……わかりました。お願いします」
 
 
爪゚ー゚)「……」
 
 
.
239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:36:22.21 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
 
 じぃは言われて、こくり、とうなずいた。
 そして、そのちいさな口を、ゆっくりと開いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
爪゚ー゚)「……わたしは、ギコくんの、恋人です」
 
 
 
 
 
 
 
.
242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:39:09.90 ID:oUxuTfUO0
 
 
川;゚ -゚)「!」
 
(;*゚−゚)「!!」
 
( ´∀`)「!!!」
 
 ――じぃの、そのはじめの一言で、法廷内が凍りついた。
 傍聴人も、裁判官も、皆である。
 
 
川;゚ -゚)「い、異議あり! 証人!」
 
爪゚ー゚)「なんですか?」
 
川;゚ -゚)「そ、その…… “変人” の間違いじゃなくて?」
 
(=゚ω゚)ノ「異議ありィ! ソレはないよぅ、ソレは」
 
川;゚ -゚)「しかし、“恋人” と言えば……」
 
 
 
 場内の人間が、クール――の、前にいる人物に視線を注いだ。
 
 
(;*゚−゚)「…? ……?」
 
.
245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:43:02.26 ID:oUxuTfUO0
 
 
川;゚ -゚)「アイドルの、椎名しぃ――のハズ、だぞ!」
 
爪゚ー゚)「……」
 
 
( ´∀`)「これは、どういうことですかな?」
 
(=゚ω゚)ノ「検察側から説明するよぅ。
.     彼女は確かに、被害者の恋人だよぅ」
 
( ´∀`)「しかし、だとすると被告人は……」
 
(=゚ω゚)ノ「そう。被告人は、“二股” ……を、してたんだよぅ」
 
( ´∀`)「ふ…二股……」
 
 
 そう聞かされて、裁判長は気難しい顔をした。
 事の如何については納得がいったが、根本的なところでつまずいているような――そんな様子だった。
 
 
(=゚ω゚)ノ「確かに、二股は重要そうな情報だよぅ。
.     でも今はそれは関係ないから、スルーしてほしいよぅ。
.     証人が、証言しづらくなったらどうするんだよぅ」
 
( ´∀`)「それもそうですね。はい、静粛にー」
 
.
247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:45:19.89 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
川 ゚ -゚)「……しぃさん」
 
(;*゚−゚)「?」
 
川 ゚ -゚)「君と被害者は……どういう関係なんだ?」
 
(;*゚ー゚)「………」
 
川 ゚ -゚)「答え――」
 
 
(=゚ω゚)ノ「失礼したよぅ。では、本筋に戻るよぅ」

川 ゚ -゚)「……まあ、いいか」
 
(;*゚ー゚)「………。」
 
 
 いようが言うと、クールは注意を再び証人、じぃへと向けた。
 彼女は法廷内のざわめきに反し、一人だけ、ずっと平静を保っていた。
 そのため、彼女だけが、この法廷から浮いているように見えた。
 
 
.
251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:49:15.32 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
(=゚ω゚)ノ「証人は、被害者と恋人関係にあった。では、二月十四日もトーゼン……」
 
爪゚ー゚)「会いました」
 
(=゚ω゚)ノ「そのときのことを話してほしいよぅ。それも…… “額の痕” も踏まえて」
 
爪゚ー゚)「わかりました」
 
 
川 ゚ -゚)「(さて……どう出る?)」
 
 
 
.
254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:51:30.23 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
爪゚ー゚)「わたし、午前中はバイトがあったので、カレと会ったのは午後からでした。
.     確か、16時をじゃっかん回ったくらいだと思います」
 
爪゚ー゚)「カレの自室で撮りだめされてた刑事ドラマとか観て……
.     確か、一時間経ったくらいだと思います」
 
爪゚ー゚)「その刑事ドラマに出てた主演の俳優さんのサインがあるって話になったんですが
.      “リビングの棚に飾ってあった” ということで、二人でそっちに向かったんです」
 
爪゚ー゚)「でも、ほら、棚はソファーの後ろじゃないですか。
.     しかも、植木鉢がその通路を邪魔してるし」
 
爪゚ー゚)「だから……棚の前に立とうとしたとき、植木鉢に足を引っ掛けて、
.     カレは “転んだ” んです。そのときに、おでこをゴチン、って打って……」
 
爪゚ー゚)「冷蔵庫から保冷剤をとって、それでカレに応急処置をほどこして……
.     で、そこから少ししてわたしは帰りました。その時間は、確か17時半頃頃です」
 
 
.
256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:53:42.03 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
( ´∀`)「ほう、転んで打った、と……」
 
( ´∀`)「わかりました。では素直さん、尋問を」
 
 
川 ゚ -゚)「……ふう」
 
(*゚ー゚)「なにが『ふう』なんですか……」
 
川 ゚ -゚)「なにをどう尋問すればいいかわからなくてな」
 
(;*゚ー゚)「んなッ! ……大問題じゃないですか!」
 
川 ゚ -゚)「案ずるな。ひとつだけ、はっきりしてることがある」
 
(*゚ー゚)「なんですか?」
 
 
 
川 ゚ -゚)「 《ムジュン》 ……がある、ということだ」
 
 
.
259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:56:19.24 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
(*゚ー゚)「! じゃあ、早くそれを “つきつけて” くださいよ!」
 
川;゚ -゚)「で、でも、証拠品をつきつけるって、どうすれば……」
 
(;*゚ー゚)「あんたそれでも弁護士か! 口頭で、その食い違いを指摘すりゃいいでしょ!」
 
川;゚ -゚)「そ、そういうものなのか……詳しいな」
 
(*゚ー゚)「考えるまでもないでしょ、ったく……」
 
 
 
(=゚ω゚)ノ「尋問なしなら、判決を下してもらうよぅ」
 
(=゚ω゚)ノ「 “額の打撲は転んでできた” ……事件との関連性は、皆無と見受けるよぅ」
 
(=゚ω゚)ノ「だから――」
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「  異 議 あ り ッ ! ! 」
 
 
 
.
264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:59:02.83 ID:oUxuTfUO0
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「ひッ!!」
 
( ;´∀`)「こ、こら! 素直さん、声が大きすぎる!」
 
川;゚ -゚)「あ………も、申しわけない」
 
(;*゚ー゚)「(私が一番の被害者なんだけど……)」
 
 
 
 クールが腹の底から声を出すと、法廷内にいたほかの皆がとたんに耳を塞いだ。
 目の前にいたしぃは、とたんに目を見開き、呼吸を荒くさせていた。
 
 それらを見て、クールはばつが悪そうな顔をしては後頭部を掻いた。
 
 
.

265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 23:59:48.85 ID:oUxuTfUO0
 
 
川 ゚ -゚)「気を取り直して……」
 
川 ゚ -゚)「異議あり!」
 
(=゚ω゚)ノ「なんだよぅ?」
 
川 ゚ -゚)「 “額の打撲は転んでできた” ……それはほんとうなのだな?」
 
(=゚ω゚)ノ「現に証人がそう言ってるよぅ。ウソをつく必要もないよぅ」
 
川 ゚ -゚)「しかし、それは真っ赤なウソだ!」
 
(=゚ω゚)ノ「異議ありだよぅ。無根拠にワレワレを冒涜されてはたまらないよぅ」
 
川 ゚ -゚)「なら証拠品を提示しよう」
 
(=゚ω゚)ノ「?」
 
 
.
267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:01:11.35 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 そう言うと、クールはパネルを操作して、場内のモニターにあるものを移しだした。
 白地に、簡潔なイラストが描かれている―― 『上画面』 。
 
 
川 ゚ -゚)「証言によれば、“被害者は植木鉢につまずいた” とあるが……」
 
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「『花』は棚の左側!」
 
川 ゚ -゚)「これでは、つまずくことができないではないか!」
 
 
 
 
.

268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:02:50.16 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 じぃの証言では、棚の前に立とうとするさい、
 その前にあった植木鉢に足をとられ、そのまま転んだ――とあるが
  『上画面』 を見る限りその場所に『花』はない以上、それに足をとられることがあるはずない。
 
 そうとわかったとたん、クールの自信は一気に大きくなった。
 もっとも、それが先ほどの叫び声にあったのだが――
 
 
( ´∀`)「そ、それはもっともです! これはどういうことですか!」
 
(=゚ω゚)ノ「言われると思ってたよぅ。ここで、検察側は新たな証拠品を提出するよぅ」
 
川 ゚ -゚)
 
川 ゚ -゚)「え?」
 
 
 するといようは、こうなることを最初から
 わかっていたかのような様子でその「新たな証拠品」を提示した。
 
 それを見てクールはあっけにとられた。
 
 
.
271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:04:54.05 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(=゚ω゚)ノ「実はこの植木鉢―― 『上画面』 でいうところの『花』は、《移動させられていた》 んだよぅ」
 
( ´∀`)「移動…?」
 
(=゚ω゚)ノ「土の跡が、 『上画面』 でいうところの
.     『ソファー』と『棚』の間の道を塞ぐような位置に見られたんだよぅ」
 
(=゚ω゚)ノ「これがその証拠だよぅ」
 
( ´∀`)「 『土の跡』 ですね。受理します」
 
 
 提示された写真には確かに、そこに円を描くように土の跡が見えた。
 また同時に、そこに長らく植木鉢が置かれていたであろうことを示すための白い円も見られた。
 
 つまり、それは確かに、「ほんとうはそこに植木鉢があった」ことを示す証拠であったわけだ。
 それを周囲にわからせてから、いようは続けた。
 
 
.
273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:06:49.57 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(=゚ω゚)ノ「証言にあったように、被害者は棚からものを取り出そうと、
.     ソファーと棚の間の道を進もうとしたんだよぅ」
 
(=゚ω゚)ノ「でもそこに植木鉢があったせいで転んでしまったんだよぅ。
.     だから、証人は植木鉢を 『上画面』 の位置に動かした……違うかよぅ?」
 
爪゚ー゚)「そうです」
 
川;゚ -゚)「なに……?」
 
 
 その二人のやり取りを見て、クールは異議を申し立てる前以上の苦境を感じた。
 唯一、見つけることのできた反撃の糸口。
 
 それは弁護側にとって有利なものではなく、むしろ、
 検察側の作戦によって用意されたもの――となったのだから。
 
 弁護側が指摘したのを好機にその証拠品を出すことで、
 検察側は裁判長や裁判官に、強調することができる。
 「被害者は確かに、その植木鉢に足をとられて転んだのだ」と。
 
 
.

274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:08:30.12 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
( ´∀`)「だとすると、この打撲痕は事件とはまったくの無関係、と見てよろしいですね」
 
(=゚ω゚)ノ「そうだよう。これで立証終了だよぅ」
 
川;゚ -゚)「(……まずい!)」
 
(;*゚ー゚)「弁護士…さん……?」
 
 
 そしてその検察側の作戦は、うまくいったようだ。
 少なくとも裁判長の心証は、完全に検察側に傾いたようだからだ。
 そうわかって、クールは焦らずにはいられなかった。
 
 
( ´∀`)「弁護側に反証がないようなら判決に移りたいのですが……」
 
川;゚ -゚)「異議あり! まだ反証は終わってない!」
 
(=゚ω゚)ノ「じゃあいますぐ言ってくれよぅ」
 
川;゚ -゚)「……っ!」
 
 
.
276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:11:06.30 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 ――しまった!
 クールはつい、言ってからそのことを後悔した。
 
 当然、いまの弁護側に、反証できるようなことはない。
 ないが、判決を引き伸ばすために異議を申し立てた。
 
 そこを、検察側に衝かれた。
 これは言わば、「いますぐ反証してみせろ」「できなかったら即有罪だ」
 ――そう言っているようなものなのだ。
 
 
(=゚ω゚)ノ「まさか、反証材料がないのに反証がある、とか言ったよぅ?」
 
川;゚ -゚)「……い、……いや」
 
 
川;゚ -゚)「反証は………ある…。」
 
(=゚ω゚)ノ「そうかよぅ。じゃあ早くしてほしいよぅ」
 
 
 いようが急かす。
 クールはハッタリをかましていたとき以上に焦燥を感じた。
 
 
 
.
278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:13:32.41 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川;゚ -゚)「(反証は……ない。それは、私が一番よく理解している。
.     そもそも、見てわかるような隙など、最初から検察側が用意するハズがない)」
 
川;゚ -゚)「(とすると、やはり、この証言に明確な隙――反証の余地はない、ということだ。
.     これだと、一方的に弁護側の不利、となるのだが……)」
 
 
 
川 ゚ -゚)「(……!)」
 
川 ゚ -゚)「(……そうだ!)」
 
 
 
 
   (*゚ー゚)『 “これは被告人が殺した何よりの証拠である” ……ってのは、
        その証拠品にとって数ある見方のうちの一つに過ぎない……だから』
 
   (*゚ー゚)『なんとか “違う。これは実はこういう意味だったのだ” とかなんとか言って、
        テキトーにそれらしいでまかせでも言えば、たぶん……なんとか、なります』
 
 
 
.
281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:15:08.25 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「(なにも、ハッタリをかますだけが手じゃあない)」
 
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「( “イチャモン” をでっち上げれば、なんとかなるかもしれないじゃないか!)」
 
 
 
 
 
(*゚−゚)「弁護士さん……ワルい顔になってますよ」
 
川;゚ -゚)「……すべては君のためにやってるんだぞ」
 
 
.
286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:21:38.15 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(=゚ω゚)ノ「……裁判長。どうやら、弁護側に反証は――」
 
川 ゚ -゚)「異議あり! 証人の言葉にひとつ、“明らかにおかしい点” を見つけた!」
 
(=゚ω゚)ノ「なんだって?」
 
( ´∀`)「それは面白い。言ってみなさい」
 
爪゚ー゚)「……」
 
 
(;*゚ー゚)「ほ、ホントですか!? いったい、どこに……」
 
川 ゚ -゚)「ホントなわけがなかろう」
 
(*゚−゚)
 
川 ゚ -゚)「でも……難癖をつけられる箇所は、あった」
 
 
 そう言うと、クールはある証拠品を提示した。
 何度か本法廷にてお目にかかっている、『解剖記録』である。
 
 それを向かい、いように向けて突きつけた。
 
 
.

287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:24:16.72 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「証言によれば、被害者が額に打撲を負ったのは “17時30分” よりも、前!」
 
川 ゚ -゚)「しかし、『解剖記録』 によれば “できてまもない” とある」
 
川 ゚ -゚)「死亡推定時刻が “18時半以降” となっている以上、
     この二つの間には “一時間以上” もの差があるではないか」
 
 
 
川 ゚ -゚)「  こ れ は 、 お か し い ッ ! 」
 
 
 
(;*゚ー゚)「だから……毎回毎回、強調するところおかしくないですか…?」
 
川;゚ -゚)「……そうかな」
 
 
.
289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:26:30.81 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 弁護側の二人は冷や汗を浮かべていたが、
 その間の周りの様子は、そんな彼女たちとは違っていた。
 
 最初に声をあげたのは、裁判長だった。
 
 
( ´∀`)「確かに! 一時間の誤差を “できてまもない” と表記するとは、思えませんぞ!」
 
(;=゚ω゚)ノ「言葉のアヤってヤツですよぅ! 一時間ほどならきっと、“できてまもない” の範疇に……」
 
 
川;゚ -゚)「(……お? ひょっとすると、いまがチャンスじゃ……)」
 
 
川 ゚ -゚)「異議あり! “できてまもない” とは、明確な時間を示さない、あいまいな表現だ。
     五、十分と僅かな時間だからこそ、こんなあいまいな表現が許されるのだろう」
 
川 ゚ -゚)「しかし、一時間ともなれば、そんなあいまいな表現は許されるべきではない。
     明確な時間を表さなかった以上、この打撲痕は事件一時間前にできたものとは考えられない!」
 
( ´∀`)「もっともです。いったいこの “できてまもない” とは、どれほどまでの誤差を表すのでしょうか」
 
(;=゚ω゚)ノ「け、刑事に証言してもらうよぅ」
 
川 ゚ -゚)「(アレ……いいカンジ…?)」
 
.

290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:28:13.77 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 いようが言ってまもなく、法廷係官がワカンナインデスを連れてきた。
 彼も彼で、冷や汗を浮かべていた。
 クールは自分ひとりだけが周囲から置いていかれているように思って、少し浮遊感を覚えた。
 
 
( ;><)「……」
 
(=゚ω゚)ノ「刑事! 額の打撲は、いったいいつできたんだよぅ!」
 
( ;><)「検死官の言い分によると、“できてまもない” んだそうです!」
 
(;=゚ω゚)ノ「だいたい目安何分くらいかは――」
 
 
 検事と刑事のすれ違い、それを見てクールは「しめた」と思った。
 クールはやや大きめな声で、ワカンナインデスに声をかけた。
 
川 ゚ -゚)「聞き方を変えよう、刑事」
 
( ;><)「はい?」
 
 
 
川 ゚ -゚)「 《一時間前にできた可能性を認めるのか》 ……争点はいま、そこなんだ」
 
 
.
292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:31:19.83 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 ずばり核心を、いきなり衝いた。
 場合によっては、この返答でいっそう弁護側が不利になるかもしれない。
 しかし、かといって訊かないわけにはいかない。
 
 大きな賭けにでたつもりで、クールは訊いてみた。
 するとワカンナインデスは、予想外に軽い様子になった。
 
 
 
 
 
 そして、決してその軽い様子から放たれるべきでない返事が返ってきた。
 
 
 
 
 
( ><)「一時間? そんなズレはないハズなんです」
 
 
BGM推奨
http://www.youtube.com/watch?v=gL-ZIbF6J6s
 
 
 
.
294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:32:57.41 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「!」
 
(;=゚ω゚)ノ「!」
 
( ´∀`)「なんと! では……」
 
 
爪;゚ -゚)
 
 
 
 
( ´∀`)「どうして証言との間に “一時間” もの差があるのですか!」
 
 
 
.

295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:33:50.80 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 すると今度は、ワカンナインデスが、
 先ほどまでのクールの感じていた浮遊感を覚えるようになった。
 
 
(;=゚ω゚)ノ「ひょ、ひょっとすると、ここで転んだけど
      そのときには大した打撲はできなかったんだと思われるよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「異議あり! 証人は “保冷剤を使って処置を施した” のだ!
     大きかれ小さかれ、なんらかの痕跡は残っている!」
 
(;=゚ω゚)ノ「…!」
 
 
 
(;*゚ー゚)「じゃ、じゃあ、“植木鉢に転んだときの打撲” は、いったいなんだったんですか!」
 
川 ゚ -゚)「……?」
 
 
.
297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:35:44.80 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(;*゚ー゚)「確かに、ここには一時間のズレがある」
 
(;*゚ー゚)「けど、なら問題になるのは 《どうして一時間のズレがあるのか》 ですよ!」
 
 
川 ゚ -゚)「……一時間のズレ、か」
 
川 ゚ -゚)「考えられることは、ひとつ。
      “なにかが間違っていた” んだ」
 
(*゚ー゚)「 “なにか” ……って?」
 
 
 
 クールはうなずき、指折りしながら言った。
 
 
 ひとつ、打撲の原因。
 ふたつ、解剖記録。
 みっつ、証言。
 
 
 
 
.
299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:39:29.87 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「異議ありィ! しかし、こんなこと、大した問題じゃあないよぅ!
      本件はあくまで、後頭部からの銃撃を問う裁判で……」
 
川 ゚ -゚)「この打撲は、犯行時刻にまつわるという点においてヒジョーに重要な意味を持つ!
     真相を究明するべきだ!」
 
( ´∀`)「検察側の異議を却下します。
       《どうして一時間のズレがあるのか》 ……
      判決を下す上で、確かに重要と呼べるポイントだと思いますからな」
 
川 ゚ -゚)「(ホッ)」
 
(;=゚ω゚)ノ「ぐ、ぐゥ……」
 
 
( ´∀`)「さて、素直さん。あなたには、わかりますか?」
 
( ´∀`)「 《どうして一時間のズレがあるのか》 ……その、理由を」
 
 
.
302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:41:59.74 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「……言うまでも、ないだろう」
 
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「裁判長!」
 
川 ゚ -゚)「証人は、ウソをついている!」
 
 
 
 
 
.
307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:49:23.74 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
爪;゚ -゚)「ッ!」
 
( ´∀`)「ウソ……」
 
川 ゚ -゚)「そもそも、捜査陣の捜査の結果、この植木鉢以外に
     打撲の原因となるものの正体は明かされなかったのだ」
 
川 ゚ -゚)「だとすれば、“被害者は植木鉢につまずいて転んだ、だから打撲を負った” ……
     このことに関しては、現時点では……ギモンに思えることはない」
 
川 ゚ -゚)「ならば、考えられる “ズレ” の原因は、たったひとつ!」
 
 
 
川 ゚ -゚)「証人は、ウソをついた!
     彼女は、“もっと遅い時間” に被害者と会っていたのだ」
 
川 ゚ -゚)「答えろ、証人! 《いつ被害者と会っていた》 んだ!」
 
爪;゚ -゚)「……」
 
 
.

308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:50:18.99 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
( ´∀`)「…!」
 
(;=゚ω゚)ノ「異議ありィ! 証人がウソをつく理由がないよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「理由? あるではないか」
 
(;=゚ω゚)ノ「なんだって…?」
 
 
川 ゚ -゚)「……そもそも、この打撲痕ができたタイミングと
     銃創ができたタイミングが別であることがおかしいのだ」
 
川 ゚ -゚)「 『解剖記録』 にあるように、“できてまもない” タイミングで、被害者は殺されたのだから!」
 
 
( ´∀`)「だとすると……」
 
( ;´∀`)「ッ!」
 
 
川 ゚ -゚)「そう。額の打撲は、被害者が殺される “寸前” ――つまり、真犯人によってつくられたのだ!」
 
 
.
310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:53:20.06 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「異議ありィ! まさか、弁護側は……」
 
 
 
爪;゚ -゚)
 
 
 
 
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「証人を、真犯人として告発するのかよぅ!?」
 
 
 
 
 
 
.
312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:55:37.80 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「………」
 
(;=゚ω゚)ノ「答えろよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「……」
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「(……実際……どうなのだ?)」
 
川 ゚ -゚)「(しぃさんが犯人でない、というのを信じるなら……
     犯行が可能だったのは、当日、被害者本人に会っていた……彼女しか考えられない)」
 
川 ゚ -゚)「(しかし、証拠は……ない。というより、打撲に関するナゾがあるだけで、
     それ以外の状況はすべてがしぃさんを指し示してるんだ)」
 
川 ゚ -゚)「(この打撲のナゾひとつだけで……告発するべきなのだろうか?)」
 
 
 
.

313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 00:58:06.78 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「……もう一度聞くよぅ」
 
(;=゚ω゚)ノ「弁護側は……証人を、告発するのかよぅ?」
 
 
 
川 ゚ -゚)「……」
 
(;*゚ー゚)「弁護士さん…?」
 
川 ゚ -゚)「………」
 
 
 
.
316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:01:37.25 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 
BGMここまで
 
 
 
川 ゚ -゚)「それを確かめるために、弁護側は証人に更なる証言を求める」
 
(=゚ω゚)ノ「!」
 
( ´∀`)「というと……なにを証言してもらうのですかな?」
 
川 ゚ -゚)「おそらく彼女は、時間帯についてウソをついた」
 
川 ゚ -゚)「だから、ほんとうに被害者と会っていた時間帯と……そのときの行動。
     この二つについて、証言してもらいたいと考えている」
 
(;=゚ω゚)ノ「……ということだよぅ。証人、頼まれてくれるかよぅ?」
 
爪゚ -゚)「……」
 
爪゚ー゚)「………わかりました」
 
 
.
319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:03:19.73 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(;*゚ー゚)「イキオイとノリで告発しとけばよかったんじゃあ……」
 
川 ゚ -゚)「証拠もないのにそんなことをすれば、よけいに弁護側が不利になるだけだ」
 
(;*゚ー゚)「……法曹界って、面倒なんですね」
 
川;゚ -゚)「め、面倒って……」
 
 
 クールに「ウソ」を指摘されたとき、証人、じぃは少し動揺していた。
 それを見てクールはとっさに、「しぃが犯人でなければじぃが犯人だ」と思ったが
 しかし、それを心の底から信じることはできなかった。
 
 状況だけを見れば依然として、明らかに弁護側が不利なのである。
 そのなかの、せめて一つだけでも間違いだとされなければ、クールはとてもしぃの無罪を信じられないだろう。
 
 そう考えているうちに、じぃの新しい証言がはじまった。
  《どうしてウソをついたのか》 、そして 《ほんとうのこと》 に関する証言が。
 
 
.
323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:06:20.46 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
爪゚ー゚)「……あの日、確かにわたしは16時から17時半までギコくんと会ってました」
 
爪゚ー゚)「でも、そのときには彼は転ばなかったんです」
 
爪゚ー゚)「ほんとうは……18時過ぎ。そのときに、ギコくんともう一度会いました」
 
爪゚ー゚)「17時半頃、ドラマの話になったもののサインをどこに置いたのか忘れたみたいで……
.     で、そのままわたしは帰ったんですが、少ししてサインの場所を思い出したんだそうです」
 
爪゚ー゚)「引き返すようにわたしはギコくんの家に行きました。
.     それが、18時過ぎです」
 
爪゚−゚)「……で、家に着いて早々にリビングに行って、
.     ………あとはさっき言ったように、植木鉢につまずいて転んだんです」
 
 
.
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:09:15.55 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
( ´∀`)「ほう、わかりました」
 
川;゚ -゚)「…! しかし、ならどうしてウソをついたというんだ!」
 
(=゚ω゚)ノ「問題は “時間帯” だよぅ」
 
川;゚ -゚)「……?」
 
( ´∀`)「時間……18時過ぎ、とのことですが」
 
(=゚ω゚)ノ「死亡推定時刻はあくまで18時から19時だよぅ。
.     だから、自分の来訪の時間が死亡推定時刻とかぶっている、
.     というのが精神的に嫌だったんだと思うよぅ」
 
( ´∀`)「しかし、『留守電のメッセージ』 によって証明されてますが、
      18時36分までは被害者は生きていたのでしょう?」
 
(=゚ω゚)ノ「オンナゴコロ、ってやつですよぅ。証人、そうだよぅ?」
 
爪゚ー゚)「……はい」
 
 
.
330 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:10:54.52 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
爪゚ー゚)「刑事さんから、死亡推定時刻のことは聞いていましたから……
.     その、怖くて……とっさにウソをついちゃいました」
 
( ´∀`)「証言にウソをついたら偽証罪に問われるのですが……
      大目に見てあげますかな。オンナゴコロ、いいですねえ……」
 
(=゚ω゚)ノ「(大目に見ていいのかよぅ……)」
 
 
(;*゚ー゚)「……弁護士さん…?」
 
川;゚ -゚)「……さっき、告発しとけばよかったかな?」
 
(;*゚−゚)「弁護士さん!」
 
 
.
334 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:14:02.63 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
( ´∀`)「では、尋問を」
 
川 ゚ -゚)「……心得た」
 
 
 そう返してから、クールは腕を組んだ。
 証言のなかに気になる点があるならそれを訊く――それが尋問の基本である。
 
 しかし。
 先ほどとは違い、今度は、目立った点はなかった。
 
 
川 ゚ -゚)「………」
 
爪゚ー゚)「……」
 
川;゚ -゚)「………」
 
爪゚ー゚)「…?」
 
 
 じぃと見つめ合う。
 無垢な笑みを浮かべ、弁護側に目を遣る。
 クールは、じぃのその眼差しを直視することができなかった。
 
 
.
336 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:15:57.53 ID:fJTgQXGu0
 
 
川 ゚ -゚)「……証言を聞いていて一つ、気になったことがある」
 
爪゚ー゚)「?」
 
川 ゚ -゚)「二度目の来訪……訪れたのは、18時頃とのことだが」
 
川 ゚ -゚)「 “家を出た” のはいったい何時ごろなのだろうか」
 
爪゚ー゚)「そのこと、ですか」
 
 
川 ゚ -゚)「(彼女が犯人なら、きっとここにもウソを盛るハズ……
     そこを衝けば、ギワクの目を彼女にそらして、チャッカリ無罪なんてことが……)」
 
 
爪゚ー゚)「カレを氷で処置するのに時間をとられましたが……」
 
川 ゚ -゚)「とられましたが?」
 
爪゚ー゚)「確か、18時20分くらいだったと思います」
 
川 ゚ -゚)「! 待っ――」
 
(=゚ω゚)ノ「異議ありィ!」
 
川;゚ -゚)「…?」
 
.
338 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:19:52.18 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 ――やはり!
 予想通りの返答がきたのでそこを更に追究しようとすると、
 それを見越していたのか、すぐに検察側が異議を唱えてきた。
 
 そのため、クールは出ばなをくじかれたような気になった。
 恨めしげな、しかし不安げな様子を顔一面に浮かべていように目を遣ると、彼は不敵な笑みを浮かべていた。
 
 
(=゚ω゚)ノ「さっき、弁護人が調子に乗って証人を告発したら提出しようと思ってたんだけど……」
 
川 ゚ -゚)「?」
 
(=゚ω゚)ノ「このさい、先に提出しておくよぅ。裁判長、新たな証拠品だよぅ」
 
( ´∀`)「なんですかな?」
 
 
(=゚ω゚)ノ「 『防犯カメラの映像』 だよぅ」
 
川 ゚ -゚)「防犯カメラ……?」
 
 
 このときクールは、嫌な予感を覚えた。
 
 
.
340 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:23:02.07 ID:fJTgQXGu0
 
 
( ´∀`)「しかし、それは先ほど……」
 
(=゚ω゚)ノ「違うよぅ。さっきのはお菓子屋さんのものだけど、
.     こっちは違う店のもので、映っているのも違うものなんだよぅ」
 
川 ゚ -゚)「な、何が映っているんだ」
 
(=゚ω゚)ノ「よく訊いてくれたよぅ。これは、現場からそう遠くないところにあるコンビニのものだよぅ」
 
( ´∀`)「コンビニ……」
 
川 ゚ -゚)「もったいぶらないで、さっさと言いたまえ」
 
(=゚ω゚)ノ「きっと、後悔するよぅ?」
 
川 ゚ -゚)「……?」
 
 
(=゚ω゚)ノ「これは 『コンビニの防犯カメラの映像』 」
 
(=゚ω゚)ノ「これには、証人――じぃさんが、映っているんだよぅ」
 
 
 
(=゚ω゚)ノ「その時間帯は―――18時半から19時過ぎ!」
 
 
.
342 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:25:22.95 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川;゚ -゚)「な…っ!」
 
(;*゚ー゚)「えッ!」
 
( ´∀`)「さ、再生しましょう」
 
 
 裁判長の言葉を皮切りに、その映像はすぐに再生された。
 コンビニ店内を映すカメラが撮ったもので、客もまばらなその様子を捉えていた。
 
 問題の18時30分――厳密に言えば29分――になると、店内に、ある人物が入ってきた。
 特徴的な深緑色の服装をしている。
 映像をズームするまでもなく、それがじぃであることがわかった。
 その瞬間、クールの胸の鼓動が速くなっていった。
 
 
.
344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:27:38.29 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 じぃは入ってうろちょろしたかと思えば、トイレに籠もった。
 出てきたのは、18時38分だ。
 そして、店内の品揃えなんかを確認している。
 
 46分頃、雑誌コーナーに目が留まる。
 そこから二十分ほどの間、彼女は雑誌を読みあさっていた。
 
 そして店を出たのが、19時少し経ったところ。
 じぃが店を出たところで、この映像は終わった。
 そして正式に、証拠品として受理されることになった。
 
 
  『コンビニの防犯カメラの映像』 。
 18時29分から19時過ぎまでじぃの姿が映されている。
 その間、店を出た様子は見られなかった。
 
 
.
346 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:29:52.49 ID:fJTgQXGu0
 
 
川;゚ -゚)「これは……」
 
(=゚ω゚)ノ「そのときの店員にも話を聞いているよぅ。
.     証人はこのように女性にしては特徴的な服装だったから、印象も強かったみたいだよぅ」
 
爪゚ー゚)「コンビニには、いきました。間違いありません。
.     トイレにも行ったし、雑誌も読みました」
 
(=゚ω゚)ノ「裏づけのために証言を頼むと、当時のコンビニはどんな様子でしたかよぅ?」
 
爪゚ -゚)「……被告席にいらっしゃる人の、恋愛ソングが流れていました」
 
 
(* - )
 
 
(=゚ω゚)ノ「そして実際に、当時のコンビニでは『爆発しやがれ』という、
.     被告人のヒット曲が流されていましたよぅ」
 
( ´∀`)「だとすると、証人にアリバイはできた、ということですね」
 
(=゚ω゚)ノ「当然だよぅ。そして、一方で捜査班からこのようなデータをもらってるよぅ」
 
(=゚ω゚)ノ「 “被害者宅からこのコンビニまでは歩いて十分ほどである” ……と」
 
川;゚ -゚)「…!」
 
.
349 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:32:25.19 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(=゚ω゚)ノ「だから、証人の言う “被害者と会っていたのは
.     18時20分までだ” という証言はただしいんだよぅ」
 
川;゚ -゚)「異議あり! 走れば、もっと短い時間で……」
 
(=゚ω゚)ノ「異議ありィ! どのみち、入店した時間が決定的な証拠だよぅ。
.     18時29分に入店している限り、歩こうが走ろうが証人はアリバイ成立だよぅ」
 
川;゚ -゚)「なんだと……?」
 
 
 クールは、しぃが犯人でないならじぃこそが犯人だ――
 そう思っていたのだが、しかし現実は違っていたようだ。
 
 しぃに関する証拠が彼女を事件と結びつけているのに対し、
 じぃに関する証拠は彼女を事件から遠ざけているのだから。
 
 クールはその証拠を見せられて、
 先ほどまで感じていた胸の昂揚感を、根こそぎ奪われたような気になった。
 
 
.
351 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:35:19.49 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(=゚ω゚)ノ「時間に関する証明は以上だよぅ。
.     ほかになにか、尋問することはあるかよぅ?」
 
川;゚ -゚)「……」
 
(=゚ω゚)ノ「ないなら、今度こそ判決を……」
 
川;゚ -゚)「……無言をいちいち肯定と捉えていては、この先やっていけないぞ?」
 
(=゚ω゚)ノ「新人さんに言われる言葉じゃないよぅ……」
 
( ´∀`)「なら、尋問はまだ終わってない、と」
 
 
 「ああ」と、クールは言った。
 言ったのはいいが、言うまでもなく、これもただのハッタリだった。
 「終わらせてはだめだ」という強迫観念だけが、今の彼女を動かしていた。
 
 また、一方で。
 検察側がことさらに早急な判決を望むのを、不審に思っていたのだ。
 だから、クールは尋問の権利を手放すつもりはまったくなかった。
 
 そして、ハッタリがばれないうちに、と
 クールは再び、頭の中を空っぽにして、イキオイとノリだけで尋問を再開させた。
 
 
.

352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:38:30.37 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「えっと……そうだな」
 
川 ゚ -゚)「被害者は、転んで、おでこに打撲痕を残したのだな?」
 
爪゚ー゚)「はい」
 
川 ゚ -゚)「で、それを氷で癒した…」
 
爪゚ー゚)「そのとおりです」
 
川 ゚ -゚)「…」
 
 
川;゚ -゚)「……うーん」
 
(;*ぅ−t)「(もう見てられない…!)」
 
 
.
358 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:43:29.24 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川;゚ -゚)「……あ、…しょ、証人!」
 
爪゚ー゚)「は、はい」
 
川;゚ -゚)「氷、と一言に言うが、それはほんとうに保冷剤だけ、だったのか?」
 
爪゚ー゚)「へ?」
 
川;゚ -゚)「ほら……保冷剤のような冷たいものを素肌に当てると、だめじゃないか」
 
爪゚ー゚)「あ、ああ……」
 
川;゚ -゚)「そこらへんを、詳しく……その。聞かせてもらいたい」
 
 
(=゚ω゚)ノ「……ほんとうに、それが必要な尋問なのかよぅ?」
 
川 ゚ -゚)「打撲とそれにまつわる行動は、犯行時刻に関わってくる。
     だから細かいところまで把握しておくべきだ、と弁護側は考える!」
 
(=゚ω゚)ノ「そ、そうかよぅ……もう勝手にするよぅ」
 
 
.
360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:44:05.72 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「さて……そのあたり、どうなのだろうか」
 
爪゚ー゚)「どう、って言われても……」
 
爪゚ー゚)「……ああ。保冷剤は、一度水にさらしましたね」
 
川 ゚ -゚)「水?」
 
爪゚ー゚)「布は部屋にはなかったから……一応、水にさらすだけさらしておこう、って思って」
 
(=゚ω゚)ノ「献身的だよぅ」
 
川 ゚ -゚)「(水……)」
 
 
 「水」となれば、おそらくそれは台所の蛇口から出したものだろう。
 そう連想すると、台所関連で、クールの頭には別のものが浮かんだ。
 なぜかそのとき、あそこにあった――
 
 
.
363 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:46:16.28 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「そういえば、アレはそのときはどんな様子だったんだ」
 
爪゚ー゚)「 “アレ” ?」
 
川 ゚ -゚)「あの、花瓶」
 
爪゚−゚)「花瓶?」
 
川 ゚ -゚)「…え?」
 
爪゚−゚)「?」
 
 
 クールが何気ない様子で訊くと、じぃは予想外の反応を示した。
 首をかしげ、ぽかんとしている。
 
 ここにきて、急に、互いの話がかみ合わなくなった。
 それに気づいたクールは、じゃっかん速くなった胸の鼓動に気づかないふりをしつつも、言葉を速めていった。
 
 
.
366 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:47:25.83 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 
川;゚ -゚)「 『?』 じゃなくて……」
 
川 ゚ -゚)「証人、そのとき、花瓶はなかったのか?」
 
爪;゚−゚)「え……? 花瓶…?」
 
川 ゚ -゚)「……!」
 
 
 ――そして、じぃの行動のぎこちなさの理由が、わかった。
 クールはすぐさま、ようやく様になった「反証」に移った。
 
 
 
.
368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:48:28.65 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「待て! 証人、一度 『上画面』 を見てほしい」
 
 
 そう言って場内のモニターに、その 『上画面』 を映す。
 裁判長やいよう、しぃもその画面に目を遣った。
 (→
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_859.png
 
 
川 ゚ -゚)「冷蔵庫から保冷剤をとって、それを水にさらす、となれば……」
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「必ず、証人は、『花瓶』 を見ることになるのだ」
 
 
 
.
370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:49:20.67 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
爪;゚−゚)「…え?」
 
川 ゚ -゚)「それを見てない、というのはムジュンしている!」
 
(;=゚ω゚)ノ「異議ありィ! たまたま見てなかった、というだけかもしれないよぅ!
      しかも、だからどうしたって話だよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「たまたま見ていなかった、わけがない!
     この花瓶は、台所という、本来あるべきではない、似つかわしくない場所にあった。
     台所に向かったのであれば、この存在に気づかないハズがないではないか!」
 
 
 「だからどうした」には触れず、クールはそう言った。
 
 ――こうは言うもののしかし、クールは、この花瓶の話はどうでもよく思っていた。
 ただとにかく、つけられるイチャモンがあればすべてつけておいて、
 とにかく判決を引き伸ばそう――などと、思っていたのだから。
 
 争点がどこに向かっているのか、しぃも裁判長もわからなかった。
 ただ、クールのイキオイに圧倒されるだけだ。
 
 
.

371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:49:55.02 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「しかし証人が花瓶の存在を知らなかった、ということは、
      このときは花瓶はこの場所にはなかったんだよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「なに…?」
 
 
(;=゚ω゚)ノ「弁護人の言うとおり、花瓶がこの場所にあった、というのはいささかヘンだよぅ。
      つまり、犯行前……少なくとも証人と被害者がいたときは、花瓶は別の場所にあったんだよぅ!」
 
( ´∀`)「話がよくわかりませんが……、
       “このとき花瓶は上画面の位置にはなかった”
      これに何か、問題でもあるのですかな? 弁護人」
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「( “このとき花瓶は上画面の位置にはなかった” ……)」
 
川 ゚ -゚)「(……この考え方で、問題はあるのか?)」
 
 
 
.
375 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:51:41.02 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「……いいや。問題はある!」
 
(=゚ω゚)ノ「証拠を出すよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「証拠は、この 『割れた花瓶』 そのものだ!」
 
(;=゚ω゚)ノ「なんだって…?」
 
川 ゚ -゚)「休廷前の、刑事の証言を思い出してみろ!」
 
 
 
   ( ><)『……そうそう。これが、その台所の上にあった 「割れた花瓶」 です。
         置かれていたところに跡があったから、
         少なくとも一日は 「上画面」 の位置にあったと思われるんです。
         あ、花はなかったんです』
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「あッ!」
 
( ´∀`)「……! となると、台所にある花瓶を見ていないと、辻褄が合いません!」
 
 
.
377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:55:21.27 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 ワカンナインデスの証言を思い出すやいなや、
 いようも裁判長も、とたんに目が見開かれた。
 ここにきて、事の重大さがようやくわかったのだ。
 
 そしてそれは、じぃも一緒だった。
 
 
爪;゚ー゚)「割れた……あ! 見ました! 『割れた花瓶』!」
 
川 ゚ -゚)「異議あり! 証人が 『割れた花瓶』 を見ることはできない!」
 
爪;゚ー゚)「え…?」
 
 
川 ゚ -゚)「そもそも、どうしてこの花瓶が割れていたのか?」
 
川 ゚ -゚)「簡単だ。犯人が撃った弾が、当たったからだ」
 
爪;゚ー゚)「…!」
 
 
川 ゚ -゚)「だから、犯行よりも前に被害者と会っている証人は、『割れた花瓶』 を見ることができない」
 
川 ゚ -゚)「そして同時に、“証人は台所で花瓶を見ていなかった” という証明につながったわけだ」
 
 
.

378 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:55:58.81 ID:fJTgQXGu0
 
 
( ´∀`)「しかし……だとすると、いったいどうして証人は花瓶を見ていなかったのでしょう」
 
( ´∀`)「どうでしょう、弁護人。
       《証人が花瓶を見ていなかった理由》 ……それを、証明できますか?」
 
川 ゚ -゚)「ム……(やはり、問題となるのはそこか……)」
 
 
爪;゚−゚)「花瓶は、割れ……いや、あった……、えっと」
 
 
川 ゚ -゚)「( “証人は花瓶を見ていなかった” 。
     ……じゃあ、“どうして見ていなかったのか” だと?)」
 
川 ゚ -゚)「(簡単だ。 “ほんとうは台所に向かっていなかったから” に違いない。
     これを言えば、被害者の打撲の件について、錯乱させることが……)」
 
川;゚ -゚)「(………いや、待て。
.     そもそも、リビングに足を運んでいるのに、どうして花瓶を見ていなかったんだ?
.     台所に向かわずとも、ふと目を向けるだけで花瓶を見ることはできるはずだっていうのに)」
 
川 ゚ -゚)「(まさか、彼女たちはリビング以外の場所で……いや、違う。
     わざわざ、自ら犯行現場でのやり取りを証言したほどだ、この点にウソはないだろう)」
 
川 ゚ -゚)「(彼女たちは、実際にリビングに訪れた。しかし、花瓶は見ていない。
     だとすると……)」
 
.

379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 01:58:14.77 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「……花瓶は、“なにかに隠されていた” …?」
 
 
 
 
 
 
 
 
.
382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:01:11.33 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 
 クールは次の瞬間、全身の鳥肌がわきたつのを実感した。
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「…………あ」
 
 
川;゚ -゚)「あああああああああああッ!!」
 
(;*゚−゚)「ちょ…な、なんなんですか、さっきから!」
 
( ´∀`)「答えがでましたか?」
 
川;゚ -゚)「裁判長!」
 
( ;´∀`)「な、なんですか、さっきから」
 
川;゚ -゚)「ワレワレはひとつ、“大きなカン違い” を犯している!……かも」
 
(*゚−゚)「『かも』…」
 
 
.
385 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:09:20.45 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
( ´∀`)「大きな……」
 
(=゚ω゚)ノ「カン違い?」
 
 
川;゚ -゚)「 『上画面』 だ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
川;゚ -゚)「これは、正しい図ではない!」
 
 
 
 
 
 
 
.
388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:10:40.57 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「い、異議あり異議ありィ! それは捜査陣に対する冒涜だよぅ!」
 
( ´∀`)「いや……どうやら、弁護人に指摘してもらうほうが早いようですね」
 
 
 裁判長は少しうつみきぎみになって、ため息をついた。
 
 
 
( ´∀`)「いいでしょう、弁護人。よくわかりませんが、とりあえず指摘してください」
 
( ´∀`)「 《上画面のどこがまちがっているのか》 ……指をさして!」
 
 
 
.
392 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:12:34.38 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 クールはそこで、いま表示されている 『上画面』 をもう一度見た。
 ――間違いない。クールは、そう確信した。
 確信した上で、クールは顔をあげ、裁判長のほうに顔を向けた。
 
 
川 ゚ -゚)「…… 『上画面』 にはひとつ、“足りないもの” があるのだよ」
 
( ´∀`)「足りない? ああ、そういえば、事件に
      関係のなさそうなものは省略した、と刑事が言ってましたね」
 
川 ゚ -゚)「いいや。省略がどうこうではなくてだな」
 
( ´∀`)「……というと?」
 
川 ゚ -゚)「 “足りないもの” ………それは!」
 
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「 『カーテン』 だッ!」
 
 
 (→
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_860.png
 
 
.
397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:14:24.82 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
( ´∀`)「か、カーテン…? しかし、どうし――」
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「いっ異議ありッ!! べ、弁護人! それだけはありえないよぅ!!」
 
川 ゚ -゚)「どうしてだ?」
 
(;=゚ω゚)ノ「どうしてもなにもないよぅ! もし 『カーテン』 が広がってたら……」
 
 
 
 
 
 
 (→
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_861.png
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「犯行時、花瓶を撃てなくなるよぅ!」
 
 
 
 
.

399 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:17:05.81 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「……そうだ」
 
(;=゚ω゚)ノ「なんだって…?」
 
 
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「ワレワレのしていた “カン違い” 」
 
川 ゚ -゚)「それは―――」
 
 
 
 
 
 
.
401 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:18:36.18 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「 “犯行現場” だったのだ!!」
 
 
BGM推奨
http://www.youtube.com/watch?v=gL-ZIbF6J6s
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.
406 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:20:27.99 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「!?」
 
( ;´∀`)「犯行現場をカン違いしていた……ですって!?」
 
(;=゚ω゚)ノ「異議ありィ! なにをコンキョに――」
 
 
川 ゚ -゚)「問題となるのは、『カーテン』 だ!」
 
川 ゚ -゚)「証人は、花瓶を見ていなかった。それはどうしてか……」
 
(;=゚ω゚)ノ「たまたま見ていなかっただけだよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「いいや、違う。そもそも、リビングに足を踏み入れただけで、
     そのときの体の向きからしてみても、自然と見えるはずなんだ、花瓶は」
 
川 ゚ -゚)「とすると、“そのとき視界を遮るものがあった” と考えると、辻褄が合う」
 
(;=゚ω゚)ノ「しかし、花瓶の前には冷蔵庫がある!」
 
(;=゚ω゚)ノ「カーテンがなくとも、冷蔵庫があったから、花瓶は……」
 
川 ゚ -゚)「……そう」
 
(;=゚ω゚)ノ「?」
 
.
408 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:21:46.14 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「リビングに入るとき、に限定すれば、まだ可能性はあった」
 
川 ゚ -゚)「しかし証人は、自ら言ってしまったではないか」
 
川 ゚ -゚)「『冷蔵庫に向かい、そして台所の水を使った』、と!」
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「――ッ! し、しかし!
      だったらどうして、それが “カーテンは閉まっていた” ということになるんだよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「もしほんとうに証人が保冷剤を被害者に渡していたら、必ず花瓶は見るはずなんだ」
 
川 ゚ -゚)「なのに見ていなかった……ということは、“そもそも保冷剤は使ってなかった” と考えるべきなのだよ」
 
(;=゚ω゚)ノ「……!」
 
( ´∀`)「なら、どうして証人はウソを吐いたのですか!」
 
( ´∀`)「保冷剤を使った……など、と!」
 
川 ゚ -゚)「おそらくそれは、“被害者は転んだことで打撲を負った” というのを強調するためだ」
 
 
.
410 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:23:53.09 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「……なら、示してもらうよぅ…!」
 
川 ゚ -゚)「なにを、だろうか」
 
(;=゚ω゚)ノ「本来 『犯行現場』 だと思っていた、リビングの入り口……」
 
(;=゚ω゚)ノ「しかし、『カーテン』 が広げられていたら、ここからの犯行は不可能なんだよぅ!」
 
( ´∀`)「もしそのまま撃てば、カーテンに弾痕がつく。しかし、そのようなデータはないですからな」
 
(;=゚ω゚)ノ「じゃあ、いったい……この花瓶は、どうやって割られたのか!」
 
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「 “ほんとうの犯行現場” を示してもらうよぅ!!」
 
 
 
.
412 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:24:38.89 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「(…… “ほんとうの犯行現場” )」
 
川 ゚ -゚)「(これは大事なポイントだ。はずすわけにはいかない)」
 
川 ゚ -゚)「(考えてみればわかることだ。『カーテン』 が閉まっていた以上、
      “廊下側では事件は起こらなかった” となる)」
 
川 ゚ -゚)「(じゃあ、残る、《犯行が可能だった場所》 ……)」
 
 
 
( ´∀`)「では、示してもらいましょう」
 
( ´∀`)「いったい、犯人は……どこから、この花瓶を撃ったのか!」
 
 
 
.
415 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:25:58.82 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「……言うまでもない」
 
川 ゚ -゚)「『ベランダ』のほう……そこから、犯人は発砲したのだ!」
 
 
(;=゚ω゚)ノ「異議ありィ! きっと、そう言うと思っていたよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「なに?」
 
 
(;=゚ω゚)ノ「こんなこと、言わなくてもわかるよぅ?」
 
(;=゚ω゚)ノ「ほんとうの犯行現場がそこだったなら……」
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「二発目!」
 
(;=゚ω゚)ノ「被害者の命を奪う弾を、撃つことができないよぅ!」
 
 
.

416 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:26:48.16 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
( ´∀`)「確かに! 弾丸の軌道が、カンゼンに食い違っています!」
 
川 ゚ -゚)「……フ」
 
(;=゚ω゚)ノ「なにがおかしいよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「むろん、そうなる。すると、答えは簡単だ」
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「 “発砲は、二箇所に渡って行われた” 」
 
 
 
.

417 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:29:11.08 ID:fJTgQXGu0
 
 
(;=゚ω゚)ノ「なにィ!?」
 
( ;´∀`)「どういうことですか! …二箇所?」
 
川 ゚ -゚)「まず、犯人はベランダのほうから一発、被害者に向けて撃った。
     その結果が、この 『割れた花瓶』 だ」
 
川 ゚ -゚)「その次に犯人は、『上画面』 の位置に被害者を運んで、もう一度……撃ったのだ!」
 
 
(;=゚ω゚)ノ「……?」
 
(;=゚ω゚)ノ「…さすがに、それはおかしいよぅ」
 
川 ゚ -゚)「なにがだ?」
 
(;=゚ω゚)ノ「被害者の命が奪われたのは、確かに二発目の弾なんだよぅ」
 
(;=゚ω゚)ノ「血痕は、『上画面』 の例の位置からしか検出されなかったんだから」
 
川 ゚ -゚)「…」
 
 
(;=゚ω゚)ノ「だとすると、一発目のあと!」
 
(;=゚ω゚)ノ「どうやって、被告人は二発目、『上画面』 の位置から被害者を撃ったって言うんだよぅ!」
 
.
419 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:31:51.22 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 ――このときになって、クールは、ようやく
 今までのナゾがひとつにつながったことを実感した。
 
 
 
川 ゚ -゚)「……そうなってくると、かねてからのギモンにも合点がいく」
 
(;=゚ω゚)ノ「ギモン…?」
 
川 ゚ -゚)「そもそも、証人がウソをついた、その根本はなんだっただろうか?」
 
(;=゚ω゚)ノ「コンポン…… “打撲” 云々の話だよぅ」
 
(;=゚ω゚)ノ「……! もしかして!」
 
 
 クールは、大きくうなずいた。
 
 
.
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:33:17.90 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「犯人はベランダの位置から一発、撃った」
 
川 ゚ -゚)「ここで被害者はおそらく、抵抗に出たのだろう。
     被害者はガタイがいい。背を見せて逃げるよりは、生存確率が高まると思ったのだろうな」
 
(;=゚ω゚)ノ「抵抗……?」
 
川 ゚ -゚)「ああ。すると、二発目の照準を合わせる前に、犯人は相手に襲われてしまう。
     こうなると……自然と、次の行動が見えてくるだろう?」
 
 
( ´∀`)「二発目を撃とうとする前に、接近された……」
 
(;=゚ω゚)ノ「……ま、まさか! 弁護人!」
 
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「 “拳銃の柄で被害者を殴った” とか、言うのかよぅ!?」
 
 
 
.
424 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:35:34.42 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
( ;´∀`)「!」
 
川 ゚ -゚)「おそらく捜査陣は、このケースを考慮にいれてなかったのだろう」
 
川 ゚ -゚)「当初の 『上画面』 の位置からすると、拳銃を使った殴打のケースは想定されないからな」
 
(;=゚ω゚)ノ「……! と、いうことは……」
 
 
川 ゚ -゚)「犯人はここで、被害者を殴った」
 
川 ゚ -゚)「拳銃は言うまでもないが、重い。
     思いっきり殴りつければ、成人男性を “キゼツ” させられるほどには、な」
 
(;=゚ω゚)ノ「き、キゼツさせた!?」
 
 
.
428 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:43:24.50 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「………」
 
川 ゚ -゚)「これが――」
 
 
 
 
(;=゚ω゚)ノ「―――証拠」
 
川 ゚ -゚)「……?」
 
 
(;=゚ω゚)ノ「証拠は………あるのかよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「証…拠……だと?」
 
(;=゚ω゚)ノ「 《発砲は二箇所に分けて行われていた》 ことを証明する、証拠だよぅ!」
 
(;=゚ω゚)ノ「いままでの話はゼンブ、弁護側の勝手な憶測だよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「………」
 
 
.
430 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:44:39.80 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 すっかり興奮したいようは、大きな声で、弁護側にそううながした。
 裁判長の目も、クールのほうに向けられる。
 ここにきてクールは、ここが運命の分かれ道だ、と思った。
 
 
 
(;*゚ー゚)「証拠! あるんですか!?」
 
川 ゚ -゚)「証拠、証拠か……」
 
川 ゚ -゚)「……証拠は………」
 
 
 
 
 
川;゚ -゚)「…………ないな」
 
 
 
 
 
.

431 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:47:17.47 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 クールがちいさく言ったとき。
 そのときの声は、先ほどまでの、威勢の良かった彼女のものとはまるで違っていた。
 
 それまでを、イキオイとノリだけで進めていたのが、ばれたかのように。
 とたんに、クールの張っていた虚勢は、もろく崩れていってしまったのだ。
 
 
 その姿を見て、いようはそれまでの態度が一変、
 ふん、と鼻を鳴らしては、その細い腕を組んだ。
 
 
(;=゚ω゚)ノ「……」
 
(=゚ω゚)ノ「……そうだよぅ」
 
川;゚ -゚)「…?」
 
 
.
434 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:48:42.67 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(=゚ω゚)ノ「そもそも、もし弁護側の立証しようとした方法で殺害が行われたとして……」
 
(=゚ω゚)ノ「証人の場合、どのみち犯行は不可能なんだよぅ」
 
(=゚ω゚)ノ「それは弁護側もじゅーぶんわかってるハズなんだよぅ」
 
 
 
川 ゚ -゚)「( 『留守電のメッセージ』 と 『コンビニの防犯カメラの映像』 ……っ)」
 
 
 前者の証拠品により、それまで被害者のギコが存命だったこと。
 後者の証拠品により、ギコの存命時には既にじぃが現場を離れていたこと。
 その両方が証明されている以上、クールはいかなる場面においてでも、気をゆるませることはできなかった。
 
 
.
436 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:53:34.02 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(=゚ω゚)ノ「――そうなると、考えられることはただひとつ、だよぅ」
 
( ´∀`)「というと?」
 
 いようは、すぅ、と息を吸った。
 もう、調子は元に戻っているようだ。
 そのため、いっそう、クールはあせった。
 
 
(=゚ω゚)ノ「花瓶は、証人の “カン違い” ……ってところだったんだよぅ」
 
( ´∀`)「しかし、台所に面したなら、必然的に……」
 
(=゚ω゚)ノ「だけど、弁護人が自分で言ったように、この花瓶はその場に不釣合いなもので、
.     しかも花は生けられてなかったんだよぅ」
 
(=゚ω゚)ノ「証人が、初見でそれが花瓶だと見分けられた……
.     そう考えること自体がおかしかったということだよぅ」
 
( ´∀`)「だとすると、この証人は――」
 
 
爪;゚ -゚)
 
 
.
438 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:54:38.08 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(=゚ω゚)ノ「まったくの無実、ケッパクですよぅ」
 
(=゚ω゚)ノ「証人。花瓶は、最初それが花瓶だとわからなかった。
.     だから弁護人からの尋問のときに、答えあぐねていた。違うかよぅ?」
 
爪;゚ -゚)
 
 
爪゚ー゚)「……そうです。なんだかよくわからないものだったから……てっきり」
 
(=゚ω゚)ノ「…ということですよぅ」
 
( ´∀`)「ほほう」
 
 
.

439 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:55:26.24 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川;゚ -゚)「(そんなハズはない!)」
 
川;゚ -゚)「(確かに、証人は花瓶を “見ることができなかった” んだ!
.     だとすると、結果的に “発砲は二箇所に渡って行われた” ということにつながる!)」
 
川;゚ -゚)「(そうなれば……しぃさんに犯行は難しくなる――よって、無罪、……って、なるのに!)」
 
 
 しぃは、アイドルという仕事からもわかるように、女性的な体つきをしており、腕なんか当然細い。
 そんな彼女が、気絶したギコを運ぶとなれば、時間もかかる上に、そうする意味もわからなくなる。
 弁護側としては、その点を衝けば、判決を揺るがすことができていたのだが――
 
 
 そう主張するには、証拠が足りなかった。
 そもそも、誰か――じぃ――が犯人だ、という決定的な証拠など、あるはずがないのだ。
 あったなら、しぃがこうして審理にかけられることはなかった。
 つまり、ここで覆すのは、もう――
 
 
.
442 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 02:58:11.60 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
( ´∀`)「多少の回り道をしてしまいましたが……もう、充分でしょう」
 
川;゚ -゚)「!」
 
 裁判長が、クールの思考を妨げるかのように、言った。
 その言葉を聞いて、クールはドキッとした。
 
 
( ´∀`)「被害者は、事件発生少し前に、植木鉢に転んで打撲を負った」
 
( ´∀`)「花瓶のことが少し気になりましたが……ただのカン違い、でしょう」
 
( ´∀`)「そして証人が帰ったあと、招かれた被告人はリビングに入ると同時に、発砲」
 
( ´∀`)「続けて逃げようとする被害者を、弾丸が外に飛び出さないように注意を払って射殺」
 
( ´∀`)「現状としては、これで充分のようです」
 
( ‐∀‐)「……そしてなにより、弁護側は状況証拠こそ指摘してきておりますが、
      肝心な、“被告人が無罪である” ということをまったく立証できておりません」
 
( ´∀`)「もう、判決を下すのに充分です。私の決意も、かたまりました」
 
 
.
444 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:00:24.83 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川;゚ -゚)「えっ……?」
 
(;*゚ー゚)「…」
 
 
 クールは、全身に汗が染み渡ってゆくのを、このときになってはじめて実感した。
 舌が乾いてくる。
 いま発せた、ささやきにも近いその一言は、どこか涙声のように聞こえた。
 それを聞いて、しぃもいよいよ顔を歪ませていく。
 
 「これから」のことを想像したのか、冤罪を主張しているからなのか――
 それはわからないが、彼女はとにかく、腿の上に置いてあった手に力を籠め、スカートを握った。
 
 
( ´∀`)「弁護側、並びに検察側。
      ……もう、異論はないですね?」
 
(=゚ω゚)ノ「立証できる限りのことは立証したよぅ」
 
( ´∀`)「弁護側。素直さんは?」
 
 裁判長が、こちらに目を遣る。
 彼の顔を見て、クールは、自分の瞳が涙で厚くなってきているのがわかった。
 
 
.
446 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:02:07.88 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川;゚ -゚)「………べ……弁護側は……」
 
( ´∀`)「……」
 
川; - )「えっと……その……!」
 
( ´∀`)「………」
 
 
 
 
( ´∀`)「……そういえば」
 
川;゚ -゚)「……?」
 
 
 クールが、なにをどう言葉にすればいいかわからず、答えあぐねていた。
 かみ殺した嗚咽が、声帯を震わせる。
 すると、それを見かねたのか、裁判長はあたたかい声色で言葉をかけた。
 
 
.
449 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:04:38.76 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
( ´∀`)「あの、数年前に起こった、火事の事件」
 
川 ゚ -゚)「…!」
 
( ´∀`)「確か、被害にあった人の苗字が『素直』でしたが……
      ひょっとすると、ひょっとするのですかね」
 
 
川 ゚ -゚)「……」
 
 
 ――数年前、火事、「素直」。
 そのワードが並んだのを認識すると
 クールの瞳を覆っていた涙は、すぅ、と消えていった。
 
 クールは、裁判長の問いに答えない。
 しかし、その目が、肯定をあらわしているかのように思えた。
 
 
( ´∀`)「おそらく、あのとき、あなたは現実を受け止められなかったのでしょう」
 
( ´∀`)「……そして、今回も」
 
川 ゚ -゚)「っ」
 
 
.
453 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:11:03.64 ID:fJTgQXGu0
 
 
( ´∀`)「確かに、受け止めたくない、認めたくないのはわかる」
 
( ´∀`)「ですが、《真実》 とは、そんな私情でもっていたずらにゆがめていいものではないのです」
 
 
 
( ´∀`)「法廷では、証拠がすべて」
 
川 ゚ -゚)「…!」
 
 
 
( ´∀`)「……手垢のついた、有名な言葉ですね」
 
( ´∀`)「つまり、法廷では、ただアヤシイからとか、ただ信じられないからとか……
      そんな、ワレワレ人間が判断するようなものではなく、決して主観を介さない、
      証拠品によってでのみ 《真実》 を語ってゆくものなのですよ」
 
 
( ´∀`)「……あなたは、よくがんばりました」
 
( ´∀`)「が、これ以上あなたが執着すると、今度は司法への冒涜につながります」
 
( ´∀`)「証言も検討した、証拠も検討した。もう、できる限りのことは、済ませました」
 
( ´∀`)「だから、以上をもって、判決を迎えるべきなのです」
 
.

454 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:12:53.16 ID:fJTgQXGu0
 
 
川 ゚ -゚)「……」
 
( ´∀`)「わかりましたか?」
 
川 ゚ -゚)「……」
 
 
 ――クールはこのとき、すっかり、目を覚ましていた。
 先ほどまでの、生ぬるい池に浮かんでいたかのような感情はすっかり消え去り
 気がつけば、凛と立っては、凛と前を見つめる自分へ、と戻っていた。
 
 モナーの言葉も、一字一句違えることなく、聞くことができた。
 できたからこそ、クールは、“不敵に笑った” 。
 
 
川 ゚ -゚)「……ああ、わかったよ」
 
( ´∀`)「そうですか。では――」
 
川 ゚ -゚)「弁護側には、まだ!」
 
 
 
川 ゚ -゚)「異議が残っていることを――な!」
 
 
 
.
460 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:14:25.88 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
( ´∀`)「…へ?」
 
(;=゚ω゚)ノ「な、なにを……」
 
 
 
(;*゚ー゚)「ほっ……ホントウですか!?」
 
川 ゚ -゚)「ウソに決まっている」
 
(*゚−゚)
 
 
川 ゚ -゚)「……が。まだ、“つけいる隙” は、あった」
 
(*゚ー゚)「!」
 
 
 クールは、前――いようのほうに目を遣る。
 ここにきての、いきなりの豹変に、いようはたじろいでいるようだった。
 だから、そこを攻撃するべく、クールは指を突きつける。
 
 
.

461 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:15:54.59 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「検事!」
 
(;=゚ω゚)ノ「なんだよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「……なぜ、黙ったままなのだ?」
 
(=゚ω゚)ノ「…へ?」
 
 
 いようがきょとんとした顔をする。
 最初は、彼は悪意を持ってそうしているのか――と思っていたクールだが、それを見て考えを改める。
 しかし、故意だろうが事故だろうが、クールはただ、前に進むしかなかった。
 決して、先ほど一瞬見せていた弱気な自分をさらけ出さないように、彼女は続けた。
 
 
川 ゚ -゚)「裁判長! まだ審理の余地は残されている!」
 
( ´∀`)「……と、いうと?」
 
川 ゚ -゚)「 《まだ充分に審議されていない証拠品》 ……が、まだ、あるではないか!」
 
( ´∀`)「な、なんと!」
 
 
.
466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:18:44.61 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(*゚ー゚)「あるのですか!」
 
川 ゚ -゚)「た、たぶん」
 
(*゚−゚)「………弁護士さん」
 
川;゚ -゚)「い、いや……合ってる、とは……その。思う……ん、だけど」
 
 
 
( ´∀`)「それは面白い。いいでしょう。
      ……しかし、これで “最後” です」
 
川 ゚ -゚)「!」
 
 裁判長が、念を押して、言う。
 もうあとにはひかない――と決心したクールだったが、それを聞いてやはり、ドキッとしてしまった。
 
 
 
( ´∀`)「 《まだ充分に審議されていない証拠品》 。 それを、示してください!」
 
 
 
.

467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:21:38.34 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
川 ゚ -゚)「……ち」
 
( ´∀`)「ち?」
 
 
 
川 ゚ -゚)「その、動かされたという……植木鉢、だ」
 
 
 
( ´∀`)「な、なんと!」
 
( ´∀`)「――……それが、なにか」
 
川;゚ -゚)「(あ、あれー…)」
 
 
.
472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:24:11.57 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
(=゚ω゚)ノ「審議? 交わす必要がないよぅ」
 
川 ゚ -゚)「…なに?」
 
(=゚ω゚)ノ「植木鉢において重要なのは、植木鉢そのものではなく、あくまでその 『土の跡』 だよぅ」
 
(=゚ω゚)ノ「大方、植木鉢に、ほんとうに被害者が足をとられた痕跡でも調べようと思っているんだろうけど……
.     無駄だよぅ。痕跡がないことが証拠にはならないよぅ」
 
( ´∀`)「ちなみに、その植木鉢は、今、どこに……?」
 
(=゚ω゚)ノ「現場にあるよぅ。検察側にとっては、植木鉢なんてなんの立証能力も持っていないものなのだから」
 
 
川 ゚ -゚)「(……そう。 “検察側にとっては” 、意味のない証拠品だろう、植木鉢は)」
 
川 ゚ -゚)「(でも、それはあくまで、検察側の用意した仮定から見たら、の話だ!)」
 
川 ゚ -゚)「( “弁護側にとっては” ……まだ、検証の余地は、ある!)」
 
 
.
474 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:25:19.91 ID:fJTgQXGu0
 
 
( ´∀`)「もっともです。どうして、植木鉢の検証が必要となるのでしょうか?」
 
川 ゚ -゚)「……弁護側の主張を、思い出してほしい」
 
(=゚ω゚)ノ「 “発砲は二箇所に渡って行われていた” ……とかいう、アレかよぅ?」
 
川 ゚ -゚)「そうだ。あくまで、それが、弁護側の主張だ」
 
( ´∀`)「しかし、それがなにか」
 
 
川 ゚ -゚)「思い出してほしい」
 
川 ゚ -゚)「 “どうして、植木鉢は動かされたのか” ……を!」
 
 
( ´∀`)「それは……被害者が、足をとられて……」
 
(;=゚ω゚)ノ「……あああッ! まさか、弁護人――」
 
川 ゚ -゚)「……そう」
 
 
 
川 ゚ -゚)「 “合わない” のだよ。弁護側の主張からすると、な」
 
 
.
476 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:26:56.51 ID:fJTgQXGu0
 
 
( ´∀`)「ど、どういう意味ですか!」
 
川 ゚ -゚)「もし、弁護側の主張どおり、“発砲は二箇所に渡って行われていた” とすると……」
 
 
川 ゚ -゚)「植木鉢が動かされる理由が、ない!」
 
川 ゚ -゚)「額の打撲は、銃の柄によってつくられたからだ!」
 
 
( ´∀`)「!」
 
(;=゚ω゚)ノ「異議ありィ! その、弁護側の主張がただしい、という証拠を示してもらうよぅ!」
 
川 ゚ -゚)「まったく同じことが、検察側にも適応されるぞ」
 
(;=゚ω゚)ノ「なんだって……?」
 
川 ゚ -゚)「花瓶の件から、私は検察側の提示する仮定とは、まるで違う仮定を示した」
 
川 ゚ -゚)「そうなってしまった今、どちらが正しいのか……それは、ワレワレ人間には判断のしようがないのだよ!」
 
(;=゚ω゚)ノ「あッ!」
 
川 ゚ -゚)「……そう。」
 
 
.

477 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:28:28.47 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 
 
川 ゚ -゚)「法廷で 《真実》 を物語るのは、証拠品だけなのだ!」
 
 
 
 
( ´∀`)「…!」
 
 クールのその発言を聞いて、裁判長は目を見開いた。
 そして同時に、その言葉は彼にある一つの決断をさせた。
 
 裁判長が、手を二回叩く。
 加えて、彼はいようの名を呼んだ。
 
 
( ´∀`)「伊予検事! 至急、その植木鉢を本法廷に提出するのです」
 
(;=゚ω゚)ノ「な………」
 
( ´∀`)「そこに “なにか” があれば……
      本法廷では、本件における見解を変えざるを得なくなりますからな」
 
(;=゚ω゚)ノ「……ッ!」
 
 
.
480 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:30:50.52 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
( ´∀`)「ここで、休廷を……最後の休廷を、挟みたいと思います」
 
( ´∀`)「現場は、この裁判所から、そう遠くない。時間はかからないでしょう」
 
( ´∀`)「それまでの間に、弁護側、及び検察側は、
      各自の持つ仮定について、いま一度検証を命じます」
 
 
(;=゚ω゚)ノ「……わかったよぅ。
      刑事! わかったかよぅ? 植木鉢だよぅ!」
 
   「わかんないんです!」
 
(;=゚ω゚)ノ「刑事ィィッ!!」
 
 
 
.

481 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:33:38.53 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 
 ――こうして。
 
 素直クールは、かろうじてこの劣勢をくぐりぬけ
 
 そして、今度こそ「最後」の審理を、休廷を挟んで迎えることになったのであった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.
483 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/26(火) 03:35:07.08 ID:fJTgQXGu0
 
 
 
 
 
 
 
 
  ◆第一話 「逆転のバレインタイン」
 
 
  つづく
 
 
 
 
 
 
 
.

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