- 5
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:39:56.19 ID:oUxuTfUO0
-
「……どうして?」
「もう、何度も言っているだろ。俺はお前を愛せない」
「だから、……どうして……?」
「俺はお前以外に、好きな奴ができた。…ただ、それだけだ」
「わ、わたしのことは……?」
「だから、何度も言ったはずだ。……別れてくれ」
「…………嘘……。」
「カネは払う。いくらだ。言われたとおりの額を出そう」
「お、お金の問題じゃない! わたしは、わたしは――」
「しつこいぞ」
.
- 6
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:41:52.26 ID:oUxuTfUO0
-
「……ッ……!」
「いたずらに、お前の恋心を煽って……悪かったと、思ってる」
「カネが嫌なら、なにがいい。服か? 宝石か?」
「………。」
「だから……もう、別れてくれ。これ以上は、言わん」
「…………。」
.
- 7
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:42:39.23 ID:oUxuTfUO0
-
「……ギコくん、ばいばい」
「………ああ。また街とかで会ったら、挨拶でもするよ。……じぃ」
「……じゃ……」
「………」
「出て行った、か……」
「……あいつ、呼ばないとな」
「………」
.
- 8
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:43:44.94 ID:oUxuTfUO0
-
「もしもし。俺だ、ギコ」
「すまんが、もう一度、俺の家に来てくれないか」
「……さっき、言い忘れたことがあったんだ」
「留守電でメッセージを入れるより、直接話したい」
「………待ってるぞ」
『キロク シマシタ
. 2ガツ14ニチ 18ジ36プン』
.
- 9
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:44:37.29 ID:oUxuTfUO0
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
川 ゚ -゚) クールに決める逆転裁判のようです
File.1 「 逆転のバレンタイン
」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
−1−
.
- 12
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:45:38.88 ID:oUxuTfUO0
-
最後の戦争が終わってから何年経つのだろうか。
かつてこの国が抱いていた窮乏や不安はいまやその面影すらなくし、
いまや、平和と怠惰が人々のなかにはびこるようになっていた。
民主主義、個人の尊重などを政府がかなりプッシュしてきた結果
なんの皮肉か、犯罪件数は数十年前よりも増加の一途しか辿らないようになってしまった。
だが、日々増える犯罪に、警察の捜査が追いつかない――ことは、ない。
ちいさな犯罪を切り捨て、大きな犯罪を優先して片付けるようになったため
犯人を検挙するに至るまでの経緯は、決して絶えることがなかった。
しかし、問題は警察ではなかった。
その、警察が検挙した犯人を裁く――つまり、裁判に、問題ができた。
犯罪件数が多すぎて、既存の司法制度ではとても処理しきれないようになったのだ。
そこで試験的に実施されるようになったのが、「序審法廷制度」と呼ばれるシステムだ。
それまでのように、刑罰の重さやその処置のとり方などを逐一最初から最後まで争っていると、
裁判所が一日にこなす仕事量よりも、舞い込んでくる犯罪件数のほうが上回る計算になったのである。
.
- 13
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:46:41.90 ID:oUxuTfUO0
-
序審法廷制度とは、文字通り「序審」が設けられたことが一番の特徴で、
まずはこの序審で、被告人にかかった容疑の事実関係を追究、
無実だったならその時点で釈放し、有罪だったなら後日改めてその刑罰を決める、というのだ。
あくまで追究するのは事実関係のみで、もし被告人がどう見ても犯人だった場合は
検察側がその証拠や証言を揃えれば法廷はそれで終了――となるし
逆に検察側の用意するそれがいささか立証能力に欠けるようであれば、無罪推定の原則が適用され釈放――となる。
序審は最長でたったの三日だ。
つまり、三日で、推定無罪の人を釈放することができるのだ。
このシステムのおかげで、推定無罪の人が被告人の事件を
本来裁判所でこなすべき仕事から抜くことができるようになったため、裁判所の仕事効率は格段に上昇した。
――だが、一見この画期的に見えるシステムには、ひとつ、大きな欠点があった。
「推定無罪をあらかた除外できる」というメリットは、言い換えれば
「有罪と認定されればそれを覆すのがおよそ不可能になる」という点であった。
もっと簡略的に言うなれば、弁護側は三日間で被告人の無罪を立証しなければならない。
「真実としては無罪だが、おそろしいほど自分に不利な証拠が並べられた場合は無実の罪を着せられることになる」。
これが、この「序審法廷制度」における、最大の欠点と言えるようになった。
.
- 15
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:48:09.09 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)「……だというのに、どうして」
素直クールは、この「序審法廷制度」のことを再認識しながら、そうため息をついた。
開廷まで、もう十分もない。
一通りの資料には目を通しており、物理的な準備は既にできていた。
だが、心の準備、がまったくできていなかった。
「なに暗い顔してるんですか」
川 ゚ -゚)「…ム」
クールは、後ろから肩を叩かれた。
その明るい声を聞いて、更に、クールの心の準備が整わなくなった。
今更触れるまでもない。
クールの憂鬱の原因は、声をかけてきた彼女、にあるのだから。
.
- 17
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:49:53.78 ID:oUxuTfUO0
-
(*゚ー゚)「もう裁判はじまりますよ」
川 ゚ -゚)「……君は、すごく軽いんだな」
(*゚ー゚)「アイドルたるもの、いつでも笑顔! がモットーですから」
川 ゚ -゚)「周りから笑顔を吸い取って自分だけが笑顔になるのは、どうかと思うぞ」
(*゚ー゚)「あっはは。弁護士さん、面白いですね」
川 ゚ -゚)「ああ。まったくを持って “不”
愉快だ」
――比較的長身なクールよりも頭一個分ほど背の低いしぃは、そう言っては陽気にふるまった。
クールはもともと沈着な人なのだが、彼女が隣にいるせいで、よけいに口数が減りつつあったのだ。
口数を減らす代わりに、ため息をつく回数が増えたと感じられる。
クールは今すぐにでも、この裁判を放棄してはやく家に帰りたがっていた。
.
- 18
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:51:17.97 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)「で、だ。……もう一度、訊くが」
(*゚ー゚)「またですか」
川 ゚ -゚)「最後の確認だ。……えっと、その」
(*゚ー゚)「…」
クールは、もう何周にも渡って目を通しておいた
資料の内容を脳裏に浮かべながら、言った。
川 ゚ -゚)「ほんとうに、君は……殺してない、のだな?」
(*゚ー゚)「…はい」
――猫乃ギコ殺害事件の被告人、椎名しぃはうなずいた。
担当弁護士の素直クールは、最終確認、を続ける。
.
- 19
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:52:11.97 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)「あの日……二月十四日、君はなにをしていた」
(*゚ー゚)「……14時頃に、ギコくんとカレの家で待ち合わせして。
そこから15時40分ほどまで、遊んでいました」
川 ゚ -゚)「しかし、その日のうちにもう一度、君は被害者宅に足を運んだ。
そこらについて、もう一度言ってほしい」
(*゚ー゚)「………私は、殺してなんかいない」
川 ゚ -゚)「それを信じるためにも、このときのことを教えてほしい」
(*゚ー゚)「……」
川 ゚ -゚)「……」
.
- 20
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:53:12.05 ID:oUxuTfUO0
-
そこで、しぃ、クールともに黙った。
被告人第三控え室では、ほかに音を出す存在は無い。
そのため、とたんに、彼女ら二人は静寂につつまれることになった。
時計の針が音を刻む。
クールはどうしたものか、と思っていると、控え室の扉が開かれ、
続けて男――法廷係官の声が、聞こえた。
( `・д・)ゞ「まもなく開廷します。被告人、並びに弁護人は、裁判の用意をしてください」
川 ゚ -゚)「……行くぞ」
(*゚ー゚)「はい」
クールとしぃは、少しぎこちない様子でありながらも、
法廷係官に先導されては、この控え室をあとにした。
.
- 25
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:57:30.29 ID:oUxuTfUO0
-
◆
傍聴人のざわめく音が聞こえるのは、まだ開廷されていないからだ。
本来傍聴人とは、遺族や関係者のほかに、裁判に興味を持つ一般人で埋め尽くされるものだ。
法学部在住の学生なんかが、近年では傍聴が多くなっているらしい。
しかし、今日に限っては違った。
今日、傍聴席の多数を占めているのは、そんな人たちではなかった。
アイドル「しぃ」が被告人――ということに惹かれた野次馬やファン、で埋め尽くされていたのだ。
また、各メディアの報道陣も、この裁判の行く末を、不純な動機のもと心待ちにしている。
皆、被告人が著名なアイドルだから――という理由だけで傍聴席に就いていたのである。
開廷数分前に、クールとしぃが入廷して、所定の位置に就く。
しぃの登場を見てさまざまな声をかける傍聴人たちであったが、
直後に裁判長がやってきたのを見て、その声はとたんに消え失せてしまった。
裁判長が席に就いたところで、彼は、その威厳に満ちた口を開いた。
このときクールは、今までにないくらい、緊張していた。
.
- 26
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:58:19.76 ID:oUxuTfUO0
-
( ´∀`)「……えー、では」
川;゚ -゚)
( ´∀`)「これより、猫乃ギコ殺害事件の審理を、はじめます」
( ´∀`)「弁護側、及び検察側。準備はよろしいですかな?」
(=゚ω゚)ノ「検察側、いつでもいいよぅ!」
川;゚ -゚)
( ´∀`)「そうですか……ん? 弁護側、準備は?」
川;゚ -゚)
川 ゚ -゚)「…! あ、大丈夫……です」
(;*゚ー゚)「弁護士さん……」
.
- 27
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 19:59:10.41 ID:oUxuTfUO0
-
クールは、なんとか声を絞り出したものの、その声はどこかか細く聞こえた。
威勢がなく、聞くからに「大丈夫」でないのがわかるような声だった。
そのため、裁判長は首を傾げた。
( ´∀`)「はて。ほんとうに大丈夫ですか?」
(=゚ω゚)ノ「裁判長。彼女は確か、今日が
“初” の法廷だそうですよぅ」
( ´∀`)「なんと! それはそれは、まあ……いいですなあ」
(=゚ω゚)ノ「この検事歴八年の伊予いようがいるからには、そこまで緊張しなくていいんだよぅ」
川 ゚ -゚)「(中途半端だな)」
(*゚ー゚)「中途半端ですね」
.
- 29
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:00:00.42 ID:oUxuTfUO0
-
ひょろひょろとした体躯を持ついよう検事は、そう言っては男にしては高い声で笑いだした。
だが、笑えるだけマシだ、とクールは内心で思っていた。
クールは、今回が、初の法廷なのだ。
しかも、その内容が殺人事件。
まして、依頼人が、著名なアイドルのしぃである。
クールのプレッシャーは、他人が理解できないほどには高まっていた。
が、裁判長はそれを気に留めることもなく、両手を叩いた。
彼の鳴らすその渇いた音で、法廷内を静まらせるのだ。
木槌を使わない代わりに、彼はこうやって、静粛を訴えるのである。
( ´∀`)「はいはい、静粛に。まあ、緊張せずに、のんびりして結構ですよ。ほっほっ」
川 ゚ -゚)「…」
.
- 30
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:00:47.87 ID:oUxuTfUO0
-
( ´∀`)「……では、開廷しましょう。まず、いよう検事」
(=゚ω゚)ノ「なんだよぅ」
( ´∀`)「早速ではありますが、冒頭陳述を」
(=゚ω゚)ノ「任せてくれよぅ!」
川 ゚ -゚)
(*゚ー゚)「……どう、しました」
川 ゚ -゚)「…胃が痛い」
(*゚ー゚)「は、はあ」
.
- 32
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:01:46.52 ID:oUxuTfUO0
-
裁判長に促され、いようは、ゴホンと咳払いをした。
そして余裕に満ちた表情を浮かべ、彼は口を開く。
(=゚ω゚)ノ「これは、二月十四日……
. そう、世間の恋人たちがともに愛を語らう日に起こった、“惨劇”
だったよぅ。
. そして被告人、椎名しぃもまた、その恋人たちの一人だった――ハズなんだよぅ」
(=゚ω゚)ノ「しかし、殺されたのは、被告人と交際関係にあったとされる人。
. 猫乃ギコ、二十八歳。…死ぬには、あまりにも若すぎる年齢だよぅ」
(=゚ω゚)ノ「本法廷において、検察側は被告人が有罪であることを間違いなく立証するよぅ。
. と、こんなところだよぅ」
( ´∀`)「わかりました。ところで……」
(=゚ω゚)ノ「?」
( ´∀`)「被害者が恋人だ、というのはいいのですが、ほら……被告人は、アイドルでしょう?
この恋仲は、世間一般で認められたカップルなのですかな?」
(=゚ω゚)ノ「さすがは裁判長、いいところに気がつきましたよぅ」
いようはそう言って、腕を組んだ。
スーツの袖の裾から細い腕が見える。
声の高さといい、あまり男性らしくはない男性だな、とクールは思った。
.
- 33
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:02:36.98 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「むろん、アイドルのしぃと言えば、世間的に有名なアイドルなんだよぅ。
. 彼女の交際は、事務所が許そうと、世間が許すハズないんだよぅ」
( ´∀`)「ということは……その、アレですかな」
( *´∀`)「……す、すきゃんだらすな交際だったわけですな!」
(=゚ω゚)ノ「そうだよぅ。だから、被告人には、彼女のプライベートを
. 調べるまでもなくその点において既に動機があるんですよぅ」
( ´∀`)「禁じられた恋……ソソりますねえ」
川 ゚ -゚)「(……おちゃめな人なんだな)」
( ´∀`)「そうとわかれば、早速証言に移ってもらいましょう。
いよう検事、最初の証人を召喚してくださいな」
(=゚ω゚)ノ「了解だよぅ!」
( ´∀`)「して、最初の証人は……?」
法廷の入り口を見ながら、裁判長は訊いた
「ふふん」と鼻を鳴らして、得意げにいようは答えた。
.
- 35
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:04:03.45 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「これでも、新米弁護士さんに対する心遣いはあるんだよぅ」
川 ゚ -゚)「…私?」
(=゚ω゚)ノ「まず最初は、この事件の捜査を担当した刑事に、この事件のあらましを言ってもらうよぅ。
. そっちのほうが、有罪の立証も手早く済むし、一石二鳥なんだよぅ」
( ´∀`)「わかりました。係官、証人を」
裁判長が短く言うと、係官はすぐに応じた。
そして入り口からは、背丈の低く、柔和な顔を浮かべる「刑事」がやってきた。
( ><)
( ´∀`)「ふむ。お名前とご職業はなんですかな」
( ><)「はい! VIP県警捜査一課、刑事の稚内ワカンナインデスなんです!」
( ´∀`)「随分と元気がいい刑事さんなんですな」
( ><)「それほどでも……あるんです!」
川 ゚ -゚)「(うざいな)」
.
- 36
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:04:56.31 ID:oUxuTfUO0
-
( ´∀`)「そうですか、わかりました。じゃあ早速、証言のほうを」
(=゚ω゚)ノ「 《二月十四日の『惨劇』》
……言ってやるんだよぅ!」
( ><)「ガッテンです!」
川 ゚ -゚)「……いよいよ、だな」
(;*゚ー゚)「べ、弁護士さん?」
川 ゚ -゚)「? どうした」
証言がはじまる、と実感して、クールは意気込みをした。
しかしそれを聞いて、しぃは青い顔で後ろにいるクールに話しかけた。
小声ではあるが、切羽詰った様子はクールにも充分伝わった。
.
- 37
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:05:49.64 ID:oUxuTfUO0
-
(*゚ー゚)「どうした」
(;*゚ー゚)「じゃないですよ! え、あなた、これが
“初” の法廷だったんですか!?」
川;゚ -゚)「……うん」
(;*゚ー゚)「どど、どうして言ってくれなかったんですかっ!」
川;゚ -゚)「いやあ、言ったじゃないか。………
『若いよ』って」
(;*゚ー゚)「若さ自慢をしただけじゃないですか!」
川 ゚ -゚)「まあ、なんとかなるだろう。君が無実なら、な」
(;*゚ー゚)「……そ、それはそうですが……」
ワカンナインデスは、証言をするに際して必要なものを用意しているようだ。
しぃはそれを横目で見やってから、クールに引き続き言葉を放った。
.
- 38
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:07:01.13 ID:oUxuTfUO0
-
(;*゚ー゚)「だ、大丈夫なんですか?」
川 ゚ -゚)「なにが」
(;*゚ー゚)「いまから、何をどうやればいいか……わかってるんですか?」
川 > -<)「ワカンナインデス」
(;*゚ー゚)「ふざけないでっ!」
川 ゚ -゚)「……まあ、やり方くらいならわかってるよ」
川 ゚ -゚)「…… “尋問” 、それが私の仕事だからな」
(*゚ー゚)「 “尋問” …?」
.
- 40
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:08:00.07 ID:oUxuTfUO0
-
「ああ」と言って、クールは続けた。
川 ゚ -゚)「証言のなかに潜むムジュンやウソに証拠品を突きつけて、証言を崩すのだ」
(*゚ー゚)「そうなんですか?」
川 ゚ -゚)「いま適当に考えた」
(;*゚ー゚)「! ふざけてるんですか!」
川 ゚ -゚)「冗談だ。これでも、司法試験にとおっているのだぞ、私は」
(;*゚−゚)「頼みますよ、ほんとうに……」
.
- 41
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:09:00.23 ID:oUxuTfUO0
-
( ><)「……あの、はじめていいですか?」
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「? 私か?」
(=゚ω゚)ノ「おしゃべりは済んだかよぅ?」
川 ゚ -゚)「なに?」
言われて、クールは周囲を見回した。
裁判官、裁判長、検事、傍聴人、証人――
皆が、弁護席、それもクールとしぃの方に向けられていた。
夢中に話しすぎた――
そう思うと恥ずかしくなったのか、クールは顔が耳まで真っ赤になった。
「初々しくて、いいですなあ」と裁判長が言ったのを皮切りに、ワカンナインデスは口を開いた。
はやく証言したくてたまらないのだろう、そう思うと彼からも初々しさが感じ取れた。
見るからに若いのだ、職歴もきっと浅いのだろう。
.
- 42
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:10:22.66 ID:oUxuTfUO0
-
( ><)「 “惨劇” が起こったのは、二月十四日のことなんです。
被害者、猫乃ギコは、後頭部を銃で撃たれたことが直接的な死因となってるんです」
( ><)「死亡推定時刻は18時から19時、と解剖結果からわかったんですが……
犯行時刻は18時45分頃ではないか、という結果が捜査陣からあげられたんです」
( ><)「で、現場なんですが……」
川 ゚ -゚)「?」
ワカンナインデスが言葉を濁したかと思うと、彼は検事席にいるいように目配せをした。
それを合図に、いようが口を開く。
(=゚ω゚)ノ「これが現場の状況なんですよぅ。初心者の弁護人のために、簡略化した図を用意したんですよぅ」
( ><)「画面に注目してほしいんです!」
すると、弁護席と検事席の背後にある大きなモニターや
裁判官、裁判長の手元にあるちいさなモニターに、「それ」が映し出された。
(→ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_855.png)
.
- 43
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:12:18.94 ID:oUxuTfUO0
-
( ><)「これは、犯行現場……つまり猫乃宅のリビングを、上から描いたものなんです。
事件と関係のなさそうなものや血だまりなどなどは省いたんですが、
事件のあらましを説明するのにはまったく問題ないので安心してほしいんです」
( ´∀`)「そのほうがいいですな。血だまりなんて写されたら、倒れそうですぞ」
川 ゚ -゚)「(…… 『上画面』 か。何度も目を通しておいたが、念のためもう一度見ておこう)」
そう思って、クールが画面に目を遣る。
六つの楕円形でかたどられたのは、ギコの死体だ。
リビングの入り口からベランダ、テレビのほうに向かって倒れている。
( ´∀`)「しかし、いくつか気になることが」
( ><)「なんですか?」
( ´∀`)「まず、この×印はなんですか?」
( ><)「それは、“弾痕” なんです」
( ´∀`)「弾痕……」
.
- 44
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:14:14.49 ID:oUxuTfUO0
-
( ><)「一つが、台所の上にあった花瓶を。もう一つが、ソファーに。
被害者の命を奪ったのは、後者……つまり、ソファーのほうの弾なんです」
( ´∀`)「わかりました。もう一点、カウンターと冷蔵庫の下にある○印は?」
( ><)「それは、なんといいますか、カーテンみたいなものなんです」
( ´∀`)「カーテン?」
( ><)「廊下からこのリビングに入ると、まず最初に目に入るのが台所、カウンターなんですが……
このカーテンを閉めれば、それは視界から閉ざされることになるんですよ」
( ´∀`)「ほうほう」
( ><)「珍しかったので、一応図に載せておいたんです」
川 ゚ -゚)「……異議ありッッ!」
.
- 46
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:15:30.90 ID:oUxuTfUO0
-
( ´∀`) !?
( ;><)「ひいいいいイイッ!!
. ……な、なんなんですか、いきなり!」
――突如として、クールは指を突きつけて、ワカンナインデスに怒鳴りかかった。
その声は女性にしては大きく、また声量はどうであれ
それまで法廷内は比較的静かだったため、彼女の声がひときわ大きく聞こえた。
結果、このタイミングでこの大きさの声を聞かされるとは
思ってもみなかったワカンナインデスが、露骨に驚いた。
泣きそうな顔をして、ワカンナインデスがクールの顔を見る。
当のクールは、なぜかそわそわとしていた。
川 ゚ -゚)「あ、えっと……」
川;゚ -゚)「べ、弁護側からも、質問が…ある!」
(*゚ー゚)「なら異議を唱えなくてよかったんじゃ……」
川;゚ -゚)「ど、どう止めればいいかわからなかったんだ」
.
- 47
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:16:44.19 ID:oUxuTfUO0
-
( ;><)「質問ですか? どうぞ」
川 ゚ -゚)「……その、だ」
川 ゚ -゚)「そ、その、カーテンは……開いてたのか?」
「なんだ、そんなこと」とワカンナインデスは返した。
予想外に規模の小さな質問だったので、今しがたの驚きの反動で、一気に安堵が生まれたのだ。
( ><)「開いてたんです。これで満足ですか?」
川 ゚ -゚)「あ、えっと……、……はぃ…」
( ><)「声がちいさいんです……」
(=゚ω゚)ノ「まあ、“初” なんだから許してあげるんだよぅ。
. 刑事、続きを頼むよぅ」
( ><)「わかったんです。えっと、どこまで行ったっけ……」
( ><)「……あ、そうそう。じゃあ、本筋に戻るんです」
.
- 49
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:18:06.85 ID:oUxuTfUO0
-
ワカンナインデスはそう言って、深呼吸をした。
彼は彼で、やはり緊張しているのだろう。
( ><)「……被害者は、被告人を18時36分に電話で呼び出したんです。
そして呼び出された被告人は、このリビングに案内されたと思われます。
そのときに被告人は、背後から、被害者に銃を向けて、二発撃ったんです」
( ><)「で、重要なのが、この二つの弾痕なんです」
( ´∀`)「見たところ、方向が違うようですが……」
( ><)「まず、一発目。リビングに入ると同時に、被害者に向けて一発。
このときははずれて、台所にある×印のところにそれは着弾したんです」
( ><)「撃たれたことで危機を感じた被害者は、そのまま逃げるようにベランダに向かったんです。
そのときに、被告人が二発目を撃ちました。ソファーに残った弾痕が、それなんです」
( ><)「それで、被害者は即死でした。あ、お手元の解剖記録の資料も見てほしいんです」
川 ゚ -゚)「( 『解剖記録』 ……これだな、うん)」
.
- 51
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:19:37.64 ID:oUxuTfUO0
-
ワカンナインデスが注意をそちらに向けたところで、クールもそれに目を遣った。
中に書かれてあることは、何度も読み、把握している。
死亡推定時刻は、18時から19時の間。
一発の弾丸により、即死したものであるようだ。
ほかには、額に打撲の痕も確認されたことが書かれていた。
中に目を通すまでもないクールは、そのまま一度さげた視線を、ワカンナインデスのほうに向けた。
彼は「いいですか」と言って、皆の注意を自分に向けさせる。
( ><)「そうして被害者を銃殺したあと、これがまた問題だった。
被告人はあろうことか、慌てて被害者宅から
“逃走” したんです!」
川 ゚ -゚)「なに?」
その言葉を聞いて、クールをはじめ傍聴人や裁判官が少し動揺を見せた。
解説するように、ワカンナインデスが付け足す。
( ><)「目撃者がいたんです」
.
- 53
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:20:34.04 ID:oUxuTfUO0
-
川;゚ -゚)「…っ!」
( ´∀`)「目撃者、とは?」
( ><)「とある雑誌記者で、被告人のスキャンダルを企んでいたそうなんです」
(*゚ー゚)「エビフライデーの記者か……」
川 ゚ -゚)「…ん? エビフライデー?」
(*゚ー゚)「私のことをしつこくつけまわしてくる、ゴシップ誌です」
川 ゚ -゚)「ほう……、……?」
川;゚ -゚)「ま、待て! ということは――」
( ><)「トーゼン! 写真、とられてますよ。はい、これ」
川;゚ -゚)「(…… 『目撃者の写真』
……!)」
.
- 54
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:21:47.16 ID:oUxuTfUO0
-
ワカンナインデスがにやにやしながら提示したそれには、
確かにしぃのものとわかる後ろ姿が写っていた。
写真の左半分が電柱であることから、例の雑誌記者の写真と見て間違いないだろう。
ギコ宅から、この記者とは反対の方向に走り去るしぃの後ろ姿が確認される。
そして問題は、その時刻だった。
( ><)「この写真を撮られたのは、18時の46分。記録に残ってるから、間違いないんです」
( ><)「これは、犯行をした証拠こそ写ってませんが、時刻そのものが立派な証拠となってるんです」
( ´∀`)「そういえば、先ほど……」
( ><)『死亡推定時刻は18時から19時、と解剖記録からわかったんですが……
犯行時刻は18時45分頃ではないか、という結果が捜査陣からあげられたんです』
( ´∀`)「……とありましたが、コレは……」
(=゚ω゚)ノ「そのことで、検察側からは更に一点、証拠を提出するよぅ」
川;゚ -゚)「(ま、まだ増えるのか……)」
.
- 56
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:23:57.37 ID:oUxuTfUO0
-
( ´∀`)「どれ。……すまーとふぉん……とやらですかな?」
(=゚ω゚)ノ「そうだよぅ。これとこの目撃者の写真が、
. “この犯行は被告人にしかできなかった”
ことを証明するんだよぅ」
そう言っていようが提出したのは、薄い桃色が映えるスマートフォンだった。
それを見せられて、クールは更に嫌な予感がしてきた。
(=゚ω゚)ノ「これは、被告人――椎名しぃのスマホだよぅ。
. ちなみに、裁判長はスマホのことをどこまでご存じだよぅ?」
( ´∀`)「持ち歩くぱそこん、と聞いたことがありますな。最近私もはじめたのですよ」
(=゚ω゚)ノ「充分だよぅ。でも、重要なのはその多彩な機能じゃなくて……
“電話機能そのもの” なんですよぅ」
( ´∀`)「というと?」
(=゚ω゚)ノ「ちょっと、これを聞いてほしいですよぅ」
いようが言うと、ただでさえ静かだった法廷内が、いっそう静かになった。
息遣いや布擦れの音すら聞こえない。
いようが何かしたかと思うと、法廷内に、ややノイズ混じりの音が流れ始めた。
.
- 57
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:25:10.85 ID:oUxuTfUO0
-
『もしもし。俺だ、ギコ』
『すまんが、もう一度、俺の家に来てくれないか』
『……さっき、言い忘れたことがあったんだ』
『留守電でメッセージを入れるより、直接話したい』
『………待ってるぞ』
『キロク シマシタ
. 2ガツ14ニチ 18ジ36プン』
.
- 58
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:27:05.79 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「……もう一度流すかよぅ?」
( ´∀`)「いえ、結構です。しかし、これはいったい……?」
(=゚ω゚)ノ「 『留守電のメッセージ』
だよぅ。今の声の主が、被害者だよぅ。
. どうやら被害者は、なにか用があって被告人を呼び出したそうなんですよぅ」
川 ゚ -゚)「ま、待った!」
(=゚ω゚)ノ「なんだよぅ?」
川;゚ -゚)「それは、ひ、被害者の携帯電話の発信履歴と
. 照らし合わせたが上での、しょ…そう、証拠なのか?」
(=゚ω゚)ノ「……」
川 ゚ -゚)「(…なんだ?)」
クールはたどたどしい口調で、その点を訊いた。
ただの時間稼ぎのつもりで、だ。
しかし、いようは黙った。
クールは「いい線を衝いていたのか?」と思った。
.
- 60
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:28:22.99 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「…刑事」
( ><)「はッ! 目下捜索中なんです!」
川 ゚ -゚)「…… “捜索中” ?」
予想外の言葉を放たれ、クールは復唱して訊いた。
「ええ」と、ワカンナインデスは首肯した。
( ><)「きっと、被害者の携帯電話のデータが見られるのを恐れて
被告人が捨てたものだと思われるんです」
(=゚ω゚)ノ「 『目撃者の写真』 を見てもわかるように、
. 被告人には被害者のケータイを捨てる機会はあったよぅ。
. 動機を悟られないために、と考えれば、辻褄が合うよぅ」
川 ゚ -゚)「(…… 『紛失した携帯電話』
か。覚えておこう)」
(=゚ω゚)ノ「いいかよぅ?」
川;゚ -゚)「あ、えっと…はい」
.
- 61
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:29:33.03 ID:oUxuTfUO0
-
「よし」と言って、いようは本題に戻った。
(=゚ω゚)ノ「そして、こちらの問題もやはり
『時刻』 ですよぅ」
( ´∀`)「時刻…?」
(=゚ω゚)ノ「事件当日の、18時36分……」
(=゚ω゚)ノ「この証拠によって “このときまで被害者は生きていた”
ということが証明されたよぅ」
(=゚ω゚)ノ「また一方で、この 『目撃者の写真』
により、被告人が逃げ出したのが18時46分だとわかってるよぅ」
(=゚ω゚)ノ「この間に犯行を行えたのは……」
(=゚ω゚)ノ「椎名、しぃ!」
(=゚ω゚)ノ「あなたしか、ありえないんだよぅ!」
.
- 64
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:30:49.61 ID:oUxuTfUO0
-
いようは、そう言っては弁護席の前で座るしぃに指を突きつけた。
当のしぃはうつむいているも、どこか生気が感じられなかった。
川 ゚ -゚)「異議あり!」
川 ゚ -゚)「そ、その……」
(=゚ω゚)ノ「?」
川;゚ -゚)「……コホン」
川;゚ -゚)「………その時間帯に被告人が被害者宅を訪れた
. というだけで犯人だ、というのは、いささかトッピすぎやしないか……な?」
( ><)「訊かれても困るんです」
( ´∀`)「しかし、それはもっともです。ただの状況証拠にすぎませんからね」
川 ゚ -゚)「(ホッ)」
裁判長がクールに助勢する。
しかし、いようはククク、と不敵に笑んだ。
.
- 66
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:31:53.72 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「ったく、弁護人も人が悪いよぅ」
川 ゚ -゚)「…」
(=゚ω゚)ノ「 “それだけではない” ……それをよく知っているのは、あなたじゃないかよぅ?」
( ´∀`)「……ということは、ある、のですね?」
( ´∀`)「…… “決定的な証拠” が」
(=゚ω゚)ノ「当然だよぅ。先に外側から固めて、確実に被告人の罪を立証しようとしてたんだよぅ」
(=゚ω゚)ノ「それを今から、引き続き刑事に証言してもらうよぅ。まかせたよぅ?」
( ><)「ガッテン!」
.
- 67
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:33:10.59 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)「……」
(* - )
クールは、しぃを見る。
先ほどまでの明るい様子とは違い、どこか憂えているように見えた。
しかし、そんな彼女の様子など、クール以外誰も気に留めない。
ワカンナインデスは、相変わらずな様子で証言を再開させた。
( ><)「 『目撃者の写真』 と 『留守電のメッセージ』
から、犯行時刻は特定されたも同然なんです」
( ><)「だからこそ、この証拠品の持つチカラが、ゼッタイとなるんですよ」
( ><)「……コレ、です」
( ´∀`)「これは……ずばり?」
( ><)「 『拳銃』 ですよ、モチロン」
川;゚ -゚)「(……くッ!)」
.
- 72
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:40:13.25 ID:oUxuTfUO0
-
( ><)「トーゼン、現場で見つかった二つの弾丸は、この拳銃から撃たれたものとなってます」
( ><)「センジョーコン?が一致したので、間違いないんです!」
川 ゚ -゚)「( “線条痕” ……おなじみ、だな)」
発砲するさい、弾丸は銃のなかにあるライフルラインを通る。
それによって、弾丸はちいさな傷を負うのだ。
それを線条痕と言い、その傷跡を調べれば、その弾丸がどの銃から撃たれたものかがわかる。
川;゚ -゚)「(しかし……これはまずいぞ)」
クールが憂慮している間も、法廷内では検察側優勢の空気が漂っていた。
裁判長が数回手を叩いて、そのざわめきを宥める。
しかしそれでも、空気が変わることはなかった。
.
- 74
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:41:23.94 ID:oUxuTfUO0
-
( ><)「以上のことを踏まえて、もう一度あらましを言うんです」
( ><)「まず、被害者は18時36分に、被告人を呼び出すべく、留守電にメッセージを残した」
( ><)「そして被害者宅を訪れた被告人は、被害者に先導されてリビングに向かうが――」
( ><)「リビングに入ったと同時に、被告人が一発目を撃った!
しかしそれは被害者に命中せず、台所にあった花瓶に直撃」
( ><)「ベランダに逃げようとした被告人を後ろからもう一度撃ち――
……被害者は、儚くなって、おしまいなんです」
( ><)「慌てて、被告人は被害者宅から逃走。
18時46分、目撃者が写真とともにそれを見ました」
( ><)「……そうそう。これが、その台所の上にあった
『割れた花瓶』 です。
置かれていたところに跡があったから、
少なくとも一日は 『上画面』
の位置にあったと思われるんです。
あ、花はなかったんです」
ワカンナインデスは、大きな袋に入ったそれを提示した。
裁判長が受理したところで、ワカンナインデスの語調は戻る。
( ><)「どうです? これは、被告人が犯人じゃないとありえない犯行なんです」
.
- 75
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:44:00.50 ID:oUxuTfUO0
-
そう締めくくって、ワカンナインデスは口を閉じた。
クールが冷や汗を流す一方で、裁判長は何度も繰り返しうなずいていた。
裁判長の心証は、弁護側にとってよくない方向に動いたようだ。
( ´∀`)「よく、わかりました。確かに椎名さんにしか犯行はできないようですね」
川;゚ -゚)「い、異議ありっ!」
(=゚ω゚)ノ「……ちなみに、むやみに異議を唱えたら、その分ペナルティーを与えるよぅ」
川;゚ -゚)「…?」
(=゚ω゚)ノ「序審法廷制度にとって、遅延行為は一番のタブーなんだよぅ。
. だから、コンキョのない異議や指摘を繰り返したら、その時点で判決を下してもらうんだよぅ」
川;゚ -゚)「………くッ」
( ´∀`)「ちなみに、今の異議は?」
川;゚ -゚)「……まだ、弁護側には尋問の権利が残っている、ということだ」
( ´∀`)「シゴクもっともです。では、尋問に移りましょう」
( ><)「かかってこいなんです!」
.
- 76
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:45:11.84 ID:oUxuTfUO0
-
川;゚ -゚)「(……ついに、尋問だな)」
川;゚ -゚)「(だ、大丈夫……だよな?)」
川 ゚ -゚)「(とりあえず、大量に証拠品が出てきたから……情報をまとめるとしよう)」
.
- 77
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:46:30.73 ID:oUxuTfUO0
-
まず、問題となるのは 『拳銃』 だ。
拳銃にはしぃの指紋が残っている。
撃たれた弾は二発だけ、と資料には記されているように、
現場では二発、確かに発砲が確認されている。
一発が、台所の上にあった花瓶に直撃。
花瓶は硬かった、加えて微妙に掠めるように着弾したため、
弾丸は軌跡を大きくずらされ、近くに転がったらしい。
もう一発は、血を伴ってはソファーにめり込んでいた。
しぃが廊下からリビングに入って、ギコがベランダへ逃げようとするのを阻止して撃った――
この流れとなんら食い違いのなさそうな、弾丸だ。
『解剖記録』 も、また重要なデータである。
司法解剖による死亡推定時刻は、18時から19時。
後頭部を銃で撃たれたことで即死したようだが、
ほかにも額に殴打された痕が残っている、とある。
『拳銃』 だけなら「偶然触っただけ」などで言い逃れができたかもしれないが、
それを不可能にさせるのが、「犯行における時間的猶予」だった。
ギコがしぃを呼び出した18時36分から、『目撃者の写真』
で証明されている46分までの間。
その間に、しぃはギコ宅に足を運んでいる、というのだ。
弁護する立場でありながら、どうもしぃが無実であるとは思えなかった。
.
- 79
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:47:56.54 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)「(……こんなものだろう)」
( ><)「どうしたんです? 降参ですか?」
『上画面』 、『解剖記録』 、『留守電のメッセージ』
、
『目撃者の写真』 、『割れた花瓶』 、そして『拳銃』
。
いきなり、どんと証拠が舞い込んできたなあ、とクールは思った。
それも、弁護側にとって不利でしかないようなものばかりだ。
しかし
川 ゚ -゚)「証言を聞いていて、気になったことがある」
( ><)「なんでも訊いてほしいんです!」
素直クールは、弁護士なのだ。
たとえどんな苦境に立たされていても、
彼女は弁護士である以上、歩みを止めるわけにはいかないのだ。
.
- 80
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:49:13.08 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)「 『留守電のメッセージ』 だが……つまり、これは
『留守電』 なのだ」
( ><)「それがどうしたんですか」
川 ゚ -゚)「留守電につながった、ということは、被告人はすぐに電話をとれなかった、ということ」
川 ゚ -゚)「しかし、そこから十分以内に被告人は被害者宅を訪れ、殺害を済ませた、となる」
川 ゚ -゚)「…… “時間がかみ合わない”
のだよ」
クールは落ち着いた声で、そう言った。
すると、前で落ち込んでいたしぃが、顔をあげては振り向き、横目でクールのほうを見た。
そのときの顔は、開廷前のそれに戻っていた。
.
- 81
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:50:19.24 ID:oUxuTfUO0
-
(*゚ー゚)「…」
川 ゚ -゚)「…?」
(*゚ー゚)「いまのツッコミ、かっこよかったです」
川 ゚ -゚)「……」
川* - )「…ま、まあ……こんなものさ」
照れて、クールは顔をうつむけた。
その間、法廷内の人がまた、弁護席を注視していた。
.
- 83
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:51:12.69 ID:oUxuTfUO0
-
( ><)「ええと……」
( ´∀`)「つまり、どういうことですかな?」
川 ゚ -゚)「まず、大前提として、犯行は
『留守電のメッセージ』 、つまり36分以降に行われたのだ。
しかし、一方で 『目撃者の写真』
にあるように、それは46分で終わっている」
川 ゚ -゚)「当時、被告人が家にいたとしたら……留守電を確認して、被害者宅に向かって……」
川;゚ -゚)「それだと、被害者宅に向かうまでに
. もっと時間を食うことが予想されるのでは、ない……ので、は…?」
(;*゚ー゚)「(最後まで自信もって!)」
やはり、“初” の弁護士なのだ――
そう思ってしぃが不安がったが、しかしクールの示した疑問はもっともだった。
しぃとて、ギコから呼び出されるということを予測していたわけではない。
むしろ予想外のことだったに違いないのだ、彼女を呼び出したのが
“留守電” である以上は。
しかも、もし犯人がしぃだったとすると、彼女はそれを知ってから十分以内に現場を訪れて
銃を二回撃つ犯行をこなし、そのまま逃げ去っている。
予想外だった呼び出しの対応にしては、いささか「速すぎる」犯行じゃないか――
そう思ったがうえでの、弁護側の指摘だった。
.
- 86
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:52:40.23 ID:oUxuTfUO0
-
しかし。
ワカンナインデスは得意げな顔をして「やれやれなんです」と言った。
( ><)「あなた、依頼人と打ち合わせしたんですか?」
川 ゚ -゚)「…え?」
( ><)「この時間帯、被告人がいた場所。
それが、いまの指摘にカンペキな答えを示すんです」
( ´∀`)「それは話が早い。どこにいた、というのですかな?」
( ><)「近所のお菓子屋さんなんです。
18時36分、その店の防犯カメラに被告人が映っていたことが確認されてます」
( ´∀`)「? しかし、それがなんの――」
( ><)「そして、捜査陣、それも女性二人に協力してもらったんですが……」
( ><)「被害者宅からこのお菓子屋さんまで……徒歩五分。
信号もないし、走ればもっと短い時間で済むんですよ」
.
- 87
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:54:06.14 ID:oUxuTfUO0
-
( ´∀`)「…! なるほど」
(=゚ω゚)ノ「だから、被告人が店でその留守電を確認してから被害者宅に向かい、
. 犯行に及んで逃走――は、時間的に充分可能だったんですよぅ」
( ´∀`)「 『防犯カメラの映像』 、これは犯行が時間的に可能だったことを示す証拠となりますね。
受理しましょう」
川;゚ -゚)「(また証拠を増やしてしまった……!)」
その映像を法廷内のモニターに映し、皆で確認する。
確かにそこには、店内を歩き回るしぃの姿、
そしてスマートフォンを手に取る姿までもが映っていた。
18時37分、留守電に気づいたしぃは、すぐさま店を出た。
ここで防犯カメラの映像は終わっている。
.
- 89
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 20:55:32.24 ID:oUxuTfUO0
-
( ><)「これで、弁護側の疑問には答えたんです。まだなにか、ありますか?」
川;゚ -゚)「ね、捏造じゃないんだろうな?」
( ><)
( ;><)「――ハア!? ぼ、僕が捏造したとでも言うんですか!?」
(=゚ω゚)ノ「異議ありィ! いまの発言は、検察側に対する冒涜ですよぅ!」
( ´∀`)「素直さん。認めたくない気持ちはわかりますが、
ちゃんと受け止めないと弁護士は務まりませんよ」
川;゚ -゚)「す、すまない」
(=゚ω゚)ノ「ちなみに、当時店内にいた店員からも証言をもらってるよぅ。
. 被告人はアイドル。ファンだった店員は、彼女が店を出る時間帯まで把握していたよぅ。
. その結果、『防犯カメラの映像』
と証言内容が合致していたよぅ」
( ´∀`)「素直さん、ナットクしましたか?」
川;゚ -゚)「………一応」
.
- 98
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:06:48.69 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「で、もう尋問はおしまいかよぅ?」
川;゚ -゚)「え、えっとだな……その。」
(=゚ω゚)ノ「無理して訊く必要もないんだよぅ。無いなら無い、って言ってほしいよぅ」
川 ゚ -゚)「ちなみに、無いと言ったら?」
( ´∀`)「即有罪」
川;゚ -゚)「ある! まだ、尋問は終わってない!」
.
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:08:38.88 ID:oUxuTfUO0
-
(;*゚ー゚)「べべ、弁護士さん…っ。なにか、ないんですか?」
川;゚ -゚)「……なにか、とは」
開廷後まだ数十分ほどしか経っていないのにもかかわらず、
もう絶望しか見えない窮地にこの二人は立たされていた。
犯行そのものは、可能だった。
アイドルという身分だけで動機はあったも同然。
犯行に使われた拳銃にはしぃの指紋が。
二つの証拠により、犯行時刻まで特定されている。
こんな状況で、新米であり “初”
のクールはなにをすればいいかわからなくなっていた。
その周章は目の前にいるしぃにも伝わったようで、
人事ではないしぃはクール以上に冷静を欠いていた。
.
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:10:41.68 ID:oUxuTfUO0
-
(;*゚ー゚)「私は……殺して、ない………。ほんとう、なんです」
川;゚ -゚)「しかし、こんなに証拠があっては……」
(;*゚ー゚)「……私には、わからないけど、」
川;゚ -゚)「…?」
(;*゚ー゚)「私は……やってない」
(*゚ー゚)「……だから。 “証拠のうちどれかはニセモノである”
……そう、思うんです」
.
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:13:10.66 ID:oUxuTfUO0
-
川;゚ -゚)「でも、検察側が捏造するなど……」
(*゚ー゚)「そうじゃなくって」
川 ゚ -゚)「…?」
(*゚ー゚)「 “見方が違う” …んだと、思います」
川 ゚ -゚)「見方?」
(*゚ー゚)「私は、殺して……ない」
(*゚ー゚)「でも、証拠品の数々がそれを示してる」
(*゚ー゚)「だとすると……」
(;*゚ー゚)「………アレ。なんて言えばいいんだろう……」
川 ゚ -゚)「…」
川 ゚ -゚)「………ダマされている……?」
.
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:15:17.51 ID:oUxuTfUO0
-
(*゚ー゚)「! そう、それです!」
(*゚ー゚)「 “これは被告人が殺した何よりの証拠である”
……ってのは、
その証拠品にとって数ある見方のうちの一つに過ぎない……だから」
(*゚ー゚)「なんとか “違う。これは実はこういう意味だったのだ”
とか言って、
テキトーにそれらしいデマカセでも言えば、たぶん……なんとか、なります」
川 ゚ -゚)「……」
しぃが、まくし立てるように、且つ小声で言ってくる。
それを聞き終えて、クールは腕を組み、「フム」と今しがたの言葉をまとめてみた。
すると、畢竟なにをすればいいのか、がわかった。
川;゚ -゚)「……わ、私に、ハッタリをかけろというのか!?」
.
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:17:24.17 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「……あの。さすがに、法廷を無視してひそひそ話されると、こっちもハラが立つよぅ」
( ´∀`)「一応、あなたは “初”
ということで今回は大目に見てますが……」
川 ゚ -゚)「……フッ。ちょっと、ジジツ関係を確認していただけだ」
( ´∀`)「ほう! して、そのジジツ関係、とは?」
川 ゚ -゚)「証拠品の “見方” を、ちょっと……ね」
(=゚ω゚)ノ「……まさか、また『捏造だー』とか言わないよぅ?」
川 ゚ -゚)「まさか。というのも、まだ開廷したばかりだというのに
大量の証拠品があがったのでね。一つひとつを検討したい。
……弁護側は、そう考えている」
( ´∀`)「 “初” にして、実にサマになっている弁護。……ムム、これは化けるかもしれませんねえ」
(=゚ω゚)ノ「いいよぅ。その度胸に免じて、いまの遅延行為は見逃してあげるよぅ」
川 ゚ -゚)「ははは」
川 ゚ -゚)
.
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:18:57.01 ID:oUxuTfUO0
-
川;゚ -゚)「(……こうなったら、まずはハッタリで凌ぐしかない!)」
クールは破れかぶれになりながら、証拠品を見つめなおした。
いま手元にある証拠品やデータは、以下の十個だ。
『上画面』 。
弾痕の場所が記されている。
『解剖記録』 。
18時から19時までの間に、後頭部から発砲され即死。
額に生前できてまもない打撲の痕が確認されている。
『拳銃』 。
二発撃った形跡が。
柄にはしぃの指紋が残っている。
.
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:20:16.76 ID:oUxuTfUO0
-
『割れた花瓶』 。
キッチンに置かれていた、一度目の発砲により割れた花瓶。
花が生けられていた痕跡はないが、一日以上は『上画面』の位置にあった。
『留守電のメッセージ』 。
18時36分のギコのメッセージが残されている。
内容はしぃを呼び出すもの。
『目撃者の写真』 。
週刊エビフライデーの記者が18時46分に撮った写真。
しぃがギコ宅から逃げる後ろ姿を激写。
『防犯カメラの映像』 。
18時37分にしぃが菓子屋を出ていく様が映されている。
そのとき勤めていた店員の証言とも合致。
『紛失した携帯電話』 。
猫乃ギコの携帯電話は現場から発見されなかった。
逃走のさいにしぃが捨てたものと考えられている。
『弁護士バッジ』 。
クールの歯形が少し残っている。
『しぃのブロマイド』 。
水着姿のしぃが半目で写っている。
.
- 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:22:55.68 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「……」
川 ゚ -゚)「(……カンペキすぎる)」
カンペキ、といっても、プラスの意味ではなかった。
「カンペキにしぃの犯行を立証している」という意味である。
(=゚ω゚)ノ「どうしたよぅ?」
川 ゚ -゚)「あ…そ、そうだな」
――しかし、ここで苦境を感じているのを顔にすれば、「即有罪」となるだろう。
それだけは、弁護士として避けなければならない。
クールは、勝手に動く口と手に命運を預けるしかなかった。
.
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:26:20.12 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)「(とりあえず……だ)」
川 ゚ -゚)「(いきなり完全無罪を立証するのは、ムリ。うん)」
川 ゚ -゚)「(一方で、ハンパなことをいちいち言ってたら、今度こそ遅延行為とみなされる)」
川;゚ -゚)「(……チエンが目的だってのにこれがケネンされちゃあ、本末転倒だな)」
川 ゚ -゚)「(それはいいとして……)」
(=゚ω゚)ノ「はやくするよぅ」
川;゚ -゚)「い、いま言う! 言うから!」
(=゚ω゚)ノ「……」
川 ゚ -゚)「(……そうだ!)」
川 ゚ -゚)「( “被告人にこの犯行はムリがあった”……とりあえず、コレでいこう
)」
川 ゚ -゚)「(……考えながら)」
.
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:28:28.52 ID:oUxuTfUO0
-
川;゚ -゚)「犯行において重要となるのは、やはりその
“弾丸の軌跡” だ」
(=゚ω゚)ノ「被害者がベランダに向かって逃げようとしたのを、弾丸は追いかけているよぅ」
川;゚ -゚)「しかし、よく考えてほしい」
(=゚ω゚)ノ「なにがだよぅ?」
川;゚ -゚)「これは、廊下からリビングに入ると同時に撃たれた、と見ていいのだな?」
(=゚ω゚)ノ「そうしないと、花瓶が割れたことに説明がつかないよぅ」
川 ゚ -゚)「…?」
言われて、クールはもう一度 『上画面』
を見た。
確かに、この「玄関前の廊下へ」とある矢印からでは、
この花瓶は冷蔵庫が障害物となって弾丸の軌跡にあわせることができない。
そのため、検察側は「リビングに入ろうとしたとき発砲した」と主張したのだろう。
リビングに差し掛かるところからなら、花瓶はぎりぎりではあるが撃つことができる。
それをクールもようやく理解することができた
.
- 124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:30:23.57 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「犯行場所がいささか特殊な気もするけど、
. 被告人はとにかく殺意に急かされていた、と考えればありえないことでもないよぅ」
(=゚ω゚)ノ「ほんとうはリビングに入ってから殺そうと思っていたけど、
. そこに至るまでの会話で殺意に満ち、リビングに入るところで射殺……
. なにもモンダイはないよぅ?」
川 ゚ -゚)「ああ」
(=゚ω゚)ノ「じゃあ、もうおしまい、でいいかよぅ?」
川 ゚ -゚)「え? あ……」
川;゚ -゚)「――待て! 違う!」
(=゚ω゚)ノ「? しかし、この弾痕はモンダイない、と弁護側は認めたよぅ?」
川;゚ -゚)「あ、ああ……(くそ! クチが滑ってしまった!)」
川;゚ -゚)「……た、…確かにモンダイないさ」
川;゚ -゚)「 “その弾痕は” ……な」
.
- 126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:33:15.98 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「? じゃあ、ソファーのほうの弾痕にモンダイがある、と言うのかよぅ?」
川;゚ -゚)「(言わないよ!)」
川 ゚ -゚)「そうだ! よく考えてみろ、伊予いよう検事!」
クールは真っ白な脳を一生懸命回転させつつも、机をバンと両手で叩いた。
ここに、クールの意識は介されていなかった。
川 ゚ -゚)「この、第二の弾痕!」
川 ゚ -゚)「それが、ソファーの位置に残るのはおかしい!」
――大きな声を発しつつ、クールは指をいように突きつけた。
しかし、当のいようはきょとんとしただけだった。
.
- 127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:35:15.72 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「…え?」
川 ゚ -゚)「この弾痕は、被害者――猫乃ギコの後頭部を貫いた上でできたのだな?」
(=゚ω゚)ノ「そ、そりゃそうだけど……」
(;=゚ω゚)ノ「―――あッ!!」
( ;><)「あ、あれ!?」
川;゚ -゚)「……」
川 ゚ -゚)「……え?」
(*゚ー゚)「……まさか、いまの、全部ハッタリですか?」
川 ゚ -゚)「むろん」
(;*゚ー゚)「……」
.
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:36:42.14 ID:oUxuTfUO0
-
とたんに顔色を変えたいようとワカンナインデスを見て、今度はクールがきょとんとした。
それを察知したのか、しぃは呆れたような顔を浮かべる。
いっそう、クールはわけがわからなくなった。
( ´∀`)「ど、どういうことですかな?」
(;=゚ω゚)ノ「……ソファーの弾痕の位置は、足元から四、五十センチもないところに発見されたよぅ」
(;=゚ω゚)ノ「一方の被害者の身長は、百七十センチはあるよぅ。弾痕は、その……
“後頭部” !」
川 ゚ -゚)「?」
川 ゚ -゚)
川;゚ -゚)「―――あッ! 確かに!」
(=゚ω゚)ノ「え?」
( ><)「え?」
.
- 132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:40:09.27 ID:oUxuTfUO0
-
川;゚ -゚)
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「――、確かに、被告人は背が低い」
川 ゚ -゚)「だからこそ―――」
川 ゚ -゚)「この弾丸の軌跡を作り出すのは、“不可能”
なのだよ!!」
.
- 134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:41:48.41 ID:oUxuTfUO0
-
( ;´∀`)「! ほんとうです! これはどういうことですかっ!」
川 ゚ -゚)「困るのだよ、常に犯行当時の動きを頭に入れてもらわないと」
(;=゚ω゚)ノ「き、気づかなかったよぅ……」
川 ゚ -゚)「フン」
(*゚ー゚)「……罪悪感、ありますか?」
川 ゚ -゚)「少しは」
そう言って、クールはもう一度、『上画面』
を見た。
いや、それが『上画面』だからこそこのことに気づかなかったのだ、とクールはたった今わかった。
ギコがいようほどの――百六十ほどの背丈だったとしても、この弾痕はおかしかった。
ソファーの着弾点とギコの銃創をつなぐことでできる直線、これの直線上にしぃの手がなければならないのだ。
まして、しぃの身長は百五十と少しである。
とても、この弾丸の軌跡を自然につくりだせるとは思えなかった。
.
- 136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:43:22.14 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)「……つまり」
川 ゚ -゚)「犯人は、被告人ではありえな――」
(=゚ω゚)ノ「――いことは、なかったよぅ」
川;゚ -゚)「…え?」
クールが、露骨に動揺する。
(=゚ω゚)ノ「まず、問題となるのは “被害者の銃創と凶器との距離”
だよぅ」
(=゚ω゚)ノ「離れていれば離れているほど、拳銃の打点は高くないとだめだよぅ」
川;゚ -゚)「そ、そうだ。だから、背の低い被告人には――」
(=゚ω゚)ノ「でも、拳銃を高くかかげて撃てば、問題ないんだよぅ」
川;゚ -゚)「い、異議あり! それでも、ソファーの弾痕と銃創の高低差からすると、
. 被告人の場合、手を伸ばすどころか背伸びをしても届かないと思われる!」
(*゚−゚)「……身長、気にしてるのに」
.
- 143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 21:56:02.77 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「それは、被害者と加害者との間にキョリがあったら、だよぅ?」
川;゚ -゚)「どういう意味だ?」
(=゚ω゚)ノ「実を言うと、“被害者と加害者のキョリが近かった”
ことを証明するデータがあるんだよぅ」
川;゚ -゚)「……なに?」
クールは嫌な予感がした。
とても、いようのこの口ぶりは、自分が先ほどしてみせた
「ハッタリ」とは違い、ちゃんと根拠を備えた者の見せるものであるように見えたのだ。
つまり、確かにあるのだ、その「データ」とやらが。
裁判長もそう思って、「ほう」と関心を示すような声を発した。
( ´∀`)「それは話が早い。提出してもらいましょう」
(=゚ω゚)ノ「 『解剖記録』 の、追加だよぅ」
川;゚ -゚)「 『解剖記録』 ……だと?」
.
- 146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:00:30.25 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「そうだよぅ。今朝になっていきなり、VIP県警から届いたんだよぅ」
(=゚ω゚)ノ「最初は『どうしてこんなデータがいるのだ』と思ってたけど……
. ひょっとすると、彼はこれを予測して送ってくれたのかもしれないよぅ」
川;゚ -゚)「どんなデータだ!」
中途に焦らされ、クールはその「データ」に食いついた。
いようは相変わらずの様子で、その「データ」を提示した。
(=゚ω゚)ノ「簡単だよぅ。被害者の頭部と服の襟元から、硝煙反応が確認されたんだよぅ」
川;゚ -゚)「硝煙反応……」
( ´∀`)「受理します」
.
- 149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:04:09.93 ID:oUxuTfUO0
-
『解剖記録』 に新たなデータが、追加された。
それを見て、しぃは不思議そうな顔をした。
(*゚ー゚)「ショーエン反応?」
川 ゚ -゚)「……発砲したときに、近くにその痕跡が残るんだ。
これが見つかった、ということは、その近くで発砲がされた、という証明につながる」
(=゚ω゚)ノ「そうだよぅ。それから、次のようなことがわかったんだよぅ」
(=゚ω゚)ノ「 “加害者は被害者のすぐ近くから発砲した”
、と」
.
- 152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:07:04.25 ID:oUxuTfUO0
-
( ´∀`)「しかし……これがわかったところで、いったいなにが……」
(=゚ω゚)ノ「裁判長、弁護側の主張をまとめると、こうだよぅ」
(=゚ω゚)ノ「 “銃創とソファーの弾痕から、
. 被告人の身長ではこの弾丸の軌道を生むことはできなかった”
」
( ´∀`)「……!」
(=゚ω゚)ノ「でも、このデータがあるから、“別に不可能ではなかった”
ということが新たにわかったんだよぅ」
(=゚ω゚)ノ「手を上に伸ばせば、被告人ほどの背丈でも充分犯行が可能だったと思われるよぅ」
( ´∀`)「確かに。それもそうですな」
裁判長の心証が、検察側に傾く。
クールの焦燥はいっそう強まった。
.
- 155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:09:59.12 ID:oUxuTfUO0
-
川;゚ -゚)「異議あり! 可能不可能以前に、おかしいではないか、この状況だと!」
(=゚ω゚)ノ「なにがだよぅ?」
川;゚ -゚)「どうして、いちいち被告人が手をあげて発砲しなければならなかったのだ!」
(=゚ω゚)ノ「そのことだけど、よく考えてみるよぅ」
川;゚ -゚)「…?」
いようが神妙な口ぶりで言う。
(=゚ω゚)ノ「もしふつうの――二人ともが立っていた状況で発砲をしてみるとよぅ?」
(=゚ω゚)ノ「窓が割れて、周囲の人に殺害がすぐにばれてしまう危険性が生まれるよぅ」
川 ゚ -゚)「…」
川;゚ -゚)「……!」
.
- 156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:11:53.60 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「窓がいきなり割れた……それだけで、充分異常な出来事だよぅ。
. 野次馬が一人でも来てしまえば、逃げることすらできずに終わってしまうよぅ」
(=゚ω゚)ノ「だから被告人は、わざと高いところから撃つことで、
. 着弾点を室内にとどめておく必要があったんだよぅ」
川;゚ -゚)「………ッ」
( ´∀`)「弁護人、いかがですかな。
確かに、腕を掲げて発砲――とは珍しいことのようですが、
現状を考えるとむしろこちらのほうが合理的、とも捉えられますよ」
川;゚ -゚)「……」
――現状では、それは可能だった。
また一方で、そうしなければならない理由も提示された。
――これは、「モンダイなし」でいいのだろうか。
クールは一瞬、その点で悩んだ。
.
- 157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:14:04.07 ID:oUxuTfUO0
-
しかし。
川;゚ -゚)「……モンダイあり、だ」
なにがどうであれ、彼女はとにかく認めるわけにはいかないのだ。
.
- 160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:15:45.19 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「なにがだよぅ」
川;゚ -゚)「(……冷静になって考えてみれば、だ)」
川;゚ -゚)「(突き詰めると、疑問は “どうしてそんなことを”
になるんだ)」
川;゚ -゚)「そもそも、そこまで後頭部に執着する理由がないのだよ」
(=゚ω゚)ノ「……?」
川;゚ -゚)「一度、足でも撃って動きを止める」
川;゚ -゚)「そうしてから撃つほうが “合理的”
ではないのかな?」
.
- 162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:17:23.42 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「……被害者は、ベランダから逃げ出そうとしていた。
. だから、速く動かされる足を狙うのは難しいと咄嗟に判断したんだと思うよぅ」
(=゚ω゚)ノ「それに、検察側は “合理性”
にはいっさい触れてないよぅ。
. 裁判長が勝手に言い出したことだよぅ」
( ;´∀`)「ほ!」
(=゚ω゚)ノ「非合理であろうが不条理であろうが
. “起こりえた” し “起こさざるを得なかった”
し、そして “実際に起きた” んだよぅ。
. また、現状ではそうするしか方法がなかった、となっているよぅ」
(=゚ω゚)ノ「これが可能で理由付けもできた以上、
. それを否定するのに “合理性”
を用いるのはいささか勉強不足だよぅ、弁護人」
川;゚ -゚)「……くッ…」
――そのとき、クールは、伊予いよう検事の本質をかいま見たような気がした。
たとえひょろひょろとした男性であっても、検事として働いて、ある程度のキャリアは積んでいるのだ。
新米ごときの自分が、しかも無根拠のハッタリで――と、あらためて、自らの劣勢をクールは感じた。
.
- 165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:19:07.70 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「……以上だよぅ」
(=゚ω゚)ノ「もう、“検討”
はおしまいかよぅ?」
川 ゚ -゚)「……検討?」
(;=゚ω゚)ノ「自分で言ったじゃないかよぅ!」
川 ゚ -゚)「……んー…、……あ、そうだな」
(=゚ω゚)ノ「頼むよぅ…ったく」
川 ゚ -゚)「……」
川;゚ -゚)「(ほかに、“情報が足りていない証拠”
……か)」
いようが寛大である今のうちに、とクールはもう一度証拠品のリストを見やった。
先ほどと何ら変わらぬ、やはり依然しぃの有罪を立証するかのようなものばかりだ。
――しかし、「まだ充分に審議が交わされていない証拠」があれば、
クールは、いようの言葉をヒントにそう考えた。
.
- 166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:20:46.28 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)「(審議……)」
川 ゚ -゚)「(なにかないだろうか……)」
川 ゚ -゚)「…あ!」
(=゚ω゚)ノ「なんだよぅ? 降参かよぅ?」
川 ゚ -゚)「まだ、充分な審議を交わされていない証拠品があるではないか!」
(=゚ω゚)ノ「なんだよぅ、聞かせてほしいよぅ。こっちとしても、万全を期しておきたいよぅ」
いようの言葉を聞いて、クールは、びしっと指を突きつけた。
わざわざそんな所作を挟む必要は皆無に近いのだが、
この場に、それを注意する人は誰一人としていなかった。
川 ゚ -゚)「簡単だ」
川 ゚ -゚)「 『解剖記録』 だよ」
.
- 168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:22:44.38 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「? さっきの硝煙反応について、かよぅ? さっき説明したよぅ。
. 被告人が弾丸を室内にとどまらせるために――」
川 ゚ -゚)「違う。 “打撲” だ」
(=゚ω゚)ノ「打撲……」
( ´∀`)「そういえば、私も先ほどから気になっておりましたぞ。
なんですかな、この “打撲”
とは」
(=゚ω゚)ノ「刑事」
( ><)「やっとしゃべらせてもらえるんです……」
悲しげな顔を浮かべているワカンナインデスに、いようは説明を促した。
これは検事よりも実際に捜査した刑事のほうが証言に信憑性を持てるためだ。
( ><)「その打撲ですが、事件と関係あるかは不明なんです。
ただ、大きなたんこぶと痕が残るほど患部を強く打っており、
またそれはできてまもない打撲だろう、と検死官も言ってたんです」
( ><)「だから、ひょっとするとどこかで転んで――って可能性も、否めないです」
川 ゚ -゚)「(これは……来たか?)」
.
- 170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:24:46.52 ID:oUxuTfUO0
-
川 ゚ -゚)「異議あり! そんな『転んだかもしれない』などと憶測で語られては、 困 る ッ
! ! 」
( ;><)「こ、困るだけで異議を申し立てないでください!」
川;゚ -゚)「う……すまない」
(=゚ω゚)ノ「しかし、その考えは正しいよぅ」
( ´∀`)「ということは、検察側にはそれを証明するすべがある、と?」
( ´∀`)「 “この打撲は事件と関係ない”
……そう言える、証拠でもある、とか」
(=゚ω゚)ノ「そのことなんだけどよぅ」
( ´∀`)「?」
(=゚ω゚)ノ「実は、事件当日、被害者に会ったのは被告人だけではないんだよぅ」
.
- 176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:34:46.57 ID:oUxuTfUO0
-
( ´∀`)「な、なんと!」
川;゚ -゚)「なに!?」
(;*゚ー゚)「えっ…?」
いようの、突然の言葉を聞いて、法廷内はざわめいた。
パン、パン、と裁判長が手を叩く。
しかし、騒ぎたくなる気持ちは裁判長も同じだった。
( ´∀`)「して、その人を、どうするつもりで」
(=゚ω゚)ノ「その証人に、額のことを話してもらうよぅ」
(=゚ω゚)ノ「もしそれが事件と無関係なら、最初からこの打撲はあった、ってことになるよぅ」
(=゚ω゚)ノ「それでもし、この打撲が事件と無関係――とわかれば、弁護側は尋問を終える。
. ……それで、弁護側は異議なし、かよぅ?」
川;゚ -゚)「……くッ……。(いい具合に、選択を強いてこられた……!)」
.
- 177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:35:29.99 ID:oUxuTfUO0
-
いようはあたかも、クールにチャンスをあげているように思える。
しかし、それは実際は逆であった。
これは、ここで弁護側に無理やり追究を諦めさせる計画を検察側が持ってきた、ということなのだ。
打撲が事件と関係があったところで、被告人が無実になる、というわけでもなさそうである以上
「打撲の追究を許す代わりに、その他の尋問は終わらせる」という条件を提示されたことになる。
クールは、この条件を呑むわけにはいかない。
そうすると、まんまといようの策略にはまったことになるからだ。
だが、それでも
川;゚ -゚)「………」
川;゚ -゚)「……い、……異議なし、…だ」
.
- 179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:36:52.87 ID:oUxuTfUO0
-
(=゚ω゚)ノ「そうかよぅ。じゃあ、証人召喚の準備をしたいよぅ」
( ´∀`)「わかりました。じゃあ、情報が多くなってきたことだし、
本法廷はここで、十分の休廷を挟みたいと思います。
弁護側、並びに検察側は今でた情報をまとめ、後半の審理に備えるように」
川;゚ -゚)
それでも、クールはこの条件を、呑むしかなかった。
打撲以外に、彼女が追究できそうなことはなかったから、だ。
もとより、絶望的なしぃの弁護。
だめでもともと、の精神で、クールはその条件を呑むことにしたのだった。
.
- 180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/25(月) 22:37:52.77 ID:oUxuTfUO0
-
◆第一話 「逆転のバレインタイン」
つづく
.
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