- 2
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:10:15.79 ID:9KZkc3GT0
-
鏡に映った自分の姿を見て、俺はもう一度息を飲んだ。
从゚д゚;リル 「……」
大きく見開かれた二重瞼、薄桃色の唇、白い首筋にかかる長い髪。
そして全体的に丸みを帯びたシルエット……。
何度見直してもやはり、そこでぽかんと口を開けているのは、一人の少女に他ならない。
从'□`;リル 「な、なんでまた、なんだよ」
澄んだ呟きが洗面台に残響した。
両手でぺたぺたと頬をさする。 そのままつねってもみる。
……痛い。 当然これは夢なんかじゃない。
从'。`;リル 「……」
从'、`;リル 「と、とりあえず落ち着こう、うん……」
一回り小さくなった身体を抱きかかえるようにして、俺はもう一度溜め息をついた。
焦っても仕方がない。 まずはこの状況を整理することにしよう。
ええと、ギコから電話があって、フレマに来いって言われて、突然胸が苦しくなって……。
- 4
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:12:09.45 ID:9KZkc3GT0
-
从゚д゚;リル 「!」
その時、入口から音がした。 思わず身体が強張る。
まずい、この姿で誰かと出くわすのは、なんだか非常にまずい気がする。
世間一般的な常識に則って考えるに、
男子トイレという空間に存在していい女性は、
この世で唯一、清掃のおばちゃんオンリーなのだ。
从'□`;リル 「あああ、もう!」
即座にジョブチェンジが出来ない以上、その場を去る以外の選択肢はなかった。
俺は身体を丸め、顔を隠すようにして、入ってきた男性と入れ替わりに外へ飛び出した。
奇異の視線を、その背へいっぱいに受けながら。
- 6
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:14:37.59 ID:9KZkc3GT0
-
●第七話 『 リヴァーシブル無力 ── V.S
ヒッキーA 』
从゚д゚;リル 「……わかった」
駅構内、土産物屋の前でしばらく右往左往したのち、俺はその結論に到達した。
つまり、この状態の原因へと思い至ったのである。
(*゚ー゚) 『”チャネル” に目覚めるきっかけは人によって様々です。
そのきっかけとなった行為が、そのまま
”スイッチ” になっちゃうことも──』
从'、`リル 「……」
从'。`;リル 「おそらく、こいつだ」
ポケットから取り出した直方体を握り締める。
手の中で、【女子供が好きそうな、それ】──、
ビニールに覆われた赤いチェック模様が、くしゃりと音を立てた。
- 8
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:16:31.59 ID:9KZkc3GT0
-
从'。`;リル (知らず知らず自己暗示をかけてたっていうのか? ……オブラートに?)
他に原因が思いつかないとはいえ、どうにも馬鹿馬鹿しい発想であることは否定できない。
思わず溜め息が漏れた。
だがしかし、どんなにくだらない要因であろうとも、
俺がこんな姿になってしまったのは変えようのない事実だ。
……つまりこの女の姿こそが、俺に潜んでいた【別人格(アナザー)】ってやつなのだろうか。
从'。`リル 「……でも、なんかそれ……おかしいような」
うまく言葉に出来ないが、もやもやが胸に残る。
しぃちゃんやギコが別人格に変わる事と、自分の”症例”には、明らかな違和を感じるのだ。
从゚、゚;リル 「!」
そうやって頭を抱えた瞬間、胸ポケットの携帯が振動した。
すぐさま取り出してディスプレイを覗きこむと、そこに映し出された名前はやはり……。
- 9
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:18:14.10 ID:9KZkc3GT0
-
从'。` 】ル 「も、もしもs」
『おっそいよ! ドクオさん、今どこ!?』
Σ从'。`;】ル 「ご、ごめんまだ駅で……」
『あれ? ドクオさ……? あれぇ?』
声の違いに気付いたのだろう、ギコの口調は疑問符に塗りつぶされる。
向こうで首を傾げている様子が目に浮かぶようだ。
从'。`;】ル 「合ってる合ってる。 ちょっとその、風邪気味で」
『あ? ああーならいいや。
ってよくねーよ! 早く来てくんないと、俺一人じゃどうしようもないんだって!』
そう言えばギコは今、”ロックオン”した相手を追っているのだった。
標的はチャネラーで、おまけにその、認めたくはないが殺人犯なのだ。
現在ギコが無事なのは何よりだが、
だからと言って、俺がそこへ出向いたところでどうなるものでもなかろうに。
- 10
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:20:31.38 ID:9KZkc3GT0
-
从'д`;】ル 「そのことだけど、その、警察に……」
『あいつはおそらく催眠(ヒュプノシス)能力者だ!
通行人が何人も連れて行かれちまった』
从'□`;】ル 「あーその、いやいや、だかr」
『すぐ来てくれ! フレマの隣の……
チッ、やっぱ屋上か!』
从'、`;】ル 「……あー、その……」
『とにかくソッコーで頼むぜ! んじゃ!』
ツーツー
案の定、一方的に捲し立てた挙句電話は切られた。
俺は携帯を握り締めた姿勢で立ち竦む。
嗚呼、なんなんだこの状況……軽いジョークで済めばどんなに幸せなことか。
从'。`;リル 「……つーか、通行人が何人もって……」
世間ではそれを、人質、と呼ぶ。
なんてこった。 既にこれはれっきとした刑事事件じゃないか。
一介の高校生や冴えないフリーター男……
もといフリーター女風情が、軽軽しく首を突っ込むべき問題ではないだろう。
- 11
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:22:45.68 ID:9KZkc3GT0
-
从'皿`;リル 「……」
その場で硬直しつつ考える。
今の俺がやるべきことは、果たして現場に直行することなのか?
そんな事より、警察に通報したほうがいいんじゃないのか?
从'。`;リル 「ううぅ……」
从゚□゚;リル 「ああぁああ、もうっ!」
しばらく思案したのち、俺は荷物を抱いてその場からダッシュした。
こうなりゃヤケだ。 お望み通りそちらに出向き、直に説得する他ない。
……当然、犯人ではなく……ギコのほうを、だが。
- 13
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:24:56.44 ID:9KZkc3GT0
-
〜 〜 〜
駅から飛び出すと、片側3車線の広い道路を挟み、
ちょうど真向かいの位置に、先ほど立ち寄ったコンビニが見える。
目的のビルはその右隣……あれか。
目視でそれを確認すると、俺は歩道橋を一気に駆け上がった。
从'。`;リル 「ぜはっ、はっ、はぁっ」
体力不足は兎も角として、このカラダは想像以上に走りにくく感じた。
荷物もそうだが、もう一つは服装のせいだ。
まず靴のサイズが違っている。
胸が揺れるのも妙な感覚だし、何より、ジーンズの腿周りが窮屈で仕方無い。
从゚A゚;リル 「はひ、ひい、ふひ……」
わき目も振らずダッシュし、高架の下りに差し掛かる頃には既にふらふらだった。
手すりに凭れるようにしつつ、それでもなお二段越しに階段を降りてゆく。
Σ从゚д゚;リル 「わっ」
最後の段差を降りる際、俺は勢いよく足を踏み外した。
- 15
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:26:25.19 ID:9KZkc3GT0
-
从'。`;リル 「いてて……」
とっさに手すりを掴んだものの、尻から滑り込むような形で着地する羽目になった。
同時に、何かが破れるような感覚。
地面に投げ出された俺に周りの視線が集中する。
( ・□・) 「大丈夫?」
从'。`;リル 「あ、ありがとうゴザイマス」
(*・□・) 「……」 ジー
从'、`リル 「?」
そんな中、通り掛かったスーツの男が手を差し出してくれた。
礼を言いながら立ち上がる。 しかし、どこかその表情がおかしく感じられた。
男の目が俺の顔ではなく、その下の一点ばかり見つめているのだ。
从'。`リル 「ん……?」
- 16
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:28:35.34 ID:9KZkc3GT0
-
Σ从゚д゚;リル 「うおっ」
視線を追ってようやくそのことに気が付いた。
転んだ際に引っ張ったのだろうか、
元からよれよれだったTシャツは、今や襟の部分が見るも無残に垂れ下がり、
白い胸元が大開放状態となっていたのである。
付け加えるならば、俺は当然ブラジャーなんて着けちゃいない。
自分のものとは思えないほどの膨らみが、曇り空のもと、呑気にその存在を主張していた。
从'。`;リル 「えーと、その……どうも……」
上着で胸を隠しつつ、俺はぺこりと頭を下げる。
急いで立ち去ろうとしたものの、後ろから不意に呼び止められた。
( ・□・) 「きみきみ、ちょっと待った!」
从'。`;リル 「……?」
- 17
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:30:47.46 ID:9KZkc3GT0
-
( ・□・) 「ほら、これ。 忘れ物だよ」
Σ从゚、゚リル 「あっ……」
男はそう言って、落とした荷物を手渡してくれた。
危ないところだった。 こいつを忘れて帰ろうものなら、ブーンに大目玉を食らってしまう。
( ・□・) 「あ、ついでにあともう一つ、伝えなきゃいけないことがあるんだけどね」
从'。`;リル 「……はい?」
(*・□・) 「……君、お尻も破けてるよ」
Σ从゚д゚;リル 「えっ」
驚いて尻をさすると、指先にちょっとした違和感が……。
ジーンズが裂けておられます。 本当にありがとうございました。
これも転んだ拍子にやっちまったのか。
- 18
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:32:52.99 ID:9KZkc3GT0
-
从'皿`;リル 「うええ……」
なんだこの羞恥プレイ。
男が立ち去ってからも、胸と尻を抑えてひょこひょこ歩く俺の挙動は非常に滑稽で、
周囲の視線を集めているような気がしてならない。
ただでさえ動きづらかったのに、余計行動しにくい格好になってしまった。
从'д`;リル (参ったな……このまま半露出狂のような格好で現場に向かわなきゃなのか)
Σ从゚o ゚リル 「……あ」
って、替えの服ならここにあるじゃないか!
俺は胸元の紙袋を覗き込み、綺麗に折りたたまれた”そいつ”を確認する。
从'д`;リル (あわわ、でも急がなきゃだし、どうしよ、ええと……)
从'、`;リル 「……」
从'。`;リル 「……ギコ、すまん! あとちょっとだけ待ってて……」
俺は目の前のビルではなく、隣のコンビニに飛び込むと、トイレへ向かってダッシュした。
- 19
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:35:03.69 ID:9KZkc3GT0
-
−−−−−
(,,;゚Д゚) 「ぶはっ、はぁ、はぁ、うへぁ……」
同じ頃、ギコは階段の途中で息を荒げていた。
駅のホームから逃げ出した男を追ってこのビルに飛び込んだ彼は、
上へ向かうエレベータを確認するや、馬鹿正直に一階から駆け上がってきたのだった。
(,,;゚Д゚) 「くっ、ちくしょー。 これしきのこと……」
ギコには誤算が二つあった。
ドクオがなかなかここへ辿り着かないこと。
もう一つは、彼の想像以上に建物の階数が多かったことである。
(,,;゚Д゚) (ひぃ、はひぃ、ふはっ!)
最上階の躍り場で汗を拭う。
屋上のドアは開放されており、ギコはその奥から複数の呼吸音を感じ取った。
追ってきた相手はこの先にいると考えて間違いないようだ。
- 20
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:37:23.53 ID:9KZkc3GT0
-
(,,;゚Д゚) 「っしゃあ!」
意を決し、ギコは屋上へ飛び出した。
そこでは曇り空のもと、数名の男女が夢遊病者のように辺りをふらついていた。
(|||-_-) 「!?」
そして、その中心。
薄茶けた上着の男がびくりと反応し、ギコのほうへと振り向いた。
(|||-_-) 「だ、誰だ、き、君は!?」
(,,゚Д゚) 「そりゃこっちのセリフだ! おとなしく人質を解放しやがれ!」
(|||-_-) 「な、何言ってるのか、わ、わか、わからないぞ!」
(,,゚Д゚) 「ああ? 駅の飛び降りはテメーの仕業だろ!」
(|||-_-) 「……!?」
男は青白い顔をことさら蒼くして震えている。
ギコが一歩を踏み出すと、それを拒絶するかのように男の怒号が遮った。
- 21
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:39:06.95 ID:9KZkc3GT0
-
(|||-_-) 「い、一体な、なんなんだ君たちは……!
なんでぼ、僕のじゃ、邪魔をするんだ……」
(|||-_-) 「ど、ど、どうしてだ!
な、なんで、みんな放っといてく、くれないんだ!」
(,,;゚Д゚) 「……ああん?」
(|||-_-) 「もうい、イヤだ!
なんなんだ、なんなんだよ、お、お前たちはぁっ!」
男の叫びを合図として、周りの男女の瞳に怪しい光が灯る。
それまで好き勝手な方を向いていた彼らが、一斉にギコのほうへと振り返った。
( "ゞ) 「うぼべえ゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙」
川 ゚ 々゚) 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! あ゙あ゙ゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
Σ(,,;゚Д゚) 「くっ、何を……」
ある者は口の端から泡を飛ばし、またある者は痙攣しながらギコへと近づいてくる。
共通しているのは、どの表情も虚ろで、なおかつ激しい憤りの色に染まっていることだ。
ゾンビの行進を思わせる光景に、ギコは一瞬身じろぎ、後ずさった。
- 22
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:41:29.38 ID:9KZkc3GT0
-
( "ゞ) 「うばああああぁあああ!!」
(,,゚Д゚) 「!」
男の一人が腕を振り上げる。
何の捻りもない原始的な動きであり、ギコは難なくそれをかわした。
だがしかし、ステップした先は事態の元凶──ヒッキーがいる方向。
(,,; Д ) 「──!?」
そちらへ近づいた途端、ギコの頭部は強い圧迫感に締め付けられた。
白い闇が視界を覆い、言い難き負の感情が脳髄へとめどなく流れ込んでくる。
ナンデダ。
ナゼジャマヲスルンダ。
イヤダ。
キライダ。
チカヨルナ。
- 24
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:44:18.80 ID:9KZkc3GT0
-
(,, Д ) ・・・。
ニクイ。
ニクイ。
ユ ル セ ナ イ ──。
(,,; Д ) 「うがぁあぁっ……!」
サイドステップの勢いのまま、足が縺れて地面に倒れ込む。
衝撃を受け、ギコは瞬時に正気を取り戻した。
Σ(,,>Д゚) 「くはっ……!」
そのまま転がって距離を取り、体勢を整える。
わずかに数歩近づいただけ。 それだけなのに、彼の精神は著しく疲弊していた。
(,,;゚Д゚) 「はぁ、はぁ、はぁ……」
(|||-_-) 「みんなぼ、僕の邪魔をするんだ……
き、嫌いだ…… みんな敵なんだ……」
ブツブツ
- 26
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:46:04.78 ID:9KZkc3GT0
-
(,,;゚Д゚) 「くっ……」
(,,;゚Д゚) (やっぱりあいつの【催眠能力(ヒュプノシス)】は強烈だ。
常に距離を取ってないと巻き込まれちまう)
”タカラ”に切り替えたところで、近づくことが出来なければ意味はない。
ギコは無力感に唇を噛みしめる。
(,,;゚Д゚) (くそっ、ドクオさんさえ来てくれれば……)
正確には、男の能力は、ギコの知る【催眠能力】とは質の異なるものだった。
精神力による暗示で強制的に思考を麻痺させ、対象をコントロールするのが【催眠】能力である。
対して、ヒッキーの能力は【エンパシー系テレパスの一種】であり、
【感情伝播・感染能力】とでも言うべきものだ。
(|||-_-) ・・・。
(,,;゚Д゚) (突き飛ばしても、蹴飛ばしてでもいい。
なんでもいいからとにかく、ドクオさんをあいつに触れさせることができれば、
催眠能力を封じられるのに!)
- 27
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:48:17.73 ID:9KZkc3GT0
-
言語化された思念波を飛ばすのが所謂【テレパシー】だが、
ヒッキーのそれは、言語化される以前の感情を思念波に変換して撒き散らし、
周囲の生物を感化し、果ては擬似的な催眠状態に冒してしまうのである。
実は書いている自分にもよくわからないが、そういう物なのだと納得するに越したことはない。
川 ゚ 々゚) 「あ゙あ゙あ゙、あ゙ばあ゙あ゙あ゙あ゙……」
【超能力の素質】を持つ者が居るように、世の中には【暗示にかかりやすい才能】というものも存在する。
駅や町中でヒッキーの【自殺衝動】に感染し、
ここまで彼を追ってきたのは、偏にアンテナの鋭敏な者達ばかりなのだった。
(|||-_-) 「畜生……畜生……」
(|||-_-) 「う、うわあぁああああ!!」
(,,゚Д゚) 「!!」
転落防止のため、屋上の周囲は黒塗りの高い鉄柵に覆われている。
男は突然叫びを上げると、柵の一端を掴み、器用によじ登りはじめた。
Σ(,,;゚Д゚) 「お、おい、よせっ!」
- 28
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:50:54.45 ID:9KZkc3GT0
-
その動きにつれ、周囲の男女──生ける屍と化した彼らもまた鉄柵を登りはじめる。
瞬く間に屋上は、柵を登る男と、それを追う者達による、言わば集団自殺の様相を呈していた。
( "ゞ) 「──」
川 ゚ 々゚) 「──」
(,,;゚Д゚) 「ばか、やめろ、やめろってば!」
ギコは男と一定の距離を取りながら、力まかせに彼らを柵から引っぺがした。
だがしかし、軽い衝撃程度では彼らの催眠状態は解けないらしい。
柵から剥がした矢先に別の者が登り、
引き摺り降ろした途端に別の者が柵を登るといういたちごっこが繰り広げられた。
(|||-_-) 「はぁ、はぁ……」
その間に男は鉄柵を登り終え、柵の上部に跨り天を仰いだ。
足をがくがく震わせながら視線を下方に移動する。
- 30
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:52:28.87 ID:9KZkc3GT0
-
遥か下に広がる無限の可能性。 コンクリートの歩道は無機質な凶器。
車のクラクションが小さく連なって聞こえる。
憧れの黄泉路はグレーのアスファルトに覆われていたのか。
大丈夫、死なんてものは一瞬の出来事だ。
鉄柵上でバランスを保つこの力を、ほんの少し横に向ける。 ただそれだけでいい。
(,,;゚Д川 ゚ 々゚)ノノ゙ (あいつひょっとして、自分の能力に気が付いていないのか……?)
Σ(,,Д(#(⊂(゚々 ゚ 川 メコッ
(,,;>Д#)⊃゙川 ゚ 「ンなこたどーでもいいぃ!!
⊃ くっそー! これじゃキリがねーぜ! ドクオさあぁぁあん!!」
ギコの悲嘆の絶叫が辺りに木霊する。
……その時だった。
『ギコっ!? いるのか!?』
- 32
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:55:06.06 ID:9KZkc3GT0
-
(|||-_-) 「……!?」
屋上に轟く声は、ギコにとって一筋の光明。
その場の全員が入口の方向へと振り返った。
Σ(,,*゚Д゚) 「ど、ドクオさ……」
(,,゚Д゚)
(,,;゚Д゚) 「……?????」
−−−−−
从'。`;リル 「はぁ、はぁ、はふぅ……」
エレベータを降り、屋上へ向かう階段を駆け上がる。
僅かの距離ながら俺の息も上がる。 なんかもう今日は一日走りっぱなしだ。
屋上のドアは開け放たれていた。
えっちらおっちら辿り着くも、外の光の眩しいこと。
ビル内との照度の差に一瞬目がくらんだ。
- 33
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:57:01.19 ID:9KZkc3GT0
-
从'□`;リル 「ギコっ!? いるのかっ!?」
外に出た瞬間、柔らかな微風が俺の足元をすり抜ける。
少々肌寒さを感じるほどだった。
Σ(,,*゚Д゚) 「ど、ドクオさ……」
从゚、゚;リル 「!」
屋上はまったくもって妙な雰囲気に包まれていた。
数名の男女が、屋上を囲む柵の鉄棒にしがみ着きながら、謎の奇声を発している。
その後方、禿げた男のズボンをずり下げていたギコが、こちらへと振り返った。
(,,゚Д゚)
从゚д゚;リル 「ああ、いた、良かった……」
ホッ
(,,;゚Д゚) 「……?????」
从'、`リル
- 35
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 20:59:24.30 ID:9KZkc3GT0
-
(,,;゚Д゚) 「め、め……」
(|||-_-) 「メイドさん!?」
从'。`;リル 「え、は、はい」
ブーンに頼まれ、クリーニング屋から回収してきた洗濯物……。
思いっきり場違いであろう衣装に身を包んだ俺は、
周りのリアクションにつられて思わず固まってしまった。
(,,;゚Д゚) 「ていうか、誰ぇええ!?」
从゚、゚;リル 「えっ? いや、誰って言われても」
(,,;゚Д゚) 「ねえ、男の人見なかった、ねえっ!」
ああ、そう言えばこの姿を知っているのは今のところブーンだけだった。
ギコが驚くのも無理はない。 俺はしどろもどろのまま説明を開始した。
从'。`;リル 「いやその、俺というかドクオはだね、体調とかがだね、ちょっとその……」
Σ(,,;゚Д゚) 「なっ!? ……あんにゃろ、逃げやがったなぁああ!」
- 36
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:01:34.35 ID:9KZkc3GT0
-
从'、`;リル 「ちぃと遅れたのと、この格好はそのせいで……」
从'д`;リル 「……って違ぁう、逃げてない、ぜんぜん逃げてないから……」
(,,;゚Д゚) 「んで君だれ!? ここで何してんの!?」
从'。`;リル 「い、いやだから、誰って言われても」
姿かたちは変わっても俺は俺。 他の誰でもない俺。
内藤ドクオは内藤ドクオ、世界に一つのオンリードクオだ。
从'。`リル 「見てのとおり、俺は、ど……」
(,,;゚Д゚) ジィイィィ
从'。`;リル 「え、えーとその、ど、どく、ドク」
从'、`;リル
d从'ヮ`;リル 「ドクミです!」 チーン
……な、はずなんだけど。
いかん、焦りと勢いでよくわからないことを口走ってしまった。
- 37
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:06:20.04 ID:9KZkc3GT0
-
(,,;゚Д゚) 「いや、だからドクミって……誰だよ……」
(;-_-) 「ど、どうしてメイドさんが……?」
从'、`リル 「ん?」
Σ从゚Д゚;リル 「うわっ……、あぶない!」
声の聞こえたほうを見ると、
俺に負けず劣らず冴えない風貌の男が一人、高い柵を跨いでこちらを凝視している。
彼も人質の一人だろうか?
柵を構成する鉄棒はそれほど太くなく、見た限り強度も心もとない。
一歩踏み出すだけで容易く落下が可能な状態だ。
兎も角、かなり危険な体勢であることは間違いない。
ありゃ、そう言えばええと、凶悪犯とやらはいったいドコに……?
(( ( "ゞ) 「め、い、どぉ、めぇいどおぉおおお」
(( 川 ゚ 々゚) 「もえええぇえ、もえぇええええ」
从゚、゚;リル 「!?」
- 38
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:07:31.60 ID:9KZkc3GT0
-
そうしているうちに、柵にしがみ付いていた人間たちが一人、また一人とこちらに近づいてきた。
俺はその表情を見て固まった。
ある者は涎を垂れ流し、またある者は首をかしげ、覚束ない足取りでふらふら歩いてくる。
俺の中で警鐘が鳴り響いた。 いかん、この人たち絶対何かキめてる。
(;-_-) 「あ……」
(,,;゚Д゚) 「な……ちょ、お前ら……」
(( ( "ゞ) 「めぇぇえぇえどぉおさぁああん」
(( 从゚Д゚i||リル 「ちょ、おま、やめ」
从'□`;リルそ 「わわっ!?」
寄ってきた男の一人に肩を掴まれた。
反射的に振りほどいたものの、勢い余ってバランスを崩し、俺はその場に尻餅をついてしまう。
(,,#゚Д゚) 「おいっ! なに指図してやがんだ変態ヤロー!」
(;-_-) 「ええ!? ぼ、僕は……」
- 39
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:09:17.15 ID:9KZkc3GT0
-
( -_-) 「別に何……」
( -_-) 「も……」
( -_-)
从>、<リル 「ってて……」
(,,;゚Д゚) 「おい、大丈ぶ……」
(,,゚Д゚) ・・・。
(,,・Д・)
从'。`;リル 「あ、ああ……」
从'、`;リル 「ん?」
ああマズい、またブーンのメイド服を汚してしまった……。
憂いも束の間、何故かその場が凍り付いていることに気付く。
肩を掴んできた男、柵上の男、それからギコも含め、全員がぴたりとその場に静止していた。
彼らは一言も発することなく、こちらの一点……俺のスカートを凝視している。
- 40
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:10:51.45 ID:9KZkc3GT0
-
(|||◎_◎)
(,, Д )∵;`; ブッ
从゚、゚;リル 「あ」
そう言えば、さっき、俺……。
ようやくその結論に辿り着くと、
俺は盛大に捲れあがったワンピースの裾をいそいそと両手で抑えた。
──履いて、なかった。
- 42
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:12:52.10 ID:9KZkc3GT0
-
从'д`|||リル 「……」
(;-_-) 「め、メイドさんの、メイドさんの……」
(((,, Д )) ::,`;:゙;`;,`;:゙;`; ブバババババババ
Σ(;-_-) 「!?」 グラリ
起き上がって頭を掻いた、その時のことだった。
(||i-_-) 「う、うわ……」
(,,*゚Дi゚) 「!!」 从゚、゚;リル
突風が吹きつけたせいだろうか。
柵の上に跨っていた男の身体がバランスを失い、右へと大きく傾いたのだ。
从゚д゚リル 「な……」
从゚□゚;リル 「あ、あぶないっ!!」
男の身体が柵から離れる。
考えるより先に、俺の足は行動を開始していた。
- 43
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:15:13.04 ID:9KZkc3GT0
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Σ(,,;゚Д゚) 「マズいっ、そいつに近づいたらっ……!」
(|||-_-) 「うわぁあっ!」
眼前で、まるでストップモーションの如く、男の体勢が逆さに変換されてゆく。
ベクトルは右、そして下。
落下する方向は、当然、床のある屋上側などではなく──。
(|||-_-) 「ぁああぁああああ!!」
从゚□゚i||リル 「あぁぁあぁあぁあああああ!!」
誰のものともわからぬ絶叫が虚空へ木霊した。
駆け出した勢いのまま、躊躇なく、俺は鉄柵に向かってダイブしていた。
頼む、頼む、頼む。
間に合え、間に合ってくれ。
(,,|||゚Д゚) 「───っ!!」
落下する男、男のもとへ滑空する俺。
大きく口を開いたままの男。 その顔は、もう目と鼻の先に──。
- 45
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:17:07.98 ID:9KZkc3GT0
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(||| _ ) 「───!!」
イヤダ
イヤダ
コワ イ
从 、 ;リル 「───!?」
刹那の出来事だった。
視界がぐにゃりと曲がり、目に入る世界は全て真っ白に染めあげられた。
脳に電撃が走ったような感覚を覚え、例え様のない感情が脳内を迸る。
敢えて表現するなら、それは、 ……恐怖?
コワイ
シ ヌ
コワイ!
イヤダ!
- 46
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:19:40.94 ID:9KZkc3GT0
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(||| _ )
シニタクナイ!
イヤダ
タスケテ
从 д |||リル 「───!」
ダレカ タスケテ!
从|| || ||ル そ 「うっがぁぁあぁあ!!?」 ガシャン
俺はそのまま、顔面から勢いよく鉄柵に激突した。
視界が一瞬で元に戻る。
俺は激痛に怯むことなく、隙間からいっぱいに腕を伸ばした。
頼む……頼むっ!!
- 47
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:21:07.56 ID:9KZkc3GT0
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(|||-_-) 「あ……!」
手が、触れた。 重なった。
思い切り手のひらを閉じる。 握り締め、握り返される。
伸ばした手が、相手の肌を掴むしっかりとした感覚。 掌に伝わる確かな体温。
Σ从゚皿゚i||リル 「うぎぃぃいいいいぃぃっ!?」
続けて、男の体重が一挙に右腕へ押し寄せた。
柵の鉄棒が頬へと肩へと食い込み、容赦無く筋肉を、骨を圧迫する。
離さない、離すもんか。
関節が悲鳴を上げる。 鎖骨がめりめり音を立てる。
それでも、俺は絶対に離さない。
- 48
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:22:23.81 ID:9KZkc3GT0
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(,,; Д ) 「──!!」
(|||-_-) 「──!!」
从 □ ;リル 「んがぁあぁあぁっ!!!」
俺は
俺は、
もう二度と──あんな思いをするのはごめんだから。
- 50
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:24:21.76 ID:9KZkc3GT0
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−−−−−
その後の経緯はこうだ。
ギコの手を借りて男の身体を引っ張り上げたところ、周りの人たちは次々と正気を取り戻した。
彼が事件を引き起こした『チャネラー』であることには驚かされたが、
結局のところ、彼もまた【能力】による被害者だったのだ。
男には能力を自覚させた上で解放した。
犠牲者は確実に存在していたが、彼はけして悪意をもって他者を陥れていたわけではない。
知らないうちに催眠術で人を巻き込んでいました──なんて、警察も信用するとは思えない。
俺のカラダはというと、案の定、寝て起きたら元に戻っていた。
結局ギコには正体を明かさなかった。 深い意図があるわけではない。
まあ、これから話す機会なんていくらでもあるだろうし、今のところはこれで問題ないだろう。
- 51
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:26:26.27 ID:9KZkc3GT0
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……とまあ、それらの出来事をブーンには包み隠さず告げたわけだが、
誉められるどころか、何故かこっぴどく怒られる羽目になったことを付記しておく。
なんでも、メイド服が汚れていたとか、裾がほつれていたとかなんとか……。
我が弟ながら本当にせせこましいやつだ。
曲がりなりにも人命を救ったのだから、誇るべき勲章だと受け止めるくらいの度量が欲しい。
そう主張したら、涙ながらに抗議を受けた。
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:28:50.37 ID:9KZkc3GT0
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−−−−−
それからさらに一週間ほどが過ぎた、とある日のことだった。
('A`) 「♪」
本日は晴天で、なおかつ休日なり。
ちゃぶ台に並べられた遅めの朝食兼昼食を前に、俺はすこぶる上機嫌だった。
ブーンの作りおきのおかずに惣菜のクリームコロッケを加え、ほんのちょっぴり贅沢コース。
('A`*) 「贅沢なのはね、コロッケだけじゃないの」
(゚A゚) 「ぅおらぁあああああ」 カシュ
勢いよく注がれる琥珀色?の液体。
グラスから飛び出した泡をずるずる啜り、確かな幸せを舌の上で味わう。
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:31:49.94 ID:9KZkc3GT0
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('∀`#) 「ンまぁあああい!」
たまらん。 鮮烈かつ麻薬的な味わいだ。
平日の真っ昼間から飲むビールの喉越しといったらもう。
犯罪だ。 犯罪級の美味さだ。
この後もだらだら過ごし、夕方になったらシャワーを浴びてハインさんの歌を聴きに行こう。
コロッケにソースをかけながら、俺はそんな素敵計画に心を躍らせていた。
『正午になりました──お昼のニュースをお伝えいたします』
('A`) 「〜♪」
鼻歌混じりに休日をエンジョイしていた俺。
だがしかし、小市民的な幸福はいとも容易く瓦解することとなる。
- 54
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:33:18.50 ID:9KZkc3GT0
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『今日未明、ラウンジ山の山中にて男性の死体が発見されました』
('A`) 「へいへい、物騒なことで……」
('A`)
(゚A゚|||) 「!?」 ガタン
何気なく。 本当に何気なくだ。
テレビ画面を眺めた俺は、次の瞬間、持っていた箸を床に取り落とした。
【 (-_-) 】
(゚A゚;) 「……」
『死亡していたのは、○○県▼▼市在住の 引田マサヨシさん(29)で──』
ニュース番組のモニターにアップで映し出された顔写真
それはまさしく、先日のチャネラー……、あの男のものだったのだ。
『不審な車両が停まっていることを──近くの住人が発見し──』
- 56
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:35:44.65 ID:9KZkc3GT0
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『現場の状況から、警察は引田さんが車内でガスによる心中を図ったものと見ており、
自殺の方向で捜査を──』
無情な音声が左耳から右耳へと抜けていく。
キャスターの伝える言葉の意味は、すぐには理解できなかった。
いや、したくなかったというほうが正しいだろう。
あの時、屋上で掴んだ右腕。
文字通り必死でささえた体重。
間直で対峙して見つめた、あの弱弱しい表情。
(゚A゚) 「……」
何故。
どうして。
なんで彼は、再びこんなことを。
──死を、選択する必要があったんだ。
( A )
俺はしばし、呆けた表情で画面を見つめていた。
- 57
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:37:41.01 ID:9KZkc3GT0
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('A`) 「……」
('A`) 「……ああ、そうか」
なんだ、気付いてみれば簡単なことだ。
自信だとか。
誇りだとか。
トクベツナチカラだとか。
そんなもの、初めから無意味だったんだ。
そんなのは幻想だったんだ。
勝手に肥大化させていた俺の拠り所は、
抑揚のないキャスターの言葉ひとつで、こんなに簡単に崩れ去る程度のものだったんだ。
所詮、現実なんてこんなものなんだ。
( A )
相手の能力を封じる。 女の身体に変身できる。
何だそれ、くだらねえ。 それがいったい世の中の何に役立つというのだ。
果たして俺は、今まで何に対して浮かれていたんだろう。
- 58
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:39:32.24 ID:9KZkc3GT0
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どんなに周りの環境が変わろうとも、俺が冴えないフリーター男なのは変わらない事実で、
バイト先でも疎まれている存在なのは覆りようがなくて、
そんな中、ちょっと特別な力を手に入れた気になって、善行を施したつもりになって、
果ては、
得意げな顔して、他人を救った気になっていただけ。
('A`) 「……」
俺はやっぱり、矮小ないちダメ人間に過ぎない。
俺の行動で世界は変わらないし、俺の言葉で人の心は揺るがない。
俺は、どうしようもないほどに小さくて、無価値な存在だ。
『次のニュースをお伝えします。 先ほど入った情報によりますと──』
俺は、
無力だ。
(続く)
- 59
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:41:06.34 ID:9KZkc3GT0
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(おまけ)
(,,゚Д゚) 「……」
(*゚ー゚) 「ギーコくん」
(,,゚Д゚) 「……」
(*;゚ー゚) 「あれ? ギコくん?」
Σ(,,゚Д゚) ハッ
(,,;゚Д゚) 「あ、ああ、しぃか。 メイドがどうした?」
(*゚−゚) 「え……メイド?」
Σ(,,;゚Д゚) 「あっ、いやその、違う違う……」
(*゚ー゚) 「へんなの。 そこ、鳥のふんあるから気をつけてね」
(,,゚Д゚) 「ああ……え?」 ムニョ
Σ(,,;゚Д゚) 「うおぅ!? ちょ、先に言ってくれよもう!」
(*;゚ー゚) (こりゃ相当重症だなあ)
- 60
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/02(木) 21:42:33.33 ID:9KZkc3GT0
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(,,゚Д゚) ゴシゴシ
(,,-Д-) 「……」
(,,*-Д-) (……ドクミちゃん、か……)
……つづく。
Σ(,,;゚Д゚) 「あぁっ! どうせなら彼女を”ロックオン”しときゃよかった……!」
(*゚ー゚) (世間ではそれをストーキングって言うんだよ……)
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