813 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:35:40 ID:BRQmFMAo0
.
(((;l|ll-[ ]3[ ]))) 「ふ っ っ じ ゃ け る な ぎ ゃ ぁ あ ぁ あ ぁ ぁ あ あ ! ! !」


 怒号が反響する。

    _, ,_
::(#-[ ]3[ ])σ:: 「イカサマだッ!
            み、みみみ認めないぞ僕はァ!!」


 起き上がるなり、ポセイドンは机に乗り出し叫んだ。


('A`) 「はぁ? なにが?」


 やれやれと肩をすくめるドクオ。
 挑発的なジェスチャーがさらにポセイドンの神経を逆撫でする。


::(;-[ ]3[ ])σ:: 「こっ、こけっ、くき……」


 二の句が継げず、ポセイドンは空を指差し、小さくあえいだ。
.

814 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:38:33 ID:BRQmFMAo0
.
┓('A`)┏ 「見てのとおり、俺の勝ちじゃん。
       [ A ] は [ K ] を倒す。 チップは4倍。 何もおかしいとこなんk」
    _, ,_
(((#-[ ]3[ ]))) 「違ぁあぁぁぎゃあああ! そっ、それッ! 台ふだぁぁぁあ!
           ぼくがッ![ K ] なんて! ぁあぁあありえないッ!
           ありえるわきゃないんでぃあァあ!!」


 ポセイドンは顔を真っ赤にして騒ぎ立てた。
 ──この男!
 澄ました顔して、何も知らないふりして、とんでもない事をしやがった。 


('A`) 「はぁ。 往生際悪ぃ……」
    _, ,_
(((#-[ ]3[ ]))) 「あああああ!! 違う違う違うチガウ!!
           しぃ! 見てただろ、おい!」

(;*゚ο゚)そ 「ほえ?」


 勝ちの目の薄いポーカー勝負を続行したのも。
 残りチップをここで投げ打ったのも。
 全てがこのイカサマのため! 誰が見ても明白だ。
.

815 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:40:23 ID:BRQmFMAo0
.
(((#-[]3[])))σ 「だ、だだっ、台札だッ!
           さっきまで! それッ! [ K ] だっただろーが!
           すり替えたんだよ! こいつが! ドクオがぁぁあぁ!!」

(((;*゚−゚) 「えぇ? えー……っと……」


 きょとん、と。
 しぃは要領を得ない表情で、台札と、ドクオのほうへ交互に視線を送る。

   _,,  て
(#;-[]3[])そ 「!?」

('A`) ニヤリ


 ───このバカ、台札を見てなかったのか。
.

816 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:41:44 ID:BRQmFMAo0
.
(;*゚−゚) 「ぁ……それは……その……」
 σ

 当然といえば当然だった。
 彼女にとって “ ジャッジ ” という肩書きなど、お飾りに過ぎないのだから。

 というより、ポセイドン自身、しぃにそこまでの役割を求めていなかった。
 もし判定を下す権限が彼女にあれば、
 滝沢の存在が明るみになった時点で、ポセイドンの負けもありえただろう。

 しぃにできるのは、認識することだけ。
 “ 勝負の結果 ” を見届ける。
 それだけのために、彼女はそこにいる。


(;*´−`) 「……ぁぅ」


 ドクオが敗北するシーンを──
 自らを傀儡へと貶める “ フラグ成立 ” の瞬間を。
.

817 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:43:31 ID:BRQmFMAo0
.
(#-[]3[]) (あぁぁあぁぁぁ!! くそっ!! 使えねぇえぇえ!!)


 ただでさえこれまでの勝負で、しぃは精神をすり減らしている。
 アイマスクを外してからのわずかな時間で確認できたのは、
 ショーダウンが行われるという事実、そして二人のベット枚数程度だ。

 台札の数字は勝敗に直接からまない。
 ましてこれは、雌雄を決する大一番。

 テーブル中央を注視していた彼女は、
 逆サイドに置いてある台札のことなど、まったく気に留めていなかったのだ。

 むろんそれは──台札のほうに気を払っていなかったのは、ポセイドンも同じであり。


('A`) 「ま、とにかく。 俺が勝ったのは間違いないよな」


 どうやったのかは知らないが、この男(ドクオ)は。
 視線が中央に集中するショーダウンの間隙を縫って。
 テーブル端の台札 [ K ] と、ポセイドンの手札を、


('A`) 「約束どおり、しぃちゃんは返してもらうぜ」


 すり替えたのだ。
.

818 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:45:41 ID:BRQmFMAo0
.   _, ,_
(((#-[ ]3[ ]))) 「っ っ っ ざ け ん な ぁ ぁ あ ぁ !
          認めない、ぼ、ぼぼ僕は認めないぞッ!」


 ポセイドンは目を白黒させながら叫んだ。
 しぃの認識次第では、
 せっかく手に入れた “ 肉体の制動権 ” を奪還されてしまう。

 目の前で起こったことが、イカサマの結果であることは疑いようのない事実。
 自分は敗北などしていない。
 彼女にそれをはっきりと認識させなければ。

    _, ,_
(((#-[ ]3[ ]))) (っっっざけやがって!
           イカサマっ! こ、こんなことでぇッ!)


 激昂しながらも、どうにか思考をめぐらせる。
 台札 [ K ] がポセイドンのハンドとすり替えられたのは疑うべくもない。
 が、もともとあったはずの手札は、いったいどこへ行ったのか。

 普通であれば、新たに出現した [ Q ] が本当のポセイドンのハンドで、
 台札の [ K ] と入れ替わったと考えるのが自然だろう。
.
820 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:47:06 ID:BRQmFMAo0
.
(;#-[ ]3[ ]) (しかしッ! テーブル中央が絶えず衆目に晒されていたこともまた事実!)


 場を緊迫感が支配していたショーダウン直前。
 ポセイドンが視線を切る瞬間は確かにあった。
 それでも、あのわずかな時間で両方のカードを入れ替えるのは至難の業だ。

       て
(;#-[ ]3[ ]) そ (あの [ Q ] 、ヤツがどこかに隠していたカードでは!?)


 この現象が 『 仕込み 』 の結果ならば、
 山札の枚数、もしくは残ったカードの種類に不整合があるはず。

 結論に思い至ったところで、
 ポセイドンは椅子を跳ね飛ばしながらその場に立ち上がった。
.

821 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:48:53 ID:BRQmFMAo0
.
(;#-[ ]3[ ]) 「おいッ!」

(;*゚−゚) 「あ、ぅ?」

三(#-[ ]3[ ]) 「いいかッ! ぼ、ぼくは負けてないッ!
          見てろ、しぃ! 見ろ、見ろぉおおッ!」


 叫びつつ、テーブルの端に飛びついた。
 パーテーションの空洞から、山札に向かって勢いよく手を伸ばす。


三(;#-[ ]3[ ])≡つ (イカサマッ! すり替えの証拠は……そこにッ!)


.

822 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:50:13 ID:BRQmFMAo0
.






                           『 待ってたぜ、この瞬間を 』






.

823 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:51:03 ID:BRQmFMAo0
.
(;#-[ ]3[ ])つ 「!!」


(*゚○゚) 「!!」


 ポセイドンは大きく目を見開いた。


( A ) 「……」


 山札へ伸ばされた彼の右腕を。
 ドクオの左手が、しっかりとつらまえていたからだ。
.

824 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:51:47 ID:BRQmFMAo0
.
(;#-[ ]3[ ]) 「は、離せッ!」


 強引にその手をふりほどく。
 勢いざまカードが後方に散らばった。
 が、そこで。


煤i;-[]3[]) 「 ! ? 」


 ふいに視界がゆらめいた。


(;-[]3[]) (な、なんだこれは?!)


 変化はそれだけにとどまらない。
 はっきり知覚する違和感。

 ろうそくの炎のごとく世界が揺らぐ。
 しかしそれも長びくことはなく、万物はにわかに元の像を結ぶ。

 すぅっと、圧から解き放たれる。
 たとえるならば、手綱がすっぽ抜けるような感覚。
.

825 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:52:57 ID:BRQmFMAo0
.
『 ───ぷはっ 』


([]ε[]-;)彡 「!!」


 同時に響いた声に、ポセイドンは振り向く。


(;*゚ο゚) 「────あ、わたし、あれっ?」


 きょろきょろ辺りを見回しているのは、少女──猫塚しぃ。

 なんだか様子がおかしい。
 瞼をしぱたかせつつ、両手を握って離す動作を繰り返している。
 その感覚を確かめるように、二度、三度。


( A::) 「……」


 ────まさか。
.

826 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:54:41 ID:BRQmFMAo0
.
(;-[]3[]) 「しぃッ! こっちだ! 僕のほうに来いッ!」

(*゚−゚) 「!」


 ジャッジメント ・ ゾーン側の仕切りにかじりつき、ポセイドンは叫んだ。


(;-[]3[]) 「早くッ! カギなら渡す、こっちだッ!」


 が、何度呼んでも、しぃは “ 命令(オーダー) ” に反応しない。


(;*゚ο゚) 「わ、た、し……」


(l|l;-[ ]3:::) (は? なんだこれ、おい、おいッ)
.

827 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:55:29 ID:BRQmFMAo0
.
(*゚−゚) 「……な」


(*゚ワ゚) 「……なんとも、ない?」


      _,    ,_   て
(;l | l; -[◎] 3 [◎])  そ  「 @ ☆ p l y h r / : * ? ! ? ! ? 」



  コ ト ダ マ
 催 眠 能 力 の 効 力 が 、 消 え て い る 。 






『 気づいたかぁ? 呑気なおぼっちゃんよ 』


 こわごわとそちらへ向き直る。
 そこに立つ男は。
 振り払われた時のままの姿勢から、左腕をゆっくりと曲げ、ポセイドン側へ示す。
.

828 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:56:49 ID:BRQmFMAo0
.
(;l|l-[ ]3[ ]) 「 な っ …… な っ 」



 (::::A::) ∩



 そして、ポセイドンは見た。


:::(;l|l-[ ]3[ ])::: 「 何 を し た っ !? 」


 銀の蛇腹は、ちゃんと獲物の手首に巻きついていた。
 しかし。
 その効力を示す緑色のランプが。



 (::::∀::)∩



 完全に、消灯している。
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
.

829 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:58:06 ID:BRQmFMAo0
.





 『 貴 様 あ ぁ あ ぁ ぁ あ あ あ っ ! ! 』





    ロ  ッ  カ  ー
 “ 超能力封印装置 ” は、死んでいた。



.
831 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:00:53 ID:BRQmFMAo0
.
 〜 〜 〜


(((;l|l-[ ]3[ ]))) 「わああああぁぁあ! ぎゃぁあぁぁああ!!」


 狂ったようにわめき散らす、目の前の肉団子。
 耳障りではあるが、実に気分爽快だ。

 ポセイドンは、豆鉄砲やら水鉄砲やら
 なんか色々食らったようなアレで俺のほうを見ている。


:::(;l|l-[ ]3[ ])σ:: 「ああああなんだそれっ!? なんだそれぇえぇ!?
            そっ、それっ!  そんの腕ェえッ!?」


 気づいたようだ。
 俺の袖からしたたり落ちる、雫の存在に。


('A`) 「お前には感謝してるよ。
    当たってるかどうかは知らないけど。
    さっき指摘したアレ、本気だったんだ」

(;l|l-[ ]3[ ]) 「はぁあ?! なにっ!? なにがだっ!!」
.

832 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:04:09 ID:BRQmFMAo0
.
('A`) 「お前が “ PSIジャマー ” を使わなかった理由についてだよ。
    ……いや、別にいいんだぜ。
    もしジャマーとやらを使われてたら、
    こんな結末は訪れなかっただろうからな」


 傍らへ移動する。
 これでヤツにも確認できただろう。
 パーテーションに張り付くまぬけ面がそれを証明している。

 勝負の前、おまえは念押ししてたもんな。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  (-[]3[]) 『 そうそう。
         精密機械だからね。取り扱いには注意してくれよ?
         まあ簡単には取り外せないと思うが…… 』

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


('∀`) 「精密機械の弱点って、なーんだ?」


 疑問の答えはすぐそこにあった。
 腰のあたりでふわふわ漂う、ハンドボール大の水の球。
.

833 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:05:31 ID:BRQmFMAo0
.
(;l | l; -[◎] 3 [◎])    「  あ    あ    あ   」



('∀`) 「ロッカーを使ってくれて、ありがとう。
     ……みんな、うまくいったぜ!」


 俺の言葉を合図に、水は力を失って落下する。
 ほぼ同じタイミングで、しぃちゃんの眼前にもうひとつ別の水球が出現した。


(*゚ワ゚) ゙ !


 彼女はちょっと面食らった様子だったが、
 すぐにやるべき事を察知し、制服の袖をまくり上げる。

             て
(;l | l; -[◎] 3 [◎]) そ 「おいっ!? やめろ! やめろぉぉおぉ!!」


 ポセイドンの懇願空しく、しぃちゃんは手首をそこへ差し入れ。
 細かなあぶくが吹き出し、ランプはやがて消灯した。
.

834 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:07:00 ID:BRQmFMAo0
.
(*^ー^) 「ばっちりです! ドクオさん!」


 しぃちゃんはひさびさに満面の笑みをみせた。
 そしてすぐに振り向くと、ポセイドンへ向け、ちょっと困ったような視線を投げかける。

 笑顔のはずなのに、どこか妖艶な、ぞくぞくさせる表情だ。
 なぜか俺まで肌があわ立つ。


( 'A`) b そ グッ


 色々と不安要素はあったが、結果的に作戦は大成功。
 俺の声も、意図も、ばっちり “ あいつら ” に伝わってるみたいだ。


( '∀`)∩ 「御社ご自慢の新製品らしーけど。
       もーちょいしっかり、防水加工、な?」

(((;l|l-[ ]3[ ]))) 「あああああ! ふざっけんな! しねえええええ!!!」


 試作品の実地テストに協力し、
 果ては改良点の洗い出しにまで貢献してやったんだ。


( 'A`) (感謝して欲しいくらいだぜ)
.

835 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:12:34 ID:BRQmFMAo0
.
 回想する。
 ダイオードがポーカー再開を提案する直前。

 サダコちゃんによるバリケード(感染した黒服たちだけど)のおかげで、
 俺はブーン達と合流することができた。

 そこで得た情報は、まさに値千金。
 しぃちゃん奪還への作戦が動き始めたのは、この時からだった。


===
==



(,,゚Д゚) (ドクオさん、ちょっと)

( 'A`) (え?)

(,,゚Д゚)∩゙ (ほら。 これこれ) クイクイ

    て
(;'A`) そ 『 え!? こ、これって 』

川 ゚ -゚) 『 くくく……御名答 』
.

836 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:13:28 ID:BRQmFMAo0
.
(; ^ω^) 『 いったい何が!? てか、どうしてランプが消えてるんだお? 』

(,,;゚Д゚) 『 しーッ! ばか、ヤツらに聞かれたらどーすんだよっ! 』


川 ゚ -゚) 『 精密機械の天敵って、なーんだ? 』


  ('A`)  ・ ・ ・ 。


??(;゚A゚) 『!? まさか、え、そんなことで!?』

川 ゚ -゚) 『 やってみるもんだな 』

(; ^ω^) 『 じゃあ、ひょっとしてギコ、超能力は 』

(,,゚Д゚) 『 ごめーとー。 既に戻ってるぜ 』

川д川 (顔も元に戻ってる……)
.

837 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:14:58 ID:BRQmFMAo0
.
川 ゚ -゚) 『 いいかブーン、ゆっくり手を後ろに回せ。
      ヤツらにバレないよう、私の水で…… 』


( ^ω^) 『 お? おっお…… 』





il|(  ゚ ω ゚) l|l 『 おおう!!』 チャプン



 (* ´ω`) ・・・あふん



川#゚ -゚) 『 声出すなっつってんだろバカ! 』



==
===
.

838 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:16:23 ID:BRQmFMAo0
.
 そう。
 俺が勝負再開を決めたのはこの時だ。


( 'A`) (クー達が助けに来てくれたのはいいけど、
     あのどさくさでポセイドンに逃げられちゃあ、元も子もないからな)


 イカサマを仕掛けたのには理由があった。
 むろん勝敗に拘っていなかったわけではないが、
 勝利という結果は、その先にある 『 本当の目的 』 を成す第一歩にすぎない。

 仮に俺が勝ったとしても、ポセイドンがすんなりしぃちゃんを解放するかは、
 端から疑わしいものがあったからな。


( 'A`) (俺の一番の目的は)


 ヤツの正気を失わせること。
 カード一枚の手渡しすら避ける、強固な警戒心を、取り払うこと。

 度重なる挑発によって冷静さを奪い。
 不用意にこちらへ近づくよう仕向け、
 その肉体に、触れる。
.

839 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:17:55 ID:BRQmFMAo0
.
( 'A`) (ルールに則った勝利より、もっと確実で、信頼のおける方法)


 『 接触による能力解除 』

       チカラ
 俺は俺の能力を、誰よりよく知っている。

 わざわざポーカー勝負を再開した理由は、ただひとつ。
 鈴木兄弟の邪魔が入らない閉鎖空間にて、ヤツと接触するため。
 しぃちゃんにかけられた呪いを、この手で打ち砕くため。


(;l|l-[ ]3[ ]) 「あああああああ! ふじゃぶぐ!!
         ぶおっ! ぶほほっ! げっほごっほ!」

( '∀`) (目論見は大成功)


 ここまで綺麗にハマってくれると気持ちいいものがある。
.

840 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:19:10 ID:BRQmFMAo0
.
 ギャンブル ・ ルーム再入室にあたっては、
 ダイオードによるボディチェックを通過しなければならなかった。
 よって、あらかじめロッカーを壊して入室するわけにはいかない。

 ロッカーの機能停止は、勝負の最中に行う必要があった。

 幸いダイオードのチェックは黒服より甘く、
 嘘発見器(ポリグラフ)をふたたび使われることもなかった。
 イカサマする気満々だったので、妙な質問をされるのは極力避けたかったからな。


( 'A`) (このトリックは、皆の協力がなければぜったいに成し得なかった)


 ──無論、ここで言う協力とは、彼らの持つ超能力のことだ。
.

841 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:23:48 ID:BRQmFMAo0
.

                      川д川  サダコちゃんが、敵の接近を “ 阻み ”



             川 ゚ -゚)  アラサーが、皆のロッカーをこっそりと “ 壊し ”



                                (,,-Д-)  ギコがルーム内の様子を “ 聴き ”



           ( ^ω^) 彼の合図に合わせて、ブーンがカードを “ 送って ” “ 消し ”



                         川 ゚ -゚)  最後にお水レディが、水の塊を “ 作り出し ”



                  ( ^ω^) 豚の力で、ルーム内に “ 転送する ”

.

842 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:24:43 ID:BRQmFMAo0
.
 〜 〜 〜


( ´_ゝ`) (そしておれが応援する! 心の中で!!)




(* ´_ゝ`) (がんばるんだみんな! ファイトー! いえいいえーい!)





   _,
(((;,,-Д-))) (やめてくれ偽せんせー! 気が散る!)

川 ゚ -゚) 「ウザい。 主に顔面が」 

(; ´_ゝ`) (ひどいな君ら! そしておれ弟のパチモンじゃないから! むしろ兄こそオリジナルだから!)

.

843 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:25:42 ID:BRQmFMAo0
.
●第三七話 『 マジシャンズ ・ セレクト ── VS. ポセイドンJ 』


 〜 〜 〜

 ポセイドンはカードを踏みつけ、よくわからない言語でわめき散らしている。
 台札 [ K ] のすり替えトリック。
 こいつにとっては、完全に “ 理外の手 ” だっただろう。


( 'A`) (もともとヤツの持つ情報には誤りがあった)


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  (-[]3[]) 『 ドクオさんはアンチサイの一種で、
         それも肌に触れなきゃ効果を発揮しない。
         ホライゾンさんに至っては、未だ超能力が発現してないらしいけどね 』

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 この一言で、そのソースの大部分はギコだろうと予測できた。
 拉致された時点でギコの知らなかった事実は、ポセイドンも知りえなかったのだ。
.

844 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:27:09 ID:BRQmFMAo0
.
 ヤツの言葉に抜け落ちている、ひとつの情報。
 すなわち、ブーンに新たに芽生えた能力 『 物体転送(アポーツ) 』 のことだ。


 〜 〜 〜


( ^ω^)づ□


 ここで少し 『 アポーツ 』 について補足する。

 ブーンの能力は、物体を転送する→再転送、という2つの動作でワンセットになる。
 転送した時点で、そのアイテムは “ アクティブ ” となり、任意のタイミングで再転送できる。


( ^ω^)つ l||i           i| □ |l


 転送を開始するにあたって、対象物に “ 直接触れる ” ことが重要なファクターとなる。
 ノン ・ アクティブの物体を引き寄せることには未だ成功していない。
 能力が暴発して、なんだかよくわからないものを持ってきてしまうだけだ。
.

845 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:28:34 ID:BRQmFMAo0
.
( ^ω^)                ■
                   [Active]


 ブーンが “ アクティブ ” にしておける物体は3つまで。
 アクティブ状態のアイテムは、1回目より正確な位置へ再転送できる。

 手元に “ 呼び戻す ” 動作が一番簡単らしく、
 後ろに回した手の中へこっそり、ということも可能。

 ──が、精密性が保証されるのは “ 呼び戻す ” 動作に限ってのこと。
 いくらギコがバックアップしていたとはいえ、
 コンテナの内部、見えない場所の正確な位置に、
 カードを “ 送り込める ” 確証はなかった。


 〜 〜 〜 

        て
(;l|l-[ ]3[ ]) そ 「!!」


 地団太を踏んでいたポセイドンが、ふいにしゃがみ、カードを1枚拾い上げた。
 どす、どす、と小走りで、接近するなり、薄汚れたそれを俺に突きつける。
.

846 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:32:55 ID:BRQmFMAo0
.
(#-[ ]3[ ]) 「見ろおおぉぉお! やっぱりイカサマだった!」

('A`) 「は?」


:::(#-[ ]3[ ])つ[ A ]::: 「 [ A ]だ! 山札の中に、もう一枚 [ A ] があった!
               そこッ! お前の手札も [ A ] !
               お前はッ! いつの間にか別の [ A ] を持ち込んで……」


('A`) 「だから?」


(l | l - [  ] 3 [  ] )  「       」


 怒りが臨界点を超えたのだろう。
 ポセイドンは目を剥き、口の端から泡を吹いた。

 なんにせよ、お前の言うことは間違いだけどな。
.

847 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:34:57 ID:BRQmFMAo0
.
 持ち込んでねーよ。
 “ 送り込んで ” もらったんだから。

 誰から?
 ブーンから。

 どこから?
 コンテナの外。

 そう。


(::::A`) (はじめから、カードは二組存在していたのさ)


 こいつがウェブページに記していた一文を思い出す。
.

848 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:35:42 ID:BRQmFMAo0
.
===
==



 『 なお、上記場所へ来る際、新品のトランプを一組、買ってくること 』


 この文章を読んで、
 誘拐犯はトランプを身代金として望んでいるんだ、なんて考えるヤツがいるだろうか。

 俺だってバカじゃない。
 トランプは何らかの決め事に用いられるのだろう、
 ひょっとしたらゲームというふざけた目的に……と、ここまでは想像ができていた。

 “ ゲームの道具を俺たちに用意させる ”
 ポセイドンはただ、偽りの公平感を演出するため、そうさせたに過ぎないのだろう。
 ────だが同時に、こいつは付け入る隙を与えてしまった。
.

849 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:37:01 ID:BRQmFMAo0
.
 俺はみんなに提案した。
 カードはあらかじめ二組購入しておこうと。


 ('A`) 『 VIPモールにおもちゃ屋があったよな 』

 ( ´ω`) 『 わざわざ寄るのかお? トランプなんてコンビニに売ってるお? 』

 ('A`) 『 ……ダメなんだよ、それじゃあ 』

 (*゚−゚) 『 ? 』


 備えあればなんとやら。 いざという時に役に立つかも知れないから、と。
 ついでに言えば、マジシャンご用達、紙製のトランプを選んだ上で。


 (::::A`) (プラスチック製だと、“ イタズラ ” やりにくいからな)


 二組のカードのうち片方は封を切り、
 輪ゴムで束ねた状態でブーンに隠し持たせていた。
 港に来たあとは、未開封のカードのみを黒服に渡したというわけだ。
.

850 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:39:17 ID:BRQmFMAo0
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 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 <ひゃんっ!?
 <ふぁっ、やぁっ……
 <あっ、ちょっ、そこは
 <んっ、う……ぁ?!
 <らめぇ


  『 なんだあいつは…… 』
  『 気持ち悪ぃ 』
  『 弟の方は嫌に大人しいな。 あっちじゃなくて良かったわ 』


               ∩( ‘ω‘)∩

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 倉庫へ移動したあとのこと。
 タムラ達による最初のボディ ・ チェックの時点で、
 ブーンはカードを “ 転送し ” 、近くの積荷の裏へ隠したらしい。
 (以降、この一組を “ カードB ” と称する)

 おそらくは “ 透視 ” による身体チェックも行われたのだろうが、
 アポーツ発動は、角刈り野郎がサングラスを着ける直前のこと。
 ギリギリのタイミングで、透視による発見を免れたようだ。
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851 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:40:34 ID:BRQmFMAo0
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 Σ(* ´ω`) アフン


 だがその後、ブーンがロッカーを嵌められた時点で、
 アポーツは封じられ、カードBもすべてノン ・ アクティブとなった。
 つまり、ブーンはカードB一式を “ 呼び戻す ” ことができなくなってしまった。

 当然ながらルーム内の勝負に使用することはできないし、
 うかつに回収へ向かおうものなら、タムラ達にその存在がバレてしまう。
 この時点でカードBの利用価値は失われてしまったも同然だった。

 しかし。


 (゚A゚) 『 ─────! 』


 クー達が来てくれたことで、ロッカーの破壊方法が見つかったことで。
 舞い降りたのだ。
 このカードBを最大限活用し、完全勝利をおさめる、天啓のひらめきが。
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852 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:43:27 ID:BRQmFMAo0
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 さし当たっての問題は、
 物陰にあるカードをどうやって回収するか、だったが。

  _,
爪;゚〜゚)


 幸いなことに、超能力さえ戻ってしまえば。
 そして場所さえわかっていれば。


( ゚"_ゞ゚) ・ ・ ・
  _,
爪;゚〜゚)  ? ? ?

(; ´_ゝ`) 『 あ〜〜、なんかアレだな〜〜。 喉渇いてきちゃったな〜〜 』 コソコソ


 ───こいつがいる。

 サダコちゃんが “ 感染させた ” 黒服でバリケードをつくり。
 兄者がサイコキネシスを発動。
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853 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:44:49 ID:BRQmFMAo0
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川 ゚ -゚) (……どうだ?)

(; ^ω^) (……お。 オッケーだお。 戻ってきたお)

(,,-Д゚) (うし。 じゃあそろそろ……)


 カードはふたたびブーンの手元へ戻る、と。
 こういう算段だ。




==
===
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854 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:48:55 ID:BRQmFMAo0
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:::(((#-[ ]3[ ])))::: ピクピク


('∀`) 「いまさら何言ってんのー?。
     イカサマなんて、最初からする気満々だったスィー↑」


 俺の一言で、ポセイドンの口からさらに奇声じみた雄叫びがあがる。
 しぃちゃんは透明のドアにくっつき、目を輝かせた。


(*^ー^) 「ドクオさんすごいですっ! いったいどうやったんですか?」

('A`) + 「ふっ。 まあ話せば長くなるけど……」

(*゚ー゚) 「あ、じゃあいいです」

('A`)


 ポセイドンが嘘発見器(ポリグラフ)をクリアしたのと同様、
 俺もこのトリックを仕掛けるにあたって、いくつものハードルを越える必要があった。
.

855 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:50:27 ID:BRQmFMAo0
.
===
==


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  (#'A`) 『 とぼけんじゃねえっ!!』 バッ

 Σ(;-[]3[]) ⊂≡ 『 !! 』

 m9('A`#) 『 いいか、聞け!』

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 12セット目に入ったときのこと。
 俺がポセイドンの言葉にぶち切れた……ふりをしたのには、3つの狙いがあった。

 ひとつには 『 カードを送ってほしい 』 という、ギコたちに向けた合図。

 あと、ゲームに使用するスートをスペードに変えたかった、というのがひとつ。
 ブーンの持つカードBの束は、スペードのAから順に、数字どおり並んでいる。
.

856 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:51:50 ID:BRQmFMAo0
.

   / ゚、。 / 爪;゚〜゚)         川д川(´く_` ) (゚- ゚ 川 ((^ω^ ;))(-Д-,,)


 俺たちの勝負を待つ間、コンテナの外はにらみ合いの状態になっている。
 黒服の数は減ったとはいえ、ダイオードとタムラがきっちり目を光らせている。

 サダコちゃんが相手を牽制し、一定の距離を保ってくれてはいるが、
 それでもブーンが堂々と目の前でカードを扱うわけにはいかない。

 ポケットに潜ませるにしろ後ろ手に持つにしろ、
 ブーンは手探りでカードB群の選別をしなければならない。

 こっそり “ 転送させる ” カードは、なるべく束の上にあるスート。
 スペードがもっとも都合が良かったのだ。
 当然ながら、52枚すべてを送ってもらうわけにもいかないからな。
.

857 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:53:33 ID:BRQmFMAo0
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 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 (;-[]3[]) 『 …… 』

 ('A`) 『 とにかくだ。 ……よいしょっと。
      赤いカードは……もう、使わない』

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 カードを床に散らしたのにも理由がある。
 正確な場所ではないが、間違いなく俺サイドのタイマー付近に出現するカードBたちを、
 舞台に “ 紛れ込ませる ” ためだ。

 俺の手元へ正確に転送してくれれば良かったのだが、
 あいにくブーンの能力ではそれが難しい。


(;'A`) (かといって、ここ一番っつータイミングで
     テーブルにカードがひらひら落ちてきても興醒めだからな)


 このとき転送してもらったカードBは
 [ A ] [ K ] の計2枚。
 (もともとのカードと区別するため、それぞれ [ B-A ] [ B-K ] と表現する)

 俺はタイマーテーブル付近に散らしたハートのカードを拾いに行き、
 中に紛れ込んだ、スペードの [ B-A ] [ B-K ] を回収する。
 この2枚は袖なり手の甲なりを駆使して隠し持つ。

 その後の手順はこうだ。
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859 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:20:23 ID:BRQmFMAo0
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1、手札選択(子番)


 カードはチェンジされ、スペードの13枚にて勝負再開。
 俺はカードチェックの際に [ K ] を選別して、シャッフルを開始した。

 このくらいは朝飯前だ。
 問題はいかにして、この [ K ] を相手に引かせるか。

 こればかりは超能力も頼りにできない。
 俺が用いたのは、正真正銘、ガチンコの力技だった。


('A`) (久々だったけど、どうにかなるもんだな、実際)


 “ クラシック ・ フォース ”

 手品のトリックのひとつ。
 自由選択に見せ掛けつつ、
 マジシャンの思い通りのカードを相手に引かせるテクニックだ。
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860 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:22:09 ID:BRQmFMAo0
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 最後に披露したのはハインさん相手だったか。
 数ある “ フォース ” の中でも、このテクニックは特に難易度が高い。
 失敗もあるしバレやすいので、使うのはここ一番のみと決めていた。

 俺はあの時、必要以上にのんびりシャッフルを続けることで、
 ポセイドンがこらえきれなくなる展開を待った。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 ('A`) 『 受信機である携帯のバイブレーションと、そこに生じるわずかな衣擦れ。
      そう、こいつは隠したかったのさ。 ポケットから発生する “ 音 ” をな。
      トーキング ・ タイムなんて名前だけ。 その実態はイカサマタイム……』

 (#-[]3[]) 『 ご、ごたくはいい! 寄越せッ!』 バッ
  ◇と彡

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 俺の思惑通り、ポセイドンは俺がテーブルにカードを置くまで待てず、
 パーテーションの隙間から強引に引ったくろうとした。
 その焦りこそ、フォース成功へ向けて蒔かれた種だとも知らずに。

 ヤツがカードを取ろうとした瞬間、
 俺は隠し持っていた [ K ] を差し出し、引かせたのだ。
 [ B-A ] に刺される業を背負った、裸の王様を。
.

861 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:24:17 ID:BRQmFMAo0
.
 残念ながら、この時点ではヤツの手をつかまえることができない。
 シャッフルは両手を使う必要があるので、
 見られないように片手を水の塊に突っ込む→ ロッカー破壊 という、
 事前準備ができなかったのだ。

 だが、この時の接触で確信できた。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

                ('A`) 『 …… 』 ニヤリ

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 もっと焦らせれば、我を忘れさせれば、こいつはふたたび手を伸ばしてくると。
 猜疑心という、透明の仕切りの隙間から。
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862 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:25:17 ID:BRQmFMAo0
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2、 手札選択(親番)


 フォースという壁を越えた俺にとって、ここが最大の正念場だったかも知れない。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

   (;'A`) 『 ……(頼むっ! アレは、アレだけは引くな……!)』 スッ

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 危険な橋。
 1/12の黒ひげ危機一髪。 

 ここで俺は [ A ] 以外を引く必要があった。
 理由はあとで説明する。

 俺は祈るような思いで、テーブルに並べられたカードから一枚を選択した。
 そしてそのカードを “ コースターに置くことなく ” 、
 代わりに、隠し持っていた[ B-A ] を、手札としてセット。
.

863 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:26:56 ID:BRQmFMAo0
.
3、 台札提示


 残ったカード束……11枚の山札のうち、一番上が台札となる。
 俺は山の一番上をめくるように見せかけて、
 さきほど引いたカードと、[ B-K ] の二枚を、表向きに重ねて置いた。

 このとき、二枚目のカードの端がちらっと見えた。
 絵札。 つまり [ A ] ではない。
 内心かなり安堵したのは言うまでもない。

 もうおわかりだろう。
 これが [ Q ] 。 つまり、最後の最後で台札として現れるカードだ。
.

864 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:31:50 ID:BRQmFMAo0
.
        ┌───┐
        │ /\ │
        │ (__,、.__)│
        │  .Δ . │
        └───┘



 カード選択の段階で、俺が [ A ] を引いてしまうと、
 最後に現れる台札が [ A ] になってしまう。

 俺の手札は[ B-A ]。 台札も [ A ] 。
 これじゃあ誰の目にもイカサマはバレバレ。
 しぃちゃんが俺の勝ちを認識してくれるとは思えない。

 勝負が仕切り直されるかはわからないが、
 警戒したポセイドンは二度と近づいて来ないだろう。
 すべての目論見は御破算だ。
.

865 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:32:39 ID:BRQmFMAo0
.
      ┌──────────┐
      │  Q              .│
      │ /\               │
      │ (__, 、__)            . |
      │  .Δ             │
      │      ,λ、、λ     . |
      │      彡*゚ー゚ミ     .....|
      │     ..彡''.~゚~ミ      ..|
      │     ,;;彡,,,i,,ii,i,ミ       |
      │             /\.....│
      │           (__, 、__)..│
      │            .Δ .....│
      │               .Q ......│
      └──────────┘



 本当は [ B-Q ] も送ってもらえば、この作戦はより完璧だった。

 だがそうなると、ポセイドンのカード選択時に、
 俺は [ K ] [ B-Q ] [ B-K ] [ B-A ] と、4枚ものカードを隠し持つ必要がある。
 いくら俺でも、シャッフルしながら隠せるのは3枚が限界だった。

 台札をめくるのは親の役目だ。
 したがって、このトリックは親番でなければ使えない。

 ゲーム再開時、つまり11セット目は子番。
 俺は種を蒔き続けた。
 親番となるこのセット───12セット目へ、望みを託して。
.

866 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:33:46 ID:BRQmFMAo0
.
4、ショーダウン


 あとの流れはご存知のとおり。
 俺の手札 [ B-A ] 、台札 [ B-K ] を見たポセイドンは、まんまと勝負に乗ってきた。
 己のハンドが [ K ] であることも知らずに。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

    (#'A`) 「レイズ、8枚!
         オ ー ル イ ン だ !」

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 ショーダウンの際の保険として、
 俺はチップをボックスごと持ち、テーブル端の台札 [ B-K ] を隠していた。

 台札はしぃちゃんの位置からは見えづらいことも、
 そもそも彼女が台札をほとんど見ていないことも、わかっていたからな。

 チップを持ちながらのプレイングを、ポセイドンが咎めることはなかった。
 11セット目で確認済みだ。
.

867 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:35:04 ID:BRQmFMAo0
.
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


   (#'A`) 『  受  け  取  れ  え  ぇ  ぇ  ぇ  ッ  !  !』


  〜 〜 〜


  (,,-Д-) (……いまだ!)

  川 ゚ -゚) (うっし)

  (; `ω´) (お!)


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 台札 [ B-K ] は、転送してもらったカードだ。
 つまり “ アクティブ ” 。 再転送の待機状態ともいえる。
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868 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:35:47 ID:BRQmFMAo0
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 俺の合図で、[ B-K ] は 舞台から消え去り。
 台札には、上向きの [ Q ] が残る。

 入れ替わりにテーブル下へ出現する水の球。
 手探りでそれを見つけ、ロッカーを浸け込めば、準備はOK。
 能力が戻る瞬間は感覚でわかった。

 あとは錯乱したポセイドンが、
 俺の手札か、山札に手を伸ばす一瞬をつかまえるだけだ。
.

869 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:37:18 ID:BRQmFMAo0
.

==
===


 これが、俺の仕掛けた作戦の全容であり。


(*^ー^) 「さ、て、とっ」


 戦利品は、目の前に咲いた満面の笑顔。
 その輝かしさといったらもう。
 ポセイドンが顔面蒼白で後ずさってゆくほどだ。


(*:::ー゚) 「覚悟、できてるん……」


 しぃちゃんはそう言いつつ、スカートの中に両手を差し入れる。
 布地が持ち上がり、白い脚がめいっぱい露出したが。
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870 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:38:04 ID:BRQmFMAo0
.
(*:::∀゚) + 「だ──よ──なァ───?」


 そこから謎の光モノが現れた途端、ポセイドンは尻餅をつく。、
 つーはそれ──小さな携帯用爪切りを、
 顔の横でかちんかちんと鳴らしてみせた。


(;l|l-[ ]3[ ]) 「う、うわあぁぁぁあぁぁ!!」


 ポセイドンは狼狽しながら一目散にドアに向かい。
 そこから勢いよく飛び出していった。


(;'A`) (どーやってボディチェックを掻い潜ったんだ。
     つーかいったいどこにそんなモノを……)

(*゚∀゚) 「ヒミチュ」


 心を読まれた。 ジャッジにまで。

 つーは小さく目配せする。
 頷き合うと、俺たちはそれぞれのドアへダッシュした。


 〜 〜 〜
.

871 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:45:27 ID:BRQmFMAo0
.
(l|l-[]3[]) 「何やってるんだお前らぁッ!!
       中の様子はわかってただろーが!?」

('A`) 「!」


 外へ出るや、ポセイドンが鼻息荒く
 黒服に食ってかかるシーンが目に飛び込んできた。


:::(l|l-[]3[])::: 「なのに! なぜっ!
         ぼ、ぼぼ僕のことを助けに来ないッ!?」


 俺もその点は疑問だった。
 ルーム内で異常事態が起きれば、
 すぐさま黒服たちが飛び込んでくるもんだと思っていたから。
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872 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:46:13 ID:BRQmFMAo0
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 ルーム内には音響設備があり、中の様子は “ 中継 ” されていたはずだ。
 ボリュームに難があるのはわかっていたので、
 合図を送るため、ギコに “ 聴いて ” もらってはいたが。

 イカサマ発覚後、ポセイドンがご大層な叫び声をあげたのは、二度や三度ではない。
 痛快だったが、いつ邪魔が入るかとヒヤヒヤしていたのもまた事実だ。


「そ、それが……」


 言いよどむ黒服の横から、ダイオードがしれっと答える。


/ ゚、。 / 「スズキが止めさせたケド。
       この状況で、ルーム内の様子を実況する必要なんてないケド」

     て
(l|l-[]3[])そ 「はぁあ!? お前ッ!
         中で僕の身に何かあったらどう責任‘@6:・。、/*^−p」

/ ゚、。 / 「あくまでイカサマ防止のため、だケド?
       ま、どーゆー結果になったかくらい想像はつくケド……」
.
874 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:48:22 ID:BRQmFMAo0
.
(l|l-[]3[]) 「ふっ、ふざっ、ふざけるなあああぁあぁ!!
       怠慢だッ! 護衛失格!
       おい、タムラッ!!」

爪;゚〜゚)】 そ 「あ、坊ちゃん……へへへ」


 眉間に皺を寄せ、携帯を耳にあてていたタムラ。
 ポセイドンの視線に気づくと、あわててそれを閉じた。


(l|l-[]3[]) 「聞いてるのか!? おい! まさかお前も裏切ったのかああ!?」

爪;゚〜゚) 「なーに言ってんスか! 俺ぁいつでも坊ちゃんの味方ですぜ!」

(l|l-[]3[]) 「じゃあなんで能力で僕を助け@6:・。、/*^−!!」


 発狂するポセイドンの肩を、ポン、とダイオードが叩き。


/ ゚、。 / 「せーせーどーどー、な?」


 油を注いだ。

.

875 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:01:04 ID:BRQmFMAo0
.
((#l|l-[ ] 3[ ])) 「うるせぇぇぁあぁあ!! な、なにが正々堂々だああ!
            あいつらっ! いいいイカサマしやがったんだぞ!
            ハイドロキネシスト! や、ヤツが! ののの能力でッ!!」

 (( 川 ゚ -゚) )) ピクッ


/ ゚、。 / 「……ま、なんかコソコソしてるのはわかってたケド」

(l|l-[]3[]) 「バカか! バカ! お前らの目は節穴かぁあ!?!」

/ ゚、。 / 「ごしじんは、このじょーきょーを承知で、勝負の舞台に戻った。
       つまり」


 ダイオードの視線を受け、ブーン達が一歩前に躍り出る。


( ^ω^) 「見抜けなかったほうにも」


(,,゚Д゚) 「責任がある」


( ´_ゝ`) 「ケド!」


 ポセイドンの雄たけびは、もはや言語といえない何かになっていた。
.

876 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:01:52 ID:BRQmFMAo0
.
『 ───さて、コントはそのくらいにしておこうか 』


爪;゚〜゚)】 そ


 肉団子の発する雑音を切り裂くように。
 冷たい、透き通るような声が駆け抜ける。

 ふたたび携帯をいじっていたタムラの目が、驚きに見開かれた。

 そりゃそうだ。
 もうみんなの能力は解放されているんだから。
 ロッカーなんて、ただのブレスレットに成り下がってるんだから。


川д川 「!」

( ^ω^) 「!!」


 俺としぃちゃん(今は多分つー)が無事にドアから出てきた時点で。
 ゴングは鳴らされていたらしい。
.

877 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:03:16 ID:BRQmFMAo0
.
 つーが飛びかかるより早く。
 黒服たちが身構えるより早く。


/ ゚、。 / 「!」

爪;゚〜゚) 「なっ!?」


 割れた窓から飛び込んできた、水の大蛇が。
 飛び上がって駆け出す、ポセイドンの背を追っていた。

     て
(l|l-[]3[])そ 「ひいいぃぃいいいぃいっ!!」


川::::::-゚)


 ギャンブル ・ ルームを積んだトレーラーを周回すると、
 ポセイドンは、倉庫の外へ向かって一目散に走る。

 巨大なチューイングガムさながら延びていた水の触手は。
 トレーラーの助手席付近でいったん収縮し、
 反動をつけて、ふたたびポセイドンのほうへ延びる。
.

878 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:04:20 ID:BRQmFMAo0
.
 三 (((l|l;-[]3[]))) 「お前らあぁぁあぁっ!?
              こ、このハイドロキネシストをなんとかしろッ!!」

  _,
川 ゚ -゚) 「──また、そう呼んだな」


 長い黒髪をさっと撫でつけ、クーは床を蹴った。

 遮ろうとする黒服の行く手を、さらに “ 感染者 ” が阻む。
 黒服たちが一様にたじろいだ。
 触れれば一発アウトなのは、やつらもよーくわかっているみたいだ。


川 ゚ -゚) 「あのクソ女も私のことをそう呼んでいたな。
      まったく、誤解してもらっちゃ困る」


 ポセイドンを追う者はいなかった。
 ただ一人、レザースーツの女を除いては。
.

879 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:05:37 ID:BRQmFMAo0
.
川 ゚ -゚) 「私は “ ハイドロキネシストでは、ない ”」

                 て
      三 (((l|l;-[]3[]))) そ 「うがっ!?」


 疾走も空しく、触手の先端がポセイドンの首根っこを捕らえた。
 送り込まれる水量は半端なかった。


(;'A`) 「!」

(*゚∀゚) 「!」


 それもそのはず、水蛇の片方は倉庫の正面──海へと繋がっていた。
 もがくポセイドンの体は、襟首から持ち上がってゆく。


川 ゚ -゚) 「ハイドロ、はいどろ、どーろどろ……。
     んな野暮ったいネーミング、私は一度もした覚えがない。
     名乗った覚えもない」

 (((l|l;-[ ]3[ ])) 「うわあああああ! は、離せっ!!」


 黒光りする水は、生き物のようにうねり、奇妙に形を変えてゆく。
.

880 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:07:27 ID:BRQmFMAo0
.
 つーを追って俺がシャッターを越えたときには、
 一つの巨大なオブジェが完成しようとしていた。

 首をおさえ、足をばたばた振って暴れるポセイドン。
 ヤツをつらまえた水の触手は伸びに伸び、とうとう海上へ。
 海面より十数メートル。  巨体がぶらり、中空に晒される。

 たとえるならば、水の絞首台。

 ふいにその幹から、枝のように分かれた水の触手が一本、クーのもとへ伸びた。
 彼女は投げ出されたロープを掴むように、その先端をキャッチする。


(゚- ゚ 川 彡


 そしてやにわに振り返り。


(゚- ゚ 川 「 【 アクアキネシス 】 」


 片ひざをつき、肩越しに水の縄を引いた。
 昔の時代劇に出てきた殺し屋のポーズだ。
.

881 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:08:45 ID:BRQmFMAo0
.

( - ::::川 「 アクアキネシスの、クー様だ」


 一言呟いて。
 縄の先端を、ぴん、とはじく。


『 私のことは、そう呼べ 』


 瞬間。

 全ての水が力を失い、崩れ散った。


.

882 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:09:55 ID:BRQmFMAo0
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『 う わ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! 』



 漆黒の海面に、ひとつの巨大な水柱があがった。




 ======== 【 STAGE 12 RESULT 】 ========

    Up Card : [ Q ]

            ('A`) :          (-[]3[]) : -40 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st                  BET  5
           RAISE  8
    ..2nd                  RAISE 10 (×4)
            CALL
    Final

    Ante        0              0 (3)

   Hands       [ A ]            [ K ]


       The game is over !!        Winner : ('A`)

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883 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:11:23 ID:BRQmFMAo0
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川 ゚ -゚) 「……ふん」


 立ち上がって髪を後ろに流すクーの輪郭は、
 月明かりに淡くにじみ、一種の怪しい美しさがあった。
 水浸しの地面を歩み寄り、俺は彼女に感謝の言葉をかけた。


('A`) 「ありがとな。 アンタが来てくれなきゃ、俺は負けてた」

川 ゚ -゚) 「そう思うなら、まずは私に有り金全部……」

(*゚ー゚) 「ありがとうございました!」


 つー……いや、しぃちゃんが、ちょこんと頭を下げる。


川 ゚ -゚) 「……ま、礼には及ばん。 大した仕事じゃなかった」

('A`) (なにこの扱いの差……)
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884 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:12:43 ID:BRQmFMAo0
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 いつの間にやら横にいたギコが、こめかみを掻きながら言う。


(,,゚Д゚) 「ぶっちゃけ、あいつらの監視もザルだったからな」

( ´_ゝ`) 「黒服たちは、“ 感染 ” しないよう必死で、
       ろくに俺たちのほうを見てなかったし」

( ^ω^) 「タムラってヤツも、気にしてるのは自分の携帯ばっかだったお」

('A`) 「そっか」


 夜の埠頭に、助けを求める醜い悲鳴と、水音が響く。
 寒波は去ったとはいえ、季節は冬、12月。


(*゚ー゚) 「水、冷たそうですね」

('A`) 「……さぞかしいいダイエットになるだろうよ」  ♪ ♪


 脳内でGet Wildのイントロが流れてきた。

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885 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:19:46 ID:BRQmFMAo0
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川д川 「……でも」

('A`) 「え?」

川д川 「……背の高い人……ずっと……見てた。 内藤くんを……」

( ^ω^) 「……たぶん、気づいてたけど何も言わなかったんじゃないかお」

('A`) 「……」

           ♪
('A`) (……鈴木ダイオード。             ♪
    よくわかんないが、そこまで悪いヤツじゃないのかも)  ♪
  ♪

 そんなことを考えてしまう。
 ふっ。 俺もヤキが回ったかな。


('A`) (♪アスファルト タイy)


『 きゃぁあ─────ッはっはっはァ─────ッ!! 』


ミ(;'A`) 「!?」


 けたたましいクラクションが、それをかき消した。
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886 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:21:59 ID:BRQmFMAo0
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ノリ, #)ー^)li 「オラオラぁぁあぁあ──ッ! 轢ッッッきコロスわよ───ッ!」


 そりゃそーだ。
 まだぜんっぜん終わっちゃいねえ。

 数軒先の倉庫の角から突如現れたスポーツセダン。
 車種はわからないが、よくわからないものは全部スカイラインにしておこう。

 スカイラインはドリフトで旋回し、
 方向転換すると、一直線にこちらへ向かってくる。


(,,;゚Д゚) 「! あいつ!」

川 ゚ -゚) 「もうお目覚めか。 タフな小娘が」


 助手席から半身を乗り出す女に、ギコとクーは見覚えがあるらしい。
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887 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:25:51 ID:BRQmFMAo0
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ノリ, #)ー^)li 「迎えにきたわよ────! クライド─────んッ!」


爪*゚〜゚) 「ボニぃいいー! こっちだッ!」


 タムラが倉庫の入り口から声を張り上げる。
 連絡してた相手はあいつか。

 黒服の運転する車は、あっという間に倉庫へと迫った。
 ギコ達がダッシュしたが、間に合いそうにない。

 大仰に手を差し出す白スーツの女。
 芝居じみた動きで、それに応えるタムラ。

 女を乗せたスカイラインは、愛しのロミオの眼前に来ると、


   ≡≡≡≡≡ ノリ, #)ー^)li
   三三三三三三三三 ∪
                    ⊂二(〜゚ 川爪


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888 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:27:08 ID:BRQmFMAo0
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                             ≡≡≡≡≡ ノリ, #)ー^)li
                             三三三三三三三三 ∪
                    ⊂二(〜゚ 川爪




     (〜゚ 川爪 「「 あ 」」 ノリ, #)ー^)li



 止まることなく、港湾バースを駆け抜ける。
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ノリ,;#)ー^)li 「くそバカッ! 何やってんだよ!!」

「ぐえ!?」


 タムラのオンナらしき女が、運転席の黒服の首を絞め上げ。
 甲高いブレーキ音をけたてて、スカイラインは方向を変える。
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889 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:29:28 ID:BRQmFMAo0
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 だがその転回した先には、


 川:::::-゚) オ オ オ オ オ オ


 赤いポリタンクから、そして海面方向から。
 二つの尾を持つ水の大蛇が、宙でとぐろを巻いて待ち構えていた。


 ノリ,;#)ー^)li ・ ・ ・


 スカイラインはさらに向きを変え、


ノリ,;#)ー^)li∩ 「だ────り─────んッ! あとでまた連絡してね────ッ!」


 そのまま沿岸コーナーを曲がり、走り去ってゆく。


 l|i   て 
爪; 〜 ) そ 「そりゃないぜハニぃいぃいぃぃいいいい!!」


 タムラの絶叫が、マフラーの爆音と重なった。
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890 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:30:54 ID:BRQmFMAo0
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川 ゚ -゚) 「ちっ……」


 いち早く動き出したのはクーだった。
 彼女の舌打ちと同時に、水の大蛇は崩壊し、ばしゃばしゃと地面を濡らしてゆく。
 俺たちは慌ててそれをかわす。

 彼女の向かう先には一台のバイクが停めてあった。
 車もそうだが、バイクの知識もないから描写できない。 調べるのも面倒くさい。
 なんかデカくてスマートでかっこええバイクだ。

 息をつく間もなく、クーはそいつにひらりと跨って、言った。


川 ゚ -゚) 「私はヤツを追う。 さぁ!」


 引っ掛けてあったジャケットと、フルフェイスを投げ放ち。
 もう一つ別のハーフヘルメットを被りながら、クーは顎で指図する。


(*゚−゚) 「!」
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891 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:32:22 ID:BRQmFMAo0
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川 ゚ -゚) 「乗れ。 早く!」

(;*゚ο゚) 「は、はい!」


 メットをキャッチすると、しぃちゃんはあたふたとシャッター脇へ駆け寄った。


(,,;゚Д゚) 「待ってくれ! 俺も……!」

川 ゚ -゚) 「定員オーバーだ。 お前はそっちのヤツらと遊んでろ」


 それだけ告げて、クーはバイクは急発進させる。
 あとには空のポリタンクだけが残された。

    て
(,,;゚Д゚) そ 「くそっ! ……ん?」


 『 ──ピーッ ピーッ 』


('A`;)彡 「!?」


 のんびりその背を見送る時間はなかった。
 後方から聞こえた奇妙な音に、残された全員が反応する。
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892 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:40:10 ID:BRQmFMAo0
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 『 ──バックします♪  ピーッ  ピーッ バックします♪── 』


 倉庫内に戻ると、発信源はすぐにわかった。


    て
(,,;゚Д゚) そ 「ああっ!?」


 さっきまで俺たちが戦っていた、ギャンブル ・ ルーム。
 そいつを積んだトレーラーが、バックランプを点灯させており。


(;'A`) 「あいつ──角刈り野郎!」


 いつの間に縄を解かれのか、
 透視能力者の黒服が、運転席でハンドルにかじりついている。

 タムラはそちらに駆け寄ると、開いていた助手席側に飛び乗った。


爪;゚〜゚) 「よーしよし! ナイスだぜぇ滝沢ちゃんよォッ!」
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893 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:41:37 ID:BRQmFMAo0
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(,,#゚Д゚) 「うおおおおおおらああああッ!!」


 飛びつくギコを撥ね付けるべく、タムラは勢いよくドアを閉じる。


爪 ゚〜゚) 「わっはははははは!
      悪いなギコ太! こいつは二人用でなー!」

「くっ、頭が……」

爪;゚〜゚) 「わー! よく見て運転しろバカ!」


 トレーラーは尻を振りながら後退する。
 簡易テーブルが、ダンボールが、次々に跳ね飛ばされる。


つ<;,,>Д<) 「うわっ!?」.

(; ´_ゝ`)つ 「ばか、無茶すんな!」


 なおもコンテナに飛び掛ろうとしていたギコ。
 オサムが彼の袖を引っぱった。
 蛇行する鉄の塊が、ギコの鼻先を滑走した。
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894 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:44:15 ID:BRQmFMAo0
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 ギコはバタバタと手足を動かすが、
 見えない壁に遮られるがごとく、前進できずにいる。
 オサムが能力で抑え付けているのだろう。

 入り口付近の積み荷を次々崩しながら、
 タムラ達の乗るトレーラーはとうとう、倉庫からその巨体を脱し。

       ,☆
爪 ゚〜゚) l|凸|l 「あばよ!」


 昔風の捨て台詞を残して、港湾入り口方向へ加速していった。


(,,#゚Д゚) 「離せっ! 離せぇっ! ちっくしょおおおおおお!」

(; ´_ゝ`) 「落ち着けって! お前の怒りはわかるけど……」

( ´_ゝ`)+ 「去る者は追わず、だ」

(,,#>Д<) 「違うッ! あいつ今、持ってた! とーちゃんの形見を!」

     て
(; ´_ゝ`) そ 「え? あ、マジ?」


 能力による拘束は解かれたらしい。
 制止を振り切ったギコは、勢いよくグリーンの床を蹴る。
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895 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:47:54 ID:BRQmFMAo0
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     三 (,,#゚Д゚) 「追うぞブーン! ぜってェ取り返してやる!」

   三 (; ^ω^) 「お、おおおおー!」

 三 川;д川 「内藤くん……待って……!」


 高校生三人は揃って走り出した。

 サダコちゃんが倉庫を出て行った途端、
 感染した黒服たちが、どさ、どさ、とその場に倒れる。

 残った黒服もすでに散り散りとなっていた。
 ポセイドンの救出に向かったのだろう。


(;'A`) 「兄者、俺たちも────」 シュッ


 そう言いかけた俺の眼前を、何かが駆け抜けた。


(;゚A゚) 「!?」
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896 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:55:11 ID:BRQmFMAo0
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 直後。
 破裂音に振り返る。

 見ればそこには、火花を撒き散らすスチールラックがあり。
 その隣──ダンボール箱がひとつ、中空に跳ね上がっている。


(;'A`)と 「うわっ!?」


 間一髪、飛びのいて難を逃れる。
 資材はゆるい放物線を描くと、俺の前方へ落下し、ぐしゃりと潰れた。


( ´_ゝ`) 「何だ……何を投げた?」


 オサムはすかさずそちらへ手をかざす。
 ダンボールの側面に刺さっていた一枚の紙片が、ぐらぐら動き。
 宙へ浮かび上がった。
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897 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:59:46 ID:BRQmFMAo0
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( ゚"_ゞ゚) 「同時に3つか! やりおるなッ!」


 続けざま、ラックの足元から、後方の壁から。
 茶色い長方形が、次々と浮かび上がってくる。
 三枚の紙片は漂いながら、やがてオサムのほうへ集合し、


(;'A`) 「! これ……!」

( ´_ゞ`) 「マツ、キリ、ボンズってか」


 ぽとぽとと落下した。

 俺たちは二人同時に、
 長方形が発射された方向、倉庫の奥へと向き直った。

 現れる人影。
 まさに自分の所作だと強調したいのか、
 今しがた投擲した “ それ ” を、わざとらしく前方へかざして見せる。
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898 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 23:00:39 ID:BRQmFMAo0
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/ ゚、。 / 「さ───て、待ち望んだばとぅーだケド。 楽しみだケド」


 五指に挟むは、とりどりの 【 花札 】 。
 扇状に広げ、雅やかな構えをとる。


 札同士を橋渡しするように、閃光一筋、ほとばしり。


 その横顔を、青白く照らした。



(続く)
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