516 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:46:25 ID:Wbtxos..0
.
 不可解な光景だった。

 音は俺たちから見てJZ(ジャッジメントゾーン)方向より聞こえてきた。
 現にしいちゃんも、自分のいるエリアの壁に向かって、不安そうな顔を向けている。

 だがポセイドンは、
 音が聞こえたのと逆、ドア側へと視線を向けているのだ。


(::::::A ) (そちらの壁の向こうには───)


(; ゚A゚) 「!!」


 しかしそこで。
 思考を遮る、男の叫び声。


(;'A`) (ブーン、まさか!?)


 不安が胸を包む。

 ルーム外で、何かが起こっている。
.
520 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:48:54 ID:Wbtxos..0
.
 不可解な光景だった。

 音は俺たちから見てJZ(ジャッジメントゾーン)方向より聞こえてきた。
 現にしぃちゃんも、自分のいるエリアの壁に向かって、不安そうな顔を向けている。

 だがポセイドンは、
 音が聞こえたのと逆、ドア側へと視線を向けているのだ。


(::::::A ) (そちらの壁の向こうには───)


(; ゚A゚) 「!!」


 しかしそこで。
 思考を遮る、男の叫び声。


(;'A`) (ブーン、まさか!?)


 不安が胸を包む。

 ルーム外で、何かが起こっている。
.

521 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:49:53 ID:Wbtxos..0
.
 〜 〜 〜


「うわああああ!」


 悲鳴が轟いた。

 声の主は黒服の一人だ。
 ドレッドの頭髪をかきむしるように、両手で頭を抱え込む。

 隣にもう一人の黒服。
 血走った目を落ち着きなくぎょろぎょろ動かしている。
 そのうち口の端から泡までこぼれ出した。


 二人は何かにおびえるように身体を竦ませる。
 続けざま、絶望の不協和音が倉庫内に木霊した。

 男たちの狂態は、
 衆目の喉から言葉を奪うに十分たるものだった。
.

522 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:53:08 ID:Wbtxos..0
.
「な、何をした、貴様ァ!」


 我に返ったのだろう、別の黒服が恫喝した。
 視線の集中する先。
 苦悶にあえぐ黒スーツ達の、中心に立つ人物へ。


『 手を出したのは……そっち 』


 割れた窓──割ったのはオサムだが──をバックに、
 “ 彼女 ” は泰然と振り向く。


川:::::::::川


 吹き込む風を受け、ゆらり揺らめく影ひとつ。
 柳のように枝垂れるは、月光やどす、絹の黒髪。
.
525 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:55:21 ID:Wbtxos..0
.
川д川 「……内藤……くん」


 周囲と同じく、目を丸くして見守る同級生へ。
 長い髪の少女は静かに呼びかけた。


(; ^ω^) 「サダちゃん! どうしてここにいるお!?」


 ブーンの問いに、井戸中サダコはマイペースに答える。


川д川 「私……つけて……きた」

(; ^ω^) 「つけて? え? 僕たちを?」

川д川 「詳しいことは……あとで。
      ただ……一つ、言っておかなきゃならないことが……」

(; ^ω^) 「な、何だお!?」

川д川 「……内藤くん。 ごめんなさい」 


 ── 『 あなたを助けたい 』
 ── 『 ひどい事をする、周りの奴らが許せない 』

 ── そう考えていたら、ね?
.

526 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:57:31 ID:Wbtxos..0
.                            パ ラ ノ イ ド
川∀川 「……戻っちゃった……みたい。 “ わたしの超能力 ” 」


 前髪の隙間より、面妖なる笑みが覗き。

 彼女に触れてしまった黒服たち──。
 精神汚染の犠牲者の絶叫が、月光の下、重なった。 


爪;゚〜゚) 「くそが! だから簡単に近づくなって……!」


 タムラが苦々しげに吐き捨てる。
 退屈な見張り業務だったはずが、
 闖入者の出現によって、事態は一転、二転。


/ ゚、。 / 「そっちもいいケド。 あれ」


 ダイオードはそう告げて、入口側を顎で示した。
 黒服よりプレートを受け取り、手首のバンドに通す。
 緑のランプが赤く変化する。

 シャッターはすでに上がりきっていた。
 それは、コンテナ内のカード勝負を外で待っていた彼らにとって、
 あまりに急で、不可解な出来事だったのだ。
.

527 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:00:13 ID:Wbtxos..0
.
 いきなり上がり始めた倉庫の入口シャッター……。
 半分ほど開いたそこから現れたのは間違いなくサダコで、
 黒服たちの狂態も彼女が引き起こしたものだ。

 だが。

 壁の配電盤に取り付き、
 開閉スイッチを押し下げたのは、彼女ではない。


「な、なんだ!?」


 初めにその存在に気付いたのは、金髪の黒服だった。
 壁から落ちたボール状の “ それ ” は、
 いちど地面で跳ねると、勢いよく彼のもとへ飛来する。


「もッ!? もがが!?」


 巨大なあぶくのような、水の球体。
 わずかに飛沫をあげながら、金髪の顔面へダイレクトヒット。
 透明のデスマスクとなって貼りつく。


/ ゚、。 / 「ねずみ出現だケド」

爪;゚〜゚) 「かーっ! もう一匹かよ!」
.

528 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:02:23 ID:Wbtxos..0
.
 割れた窓から、さらに二つの水球が飛び込んでくる。

 反対側の壁でバウンドしたそれは、
 物理法則を無視した動きで高く飛び上がり、
 入口サイドの天井蛍光灯へ突っ込んだ。

 けたたましい破砕音が続き。
 顔を、頭を覆う黒服たち。
 降り注ぐガラスの雨。

 その、奥に。


(  ゚ω゚) 「! あれは……!?」


 空間が凍り付く。

 薄闇へ浮かび上がるシルエットに、全員が息を飲んだ。


『 ! ! 』


 倉庫入口。
 黒塗りのキャンバスに描かれし人物は。
.

529 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:03:50 ID:Wbtxos..0
.
 切れ長の目。

 凛と結ばれた唇。


 そして、
 闇夜に靡く、射干玉(ぬばたま)の黒髪。


           川::::::::::)


 夜の港湾、街路灯のぼやけた光を背にして。
 ライダースーツに身を包んだ、一人の女が佇んでいる。



           川::::::- )



 夜風に沿って流れる、豊かなロングヘアーが。
 締まったボディラインを包むレザーのジャケットが。
 艶やかな光沢を放ち。
.

530 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:06:56 ID:Wbtxos..0
.

           川::::::-゚)



 女は挑発的に、つい、と顎を上げる。
 小脇のフルフェイス ・ メットを抱え直すようにして。


 爪;゚〜゚)

 / ゚、。 /


 そして、逆の手には───。


 (; ^ω^)

 川д川



 川 ゚ -゚)  チーン


 極太マジックで “ くーちゃんの ” と書かれた、
 赤いポリタンクを持って。
.
534 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:10:56 ID:Wbtxos..0
.
 〜 〜 〜


ノリ, ^ー^)li 「───誰?」


 薄暗い室内に、女の声が響いた。
 返答はない。
 代わりに、こつ、こつと、遠慮知らずなブーツの音が近づいてきた。


川 ゚ -゚)ノ 「よっ」

ノリ, ^ー^)li 「……なによその馴れ馴れしさ。 ムカつくわね」


 十数分前のことだ。

 ドクオ達がゲームをおこなっている第三倉庫。
 そこから南方へ数軒分隔てたところにある、別の倉庫でそれは起きた。
.

535 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:13:50 ID:Wbtxos..0
.
ノリ, ^ー^)li 「いちおう言っとくけど、関係者以外立ち入り禁……」

川 ゚ -゚) 「ふーん。 で?」
   _,
ノリ,#^ー^)li 「……チッ」


 ここ第六倉庫の見張り番である島野ジャンヌの前に現れたのは、
 全身黒づくめの女だった。

 ポセイドンの手下──黒服の一人かと最初は思った。
 だが、スーツの種類が異なる上、謎の赤いポリタンクを右手に持っている。

 ガソリンか。 まさか、撒くつもりなのか。
 猜疑心と嫌悪感が同時に芽生え、ジャンヌは叫んでいた。


ノリ, ^ー^)li 「ちょっとお! 誰か! 侵入者……っ!」

川 ゚ -゚) 「他の奴らは全員おねんねタイムだ。
      それは幸せな夢を見ていることだろう。
      眠る直前に、今世紀最高美女の御尊顔を目に焼き付けたのだから」

ノリ, ^ー^)li 「はぁ───!?
        使えないヤツらだねー……っとに!」
.

536 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:16:44 ID:Wbtxos..0
.
 入口からそのまま広い室内へ続く第三倉庫とは違って、
 こちらは、二つの倉庫が廊下を中継するつくりになっている。

 第六倉庫の別棟──このフロアへ辿り着くためには、
 黒服三人が見張っている、入り口側の本館棟を通過してこないとならない。


ノリ, ^ー^)li 「ねらーだよね、アンタ? あいつらの仲間?」


 ジャンヌは心底退屈していた。
 ガキをさらって、人を集めてお膳立てして。
 さあこれからどんなパーティがはじまるの!
 ……そう一人テンションを上げていたというのに。

 彼女に割り振られた仕事は、拉致した高校生の見張り番。
 それも、別の倉庫でただぶらぶら待つというだけ。

 ガキは 『 ねらー 』 には違いないが、
 超能力は当然のごとく封じられており、眠っているので話し相手にもならない。
.

537 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:18:10 ID:Wbtxos..0
.
ノリ, ^ー^)li 「ね、そうなんでしょ?
        お仲間さん、冴えない男ばーっかよね〜〜〜」

川 ゚ -゚) 「……」


 そんな折に現れた、一人の女。
 正義の味方気取りか。
 ジャンヌは内心ほくそ笑んだ。

 本館棟には黒服三人が配備されていた。
 彼らを撃破してきたという、ライダースーツの 『 ちゃねらー 』 。
 ポリタンクの重さを苦にする様子もなく、悠然とたたずんでいる。

 こいつはきっと、私の退屈を埋めてくれる存在だ。
 有り難いと思った。  が、それは彼女に対する感謝ではなかった。


ノリ, ^ー^)li 「なーんか言いなさいよぉ」


 ああ、ようやく好き放題暴れられる。
 侵入者 ─── それもいけ好かないクソ女を、
 能力でボコボコにしてやれる。


川 ゚ -゚) 「だったらなんだ? 自己紹介すれば金でもくれるのか?」

ノリ,#^ー^)li 「だーれが! ばっかじゃないの!」
.
539 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:19:38 ID:Wbtxos..0
.
川 ゚ -゚) 「ま、見るからに金無さそうだからなぁ〜〜。
      だからそんなだっせぇスーツなんだ?
      センスの欠片もねえ貧乏小娘が」


  ノリ, ^ー^)li ピクッ


ノリ, ^ー^)li 「……その減らず口、今すぐにでも利けなくしてやるわよ?
        崩れたツラをさらにぐちゃぐちゃにされたいのかしらねえ。
        ファンデも乗らねえクソババアが」


   川 ゚ -゚) ピクッ



     ノリ,#^ー^)li  「「 …… コ ロ ス  」」  (゚- ゚#川



 どちらともなく近づき、間合いをはかる。
 もはや会話は不要だった。
 暫時ののち、二つの影は一斉に駆けだした。

 白いレディススーツと、黒いライダースーツ。
 二人の女が繰り出すハイキック ・ シルエットが。
 薄暗い庫内に、しなやかなクロスを描き。

 それが戦いの合図となった。


 ──
.

540 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:24:03 ID:Wbtxos..0
.
●第三伍話 『 Red JOKER × Blue JOKER ── VS. ジャンヌ 』


ノリ, ^ー^)li 「シッ!」


 膝の衝撃を反動に、両者後方へ飛びすさる。

 初撃は威嚇のつもりだった。
 互いに頭部を狙うわけなので、
 普通はハイキック同士が交差することはない。


ノリ, ^ー^)li 「なかなかやりそうだね、アンタ!」

川 ゚ -゚) 「お前よりはな」

ノリ, ^ー^)li 「きゃははは! 楽しめそうじゃん!」

川 ゚ -゚) 「私は全く楽しくない」


 ちなみにこのレスから、
 主となる視点人物がライダースーツの女に移る。
.

541 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:25:50 ID:Wbtxos..0
.
 漆黒の侵入者─── クーは右手を水平に薙ぐ。
 傍らのポリタンクが小さく揺れ、
 口からぐにゃぐにゃうごめく “ 何か ” が飛び出した。

  _,   そ     ハ イ ド ロ キ ネ シ ス ト
ノリ;^ー^)li て 「 “ 流体操作系念動力者 ” !?」


 小刻みなステップを繰り返していたジャンヌだったが、
 そこで足を止める。

 放たれた水の大蛇。
 うねりながら飛来するそれを、彼女は避けるでもなく、真正面から迎え撃つ。


川 ゚ -゚) (終わったな)

ノリ, ^ー^)li 「うっと─────しぃわね!!」


 次の瞬間、彼女は袖口からタクトのようなものを取り出した。
 ナイフを構えるがごとく逆手に持ち、軽く腰を落とすと、
 大蛇めがけて駆ける。


ノリ, ^ー^)li 「らああぁぁぁああぁぁ────ッ!!」

川 ゚ -゚) 「!?」
.

542 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:26:51 ID:Wbtxos..0
.
 クーは驚愕に目を見開いた。              ハイドラ
 すぐにしなって、相手の胴を拘束するはずだった “ 水蛇 ” を。
 スーツの女が、 “ 切り裂きながら ” 走り迫ってくるのだ。


ノリ, ^ー^)li 「きゃははははは! そォら、覚悟し──」


 縦に割かれた水蛇は、
 ジャンヌの後方で白いしぶきと化し、散開。
 駆けよりざま、彼女はクーめがけてタクトを振りかぶった。


川 ゚ -゚) 「お疲れ。 チェックメイトだ」

ノリ, ^ー^)li 「!」


 が、その右手が届くことはない。
 彼女の先には、巨大な水のボールが待ちかまえていた。


ノリ#^ー^)li 「しゃらくせえッ!」


 ジャンヌは立ち止まり、脚を思い切り振り上げる。
.

543 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:27:39 ID:Wbtxos..0
.
Σ川 ゚ -゚) 「!?」


 パンプスのつま先が突き刺さった刹那。
 ボールは風船が割れるように破裂、爆散した。


川 ゚ -゚) 「ちっ……」

ノリ, ^ー^)li 「きゃはッ! ハイドロキネシストとは一度闘(や)りあったことあるからね!
        可能(でき)んのよ!  “ 散らす ” くらいはなァ!」
  _,
川 ゚ -゚) 「! 私はハイドロキネシ───」

ノリ, ^ー^)li 「ジャジャ〜〜〜ン! 油断禁物ぅ!」


 クーが何かを呟こうとしたときには、ジャンヌは既に側方へ。


ノリ, ^ー^)li 「<< メ ル テ ィ >>────」


 空気を掻くように右手を払う。
 すると、その軌跡が青い光となって薄く宙に残った。

 幻惑的な光帯。
 クーが一瞬目を奪われた、途端。
.

544 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:29:20 ID:Wbtxos..0
.
ノリ, ^ー^)li 「<< バ ニ ラ >> ッッ!!」


Σ川 ゚ -゚) 「!?」


 ブルーの筋はまばゆい白に染まり。
 前方へ、光が扇状に放出された。


     て
川; - ) そ 「ぐあ!?」


 ステップが間に合わず、クーは仰け反る。
 とっさに両手でガードしたつもりだったが、
 熱線は肘を撫で、焦がし、鮮烈な痛みを脳に伝える。


ノリ, ^ー^)li 「こんがり焼いてやるからねェ!」


 体勢を整えつつ、クーは追撃用に備えていた水球を呼び戻す。
 燃える袖口を瞬時に消火するも、
 水球はしぶきとともに、かさを半分ほど減らした。
.
546 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:30:53 ID:Wbtxos..0
.
           パ イ ロ キ ネ シ ス ト
川;゚ -゚) 「貴様、“ 発火系念動力者 ”───」

ノリ, ^ー^)li 「<< クリスピーミント >>!!」


 死角より、連撃。
 腰を落とした彼女の袖口から、バーナーのように炎が噴き出す。


川 ゚ -゚) 「!!」


 回避不能。
 瞬時に悟ったクーは、せめて顔への直撃を避けるべく上体を反転させる。
 背中を焙られ、短い悲鳴をあげて前方へ転がった。

  _,
川; - ) 「ちっ!」


 抉られるような痛みの中。
 さらなる追撃を避けるべく、無我夢中で腕を振るう。

 動きに合わせ、水のボールが宙を滑走する。
 ジャンヌは急ブレーキでそれをやり過ごす。
.

547 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:33:23 ID:Wbtxos..0
.
 彼女の進行をくい止めることには成功したが、
 ボールの軌道は大きく外れ、後方の壁で破裂。
 直下の床を黒く濡らした。


ノリ, ^ー^)li 「きゃはははははっ!! いいザマぁ〜〜〜〜♪」

川;゚ -゚) 「……」
                                        
                            パ イ ロ キ ネ シ ス ト
 クーは顔を顰め、前方で高笑いをあげる 『 発火系念動力者 』 を睨みつける。
 息が荒い。 ダメージの差は明らかだった。

 彼女の様子に、ジャンヌは愉悦の色を深くした。
 タクトを人差し指でくるくる弄ぶと、


ノリ, ^ー^)li 「ほいさッ」


 顔の前で構え、ポーズを決める。


川 ゚ -゚) 「! それは……」
.

548 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:34:37 ID:Wbtxos..0
.
 クーは小さく息を呑んだ。
 黒いノズル、つやのあるグリップ。
 中心に引き金を模した点火スイッチ。

 得物の正体は、細長いライターだった。
 俗に言うチャッカマ……は商標登録された商品名なので、
 ここではユーティリティライターと呼称する。

 ジャンヌはそのノズル部分を持ち、警棒のように振るっていたのだった。


川 ゚ -゚) 「……間抜けな絵ヅラだな。 焼き芋でも始めるつもりか?」

ノリ, ^ー^)li 「へぇ〜〜? アンタ、イモだったんだぁ!」

川 ゚ -゚) 「……サーカスに戻れよ、白塗り腐れピエロ」

ノリ, ^ー^)li 「そっちこそぉ、じゃぶじゃぶ水遊びは終わったぁ?
        あいにくねェ……」


 少しづつ間合いを詰める白スーツの女。
 ジャキン、とでも音のしそうな勢いで、クーに銃口(ノズル)を向け。


         トリガー
  『 アタシの撃鉄に、チャイルド ・ ロックなんて無いよ! 』


 床を蹴る。
 同時に、袖からもう一本のチャッk……ユーティリティライターが飛びだした。
.

549 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:39:00 ID:Wbtxos..0
.
ノリ, ^ー^)li 「<< ブレイヴトルテ >>!!」


 ひときわ大きなモーション。
 フィギュアスケートさながらの三回転ジャンプ。
 着地の勢いに乗せ、体全体を捻りつつライターを振るう。

 二本の軌跡は青い筋となり、つむじを巻くように数メートル前方で集束。
 螺旋に編まれたブルーのオブジェから、
 熱を帯びた閃光が次々に撒き散らされる。

    _,
Σ川;゚ -゚) (かわせない!)


 広範囲攻撃。 想定以上だ。

 が、クーも対処を怠っていたわけではない。
 会話の最中、彼女はポリタンクから数リットルぶんの水を、
 足元へ呼び寄せていた。
.

550 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:41:16 ID:Wbtxos..0
.
 左手を強く引く。
 低空飛行していた水の塊へ、一挙に圧が加えられる。
 水は延び、裾を広げながら、地曳網のようにクーの手元へ飛来する。

    _,
Σノリ, ^ー^)li 「!」

川;゚ -゚) 「くっ!」


 間に合った。
 水のテーブルクロスが熱線を中和。

 攻撃を受け止めた部分が掻き消され。
 張力を欠いた水の幕はいびつに変形、剥がれ、こぼれ落ちた。


川 ゚ -゚) 「ぬ!?」


 同時に。
 脇に積まれた荷のひとつから、火の手があがった。
 流れ弾によるものだろう。
.

551 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:42:06 ID:Wbtxos..0
.
 揺らめく緋に照らされ、ジャンヌは高笑いをあげた。


ノリ, ^ー^)li 「きゃはははッ!! << クリスピーミント >>!!」


 両手を交差。
 二本のライターを新体操の棍棒のように回転させ、クーに迫る。
 掛け声を合図に、両のノズルから一文字に炎が噴き出した。


川 ゚ -゚) 「クレイジー……!」


 大道芸人か。
 嫌味を飛ばす余裕はなかった。
 ジャンヌの斬撃がそれ以上のスピードで迫っていたからだ。

 袈裟懸けに斬り下ろされる炎のサーベル。
 クーの目鼻の先で、楕円状の水のバリアに “ 消火 ” される。


ノリ, ^ー^)li 「!!」

川 ゚ -゚) 「無駄な足掻きだったな」
.

552 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:43:19 ID:Wbtxos..0
.
ノリ, ^ー^)li 「そうかしらァ?」

Σ川; -゚) 「うがッ!?」


 対処が一瞬遅れた。
 隙を突いて、ジャンヌのシャープなローキックが襲う。
 腿にクリーンヒット。 クーはたまらずバランスを崩す。


川;゚ -゚) 「!!」


 急いで顔を上げると。
 視界を覆うは、透き通ったターコイズブルー。
 薄く輝く、神秘的な残光。


川;゚ -゚) (マズい────!)

ノリ, ^ー^)li 「<< メルティバニラ >>!!」


 放射された熱線を転がり避ける。
 閃光が床をほとばしり、焦げ臭い煙が立ち上った。
.

553 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:45:35 ID:Wbtxos..0
.
ノリ, ^ー^)li 「もらったッ!!」


 仰向けになったクーの鳩尾目掛け、ジャンヌの肘鉄が打ち落とされた。

 が、クーはすでに、追撃回避の予備行動を済ませていた。
 彼女のジャケットのバックポケットには、ペットボトルがひとつ差してあった。
 そこから勢いよく水が飛び出し、後方の窓へ一直線に伸びてゆく。


ノリ, ^ー^)li 「!!」

川;゚ -゚) 「おおおおッ!」


 水はロープのように窓の格子へ巻きつき、彼女の体を引っ張った。
 必然的に床から跳ね上がり、攻撃を回避する形となる。


ノリ;^ー^)li 「やばッ……!」


 ジャンヌの肘鉄は床へ誤爆。
 苦しそうに顔を歪ませるも、すぐに立ち上がり、ステップで距離を取る。
.

554 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:47:59 ID:Wbtxos..0
.
ノリ;^ー^)li 「いっっっった〜〜〜! 何してくれんのよこいつ!」

川 ゚ -゚) 「自業自得ってヤツだな」

ノリ, ^ー^)li 「これほど他人に言われて腹の立つ言葉ってないわね」

川 ゚ -゚) 「腹をどうしようが勝手だが……」


 クーは周囲に視線を流す。
 息を荒げる二人の周囲では、すでに赤々とした炎が燃え広がっていた。


川 ゚ -゚) 「このままここで戦っていいのか?
      冬の寒空の下、炎に包まれ焼け落ちる倉庫───。
      悪くないシチュエーションだが」

ノリ, ^ー^)li 「あとからアンタの焼死体が発見されるわけね。
        ま、残念ながら無いわよそんなパターン」

川 ゚ -゚) 「ほう?」
.

555 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:49:05 ID:Wbtxos..0
.
 ジャンヌはぱちんと指を鳴らす。
 すると、右手側の炎が魔法のように掻き消えた。

 続けざま、おどけた調子の投げキッス。
 左手側の炎が力を失い、周囲は完全に鎮火。

 あとには黒焦げの段ボールの残骸。
 それから、鼻をつく煙の臭いだけが残った。


ノリ, ^ー^)li 「見てのとおり、私は私の炎をいつでも消せるし〜〜」

川 ゚ -゚) 「奇遇だな。 私もお前の炎を消せるぞ。 いつでもな」

ノリ,#^ー^)li 「言ってくれんじゃない……!」


 鉄格子から水のロープが離れ、ペットボトルへするする舞い戻る。
 クーはボトルを抱えなおすと、
 親指を口部分に突っ込み、中の水へ直接触れた。

 半分ほどの長さにはなったものの、
 そこには再び力を与えられ、しなる水のムチが完成していた。
.

556 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:50:20 ID:Wbtxos..0
.
川 ゚ -゚) 「知ってるか?
      ほのおタイプは、みずタイプにはぜってー勝てないんだぞ」

ノリ, ^ー^)li 「……何のハナシよ」

川 ゚ -゚) 「ゲーム」

ノリ, ^ー^)li 「きもっ! オタクなの、アンタ!」

川 ゚ -゚) 「お前の理解できるレベルに合わせてやったまでだ」

ノリ,#^ー^)li 「いちいちあっっっったまくる女ね!
        脳天から火柱おっ立ててやるわ! ローソクみたいにさあ!」


 ジャンヌはライターを突き出し激昂する。
 対するクーも、アクア ・ ウィップを前方に構え、挑発的にポーズを決める。


川 ゚ -゚) 「女王様にでもなるつもりか?」

ノリ,#^ー^)li 「アンタにだきゃぁ言われたくないわよ!」


 鞭先が床を跳ねた。
 クラック音の代わりに、ぱしゃんと涼しげな水音。

 地を蹴るジャンヌの靴音がそれに続く。
 戦闘再開を告げるホイッスルだった。
.
568 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:00:08 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ#^ー^)li 「<< クリスピー >>……」

川 ゚ -゚) (またそれか。 次は近づく直前に掻き消してやる)


 クーは手元に水球を呼び寄せ──変化。
 水の盾を左手に纏う。

 今から繰り出されるであろう攻撃は、バーナーのような強烈な炎。
 チャッカマ……ではなく、ユーティリティライターのノズルから噴出されるはず。

 必殺技ごっこなのか知らないが、叫ぶのは完全に逆効果だ。
 何が飛び出すかわかっていれば、対策を練る余裕はじゅうぶんある。

 ライトセーバーのような形状と威力には驚かされた。
 しかし、自分の水にそれを掻き消す力があることは実証済み。


ノリ, ^ー^)li 「<< ミ ン ト >>!!」


 細長い炎のサーベルが出現する。
 彼女の左手元に標準を合わせ、クーはウィップを打ち振るった。
.
570 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:02:27 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「!!」


 が、次の瞬間。


ノリ, ^ー^)li 「っっっしゃあッ!!」


 ジャンヌはそれを、投げた。


川;゚ -゚) 「なっ!?」


 タイミングを狂わされた。
 防ぐ体勢を取れない。
 完全に近接武器だと思い込んでいた。

 火の粉を散らしながら襲い来る火柱。
 勢いは衰えない。
 それは言わば、巨大な回転花火。

 オモチャ
 玩具との違いは、
 ちょっとの火傷じゃ済まないであろう、狂おしきその火力だ。
.

571 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:04:25 ID:OnAIv4bY0
.
川;゚ -゚) 「くっ!」


 上体を大きく曲げ、辛うじて回避に成功。
 それでもなお、ほんの少し掠めた肩の部分が、勢いよく燃え上がった。


川;゚皿゚) 「あづッ!?」

ノリ, ^ー^)li 「きゃ───ッはははははッ!!!」

Σ川;゚ -゚) 「!!」


 そしてジャンヌはすでに、クーの懐に飛び込んでいた。


ノリ, ^ー^)li 「ほらほらァ! 下がお留守よ〜〜〜!?」

Σ川l|l Д ) 「がッッッはァ!?」


 低い姿勢から半回転。
 裏拳のような体勢で、右手に握ったライターを繰り出す。
 固いグリップ部が無防備なクーのわき腹に突き刺さった。
.

572 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:06:06 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「<< メ ル テ ィ >>……!!」

川; - ) 「うぐおおおお!!」

ノリ, ^ー^)li 「<< バ ニ ラ >> !!」


  チャッkユーティリティライター
 魔 法 の ス テ ッ キは、青い光の弧を描く。
 続けて降り注ぐ灼熱の洗礼。

 クーは水の盾を繰り出し、かろうじてそれを防ぐ。
 同時に肩口の炎を消火。

 勢いのまま横に跳ぶ。
 追撃から逃れた──つもりだった。
 だが、膝立ちに着地したところで、彼女の目に恐るべき光景が飛び込んでくる。


ノリ, ^ー^)li 「きゃははははははは!! 害虫駆除にはこいつが一番♪!」

Σ川;゚ -゚) 「!?」


 片手のボトルを取り落としそうになった。

 いつの間に投げ放ったのか。
 無数の浮遊物が、彼女の周囲に滞空している。
.

573 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:07:44 ID:OnAIv4bY0
.
 目に悪い原色の数々。
 円筒形は、花火の類か。
 それらに混じって、いくつものチャッカm……小型ユーティリティライター。


 『 << ノ イ ジ ィ >> ─── 』


 総数、ざっと20本以上。


川;゚ -゚) ( ま  さ  か )


 悪い予感は、即座に現実へ。


ノリ, ^ー^)li 「<< メ ラ ン ジ ェ >> !!」


 一 斉 点 火。
 ジャンヌが左手を振るった途端、ノズルから一挙に火柱が放出された。
.

574 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:09:53 ID:OnAIv4bY0
.
 ライターはロケットのように。
 円筒形の噴出花火は小型ミサイルさながらに。

 あるものは直線軌道で。
 またあるものは回転運動のもとに。
 推進力を与えられ、奇妙なバランスを保ちながら──。

 全てが、クーめがけて発射されていた。


  l|l     て
  川;゚ -゚) そ 「うおおおおおおおお!?」


 対策も何もない。
 がむしゃらにウィップを振るった。
 一振りで数個、返す鞭先でさらに数個を叩き落とす。

 が、それでも。
 炎を撒き散らすおもちゃのミサイル群は、
 数を最大の武器として、クーに牙を剥いた。


川;゚ -゚) 「うあっ!?」


 肩口に一発。
.
576 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:14:19 ID:OnAIv4bY0
.
川;> -゚) 「づぁ!?」


 右脚に二発。


     そ
川; - ) て 「あッッッッぢゃあぁあっっっ!!」


 次々に被弾。
 たまらずウィップを変形、消火のために呼び寄せる。

 タンクから追加した水もあわせ、手元にてバリアを展開。
 必死にガードするが、そのたび、周囲の水も消耗してゆく。

 ひときわ激しいネズミ花火を払い落としたとき。
 火の雨を抜け、正面が開けた。


川;゚ -゚) 「!!」


 が、そこに敵の姿はなく。


川;゚ -゚) (──── 上!)
.

577 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:15:11 ID:OnAIv4bY0
.
 顔を上げた。
 クーの双眸が捉えたのは、回転しながら舞う一本のライターと、


ノリ, ^ー^)li 「きゃはははははははッ!!」


 そいつを空中でキャッチする、女のシルエット。

 抗う水(すべ)が足りない。
 後ずさる。


Σ川;゚ -゚) 「!?」


 が、背中が何かにぶつかり、止まる。

  ノ イ ジィ ・ メ ラ ン ジェ
 “ 火柱の散弾攻撃 ” によって、
 クーはいつの間にか、壁際に追いつめられていたのだった。


ノリ, ^ー^)li 「<< メ ル テ ィ >>」

Σ川;゚ -゚) (─── な、に!?)


 たじろぐ彼女の眼前、
.

578 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:16:40 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「<< バ ニ ラ >> !!」


 無慈悲なる、一閃。


川;゚ -゚) 「うおおおおおお!!」


 チェレンコフ放射を思わせる青い輝き。
 クーは後方の壁を蹴り、半月状に展開する光めがけて飛び込んだ。

      そ 
ノリ, ^ー^)li  「!?」


 ジャンヌの脇を転がり抜ける。
 次の瞬間、壁に沿って幅2メートルほどの範囲─── 。
 たった今までクーのいた場所から火の手があがった。

 熱線放出までのタイムラグ。
 加えて、ライターの大振りな軌道が幸いした。
 左右どちらに避けてもかわしきれなかっただろう。

  _,
ノリ, ^ー^)li 「すばしっこいゴキブリね!!」

川;゚ -゚) (こいつ、今─── ?)
.

579 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:18:16 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「でもっ! それもここで終〜〜わりッ!」


 ジャンヌはそう言って、目の前の物体を思い切り蹴り出した。


川 ゚ -゚) 「!!」


 赤い塊がゆるい放物線を描く。
 クーは身を低くしてそれをかわす。

 がらん。
 文字通り、間の抜けた音を立てて。
 ポリタンクが後方の床に転がった。


ノリ, ^ー^)li 「ジャジャ〜〜〜〜〜ン!
        アンタの水はぁ! 打っち止め〜〜〜♪!!」

川 ゚ -゚) 「……ふん」
.

580 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:19:27 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「そろそろ潰れなっ、ゴキブリ女っ!
        ジメジメをふっ飛ばさなきゃぁねェ!」


 ジャンヌは床のライターを蹴りあげ、左手でキャッチする。


川 ゚ -゚) 「!」

ノリ, ^ー^)li 「いくらでも炎を生み出せるアタシと、水のストックが切れたアンタ」


 ノズルでゆっくりとクーを指さし、


ノリ, ^ー^)li 「勝負は決まったようなもんねェ!」


 喉をかっ切るアクション。


川 ゚ -゚) (───やはりそうか)


 それを見たクーは、身を翻し、入り口に向かって駆けだした。
.

581 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:21:01 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「あらあらぁ? 流し台にでも逃げるのかしら〜ッ♪!」


 すぐさま追うジャンヌ。
 位置関係的に、クーが追いつかれるのは時間の問題だった。


ノリ, ^ー^)li 「ほ〜らッ! << クリスp」


 ジャンヌがライターを構えると同時。

 逃げるクーが、つっかけるようにして、
 床の一部に溜まった水を、右手で掻きだした。


ノリ, ^ー^)li 「!」


 水はふわりと空中で纏まり、半球状の塊になって飛翔する。
.

582 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:24:00 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ#^ー^)li 「無駄だっつってんのよぉ!」


 が、いかんせん量が少なすぎた。
 ライターを真横に打ちふるう。
 空飛ぶクラゲは弾け散り、ジャンヌの疾走を止めるに至らない。

 一方。
 入り口まで逃げ仰せたかに見えたクーは、


Σ川;゚ -゚) 「うおっ!?」


 濡れた床に足をとられ、バランスを崩したところだった。
.

583 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:24:42 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「もらったァ!」


 たった一瞬。
 それが勝敗を分けた。


 『 << ク リ ス ピ ー >> 』


 深い踏み込み。 瓦礫を踏み切り台に、超人的跳躍。
 資材からあがる白煙の中、ジャンヌは宙でライターを振りかぶり───、


 『 << ミ ン ト >> ッッ!! 』


 とどめの斬撃。
 爆炎が、広がった。
.

584 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:28:26 ID:OnAIv4bY0
.







 『 ────なっ!? 』






.

585 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:29:56 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「────いッ!? あッ」


 ─── 彼女の。
 ジャンヌの、眼前にて。


       そ
ノリ,;^ー^)li て 「きゃあぁぁあああ!?」


 インパクトの寸前にそれは起きた。

 突然の衝撃波にたたらを踏む。
 続けて、赤い炎が右腕を駆け上がる。


Σ ノリ,l|l^ー^)li 「なにッ!? 何なのぉぉぉおぉ!?」


 ジャンヌは混乱に驚きわめいた。
 ノズルから吹き出し、クーの全身へ浴びせかけられるはずの、炎。
 そいつが “ 自分に向かって ” 牙を剥いたのだから。
.
587 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:38:21 ID:OnAIv4bY0
.
 振り降ろす直前。
 ライターのグリップが、爆ぜた。
 銃の暴発さながらに。

 燃え上がる袖口。
 爆風による熱、痛み。

 自己の炎を制御できる彼女にとって、
 これら一連の現象はすべて “ あり得ないこと ” だった。


ノリ,l|l^ー^)li 「!!」



 『 ───火気厳禁 』


 凛とした声が、倉庫内に木霊する。
.

588 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:40:20 ID:OnAIv4bY0
.

  ノハ::::::-゚) 


 ジャンヌは瞠目する。
 “ 追い詰められたネズミ ” の様子が、先ほどまでと大きく異なっていた。

 声の主であるクー。
 彼女の艶やかな黒髪は、空間でふわふわとたなびいていた。
 まるで見えない風が吹いているかのように。

 輪郭は、うっすら、赤い輝きを帯びている。


ノリ;^ー^)li 「こ、これッ! あんた!? 何をしたァ!?」

 ノ川 ゚ -゚)゙ 「……ふむ」


 風がやむ。
 全身の輝きも、ゆるやかにおさまってゆく。
.

589 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:41:49 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「残念ながら、私の相方は “ 発火系能力者 ” でな」

Σ ノリ,l|l^ー^)li 「はァ!?  何それェ!?
          ハイドロキネシストでパイロキネシストだなんて───!」

川 ゚ -゚) 「あるんだな、それが」


 クーはぶっきらぼうに答えた。

 一瞬だけ “ 出てきてもらった ” 。
 かけ声のあと、ジャンヌのライターから炎柱が吹き出す、
 その瞬間に合わせて。
.
591 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:48:11 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「───まぁ、正確にはそうではなく───」

ノリ,#^ー^)li 「っざっっけんなッ!!」


 続く言葉は怒声に阻まれる。
 声の主はもちろん、
 髪を振り乱し、燃える上着を脱ぎ捨てようともがく、一人の “ パイロキネシスト ” 。


川 ゚ -゚) 「……まあいい。
     優しい私が、お前にひとつ教えてやろう」


 彼女の狂態を見下げながら、クーは言った。


川 ゚ -゚) 「お前の能力は底が割れている。
     次に何が来るか知っていれば、対策など簡単だ」
  _,
ノリ;^ー^)li 「はァ!? どういう事よ、それ!?」

川 ゚ -゚) 「ふっ……」
.

592 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:50:27 ID:OnAIv4bY0
.
 ロングの黒髪をさぁっとかき上げ、クーは続ける。


川 ゚ -゚) 「愚かな奴め。
      まず、お前のヒッサツワザ(笑)は2つのパターンに大別される。
      熱線を放射する中距離攻撃。
      火柱を発生させる近〜遠距離攻撃」

ノリ;^ー^)li 「ッ!?」


 指摘されたジャンヌは、その身を固くし。


川 ゚ -゚) 「そして2つのパターンは、“ 例外なく ” 交互に繰り出される。
      いや、“ 交互にしか、出せない ”。 ……そうなんだろう?」

ノリ;l|i^ー^)li 「な、何を……言って……!」


 震え声で反論する。
 明らかに動揺していた。
.
594 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:53:49 ID:OnAIv4bY0

川 ゚ -゚) 「熱線攻撃は、発生までにタイムラグがある。
      中距離での牽制には有効だが、
      至近距離で発動するには火柱攻撃のほうが適している。
      ……なのに、だ」


 床に散るライターの一つを拾い上げ、クーはさらに続けた。


川 ゚ -゚) 「近距離での追撃をおこなう際、
      避けにくい火柱ではなく、熱線攻撃をセレクトする場面が見受けられた。
      なぜか? 二回連続で同じワザを出せないからだ」

ノリ,;^ー^)li 「……そんな、コトッ」
.

595 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:55:48 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「正直言って、危ないと思ったタイミングは何度もあったのだがな。
      熱線と火柱を “ 交互にしか発動できない ” お前の弱点が、
      私を救ったと言ってもいい。
      ……そして」


 ぱし、と音をたて、ライターを右手から左手に持ち変える。


川 ゚ -゚) 「私は気づいていた。
      ワザを出すたび、チャッカマンを扱う “ 利き手 ” が、
      入れ替わっていることに」

Σ ノリ,l|l д )li 「!!」

川 ゚ -゚) 「 “ ワザの名前を叫ぶ ” 行為。
      これは、炎を出す前動作であると同時に、人格交代のスイッチなのだ。
      つまり」
.

596 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:57:36 ID:OnAIv4bY0
.
 クーは畳みかけるように言った。


川 ゚ -゚) 9m 「ワザを出すたび “ 主(メイン) ” と “ 副(アナザー) ” が切り替わる。
        右利きの人格Aが熱線攻撃。 もう一人の人格Bは、火柱。

        それがお前のPSIの全て。
        裏も表も “ ほのおタイプ ”。 この他の超能力は存在しない」


ノリ,l|l Μ )li 「う……があっ、ああぁぁぁぁあ!」


 慟哭は、クーの推測の正しさを証明していた。


ノリ,#^ー^)li 「だまれぇぇえぇえ!
        だッ! だから何だってんのよぉ!
        アンタに関係ないだろぉぉぉおおぉがッッッ!!」

川 ゚ -゚) 「ずいぶんな慌てようだな」
.

597 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:00:16 ID:OnAIv4bY0
.
 解説を終えたクー。
 長い睫毛に彩られた彼女の目が、一瞬伏せられ。


 『 ……さて 』


 大きく見開かれた時には、


 『 今度はこっちのターンだ 』


 その瞳は、玉虫色の輝きを宿していた。
.

598 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:01:16 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「!!」


 ぺろ、と舌を出し、クーはライターを投げ放った。
 虚を突かれたジャンヌは、それを慌てて受け止める。
 僅かな一瞬で、クーは女の眼前まで間合いを詰めていた。


川 ゚ -゚) 「くらうがいい……。 必殺 << スパイラルマロン >> !!」

Σノリ;^ー^)li 「くっ!?」


 叫び、右フック。
 ジャンヌはライターを繰り出し、すんでのところでそれをいなす。
.

599 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:02:30 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「まだまだ! << スパイラルマロン >> !!」

Σノリ;^ー^)li 「何度も同じ手は……いっだぁ!?」


 拳は動かず。
 代わりに、ブーツの踵がジャンヌの膝を刈っていた。


川 ゚ -゚) 「間違えた」

ノリ,#^ー^)li 「ひっっきょおものおおぉぉぉおぉッ!」




 【 厨二バトル的タブーその@ 】
 ・ 技名を叫んで、違う技を出す
.

600 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:05:17 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「油断大敵ッ!
      << シード ・ オブ ・ プルシメン(柿の種)>> !!」

ノリ, ^ー^)li⊂ ゙ 「ち、ちィっ!」


 次にクーは、両腕を交差し、奇妙なポーズをとった。
 ジャンヌはとっさに防御の体勢へ。


ヽ川 ゚ -゚)ノ  〜〜♪

ノリ,;^ー^)li⊂ 「……え?」


 ……が、何も起きない。


ノリ;^ー^)li 「しまっ!? フェインt────!?」


 左右へ素早く視線を走らせた、その直後。
.

601 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:07:37 ID:OnAIv4bY0
.
 がごん。


Σノリ, д )li 「ぶッ」


 赤いポリタンクが、頭上で跳ねた。




川 ゚ -゚) 「いい音だなぁ〜〜。 なんせからっぽだからなぁ〜〜〜」


川 ゚ -゚) 「どっちも」 ボソッ



:::: ノリ,##ー )li:::: 「……クソ、ア、マぁぁあぁ……!!」




 【 タブーそのA 】
 ・ 技名を叫んで、出さない
.

602 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:11:04 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ,#^ー^)li 「っっざっっけんじゃねぇっぇえぇえ!!!」


 コケた姿勢のまま、ジャンヌはポリタンクを拳で弾き飛ばした。
 クーは余裕面で襟を正し、告げる。


川 ゚ -゚) 「私が最も警戒していたのは、
      お前の副人格(アナザー)と、その超能力」

ノリ,;^ー^)li 「……!」

川 ゚ -゚) 「ところが、だ。
      いざ蓋を開けてみれば、お前は最初から “ 二人で ” 戦っていた。
      奥の手がないとわかった以上、もはや恐るるに足らん」

ノリ,;^ー^)li そ 「は、はァ!?」


 ── ここで少し、ジャンヌという女について触れておく。

 彼女は 『 ねらー 』 の中でも特異な女だった。
 彼女の中には確かに二人の人格がいる。
 だが、どちらかが主人格で副人格、といった区別は、彼女にはない。
.

603 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:13:30 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「所詮お前はファイアーダンスを踊る曲芸士にすぎん。
      究極の美貌とスタイルを誇る、この私が負ける道理はないな」

ノリ,#^ー^)li 「言わせて……おけばぁッ!!」


 いや、正確には。

 どちらがメインでどちらがアナザーなのか、
 彼女自身にもわからなくなっていたのだ。


===
==



 制服が似合う年の頃だった。
 少女の前に、“ 憧れの先輩 ” が現れたのは。

 出会いはその脳裏に、鮮明に刻まれている。
 それは、瓶底眼鏡の少女が培ってきた人生観を、粉々に打ち砕き。
 全て置き換えるほどの、刺激的で、魅力に溢れるものだったから。
.

604 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:16:16 ID:OnAIv4bY0
.
 甘い煙草の味も。
 自分に似合う髪の色も。
 夜のネオン街を行く高揚感も。

 すべて、先輩が教えてくれた。
 退屈だった毎日が、とりどりに彩られた。
 彼女の青春は、先輩の影を追う毎日だったと言っていい。

 あらかたの遊びは先輩に教わった。
 朝陽きらめく海岸沿いをバイクで流すとき、
 後ろは少女の特等席だった。


 強く、美しく、大人びており。
 少女の理想、憧れの存在。

 後ろをついていくだけで精いっぱいだった。
 たくさん背伸びした。
 少しでも同じ位置で、並んで歩けるように。
.

605 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:18:04 ID:OnAIv4bY0
.
 そんな先輩が、口癖のように言っていたことがある。


 『 あたしはさ。 ジャンヌ ・ ダルクになるんだ 』


 その言葉の持つ神秘性。 反社会性。
 先輩はただ、 “ 格好いい女 ” を表現すべく、
 比喩的に、抽象的に用いていたに過ぎないのだろう。

 だが、その言葉は。
 思春期の少女の中で、特別な意味を与えられることとなった。


 憧れの先輩が追い求める存在、『 ジャンヌ 』。
 先輩と少女を結ぶ直線上。
 その遙か先に、『 ジャンヌ 』 がある。

 革命の象徴。 少女の憧れの究極形。
 気高く美しい “ 完璧な女 ” の偶像として、
 『 ジャンヌ 』 は深く、強く、少女の精神に根を張った。
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606 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:20:31 ID:OnAIv4bY0
.
 『 アタシもジャンヌになりたい 』

 『 ジャンヌは最高にカッコいい女 』

 『 ジャンヌは先公に頭を下げない 』

 『 それから……ジャンヌは、クソみたいな女とはツルまない 』


 いつしか 『 ジャンヌ 』 は。
 少女の求める偶像から、“ マイルール ” のようなものへとすり替わり、
 彼女の行動を徐々に束縛 ・ 支配してゆく。


 『 ジャンヌは髪を右からすく 』

 『 ジャンヌは右手に煙草を挟まない 』

 『 ジャンヌの愛撫は左耳から 』

 『 ジャンヌのセックスは週二回 』

 『 ただし、二人の男と一回ずつ 』


 都合のいいルール。 どうでもいいルール。 実現困難なルール。
 さまざまな “ 縛り ” と “ 設定 ” がいびつに組み合わせられ、
 粘土細工の “ ジャンヌ ” が無軌道に修正されてゆく。
.

607 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:22:44 ID:OnAIv4bY0
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 『 ジャンヌは白い下着しか履かない。 でも、ダサいのは論外 』

 『 ジャンヌの恋人は小悪党でいい。 口では媚びるけど、心は揺るがない 』

 『 ジャンヌは──── 』


 おそらくは、そのころだった。
 少女が “ 自分の中の、もう一人 ” に気づいたのは。


 『 ジャンヌは右利き 』

 『 ジャンヌは左利き 』

 『 何言ってるの。 ジャンヌを包んだのは、青い灼熱 』

 『 違う。 ジャンヌを焼いたのは、情熱的な赤い火柱 』 
.

608 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:23:57 ID:OnAIv4bY0
.

 “ 二人 ” による競り合いは、上級生の卒業式。
 憧れだった先輩の、最後の制服姿。


 焼身自殺。

 炎を纏いながらの、屋上からの、転落死。


 凄惨にして異常性の高い、
 ひとつの変死事件を契機に、加速する。

.

609 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:25:22 ID:OnAIv4bY0
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 『 ジャンヌは犬派 』

 『 ジャンヌの朝は200kcal以下 』

 『 ジャンヌのリップはピンクベージュ 』

 『 ジャンヌはウルトラマリンが嫌い。 つけてる奴は、男女関係なくボコる 』

 『 ジャンヌは 』
 『 ジャンヌは 』
 『 ジャンヌは 』
 『 ジャンヌは 』 ─────。



 『 アタシだけが 』

 『 何言ってんの。 アタシこそが 』




 『 ただ一人の << ジャンヌ >> 』

.

610 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:27:13 ID:OnAIv4bY0
.

==
===


 いつしか “ 彼女たち ” は、自分の名前すらも思い出せなくなっていた。

 かろうじて記憶の隅にあった姓は『 島野 』。
 他は必要ない。
 年齢、血液型、出身地、名付け親の顔。 すべて忘却の彼方。

 ここにいるのは、
 先を争って 『 ジャンヌ 』であろうとする、二人の女たち。


 性格も同じ、能力も同じ。 顔も髪も体も共有。
 そんな二人が、だがしかし確固たる二つの人格として、
 境界線を保っているのは。

 “ 二人 ” であることを、譲ろうとしないのは。


ノリ,#^ー^)li 「えらっっっそうに!!」


 “ 彼女たち ” が、常識外の負けず嫌いであるからだった。
.

611 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:29:07 ID:OnAIv4bY0
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ノリ, ^ー^)li 「ここにあるのはぁ!!」


ノリ,#^ー^)li 「アンタの水が “ もう無い ” という事実ッ!!
        それだけよぉぉおぉお!!」


 焦げたスーツのジャケットを蹴飛ばし。
 『 ジャンヌ 』 は駆けだした。

 二本のライターが踊り狂う。
 飛び散る紅い飛沫。
 上半身を大きくひねり、腰を落とす。


ノリ,#^ー^)li 「おおおおおおおおッ!!」


 踏み込みは万全。
 怒りは頂点。
 サイキック ・ エネルギーは臨界点。

                    ブ レ イ ヴ ト ル テ
 辺り構わず熱線をまき散らす、裁きの渦潮攻撃。
 この大技が完成すれば、水を失ったクーにかわす手段はない。
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612 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:33:51 ID:OnAIv4bY0
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ノリ,#^ー^)li 「燃やし尽くしたらぁあぁあぁぁッ!!
        << ブ レ イ ヴ >> ───」


 川 ゚ -゚)


 なのに。
 ネズミ同然の相手は、逃げるでもなく動揺するでもなく。
 無防備にその身をさらしており。


川 ゚ -゚) 「もう、遅い」


 ぽつり、呟くのだ。


ノリ,#^ー^)li (はぁ!? 何が───)


 回転すべく、宙空にて身を捩るジャンヌ。
 脳をよぎる疑問の答えは、すぐに示された。


 『 << ト ル t >> 』
.

613 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:34:35 ID:OnAIv4bY0
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 ───オブジェが、完成した。






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614 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:35:43 ID:OnAIv4bY0
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Σノリl|l ゚Д゚)li 「ぐげッ!?」


 ジャンヌ自身の、肉体のモニュメントが。


 宙を舞う彼女の体は、そのまま中空で固定された。
 青い軌跡を描こうとしていたライターごと、
 “ それ ” に取り込まれ。

 間髪いれずに襲いくる圧迫感。
 筋肉への締め付け。
 きしむような関節の痛み。


 『 ごぼ……ぶがぁぁぁああぁぁ!? 』


 悲鳴を包んだあぶくが浮かび上がる。
.

615 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:37:13 ID:OnAIv4bY0
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 天井から飛来した、太巻きの “ 水の触手群 ” が。
 襲いかかろうとしていたジャンヌの体を、首を、顔を。
 その全身を、がっちりと捉えていたのだ。


ノリ,;l|l Д )li 「ごぼッ!? み、ず!? うぞ!?」

川 ゚ -゚) 「バカな女だ。 何が出てくるかもわからん敵の本拠地に、
      私がポリタンク一つでのこのこ現れるとでも?」


 想定外の方向からの不意打ちだった。
 暴れるジャンヌの体は、だがしかし、確実に宙へ吊り上げられていく。


川 ゚ -゚) 「備えあれば……ってな。
      あらかじめ用意しておいたのだ。
      見つからないよう、入口の上空に」

::: ノリ,;l|l Д )li:::: 「ぞ……ん、ごぼぼぼっ! なッ!?」

川 ゚ -゚) 「おかげでニブい戦いしかできなかったわけだが」
.

616 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:39:44 ID:OnAIv4bY0
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 クーは腕組みし、苦しむ女に氷の視線を浴びせかける。

 いかにもな赤いポリタンクは、
 “ リミット ” を示して油断させるための、おとり。
 本当の隠し玉は、入口の外に滞空させていた “ 特別製 ” 数十リットル。

 倉庫へ進入したときから、天井を這うように移動させていた。
 偵察用として。 不意打ち用として。 仕上げ用として。


川 ゚ -゚) + 「こいつは良い夢を見せてくれるぞ?
       たとえそれが、黒スーツの屈強な男たちだろうと」


 ─── 無礼で、無様で、小便くせえクソ小娘だろうと、だ。


(( ノリl|l Д )li)) 「あがァッ!
          は、は……なせこ……ぐボごッ!!」

川 ゚ -゚) 「そいつは特別製だ。 簡単には外せんし、散らすこともできん。
      何より私が触手の端に触れている──よって、制御を失うことはない」


  テ ン タ ク ル ス
 “ 溺 没 絞 首 刑 ” 。

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617 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:41:34 ID:OnAIv4bY0
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川 ゚ -゚) 「おねんねにはまだ早い。
      貴様にはギコの居場所を吐いてもらわなきゃならん」

         て
(( ノリl|l Д゚)li)) そ 「ぷはッ!?
             だ、だまrッ!! おボゴごぶはッ!?」


 水は移動し、ジャンヌの首回りがいっとき解放される。
 クーの言葉に反応して、
 ジャンヌの視線がほんの一瞬、事務室らしき奥のドアへと向けられた。

 目ざとくその変化に気付いたクーは、小さく頷く。


川 ゚ -゚) 「充分だ」


 足をばたつかせ、もがく女の前で。
 クーは半身をひねり、右手に力を溜めてゆく。
.

618 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:43:04 ID:OnAIv4bY0
.
川::::::-゚) 「もう一度言ってやろう。 ほのおタイプが──」




      ─── みずタイプ様に、勝てるわけねーだろーが ───



                         パ イ ロ キ ネ シ ス ツ
 水の絞首台に固定された “ 名も無き発火系能力者たち ” の鳩尾めがけ。


 侵入者の鉄拳が、勢いよく撃ち放たれた。



 〜 〜 〜

.
622 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:04:16 ID:AdzHJhxs0
.
 居合わせた黒服の一人は、後に述懐する。


 『 ハナコさんがきた 』


 さらに、別の黒服はこう答えたという。


 『 フジコちゃんがきた 』


爪;゚〜゚) 「ダイオードぉぉッ!! てめえ、どういうことだこれは!!」

/ ゚、。 / 「ポリグラフのことか? 正常だケド」

爪;゚〜゚) 「だ、だがよぉ!
      あいつ(ドクオ)は “ 仲間はいない ” って……」

/ ゚、。 / 「ほんなら答えはひとつだケド」


 ─── ウソじゃあなくて、

 『 想 ・ 定 ・ 外 』 。
.

623 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:05:15 ID:AdzHJhxs0
.
Σ爪l|l 〜 ) 「──────!」


 ── そして話は現在に戻る。

 混乱の渦中、第三倉庫にて。
 シャッターから現れた女、クーは無表情でメットを投げ放つ。
 こちらもまた無表情でキャッチすると、


/ ゚、。 / 「面白そうなことになってきたケド」


 ダイオードはそう呟いた。


爪;゚〜゚) 「と、止まれ! 止まらねえと……」

川 ゚ -゚) 「どうするんだ?」


 タムラの制止を聞き入れることなく、庫内へずかずか進入する似非ふじこ。
 ブーン達のもとへやって来た途端、


川 ゚ -゚) 「おらっ」


 引きずっていた男を、乱暴に投げ捨てた。
.

624 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:07:31 ID:AdzHJhxs0
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(;,,#)Д<) 「ってて……!」


      て
(  ゚ω゚) そ 「ギコ!?」


 ブーンが駆け寄る。
 床で目を回していたのは、
 後ろ手に縛られ、頬を腫らしたギコだった。


(;,,#)Д゚) 「助けてくれたのはいいけど!
       せめて縄は解いてから連れてきてくれよッ!? ゴルぁー!」

川 ゚ -゚) 「おお、忘れとったわ」


 わざとらしく返答し。
 それからクーは、窓のほうへと視線を送る。
.
626 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:10:04 ID:AdzHJhxs0
.
川д川 「……」


 サダコと、クー。
 対照的な二人の黒髪ロングは、
 うずくまる黒服たちを一瞥したあと、互いに目配せした。


川 ゚ -゚) 「上出来だ」

川д川 「……ど、どうも」


 見回りの黒服に見つかったものの、
 突如蘇った “ 感染能力 ” によって、彼らを退けたサダコ。

 ドクオに対してはにべもなく断る素振りを見せつつ、
 その実、こっそりとしぃに連絡を取り、単身港までやってきていたクー。

 彼女たちが倉庫の外でばったり出会ったのは。
 無論、偶然ではない。
.

627 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:12:33 ID:AdzHJhxs0
.
 サダコの能力を通じて、
 ギコの捕らわれている場所が第六倉庫であると知ったクーは、
 先にそちらへ向かい──現在に至る。


(;,,#)Д゚) 「……ったくよォ」


 手繰り寄せられし “ 必然の糸 ” に救われた少年。
 腫れた頬を肩でさすりつつ、ため息をついた。

 当然ながら、彼の無事とは、ジャンヌの敗北を意味する。
 その事を悟ったタムラは、ドスの効いた声色で叫んだ。


爪#゚〜゚) 「好き勝手やってんじゃねェ!!
      忘れたのか!? こっちには人質が……!」

「ぐわっ」


 が。
 彼の恫喝を遮るように、後方から野太い悲鳴があがる。
.

628 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:14:48 ID:AdzHJhxs0
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(#´_ゝ`) 「マキシマムダイナミックチャージ(体当たり)!!」


 声の主は、こちらもやはり一人の黒服。
 “ 人質 ” のタックルで、床に吹っ飛んだところだった。


/ ゚、。 / 「!」

     そ
爪;l|l゚〜゚) て 「な、何だとぉぉおっ!?」


 兄者はそのまま小走りでブーンたちのほうへ合流する。
 柱に括りつけられていたはずの彼だが、すでに縄は解かれていた。


爪;゚〜゚) 「てめぇッ! どうやって!?」

( ´_ゝ`) 「こいつが自由(フリーダム)をもたらしたのさ……(意味深なポーズ)」


 不敵に笑みをこぼし、前方へ肘を曲げる。
 人差し指と中指の間に銀色の刃物。
 月明かりを受け、ぎらり煌めいた。


Σ爪;゚〜゚) 「それはッ」
.

629 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:16:40 ID:AdzHJhxs0
.
 没収を食らったのち、簡易テーブルに放置されていた、つーの医療用メス。
 テーブルを見張っていた黒服の “ 感染 ” をこれ幸いと、
 クーの水球が、こっそり掠め取っていたのだ。

 兄者を解放した水のボールは、
 そのままギコのほうへ飛来し、上空すれすれを滑空する。
 一本のメスを “ 掴んだ ” まま。


(;,,#)Д゚) 「!」 ザシュッ

( ^ω^) 「お?」

        ∩
 l|! (*,,#)Д゚)ノ i|l 「うおっしゃぁぁぁああ!」


 乾いた音とともにロープが緩み、ギコはその場に跳ね上がった。
.
631 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:19:47 ID:AdzHJhxs0
.


     / ゚、。 / 爪l|l゚〜゚)        (´く_`(^ω^ (゚Д(,#,,川д 川 (゚- ゚ 川



 白服二人、黒服若干名。
 そしてブーンの回りに四人。
 横倒しの簡易椅子を挟んで、ここに 7人の Channelers ──異能力者が対峙する。


 形勢は、覆っていた。


 〜 〜 〜

.
633 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:21:18 ID:AdzHJhxs0
.
 ふたたび “ ギャンブルルーム ” 内。


(#-[]3[]) 「ちっ!」

(;'A`) 「……?」


 舌打ちひとつ、ポセイドンは乱暴に携帯を切った。
 相手は黒服かタムラだろう。  が、出ない。
 外で何らかの 『 異常な事態 』 が起こっているのは間違いない。


(-[]3[]) 「おいっ! おまえら、何をしているんだ……!」


 そう言って、奴は外へ続くドアに手をかける。
.

634 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:22:04 ID:AdzHJhxs0
.
( ゚A゚) (!)


 この瞬間。
 俺の脳裏には、ある 『 一人の人物 』 の顔が浮かんでいた。

 このインディアン ・ ポーカー勝負において、
 『 最大の嘘つき 』 である、“ 協力者 ” の顔が。


Σ(;'A`) 「ちょ、おい、待て!」


 パーテーションへかじりつく。
 ポセイドンは、そんな俺の叫びも聞こえない素振りで、
 今にも外へ出て行かんとしているところだ。

 しぃちゃんの顔を一目見やると、俺はドアに向かってダッシュした。


 〜 〜 〜

.

635 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:23:20 ID:AdzHJhxs0
.
 舞台はまたもコンテナ外へ。

 誘拐犯たちとのにらみ合いの最中、
 クーはブーンたちにささやいた。


川 ゚ -゚) 「残った黒服も入れると、人数はほぼ同じだな。
      ま、こっちは全員ねらーだ。 どうにかなるだろう」

(; ^ω^) 「いや、それがですね……お」


 ブーンは手首を示し、
 ロッカーの性能と、PSIを封じられている自分たちの状態について、
 簡単に説明した。


川 ゚ -゚) 「そんなの、ぶっ壊せばいいだろうが」

(,,#)Д゚) 「そうしたいのは山々だけどさ。 これ、見た目以上に頑丈なんだよ」

(´く_`* 三 *´_ゝ`) 「おれなんて既に諦めちゃってるもんねー。
            で? これなに? 今どーゆー状況?」


 割って入った兄者がきょろきょろ辺りを見回した。
 気絶していたせいか、いまいち事態を把握できていないらしい。
.

636 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:26:24 ID:AdzHJhxs0
.
川 ゚ -゚) 「なんだお前は。 死ね」

(; ´_ゝ`) 「なんてシンプルな罵倒!」

         チ カ ラ
川д川 「……超能力を使えるのは……、
      実質わたしと……クーさん、だけ」


 サダコがぽつりと漏らす。
 爪を噛む仕草が引き金となり、感染者(黒服)から一層高い雄叫びが発せられた。


川 ゚ -゚) 「ま、まあ、私一人でも楽勝だろうが……」

(,,#)Д゚) 「舐めてかかんねェほうがいいぜ」


 ギコが口を挟む。


(,,#)Д゚) 「昼過ぎくらいだったかな。 一度 “ ロッカー ” の電池が切れたんだわ。
      さんざ暴れてやったけど。 なさけねーコトに、結局このザマだよ。
      あいつらはつえーぜ。 特に背のでっけーほうな」


 皆の視線が、ダイオードに集中した。
.

637 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:29:27 ID:AdzHJhxs0
.
(,,#)Д゚) 「それと、だ」

川 ゚ -゚) 「あん?」

(,,#)Д゚) 「“ のーりょく ” が戻ったときに、ひとつわかったことがあるんだ」


 怪訝な顔を向けるクーたちに、ギコは告げた。


 〜 〜 〜


(#'A`) 「ま、待てぇっ!」


 ポセイドンのあとを追って、こちらサイドのドアに飛びついた。
 ノブを捻る際、施錠済みである可能性に考えが至り、一瞬ためらいを覚える。
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638 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:32:25 ID:AdzHJhxs0
.
(;>A<) 「!」 バンッ


 幸い、その心配は杞憂に終わった。


( ゚A゚) 「────!!」


 十数分ぶりに臨む外界の様子は、ゲームの前といちじるしく異なっており。

 状況を飲み込むのに、しばし時間を要した。
 結論からいえば、それは俺にとって願ってもない事態であったわけだが。

 俺と同じく、事態の把握に脳をフル稼働させているのだろう。
 ポセイドンはスロープから降りることなく、コンテナの傍で身を硬直させている。

 そして、


(;'A`) 「!!」


 いた。
 ヤツの逆側。
 俺から見て、斜め向かい方向。
.

639 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:33:50 ID:AdzHJhxs0
.
(; A ) ( ─── “ 協力者 ” !)


 位置関係からしても、さして矛盾はない。


 ポ リ グ ラ フ
 嘘発見器で確認していない 『 ひとつの嘘 』 。

 あいつは、あらかじめ撒いていたんだ。
 ~~~~~~
 この勝負のために。


(;::::A゚) (薄暮れの中、あいつは確かにこう言った)


 港に来てからの一連の出来事が、フラッシュバックする。
.

640 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:35:59 ID:AdzHJhxs0
.
『 妙なことは考えるなよ?
  なにせ我々は、“ か弱い ”一般人だ。
  お前らに超能力を使われた日には、ひとたまりもないだろうが── 』


 さりげない念押し。
 これこそ、事実誤認を招くための布石だったのだ。


 その後、倉庫に辿り着いてみれば、中には白服の超能力者が二人いた。
 そして黒幕であるポセイドン。 ……は、ともかくとして。

 没個性的な佇まいの黒服たちに対し、個性的すぎる白服の二人。
 彼らの様子から、俺たちは無意識に、一つの可能性を排除していた。
 確認も取っていない <偽の事実> を、すんなり受け入れてしまっていた。
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641 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:37:41 ID:AdzHJhxs0
.
(;'A`) (俺が大きく違和感を抱いたのは、あの時だった)


 シーンが進み。
 脳内のムービーは、ブーン達のゲーム開始時点まで早送りされる。
 コンテナ外における、白スーツ達の会話の内容が思い起こされた。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 / ゚、。 / 『 目の前にエモノたーくさんなのに、おあずけなんてヒドいケド。
        その上こんなのまで着せられて、フラストレーションバリバリだケド 』
         ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 爪 ゚〜゚) 『 俺だってなあ! テメーとお揃いなんて反吐が出るってんだよ 』
                  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 そう。
 鈴木兄弟が、黒服たちと対照的な 『 白いスーツ 』 を着ていたのは、
 自分たちの意志ではなかった。 (悔しいことに、似合ってるけど)
.

642 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:39:55 ID:AdzHJhxs0
.
( A ) (じゃあ、誰がそれを望んだ?)


 考えるまでもない。
 ポセイドンの指示だろう。

 雇われチャネラーどもに、ポセイドンがわざわざ白いスーツを着せた理由。


( A ) (それは。
     俺たちに、動かし難い先入観を抱かせるためだ)


             <<< 白服が超能力者で、黒服は一般人 >>>


 確認するまでもない、『 見ればわかる事実 』 。
 そう刷り込むことが、ポセイドンの目的だったのだ。

 ポセイドンが、“ 俺たちのイカサマを封じた上で ”、
 かつ “ 自分だけイカサマを行う ” ためには、
 嘘発見器(ポリグラフ)という障害を、クリアする必要があったから。
.
644 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:41:51 ID:AdzHJhxs0
.
( A ) (ポリグラフによる確認を取らせぬよう、心理的に誘導してきたわけだ)


 様々な布石を打ち、言辞を弄して。
 “ 偽り ” を “ 周知の事実 ” に仕立てあげた。

 すべては、俺たちが納得ずくで勝負に乗るように。
 正々堂々、イカサマなしのガチンコだと “ 見せかける ” ために。


 〜 〜 〜


川 ゚ -゚) 「は?」

( ´_ゝ`) 「マジで?」

(,,#)Д゚) 「ああ、間違いねえ」


 ギコは告発する。
 彼の特技のひとつ。
 “ 近くのチャネラーを感じ取る ” 能力が、導き出した真実に沿って。

 超能力をあやつる、雇われ白スーツ3人衆。
 別の倉庫でギコを見張っていた、島野ジャンヌ。
 目の前にいる鈴木ダイオード、そして鈴木タムラ。


(,,#)Д゚) 「あいつらだけじゃねぇッ!
      “ ちゃねらー ” は……」


 ポセイドンを含め、全部で < 5 人 > !


 〜 〜 〜
.
647 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:44:13 ID:AdzHJhxs0
.
( A ) スゥゥゥゥ


 スロープ上より、ドアのノブを掴んだまま。
 俺はめいっぱい息を吸い込んだ。

 そして。
 室内の一角へ集う仲間たちに向かって。
 あらん限りの声で呼びかけた。


(;'A`) 「ブーン!!」

Σ(^ω^ ;)彡 「に、ニーチャン!?」


(;'A`) 「聞け! 俺たちは、騙されていたんだ!」

(,,#)Д゚) 「騙されるな! いいか……!?」


 ほぼ同時の出来事だった。
 一団から飛び出したギコが、前方を指差し、声を張り上げる。
.

648 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:45:02 ID:AdzHJhxs0
.
(#,,#)Д゚) 「そいつはッ!」


(#'A`) 「グラサンはッ!」



               「「 チ ャ ネ ラ ー だ ッ !! 」」



 俺たちの叫びが重なったのは。
 まさに今、黒髪ライダー女の使役する “ 水の大蛇 ” によって。

                 ク レ ア ボ ヤ ン ス
 逃げ出そうとしていた “ 透視能力者の男 ”


 ── 角刈りの黒服が、床に組み敷かれる瞬間だった。



 (続く)


.

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