- 393 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:16:05 ID:DP4dOSEo0
- .
___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|
| S H O W D O W N
|
|___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ __.|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┌───┐
│(⌒⌒)│
│ .\/
.│
(-[]3[]) │
7 │
└───┘
\_人_人∧从_人_∧_人_从_//
)
>
< V S >
< (
/^Y ̄∨ ̄∨^Y^⌒Y^YY^^Y^
┌───┐
│(⌒⌒)│ ('A`)
│ .\/ .│
│ 9 │
└───┘
(;*゚ワ゚) 「あっ───!」
(;'A`) 「!!」
だが、その予測はまたもや裏切られる。
.
- 394 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:17:08 ID:DP4dOSEo0
- .
手元に翻るは、─── まさかまさかの [
9 ] 。
(;゚A゚) (……か、勝った……?)
信じがたいことに。
俺のハンドのランクは、ポセイドンを上回っていた。
ショーダウンにおける初めての勝利だった。
Σ(*>△<) 「どく……ぅ、けほっ」
(; A ) (助かった……) ハァ
(-[]3[]) 「おめでとう。 ほら、4枚だ」
だが、感慨と呼べるものはほとんど得られなかった。
(;'A`) 「え? あ、ああ」
それは、考え抜いた戦略による勝利ではなかったから。
ベットを選択する限り起こりうる、
偶発的事象のひとつに過ぎなかったからだ。
.
- 395 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:18:47 ID:DP4dOSEo0
- .
むしろ “ 1枚レイズで応戦 ”
というマイセオリーを
簡単に放棄した、己の馬鹿さ加減に失望する。
もはやそいつはベットの指標になりえない。
(-[]3[]) 「よかったねェドクオさん。
ゲーム中断した効果、あったんじゃないか?w」
加えて、最小に近い損害で済ませてみせる
─── どんな状況でもけして選択を誤らない、
ポセイドンの実力に、恐々とするばかりだった。
(-[]3[]) 「ま、僕のほうも大───いに助かったけどね。
レイズする絶好のチャンスを、
ドクオさんが自らふいにしてくれてさ」
(;'A`) 「……」
諸手を挙げて喜べない、いっときの勝利。
.
- 396 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:20:45 ID:DP4dOSEo0
- .
======== 【 STAGE 8 RESULT 】 ========
Up Card : [ 10 ]
('A`) :
(-[]3[]) : -4
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1st BET 1
CALL
..2nd
Final
Ante 0 3
Hands [ 9 ] [
7 ]
============================
どうしよう。 どうしたらいい。
このままじゃ負ける。 運だけじゃあ、この差は覆せない。
なにか見つけなければいけない、なのに!
.
明確な負けのイメージをさんざ刷り込まれてしまったせいだろうか。
迷宮に惑う俺の心は、突き進もうとする気概を半ば失いつつある。
.
- 397 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:21:30 ID:DP4dOSEo0
- .
とにかくここから出たい……もうやめたい……。
そういった感情が胸中を蝕んでいる。
それが。
セオリーという “ 紙のしるべ ” すら失った俺の、現実。
( A ) (勝てるのか? 本当に、俺は)
(;*><) 「ど……く、さ……!」
ただほんの少し、猶予が出来たに過ぎない。
残りチップは17枚。 敵のチップ、その2倍。
敗北へのカウントダウンは、既にはじまっていた。
.
- 398 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:23:32 ID:DP4dOSEo0
- .
●第三四話 『 wHo wAs tHe fiRst liAr ? ── VS.
ポセイドンH 』
《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉
《〉 << 第9セット >> 〈》
〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》
.
_______________________________
|┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
|┃
┃|
|┃ ('A`) : 17
(-[]3[]) : 33 ┃|
|┃
┃|
|┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
行くべき道が見えない。
頼れるものがない。
気を抜くと、不安に押しつぶされそうになる。
13枚の壁まであと4枚。
1枚ベット→フォルドが発生するだけで、そいつはすぐに訪れる。
壁が崩壊すれば、以降は常に、一撃死の危険に脅えることとなる。
.
- 399 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:29:34 ID:DP4dOSEo0
- .
(-[]3[]) 「はは、どうしたんだい。 ドクオさん顔が真っ青だよ。
ようやく勝てたんじゃん? 渾身の 1 枚 ベットでさw
ここで弾みをつけなきゃ、ねェ?」
(;l|l 皿) 「よく、口が、回るな……」
ラウンドを経るごと強くなる重圧は、かりそめの勝利のあとも、
けして俺の背中を離してはくれなかった。
緊張感がMAXに近づいている。 喉はからから、足の震えは止まらない。
そのセットのトーキング ・ タイムは長かった。
拷問のような体感時間だった。
俺から漂う憔悴の色を、
ポセイドンはとっくに気づいているだろう。
:::(;*〓〓)::: 「……!」
口を真一文字に結び、姿勢良く椅子にかけるしぃちゃん。
俺がショーダウンで勝った瞬間を間近で見たせいだろうか。
心なしか、頬に赤みがさしているように思える。
俺が勝利することで、彼女は呪縛から解き放たれる。
もしくは俺のせいで─── 彼女の人生が、未来が、閉ざされる。
.
- 400 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:31:16 ID:DP4dOSEo0
- .
., -―=''''''¨¨´ ̄ ̄ ̄ ̄"゛'''=―-、
―-=三 :::(;*> 、 <):::
三=-─
.`‐―= ..,,,,______,,,,..=―‐´
(;'A`) (しぃちゃん……!)
今後の選択が、彼女の運命を左右する。
もしも俺がゲームに負けたら。
彼女はいったいどうなるんだ?
そんなの、いまさら。 想像に難くない。
ポセイドンのものになるということは、
必然、ヤツの─── じょ、じょ、情婦? みたいなアレにさせられちゃう的系?
といっても、何もそんな、死ぬわけじゃない。
ひょっとしたら今より幸せな未来が───。
(-[]3[])
いやいやねーよ。 絶対それはない。 断言できる。
.
- 401 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:34:47 ID:DP4dOSEo0
- .
:::<(l|l'A`)>::: (ああああああ! もおおおおお!)
段々と逃げを打ちはじめた。
脆い自分の精神に、心底嫌気がさす。
<(; A )> (しぃちゃんが、ヤツのものになる?)
それは、彼女にとってどういう意味を持つんだ。
彼女の全てはポセイドンに掌握される。今更だが掌握ってなんだろう。
認めたくないが、あいつのカノジョにされてしまうのだろうなあ。
いやいやそれこそ希望的観測ってやつだ。まっこと甘い考えだ。ストロングスウィーティだ。
シロップとハチミツと粉砂糖と水飴と1ばんと2ばんのふくろをよーく混ぜテーレッテレー!
すなわちポセイドンとの蜜月を……あっやばい俺ちょっとうまい事言った気がする。
俺が言うのもなんだが、ポセイドンはほどよくぶさいくだ。見るからにヘンタイっぽい。
オーラが、ソウルが、パーソノーが、全てにおいてヘンタイ性に満ちあふれている。
あの黒いメガネのフレームは異常性欲のメタファーでもある。
ブサメンすぎてこの世を呪いたくなることもしばしばだろう。 俺も覚えがある。
ヘンタイ欲求を発散できず身悶える夜もあるだろう。 俺も覚えがある。
家に帰れば自室には何に使うのかわからない謎の器具が一通り揃っているに違いない。
毒々しい色の蝋燭! 高速回転するベッド! 電池で揺れるジャパニーズ工芸品!!
で、その用途。 何に、はわからないが、誰に、は想像できる。
言うまでもない。目の前で柳眉をハの字に曲げる白肌美少女に対してだ。
.
- 402 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:37:19 ID:DP4dOSEo0
- .
そう。美少女。しぃちゃんはびっくりするほどかわいい。俺が一緒にいるのが不思議なくらい。
あまり美少女美少女言うのもどうかと思うけどさ、彼女を表現するにはつまるところその3文字よ。
悔しいけど。何に対する悔しさかよくわからんけど。器量よし。道行く人が振り返る程度には。
ありふれた表現だけど輝きがある。せっけんの匂いとは別に、肌からほのかに甘い香りもする。
出会ってから半年と少し程度ではあるが、人当たりはいいし、笑顔はあったかい。天然の癒し系。
それでいて彼女の横顔からはときどきぞくっとするような色艶を感じることがある。
妖精の清らかさ、子悪魔の魅惑性。ふざけるな完璧超人。性別を越えてジェラシーすら感じる。
相反する性質が同居するほんわか元気ガール。それが彼女。それが猫塚しぃ16歳。なんかAVタイトルっぽい。
<(;'A`)> (しぃちゃんが、いなくなる?)
そんなしぃちゃん16歳が、あのクソメガネニキビモンスター15歳に手込めにされていいのか?
答えはノーだ。そんなはずがない。あってはならない。お父さんが許さない。
幸せに今後の学園生活を送り、幸せに卒業し、進学し、就職し───。
いずれは素晴らしい男性に巡り会い、幸せにシアワセを掴まなければならない。
結婚式には呼んでもらえるのだろうか。仲人とか友人代表みたいの頼まれるかなあ。
緊張しすぎて失神したり吐いたり漏らしたりしないようにしなきゃ。ああ今から胃が痛くなってきた。
ギコが、ブーンが、御両親の代わりに出席したイサム先生がぼろぼろ涙を流して……、いや、ちょっと。
結婚? 出産? 待て待て。 いくらなんでもそれは。 ははははは。 先走りすぎた。
どう見てもローティーンにしか見えない、あのあどけない容貌を見ろ。輝く制服を見ろ。
出会い。告白。ハグ。相撲。キス。ペッ、セッ……そそそれは流石に犯罪ではないだろうか。いや犯罪だ。
だが……だがそうとも限らない。適齢期を迎えるころには超美人に変貌を遂げているかも知れない。
女ってヤツはほんとどう変わっちまうかわからない生き物だ。夏休みを堺に少女は女になる。
一夏のアバンチュール。蛹が蝶に。もしくは蛾に。変態する。変態とのヘンタイを経て変態する。
今は肩にギリギリ届くくらいのショートだけど、そのうちさらさらのロングになるかもしれない。、
背も20センチくらい伸びてる可能性あるし、スタイル抜群かもしれない。爆乳にはたぶんならない。
.
- 403 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:40:46 ID:DP4dOSEo0
- .
<(:::゚A゚)> (しぃちゃんが、……消える?)
さておき彼女は優しい。気遣いもできる。かわいい。胸はちょっと小さい。けど少しある。
怒ると消火器を投げることを除けば、案外いいロリ……ごほん、奥さんになるんじゃないか。
あ、そういえばしぃちゃんって料理できるのかな。 なんかできそうな気もするな。
得意料理はなんだろう。顔の倍くらいあるフライパンと格闘する姿が浮かぶ。
真剣な顔で向かうしぃちゃん。淡い暖色のパッチワークエプロンがよく似合っている。
夜なべして縫った手作りで、なれない針仕事に三回くらい指を刺しちゃって。絆創膏だらけで。
彼女は背がちっちゃいから冷蔵庫の一番上を使うときは当然踏み台を使うだろうなあ。
うんしょと背伸びして、それでも届かないときは旦那がしぃちゃんをひょいと抱えあげるわけ。
でもタイミングってもんがあるじゃん。 いきなりだとやっぱ彼女もびっくりするわけじゃん。
抱えられた瞬間「あっ」て叫んでバランスを崩して。二人一緒に踏み台から落っこちて。
もつれあって。うっかり肌が触れ合って。はっとして。互いに顔を赤らめて。急いで起きあがって。
んで料理再開。ベーコンエッグを作る。いやいや違った。ベーコンエッグは俺の好物だった。
俺じゃない旦那が、俺のいないキッチンリビングで待ってましたと手を合わせてるわけね。
しぃちゃんもその向かいにかけて……まて、しぃちゃん家では目玉焼きに何をかけるんだ?
俺は醤油一択なんだけど、彼女がソース派、塩党、果てはマヨラーである可能性も考慮せねばなるまい。
口へ運ぶ俺……じゃなくて。俺じゃない旦那を、ぐりぐり動く大きな目で見てる。めっさ見てる。
控えめな胸に丸いお盆を押しつけるようにして、白い頬を真っ赤に染めて、上目遣いで、
「はわわどうしよう砂糖と塩とパラジクロロベンゼン間違 (#゚A゚)
「うだらあああああああ!!!」
妄想の世界から這いだした。
.
- 406 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:41:46 ID:DP4dOSEo0
- .
(;*〓〓)
(;-[]3[])
(# A ) (あんな娘がポセイドンみたいなヤツに……?
んなこと、あってたまっか!)
彼女には未来があるんだ。
人をさらって監禁するような醜悪デブガキ腐れ御曹司が、
カードゲームの慰みに弄んでいいような娘じゃないんだ。
絶対に負けられない。
(;'A`) (でも……)
負けられないからこそ、
負けた時の、彼女の失望の目が、怖い。
ポセイドンのハンドは [ 3 ] 。 台札は [
K ] 。
当然のチャンスだ。 考えるまでもない。
9/11。 勝率82%。 普通にやればまず負けない。
この機会を逃したら、あとは……
一直線。
転がり落ちる様がわかりきっている。
.
- 407 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:44:16 ID:DP4dOSEo0
- .
(;'皿`) (ベットだ。 やるしかない)
俺はチップの箱に手を突っ込む。
黄色1枚。 青2枚。 手をすぼめるようにして、引き出した。
(#'A`) 「ベット……よ、よんッ! 4枚!!」
ある意味当然の決断だった。
4枚。 完全に “ 13枚の壁 ” を意識した選択。
17−4 = 13。
つまり4枚ベットなら、仮に負けても13枚は残るわけで……。
( 'A`) (ん?)
(-[]3[]) 「?」
( ゚A゚)
.
- 408 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:45:00 ID:DP4dOSEo0
- .
Σ(;l|l゚A゚) (あああああああ!!)
ちがっ。 ばっ、俺のばかやろう!
一撃死を回避するための壁が 【 13枚 】 じゃねえか。
じゃあ4枚賭けちゃダメじゃん! 負けたら残り13枚じゃん! ちょうど死亡ゾーンじゃん!
徳俵のつもりなら、14枚残るように調整しなきゃならんだろうが。
13枚じゃあ次の10枚ベットで追いつめられるだろうが。 死ぬだろうが。
ここでベットすべきは、4枚じゃなく3枚だろう!
.
- 409 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:46:20 ID:DP4dOSEo0
- .
三(; ゚A゚)ノ 「あっちょっと待って! それ! ちょっ!」
(-[]3[]) 「フォルド」
(; ゚A゚)ノ 「え?」
(-[]3[]) 「フォ ・ ル ・ ド!」
慌ててベット額変更を申し出ようとした矢先。
ポセイドンの突きつけた答えは、
本日2回目の 『 即フォルド 』 だった。
(;'A`)ノ (え? え? あ……マジ?)
(-[]3[]) 「悪運が強いねぇ。 勝負は次セットまでお預けといこう」
(;'A`)ノ 「……あ、ああ」
.
- 410 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:47:13 ID:DP4dOSEo0
- .
しぃちゃんがあたふたとアイマスクを外した。
驚く間も、安堵する間もなく、このセットは終わりを告げる。
┐(-[]3[])┌ 「やれやれ。
イカサマだなんだケチをつけられたことで、本当に流れを切ったかな。
……ま、そう言いつつ、次あたり爆発しそうだけどね」
口調とは裏腹に、表情は余裕を保っている。
失うことに何の未練もなさそうに、
3枚のチップをボックスへ落とすポセイドン。
アンティは情け容赦なく、そして二人に平等だ。
最小ダメージで済まそうにも、降りればチップは確実に減る。
.
- 412 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:48:05 ID:DP4dOSEo0
- .
(; A ) (た、た、助かった……)
もちろん、安心なんて片時もできそうにない。
次のセットでアンティが “ すくう ”
のは、
俺の足下かも知れないのだから。
======== 【 STAGE 9 RESULT 】 ========
Up Card : [ K ]
('A`) :
(-[]3[]) : -3
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1st BET 4
FOLD
..2nd
Final
Ante 0 3
Hands [ ? ] [
3 ]
============================
.
- 414 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:50:33 ID:DP4dOSEo0
- .
《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉
《〉 << 第10セット >> 〈》
〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》
.
_______________________________
|┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
|┃
┃|
|┃ ('A`) : 17
(-[]3[]) : 30 ┃|
|┃
┃|
|┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
10回目ともなると、置かれた状況のハードさが身にしみてわかる。
ヤツは残りチップ半分超。 対する俺は、壁へ手の届きそうな17枚。
枚数差は13だが、精神状態を含めるとそれ以上の溝ができてしまったといえる。
最初は40枚のライン。 次は半分のライン。
13枚の壁を意識すると、20枚のライン───。
そうやってチップが減り、『 ライン 』
を割る段階ごと、
正常な思考力がどんどん失われていくのがわかる。
右は近道。
左は回り道。
真っ直ぐ行ったらけもの道。
どれを選んでも結局、行き着く先は崖である気がしてならない。
.
- 415 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:51:42 ID:DP4dOSEo0
- .
(;l|l'A`) -3 -3 「くっ……はぁ、うぅ……」
状況は依然芳しくない。
眼前暗黒感っつうのか、視野が少しづつ狭窄しているのがわかる。
もともとメンタルが強いわけではなかったが、いよいよもって限界を感じた。
一日を通して磨耗しきった精神は、針を振り切ろうとしていた。
ポセイドンが何か言ったようだが、よくわからない。
聞き逃してしまったようだ。
答えの代わりに曖昧に頷き返す。 胃が絞られるようにきりきり痛む。
なんだかハンドが見づらい。 動悸が収まってくれない。
胸に圧迫感が。 苦しい。 ああどうしよう。
はやく、はやくハンドを確認しなきゃ。 見ないとヤバい。 見ないと!
(l|l゚A゚) 「あ……」
ポセイドンが一瞬視線を下げた。 下。 ロー。 ローカード。
そうか、これは暗号じゃないか? 俺が掲げているのはきっとローハンドだ。
ヤツの声がいつもより半音くらい高かった気もするし、間違いないだろう。
ローだ。 ロー。 ろー。
.
- 416 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:53:28 ID:DP4dOSEo0
- .
左下からの連続音が、鋭く鼓膜に突き刺さった。
手元のタイマーを取り落としそうになる。 その脇のコースターも。
やべえ。 タイマーはともかくコースターを落とすとまずい。
ハンドが見えてしまう。ローハンドを見られて、見てしまっちゃまずい。
まずい。 まずい。
タイマーのスイッチを慌てて押さえる。
両手のひらに、じっとり汗をかいているのがわかった。
(-[]3[]) 「くくっ……相当のプレッシャーを感じているご様子で」
テーブル。 真ん中のテーブル。 戻った。
白いテーブル。 長方形の台上へ。 戻らされた。
ベットは子方から。
ベットは子方から。
ベットは子方から。
ヤツのハンドは [ 2 ] だ。 ハートが2個だった。
3個じゃない。 2個だ。 負けるわけがない。 普通なら負けない。
.
- 417 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:56:05 ID:DP4dOSEo0
- .
でも俺はローハンドだ。 ヤツが鼻頭を掻いた。 ふんと息を鳴らした。
じゃあやはり間違いない。 ロー。 ローハンドだ。
特殊だ。 罠だ。 怪しい。 危険だ。 怖い。 逃げたい。 負けたくない。
:::(l|l A )ノ::: 「す、少し、時間を……くれ……」
なにか、おかしい。
せいしんが、ふつうじゃない。
ささえていたいとが、ねもとから、ぷっつりいっちまったみたいだ。
台札は [ 5 ] 。 まただ。 また。 またローハンド同士の対決。
奇数はマズい。 奇数は割り切れない。 だから良くない。 せめて偶数なら。
また予想を裏切られる。 また負ける。 またチップが減る───。
ヤツはまた、弱いハンドと見せかけて、俺の裏をかくつもりでいる。
.
- 418 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:57:34 ID:DP4dOSEo0
- .
(-[]3[]) 「わかった。 じゃあベット。 1枚」
て
(l|l゚A )ノ そ 「うぐっ」
(-[]3[])つ 「ほら早く! ドクオさんの番だよ! ほら!」
(((l|l A ))) 「あ、ああああああ!!」
おちつけ、おちつけ、おちつけっ!
ヤツは [ 2 ] 。 最弱同然のどうしようもないハンドだ。
まず負けない。 でも今回はヤバい。 [
2 ] は偶数だから余らないから───。
(-[]3[]) 「急げ! 負けるぞ! 早く選んで!」
負けたくない!
でもダメなんだ、あいつ、即フォルドしなかった。
罠なんだ。 俺が賭けたら、引き上げられるんだ。
レイズが待ちかまえてるんだぞ! おい! 責任取れるのかよおい!
.
- 419 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:58:56 ID:DP4dOSEo0
- .
逃げられなくなってしまう。
今なら間に合う。 今なら。
怖い。 逃げないと。 取り返しがつかなくなってしまう!
(l|l゚A )
なぜなら! [ 2 ] は強いんだ、 [ 3 ]
より。
どちらも勝てるハンドは二種類。
だけど、[ Q ] に勝てるのは [ K ] と [ 2 ]
だけ。
(((l|l A )))
下克上の可能性がある! だから強いんだ!
[ 2 ] は [ 3 ] より強い!
俺は正しい! 間違ってない!
(( <<((l|l AAA ))>
))
だから危険だ! [ 2 ] ! [ 2 ]
はデンジャラスハンド!
赤信号! CAUTION! エマージェンシー! デッドオアアライブ!!
黄色と黒のストライプが! WARNINGの文字が飛び交う! 回転式サイレンが鳴り響く!
.
- 420 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:00:51 ID:DP4dOSEo0
- .
(;l|l゚A゚) 「レイズ! れ、れ、いちっ」
(-[]3[]) 「え? なに?」
(;l|l゚皿゚) 「1枚レイズだ! ちがっ、2枚! これで文句ないだろうが!」
紛糾極まった。 最後は叫び声になっていた。
けらけらと笑うポセイドンの横で、しぃちゃんが何事かと眉をひそめる。
彼女は、くそっ。 そうだ。 また不安がらせてしまった。 ごめんよ。
(;l|l A ) ハァハァ
(-[]3[]) 「見てられないな。
じゃ、レイズしてあげよう。 7枚ねwww」
て
l|l (;l|l゚A゚) l|l そ 「!! 7……枚っ!?」
(-[]3[]) 「さあ決めてくれ。 今すぐにね!
乗るか降りるか。 ほらほら、勝負どころだよ?」
あああああ!
逃げたと思ったのに、また!
選択が。 悪魔が。 忍び寄ってくる!
.
- 421 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:05:36 ID:DP4dOSEo0
- .
しぃちゃんの表情が著しく曇った。 アイマスクを着けていてもわかる。
そんな顔をしないでくれよ、なあ。
お願いだ。 怖いんだ。 俺は。
:::(l|l A )::: (決めたく……ない……)
俺のせいで、君が地獄に突き落とされてしまうことが。
俺の肩に、君の命運がのし掛かっている、この状況そのものが。
(;*〓〓) 「……」
そいつが重い。 限りなく、押しつぶされそうに。
情けない。 でも震えが止まらないんだ。
助けてよ。 なあ、手を差し伸べてよ、しぃちゃん。
なに落ち着き払ってるんだよ!
俺は、俺は君のためにこんな思いをしてるんだぞ! なあ!
.
- 423 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:09:07 ID:DP4dOSEo0
- .
なにを考えている……落ち着け。 本当に落ち着けよ俺。
おかしい。 なんか変だぞ。 なんだってここまで動揺してるんだ。
さっきから、俺が俺じゃないみたいだ。
ヤツの能力か? ズルい。 卑怯だ。
イカサマだ!! くそ!!! このクソガキ!!
ふざけんな!!! しね!!!! ぶっ潰すぞ!!!!!!!!!
_, ,
(l|l A ) (俺は────!)
……でも、きっと。
……違うだろ、俺のバカ野郎!
::: (l|*〓〓) :::
彼女の感じているプレッシャーは、俺なんかの比じゃない。
しぃちゃんは、このギャンブルで不利益を被る当人だ。
負けたら体の自由が奪われる。 明日が閉ざされる。
心が、記憶が、生きてきた刻印が、失われる。
何をされても文句すら言えない、
従順な操り人形にされてしまうのだ。
.
- 424 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:10:36 ID:DP4dOSEo0
- .
( A ) (あ……れ……?)
それは死と同義ではないのか。
俺の選択が、彼女を死に追いやってしまうのか。
( ゚A゚)
l|l <(l|l゚A )> l|l (─── いやだ!)
あああああ。 怖い、震えが止まらない。
強迫観念でがんじがらめでめちゃくちゃでぼろぼろだ。
こんなの。 ずっと最後まで気付かなければ良かったんだ。
13枚の壁なんて。
敗北にともなう、しいちゃんの処遇なんて。
軽く考えすぎていた。
おとぎ話の世界だけだ。
さらわれたお姫さまが、何をされるでもなく牢屋の中で助けを待てるのは。
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- 425 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:11:51 ID:DP4dOSEo0
- .
幸せ? 救い? そんなのあるはずがない。
それが証拠に、俺は何度も何度も見てきたじゃないか。
聞いてきたじゃないか。 感じてきたじゃないか!
心を冒された者達の煩悶を。
涙を。
呻きを。
狂態を。
., -―=''''''¨¨´ ̄ ̄ ̄ ̄"゛'''=―-、
―-=三 ::: (* ;−::) :::
三=-─
.`‐―= ..,,,,______,,,,..=―‐´
そして何より、目の前にいる少女の、悲しみを。
目元を腫らして。 顔をぐしゃぐしゃにして……。
夜の校舎、窓際で涙を流す彼女を。
心を土足で踏み荒らされ。 悲痛な叫び声をあげながら。
水の中でもがき、のた打ち回る、しぃちゃんのあの姿。
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- 426 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:13:46 ID:DP4dOSEo0
- .
(( <(l|l A )> )) (どうすりゃいいんだよっ!! くそっ!)
7枚へのレイズ。
ハッタリじゃない。
ポセイドンは確実に潰しにきている。
ヤツがベットを引き上げたゲームでは、俺は一度たりとも勝てていない。
追い立てるがごとく選択を促す様に、悪辣な意図をひしひしと感じる。
乗るのか? レイズに。
あからさまに罠なのに。 地獄から手招きしているのに。
俺はローハンドだ、そこは間違いない。 間違いないんだよ!
7枚のショーダウンは、実質10枚の勝負となる。
ここで負けると残りは7枚。
そうなってしまうと、はっきり言ってもう勝てない。
ベットの自由が利かなくなることは、
駆け引きの権利の大半を失うということだ。
イニシアチブを完全に握られるということなんだ!
わかってんのかよ!! おい!!!!
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- 427 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:16:17 ID:DP4dOSEo0
- .
ここでコールして、負けて、残り7枚になる。
すると、以降のベット ・ ラウンドは、実質ヤツの支配下におかれる。
俺にできるのは、ゲームの体をなさない機械的なベット。
7枚の紙くずをいかに長く持たせるかという、ただそれだけ。
滅びの瞬間をただ待つのみじゃねーか!!!
ばーか!! そんなこともわかんねーのか!!!
(; A ) (だからこそ、ここ、ここで勝たなきゃだろ!?)
目の前が暗くなる。 現実感が遠のいてゆく。
マーブルグレーのスクリーンに、おぼろなビジョンが映し出された。
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- 428 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:21:50 ID:DP4dOSEo0
- .
─── ぼろぼろの服。
肌は傷だらけで、床にその矮躯を力なく横たえるしぃちゃん。
暗い双眸が、立ちすくむ俺をうつろにとらえ。
消え入りそうな声が、けれどはっきりと、俺の耳に届く。
『 ……信じていたのに
』
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- 429 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:23:45 ID:DP4dOSEo0
- .
気付けば、喉が裂けんばかりに叫んでいた。
て
(;-[]3[]⊂ そ 「ひ!?」
Σ(l|l*〓〓) 「ドく………さ!?」
両手で机を叩き、
恫喝さながら眼前の醜面へ怒鳴りつける。
て
(l|i-[]3[]) そ 「─── なっ!?」
.
- 430 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:25:13 ID:DP4dOSEo0
- .
(;-[]3[]) 「……あ、ああ、コホン」
( A ) 「……」
(;-[]3[]) 「……そ、その選択でいいのかい?」
俺は無言で何度も頷いた。
これ以上聞き返されたくなかった。
重なったからだ。
想像の中で生気を失っていたしぃちゃんの。
濁った視線が、絶望をたっぷり含んだ声色が、あまりにも。
そっくりだったのだ。
何度も夢に出てくる、屋上の女の子に。
ぼくの目の前で。 何度も。 何度も何度も何度も。
幾度となく転落死する少女、トモミに。
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- 431 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:29:50 ID:DP4dOSEo0
- .
(-[]3[]) 「そ、そうか。 それでいいんだな……」
プレッシャーに、負けた。
逃げ出した。
あっさりと。
目の前の勝負から。
笑われ、なじられる用意はしていた。
が、実際には嘲りの言葉をかけられることもなく。
あまりに極端な俺の変化に、面食らったのだろうか。
淡々と話すポセイドンの口調からは、
むしろ、愉悦の色は薄くなったように感じられた。
(-[]3[]) 「チッ。 息の根を止めてやろうと思ったのに」
ぼそりと吐き捨てる声が聞こえた。
しぃちゃんが目隠しを解く。
彼女と視線を合わせることはできなかった。
.
- 432 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:30:55 ID:DP4dOSEo0
- .
苦悩の果てに俺がつかみ上げたのは、
最悪としか言いようのない選択肢だった。
『
─── 救えないよ、誰も 』
本当に、救いようがない。
[ 2 ] のハンドを前にして、フォルド。
冷静に考えれば、勝負以外にないのに。
またとないチャンスなのに。
それなのに、俺は。
怖かった。
7枚レイズの真意がはかれなかった。
そしてそれ以上に、
少女を奈落へ突き落とすことになるかも知れないという、
その重圧に耐えきれなかった。
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- 433 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:31:57 ID:DP4dOSEo0
- .
( A )
またチップが減った。
レイズしていた分の2枚と、アンティ3枚。
計、5枚。
(((l|l A ))) 「あああああ……」
後悔がどっと押し寄せる。
さっきまでのが荒波なら、今は津波。
俺の全てを呑みこみ、押し流そうとしている。
『 君には、救えないよ
』
当たり前だ。 先延ばしにしただけだ。
目の前の選択から逃げて。
勝ち得るチャンスをふいにして。
力が抜け、俺はテーブルに突っ伏した。
.
- 434 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:32:56 ID:DP4dOSEo0
- .
======== 【 STAGE 10 RESULT 】 ========
Up Card : [ 5 ]
('A`) : -5
(-[]3[]) : -1
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1st BET 1
RAISE 2
..2nd RAISE 7
FOLD
Final
Ante 3 1
Hands [ ? ] [
2 ]
============================
(-[]3[]) 「……相当参ってるようだねえw
さあ、早いところ済ませてしまおうか。
もう決着はついたようなもんだけどさぁ」
ヤツの言う通りだ。
俺は戦意を喪失していたも同然だった。
.
- 435 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:34:40 ID:DP4dOSEo0
- .
次のゲームなんてやりたくない。
が、それ以上に、この空気に耐えられそうにない。
心配げなしぃちゃんの視線が、
今はもう、俺を非難しているようにしか思えないのだ。
『 どうして勝負から逃げ出したんですか?
』
『 わたしのことなんて、どうでもいいんですか
』
そう言っているようで。 怖い。
『 ─── 人 殺 し 』
やめてくれ!
さっさと次のゲームへ移ろう。
そうすれば、彼女の両目はふたたび闇に覆われる。
冷たい、咎めるような眼差しを、視界に入れなくてすむ。
.
- 436 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:36:09 ID:DP4dOSEo0
- .
(-[]3[]) 「情けないねぇ。 もうちょっと骨のある人かと思ったけどwww
見なよサイアミーズ。 これが君の信頼していた人の末路だ」
うるさい、早く次にいってくれ!
しぃちゃんの視線を、存在を、封じ込めてくれ!
(-[]3[])⊃ 「くっ。 くくくっ……」
逃れたい一心から、
俺は知らず知らずコースターに手を伸ばしていた。
::: (l|l A )⊃::: 「……」
……
その時だった。
本当に偶然の出来事だったのだ。
「「 あっ 」」
.
- 437 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:38:06 ID:DP4dOSEo0
- .
テーブル上でそれは起きた。
払いのけようとした俺の手と、回収すべく伸ばされたポセイドンの手が、
両端から同時に力を加え。
指に引っかかったそれ ───
さっきまで俺のハンドだった一枚のカードは、
しなやかに湾曲し、コースターから跳ね上がる。
(;'A`)⊃ 「───ッ?」
宙で一度翻ったあと、ス……と着地し、
(;-[]3[]) 「!」
(;*゚ο゚) 「ぁ……ぅ?」
三つの視線の中央に、その素顔が露わになった。
.
- 438 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:41:03 ID:DP4dOSEo0
- .
『 !!! 』
絵柄が目に入ったのは、ほんの一瞬だった。
壁の向こうのポセイドンが、その体躯に似つかわしくない俊敏な動きで
カードを手元へ引き寄せたかと思うと、次の瞬間には裏返していたからだ。
息が荒い。
すぐさま他のカードと混ぜ合わせ、鬼のような形相をこちらに向ける。
(#-[]3[]) 「触れるなって言っただろう!」
Σ(; ゚A゚) 「あ、ああ……」
(((#-[]3[]))) 「次の親は僕だ! ルールは守れよルールは!」
(;'A`⊂ヽ ))) 「わ、悪い」
.
- 439 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:42:28 ID:DP4dOSEo0
- .
何がこいつの逆鱗に触れたのか、すぐにはわからなかった。
_,
(;*゚ -゚)
アイマスクを握りしめたしぃちゃんが、ぽつりと漏らす。
『 くぃーん……? 』
そうだ。
今この目で確認した、前回の俺のハンドは、
[ Q ] 。
_, ,_
(#-[]3[]) 「どうでもいい! 次だ、次のセットだ!!」
(;'A`) 「……」
( ゚A ) 「!」
一瞬遅れて、事の重大さを理解した。
.
- 440 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:43:36 ID:DP4dOSEo0
- .
( ゚A゚) ( [ クィーン ] !? いや、それって)
ふたたび早鐘を打つ心臓。
じゃあ、もし、さっきのベットラウンドで降りてなかったら。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
┌───┐
│(⌒⌒)│
│ .\/
.│
(-[]3[]) │
2 │
└───┘
\_人_人∧从_人_∧_人_从_//
)
>
< V S >
< (
/^Y ̄∨ ̄∨^Y^⌒Y^YY^^Y^
┌───┐
│(⌒⌒)│ ('A`)
│ .\/ .│
│ Q │
└───┘
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
.
- 441 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:47:39 ID:DP4dOSEo0
- .
(:::::゚A::) ( [ Q ] VS [ 2 ] !
負けていたのか! 俺は!)
下克上の組み合わせ。
愚行に等しいフォルドは、結果的に正解だったのだ。
もしもレイズしていたら。
いや、コールでも同じことだ。
レヴォリューション ・ アタックは、ベットの倍額。
7枚レイズに乗っていたら、14枚。
アンティ3枚を加えて、総額17枚のロスト。
─── 1 7 枚 ! ?
Σ(; ゚A) (終わっていた、一撃で!)
九死に一生とはこのことだ。
一瞬の気の迷いで、紙一重で、俺は生き長らえたのだ。
.
- 442 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:51:02 ID:DP4dOSEo0
- .
が。
安堵する間もなく、新たな疑問がわき起こる。
( A゚) ( ────── !?)
ショックをバネにして、俺の脳は正常に動き始めていた。
ちょっと、待て。
ヤツは、俺のハンド [ Q ] を目の当たりにしながら、
7枚ものレイズをふっかけてきたっていうのか。
なんていう心臓だ。
自分のハンドに相当の自信がないと、
そんな大それたギャンブルは。
(;; A゚) (できるわけが、ない)
確信していたのか?
俺の態度から、目線から、言動から。
自分のハンドが、最強の [ K ]
であることを。
それとも ───。
.
- 443 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:52:33 ID:DP4dOSEo0
- .
<< 最初から、知っていたのか >>
コースターに伏せられたハンド。
おのれの懐刀が。
[ Q ] を倒せる、数少ないランクであると。
<< 一撃必殺の
[ 2 ] であると >>
(;l|l A゚) (まさか、それは)
瞬間、ポセイドンの漏らした呟きがよみがえる。
『 チッ。 息の根を止めてやろうと思ったのに……
』
.
- 444 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:53:50 ID:DP4dOSEo0
- .
て
(;l|l A) そ (レイズに乗れば、俺がこのセットでゲーム終了することを知っていた?)
偶然とは思えぬ符号。
奴はやっぱり何かやっていたのか。
<< イ カ サ マ >>
::::(;;゚'A゚)::::
でも俺は、外で言質を取ったはず。
中でもしっかり確認した。
己の目で、指で。
『 ギャンブルルームの中に、イカサマ用の仕掛けはない 』
ポ リ グ ラ フ
嘘発見器を使用した際に、
『 イカサマしない 』 そう言わせなかったことが悔やまれる。
.
- 445 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:55:02 ID:DP4dOSEo0
- .
だが。 どうやって?
ルーム内に目立った仕掛けがないのは確かだ。
自分のハンドを知るために、ゲームを通して何を仕込めるっていうんだ?
間仕切り。 天井。 壁。 ドア。 カギ。 椅子。 タイマー。 ポセイドン。
カード。 ボックス。 テーブル。 チップ。 アイマスク。 コースター。 しぃちゃん。
他に何がある?
このルーム内に、どんな見落としがあったっていうんだ?
『 僕の超能力は、勝負には用いない 』
わからない。
ポリグラフが本物だという前提が覆らない限り、
イカサマなんて、できるわけが───。
.
- 446 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:56:08 ID:DP4dOSEo0
- .
.
.
.
.
.
! ?
.
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.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
. (゚A゚)
.
- 447 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:56:55 ID:DP4dOSEo0
- .
.
.
.
脳天に稲妻が走った。
.
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- 448 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:58:55 ID:DP4dOSEo0
- .
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.
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.
.
.
.
.
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.
.
.
.
.
.
.
.
. (゚A゚) ・ ・ ・ ・ ・ ぜ っ
.
- 449 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:59:51 ID:DP4dOSEo0
- .
.
.
.
.
.
.
前 提 が
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.
.
.
覆 る ?
.
.
.
.
.
.
.
- 450 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:00:34 ID:DP4dOSEo0
- .
.
.
.
.
.
(
゚ A ゚ )
.
.
.
.
.
.
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- 451 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:01:17 ID:DP4dOSEo0
- .
.
.
.
.
.
.
あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! !
.
.
.
.
.
.
.
- 452 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:02:46 ID:DP4dOSEo0
- .
その考えを核として。
ばらばらだった疑問のパーツが、ひとつずつ枠にはまってゆく。
感じた違和。
抱いた疑問。
不自然な現実。
それら全てが、トリックを形作るパズルの1ピースだったとばかりに。
ぴたり、ぴたりと。
(;:::::A゚)
ほぼわかった。 わかったんだと思う。
奴が今まで何をしていたのか。
(;::::A ) (『 嘘 』 はあった! 確実に!)
すべてはあの時の一言が発端だった。
ヤツが用意した数々の種は、
俺たちの “ 認識を狂わす ” ことを最大の目的として、蒔かれていたのだ!
.
- 453 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:04:20 ID:DP4dOSEo0
- .
わかるはずがない、こんなこと。
が───それでも。
可能性のひとつとしては、頭の片隅にあったはずだ。
ひとつひとつの出来事が、その考えを排除するように仕向けられていた。
都合のいい “ 先入観 ” を構築するべく、これらは用意されていたんだ。
::::(;; A ):::
俺の考えに間違いがなければ、それは───。
その時だった。
て
((;;゚゚A゚゚)) そ 「「 !? 」」
にわかに場がざわめき立つ。
コンテナの壁を通してもわかる、轟音。
.
- 454 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:05:01 ID:DP4dOSEo0
- .
続けて響いた恫喝の声に、俺たちは身を固くする。
ミ(;*゚□゚) 「な……に? そ……」
([]3[]-;)彡 「なんだ? おい、いったい何が……」
外で、何かが起きている。
( A゚) 「!」
続けて目に飛び込んできた “ 不可解な行動
” に、
俺は疑惑への確信を深めた。
ここで、この人物が、こうする理由はひとつしかない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
- 455 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:05:45 ID:DP4dOSEo0
- .
だが、のべつ追い立てる現実は、
我々に悠揚たる思考を許してはくれない。
(;'A`) (これは……シャッターの開閉音?)
俺たちの預かり知らぬところで。
歯車は、回り始めていた。
.
_______________________________
|┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
|┃
┃|
|┃ ('A`) : 12
(-[]3[]) : 29 ┃|
|┃
┃|
|┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(続く)
.
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