239 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:24:03 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「フォルド」


 ヤツの決断は早かった。


:::(;`A´)::: (頼むっ、ハイカード、ハイカ……)
 ::: 人:::

    
Σ(;'A`) 「あ、えっ?」
   人


 カードの背に念を送っていた俺。
 投げかけられた一言に、思わず顔を上げる。


(;'A`) 「降り……か?」
.

240 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:24:44 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「勝負をかけるべき地点は、ここじゃぁなさそうだからね。
       ……サイアミーズ!」


 ポセイドンの声が届くと、
 しぃちゃんは弾かれるようにアイマスクを外した。
 彼女の様子を確認したのち、ヤツはそちらへ左手をかざす。

 宙空に揺れる青色。
 眩しげに眉を顰め、しぃちゃんはそいつを視界にとらえる。

 時を置かず、ポセイドンはスッと指の力をゆるめた。
 突きつけられた青いカード4枚は、
 音もなく、ボックスの暗黒へと吸い込まれていった。


(-[]3[]) 「ドクオさん。 2ターン目のフォルドは……」

(;'A`) 「わかってる」


 しぃちゃんの視線がこちらへ向く。
 俺はチップを1枚取り出し、ボックスへ投入した。
.

241 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:26:14 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「くくっ。 ホッとするのは早いよ、ドクオさん。
      カードへ投げられる視線、口調、仕草。
      これら全ての反応が、僕の判断材料としてインプットされてゆく。
      ゲームを通して、あなたはどんどん自分の情報を晒しているんだ」
 _,,
(;'A`) (うっとおしいヤツだな)


 相手側のフォルド。
 直接対決ではなかったものの、実質上の勝利。


(-[]3[]) 「僕にとって、これは捨てゲームじゃない。
       意味のある勝負放棄だ。 そのことをお忘れなく」


 ヤツの言うことは真に受ける必要はなさそうだ。
 こっちだって、ゲームを通して様々な情報を受け取っている。

 このお坊っちゃん、負けず嫌いだな。
 それも相当の。
.

242 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:27:27 ID:ynzviyfM0
.
 ======== 【 STAGE 2 RESULT 】 ========

    Up Card : [ 6 ]

            ('A`) : -1      (-[]3[]) : -4 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st                  BET  1
          RAISE 2
    ..2nd                  FOLD

    Final

    Ante        1              3

   Hands       [ ? ]            [ 4 ]

 ============================


( 'A`) (1枚差、か)


 そしてヤツは残り46枚になった。
 俺の45枚とほぼ変わらない。

 もちろん、これでゲームが振り出しかというとそうではない。
 このポーカー勝負は消耗戦だ。
 両者のチップは減る一方で、増えることはあり得ない。
.

243 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:28:41 ID:ynzviyfM0
.
( 'A`) (ゼロになったら負け? ……いや、違う)


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  (-[]3[]) 『 チップは公平に50枚ずつ。
         賭けられるチップが無くなった時点で負けだ 』

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 こいつは確かそう言っていた。


(;'A`) (あれっ。
     てことはこのゲーム、アンティが払えなくなった時点で負けになるのか?
     敗北条件は3枚以下? 4枚以下? ちょうど0枚の扱いは???)


 正確なデッドラインの把握。  考えるまでもなく、これはとても重要な部分だ。
 今の今まで気付かなかった自分の愚かさを恥じる。
 俺は何気なーい装いでポセイドンに聞いた。


( 'A`)づ 「あーところでさ、負けの条件ってどういう……」

(-[]3[]) 「ストップ!」

( 'A`)づ 「?」


 コースターへ伸ばしかけていた手を止める。
.

244 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:29:27 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「いいかい、僕は勝負を降りたんだ。
      フォルドが発生したら、
      両者の支払いを審判とともに確認し、次のセットに移る。
      使わなかったハンドは決してめくらないように」

(;'A`)っ 「ダメ、なんだ」


 ダメと言われると余計気になる。
 センターテーブルに置かれた俺のハンド……。

 おそらくはハイ ・ カードだったのだろうが、
 相手の傾向を探る上でも、数字を確認しておきたいのに。


(-[]3[]) 「ショーダウンしない限り、
      互いの闇は暴かれることがない。 そういう決まりなのさ。
      ブラフか。 真実か。 戦わぬ者たちがそれを知る権利はない。

      そして次の親は僕だ。 シャッフルは親からだろ?
      カードにはそのまま触れないでくれ。
      もちろん、山札にも」
 _,,
(;'A`) 「あ、ああ……」
.
246 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:30:07 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「くくっ。 ドクオさんの不安な心、手に取るようにわかるよ。
      ……虚か。 実か」


 『 たった二つの見極めすらできぬ者に、女神は微笑まない。
   まして栄光は掴めない 』


 惑わされるな。
 あいつはこのセットを降りた。
 俺のカードに恐れをなして、勝負を放棄したのだ。


 『 これは、そういうゲームなのさ 』


 ヤツのハンドはローカード [ 4 ] 。
 そして俺のは、ハイ ・ カード。
 相手の “ 虚 ” をもねじ伏せる、力を宿したランク。

 事実は覆らない。
 台上に鎮座するシリコン ・ コースター。
 ── その上に眠る、一枚のトランプカード同様に。
.
249 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:33:53 ID:ynzviyfM0
.
  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第3セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 45           (-[]3[]) : 46          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 ポセイドンのフォルドにより、ほぼ同点となって迎えた3セット目。
 俺の脳内では、一つの考えがぐるぐる渦巻いていた。


(;'A`) (よくよく思い直してみると……)


 不利だ。

 そう気づいたのは、ハンドの選択を終え、
 ポセイドンに残りカードを差し出そうという段階だった。
.

250 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:34:39 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「どうしたんだいドクオさん? 顔色がよろしくないね。
      ははーん、さては……」


 メガネ小僧の言葉を遮るべく、
 カードの束を、目の前でテーブルに叩きつける。


('A`) 「五月蠅い」

(-[]3[]) 「……」


 相手は押し黙った。

 正直、ウザい。
 トーキング ・ タイムの開始前から、
 こうもいちいち探りを入れられるのはご免こうむりたい。


('A`) 「言っておきたいことがある。
    ゲームに熟達したお前と、初心者の俺では開きがある。
    フォルドの際はカードが確認できない……っていうのは、
    こちらにとって不公平だ」
.

251 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:35:40 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「経験不足を補う措置が欲しい。
      つまりハンデが欲しい、そう言いたいわけか」
 _, ,
(;'A`) 「……あ、ああ」


 認めるのは癪だが、万が一にも負けられない勝負だ。
 一時のプライドより、確実な利を得たい。


(-[]3[]) 「まったく。 僕は挑戦権を増やしてあげてるだろう?
      ホライゾンさんにドクオさん、
      どちらかが勝つだけで、ギコは解放するって言ってるじゃないか。

      僕のほうは1回負けると終わりなのに対し、
      あなたたちには2回のチャンスを与えているんだ。
      ハンデとしては充分だと思うけど?」
   _,、_
Σ(;'A`) 「ぐっ……で、でも」

(-[]3[])つ 「どうしてもって言うんなら、そこにいる彼女に
        “ ポーカーのコツ ” でも聞いてみたらどうだい?
        今のドクオさんよりは、このゲームに詳しいかもしれないよ?」


 透明の壁の向こう。 内股で椅子に座るしぃちゃんの顔を見た。
 彼女もまた、目隠しのままこちらを向く。
.

252 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:36:54 ID:ynzviyfM0
.
 確かに、しぃちゃんはブーン達の勝負を間近で体験してきた。
 彼女にこれまでの経過を教えてもらうことができれば、
 ゲームの攻略に必要な “ 何か ” が掴めるかも知れない。


(;'A`) 「しぃちゃん……あのさ」

(*〓〓) 「は、い」

( 'A`) 「これまでの勝負、“ ジャッジ ” してきてどうだった?
     何か気付いたことはない?
     あ、ブーンはどうやって負けたんだ?」

(;*〓〓) 「……ぁ……ぇ……」
 _,
(;'A`) 「……しぃちゃん?」


 様子がおかしい。
 彼女はぱくぱくと口を動かしている。
 が、そこから意味のある言葉が紡がれることはなかった。
.

253 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:37:34 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「ああーそうそう!言い忘れてた!」


 突如、眼前より高笑いがあがった。


(-[]3[]) 「愛しの “ サイアミーズ ” には、勝負の最中余計な口を挟まないよう
      あらかじめ “ 命令(オーダー) ” をかけてたんだった!
      ははっ! そうだったそうだった!」
   _,、,
Σ(;゚A゚) 「なっ」

(-[]3[]) 「はい、タイムアップ」


 言いつつポセイドンは後方へ下がり、タイマーに手をかける。
 短いスイッチ音がコンテナ内に響いた。


(#'A`) 「てめぇ、この……!」

(-[]3[]) 「さあ、トーキング ・ タイム開始だ。
      所定の位置へどうぞ。 早くしないと負けにするよ?」


 舌打ちひとつ、コースターをふんだくる。
 既に山札はセットされていた。
 台札は [ K ] 。
.

254 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:39:17 ID:ynzviyfM0
.
 ハンドを乱暴にひたいへ当て、目を凝らす。
 奴のカードは……う、よく見えない。

 _,、_
(;'A`)⊂ (あれは…… [ 8 ] か [ 9 ] ?)


 この二つは数字も絵柄も似ているので、遠目に判別しづらい。
 さらに目を細めると、ヤツのハンドはどうやら [ 9 ] であるようだった。


                        (-[]3[])
                          │      【 WIN !! 】
                          ↓├───────→
    .[A] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] 【9】 [10] [J] [Q] [■]
  ←──────────────┤
  【 LOSE... 】


 こちらのハンドが10以上である確率…… 3/11 ≒ 27% 。

 ショーダウンした際の勝率は27%。
 2セット目と立場が逆のパターンか。
 勝負をかけるには厳しい数字だ。
.

255 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:40:48 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「焦るとどんどん心理が明るみになるよ?
      ほらほら、目が泳いでる」
 _,
(#'A`) 「っるせぇ!」

┐(-[]3[])┌ 「ははっ。 嫌われちゃったなぁ〜。
         そんなに頭に血がのぼってちゃぁ、
         ポーカーはおろか、どんな心理ゲームでも勝てやしないよ?」
 _,
(#'A`) 「余計なお世話だッ! そ、それより!」

(-[]3[]) 「?」
 _,
(#'A`) 「まずはひとつ、質問に答えろッ!
     ま、負けの定義についてだ!」

(-[]3[]) 「んっん〜? どういう事かな〜?」


 居丈高な対応がまた憎たらしい。
 憎たらしいが……忘れないうちに、これだけ確認しておかなければ。

 _,
(;'A`) 「“ 賭けられるチップがなくなったら負け ”
      っていうのは、一体ぜんたいどういう意味だ?
     アンティ込みで、総チップが4枚以下になると負けってことなのか?」

(-[]3[]) 「ああ、そのことね」
.

256 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:42:11 ID:ynzviyfM0
.
 ポセイドンは軽く咳払いして続ける。


(-[]3[]) 「言葉通り受け取って欲しかったんだがね。
      チップを賭けるには、場代を除いて1枚以上のチップ保有が必要だ。
      つまり、4枚がアウトライン」
 _,
(;'A`) 「3枚以下になったら負け。 そう考えていいんだな?」

(-[]3[]) 「……と、本来ならば言いたいところだが、ね。
      さっきのドクオさんの “ 不公平うんぬん ” って言い分を考慮して、
      チップ0枚を負けのライン、ということにしてあげるよ」

(;'A`) (恩着せがましい奴)


 ラッキー! と俺が小躍りするとでも思っているのだろうか。


(-[]3[]) 「これはつまり。 仮に残り枚数が2枚になったとしても、
      場代を考慮することなく、2枚まるまるベットに回せるって意味だよ。
      ドクオさん、そのうちそういう事態に陥りそうだからね。 くくっ」


 一瞬タイマーへ視線を落とし、ポセイドンは続ける。
.

257 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:43:53 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「また、相手から残り枚数以上のベットを持ちかけられた場合……」



       (;'A`)そ          レイズ、9枚> ([]ε[]- )
    (チップ残り6枚)


      ヽ('A`)ノ  <コール!!          ([]ε[]-;)そ
    (チップ残り6枚)



(-[]3[]) 「レイズはできないが、コールしていい。
      もちろん、ショーダウンで負けるとそのままゲーム敗北となるがね」

ヽ('A`)ノ 「……」


 ちょっと考えてみたが、そんな状況はあり得ない事に気づく。

 参加者二人のポーカー ・ ゲームなんだ。
 敵の残枚数以上ベットだなんて、
 んな無駄なことをわざわざするはずないだろう。
.

258 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:45:18 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「これだけ譲歩してあげたんだ。 そろそろ納得してもらえるかな?」
 _,
(#'A`) 「譲歩っておま……互いに条件は同じなんだろ?
     別に俺だけ有利になったわけじゃないし」

(-[]3[]) 「はは、あまり駄々をこねないでくれよ。
       ハンデハンデって、子供じゃないんだからさ」


 連続的な機械音が、くだらない二枚舌ご披露タイムの終焉を告げた。

 早足で部屋の中央へ。
 肩をいからせ、コースターをテーブルに叩きつける。

 そんな俺の姿を、アクリル壁の向こうからせせら嗤うポセイドン。
 醜悪な声が耳にこびりつく。


(-[]3[]) 「くくっ。 さあて、ベットは子方から……」

( A ) 「ちょっと待て」


 俺はテーブルに手をついたまま、大きく一つ深呼吸した。
 ひんやりとした空気が肺に染みる。

 あー、煙草吸いてえ。
 ボディチェックの際、ライターともども黒服に取り上げられたけどな。
 ── そういえば、ブーンは “ アレ ” をどこに隠したんだろう?
.

259 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:46:18 ID:ynzviyfM0
.
 やにわに両の頬を叩いた。 予想外にいい音がした。
 目隠しされたしぃちゃんが、びくりと体を震わせる。
 ……あ、ごめん。


( A ) 「────」

 _,
(;'A`) (ふぅ、落ち着いた)


 悔しいが、さっきヤツの言ったとおりだ。
 あくまで理性的に挑まなければ、この勝負には勝てない。


(-[]3[]) 「くくっ。 終わったかい? 時 ・ 間 ・ 稼 ・ ぎ」

('A`) 「……」


 トーキング ・ タイムは過ぎた。
 このラウンドにおいては、
 んーな嫌味にいちいちリアクションを返してやる必要はない。

 俺は無言で椅子にかけると、
 つとめて冷静に、チップの箱へ指を差し入れた。
.

260 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:47:29 ID:ynzviyfM0
.
( 'A`) (何をするかは決まってる。
     相手は [ 9 ] 、台札は [ K ] 。
     勝率27%の状況──つまり)


 ベットにおける駆け引き。

 子方で、相手のハンドがハイ ・ カードの場合。
 最初のターンで取るべき選択は、
 実は “ 降り ” ではない。


('A`) 「……ベット。1枚」


 俺は青いカード4枚をテーブルに並べた。

 おそらくこれが最善の選択だ。
 『 チェック 』 のルールがないこのポーカー勝負で、
 もっともそれに近い “ 勝負保留 ” の方法。
.

261 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:48:48 ID:ynzviyfM0
.
 即フォルドすると、一方的にアンティ3枚の負けとなってしまう。
 ……が。


(-[]3[]) 「レイズ。 2枚」

('A`) 「……」


 1枚賭けで様子を見ると、様々な展開が待っている。
 相手の動向を確認した上で、再度身の振り方を選択できるのだ。

 強気のレイズで攻められたなら、そこで初めてフォルドすればいい。
 こちらは4枚の負けになるが、
 2ターン目のフォルドは、相手もチップを1枚支払わねばならない。

 その場合、発生する点差は差し引き3枚で、
 これは1ターン目にフォルドするのとほぼ同じ結果なのだ。


('A`) 「えー……レイズ。
    1枚上乗せで、3枚」


 それに、1ターン目で相手が降りてくれれば、
 自分は1枚も失うことなく、相手に3枚のダメージを与えられる。
.

262 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:50:26 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「へえ。 じゃあ僕もレイズだ。 8枚」
 _,,
(;'A`) (チッ。 やっぱそう来るか……。
     しかも8枚ときたもんだ)


 コールされるとショーダウンになるが、
 1枚ベットをしぶしぶ呑む── つまりレイズしないということは、
 『 一応勝負は受けるけど、あまり自信はない 』 と告白しているようなもの。

 それすなわち、こちらのハンドがハイカードである可能性の示唆。
 数字次第でうっかり勝ててしまうこともあるだろう。

 仮に負けたとしても、こちらの損失は4枚。
 1ターン目フォルドの3枚と、ダメージ的にそう変わらない。


('A`) 「……フォルド」


 結果、俺は勝負から降りる選択をとった。
.

263 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:51:44 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「くくっ。 わかりやすいな〜ドクオさんは。
      ハッタリも中途半端だね。 全てお見通しだったよ?」

('A`) (あーうるせーうるせー)


 相手が何を引くかは運だ。
 敵のハンドが強ければ、とにかく機会を待つしかない。

 が、何もせずにただ降りるのは、はっきり言ってジリ貧。
 保留を続けているうち、高額なアンティに削り殺されてしまう。


( 'A`)ノ ⌒ 「ほらよ」
     

 しぃちゃんが目隠しを取ったのを確認し、
 5$チップ一枚と1$チップ、
 計6枚分のカードをボックスへ投入する。


(-[]3[])ノ゙l|l 「くくっ。 じりじり削っていこうって作戦かな?」


 3ターン目フォルドのため、ポセイドンも2枚のアンティを支払う。


( 'A`) (ここがミソだ。
     例え降ろされたとしても、
     2〜3ターン目は相手もダメージを負う)
.

264 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:53:06 ID:ynzviyfM0
.
 発生したチップ差は4枚。
 27%で11枚の打撃、73%で11枚支払う羽目になることを考慮すれば、
 ショーダウンの期待値は……ええと暗算めんどくさい。

 よくわからんけど、たぶんマイナス5枚くらい。
 フォルドを下回ってると思う。

 ともかく。
 70パー以上の高確率で、一方的に大ダメージを食らうことを考えると、
 ここでの勝負放棄は正しい選択だろう。

 目線? 口調? そんな不確かな情報は考慮に入れない。
 あくまでクールに、デジタルに。 合理的に、だ。

 そのとっかかりとして……。


( 'A`) (俺はいま、確信した)


 『 子方の1ターン目は、
   相手のハンドに関わらず、1枚以上ベットする 』


 これこそが最善の選択。
 最初のターンでの即フォルドだけは、絶対しちゃならないんだ。
.

265 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:54:23 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「そんな調子でいいのかな〜?
      弱気ばかりじゃぁ、生命線、先に尽きちゃうよ?」

(;*´−`) 「どく……ぉさ……」


 投げ出された勝負の大海原。
 拠るべき船も、進むべき灯台も未だ見えないが……。
 セオリーという名の、小さな板きれを掴んだ気がした。


( 'A`) 「────次のセット、行こうか」


 今はこれでいい。
 じっと耐えて、待つんだ。
 いずれ来るであろう機会を。


 ======== 【 STAGE 3 RESULT 】 ========

    Up Card : [ K ]

            ('A`) : -6      (-[]3[]) : -2 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st    BET  1
                         RAISE 2
      ..2nd   RAISE 3
                         RAISE 8
    Final    FOLD

    Ante        3              2

   Hands        [ ? ]            [ 9 ]

 ============================
.
266 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:59:12 ID:ynzviyfM0
.
●第三二話 『 夢幻回廊 ── VS. ポセイドンF 』


  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第4セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 39           (-[]3[]) : 44          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


(;'A`) (───きっっったぁぁぁぁあああああああ!)


 チャンスは想像以上に早くやってきた。


    [A]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿


 声が出そうになるのを必死でこらえる。
.

267 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:00:23 ID:ynzviyfM0
.
    [A]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿 「はー、なるほどねぇ」


 台札 [ J ] をめくって迎えたトーキング・タイム。
 ポセイドンの頭上、掲げられたハンドは、最弱の[ A ] だったのだ。


    [A]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿 「しっかしドクオさんも、よくまあ連続してそんなカード引けるねえw
          日頃の行い良くないんじゃない?」

(;'A`) (言ってろ裸の大将! ばか! うんこ!)


 どんなに余裕ぶって煽っても、
 ひたいに最弱の[ A ] を貼りつけてるだけで、まぬけな絵面にしか思えない。
 ドヤ顔だからなおさらだ。

 おめーなんざぜんっっっっぜん怖くねえよ、そう突っ込んでやりたい。
 気を抜くとすぐに頬がゆるみそうになる。
 さっきまでとは別の意味で手が震える。

 ポーカーフェイスの重要性を痛感した。
.

268 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:02:20 ID:ynzviyfM0
.
<ピピピ……


(;'∀`) 「時間、かぁ」


 喜びを隠すことに気が行きすぎて、
 結局何を話したかもよくわからないうちに、トーキング ・ タイムは終了した。


(-[]3[]) 「じゃあ……」

('A`)+ 「ベットラウンドだな!」

(-[]3[]) 「やけに張り切ってるね」

Σ(;'A`) 「き、気のせいだろ」


 ああん、俺の馬鹿。
 はやる気持ちを抑えつつ、相手の選択を座して待つ。
.

269 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:03:16 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「ベット。 1枚」


 そう言うと、ポセイドンは4枚のチップを提示した。


( 'A`) (1枚か……もうちょっと攻めてきて欲しかったんだが)


 セオリーに則って考えれば、俺のハンドはハイカードの可能性が高い。

 もちろん、俺を惑わす策である可能性も否定できないが、
 それを考え出すと思考の泥沼に陥ってしまう。
 知恵をしぼるのはもっと別の方面だ。


('A`) 「……」


 慎重に。 思考を巡らせる。
 ベットは確実におこなう。
 だが俺は、果たして何枚賭けるべきなんだ?
.

270 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:04:30 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「ずいぶん迷っているねえw
      決断が遅いってことは、それなりに勝負になりそうな……」

('A`) 「レイズ」

(-[]3[]) 「おっと」

('A`) 「6枚」

(-[]3[]) 「!」


 ポセイドンの表情に、微かな動揺の色が浮かんだ。


('A`) (伸るか反るか、見ものだな)


 ヤツは1枚ベット──つまり 『 見 (けん) 』 を選択した。
 だからといって、こちらは簡単に保留するわけにはいかない。
 せっかくのチャンスなんだ。  ここで攻めなくてどうする。

 とはいえ、攻め方にも工夫がいる。
 ミニマム(1枚レイズ)で張ると、万が一コールされた時に困ってしまう。
 困るといっても、負けることはほぼない。 実入りが少なすぎるという意味だ。
.

271 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:05:32 ID:ynzviyfM0
.
 相手のハンドは最弱の [ A ] 。
 ショーダウンに持ち込めば、90%以上という高確率で勝ちが約束されている。
 4〜5枚ゲットで終わらすのはもったいない。


('A`) 「さあ……どうする?」

(-[]3[]) 「……」


 ベットの駆け引きに初めて面白味を感じた。
 負けは99%無い、という確信があるからこその話だが。

 理想は、できる限り賭け金を引き上げてのショーダウン、
 もしくは相手のフォルドだ。

 強気で行きすぎると、相手が降りる可能性が高くなる。
 こいつを勝負の場に引き出すためにはどうするべきか。
 かつ、コールされた時にそれなりのダメージを与えるには。

 考えた末、俺は6枚ベットという選択に至ったのだった。


(-[]3[]) 「楽しいねェ……ドクオさん。 そう思うだろう?」

('A`) 「は? いや、全然」
.

272 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:07:37 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「これまでのセット、ずっとドクオさんの反応を見せてもらった。 
      あなたの浅い考えなんて、もはや筒抜けさ」

(;'A`) (……落ち着け。 リアクションを返しちゃだめだ)


 さっきも思ったが、こうやって間近で反応をうかがうのはズルい。
 すぐにベットせず、俺の動きから何からじろじろチェックしやがる。

 トーキング ・ タイムと何が違うっていうんだ。
 距離が近い上、時間制限がないので余計にタチが悪い。


(;'A`) 「うるせぇな。 ごたくはいいから早く選べよ」

(-[]3[]) 「わかりやすい人だねぇ。
      おかげで僕も、非常に高い精度でハンドを読むことができる」

('A`) 「読みなんて……」


 ポセイドンは強い語調で俺の言葉を封じた。
.

273 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:11:55 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「フォルド」

Σ( 'A`) 「!」


 そして速やかにチップ4枚を取り、しぃちゃんを呼びつけた。


(;'A`) 「降り……か。 ふぅん」

(-[]3[]) 「なにか?」

( 'A`) 「いーえー。 べーつにー」


 2ターン目フォルドなので、俺のほうも1枚のアンティを用意する。
 至ってスムーズだ。
 これら一連の手順にも段々と慣れてきた。


(;'A`) (脅しすぎたかな……いや)


 この結果はほぼ想定内。
 最初から、ポセイドンは降りる可能性が高いと踏んでいた。

 様子見の 『 1枚ベット 』 を選択した時点で、
 こちらのハンドを警戒していたのは明らかだ。
.

274 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:12:45 ID:ynzviyfM0
.
 さらに俺の6枚賭けによって、
 自分のハンドでは勝ち目がないことを確信したのだろう。


( 'A`) (気にすることはない。 結果オーライだ)


 やりようによってはもう少し引っ張れた気もするが、
 悔いるほどじゃあない。

 “ 1ターン目の子方は1枚以上ベット ”
  という、マイセオリーの妥当性も確信できた。
 そちらのほうが大きな収穫だ。


(;*゚−゚)っ〓 「……」


 『 “ 1枚ベット ” は “ チェック ” の代わり 』


 ======== 【 STAGE 4 RESULT 】 ========

    Up Card : [ J ]

            ('A`) : -1      (-[]3[]) : -4 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st                  BET  1
          RAISE 6
    ..2nd                  FOLD

    Final

    Ante        1              3

   Hands       [ ? ]            [ A ]

 ============================
.

275 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:15:20 ID:ynzviyfM0
.
 ボックスへチップを落としながら考える。

 なんだかんだと御託を並べたてるものの、
 ヤツが本当にこちらの反応を観察して、
 自分のハンドを推測しているのかは疑わしい。

 結局のところ、相手もこちらのハンドのハイ ・ ローに沿って
 乗るか降りるか選択しているに過ぎないのじゃないか。
 そう考えると、少し余裕が生まれてきた。


(-[]3[]) 「どうしたんだいドクオさん?
      なんだかやけに張り切っちゃってさ」

('A`) 「別に。 慣れてきただけだよ」

(-[]3[]) 「くくっ。 ハンデなんていらなかったようだね。
      少しは楽しめそうだ。
      次、行こうか」


 そこに巨大な落とし穴があるとも知らずに。
.

276 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:17:05 ID:ynzviyfM0
.
  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第5セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 38           (-[]3[]) : 40          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 続く5セット目。
 スイッチ音の直後、俺は我が目を疑った。


((;゚A゚)) (───まさかの展開きっっっとわぁぁぁぁあああああああ!)


 そして、自分の強運を神に感謝した。


    [A]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿


 え、、マジ?  いいのか!?
 声とかアレとか、なんか色々出そうになるのを必死でこらえる。
.

277 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:18:47 ID:ynzviyfM0
.
    [A]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿 「やけに静かだねえ。 あれ、冷や汗出てない?」

(;'A`) 「別に……もう5セット目かー、なんて思ってただけだ」


 よもやのビッグチャンス……!
 ポセイドンのハンド、二回連続の [ A ] ……!
 勝率90%超……! 圧倒的……! 圧倒的最弱……!

 奴隷は二度刺せっちゅう神の啓示か何かだろうか。


    [A]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿 「……ふうん。 なんていうか……面白いじゃないか」


 台札は [ 7 ] だが、もはや俺には関係ない。

 眉間に皺を寄せ、唇を噛んで、緊張の糸を切らないようにする。
 2〜4セットと、フォルドが続いたあとで迎えた、この第5セット。
 ヤツもそろそろ前に出たい頃合じゃないだろうか?
.

278 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:23:07 ID:ynzviyfM0
.
('A`) 「どうした? 口数が減ってきてないか?」

(-[]3[]) 「ふふっ。 言うようになったねえ〜?
      さっきまでは何をするにも必死で、上の空って感じだったのに」

('A`) 「お陰さまでだいぶ落ち着いてきたかな。
    こっから先が本番だ。
    さ、そんなことを言ってる間に……」


 体内時計が1分を告げると、ほぼ誤差なく機械音が鳴り響く。
 すぐさまタイマーを止める。  手の震えはない。
 俺は完全に余裕を取り戻していた。

 “ 勝てる ”
 その保証があるだけで、こうも視界が晴れやかになるものか。

 さてさて、こちらはどう立ち回ってやろうかな。
 ベット ・ ラウンドの対応が見ものだ。
 俺は心の中でほくそ笑んだ。

 センターテーブルに戻ると、
 ポセイドンは身を乗り出すようにして俺にささやきかけた。


(-[]3[]) 「お待ちどうさま。 楽しい楽しいベット ・ ラウンドだね」

('A`) 「そうだな……」
.

279 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:24:04 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「へぇ〜。 楽しいんだ。 さっきまでとは違うんだね?」

(;'A`) 「う、うるせぇよ」


 ダメだ。 おしゃべりに乗るとボロが出る。
 一度ひび割れると、メッキがはがれ落ちるのはあっと言う間だ。
 いい加減余計なリアクションは自重しなければ。


('A`) 「ベット。 2枚」


 俺はギリギリまで下げたベット額を提示した。
 同じ轍は踏まない。  なんとしても、こいつを勝負の舞台に乗せる。
 悩んだが、万が一の 『 即コール 』 を考え、1枚にまで削ぎ落とすことは避けた。

 今までの傾向を見ても、勝負が2ターン目以降に持ち越しになることは想像がつく。
 1ターン目でのフォルドはない。
 一方的に3枚ロストなんて、そんな選択、こいつがするはずはない。

 賭け金の引き上げは2ターン目でもできる。
 その上、子方の俺には3ターン目もある。
 最初から脅しをかけずとも、段階を経て徐々に追い詰めていけばいい。

 全ては、ポセイドンという大物を釣り上げるためだ。
.

280 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:25:17 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「へえ〜。 2枚ねえ」

('A`) 「どうした?」

(-[]3[]) 「なんだかさー、さっきまでと様子が違って見えるんだよねえ〜。
      僕のハンドが弱いのかな?
      ドクオさん嬉しいのかな? かな?」


 必死でしかめ面を作る。
 もう無駄口は叩かない。


(-[]3[]) 「まぁでも、ドクオさんのハンドだって吹けば飛ぶようなもんだし、
      ここは強気で1000枚くらいベットかなあ?
      ね、どう思う?」


 本気でうぜー。
 腕組みしてノーリアクションを貫く。
 絶対突っ込まんぞ。
.

281 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:27:51 ID:ynzviyfM0
.
('A`) (無。 無だ。 無無無無無無無無無)

(-[]3[]) 「う〜〜〜ん……」


 穴が空くほどこちらを覗いてくる。
 こんなヤツに見つめられても、嬉しいどころか虫唾が走るだけだ。
 そうやって、さらに30秒ほどが経過した。

('A`) 「ベットするのか、しないのか。 はっきりしろ」


 俺はなるべく “ イラついてないぞ ” という雰囲気を纏いつつ、
 ポセイドンをせっついた。


(-[]3[]) 「くくっ。
      そんなに勝負を焦っちゃあ、見え見えだよw」

(;'A`) 「は!? ど、どういう……」
.

282 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:30:00 ID:ynzviyfM0
.
 続く一言で、俺はその真意を知る。


(-[]3[]) 「─── フォルド」


  ( ゚A゚)


Σ(;'A`) 「!  い、いいのか!?
      何もせずに3枚捨てちゃって……」


 『 レイズ 』 『 コール 』

 それらの言葉を想定していた俺は、思わず大声で問い返していた。
 代わりにヤツの口から出たのは、速やかなる勝負放棄宣言。


(-[]3[]) 「フォルドはフォルドだよ。
      それとも何? レイズして欲しかった?」

(; A ) 「べっ、別にそんなことは……!
     へっ、も、儲けたー。 ラッキーラッキー……」


 完全な肩透かしだった。
 咄嗟に取り繕ってはみたものの、我ながら超しらじらしい。
.

283 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:35:57 ID:ynzviyfM0
.
 しぃちゃんが視界を取り戻したのち、
 ポセイドンは1$チップ3枚を摘み、ボックスの口へ手を伸ばした。


(-[]3[]) ニヤリ

(;l|l'A`) 「?」


 が、そこでぴたりと手を止める。
 俺のほうへ向きなおると、メガネを光らせ、


(-[]3[]) 「よほど嬉しかったんだねえ?
      僕のハンドを見た瞬間、目がらんらんと輝いてたよ。

      [ 3 ] かな? [ 2 ]?
      それともまさか……  [ A ]  だ っ た の か な ?」


 にんまり笑って、指を離した。

  _,
(#;'A`)そ 「うっ、ぐ……!」


 流石に歯ぎしりを抑えることができなかった。
.

284 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:46:04 ID:ynzviyfM0
.
 ハンド [ A ] での即フォルド。  チップの被ダメは3枚こっきり。
 考えられる限り最小の損害で切り抜けられてしまった。
 (こちらが [ K ] であるパターンを除く)

 ヤツは、自分のハンドがロー ・ カード、
 それも相当弱い、勝ち目のないランクであることに確信を抱いていた。
 ゆえにためらうことなく、降りる選択を取ったのだ。

 _, ,
(; A ) (くっそー……顔色を読まれたか!?)


 やはり一筋縄ではいかない。
 奴の 『 観察眼 』 とやらを舐めていた。
 このお坊っちゃんは紛れもなくゲームの熟練者だ。

 そして確かに、一人の 『 催眠能力者(ヒュプノ) 』 として、
 頭角を現そうとしている。

 _,
(;l|'A`) (マズい。
     このインディアン ・ ポーカー、思った以上に遊びゲームがない……!
     残り全てのセットで、最適なベット判断を貫いていかないと)


 負ける。
.
286 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:55:11 ID:ynzviyfM0
.
 ======== 【 STAGE 5 RESULT 】 ========

    Up Card : [ 7 ]

            ('A`) :       (-[]3[]) : -3 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st    BET  2
                           FOLD
      ..2nd

    Final

    Ante        0              3

   Hands        [ ? ]            [ A ]

 ============================


(-[]3[]) 「あっはっは。 どうしたんだい。
      ドクオさんはこのセット、ノーダメージじゃないか。
      なんだか嬉しそうじゃないよ? むしろガックリきてない?」


 今回のようなチャンスはそうそう有るもんじゃない。
 逆に、これからポセイドンが強ハンドを引き続ける展開だって、
 充分有り得る話だ。
.

287 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:57:25 ID:ynzviyfM0
.
 耐え忍ぶべきケースが重なった際。
 たった一つの選択ミスが、致命傷となる。

 _,
(i|l'A`) 「るっせぇな……ガタガタがたがたと」

(-[]3[]) 「あーあー、残り37枚かぁ。 リードされちゃったなあー」
 _,
(l|l'A`) 「……」

(-[]3[]) 「ここは一発 【 下剋上 】 でも起こして、
      サイアミーズに見せつけてやりたいなあ。
      ね? どんな顔するかなあ、ドクオさん?」
 _,
(l|l'A`) (あるわけねぇだろ、そんなコト)


 そしてもう一つ。
 数セットのプレイを通して、確信できたことがある。
.

288 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:58:06 ID:ynzviyfM0
  _,
(i|l 'A`) (このゲームにおいて、
      [ A ] と [ K ] がぶつかるケースは、まず 無 い )


 最弱こそが、最強を打ち倒す唯一つの矛となる。
 [ 2 ] が [ Q ] に勝ち、 [ A ] が [ K ] に勝つという、
 【 下剋上ルール 】 の真意についてだ。

 奴隷の捨て身だけが王を討つってやつか。
 だがこれはおそらく……。

  _,,
(; A ) ( 罠 だ )


 一撃必殺を餌に、愚者を勝負の場へ引きずり出す。
 玉砕を促すべく設定されたルールだ。

 両者がカードの数字を知らない、
 ただ、運に任せて場に出されたカードをめくるだけの、
 くじ引き勝負なら話はわかる。

 しかしこれは、互いの手札が丸わかりの、インディアン ・ ポーカー。
 ゲームの性質を知れば知るほど、
  “ 下剋上 ” の組み合わせは起こりづらいことがわかってくる。

 相手のハンドが最強の [ K ] と知った上で、ショーダウンまでベットを続けるのは、
 鋼鉄、もしくは毛の生えた心臓を持つ者にしかできないギャンブルだ。
.

289 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:58:47 ID:ynzviyfM0
.
(;'A`) ( [ 2 ] と [ Q ] の組み合わせも同様。
     まあ、稀にならそのパターンもあるかも知れないけど……)


 ハッタリ ・ ベットから降りるタイミングを見失い、
 うっかり勝負になだれ込んだならば、下剋上が起こる可能性はある。
 しかしその場合も、そう大きなベットにはならないと思う。

 はっきり言って、割に合わないのだ。
 仮に相手の手札が [ K ] 、台札が [ A ] 以外のカードであった場合、
 見えない自分のハンドがAである確率は、単純計算で 1/11。

 9.1%。 倍率で考えると10倍以上。
 なのに相手の支払いチップは、賭けた枚数の4倍どまり。
 これは運命を委ねるに足る配当ではない。

 期待値うんぬんはよくわからないが、
 負うリスクに対し、リターンが大きく底を割っていることは間違いない。
.

290 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:00:40 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「さーて、5セット終了か。 全体からいうと半分くらいかな?
      思ったよりやるねぇ、ドクオさん。
      よくもってる方だと思うよ。 くくっ」


 単純なルールに潜んだ、いくつもの罠。
 言うまでもなく、これらを設定したのはポセイドンだ。

 38 対 37。
 ようやく1枚上回ることはできたが、
 こんなリード、いつまでも保てるもんじゃない。


(;'A`) 「半分……? チップは10枚しか減ってないのにか?」

(-[]3[]) 「そうだね。  でも、一度崩れ出すとこのゲームは早いよ?
      お互い気を引き締めてかからないとね……くっ。 くくくくっ」


 俺にはここぞという時の切り札がある。
 しかし “ そいつ ” は決定打にはなり得ない。

 ポセイドンをぎゃふんと言わせるには、
 強運に加えて、“ 何か ” もうひと押しが必要となる。
.

291 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:01:30 ID:ynzviyfM0
.
(;*゚−゚) 「……」


 なんだろう。 どこかに引っかかりを感じる。
 それが何なのかは、霞がかってわからないけど。


(;'A`) 「……カード、回収するぞ」

(-[]3[]) 「どうぞどうぞ」


 とにかくだ。

 複雑に絡まった糸を解き、
 勝ちに必要な “ 何か ” を、早く見つけ出さないと。
.

292 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:07:53 ID:ynzviyfM0
.
  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第6セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 38           (-[]3[]) : 37          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



 気の抜けたリアクションでお茶を濁し続けること一分。
 迎える6回目の───練習を含めると7回目ともなる、
 ベット ・ ラウンド。


(-[]3[]) 「─── 1枚」


 ベットはいつもの調子で行われた。
 もはやお決まりのパターンだ。

 ポセイドンのハンドは] [ 4 ] 。
 チップの総数も4。
 宣言に続き、扇状に並べられる。
.

293 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:08:36 ID:ynzviyfM0
.
(; A ) (まだだ、まだチャンスは続いている)


 台札 [ 8 ] を横目で再確認。
 俺のハンドの勝率がヤツを上回っているのは自明。


           (-[]3[])
            .│                    【 WIN !! 】
            .↓├────────────────→
    .[A] [2] [3] 【4】 [5] [6] [7] [■] [9] [10] [J] [Q] [K]
  ←─────┤
  【 LOSE... 】


 8/11 ≒ 73%。
 ショーダウンに持ち込めば、73%勝てる。
 2セット目とほぼ変わらない状況だった。

 ハンドの利はこちらにある。
 ならばやることは一つだ。
.

294 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:09:35 ID:ynzviyfM0
.
( 'A`) 「レイズ。 5枚」


 俺は8枚分のチップで応戦した。

 スマートに、淀み無い動作でチップをテーブルに広げる。
 オカルト的発想ではあるが、 “ 勢い ” を殺したくなかった。
 連続 [ A ] に続き、勝率7割超という状況。

 奴にはうまく立ち回られたとはいえ、
 フォルドの応酬で、チップも1枚ぶんリードしている。

 ここでの対応が、勝負の行く末を決めるといっても過言ではない。
 クールに。 適切に。
 一歩ずつ、着実に追いつめてやる。


(-[]3[]) 「くくっ……」

(;'A`) (ヤツのハンドは [ 4 ] 。 この目で確認できる唯一の真実。
     ベットの選択は絶対に正しい)


 それに奴は1枚賭けだ。
 若干抑え気味な声色からしても、俺のハンドはハイ ・ カードである可能性大。

 リスク ・ リターンを秤にかけ、
 俺は 『 そこそこ強気で行く 』 選択へ辿り着いた。
.

295 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:11:11 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「ところでドクオさん、 “ 流れ ” って信じるかい?」


 ごたくはいい。
 どうせ降りるんだろうに、余計なカマかけはしないで欲しい。

 ルール説明の際、ポセイドンは
 『 ゲームのキモはトーキング ・ タイム 』 そう言っていた。
 俺も最初はそう思っていた。

 だが、数回のゲームを通してわかった。
 実際はこのトーキング ・ タイム、
 さして重要なラウンドではない。


(-[]3[]) 「返事なしかぁ。
      まあいいや、そのまま黙って聞いててよ」


 つまりこういうことだ。
 こいつは、ベット ・ ラウンドにおける余計なおしゃべりを、
 ルールで禁じていない。

 反応観察。 揺さぶり。 なんだってOK。
 互いにハンドを知った上、観察しやすい至近距離で。
.

296 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:15:36 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「勝つ流れ、負ける流れ。
      そういった “ 流れ ” ってね、あって当然なんだよ」


 トーキング ・ タイムに出来ることなど、素人の俺には限られている。
 余計な情報を与えないよう心がける。
 ただそれだけ。

 心理戦 “ らしい ” 時間を設けているのは 
 パフォーマンスにすぎない。
 “ 偽りの公平性を、演出 ” しているだけだ。


(-[]3[]) 「例えばコイントス。 表と裏は交互には出ない。
      表が出れば表が続き、裏が出ればその結果が連なる。
      それが当然なんだ」

( 'A`) 「いいからさっさと選べ。 賭けるか、降りか」


 最も重要なのは、このベット ・ ラウンドだ。
 チップこそが互いの心理を映す鏡。
 心血を注ぐべきは、このラウンドのみ。

 本当のさぐり合いはベットの駆け引きに潜んでおり、
 おそらく、ヤツもこの部分に最大の重点を置いている。
 だからこそ余計な情報は入れたくない。
.

297 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:16:47 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「くくっ。 そういうことなら……」


 こちらの提示した枚数は5枚。
 様子見を選択したこいつに、ベットを受ける気概などさらさらないだろう。
 負け犬のなんとやら。 俺の反応をみるために勝負を引き延ばしてるだけだ。

 ルールの盲点を自ら利用するポセイドン。 その狡猾さにいらつきを覚えた。
 降りる前の悪あがきだろうが、ごちゃごちゃうるさいヤツだ。
 意地でも反応してやんねーぞ。

 ……そう思っていた。
 たった今の今までは。


(-[]3[]) 「レイズ」

( ゚A゚) 「!」


 予想外の言葉だった。
 続いて発せられた言葉は、さらに想像の範疇を越えていた。


(-[]3[]) 「10枚」

Σ(;゚A゚) 「え!?」
.

298 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:17:59 ID:ynzviyfM0
.
 眼鏡のレンズが怪しい輝きを放つ。
 予想外も予想外、まさかのMAX BET宣言。


;;(;゚A゚);; (しまっ……俺のハンド、ロー ・ カードだったか!?)


 一瞬で思考がかき乱される。

 『 大きなベット額が動くのは、互いにロー ・ カードのケース 』

 よりによって、このタイミングでかよ。


(-[]3[]) 「どうするドクオさん?
      僕はどちらでもいいけどね……くくくっ」


 テーブルに投げ放たれた、赤と青のカードたち。
 13枚というチップの放つ、圧倒的威圧感。

 俺のフォルド狙いか?
 だが、ただのハッタリじゃあ10枚は賭けられない。
 とするとやはり、俺のハンドはロー……いや、しかし。
.

299 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:20:56 ID:ynzviyfM0
.
 というより、レイズした後なんだ。 降りられない。
 ここでフォルドすると、一方的に8枚のマイナスとなる。
 勝率70%以上なんだ、可能性を追わずに一方的な失点なんて……。

   _, ,
Σ(;゚A゚)ノ 「……こ、コール!!」


 堰を切るように。
 喉から勝負宣言が溢れだしていた。


(-[]3[]) 「くくっ。 こうも早く、関頭が訪れるとは思わなかったよ」
 _, _
(;'A`) 「……は? 何言ってやがんだ」


 互いに提示するチップ、13枚。
 赤カードが一枚と、青カード三枚の計四枚。
 13、四。  ……忌み数の並びに不吉な予感が走る。

 10$チップの存在によって、
 テーブルがチップで埋まるということはないが、
 囲むプレイヤーにとっては、筆舌に尽くしがたい重圧が伝えられる。
.

300 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:22:29 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「表のコインが裏返るポイントさ。
      見誤ったね。 子の1枚ベットに対する、親番での対応」


 こいつ……何を言ってるんだ。
 俺の選択に誤りなんて。


(-[]3[]) 「1枚ベットからフォルドの、一連の流れ。
      さんざっぱら繰り返してきたのはなんでだと思う?
      それが一番合理的だから? ……いや」

('A`)


(゚A゚) 「……あ」


 やっと気付かされた。

 “ 簡単に降りられない ” さっきの状況。
 実質、俺はフォルドの選択を封じられてしまっていた。

 5枚のベットには、3枚ものアンティががっちり食い込んでいる。
 フォルドにも、ショーダウンでの敗北にも。
 いわば、8枚のチップを穴の上へぶら下げていたに等しい。
.

301 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:23:47 ID:ynzviyfM0
.
( ゚A゚) (ひょっとしてこれ、マ ・ ズ ・ い ?)


 “ 子の1枚ベット = チェック = 引き気味であることの証 ”
 どこからだ、そう勘違いしていたのは。

 知らず相手を舐めてかかっていた。
 “ 1枚ベット” = “ どうせローカード ” その思い込みが、
 4枚の上乗せという “ 緩み ” を生み出した。

 選択を誤った。
 子番の1枚ベットが、選択肢をより多く残すためのセオリーだとしたら。


(-[]3[]) 「そう、撒き餌だよ。
      その甲斐あって、ドクオさんは見事針に食いついた。
      さあ、サイアミーズ!」

(;'A`) 「!」


 受ける親は、まず1枚レイズで応戦すべきだったんだ。
.

302 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:25:58 ID:ynzviyfM0
.
(;*゚−゚)っ〓〓

(-[]3[]) 「しっかり目に焼き付けてくれよ。 ……くくっ。 はははは!」


 暗黒から解放されたしぃちゃんの大きなまなこは。
 俺たちの戦いを、矯めつ眇めつ眺めやる。

 _, _
(l|l A ) (まだだ。 まだわからない!)


 俺は [ 5 ] 以上ならいいんだ。 それだけでいい。
 頼む、きてくれ、[ 5 ] 以上!

 その願いは───、



             『  オ ー プ ン  』
.

303 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:28:26 ID:ynzviyfM0
 ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
 |        S H O W     D O W N          |
 |___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ __.|
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                 ┌───┐
                 │(⌒⌒)│
                 │ .\/ .│
          (-[]3[])  │  4   │
                 └───┘
       \_人_人∧从_人_∧_人_从_//
       )                  >
      <       V  S       >
       <                 (
       /^Y ̄∨ ̄∨^Y^⌒Y^YY^^Y^
        ┌───┐
        │(⌒⌒)│  ('A`)
        │ .\/ .│
        │   3  │
        └───┘



 次の瞬間、脆くも打ち砕かれた。

 露わになった俺のハンドは [ 3 ] 。
 1ランク差での、敗北。


Σ(l|l*゚△゚) 「ああっ!?」
.

304 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:29:46 ID:ynzviyfM0
.
(l|i゚A ) 「くっ!」


 思わず苦渋の声が漏れた。

 醜く口の端を歪めるポセイドン。
 放心する俺に、トントンと、人差し指でテーブルを小突いてみせる。

 俺は震えながらチップに指をかけた。
 滑るわ力が入らないわで、カードがなかなか掴めない。

 ようやくボックスに落とし込んだところで、
 後悔の念が大挙して押し寄せてきた。


(-[]3[]) 「くくっ。 ははははは!
      ひじょ────に大きな痛手だねェ、ドクオさん!」


( ゚A゚)


(l|l A )   (やっちまった───)


 冷静に考えると、俺はいくつもの間違いを犯していた。
 今さら気付くも、時すでに遅し。
.

305 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:31:21 ID:ynzviyfM0
.
 ハッタリであるケースを除き、
 大きなベット額が動くのは、相手のハンドがロー ・ カードである場合。

  ミ ニ マ ム           マ ッ ク ス
 『 1枚賭け 』 から一気に 『 10枚賭け 』 へ引き上げられ、
 選択を迫られていた2ターン目。

 “ ベット額インフレ = 互いにローカード ” そう仮定すると、
 先ほどの状況は、まるっきり違う表情を見せるのだ。


              (-[]3[])
                │
                │ 【 WIN !! 】
                ↓ ├───→
    .[ A ] [ 2 ] [ 3 ] 【 4 】 [ 5 ] [ 6 ]
  ←───────┤
  【 LOSE... 】


 台札 [ 8 ] が死んでいるので、[ 7 ] 〜 [ K ] の6枚がハイ ・ カードとなる。
 つまり [ 6 ] 以下の6枚が、ロー ・ カード。

 上の仮定においていえば、
 [ A ] [ 2 ] [ 3 ] [ 5 ] [ 6 ]という残りのロー ・ カードの中で、
 俺が勝てる可能性のあるハンドは、[ 5 ] ・ [ 6 ] の2種のみ。

 2/5= 40%。
 勝てる確率は、半々を下回っている。
.

306 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:32:25 ID:ynzviyfM0
.
 数値はあくまで机上のなんとやらに過ぎない。
 だが、先の形勢を表現するには、遠からずといったところだろう。

 “ 勝率70%超 ” という状況は、あくまでカードを引いた時点での話───。
 10枚レイズを提示された場面で、その前提は破棄すべきだったんだ。
 実際には、勝ちの目のほうが少ない勝負だったといえる。

 仮にローカード ・ ハイカードという考えを、
 ポセイドンが持っていなかったにしても。

 俺が [ J ] [ Q ] [ K ] という強力なハンドであれば、
 奴がそこまでベットを引き上げる道理はない。


 ::: (l|l 皿) ::: 「ぐっ、ぐぐ……」


 完全に、ミスによる失点だった。
 『 高確率で勝てる 』 という思いこみは。
 ベットに固執する理由として、お粗末すぎた。

 視界がぐらつく。
 頭の両端を掴まれ、左右に揺さぶられているようだ。
.

307 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:34:03 ID:ynzviyfM0
.
 ======== 【 STAGE 6 RESULT 】 ========

    Up Card : [ 8 ]

            ('A`) : -13      (-[]3[]) : 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st                  BET  1
          RAISE 5
    ..2nd                  RAISE 10
          CALL
    Final

    Ante        3              0

   Hands       [ 3 ]            [ 4 ]

 ============================


(-[]3[]) 「さっきの話の続きだけどね。
      機械による試行でも、短期的な偏りは必ず発生する。
      むしろそれが自然な姿だよ」


 MAX BETでの敗戦。
 失ったチップ、13枚。

 これが、選択を誤ったことの代償であるならば。
 あまりに重いカウンターパンチだった。
.
309 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:34:54 ID:ynzviyfM0
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(-[]3[]) 「ましてや実際のコイントスは人間のやる事だ。
      潜在意識は電気信号に変換され、微細な筋肉の動きとして現れる。
      そしてそれが、大なり小なりゲームの結果に影響を及ぼす。

      精神の動きが絡むゲームに、完全な独立事象なんてものは無いんだ。
      人為的バイアスの発生は、神でもない限り、絶対に避けられない」


( A ) 「……何が言いたいんだ、さっきから」

(-[]3[]) 「聞きたいかい?」


 待ってました、とばかり、ポセイドンは体を乗り出した。
 テーブルに両手をつき、透明の壁すれすれにニキビ面を近づける。


(-[]3[]) 「“ 負けの流れ ” は続く。
      統計的な偏りとか、それだけの問題だけじゃない。

      13枚という今回の大敗は、
      ドクオさんの反応に、選択に、今後必ず影響を及ぼしてくる」


 大  敗  。
 最悪のリフレインに頭を抱えたくなる。
.

310 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:36:15 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「コインは裏返った。 選択を誤った者の敗北は必定。
      ドクオさんは、もう僕には勝てないよ」


 ぐはぁ、と舌を出すポセイドン。
 これまでで最も醜悪な笑みだった。


( A )


(;*><) 「大丈夫です!
      ドクオさん、気をしっかり持ってください!」


( ゚A゚)  ハッ


 思わずテーブルに伏してしまいそうだったが、
 しぃちゃんの言葉に、かろうじて己を引き上げた。

   i|l
Σ(*l| △ ) 「だ……ら、……て、……ぇ!」


 『 余計な口を挟めない 』 暗示だか命令だかの影響だろう。
 しぃちゃんの声は段々小さく、か細くなっていく。
.

311 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:37:13 ID:ynzviyfM0
.
(;'A`) 「ごめん、しぃちゃん! ありがとう。
     もう大丈夫。 だから、無理しないでくれ!」


 それでも。
 彼女が鳴らす鈴色の声援は、
 俺に、ふたたび奮い立つパワーをくれた。


(; A ) (残りチップは25枚───)


 まだだ、まだ半分ある。
 ここで奴の戯言に翻弄されてはマズい。


(-[]3[]) 「さあ、始めようか」


 『 残り半分の “ 消化試合 ” をね! 』


 なんとしても、突破口を探し出す。



 (続く)

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