- 5
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:00:41 ID:hbexrCHs0
- .
【 トランプ 】
− カードを使用した室内用の玩具。
多種多様なゲームに用いられるほか、
占いの道具としても、手品(マジック)の小道具としてもよく用いられる。
−
─── Wikipedia 『 トランプ 』
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97)
(補足)
ダイヤ・クラブ・スペード・ハートの4種類のスート(マーク)があり、
それぞれにランク(番号)が設定されている。
ランクは、A(エース)と2〜8までの数札、 J、Q、Kの絵札、13種類となっている。
カードの構成は、上の52枚に、
ジョーカー1〜2枚を加えた、計53(54)枚が一般的。
.
- 6
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:02:00 ID:hbexrCHs0
- .
【 勝負の前提 】
内藤ドクオと内藤ホライゾンは、それぞれ個別に
『 あるトランプゲーム 』 で、田中ポセイドンと勝負する。
二人のうち一人でもポセイドンに勝てば、ギコは解放される。
しかし。
ポセイドンが勝つごとに、
猫塚しぃは、予め刷り込まれた 『 暗示
』 の影響を、
その身体に色濃く反映する事態となる。
ヒュプノシス
これは、『 コトダマ 』 と総称される特殊な催眠能力の効力による。
敗北という 『 条件(フラグ) 』 の成立によって、
用意された 『 命令(オーダー) 』 が精神に刻まれるためである。
内藤ホライゾンが負けた場合、しぃの
“ 身体の自由 ” 。
ドクオが負けた場合、彼女の “ 心 ”
が、ポセイドンによって掌握される。
催眠能力の究極形といわれる 『
マインド・コントロール 』 。
二人が敗北した結果、猫塚しぃは上記能力の支配下と
同じような状態に陥ることが予想される。
.
- 7
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:03:56 ID:hbexrCHs0
- .
〜 〜 〜
ポセイドンの説明に、ところどころ茶々を入れるダイオード。
彼らの話を要約すると、おおむねこのような内容だった。
(;'A`) (マジか……)
すんなり理解できそうで、やっぱり喉にひっかかる。
濃いめのカルピスを飲んだ時のような違和感が残った。
(-[]3[]) 「勝負に先だって、君たちにはこいつを着けてもらう」
ポセイドンが告げると、後方の黒服がこちらに進み出た。
差し出す両手には、細長い腕時計のような銀の蛇腹が、
数本握られていた。
(;*゚−゚) 「なんですか? これ……」
(-[]3[]) 「僕たちは、『 ロッカー 』、
または 『 PRS 』 と呼んでいる」
.
- 8
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:06:10 ID:hbexrCHs0
- .
/ ゚、。 / 「ロッカーといっても収納ボックスではないケド。
ましてや全面白塗りだったり赤いアルファベットが増えたりもしないケド」
(;'A`) (何言ってるのかわからん)
ダイオードの言葉を無視してポセイドンは続けた。
(-[]3[]) 「正式名称 『 パーソナル ・
ロッキング ・ システム 』 。
製品化の前段階であるため、正確には
“ 仮称 ” だがね。
…… 一言で言えば、ねらーの超能力を封じる機械さ」
(;'A`) 「はいィ!? それtt」 カチリ
Σ(;゚A゚) 「!!」
口を挟む間もなく、俺の手首には “
それ ” が嵌められていた。
.
- 9
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:10:09 ID:hbexrCHs0
- .
(-[]3[]) 「知っているかもしれないが。
“ チャネラー ” が超能力を有する要因として、
二重人格であることが、大きく関係していると考えられている」
(; ^ω^) 「お!? どういう意味g……」 カチリ
Σ(* ´ω`) 「あふん」
黒服はよどみなく、ブーンにも “
ロッカー ” を装着させる。
眼鏡のつるをクイっと上げ、少年の解説は続いた。
(-[]3[]) 「そのまんまの意味さ。
チャネラーは二重人格者だからこそ、超能力者でもあるってこと」
(;*゚−゚) 「??」
(-[]3[]) 「説明しよう……。
チャネルを “ 発症 ” した者たちの中には、
人格統合に成功し、別人格(アナザー)の消滅に至ったケースが、
ごく少数だが、ある。
興味深いことに。
別人格を失った “
チャネラー ” たちは、
総じて “ PSI ” をも、喪失する傾向にあるらしい」
.
- 10
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:12:19 ID:hbexrCHs0
- .
つまりだ。
別人格の存在そのものが、
脳の一部に負荷をかけている……そう考えることはできないかい?
得意気に言い放つと、ポセイドンは脚を組みかえた。
(-[]3[]) 「話は変わるが、“ PSIジャマー
” をご存じかな?
我が社が極秘裏に開発し、
高い評価を得ているジャミング装置だが……」
(;'A`) 「? ???」
解説の着地点がわからない。
疑問符いっぱいの俺に対し、タムラが言った。
爪 ゚〜゚) 「ウーハーに似た、でっけェ箱みたいな装置だ。
設置ポイントから特殊な電磁場を形成し、
いっさいの超能力を使えなくする機械だよ。
ありゃー確か……対象範囲は半径5メートルほどだっけか」
..
- 12
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:13:41 ID:hbexrCHs0
- .
ポセイドンは頷いて続ける。
(-[]3[]) 「対して、この “ ロッカー ”
は小型で軽量。
ジャマーに代わる超能力抑制装置として、
これから広く普及してゆくことだろう」
もちろん、一般社会にその存在が認知されるのは、
まだまだ先のことだろうけどね。
平和ボケの情弱市民ども。
彼らは、“ ジャマー ” が既に実用化され、
一部行政機関・司法機関の業務現場に導入されている──。
(-[]3[]) 「……という事実以前の問題で、
超能力の存在すら、認識するに至っていないのだから」
嫌味たらしくそう付け加えた上で。
.
- 14
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:15:42 ID:hbexrCHs0
- .
(-[]3[]) 「僕のコネで、試作段階のブツを何本か横流ししてもらってね。
何度か試してみたが、機能にはさほど問題ない。
コイツの優れている点は、
潜在チャネルとの感情伝達そのものを阻害することで、
結果的に超能力を封じるという、そのPSI抑制原理にある。
簡単に言えば、こいつを着けている間は、超能力が使えなくなる。
さらに、別人格(アナザー)へのシフトはもちろん、
意思疎通もできなくなるってことさ」
/ ゚、。 / 「ねらー限定で、えすぱーには効果がないらしいケド」
(-[]3[]) 「そう。 その事実こそ、
ねらーにおける人格乖離現象と超能力の発生が
相互作用であることの証明さ」
さらに付け加えると “ ロッカー ” は、自己で能力を制御できない者……、
いわゆる “ 超能力障害の発症者 ”
には、期待する効果が得られない。
“ 副人格(アナザー) ” との意思疎通が図れない者についても同様。
医療的な意味での
“ 多重人格解消 ” および “
超能力抑制 ” 作用が認められていれば、
マーケットは飛躍的に広がっていたのだろうけれど。
そう言って、ポセイドンは鼻を鳴らした。
.
- 15
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:18:13 ID:hbexrCHs0
- .
(-[]3[]) 「それでもじゅうぶん画期的なアイテムだろう?
可能性は無限大。 我が社の展望は明るいな。
と、いうわけで。
きみたち。
勝負の最中は、常にこいつを着けていてもらう。
いいね?」
いいも悪いも事後承諾じゃないか。
突っ込もうと思ったがやめておいた。
(-[]3[]) 「そうそう。
精密機械だからね。取り扱いには注意してくれよ?
まあ簡単には取り外せないと思うが……」
ポセイドンの横に立つ黒服が右手を掲げる。
板状の小さな銀色が数枚、重なり合って、鈴のような音色を奏でた。
俺は反射的に手首へ視線を落とした。
あった。
“ ロッカー ” の外側部分に、細長い窪み。
黒服のつまみ上げている金属板は、
超能力を拘束する手錠の、合い鍵ってことか。
.
- 16
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:21:44 ID:hbexrCHs0
- .
爪 ゚〜゚) 「そーいや、充電は?」
「ちゃんと確認しました。
大丈夫です。 もう “ あんな事態 ”
にはなりません」
タムラと黒服がボソボソ話す声が聞こえた。
これ、充電式なのか。
ディスプレイを備え付けているでもなし、そう電気を食うとは思えないのだが。
金属製のリストバンドのような “
パーソナル ・ ロッキング ・ システム ”
。
一見するとうさん臭い健康グッズのようだが、
充電を要するほどの電力が、絶えず人体に注がれているのだと考えると、
どうにも体に悪そうである。
(;'A`) (しっかし……。
超能力が使えないって、ホント、なのか……?)
情報量が多かったせいか、俺の頭はいまいちついてってない。
.
- 17
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:23:17 ID:hbexrCHs0
- .
奴らの話を三行でまとめると、
・ “ ロッカー ” は
・ ねらーを一般ぴーぽーにしてしまう機械で
・ 外すためのカギは、黒服の手の中。
ということだろう。
……あれ、八方ふさがりな状況に追い詰められてしまった感が。
しかし、だ。
こいつが肌に密着している今も、目立った違和感がないせいか、
どうにも “ 能力が使えない ” という実感に乏しい。
俺は小声でブーンに問いかける。
(;'A`) 「ブーン、どうだ? ロマネスクは……?」
ボソボソ
(; ^ω^) 「だ、だめだお。
いくら話しかけても反応がないお」
肉塊は目を白黒させながらそう答えた。
.
- 19
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:27:25 ID:hbexrCHs0
- .
(lll'A`) 「ってことは……やっぱり」
当然、俺の能力も消えてしまっているだろう。
とんだお笑い種だ。
“ ねらー ” としての唯一のアイデンティティ。
超能力を封じる超能力を、封じられちまった。
(-[]3[]) 「効果はばつぐんのようだね。
さて、あとは……」
ポセイドンの目配せで、黒服がしぃちゃんのもとへ回り込む。
その右手には、彼女の怪力をも封じ込めてしまうであろう、
銀色の拘束具が、きらり。
(*゚□゚) 「ちょっと待ってください!」
一歩後ずさり、しぃちゃんは叫んだ。
(;*゚ο゚) 「機械のことはわかりました。
でも、どうしてわたしはゲームに参加できないんですか?
当事者なのに。 わたしはいったいどうしたら……」
.
- 20
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:28:41 ID:hbexrCHs0
- .
(-[]3[]) 「しぃちゃんには、ゲームのジャッジになってもらうのさ」
(;*゚△゚) 「ジャッジ?」
(-[]3[]) 「それもあとで説明する。
まずは “ ロッカー ” を」
(;*゚−゚) 「う……で、でも」
(-[]3[]) 「いい子だから。 さあ。
……ギコがどうなってもいいのかな?」
(;* − ) 「────!」
たじろいだしぃちゃんのもとへ、ふたたび黒服が近づく。
(* − ) 「……」 ボソ
(-[]3[]) 「くく……さあ。
大人しくしててくれ、サイアミーズ」
(* ロ ) 「……だまって」
逆サイドからは別の黒服がじりじり迫っていた。
.
- 21
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:30:22 ID:hbexrCHs0
- .
が、今にも捕まりそうなところで、
(* ∀ ) 「き────てリャ」
(-[]3[]) 「?」
(#*゚∀゚) 「よ゛ォ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
唐突に。
彼女の口から発せられる、ドスの効いたデスヴォイス。
いや。
……こいつはしぃちゃんじゃない。
“ つー ” だ。
(*゚皿゚)9m 「カークーゴーしとけヨー?
ギコを奪い返シタあとァ、オメーラなんて
ギッタンギッタンのメッコメコにヘコませてやっかんナ!!」
つーは、ポセイドン、タムラ、ダイオードを順繰りに指差し、
宣戦布告した。
さらに、近くのパイプ椅子を勢いよく片足で踏みつけ、
パンクロッカーのように舌を出し、逆指を立てる。
やりすぎだ。 パンツ見えそう。
.
- 22
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:33:05 ID:hbexrCHs0
- _, , そ
(*゚∀゚)l|pl|l 「おぼえトケッ!」
`☆
次の瞬間、数人の黒服がつーを取り囲む。
彼女が怯む様子はない。
唇を斜めに尖らせ、ズビシィと親指を振り下げた。
容姿が整っているぶん、変顔にも謎の迫力がある。
逆に周りの黒服たちのほうが気圧されている印象だ。
パンツ見えそう。
(゚∀゚*)彡 「そーそー! どーくおっ!」
(;*'A`)そ 「?」
椅子を踏んだ姿勢のまま、つーはこちらにジト眼を流し、
「あひゃっ☆」 とウィンクする。
白いのがチラッと見えた。
,☆
(*:::∀゚) l|凸|l 「わかってんだローナッ? 腹ァ括れヤッ!」
( 'A`)
牙……もとい、八重歯だけど。
.
- 23
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:34:42 ID:hbexrCHs0
- _,,
(*゚△゚)9m 「いいカー!?
モシ負けタラ、テメーもついでに八つ裂きだかんナッ!」
まぁ恐ろしい。
……色んな意味で、胃が痛くなってきた。
その後もしばらく、描写すら憚られるような
汚い罵倒がその場に飛び交っていたが。
/ ゚、。 / 「ほいっと」
いつの間にか、ダイオードがつーの背後に立っていた。
彼女の腕をつらまえたダイオードは、
あくまで事務的に、その手首へ “
ロッカー ” を嵌める。
(* □ )そ 「ぁっ……!?」
(;*´−゚) 「……うぅ」
主人格である “ しぃちゃん ” に戻ったのだろう。
まさに “ 毒気を抜かれた ” という感じで、彼女はその場に膝を折った。
.
- 25
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:35:49 ID:hbexrCHs0
- .
爪;゚〜゚) 「かー! これがこのコの隠された本性ってやつかい!
そのまま一生ジキル博士でいたほうがいいんでねーの?」
(-[]3[])
これまでの流れを見ていたタムラが、頓狂な声を上げる。
爪 ゚〜゚) 「共同生活にゃあ “ ロッカー
” が必需品だな!
エンゲージリング代わりにどっすか? ねェ、坊っちゃん……」
(-[]3[])
爪 ゚〜゚) 「坊っちゃん?」
(-[]3[])
.
- 26
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:36:50 ID:hbexrCHs0
- .
(-[]3[]) 「あれが、しぃちゃんの別人格……」
爪 ゚〜゚)
(-[]3[]) 「……いい」 ボソッ
爪;゚〜゚) そ
── どうにも、一筋縄ではいかないモノを感じた。
.
- 28
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:40:30 ID:hbexrCHs0
- .
四角四面に夜空を湛える倉庫の窓が、端からほのかに明るくなった。
黄色い月が光彩を帯びてくる時分。
(-[]3[]) 「わざわざこのようなまどろっこしい手順を踏むのも、
君たちが “ ねらー ”
である以上、しょうがないコトなんだ。
理解してくれるよね」
(; ^ω^) 「……ごたくはいいですお! さ、さっさと始めるお!」
超能力の使えなくなった我々三人は、蛇に睨まれたカエル同然であり……。
(-[]3[]) 「よし。
詳しいゲームの説明は、“
中で ” 行うことにしよう」
本来であれば、相手に従うしかない状況なのだが。
(;'A`)ノノ 「ま、待ってけ、くりぇ」
(^ω^ ;)彡 「?」
いちかばちか、俺は足掻いてみることにした。
立ち上がろうとするポセイドンを両手で止める。
.
- 29
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:43:26 ID:hbexrCHs0
- .
(;'A`) 「頼む、どうにかしてギコの安全を、確認させてくれないか!?
こ、声とか。 動画とか……あれば……。
しぃちゃんも、ほら、心配してるし……」
『 そう遠くない別の場所 』
ポセイドンは言っていた。
その後の彼らの話しぶりからしても、
ギコはこの倉庫の近くに監禁されているのだと、なんとなくわかる。
少なくとも、VIP港のエリア内ではあるはずだ。
……希望的観測ではあるが。
(-[]3[]) 「それを知ってどうするんだい?」
人質とは重要な取引材料である。
身代金目的ではないにしろ、彼らが『
ギコを捕えている 』 ことについて、
状況証拠しか提示しないというのは、いささか理不尽な感じがする。
そ
(;'A`) 「どうするっていうか!
その……ほら!
し、心配で勝負に身が入らないし!」
.
- 31
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:44:35 ID:hbexrCHs0
- .
勝負を持ちかけてきたのはポセイドンだ。
当然ながら、相手は相当 『 ゲーム 』
に習熟しているはず。
内容はまだわからないが、勝ちを得るのは容易ではないだろう。
それに、たとえ勝てたところで、ギコの身の安全にはなんら保障がない。
できることなら、相手の土俵での勝負は避けたい。
それが無理でも、勝負開始はギリギリまで引き延ばすことが必要だと感じた。
(;li'∀`) 「 どどど、どうせ勝負するなら、お互いリラックスっていうかほら……
ね? ね?」
オサム
可能な限り情報を引き出し、外で待機している兄者に、ギコを助けてもらう。
それ以外にこの状況を覆す手立てはない気がする。
伝えられるか?
……いや、どうにかして伝えなければ。
(-[]3[]) 「やれやれ……仕方ないな。 おい」
爪 ゚〜゚) 「ちょい待ち」
ギコのもとへ連絡をつけるよう、黒服に顎で指示しようとしたポセイドン。
が、今度はタムラが彼をストップさせた。
.
- 32
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:46:37 ID:hbexrCHs0
- .
爪 ゚〜゚) 「な〜んか引っかかるな。
おまえら、他に仲間を連れてきてんじゃねえだろうな」
('A`)
('A`) 「えっ」
タムラは、壁際で直立する黒服へ言った。
爪 ゚〜゚) 「そこのオッサン。
コイツから没収した携帯を調べてみろ。
で、2時間以内に、しぃとホライゾン以外の着発信が残ってれば……」
(;'A`) 「!?」
彼の指示を受け、黒服はすぐさま俺の携帯に指をかける。
.
- 33
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:48:50 ID:hbexrCHs0
- .
「 えー……。 ああ、ありました。 履歴。
“ アホボケ流石くそオサム ” 、それから4時間前ですが
“ クー ” 。
……二件ですね」
爪 ゚〜゚) 「うし。 貸しな」
Σ(;゚A゚) 「ちょっ! おい、やめっ」
タムラは黒服から携帯を受け取ると、それを耳にあてた。
爪 ゚〜゚) 「……チッ。 留守か」
数回のコール音を確認したあと、
間髪いれずにもう一件の相手に電話をかける。
『 もしもし? 』
爪 ゚〜゚)】 「俺だよ俺!
例の件なんだけど、じ、事情が変わった。
とりあえずこっちはオーケーだから! 場所はわかるよな?
すぐ来て、頼む!」
爪 ゚〜゚)】 ピッ
一方的にまくし立てたあと、タムラは乱暴に電話を切る。
.
- 34
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:50:07 ID:hbexrCHs0
- .
爪 ゚〜゚) 「あとは入口を固めておけば……おい!」
タムラの指示で、数人の黒服たちがいっせいにシャッターのもとへ向かった。
壁際の黒服──角刈りサングラスが、制御盤のスイッチへ手を伸ばす。
爪 ゚〜゚) 「さーて、蛇が出るかナニが出るか」
/ ゚、。 / 「楽しみだケド」
(-[]3[]) 「おい、お前らちゃんと対処は……」
次の瞬間、けたたましい音響が庫内にこだました。
Σ(;-[]3[]);゚〜゚) 「!?」
「なっ……」
(゚A゚;)彡 「ええ!?」
──上がっていくシャッターとは逆側。
後方の窓から、それも、破砕音が。
.
- 35
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:52:14 ID:hbexrCHs0
- .
メ
ェ ェ ェ イ ラ コ ゥ ゥ ゥ
【+ 】ゞ゚) 「イィィィッツァ! Miiiiiiiiraccccccccle!!」
ガラス片に続いて裸の窓枠が宙を舞い、ふいに床へ落ちる。
ぽっかり空いたそこから飛び込んできたのは──。
【+ 】_ゞ゚) 「はっ はっ はァ──────!
天が呼ぶッ! 地が呼ぶッ!
かよわきヒトの鼓動が呼び覚ますゥ───!」
ぼさぼさ頭の、不就労中年厨二病男(ハイパー・サイコキネシスト)。
_n
( l
\ \ ( ゚"_ゞ゚) 彡
ヽ___ ̄ ̄ ) 彡
/ /+ 】
( ゚"_ゞ゚) 「アルティメェ──ッッツ!! ダァァァクヒィィロォォォォォオゥ!
アイアム棺桶死(シュナイダー)オサムッッッッッ!!!」
二つ名がありすぎてわからん。
.
- 36
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:54:02 ID:hbexrCHs0
- .
( ゚"_ゞ゚)b 「しかと聞いたッ! 助けを求める声ッ!
華麗にメーーーーーラコゥに今ここに推さ……」
( ゚"_ゞ゚)b
(゚〜゚ 川ハ ([]ε[]-;) / ゚、。 /
(i|l'A`) (l|l*゚−゚)( ゚ω゚)
d(゚'く_゙゚ )
( ゚"_ゞ゚)b
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`) 「えっ」
(lll A )
……ギコ奪還作戦、失敗(始める前から)。
というか、思いっきり裏目に出てしまったのは、気のせいか。
.
- 38
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:57:20 ID:hbexrCHs0
- .
〜 〜 〜
●第三○話 『 E / P / F ── VS.
ポセイドンD 』
∩( ´_ゝ`)∩ チーン
……数分後。
状況は緩やかに、しかし確実に芳しくない方向へと流れていた。
爪;゚〜゚) 「……ダメ元だったんだが、本当に釣れるたぁ……」
(-[]3[]) 「やれやれ、いつになったら始められるのかな」
威勢よく登場したオサムは今、
『 ホールドアップ 』 の体勢で、黒服四人に取り囲まれている。
爪 ゚〜゚) 「どうしてくれましょうかね。
ま、発信履歴に110番がなかっただけ、まだ許せないこともねぇが」
(-[]3[]) 「他に応援を呼んでないか、確かめる必要があるな」
そう言うと、二人はダイオードのほうに視線を投げかける。
.
- 39
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:58:29 ID:hbexrCHs0
- .
/ ゚、。 / 「んー。 “ ストック ”
あんまりないんだケド。
……ま、仕方ないか」
∩( ´_ゝ`)∩ 「やめろー、それ以上近づくなー(棒)」
わざとらしくかぶりを振る兄者を一瞥すると、
ダイオードは、スーツの内ポケットに手を差し入れる。
爪 ゚〜゚) 「待ちな。 その前に」
ゆらり、タムラが兄者のほうへ歩き出した。
(;'A`)「!」 ((( 爪 ゚〜゚) ∩( ´_ゝ`)∩
彼が俺の前を横切る瞬間、何かイヤな予感が走った。
∩( ´_ゝ`)∩ 「きみたちー、ご両親が泣いているぞー(棒)
これ以上罪を重ねるんじゃなーい(棒)」
.
- 40
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:01:05 ID:hbexrCHs0
- .
爪::::〜゚) 「ちィと黙ってな」
∩( ´_ゝ`)∩゙ 「ん?」
兄者の背後へ立つタムラ。
途端。
そ
Σ l|l∩(i|i ゚"_ゞ゚)∩l||i 「おぼぁ!?」
ビクッ
兄者の体が跳ね、その背が大きく反り返った。
(;゚A゚) 「!? おさm……」
爪:::〜゚)
(( (lll◇_ゝ◇)
( _ゝ ) チーン
目玉がぐるんと反転し、
兄者はそのまま、膝からくずれ落ちた。
.
- 41
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:03:20 ID:hbexrCHs0
- .
(;*゚□゚) そ 「兄者さん!?」
駆け寄ろうとするしぃちゃん。
が、二人の黒服が道をふさぐ。
/ ゚、。 / 「使ったのか? “
スタンピース ”」
気絶した兄者を抱き起こしながら、ダイオードが尋ねた。
爪 ゚〜゚) 「念には念をだ。 相手はまさかの
“ サイコキネシスト ” !
こうでもしなきゃ、いつ何をされるかわかったもんじゃねーからな」
/ ゚、。 / 「ふーん。 臆病」
爪;゚〜゚) 「いちいち癪に障るヤツだなお前!」
タムラは、今しがた兄者の背に押しつけたもの……。
黒い何かを勢いざま床に叩きつけ、地団太を踏んだ。
.
- 42
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:04:32 ID:hbexrCHs0
- .
物体は床で数度跳ね、コロコロと俺の足元まで転がる。
俺はそれを拾い上げた。
黒光りする馬のオブジェ……コレは。
(;'A`) (チェスの、駒?)
(((;*゚□゚))) 「離して! あなたたち、兄者さんに何をしたの!?」
/ ゚、。 / 「気絶してるだけだケド。 たぶん」
(;*>−゚) そ 「たぶんって……! 痛っ」
両腕を捕まれ、痛みにあえぐしぃちゃん。
激しく抵抗するも、その手を振りほどけないでいる。
やはり──、能力が、消えている。
/ ゚、。 / 「スタンガンみたいなモン。
作ったのはスズキだケド」
(; ^ω^) 「つ、“ 作った ”?」
ブーンの疑問に答えるかのごとく、
ダイオードは胸ポケットから別のチェス駒を取り出す。
摘み上げたそれは、黒い大駒。 ……クィーン。
.
- 43
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:08:52 ID:hbexrCHs0
- .
ぱしん。
次の瞬間、細く青い光が、冠の先でスパークした。
エ レ キ
ネ シ ス ト
/ ゚、。 / 「スズキは “ 電気系念動力者
” だケド?」
/ ゚、。 / 「ぴかちゅー」
最後のは聞かなかったことにしておく。
/ ゚、。 / 「と言っても、フツーに電気びりびり〜っじゃないケド」
爪 ゚〜゚) 「おい、お前……」
/ ゚、。 / 「電流を介して、他人の能力を、モノに保存する能力だケド」
~~~~~~~~~~~~
爪;゚〜゚) 「おいって! 勢い余って俺の能力までバラすんじゃねーぞ!」
椅子にふんぞり返るポセイドンが、
やれやれまた始まった、とため息をつく。
/ ゚、。 / 「ゲットしたちょーのーりょくは、使い捨て。
保存媒体は主にICチップだケド。
こいつは前使ってた磁気カードより勝手がいいのだ」
.
- 44
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:10:58 ID:hbexrCHs0
- .
言いながら、スーツの胸ポケットから次々と物を取り出し、
簡易テーブルの上に並べてゆく。
彼が取り出したアイテムは、ほとんどが玩具の類だった。
トランプのカード、花札、──そして、チェス・ピース。
話の流れからすると、あれらは全て、ICチップが搭載された特別製。
/ ゚、。 / 「ほい。 こいつは “ モノを回転させるのーりょく
” 。
んでこっちは “ ゲップが止まらなくなるのーりょく
” ……。
あ、“ パイロキネシス ”
もあったんだっけ」
青猫ロボを思わせるポケットのキャパシティ。
あれもPSIの一種なのだろうか……と、そんなコトはどうでもいい。
(lll ^ω^) 「な、な……!?」
/ ゚、。 / 「わかったろ? スズキの、目的」
それはおそらく、俺たち兄弟を呼び出した理由とも合致する。
.
- 45
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:13:33 ID:hbexrCHs0
- .
/ ゚、。 / 「正々堂々、のーりょくを晒してやるケド。サムライだから。
真っ正面から戦って……あ、もちろん勝つケド。
勝ったら、オマエラの、のーりょく」
/ ゚、。 /+ 「イタダキだケド」
エ
レ キ ネ シ ス ト
鈴木ダイオード、変わり者の電気系能力者。
彼が持つのは、
くさぐさのおもちゃに “ 他人の超能力を
” 封じ込めるESP。
(lll A ) (つまり、それは……!)
/ ゚、。 / 「えっへん」
爪 ゚〜゚) 「褒めてねえ」
── コピー能力。
.
- 46
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:15:47 ID:hbexrCHs0
- .
/ ゚、。 / 「おまけに今日は、サイコキネシスなんて激レア物も手に入りそうだケド。
スズキとっても運がいいケド。
わくわくするケド。 早く戦いたいケド」
爪 ゚〜゚) 「はっ。 俺ぁお鉢が回ってこねーよう願うばかりだがな」
(-[]3[]) 「二人とも、僕が負けるっていうのか?」
爪;゚〜゚)そ 「いやいやめっそーもない!」
何もかもが向こうのペースだった。
受け入れる他にない勝負。
それは一手間違えるだけで、
フールズ ・ メイトの危険性を充分にはらんでいた。
.
- 47
名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:16:37 ID:hbexrCHs0
- .
爪 ゚〜゚) 「ですからその……うまく行った時は……へへっ。
報酬のほう、忘れねーでくださいよ、ダンナ!」
ポセイドンは返事の代わりに “
やれやれ ” のジェスチャーで答える。
そのうちおもむろに椅子から立ち上がり、
倉庫の奥へ向かって歩きだした。
(-[]3[]) 「着いてきなよ。 案内しよう」
『 我が、ギャンブル ・ ルームへ 』
.
- 54
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 17:59:00 ID:Qv43s04Q0
- .
〜 〜 〜
内装はシンプルそのものだった。
床、天井部、壁。
全て、グレー系の単色パターンで統一されている。
どこか近未来的であり、また、無機質ともいえた。
奥行きのある部屋の中央部。
頑丈そうなガラス ・ パーテーションが、
部屋を向こう側とこちら側に分断していた。
(-[]3[]) 「特注の強化アクリルだよ。
その透過性はじつに92%以上」
(;'A`) 「は、はぁ……」
(-[]3[]) 「“ 写り込み ”
はほとんどないといっていい。
安心してくれたまえ」
('A`) 「?」
その意味がわかるのは少し後のことだった。
.
- 55
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:00:28 ID:Qv43s04Q0
- .
部屋の中央には、白いテーブルがひとつ設置されている。
パーテーションは台部分を避けるように構成されており、
天板の上部数十センチが開いている。
凹をさかさにしたような形で、
空いた部分にテーブルが置かれている、
と考えるとわかりやすいだろうか。
声を聞き取りやすくするためか、
パーテーションにはテーブル上部の隙間以外にも、
数カ所、ぽこぽこ穴の空いた場所がある。
(^ω^ ;)彡 (面会室みたいだお……テレビに出てくる、拘置所とかの)
俺の受けた印象を、ブーンが代弁してくれた。
ゲームの進行は中央で行われるのだろう。
テーブル上部の空間は、物のやり取りが可能な程度の隙間。
人が通れるほどの大きさはない。
.
- 56
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:01:24 ID:Qv43s04Q0
- .
(-[]3[]) 「見てのとおり、
この部屋は、3つのスペースに分けられている」
透き通った壁の向こう側から、ポセイドンが言った。
(-[]3[]) 「僕と君たちがいる、それぞれのプレイングエリア。
そして」
彼の動きに倣って、こちらもテーブルの傍らに視線を向ける。
黒服に連行されたしぃちゃんが、不安げにこちらを見返した。
テーブルのちょうど真横あたりにある、独立
・ 隔離されたスペースは。
(-[]3[]) 「ジャッジメント ・ ゾーン。
……彼女にはそこで、
各ゲームの勝敗について判定してもらうわけだ」
透明な壁で仕切られたその部分は、
人ひとりが通行できる程度の、細長いエリアだった。
両サイドに、カギ付きの簡素なドアがある。
二つのプレイングエリアは、ジャッジメント
・ ゾーン(以下JZ)を介して、
行き来できるようだ。
.
- 57
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:03:09 ID:Qv43s04Q0
- .
(;'A`) 「しぃちゃん……」
(;*゚−゚) 「だ、大丈夫です、わたしは」
── 倉庫の奥に駐車されていた、巨大トレーラー。
コンテナの内部がこのような内装になっているとは、
想像だにできなかった。
(-[]3[]) 「どうだい。
特別製の “ 移動可能な ”
ギャンブル ・ ルームさ」
入り口は三つ。
俺たちがいるこちら側、ポセイドンのいるあちら側。
向かって右側に設置されている。
そして我々の左サイド、
しぃちゃんがいるJZの中央に、一つ。
テーブルの手前には、キャスター付きの椅子があった。
こちらも、プレイングエリアにひとつずつと、JZひとつの計3つ。
当然、社長椅子なんかではなくシンプルなものではあるが。
.
- 58
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:04:04 ID:Qv43s04Q0
- .
(-[]3[]) 「じゃあ、ルールを説明しよう」
先に座ったポセイドンが、視線で着席を促した。
しぃちゃんはこわごわと椅子の背に手をかける。
こちらは椅子が一つしかないので、ブーンに譲ると見せかけてやっぱり俺が座った。
テーブルの周囲に集った俺たち四人。
さらにその周りには、ポセイドンの側に一人、
しぃちゃんの側に二人、俺たちの後ろに二人と、計五人の黒服がついている。
思ったより広いとはいえ、所詮はコンテナ。
むさい黒服たちの存在に加え、内装のせいもあって、閉塞感が半端ない。
透明の壁ごしに説明を受ける俺は、おそらく囚人のような顔をしていることだろう。
(-[]3[]) 「ホライゾンさん、そしてドクオさん。
あなた達と僕は 『
あるゲーム 』 で、一人ずつ僕と勝負する。
挑戦の順番はそちらで決めていい。
どちらかが勝てば、ギコは無傷で解放する。
……まあ、無いだろうけどね。 僕が負けるなんて」
ギコの名前が出た途端、しぃちゃんの表情が険しくなった。
ポセイドンはそんな彼女を一瞥し、うすら笑いを浮かべたあと、
説明を続けた。
.
- 59
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:06:23 ID:Qv43s04Q0
- .
(-[]3[]) 「各ゲームは数セットから十数セットを行うことになるだろう。
それと、ゲームにはチップを使用する。
チップは公平に50枚ずつ。
賭けられるチップが無くなった時点で負けだ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
(;'A`) 「50枚……」
この数字が多いのか少ないのかは、まだ判断できない。
(; ^ω^) 「肝心なのはゲームの内容だお!
それがわからないことには、公平でもなんでもないお!」
(;*゚ο゚) 「そうだよ! 複雑なゲームだったら、
最初からルールを知っているあなたのほうが有利なはず……」
声を荒げる二人だったが、
黒服が睨みをきかせたことで、しぶしぶ下がる。
.
- 60
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:07:13 ID:Qv43s04Q0
- .
(-[]3[]) 「そこは問題ないよ……くくっ。
君たちの頭脳レヴェルに合わせて、簡単なゲームにしてある。
一度プレイしてみれば、ルールくらいはすぐに飲み込めるだろう」
(;'A`) (何かと失礼なヤツですこと……)
(-[]3[]) 「コホン。
さて、そのゲームだが、俗に言う──」
ポセイドンは咳払いのあと、【
ゲームの名前 】 を口にした。
そ
( ゚A゚) (なっ!?)
( 'A`)
('A`) (……なにそれ?) チーン
初めて聞く名前だった。
.
- 61
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:08:04 ID:Qv43s04Q0
- .
(; ^ω^)そ 「おっ? そ、そんなもんで勝負するのかお?」
Σ(;'A`) 「知っているのかブーン!?」
(; ^ω^) 「ち、中学の修学旅行でやったお……」
ぽりぽりと頬を掻く肉塊。
意外にも、ブーンは “ それ ” を知っているらしい。
(-[]3[]) 「ルールは単純。 しかし、これがなかなかどうして奥深い。
究極のシンプルさを誇り、
かつ、至高の心理戦が楽しめるゲームさ」
そう言って、チップを片手に弄ぶ田中ポセイドン。
パーテーションの向こうに見える、そのドヤ顔が憎たらしかった。
.
- 62
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:14:01 ID:Qv43s04Q0
- .
〜 〜 〜
コンテナから出ると、
今まさに、正面の柱に縛りつけられている、兄者の姿が目に入った。
(;*゚−゚) 「兄者さん!」
(; ^ω^) 「あ、あんまり手荒なことはしないで欲しいお……!」
後ろ手なので確認できないが、
おそらく、彼の手首にも “ ロッカー ”
が装着されていることだろう。
(-[]3[]) 「彼は君たちと違って、ゲストでもなんでもないからね」
爪 ゚〜゚) 「 “ 招かざる客 ”
──呼んだのは、そっちだろ?」
人質が増えてしまった。
俺たちが勝負を避ける方法は、もう既になくなっていた。
.
- 63
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:18:26 ID:Qv43s04Q0
- .
(-[]3[]) 「応援か。 そうだったな。 おい」
ポセイドンが顎で指図する。
ダイオードが内ポケットに手を突っ込んだ。
/ ゚、。 / 「ほい」
彼は胸元から丸いものを取り出し、簡易テーブルに置いた。
('A`)
(;'A`) 「これ、は?」
(;;゚;;)
みかん。
楕円形で、ヘタがついてて、文字通りのオレンジ色。
.
- 66
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:25:06 ID:Qv43s04Q0
- .
,, - .,,
., .´. : . .☆. . : .`ヽ
. . : . . . : . . . `. .
i . . . : . .: . . : i
ヽ、. : . . . . . ::::/
` ー ' '`
み か ん 。
?
( ´ω`)つ 「差し入れですかお……いただきますお」
(;'A`) 「──いや、待て、なんか違う」
よく見ると、みかんにしては妙に光沢がある。
なんともツルッとした…… みかん型の、置物?
/ ゚、。 / 「持って。 ヘタのとこ」
(;'A`)つ○゙ 「はい? あ、ああ?」
わけがわからないまま、指示通りにみかんの頂点へ触れる。
.
- 67
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:27:04 ID:Qv43s04Q0
- .
ダイオードは次に、一枚の紙を取り出した。
◇⊂/ ゚、。 / 「ほい、コレ」
(;'A`) 「え? な、なに?」
/ ゚、。 / 「読め」
(;'A`)つ□ 「はいィ!? え、ええと……」
渡されたコピー用紙には、でっかい赤文字で何かつづってある。
俺はその文章を口にした。
( 'A`) 「えーなになに……。
□と) 『 もうちょっとの辛抱だ。他にも仲間は呼んであるから
』」
次の瞬間。
彡□
Σ(゚A`;)∩ 「 !? 」
⊃
ぼいん。
触れていたみかんから強い反動を感じ、俺は真横に飛び退いた。
.
- 68
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:29:38 ID:Qv43s04Q0
- .
見ると、みかんは中央から上下真っ二つになっている。
さらに、上半分のみかんを押し上げるようにして、
白猫のおもちゃが顔を出していた。
/ ゚、。 /+ 「踊るちんぽっぽ人形だケド」
どこかで聴いたメロディが電子音で流れ出す。
上みかんをかぶった猫は、
しっぽをくねらせ、悩ましげに左右に腰を振った。
(;'A`) 「な、なんだよコレ……!?」
ドキドキ
爪 ゚〜゚) 「 “ ポリグラフ ” だっけか?」
タムラの言葉にポセイドンが頷く。
.
- 69
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:32:01 ID:Qv43s04Q0
- .
(-[]3[]) 「ダイオードのPSIで作り出した、いわば嘘発見器さ。
スタンピースと違って、ダイオード本人にしか扱えないがね。
嘘をつきながらスイッチに触れると、
中のおもちゃが反応する仕掛けになっている」
/ ゚、。 / 「目も光るケド」
ビビビ
(* ^ω^) 「お、ホントだお」
/ ゚、。 / + 「かわいいだろ?」
どうでもいい。
とにかくびっくりした。
爪 ゚〜゚) 「さ、まだ尋問は終わってねぇぜ。
ポリグラフに触れながら、質問に答えな。
発信履歴にあった “ クー ”
ってのは、
おめーらの仲間じゃないのか?」
.
- 70
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:35:40 ID:Qv43s04Q0
- .
(;'A`) 「仲間……じゃ、ない。 助けに来ないって意味では」
タムラの問いに、つっかえつっかえそう返答する。
さっきと違ってみかんは反応しなかった。
爪 ゚〜゚) 「じゃあ、他に仲間はやってこない、と」
(;'A`) 「……そうみたいだ。 残念ながら」
やはり何も起きない。
爪 ゚〜゚) 「ヘッ。 どうやら、ホントみてえだな」
ようやく納得したらしい。
タムラは鼻で笑うと、俺の携帯を黒服に投げ渡した。
.
- 71
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:39:16 ID:Qv43s04Q0
- .
(; ^ω^)η゙ (ニーチャン、クーさんは、その)
ボソボソ
(;'A`) 「連絡したよ。 けど、あいつは来ない。
おもっくそ断られた」
『 何故私が貴様なんぞを助けねばならない
』
『 加勢してほしけりゃ三億円よこせ
』
『 そして死ね。木っ端微塵に弾けて死ね
』
などと、そりゃーもーボロクソ言われた末にだった。
( ´ω`) 「薄情な人だお……」
(;*゚−゚) 「……」
しっかし。
次から次に色んなことがあって、
もう驚くようなことはないと思ってたのに。 毎回。
.
- 72
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:41:26 ID:Qv43s04Q0
- .
/ ゚、。 / 「わりーと昔にゲットした能力だからな。
あと4〜5回ってところだケド。 使えるの」
ポセイドンやタムラが納得しているということは、
このみかん型のおもちゃ、本当に嘘発見器なのだろう。
(-[]3[]) 「ゲームをはじめるにあたって、
公正な勝負にするための保障が必要だからね。
君たちの能力を封じさせてもらったのも、そのためだ」
(;'A`) (……はじめから、公正なんてものとは無縁だろうが)
ポセイドンは勝手な理屈を並べ立ててゆく。
(-[]3[]) 「しぃちゃんはまあ、ともかくとして。
ドクオさんはアンチサイの一種で、
それも肌に触れなきゃ効果を発揮しない。
ホライゾンさんに至っては、未だ超能力が発現してないらしいけどね」
こめかみのあたりに汗が噴き出すのがわかった。
やはりこいつらは、ねらーである俺たちのPSIまで調べ上げている。
.
- 73
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:44:33 ID:Qv43s04Q0
- .
しかし、
(;'A`) (なんか、どこか、不完全な情報だ)
(-[]3[]) 「まさに “ 人間ロッカー ”。
……いやあ、実にくだらない能力だね。
むしろ、我が社の “
ロッカー” のほうが優秀なんじゃないか。
正直に言ってしまえば、
ホライゾンさんが “ 別人格
” にシフトしない限り、
僕らにとっちゃ何ら恐れる事もないんだけどさ。
ま、それでも万が一ということもある。
一応超能力は封じさせてもらっとこう。 念のためね」
挑発的な彼の物言いの中には、
いくつか引っかかる部分があったが、あえて黙っておくことにした。
(; ^ω^) 「ちょっと待ってくれお!
確かに僕らは何もできなくなったお。
けど、あんた達だってちゃねらーなんだお?
特にそっちの白服さんは、色んな超能力を使えるんだお?
それじゃイカサマし放題じゃないかお!
勝負にならないお!」
.
- 75
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:52:33 ID:Qv43s04Q0
- .
/ ゚、。 / 「──イカサマ?」
ブーンの異議申し立てに、いち早くダイオードが反応する。
/ ゚、。 / 「サムライである、スズキが? イ カ サ マ ?」
ゴゴゴゴゴ
(l|l ´ω`)そ 「お! か、……可能性の話で……お」
彼の醸し出す迫力に、ブーンの勢いはどんどんしぼんでゆく。
抑揚のない声で言われるとちょっと怖い。
(-[]3[]) 「君の言うとおり、PSIによる不正は物理的に可能だろう。
テレパシーであるとか、テレキネシス、それに、
えーと……まあ、とにかく。
勝負の最中は、鈴木兄弟にも
“ ロッカー ” を装着してもらう。
キーは黒服に持たせる。 これでいいだろ?」
/ ゚、。 / 「兄弟じゃないケド」
.
- 76
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:53:18 ID:Qv43s04Q0
- .
(*゚−゚) 「あなたは? 田中くん」
(-[]3[]) 「僕は無理だ。
君への実行権── “
ヒュプノシス ” が使えなくなってしまう。
不公平だと思うかも知れないが……」
(; ^ω^) 「不公平以外の何物でもないお!」
(-[]3[]) 「そこは安心してほしい。 おい、ダイオード」
゙ρ
ポセイドンはちょんちょんとテーブルを指し示す。
ダイオードがみかんに触れると、その横からポセイドンが腕を伸ばし、
ヘタの部分に指を置いた。
/ ゚、。 / 「OKだケド。
嘘ついたら、ぼいん、だケド」
(-[]3[]) 「コホン……それじゃ、よく聞いてくれ。
今から話す事は、嘘偽りない真実だ」
深呼吸ののち、ポセイドンは言った。
.
- 79
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:30:15 ID:Qv43s04Q0
- .
(-[]3[]) 「僕の持っている超能力は正真正銘、別人格と合わせて一つだけ。
限定的な 『 催眠能力(ヒュプノシス)
』 。 つまり 『 コトダマ 』 以外にない。
そしてこいつは、ゲームの結果を担保するため──、
具体的には、しぃちゃんの心身拘束にのみ使い、
トランプでの勝負、ひいてはイカサマなんかには一切用いない」
全員がみかんを注視する。
玩具は音一つ立てることなく、テーブル上に鎮座したままだった。
(-[]3[]) 「もちろん、コンテナ内──ギャンブル
・ ルームに、
イカサマ用の仕掛けはこれっぽっちも存在しない。
ああ、中での勝負が中継できるよう、
音響装置のほうはあとで設定させてもらうがね」
みかんは相変わらず、うんともすんとも言わなかった。
.
- 80
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:32:39 ID:Qv43s04Q0
- .
( ^ω^) 「何も起きないお……」
(;'A`) 「ってことは」
(-[]3[]) 「な? 嘘じゃないだろ。
安心してゲームを楽しむといい。 ……くくっ」
小さく笑って、ポセイドンはゆっくりと指を離す。
(-[]3[]) 「さあ、最初はどっちが僕と勝負する?」
俺たち三人は顔を見合わせる。
が、先ほどギャンブル ・ ルームに案内されたとき、既にその結論は出ていた。
(; ^ω^) ノ 「ぼ、僕がいくお」
(-[]3[]) 「よし。
じゃあゲームの段取りは、中で実際にプレイしながら覚えてくれ。
中の音声は外部出力できるようにセッティングするから、
ドクオさんはおおまかにルールを予習しておくといい」
.
- 81
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:33:55 ID:Qv43s04Q0
- .
そこからあれやこれやあったのち。
ダイオードとタムラが、見せつけるように
“ ロッカー ” を腕に回した。
スナップ音が連続し、グリーンのランプが点灯する。
これで、この場にPSIを使える者はポセイドン以外いなくなった。
黒服に促され、ブーン達はトレーラーに向かって歩き出した。
(^ω^ ;) 「……ニーチャン」
(;'A`) 「ブーン。 しぃちゃんを、頼む」
(;*゚−゚)゙ 「……」
ブーンが手前のドア、しぃちゃんが反対側のドアの前まで移動する。
それぞれ、プレイングエリアと、ジャッジメントゾーン(JZ)に続く扉だ。
(;'A`) (勝ってくれよ、ブーン)
黒服による簡単なチェックを経て、
二人は鉄の箱に飲み込まれていった。
.
- 82
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:37:56 ID:Qv43s04Q0
- .
もう一つのプレイングエリアへ続くドアの前に立つと、
ポセイドンは不意にこちらを振り返った。
(-[]3[]) 「── 正々堂々、だ」
(;'A`) 「?」
(-[]3[]) 「僕自身の力で、完膚なきまでに君たちをねじ伏せること」
(;'A`)
(-[]3[]) 「それを見せつける事が、
しぃちゃんの心に 『 強い敗北感
』 を刻む、より効果的な方法。
敗北感は段階を経て、『
屈服感 』 へと転じる」
( ゚A゚) 「!」
愉しげに、ゲームの意図を語りだす。
.
- 83
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:40:18 ID:Qv43s04Q0
- .
(-[]3[]) 「暗示の楔を打ち込むために、このゲームは重要な作業なんだ。
『 コトダマ 』 による、フラグ成立(ポセイドンに負けたら)。
そして、実行オーダー(彼のものになる)。
── これらをより確実に作用させるためには、
段階的な “ 関連付け作業 ”
が、不可欠なのさ」
一息に告げて、にまあ、と嗤う彼の横顔。
_,,
(#'A`) 「お前は────」
( -[])3 「期待してるよ、ドクオさん」
『 あなたが、僕としぃちゃんの輝かしい未来における
』
『 贄となってくれる事をね 』
やはりそれは 【 公平 】【 公正 】
なんて言葉とは無縁の、
醜悪な表情だった。
.
- 84
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:41:00 ID:Qv43s04Q0
- .
Channelers ----- episode
30.
E
l e c t r i c
P o k
e r
F a c e
. / ゚ 。 /
── VS.
Poseidon. phase - 5
.
- 85
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:44:32 ID:Qv43s04Q0
- .
〜 〜 〜
(;'A`) チッ チッ チッ チッ
チッ …
時を刻む秒針の音が、ことさら不安を掻き立てる。
しぃちゃんとブーンが連れられていってから、
およそ30分が過ぎた。
爪 ゚〜゚) 「あ〜〜〜〜、ったく。 暇だな」
内部の音声会話はコンテナ外に放送され、
ゲームの経過が逐一わかるようにする……と、あらかじめ説明があった。
だが実際は、スピーカーの音が小さくて、どちらかというと聞き取りづらい。
実況はおろか、中の様子はよくわからない、というのが正直なところだ。
爪 ゚〜゚) 「音響の調整もできねーのか。
かーっ! ほんと使えねー奴らだな」
.
- 87
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:49:50 ID:Qv43s04Q0
- .
トレーラーの斜め方向に立つ角刈りが、タムラのほうを見た。
サングラスのせいで視線はわからないが、おそらく睨みつけている。
勝負がはじまって数十分。
ずっと直立不動をキープしていることに、謎のプロ根性を感じた。
……なんというか、パーフェクト黒服としての威厳、とでもいうのか。
/ ゚、。 / 「早く終わらせて、サイコキネシストとドンパチ一戦交えたいケド」
,,
爪゚´〜`) 「ただ待っとくってのもつれぇわ……ふわ」
タムラが十何回目かのあくびをした瞬間だった。
がちゃり。
コンテナ横のドアが、音をたてて開いた。
('A`) 「!」
.
- 88
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:50:56 ID:Qv43s04Q0
- .
爪 ゚〜゚)゙ 「っと、お出ましだ」
角刈りのパーフェクト黒服が見守る前で、
闘いを終えた勇者が、威風堂々地に降り立つ。
( ω::::) ザッ
(;'A`) 「ブーン! 勝負は……!?」
( ω )
.
- 89
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:54:17 ID:Qv43s04Q0
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( ω )
( ゚ ω ゚) 死ーん
( 'A`)
('A`)
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- 90
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:57:57 ID:Qv43s04Q0
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……半ば危惧していたとおり、ブーンはわずか5レスで敗北したようだ。
(-[]3[]) 「──さあ、次はドクオさんの番だよ?」
向こう側のドアから、ポセイドンが顔を出す。
しぃちゃんの姿はない。
まだ中にいるのだろうが……不安は募る一方だった。
(;'A`) 「くそっ……!」
:::( ;ω;)::: …ゴメン…ゴメンオ…
まさに背水の陣。
心の準備が、なんて言ってる場合じゃない。
消沈するブーンにゲームの内容について聞こうとしたが、
すぐに黒服が立ちはだかり、会話を阻む。
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- 91
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:00:55 ID:Qv43s04Q0
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(;#゚A゚) 『 ブーンを倒したくらいでいい気になるなよ!
こいつは四天王の中でも格下中の格下ッ!
』
:::( ∩ω;)::: オウッ…ウォッ…
なんて事は、フラグっぽいし可哀想だから言わないけど。
(-[]3[]) 「僕にとってもここからが本番さ。
さ、始めようじゃないか。
楽しい楽しい、ゲームをね」
(::::::A゚)
(;:::A゚) (────やるしか、ない!)
挑発的な笑みを見た瞬間、俺の腹は決まった。
意を決して、勾配のある入口スロープに右足を踏み出した。
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- 92
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:04:12 ID:Qv43s04Q0
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〜 〜 〜
黒服による簡単なチェック
(ロッカーはきちんと装着されているか、等)が終わると、
コンテナの内部、ギャンブル ・
ルームのプレイングエリアに進入する。
先ほどと違うのは、
センターテーブルの脇にボックスがセッティングされている事。
チップが数枚、散らばっていること。
そして。
(;*゚−゚) 「ど、くお……さん……!」
Σ(;゚A゚) 「しぃちゃん!」
ジャッジメント ・ ゾーンに設置された席で、震えているしぃちゃんの姿。
一目見て異常だと気付いた。
顔をあげた彼女は、制服の上着を着ていない。
それどころか、ワイシャツは肩から二の腕のあたりまではだけており、
白い下着の吊りひもが、片方外れかかっている。
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- 93
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:06:47 ID:Qv43s04Q0
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勝負の審判員であったはずの少女は、
露わになった肩を隠すように、両腕を交差させ、小さな体をすくめていた。
(#゚A゚) 「ポセイドン!! お前っ……しぃちゃんに何をした!?」
俺は激昂し、壁の向こうへ詰め寄る。
(-[]3[])∩∩ 「くくっ。 いやいや、別に何もしてないよ」
(#'A`) 「何も?! 現にこうやって彼女は……!」
(-[]3[]) 「くくっ。 ぷっくく……ははははは!!」
何がおかしいのか、ポセイドンは大口を開けてけらけら笑いだした。
(-[]3[]) 「ははははは! ほら、しぃ! 立て!」
(;*゚−゚) 「!」
突然の命令に、
しぃちゃんはびくりと体を震わせ、大きく目を見開いた。
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- 95
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:08:34 ID:Qv43s04Q0
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次の瞬間、彼女は椅子から跳ねるようにその場に起立した。
(-[]3[]) 「くくくっ。 よくできました。
じゃあ次に、その腕をどけるんだ」
(;*>−゚) 「…やっ……! こんな……の……」
苦渋の表情で、徐々に両腕を下ろしてゆくしぃちゃん。
胸元で支えていたワイシャツがずり下がり、
腕の動きに合わせて、滑らかな白肌が少しづつ晒されてゆく。
(#'A`) 「やめろっ、おい! ポセイドン!」
(-[]3[]) 「ははははは! いい光景だね。
どうだい? これが僕の催眠(ヒュプノシス)。
……ばっちりハマったみたいで何よりだ!」
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- 96
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:11:10 ID:Qv43s04Q0
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:::(;*>−<):::
(-[]3[]) 「君のふとましい弟さんね。
僕が彼に勝った事で、
めでたく、しぃちゃんの “
制動権 ” が手に入った。
だから、記念にちょっと 『
試してみた 』 だけだよ。
くくっ」
(;#'A`) 「お前……!」
(-[]3[]) 「……ま、このくらいにしておこうか。
お楽しみは明日からいくらでも……。
ね? し ぃ ?」
『 もういいぞ 』 というポセイドンの命令によって、
彼女の動きははたと止まった。
(-[]3[]) 「ドーテーくんには、ちょっと刺激が強すぎたかな?」
俺がこの中学生に抱く感情は、すっかり嫌悪感一色に染まっていた。
:::(# A ):::: 「……ンの、やろぉっ!」
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- 97
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:14:08 ID:Qv43s04Q0
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未だパーテーションにかじりつく俺。
仕切りの隙間から何かぶつけてやろうかとも思ったが、
あいにく投げつけられそうな物は見当たらない。
_,,
(;* − )
その場に直立したまま、ポセイドンを睨みつけるしぃちゃん。
気丈に振舞っているようで、
その目にうっすらと涙がにじんでいることに、俺は気付いてしまった。
(#'A`) 「テーブルにつけっ! さあ、早く!!」
この、おぞましい 『 ポーカー勝負 』。
俺にとって、絶対に負けられない戦いとなった。
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- 98
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:16:51 ID:Qv43s04Q0
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--─ インディアン
・ ポーカー ─--
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- 99
名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:20:01 ID:Qv43s04Q0
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簡単に説明すると、
これは、52枚のカードを使ったパーティ
・ ゲームだ。
ルールは単純明快。
それぞれ一枚ずつカードを取り、数の大小で勝敗を競う。
普通のポーカーのように役はなく、純粋にカードの強さのみで争うゲーム。
カードの強さは、Aが最弱で、あとは順に2〜10と続く。
その上が、J、Q、Kで、Kが最強のカードになる。
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- 100 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:22:36 ID:Qv43s04Q0
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←弱い 強い→
[A] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [J] [Q] [K]
数が同じ場合は、スート(マーク)で勝敗を決する場合もあるし、
単純に引き分けとするルールもある。
ジョーカーを混ぜるバリエーションもあるが、ここでは省略。
『 ポーカー 』 の名を冠している以上、カードの強さを通じて賭けを行うわけだが、
このゲームには、役もなければカード交換もない。
ぶっちゃけ、これだけだと単なるくじ引きでしかない。
インディアン ・ ポーカーを、いっぱしのパーティゲームたらしめている部分。
このゲームにおける最大の特徴は、
“ 自分の引いたカードが、わからない
” という点なのだ。
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- 101 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:24:02 ID:Qv43s04Q0
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[3]
[K]⊂ヽ (゚ー∩*)
( ´_ゝ`)ノ丿
[A]⊂ヽ ノつ[5]
( 'A`)ノ丿
\ (^ω^ )
そして、これこそが駆け引きの生まれる要素でもある。
参加者は全員、配られたカードを “
自分のひたいに持っていく ”。
当たり前だが、この時自分のカードは絶対に見てはならない。
インディアンの髪飾りのごとく提示されたカード。
つまり、他人のカードが全て丸わかりの状態で、賭けを行うわけだ。
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- 102 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:27:18 ID:Qv43s04Q0
- .
インディアン ・ ポーカー。
これは、通常のポーカーにおける 『
ハッタリ 』 『 駆け引き 』 要素に加え、
自分のカード情報を推察するための『
観察眼 』 が問われる、
<< 『 心理戦 』に特化したゲーム >>
だと言える。
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- 103 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:30:43 ID:Qv43s04Q0
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〜 〜 〜
センターテーブルについた俺の前に、
ポセイドンから、浅い箱が差し出された。
(-[]3[]) 「チップ50枚だ。
赤いカードが一枚でチップ10枚分、
黄色が5枚分、青が各1枚分のチップになる」
チップもまた、丸いコイン型ではなくカード式。
箱には、赤 ・ 黄 ・ 青それぞれのチップを立てかける溝がついており、
枚数が見た目にわかりやすくなっている。
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- 104 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:33:43 ID:Qv43s04Q0
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(-[]3[]) 『 だらだらゲームを続けると、緊張感に乏しい。
かといって、すぐに終わってしまうのも
なんだかなぁ……という感じだよね。
だから、チップは奪い合いではなく完全な消耗戦。
勝敗に応じて削られるのみで、
自分の枚数にプラスすることはできない。
テレビゲームのHPみたいなものだと考えてもらえればいい。
これなら、ほどほどに楽しめて、長期戦も回避できるだろ?
』
……と、先だってポセイドンが言っていたとおり、
チップはプレイヤー間を行き来することがない。
消費したチップは、
テーブル脇にセッティングされたボックスへ投げ込むと、
デジタルカウント式のスコアボードに結果が表示される仕組みだ。
('A`) 「ハイテクだな。 無駄に」
皮肉たっぷりに呟いたあと、JZのほうへと視線をうつす。
不安げなしぃちゃんと目があった。
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- 105 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:35:24 ID:Qv43s04Q0
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彼女は小さくて、うつむく姿はあどけない。
未だ体の自由が効かないのだろうか。
腕が震え、ワイシャツのボタンを正すのに難儀している。
(;*´−゚) 「ドクオさん、わ、わたしは大丈夫です。
だから、落ち着いてゲーム、してください」
ショートカットが揺れる。 最近散髪したのか、以前よりもさらに短い。
秋口にデート……じゃなくて、ショッピング途中にデパートジャックに遭った、アレ。
あの時のような、短いサイドテール?というかアホ束は、今は結えなさそうだ。
それでも、しぃちゃんからはボーイッシュな印象をあまり受けない。
透明度の高い容貌と、立ち居振る舞いがそうさせるのだろう。
(-[]3[]) 「くくっ。 君もしっかりジャッジしてくれよ?」
こうやってポセイドンと並ぶと、
彼が中学生で、しぃちゃんが高校生だなんてとても思えない。
100人にアンケートをとれば、まず九割以上が逆だと答えるだろう。
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- 106 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:39:17 ID:Qv43s04Q0
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( 'A`) 「しぃちゃん」
(;*゚−゚) 「……はい」
( 'A`) 「俺さ、物事を断言……とかって、普段あんまりしないんだけどさ」
しぃちゃんに出会ってから今まで、約半年の出来事を思い出してみる。
彼女には、ぼったくり浄水器販売員や凶悪犯から助けてもらった。
ハインさんと出会った時も色々気を使ってもらった。
いくら感謝してもしきれない程のものを、たくさんもらってきた。
( 'A`) 「勝つから。 心配しないでくれ。
頑張るとかじゃない。 勝つ。 だから」
守ってあげたい。
好きとかどうとかじゃなく、そう感じさせる、女の子だった。
(;*゚−゚) 「!」
(;*゚ー゚) 「……お願いします」
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- 107 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:42:37 ID:Qv43s04Q0
- .
楽しいときは、ころころと可笑しそうに笑い。
悲しいときは、長い睫毛をしゅんと下に向ける。
そして怒ったときはグランドローラーを投げ、
タイヤを投げ、消火器を投げ、おっさんを投げ、
ピアノを投げショーケースを投げ椅子を投げバス停を
……あれ。
('A`)
(*゚ー゚) ?
('A`) チーン
なんか放っといても大丈夫な気が……。
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- 108 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:43:21 ID:Qv43s04Q0
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(-[]3[]) 「さあ、じゃあそろそろ始めようか」
('A`)
(*゚−゚) 「……ドクオさん?」
('A`)
(;'A`)そ 「ふえっ!? あ、ああ、望むところだッ!!」
一人の少女の未来を賭けて。
ゲームの幕が、いま、切って落とされた。
(続く)
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- 109 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:44:33 ID:Qv43s04Q0
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−−−−−− 用語
【 ロッカー (PRS) 】
銀色のリストバンド。 手首に嵌めたチャネラーの超能力を封じる。
また、別人格との意思疎通 ・ 切り替えも不可能になる。
ロッカー自身もロックされるのでカギがないと外れない。
腕時計に似ているが、ディスプレイや文字盤などは無い。
効力を発している間は小さな緑色のランプが点灯する。 充電式。
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- 110 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:47:14 ID:Qv43s04Q0
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コ ン デ ン ス
【 電磁式複写能力 】
鈴木ダイオードのPSI。 電気系念能力(エレキネシス)の亜種。
磁気カードやICチップに他人の超能力をコピーする。
いわば超能力アイテムを作り出す能力。
能力の種類によって、
・アイテムそれ自体がPSIの触媒となるもの
(パイロキネシス: 投げたトランプが燃え上がる
エレキネシス: チェス駒がスタンガンになる
ポリグラフ: ちんぽっぽ人形が嘘発見器になる etc....)
・アイテムにコピーした能力を、ダイオードが
“ インストール ” することで、
一定時間(または回数)、その超能力を使用できるようになるもの
と、二通りの使い方に分かれる。
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- 111 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:48:11 ID:Qv43s04Q0
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【 スタンピース 】
ICチップ搭載のチェス駒に
『 エレキネシス 』 をコピーした、使い捨てのスタンガン。
エレキネシス自体がダイオード自身の能力であるため、
スタンピースはいくつでも生み出せるし、誰でも扱うことができる。
【 ちんぽっぽ人形 】
ポ リ グ ラ
フ
ダイオードが 『 二律性超知覚 』
というESPをコピーした、みかん型の嘘発見器。
対象者が嘘をつきながらスイッチを押すと、
白猫が飛び出し、踊り、どこかで聴いたようなテーマソングが流れる。
目も光る。 某病院のまねき猫並みに光る。
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