- 34
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:01:50 ID:lAL0DAmY0
-
『 ──なお、現在のところ被害者間に直接的な繋がりは見られず──
』
('A`) 「……物騒だなぁ、何かと」
ぼそり呟くも、返答はなく。
コメンテーター連中の弾む議論をBGMに、俺、内藤ドクオはソファへ沈み込んだ。
流石メンタルクリニックの待合室は、落ち着きのある空間だ。
クリーム色の壁を数点の風景画が彩り、フロアースタンドの明かりは温かみに溢れている。
時刻は昼の1時を回ったところで、広い室内に他の患者の姿はない。
つり目の女性スタッフがひとり、受付で黙々とキーを叩いているだけだ。
そんな中、観葉植物横の長方形だけが、不調和な現実を垂れ流し続けていた。
- 35
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:03:24 ID:lAL0DAmY0
-
('A`) 「……」
一時の寒波も和らぎ、穏やかな天候の続く12月初旬。
だが、世間は恐るべき狂気の影に震わされていた。
奥にあるテレビからは、とある事件の話題ばかりがひっきりなしに報じられている。
数ヶ月前、それから先々月に、都市部近郊で発生した殺人事件。
先の二件と、今月頭に起こった事件の関連性が正式に発表されたのは、
つい先日の話だった。
- 36
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:06:22 ID:lAL0DAmY0
-
【 アリス殺人 】
この字面から、事件の概要を推測するのは容易くもあり、また難しいとも言える。
ネーミングの由来は至ってシンプル。
まるで 『 不思議の国のアリス 』 をモチーフにしたような殺人事件で、
いわゆる 『 見立て殺人 』 の一種だった。
過去二つの事件に共通する異常性は、以前からクローズアップされていたのだが、
今月に入って間もなく、立て続けに二件の殺人が起きたことにより、
報道関係はこの話題で持ちきりとなっていた。
計四件の殺人事件において、被害者は全て若い女性と報じられている。
とはいえ、12歳から31歳と、若いという中にも幅はあるけれど。
- 38
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:09:58 ID:lAL0DAmY0
-
('A`) (何を食ってどう生きりゃあ、こんな犯行を思いつくんだろ……)
最大の特徴は、被害者の遺体が、アリスを連想させる装飾を施されていることだ。
少女趣味なドレスを着せられていたり、豚のぬいぐるみを抱えていたりと、
事件によって、その内容にはバラつきがある。
どの女性も、性的暴行を受けた形跡は皆無。
これが、ふざけた愉快犯の凶行、で終わらないのは、
事件に潜むその猟奇性にある。
公表されてはいないが(というより、できないのだろう)、
バイト先で耳にしたところによると、三件目の事件現場は凄惨極まりなく、
切断された首と胴体が、引きずり出された腸で繋がれていた、らしい。
- 39
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:11:40 ID:lAL0DAmY0
-
被害者は両手に傘のへこんだきのこを握らされており、周りにはハトの死骸が一羽。
ご丁寧に、きのこを食べたアリスがろくろ首になるシーンを再現したというわけだ。
おそらくは、他に殺された3人も、
報道関係が自粛する類の 『 装飾 』 を成されていたのだろう。
彼女達が受けた仕打ちとはいかようなものだったのか……もはや想像したくもない。
(´<_` ) 「お待たせ。 どうぞ」
('A`) 「あっ、はい」
扉が開き、診察室のほうから先生がひょいと顔を出した。
今こうしている間にも、
どこかでは、一人のアリスが死に瀕しているかも知れない、という恐怖感。
我々一般市民にできるのは、一刻も早い犯人逮捕を願うことだけだ。
- 41
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:14:37 ID:lAL0DAmY0
-
〜 〜 〜
(´<_` ) 「ホライゾン君は退院したのか。 良かったね、本当に」
診察室にて。
ウッドテーブルの向かいに座る流石先生は、以前と変わらぬイケメンドクターだった。
ときおり電子カルテを片手で操作する姿は、仕事のできる男といったオーラを漂わせている。
('A`) 「お陰さまで。 そのうちあいつもここに連れてきていいですか?」
(´<_` ) 「もちろんだとも。 私自身、彼の話を聞いてみたいしね」
クリニックには、初めに来たときと同様、午後休診日の空いた時間帯にお邪魔している。
とはいえ、俺は心の病気で来院したわけではないので、
診察と呼ぶほど堅苦しくもない、言わば雑談に過ぎないような会話がメインである。
- 42
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:16:13 ID:lAL0DAmY0
-
(´<_` ) 「井戸中……サダコさんだっけ?
ホライゾン君の同級生で、事件を起こしたという」
(;'A`) 「それがですね、ブーンのやつ、いつの間にか仲良くなってたみたいなんですよ!
入院生活で何があったのか知らないんスけど、まるでカップルのように、ええ。
こないだなんて、見舞いに行ったら二人でお弁当なんかつつき合っちゃってもう!」
(´<_` ;) 「よしよし、落ち着こう。 興奮するのはよろしくない」
('A`) 「ああ。 ひょっとして、彼女も今度……?」
(´<_` ) 「いまそれを言おうとしていたところだよ。 是非、連れてきなさい」
流石先生は笑顔で頷いた。
相変わらず先生の口調は穏やかで、話していて安心感がある。
(´<_` ) 「君自身は、何か変わったところはないかい?」
('A`) 「ええと……これといって、特には」
- 43
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:19:38 ID:lAL0DAmY0
-
(´<_` ) 「事件を通して、何か感じたことなどがあれば、遠慮なく話してごらん。
君にとってもショッキングな出来事だったろうし」
(;'A`) 「いえ、その」
本当のことを言うならば。
昔好きだった女の子が、屋上から転落してゆく……という悪夢は、
未だ、我が身に最悪の寝覚めをもたらし続けている。
それも、以前に比べて、夢をみる頻度が増しているのも事実なのだ。
だが、そのことについて相談するのは、なんとなくためらわれた。
先生を信頼していないわけではない。
ただ──なんとなく、だ。
('A`) 「大丈夫です、はい」
『 ドクミ 』 の姿で超能力に目覚めてしまったことは、前回の訪問時、先生に伝えた。
予想していた通り、先生の表情変化は著しいものだった。
俺の身を案じる先生に対し、今のところ不利益には繋がっていない旨を強調したものの、
ブーンのことも含めて、気がかりが全くないというわけではない。
- 44
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:21:05 ID:lAL0DAmY0
-
('A`) 「そういえば、ぜんぜん関係ない話なんですけど」
(´<_` ) 「うん?」
──実際のところ、その【 劣化コピー能力
】、日ごと無駄に進歩している。
既に俺は、二つの能力を、同時に【
再現 】できるまでになっていた。
しかし、超能力に良い感情を抱いていない(と思われる)先生に、
その事を話すのも、これまた気が引ける。
('A`) 「ニュース、見ました? 殺人事件の」
俺は質問をはぐらかすように、適当な話題を持ち出した。
先生は、紅茶のカップをつまみ上げ、小さく首肯する。
(´<_` )゙ 「ああ、アリス殺人ってやつか」
('A`) 「……どんな精神状態なんスかね、こういう事件を起こす男ってのは」
(´<_` ) 「ふむ……」
(;'A`)ゞ 「こう……どう思われます? なんというか犯罪心理学的な観点とかから」
- 45
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:22:52 ID:lAL0DAmY0
-
カップを置くと、先生は腕を組み、唸った。
(´<_` ) 「いやぁ、そちらは専門外なので、あまりめったなことは言えないよ」
('A`) 「で、ですよねー」
ただ、と付け加え。
(´<_` ) 「犯人が “ 少女性愛者の男
” とは限らないかもしれないね。
いわゆる暴行の痕跡がないとのことだし。
まあ、犯人が女性だとすると、単独犯ではない可能性が大きくなるだろうけどね」
('A`) 「遺体をどうこういじくるには、それなりに力がいるでしょうしねえ」
(´<_` ) 「ああ。
それと、それぞれの事件について、
“ 見立て ” の程度が違っているのが気になるね」
('A`) 「程度……と言いますと?」
聞き返しつつ、小さな引っ掛かりを覚えた。
ん? そう言えば。
- 46
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:25:04 ID:lAL0DAmY0
-
(´<_` ) 「ドレスを着せたり体を切断したりという、
非常に手の込んだ作業を行っているケースもあれば、
トランプを口に詰め込まれていただけ、というケースもある」
('A`) 「……そこは俺も気になりますね」
そういった情報って、俺がバイト先で人づてに聞いたことで……。
とにかく、テレビとかでは詳しく報道されていない部分だった気がする。
(;'A`) 「ひょっとして、も、模倣犯、ってことスかね?」
(´<_` ) 「そうだね、その可能性も……」
何故先生はそれを知っているんだろう。
他の患者とか、おしゃべり好きなスタッフに聞いたのか。
それとも。
ま、まさか。
- 47
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:27:06 ID:lAL0DAmY0
-
Σ(:::A゚) (ひょっとして、目の前にいるこのイケメンドクターこそが──?)
ぐびり、唾を飲み込んだ。
(´<_` ;) 「?」
だがそこで、
『 いーえ。 同一犯の犯行よ 』
(;゚A゚) 「!」 (´<_` )
後方より、会話を遮る高く澄んだ声。
- 48
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:29:22 ID:lAL0DAmY0
-
∬´_ゝ`) 「使われた凶器が、ほぼ共通してるのよね」
すぐさまそちらへ振り向く。
そこには、開いたドアの端へ背を預けるように、すらりとした女性が立っていた。
∬*´_ゝ`) 「へろ〜弟者っ。 きちゃった♪」
(´<_` ;) 「ナチュラルに捜査情報を暴露しないように」
∬´_ゝ`) 「だーいじょーぶ。 そのうち報道される事実だし♪ ……たぶんね」
(;'A`) エ、アノ、ソノ…
パンツスーツにマニッシュなトレンチコート。
現れた超美人は、パンプス……ではなく、スリッパの音を響かせてこちらにやってきた。
アロマの芳香に混じり、仄かな香水の匂いが鼻腔をくすぐる。
- 49
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:31:01 ID:lAL0DAmY0
-
∬*´_ゝ`)゙ 「はじめまして! きみ、ドクオ君よね?」
(;'A`)゙ 「は、はい? エットソノ」
∬´_ゝ`) 「噂は聞いてるわ! ああ、私はこういう者よ」
アジアンビューティは淀みない動作で、バッグから名刺を取り出す。
低頭しつつも、俺の視線は彼女の容貌に釘付けになっていた。
背ぇ高い。 なんかすげえキラキラしてる。 カッコいい。
(;'A`) 「さ、流石アカネさん、ですか……」
つ□
印字された役職に目を通すうち、俺は自然にそれを読み上げていた。
- 50
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:31:43 ID:lAL0DAmY0
-
( 'A`) 「VIP県警察本部 ── 刑事部捜査一課
・ 強行犯捜査第○係、警部補」
つ□
( 'A`)
つ□
(;゚A゚) そ 「流石…… 刑 事 !?」
つ□
捜査一課、という言葉の意味が飲み込めた瞬間、否応無しに背筋が伸びる。
∬´_ゝ`) 「以後お見知りおきを♪」
(;'A`)ゞ 「お疲れ様です! 自分は当診療所所属の患者、内藤ドクオであります!」
(´<_` ) 「きみ……公権力に弱いんだね……」
ふふっというアカネさんの微笑と、先生の小さな溜め息が重なった。
- 51
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:35:38 ID:lAL0DAmY0
-
(;'A`)ゝ (そういえば、流石先生のお姉さん、警察の関係者とは聞いていたっけ)
∬´_ゝ`) 「しぃちゃん達は元気にしてる?」
(;'A`) 「え、ええ……(まさかソーサイッカのケイジ殿だとは……)」
そこはやはり姉弟、というべきか。
端正な容姿に優雅な振る舞い、彼女からは人を惹きつける天然のオーラを感じる。
……同じ兄弟でも、俺とブーンみたいなアレとじゃ大違いだ。
奥に引っ込んだ先生が、湯気の立つカップを手に現れるまで、
俺はコートを脱ぐアカネさんのほうへちらちら視線を送っていた。
(´<_` ) 「それにしても、どうしたんだ急に。
姉者がここに寄るのも久しぶりじゃないか」
( 'A`)゙ (姉者?)
ふたたび椅子に腰掛けた先生は、アカネさんに問うた。
- 52
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:38:26 ID:lAL0DAmY0
-
∬´_ゝ`) 「そりゃもー絶賛勤務中よ。
けどさー。 捜査の名目でこっちに来るからにゃー、
こーゆー貴重な機会も逃さないようにしなきゃね」
(´<_` ) 「例の事件か。 なんでも、特別合同捜査本部が設置されたとか。
姉じゃ……姉さんも当然、駆り出された、と」
∬´_ゝ`)−3 「……ええ。
今までもてんてこまいだったけど、これからはほぼ本部にカンヅメよ。
しばらくは家にも帰れそうにないわ」
スプーンを持つ彼女の表情が、僅かに翳る。
話の内容からして、それはつまり。
(;'A`) 「えと、捜査って、やっぱりあの……」
∬´_ゝ`) 「お察しの通り、例の連続殺人事件ね。
もーホンっト忙しいったらありゃしないわ。
そうそう。 さっきの凶器うんぬんの話は、他の人にしちゃダメよ♪」
ε- (´<_` ) 「その割にはずいぶんなくつろぎっぷりだな……」
- 53
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:39:13 ID:lAL0DAmY0
-
微笑みながらカップを傾けるアカネさんだったが、
先生の何気ない一言に大袈裟な反応を示す。
∬;´_ゝ`)そ 「あらっ! ひょっとして今これ、診察中だった?
∩ あたしお邪魔だったかしら?」
(´<_` ) 「うーむ、まあ診察といえば診察中……」
( ゚A゚) 「邪魔だなんてとんでもありません!」
俺は思わず即答した。
∬*´_ゝ`)゙ 「あらそう?」
('A`) 「ええ。
その、あの、色々と面白いお話が聞けしょうでしゅひ」
('A`) 「……」
('A`)+ キリッ
(´<_` ;)
第一、あなたのような美人を追い返すなんてそんな!
……とまでは、さすがに口に出せない。
- 55
名前:54訂正:2011/03/26(土) 21:40:33 ID:lAL0DAmY0
-
∬´_ゝ`) 「それじゃお言葉に甘えて、もうちょっとだけ居ちゃおーかな♪
あ、紅茶おかわりっ。 セイロンでよろ〜」
(´<_` ;) 「おいおい」
それからしばらく、アカネさんと先生を中心とした雑談が続いた。
捜査の簡単な進行状況など、実際にそれは俺にとっても興味深い内容だった。
(;'A`) (お疲れ様としか言いようがないわな、んーとに)
ともかくも。
苦労が絶えない職場であり、数少ない女性刑事であるアカネさんが、
その中でも特に大変な立場であることについては、よーーーーく理解できた。
- 56
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:41:09 ID:lAL0DAmY0
-
彼女が愚痴の終わりに紅茶を飲み干したあたりで、
先生は壁時計のほうへ視線を投げ、俺に切り出した。
(´<_` ) 「ドクオ君、準備がよければそろそろ……」
('A`) 「あ、わかりました」
お開きにしよう、の合図ではない。
それは、ドクミの姿になってきてほしい、という意味だ。
前回の訪問時から、男の姿と女の姿、両方で問診をおこなうようになったのだ。
果たしてそれにどういった意味があるのかは、俺にはよくわからない。
自分では、人格も何も変わりないつもりなのだが……。
自覚できていない精神状態の変化も、先生にかかれば察知できるものなのだろうか。
∬*´_ゝ`) 「ああひょっとして! 噂の女体化ってやつー?
見たい見たい!」
Σ(´<_` ;) 「なっ、しまっt」
(;'A`) 「どういう噂ですかもう……」
そんな俺の前で、目を輝かせる美人刑事と、動揺を隠せない敏腕精神科医。
- 57
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:43:10 ID:lAL0DAmY0
-
::(´<_` ;):: 「す、すまないドクオ君。本来我々には守秘義務がありそれは勿論遵守すべきだが
私は君については医者と患者というより人生の先輩としてアドバイスする立場だと
考えておりつまり姉者にだけは君の体質をうっかり話しちゃって決して他の人には」
この慌てようである。
初めて見る先生の一面に、俺とアカネさんの間で和やかな空気が流れる。
∬*´_ゝ`)b 「情報漏洩姉弟でーす!
ドクオくん、これからもよろしくね♪」
Σ(´<_` ;) 「よしなさいって! 彼、本気にするだろ!」
(;'A`) 「はぁ……」
(゚<_゚ ;) 「違うんだドクオ君。 私は決して医者としての義務を怠るような真似はッ!」
アワワワワ
(;'A`)ノ゙ 「いや大丈夫、大丈夫です。 わかりましたから」
なんだか見ててかわいそうになってきた。
- 58
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:43:39 ID:lAL0DAmY0
-
('A`) 「んじゃ、トイレお借りしますね」
∬´_ゝ`) 「行ってらっしゃーい♪」
( <_ ) 「違うんだ……私はプロフェッショナルとして……がしかし……」 ブツブツ
俺は紙袋片手に診察室を出た。
先生の、見えない誰かへの弁解を背に受けながら。
〜 〜 〜
- 59
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:48:30 ID:lAL0DAmY0
-
クリニックのトイレは、診察室を出て右。 受付の前を通って玄関側だ。
受付にいたスタッフの人は、既に帰ってしまったのか、いなくなっていた。
从'。`リル 「……ふぅ」
洗面所は小奇麗で、人ひとり住めるくらいの広さはある。 住まないけど。
午後休診である現在、他の患者はいないので、誰かが入ってくる心配もない。
変身するにも着替えるにもうってつけの場所というわけだ。
無事(?)女の子になった僕は、裸のまま紙袋に手を突っ込んだ。
从'、`リル (姿形の他に変化なんて無いハズなんだけどな。
先生にとっては、違和感とかあったのかな)
実は今日はじめて、替えの服を持参してみた。
ホワイトのオフショルダー(肩出し)ニットワンピース。
クーとの壮絶なるウィンドウショッピングで手に入れたものだ。
サイズが合えばなんでもいいと主張したにも関わらず、
クーが選んでくれたのは、女性的な印象の強い服ばかりだった。
彼女の趣味が反映されているのか、はたまた遠まわしな嫌がらせのつもりなのか。
- 60
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:49:06 ID:lAL0DAmY0
-
从 、 ;リル 「……しっかし、見れば見るほど抵抗感が湧くな」
しかもこのニットワンピ、胸のところにポンポンまで垂れ下がっている。
どちらかといえば、僕なんかよりクーに似合いそうな、はっきり言って大胆なシロモノだ。
合わせ方次第では、しぃちゃんが着ても可愛いと思う。
買った直後は、正気じゃねえ、ありえねー、と眉を顰めていたのだが、
ふわふわもこもこの感触が心地良く、
一度着て以降、ちょっとだけ気に入ってしまったのも事実である。
そのままだとスカート部分が短すぎ、簡単に見えてしまうので、
別に買ったショートパンツをボトムスとして合わせるつもりだ。
……とはいえ。
从'、`;リル (大丈夫かなぁ……。
こんな姿見せて、先生たちに呆れられたらどうしよう)
一人の時に着るぶんにはいいのだけど、
他人に披露するとなると、どうにも気恥ずかしく、むず痒い思いだ。
- 61
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:51:22 ID:lAL0DAmY0
-
− − − − −
(´<_` ;) 『 うわあ……ここまでガッツリ用意万端とは。 ひくわー
』
∬l|i´_ゝ`)そ 『 せ、性犯罪者予備軍ね!
』
(´<_` ) 『 ドクオ君、それはイジョーセーヨクで精神医学的にヘンタイ行動としてどうたら
』
∬*´_ゝ`) 『 とりあえず逮捕していい?
』
− − − − −
从-、-;リル (……みたいな事言われたら、立ち直れないかも知んない)
やっぱやめようかな……なんて考えがよぎったものの、
それも含めて診察なんだ、と思いなおした。
从゚д゚リル 「着る!」
メイド姿や制服なんていう、割とどうしようもない格好で外を駆け回った身だ。
今更何をためらうことがあろうか。
そう、これは女装であって女装ではない! ……はずだ。
- 62
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:52:45 ID:lAL0DAmY0
-
どんな反応を返されても、全て受け止める意志を固めた。
唾を飲み込み、レース付きの白いショーツに、いそいそと足を通す。
これからこのニットワンピを着る。
だがそのためには、一つの障害を乗り越えなければならないのだ。
从-。-リル 「とうとうこの時がきたか……」
从゚、<リル 「せーのっ。 んぐっ」
前かがみの姿勢で、ブラジャーのホックと悪戦苦闘する。
こいつだけはもうホント、まったくスムーズに着けることができなくて。
何度か練習したのに、慣れる様子がぜんぜんないんですけど。
从>皿<リル 「くおっ! よっ、ほぉっ!」
腰を曲げて上体を反る僕の後ろで、金属部分がかちかち音をたてる。
いててて、腕っ、いてえ。
ホックが付くほうが先か、はたまた二の腕が攣るほうが先か。
- 63
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:53:08 ID:lAL0DAmY0
-
:::从 △ ;リル::: (も、もうちょっとで……)
プルプル
そうやって、必死な形相で震えていたところ。
( ´_ゝ`) 「〜〜〜〜〜♪」 ガチャッ
正面のドアが、がちゃりと音を立て、
从゚。゚リル 「えっ」
( ´_ゝ`) 「んっ」
……。
……。
…………開いた。
- 64
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:53:30 ID:lAL0DAmY0
-
( ´_ゝ`) 「……」
从゚、゚;リル 「……はりゃ」
( ・_ゝ・) 「 」
入口の人物がその場で固まる。
僕も固まる。
(; ゚_ゝ゚) 「───え、あ、ええ!?」
从゚ロ゚*リル 「な、へっ、ちょっ」
見上げた先に佇むのは、流石先生と同じ顔をした──ぼさぼさ頭の男。
- 65
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:53:47 ID:lAL0DAmY0
-
ミ(; ´_ゝ`)そ 「あっ」 ガツン
Σ从゚皿゚;リル 「なっ!?」
さらに次の瞬間。
男が勢いよく、僕のほうへ覆いかぶさって。
「「 どわぁぁああああああっ!! 」」
──そこから先は。
口に出すのも憚られるくらい……ベタな展開が待っていたのだった。
- 66
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:56:33 ID:lAL0DAmY0
-
〜 〜 〜
●第二七話 『 だれかの挑戦状 ── VS.
????A 』
─── 数分後。
从 □ #リル 「こ、ここここのっ! 変態チカンやろおおおおッ!!!」
(; ´_ゝ`) 「だからごめんって! わざとじゃないんだよっ!」 アワワワ
診察室に戻った僕は、
今まで出したことのないような声で、流石オサムを怒鳴りつけていた。
なにしろ。
恋のライバルに着替えの瞬間をばっちり見られた上、体まで弄くられたとなれば、
こちらも動揺せずにはいられなかったわけで。
- 67
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:56:55 ID:lAL0DAmY0
-
从゚皿゚#リル 「わざとじゃないぃ? 嘘つけッ!」
(; ´_ゝ`) 「嘘じゃないって!」
∬;´_ゝ`)「ま、まあまあ……」
(´<_` ;) 「とりあえず二人とも落ち着きなさい!」
というか、どうしようもなく取り乱していたといっても過言ではない。
(; ´_ゝ`) 「ふ、不可抗力だ!
だって洗面所で着替えてる女の子がいるなんて普通思わないし……」
从 Д #リル 「はぁあ!? 不可抗力で人を押し倒すかフツー!?」
(;; ´_ゝ`) 「いやだから! 押し倒して胸元にダイブしてしまったのは、
足元のでっぱりにつまづいたのが原因で……」 アタフタ
从゚皿゚#リル 「でっぱりのせいで都合よーくでっぱりに顔をうずめて
おまけにでっぱりをまさぐったでも言うのかよ!」
呆気に取られる先生たちの前で、
オサムは両手と首をぶんぶん振って容疑を否認する。
- 68
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:57:56 ID:lAL0DAmY0
-
(´く_`;三;´_ゝ`) 「だ・か・ら! 勢いのまま胸の谷間へ顔を突っ込むと同時に
ブラのカップに右手が滑り込みおっぱいを直に鷲掴みしてしまったのは
決してわざとじゃないんだ!信じてくれ!」
僕は、壁際に追い込む勢いで、彼に詰め寄った。
从/ロ/#lル 「信じられるかぁっ! イヤがるこっちを床に押さえ込んだあげく
むりやり下着に手を突っ込んで好き放題揉みしだいた分際でぬけぬけと……」
(;;;゚_ゝ゚)ノシ 「いやいやいや! むりやりじゃないって! 信じて!
倒れた拍子にうっかりブラジャーを押し上げなまちちをもみもみしちゃったことで
ふぁっ…的な甘い吐息を漏らさせちゃったのは決しておれの本意ではなく!」
Σ从 □ *;lル 「はあああああああ!? とっ、ととと吐息ぃ!?
やめっ違っ誤解すんなっ!
そそそれは、超能力者とははは肌どうしが触れたせいでぇッッ!」
さらにヒートアップしたこちらの剣幕に、オサムはとうとうしゃがみ込んだ。
頭を抱えつつ弁解を重ねる。
<(;i|l´_ゝ`)> 「わかった信じる! だから君もおれの手がブラに滑り込んでバストに密着したときに
うっかり発見した秘密の物体Xをほんのちょっぴりつまんじゃったのは
わざとじゃなく不可抗力の為せる業だと理解してくれるよな!?」
- 69
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:58:33 ID:lAL0DAmY0
-
从>Д<#リル 「それとこれとは別だッ! 鼻息荒く両の乳房をむしゃぶりながら
侵入させた五指を欲望のままに這い回らせたっぷりねっとりその感触を味わうと
更なる悦楽の高みに臨むべくボブはキャシーに……」
∬;´_ゝ`) 「ストップ! ストーップ!!」
从 皿#リル 「!?」
(;;;´_ゝ`) 「!?」
見かねたアカネさんが割って入った。
( <_ ) チーン
从゚、゚*;リル 「あ……す、すみません」
( ´_ゝ`) 「ウブな奴だ……我が弟ながら……」
……その後。
アカネさんに、オサムは女の子に無理やり襲い掛かるような奴じゃない、と諭されたものの。
下着姿で床に押し倒された上、胸を好き放題まさぐられた事実は消えない。
(あれは絶対自分の意思で揉んでた。 確信している)
- 70
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:58:51 ID:lAL0DAmY0
-
それなりにショックは大きく、何にぶつけていいのやら分からない怒りがこみ上げてくる。
なにせ、自分でもろくに触ったことがないっちゅうのに。
これでも精一杯自制してるんだぞ。
从 、 リル 「……で、見た?」
(; ´_ゝ`) 「え? な、何が?」
从 、 ;リル 「……ムネ」
(; ´_ゝ`) 「へ? ああ、ブラから手を抜くとき?」
::从 、 ;リル:: 「そ、そう……」
( ´_ゝ`) ゞ 「……」
(; ´_ゝ`)ゝ 「えーと、チラッとだけ? ほんの0.5秒くらい?」
……オワタ。
从 д ilリル 「……ばっちり裸まで見られてるし。 鬱だ。 もう死ぬ」
(; ´_ゝ`)b 「裸じゃないって! 謎の物体Xだけ☆」
从;皿;#リル 「そこまで見えたらハダカと変わらんわ!」
- 71
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:59:15 ID:lAL0DAmY0
-
本来ならこれはちょっとしたアクシデントで、
目くじらを立てるほどでもないのだろうが、こいつだけは例外だ。
流石オサム──こいつはハインさんとデートまでしやがった、内藤ドクオの敵、敵、敵!
僕の精神だけに留まらず、カラダをも辱めようというのか。
ていうかナチュラルに揉みまくってたし。
ここまで冷静さを欠くのは久しぶりかも知れない。
……ともかく、こみ上げる屈辱感で胸が一杯だった。
从 д リル 「普通ラッキースケベは主人公の特権で……。
なのに……どうしてこっちがされる側に……」 ブツブツ
(´<_` ;) 「ドクオくん、診療所内でのメタ発言は控えてくれないか」
∬;´_ゝ`) 「兄者、あんた何か言ってやんなさいよ」
(; ´_ゝ`) 「えぇ? お、おれ?」
- 72
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 21:59:43 ID:lAL0DAmY0
-
机に突っ伏す僕の肩を、オサムがぽんと叩く。
(; ´_ゝ`)ゞ 「ああーっと……その、なんだ」
从 д リル 「……」 ブツブツブツブツ
(* ´_ゝ`)b 「お、お互い怪我がなくてよかった! よかったよかった一件落着!」
○ミ
( Σ そb ガッ 三三
よくねえ。
- 73
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:00:41 ID:lAL0DAmY0
-
(´<_` ;) 「と……ともかく、だ」
鼻を押さえてうめくオサムを見て、先生が深い溜め息をついた。
(´<_` ) 「兄じゃ……オサムは本当に、来るタイミングを考えろ」
( ´_∩`) 「いやいや。 ここで久々に姉者に会えるとは予想外だったしさ。
ある意味タイミングばっちりなんじゃね?」 イテテ
∬;´_ゝ`) 「来たなら来たで、まずは診察室のほうに顔を出しなさいよねー……」
流石三姉弟揃い踏みの光景。
先生には 『 警察関係の姉がいる 』 『
ニートの兄がいる 』 と聞いてはいたものの、
実際に集結しているのを目の当たりにすると、あえて比べるまでもなく、みな顔が似ている。
そっくりな顔をした美男美女の集い。
垢抜けない雰囲気のせいで、オサムだけはイケメンっていう印象が薄いけど。
从-、-;リル (忘れよう……もう。 何もなかったナニモナカッタ)
一気に騒がしくなった診察室の中。
頭を振って立ち上がると、僕は先ほどから燻っていた疑問をぶつけることにした。
- 74
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:01:36 ID:lAL0DAmY0
-
从'。`リル 「あのう先生、『 弟者 』 とか
『 姉者 』 って?」
(´<_` ;) 「ああすまない、昔からの癖みたいなモノでね」
∬´_ゝ`) 「変な呼び方でしょ?
確か昔、兄者がアニメかなんかに影響されたのが発端だったわよね」
( ´_ゝ`)b 「『 激しく忍者・幕末疾風絵巻
』 だぜ!
しかもあれはと・く・さ・つ。 ったく姉者は忘れっぽいなー」
∬;´_ゝ`) 「何よっ。 あんたがヲタクなだけでしょ」
从'。`リル 「へー……」
仲のいい姉弟だな。
あいづちを打つ間にも、新たな疑問が去来する。
その特撮のタイトルは聞いたことがあるのだけど、放送時期はだいぶ昔だったような。
从゚、゚リル 「失礼ですけど、先生って今、おいくつなんですか?」
σ
幼少期にその番組を見ていたとすると、それなりの年になるはず。
- 75
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:02:53 ID:lAL0DAmY0
-
僕の質問に、先生は澱みなく返答する。
(´<_` ) 「今年で(ピー)歳だよ。 兄者は私の一つ上」
三#)_ゝ゚)そ 「さらに姉者はその……いでっ」
∬#´_ゝ`) 「ちょっとぉ! あたしはいいでしょあたしは!」
『 兄者 』 オサムの横っ面に、容赦なくストレートを浴びせる
『 姉者 』 アカネさん。
『 弟者 』 であるイサム先生の回答を聞いた僕は、その場に硬直した。
从 ロ リル
(´<_` ) 「どうしたんだい?」
どうしたもなにも、とんでもない事実を知ってしまった。
この容姿、この若々しい雰囲気で、と、年っ。
- 76
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:03:16 ID:lAL0DAmY0
-
::从 ロ ;リル:: 「あ……アラ………あらf……ええ?」
(´<_` ) 「?」
そりゃあ開業医にしちゃ若いなーとは思ってたけど。
で、でも、そんな。
从 皿 ;リル 「ど、ど、どどどどど……」
どう見ても全員、二十代半ばくらいにしか思えねー。
なんだコレは。 この一家は過去に不老不死の妙薬でも口にしたのか。
下手すりゃあの悪質詐欺販売員女より……いや、それを考えるのはやめとこう。
と、考えの端々がうっかり口に出ていたらしい。
オサムは腕を組んで大きく頷くと、もったいつけるように言った。
( ´_ゝ`)b 「さらに弟者はバツイチ、姉者は旦那持ちで一児の母だぞ。
この子がこれまたかーいいんだ」
Σ从゚ロ゚;リル
- 77
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:05:08 ID:lAL0DAmY0
-
∬´_ゝ`)-3 「最近は忙しくて、ずっと旦那に任せっきりだからねー……。
∩ お母さん失格って言われないようにしなきゃ。
あ、ちなみに姓が流石のままなのはあまり気にしないでね」
何故かオサムがその場にふんぞり返る。
(* ´_ゝ`) 「参ったか!」 ドヤッ
(´<_` ;) 「何がだよ」
从 ロ リル 「……参りました」
Σ∬;´_ゝ`) 「えっ?」
……願わくば。
− − − − −
三 川 ゚ -゚) スタスタ
川 ゚ ・・゚) 「ん?」 ムズムズ
- 78
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:05:47 ID:lAL0DAmY0
-
川#> -<))):;*.':; 「ぶえーっっっくしょわッ!」
川#゙゚'益゚') 「ーっかぁーっだッコンチクショー!!」
川 ゚ -゚)
川 ゚ i-゚) 「ふう……また誰かが私の美貌を噂してやがるのか」
川 ゚∩゙゚) ゴシゴシ
川 ゚ -i゚) 「我ながら罪深いオンナだ……」
− − − − −
从 皿 ;リル
そんな妙薬があるのなら、是非あの女に分けてやってほしいところだ。
超能力といい、年を取らない兄弟といい……世の中本当に不可思議だらけである。
- 79
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:07:05 ID:lAL0DAmY0
-
唖然と佇む僕の前。
オサムがこれまた不思議そうに、首を傾げ、言った。
( ´_ゝ`) 「ところでさっきから気になってたんだが……」
(´<_` ) 「なんだ?」
( ´_ゝ`)σ 「ドクオドクオって言ってるけど、この娘のことなの?
なーんかその名前、どっかで聞いた気がするんだが」
彼はこちらをまじまじ眺めると、
( ゚_ゝ゚)そ 「って!
よく見たらキミ、こないだ会ったメイド娘じゃん!?」
从'、`;リル 「今ごろ気付いたのかよ」
素っ頓狂な声をあげる。
こちらは出くわした瞬間から気づいていたというのに、失礼な奴だ。
咳払いのあと、先生が言った。
- 80
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:07:32 ID:lAL0DAmY0
-
(´<_` ) 「改めて紹介しておこう。
こちらは内藤ドクオ君だ。
ギコ君、しぃちゃんの知り合いで、彼らのよき理解者でもある」
Σ( ´_ゝ`) 「へー、しぃちゃん達のねー!
世間って狭いもんだよな〜」
オサムは大袈裟に驚いてみせる。
,_
从'、`;リル (こ、こいつしぃちゃんのこと、知ってたのか)
まあ、先生とギコ達が深い付き合いであるのなら、
先生の兄であるオサムもまた、彼らと面識があって当然か。
あれ? でも先月末に(25.5話)ギコと出くわしたときは、互いに知らない風だったけど。
(* ´_ゝ`)つ 「おれは弟者の兄のオサムだ! よろしくなメイドガール!」
,_
从゚、゚;リル 「あ……よ、よろしく」
あっけらかんと手を伸ばすもんだから、ついシェイクハンドに応じてしまう。
飄々としてるっつーか何なのか、つかみ所のない男だ。
- 81
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:10:01 ID:lAL0DAmY0
-
(´<_` ) 「……彼もまた、【
二極化性解離性同一性障害 】、
いわゆるチャネラーの患者で、
チャネルの切り替えと同時に性別が変わってしまうという、
類稀な疾患に苦しんでいる」
从'、`;リル 「いえ、別に苦しんでるって程じゃないですけど……」
( ´_ゝ`)つ 「……」
( ´_ゝ`)つ 「えっ?」
先生から説明がなされると、手を掴んだまま、今度はオサムのほうが固まった。
( ´_ゝ`) 「何? 彼? 彼って? え?」
(´<_` ;) 「説明は難しいが、いま言った通りだ。 現在はれっきとした女の子だが」
∬*´_ゝ`) 「チャネルが変わると女体化しちゃうんですって!
あたしもまさか、こーんなに変わっちゃうなんて思わなかったけど♪」
_, ,_
从///;リル 「……」
( ´_ゝ`) 「???????」
- 82
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:10:25 ID:lAL0DAmY0
-
オサムは真顔で僕の表情を凝視する。
( ´_ゝ`) 「それって……」
(; ´_ゝ`) 「普段は 『 ドクオ 』
っていう名前の、男だってこと?」
∬*>_ゝ<)b 「イエース!」
何故か嬉しそうに親指を立てるアカネさん。
次の瞬間、オサムは目を大きく見開くと、
(; ゚_ゝ゚)そ 「ああああああああ─────っ!!」
(( 从゚皿゚;リル 「!?」
振り払うように手を離す。
続けて僕の紙袋のもとへダッシュし、中へ無造作に手を突っ込んだ。
- 83
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:10:45 ID:lAL0DAmY0
-
Σ从゚□゚;リル 「ちょっ、こらっ!?」
(; ´_ゝ`))) 「内藤ドクオって、どっかで聞いたことが……」 ガサゴソ
Σ(´<_` ;) 「おいっ! 兄者、何やってるんだ……!」
( ゚_ゝ゚)そ 「 や っ ぱ り !」
つ□と
暫く中を漁っていた彼は、
僕の財布を発見するや、そこからサッと免許証を取り出し、叫んだ。
(; ゚_ゝ゚)σ 「お、おまえはっ!
ハインちゃんの路上ライブによく来る、あの冴えない猫背の男か!」
Σ从゚ヮ゚iliリル 「え、あ、うぅっ!?」
思った以上に勘が良かった──
というか、バレた。
- 84
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:11:03 ID:lAL0DAmY0
-
(; ´_ゝ`) 「他ならぬハインちゃんの口から、あんたの名は耳にしたことがあったが、
それにしてもこれは……」
オサムは免許証の写真と僕を見比べ、目を白黒させる。
_,
(; ´_ゝ`) 「て、ていうことは、まさか!」
从::ヮ゚i|iリル 「な、な、ナンデショウ……?」
(; ´_ゝ`) 「こないだおれがハインちゃんと一緒にいたとき、
メイド姿で執拗に絡んできたのも、ひょっとして……!」
Σ从 ワi|リル 「いっ! いやそのそれは! あっはっはっはっは!」
責め立てる立場から一転、大ピンチに陥ってしまった。
从 ワ ;リル 「は、はは……は……!」
(´<_` ;) 「なんだなんだ」
∬;´_ゝ`) 「過去に面識があったってのはわかるけど、どういう関係なのかさっぱりねー」
- 85
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:11:25 ID:lAL0DAmY0
-
首を傾げる先生とアカネさん。
オサムは紙袋のもとから立ち上がり、僕のほうにじりじり迫る。
_,
(#´_ゝ`) 「さ〜〜〜〜て、どういうことか説明を……」
(( 从 ロi|lリル 「あ、あう、あう」
壁際へ追い詰められた僕は、咄嗟に叫んだ。
从 O ;リル 「そ、そっちだって!」
( ´_ゝ`) 「ん?」
从 ロ ;リル 「ぼ、ぼ、僕の着替えを覗いたし、体も触ったじゃん!」
_,
(; ´_ゝ`)そ 「だ、だからそれは……悪意があったわけじゃなく……!」
从 □ ;リル 「ならこれでチャラ! おあいこっ! おあいこだ──っ!」
(; ´_ゝ`) 「はああああなんだそれええええええ」
我ながら地下帝国の班長ばりに苦しい言い訳である。
- 86
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:11:49 ID:lAL0DAmY0
-
しどろもどろの僕の眼前で
『 オーマイガー 』 のジェスチャーをしていたオサムを、先生たちが引き剥がした。
ヽ(´<_` ))) 「OK、これ以上診療所内で騒ぐんじゃない」
(( ∬´_ゝ`)ノ 「収集つかなくなるからその辺でね」
(; ´_ゝ`))) 「ふっ! 腑に落ちねええええええええ!!!」
(( 从 皿 ;リル 「……」 ドキドキ
羽交い絞めされたまま、僕のほうをやぶ睨みするオサム。
正体がバレた以上、今後はハインさんを巡るライバルとして認識されるのかな。
……しょうがないだろ。
曲がりなりにも長身で、格好さえ整えればじゅーぶんイケメンで通るお前と、
僕なんかじゃあ、スペックに開きがありすぎるんだよ。
こないだのアレは、ちょっとしたジョークってことで許せっての。
_,
(; ´_ゝ`)
从 、 ;リル
……そりゃあちょっとは罪悪感もあるけどさ。
- 90
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:40:44 ID:lAL0DAmY0
-
〜 〜 〜
それからさらに、小一時間ほど過ぎた後のこと。
∬´_ゝ`) 「じゃあ、あたしはそろそろ行くわね」
( ´_ゝ`)ζ 「ん? もっとゆっくりしてけば?」
[ ̄]'E)
オサムは既に落ち着いた様子で、
呑気に紅茶を啜りながら、立ちあがるアカネさんにそう言った。
(´<_` ) 「お前は無駄にくつろぎすぎだ」
先生が突っ込むと、アカネさんはコートを羽織りつつ、笑みをこぼす。
∬´_ゝ`) 「ゆっくりしたいのは山々だけど、外に所轄のコを待たせてるのよ。
あんまし一人で頑張らせるのはね〜」
相棒……というほどではないのかも知れないが、
捜査というものは通常、本部と所轄の警察署の刑事、二人一組で行うものらしい。
- 91
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:41:46 ID:lAL0DAmY0
-
(´<_` ) 「一緒に連れてくればよかったのに」
∬´_ゝ`) 「私もそう言ったんだけどね。 お堅いコで」
从'。`リル.、 「あ、あの、捜査頑張ってクダサイ」
∬´_ゝ`) 「ありがとう。 一日も早い解決を目指し、努力するわ」
彼女は笑顔のままこちらへ近づくと、
∬*´_ゝ`) 「それじゃーね! 夫婦仲良く、ごゆっくり♪」
そう言って、僕とオサムの肩をぽんと叩いた。
(; ´_ゝ`) 「「 なっ!? 」」 从゚ロ゚;リル
- 92
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:42:25 ID:lAL0DAmY0
-
从゚皿゚;リル 「だっ、誰がこんなチカンヤローと!」
(; ´_ゝ`) 「誰がこんなオトコオンナと!」
(; ´_ゝ`) ((おれ(僕)の相手は、ハインちゃん(さん)だけだあああ!)) 从
ロ ;リル
あははと声をあげ、後ろ手にドアを閉める
『 姉者 』 アカネさん。
……その背を見やる僕とオサムは、二人揃って溜め息をつく。
( ´_ゝ`) 「……姉者はおれ達をなんだと思ってんだか」 ハァ
,_
从゚、゚;リル 「まったくだ。 なんだってアンタなんかと……まっぴらごめんだ」
僕がふんと鼻を鳴らすと、オサムは眉間に皺を寄せ、叫んだ。
_,
(; ´_ゝ`)そ 「お前なー。 それが二回も助けてもらった相手に言う台詞かよ!
おれだってお前がねらーだと知ってたら助けなかったし!」
,_
Σ从'、`;リル 「うっ。 そ、それはっ」
咄嗟に言い返す言葉が見当たらない。
洗面所でのアクシデントはともかく、
こいつが過去、二度も僕を救ってくれた恩人であることには変わりがないからだ。
- 93
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:42:52 ID:lAL0DAmY0
-
从 O ;リル 「わ……」
_,
(# ´_ゝ`)σ 「第一なー!」
从 、 ;リル 「……悪かったよ。 少し言い過ぎた」
Σ(; ´_ゝ`)σ 「おまっ、あ、あれ?」
結果、僕は素直に謝ることにした。
拍子抜けしたのだろう、オサムは口を開けたまま固まる。
場にビミョーな空気が流れた。
(; ´_ゝ`) 「い、いやなんつーかさ。
助けなかったってのは別にえと、意地悪とかじゃなくってだな、うん」
从'、`リル 「……」
(; ´_ゝ`)ゞ 「お前もねらーだったらその、ほら、超能力がさ」 アセアセ
从'。`リル 「あるにはあるけどね。
サイコキネシスみたいな、使い勝手のいい能力じゃないんだ」
(´<_` ) 「!」
( ´_ゝ`)゙ 「! ……知ってたのか」
- 94
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:43:27 ID:lAL0DAmY0
-
オサムはハッとした表情で僕の目を見る。
しばらく見つめ合ったあと、彼はふいに背を向け、窓のほうへ歩き出した。
゙从'。`リル 「?」
先生もまた、なにやら険しい表情でそちらを見ている。
初診の際に先生が言ってた 【
サイコキネシスを自在に操れる人間 】
とは、
考えるまでもなく、兄者──オサムのことだろう。
超念動能力。
シンプルでいて強力な、PSIの中でも特に危険な能力。
そう説明してくれた先生の前で、この話題はタブーだったのだろうか。
从゚、゚;リル 「あ、あの……?」
何とも言えない地雷踏んじゃった感が胸中を満たす。
居たたまれなくなった僕は、立ち上がり、オサムのほうへ近寄ろうとした。
その時。
( ゙゚"_ゞ゚)彡 「ハッハッハァ───ッ!!」
Σ从゚皿゚;リル 「ッ!?」
- 95
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:43:44 ID:lAL0DAmY0
-
振り返ったオサムは、狂ったように高笑いをあげる。
同時にひとつの物体が、風切り音をあげてこちらへ迫ってきた。
(( 从゚△゚;リルノノ 「わっ、わわっ!?」
( ゙゚"_ゞ゚) 「すまないなメイドガ───ル!
あまり気にしないでくれたまえッ!」
物体は一直線に飛来し、身構えた僕のすぐ眼前で停止する。
ふわふわ浮かぶそれは、一面ごとに色の違う奇妙な立方体。
( ゙゚"_ゞ゚)b 「なんのことはない! 売り言葉に買い言葉ってやつだッ!」
──これ。
何かと思えば、窓側の棚に置かれていた、ルービックキューブか。
彼がパチンと指を鳴らすと、
浮遊するキューブは命を与えられたかのように、空中で回りだした。
それに合わせ、立方体の各コーナーも、勢いよくぎゅるぎゅる回転してゆく。
- 96
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:44:34 ID:lAL0DAmY0
-
从゚□゚;リル 「ひゃっ、あわっ、わわわっ……!」
そのうち回転は止まり、キューブそのものもぴたりと静止した。
( ´_ゝ`) 「……人助けは、おれに課せられた義務みたいなもんだからな」
おそらく元人格に戻ったのだろう。
穏やかな顔で歩み寄ってきたオサムは、
宙に浮かぶそれをキャッチし、ころり、テーブルに転がした。
(* ´_ゝ`) 「さっきはああ言ったが、実際はお前がどういう人間であれ、助けたと思うぜ。
おれの力はそのために有るんだからさ」
从゚ロ゚;リル (な、なんてこった……!)
思わず息を飲む。
これが、彼の持つ超能力 【
サイコキネシス 】 。
物体に与える不可視の圧力、そして操作の正確性。
……凄い。 真近で見ると本当に凄かった。
- 97
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:45:02 ID:lAL0DAmY0
-
けど。
从゚、゚;リル 「全然揃ってねえ!」
回転運動を終えた立方体は、全面バラバラのままだった。
( ´_ゝ`) 「……」
从'、`;リル 「……」
( ´_ゝ`) 「コイツを動かすことと、色を揃えることは」
( ´,_ゝ`)bそ 「……別のハナシだろ?」
从-、-;リル 「はいはい。 つまりは出来ないんだな」
( ´_ゝ`) 「はいは一回!」
从 皿 リル
凄いけど、やっぱりどこかダメだ。
この 【 サイコキネシスト 】 。
- 98
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:45:27 ID:lAL0DAmY0
-
(´<_` ) 「ドクオくん、兄者の言う事を真に受けないでくれよ。
こいつが “ ねらー ” の中でも特別なだけだ」
先生はテーブル上のキューブを拾い上げると、真面目な顔つきでそう言った。
(´<_` ) 「君に超能力が芽生えてしまったのは仕方のないことだ。
だが、そんな力に頼ろうと考えるんじゃない。
力を持ったことで、何かに怯える必要も、使命感を感じる必要もない」
かしゃ、かしゃ、かしゃ、とキューブを捻りながら、続ける。
(´<_` ) 「君は気負うことなく、今までどおりの日常を過ごしてゆけばいいんだ」
从゚、゚リル 「──!」
先生の言葉に、まるで心の底を見透かされたかのような錯覚を覚えた。
ずっと昔に救えなかった女の子。
他者の模造品にすぎない、出来そこないとも呼べる、僕の
“ 超能力 ” 。
オサム
僕になくて、兄者やギコが持っているもの。
- 99
名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:45:48 ID:lAL0DAmY0
-
从 、 リル 「……」
持たざる者のジレンマが。
手を差し伸べられなかった無力感が。
悪夢に形を変えて、内藤ドクオの夜を、ことさら寝苦しいものにしている。
从 。 リル 「僕は……」
(´<_` ) 「うん?」
( 从 、 リル ) 「いえ、何でもないです」
(´<_` ) 「……そうか」
頷きながら、とん、と置かれた六面体は、全面の色が綺麗に揃えられていた。
( ´_ゝ`) 「そういや、お前の超能力って?」
从'。`リル 「──え? ああ、なんかわかんないけど──」
突拍子も無くオサムが聞いた。
暗くなりかけた場の空気に対する、彼なりの配慮?
……とも考えたが、まあおそらくは、特に意味がある質問でもないのだろう。
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:46:15 ID:lAL0DAmY0
-
というか。
劣化コピーの超能力なんて、どうやって説明していいのやら。
僕にできるのは所詮、あんた達ヒーローの猿真似だけなんだ。
从゚、゚リル 「あっ」
( ´_ゝ`)゙ 「?」
そこではたと気づいた。
さっきの洗面所で経験した、軽い痺れのような感覚。
……ええと、正確にはムネを鷲掴みにされた時の。
トレース
゙从゚- ゚リル (ひょっとして、サイコキネシスの
“ 再現 ” も……!?)
((( ´_ゝ`) 「どーした?」
Σ从゚□゚*リル 「え!? あ、だっ!?」
::从/ロ/;リル:: 「だ、だだだからっ!
アレは “ 再現可能 ”
を感じたとき特有の反応でぇええっ!」
(; ´_ゝ`) 「???」
と、とにかく。
もしかすると、今ならサイコキネシスを
“ 再現 ” できるのかも。
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:46:47 ID:lAL0DAmY0
-
从'。`リル 「……」
σ
从 ヮ, リル 「うへ」 ニヤー
(; ´_ゝ`) 「なんだお前……怒ったり笑ったり気持ち悪いな……」
物はためしだ。
以前オサムが助けてくれた時、彼は不可視のチカラで暴漢どもを殴打していた。
先生が言ってた 『 目に見えない波動を飛ばす
』 ってやつだろう。
どの程度それを “ 再現 ”
できるのかわからないが、やってみて損はない。
∂从゚、-リル゙ (よし、的はオサムの左頬あたりにしておこう)
( ´_ゝ`) 「お前ってホント変なやつだなー」
(´<_` ) 「兄者がそれを言うなんて、世も末だな」
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:47:18 ID:lAL0DAmY0
-
狙いを定めて右手を引く。
途端に肌が粟立ち、手首を中心に微かな脈動が感じられた。
Σ从゚ο゚リル (おおっ!? きたきたきたぁ──!?)
──いける。
从 。 リル (サイキック──)
( ´_ゝ`)゙ 「ん?」
ビ ン タ
从 △ リル ( 平 手 打 ち っ !)
横っ面をひっぱたくイメージを、オサムの輪郭へと投影。
その軌跡をなぞるように、腕を宙へと走らせた。
从 ワ リル ブン
( ´_ゝ`) ?
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:48:00 ID:lAL0DAmY0
-
从 ヮ リル
从゚д゚リル 「ありゃ」
……が。
何も起きない。
从 皿 ;リル (ビンタっ! ビンタビンタビンタぁ───!)
僕は右手をぶんぶんと往復させた。
腕を動かす度に、淡い痺れのような感覚が、肘から指先へと迸る。
見えない何かを飛ばす感覚は、確かにある……と思うのだが。
( ´_ゝ`) 「何? 何扇いでんの?」
(´<_` ) 「臭いが気になるのかな。
兄者、お前昨日風呂入ったか?」
( ´_ゝ`)゙
( ´_ゝ`)b 「……入った入った。 当たり前だろ!」
(´<_` ) 「何ださっきの間」
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:48:37 ID:lAL0DAmY0
-
从 皿゚;リル (ぬおおおおおおおおお!!) ブンブンブン
いや、出てるはずだって! 現にオサムの前髪が揺れてるし。
ただ。
( 从 ロ ;リル ) (だ、ダメだ、全然ダメ) ゼエゼエ
……あまりにも、その力が弱すぎるだけ。
十数回ほど繰り返したところで力尽きた。
トレース サイコキネシス
かろうじて “ 再現 ” した、僕のそれは。
不完全にも程がある、実用性に乏しい力だった。
从 Д ;リル 「劣化コピーとはいえ、劣化しすぎだろ……」 チーン
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:49:03 ID:lAL0DAmY0
-
膝に手をつき大きく息を吐く。
さ、最後にもう一度だけやって、諦めよう。
从゚д゚;リル 「うっ」
::: 从゚皿゚;リル :: 「うおおおお……!!」 プルプル
(; ´_ゝ`) 「だから何やってんだよお前」
腰を落として両手を引くと、途端に昔の漫画の必殺技ポーズっぽくなる。
精神を集中し、手の中央にサイキックパワーを凝縮。
そんな力があるのか知らんけど。
(; ´_ゝ`)ゞ 「変だ変だと思っていたが、これほどとはなー」
(´<_` ;) 「ドクオ君。
疲れているようだし、今日はこのくらいにしておこうか?」
Σ从///;リル
ていうか。 後で誰もいない時に試せば良かったじゃん。
今更気づいたものの、ガニ股でポーズを決めている以上、ごまかしようがない。
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:49:20 ID:lAL0DAmY0
-
从 ロ*リル 「ぐっ、ぐぐっ」
从゚皿゚#リル 「波ああああああああああッ!!」
( ´_ゝ`) 「うわあ……」
後に引けなくなった僕は、
アンダースローの要領で、溜めた何かを目の前の恋敵目掛けて放出した。
だがそこで、またもや予想外の事が起こる。
(;*゚ー゚) 「し、失礼しますっ!」
从゚Д゚#リル 「!?」
オサムの後方のドアが開き、一人の少女が飛び出してきたのだ。
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:49:51 ID:lAL0DAmY0
-
(;*゚ο゚) 「ふえ?」
制服姿の女の子は、僕たちの存在に気づくと同時、ドアの前に固まる。
次の瞬間。
(; ´_ゝ`)そ 「うおっ」
Σ(´<_` ;) 「なっ」
(*゚□゚) 「!」
彼女のスカートが、ぼわっと豪快にめくれ上がった。
(*///) そ 「きゃあ!?」
……下着はもとより、血管が浮くほど白い太腿が、眩く目に焼きつく。
診察室へ飛び込んできた、透き通るような肌の少女──、
しぃちゃんは短い悲鳴をあげて、チェックのスカートの前を押さえ込んだ。
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 22:50:12 ID:lAL0DAmY0
-
从゚、゚;リル 「成功……か?」
僕はその光景を、飛び道具発射直後の硬直ポーズのまま眺めていた。
(; ´_ゝ`) 「やっぱしお前の仕業か! おれにはあんな事言っておいて……」
Σ从゚皿゚;リル 「ちっ、ちがッ! 不可抗力だって!」
……とはいえ。
果たして何の役に立つのだろう。
この 『 超劣化サイコキネシス 』 。
〜 〜 〜
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:02:25 ID:lAL0DAmY0
-
(´<_` ;) 「なんだって!?」
先生が、ウッドテーブルから身を乗り出し叫んだ。
僕とオサムも目を丸くして、息を切らす少女の次の言葉に全霊を傾ける。
(;*゚−゚) 「私もその、何がなんだかわからなくて……」
やにわに診察室へ飛び込んできたしぃちゃん。
とにかくこれを見てください、と続け、バッグにあたふた手を突っ込む。
彼女が先生へ向けて発した第一声は、
すぐには意味が飲み込めず、理解に数秒を要した。
しかしそれは、僕たちを驚愕させるに充分たるものだった。
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:04:28 ID:lAL0DAmY0
-
从゚д゚;リル (あ、あいつに限って、そんな)
ギコがさらわれた。
どうやって? いつ、誰に?
疑問が喉からあふれる寸前、
しぃちゃんは薄いピンクの携帯電話を取り出し、僕たちに提示した。
四人の視線が小さなディスプレイに集中する。
(´<_` ;) 「……なんということだ」
僕とオサムの押し合いから抜け出した先生が、細長い溜め息をこぼす。
受信メールの画面には、犯人と思しき人物からの文章が、
数十行にわたって綴られていたのだ。
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:05:03 ID:lAL0DAmY0
-
− − − − − − − − − − − − − − − − − − − −
『(メール@)
親愛なるしぃちゃん
お久しぶり。 僕が誰だかわかるかな?
突然だが、君の兄である外藤ギコは預からせてもらった。
アドレスを見てわかるとおり、彼の携帯からこのメールを送らせてもらっている。
兄を返して欲しければ、本日19時に、とある場所に来てほしい。
来なかった場合、彼の無事は保障できない。
警察に連絡した場合も同様だ。
ただし、内藤ドクオ、及び内藤ホライゾンという人物に限り、協力を仰いでもらっていい。
ギコくん直々のご指名だ。
ゲームは大勢のほうが楽しいからね 』
− − − − − − − − − − − − − − − − − − − −
(´<_` ;) 「“ お久しぶり ”
とあるが、
ギコ君をさらった人物に心当たりはあるのかい?」
((;*゚−゚)) 「い、いえ! あの……」
先生の質問に、しぃちゃんは慌てて首を横に振った。
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:05:50 ID:lAL0DAmY0
-
(;*゚−゚) 「いきなりだったんで、私もよくわからないです。
一応ギコ君に電話してみたんですが、繋がりませんでした」
(´<_` ) 「このメールに返信はしてみたのかい?」
(;*゚−゚) 「ま、まだです。 まだ」
彼女のたどたどしい説明によると、
メールが届いたのは、ちょうど学校のお昼休みの頃。
驚いた彼女はすぐに早退したのだが、
メールの内容に頭を悩ませているうち、足は自然とこちら側へ……。
つまり、気づけば自宅と反対方向の電車に乗っていたらしい。
(´<_` ) 「そしてそのまま私のところへ来た、と」
(;*゚ー゚) 「はい! まさか兄者さんもいるなんて思わなかったですけど」
(* ´_ゝ`)b 「しぃちゃん久しぶり〜。 元気だった?」
(´<_` ;) 「元気なわけないだろ。 状況を考えろ」
(; ´_ゝ`)b゙ 「そーだった」
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:06:57 ID:lAL0DAmY0
-
彼らのやり取りを横目に、僕は眉間に皺を寄せた。
犯人が何故ギコを狙ったのかについては知る由もない。
しかしそれ以上に、何故僕とブーンを名指しで呼びつけているのかが理解できない。
(;*゚−゚) 「それで、ドクオさん達にも何度か連絡してみたんですけど、
ぜんぜん繋がらなくって……」
从゚、゚;リル 「え? あ、ああ」
反射的に紙袋のほうへ視線を走らせる。
申し訳ないとは思ったけれど、コールに気づかなかったのも無理はない。
診察(?)に際し、携帯の電源を切ってたから。
( ´_ゝ`) 「でもちょーど良かったじゃん。 ドクオなら目の前に……」
从゚皿゚ilリル そ 「!」
从゚□゚;リル 三 「どわぁあああぁあぁっ!!」
(; ´_ゝ`) 「ん?」
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:07:54 ID:lAL0DAmY0
-
呑気に言い放とうとしたオサムの袖を掴むと、
部屋の隅まで彼をひっぱり、耳打ちする。
゙从゚皿゚;リル (ちょっと!
しぃちゃんとギコは、僕のこの体質を知らないんだよ!
頼むから黙っててくれ!) ボソボソ
(; ´_ゝ`)゙ (マジか。
うわー、お前ほんっとめんどくさいなー) ボソボソ
(*゚ο゚) 「?」
そんな僕たちのほうを、不思議そうに眺めるしぃちゃん。
見かねた先生が助け舟を出した。
(´<_` ;) 「ああしぃちゃん、彼女は私達兄弟の知り合いでね……」
d从'ヮ`;リル彡 「ど、ドクミっス! よろしk」
ぎこちない笑顔を作ると、しぃちゃんははっとして両手を叩いた。
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:08:25 ID:lAL0DAmY0
-
(*゚ー゚) そ 「あっ!
あなたがギコ君の言ってた、内田ドクミちゃん?
ドクオさん達の親戚っていう……」
Σd从゚ワ゚|iリル 「そっ、そっス! だははははははッ!」
……果たしてちゃんとごまかせてるのやら。
もし今つーが目覚めているとしたら、どんな思いで僕のほうを見ているのだろう。
d从゚ロ゚;リル 「ととととにかく! ぎ、ギコ先輩を助けないとです!」
(;*゚ー゚) 「あう、ごめんね、巻き込んじゃって……」
( ´_ゝ`) 「ま、とりあえずは続きを読んでからだな」
つ【゚】゙
携帯を受け取ったオサムが、メール画面をスクロールした。
- 116 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:09:03 ID:lAL0DAmY0
-
− − − − − − − − − − − − − − − − − − − −
『(メール@・続き)
場所についてだが、まずは以下のウェブサイトへアクセスしてほしい。
http://www.○×△□.jp/
文字を入れるフォームがあるだろう?
フォームに正しいパスワードを入力すると、
待ち合わせの詳細な場所が記されたページへ飛ぶことができる
』
− − − − − − − − − − − − − − − − − − − −
表示されたURLには、携帯電話側の仕様で自動的にリンクが貼られている。
ボタンをクリックすることで、直接そのページにアクセスできるのだろう。
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:09:33 ID:lAL0DAmY0
-
(´<_` ) 「これ、クリックしてみたのかい?」
(;*゚−゚) 「一応……。
でも、携帯の画面では正しく表示されてるのかわからなくて。
その、横幅とか」
( ´_ゝ`)ノ゙ 「まかせとけ!」
つ【+ 】
気づけばオサムは既に、
棺桶のようにデコレーションされた黒いノートパソコンを開き、
起動している最中だった。
从'。`リル 「待って。
さっきのメール、まだ続きがある」
(*゚ー゚) 「うん。 最後まで読んでみてください」
オサムから携帯を受け取った僕は、画面をさらに下へスクロールした。
- 118 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:10:09 ID:lAL0DAmY0
-
− − − − − − − − − − − − − − − − − − − −
『(メール@・さらに続き)
今からもう一通、別のメールを送らせてもらう。
そこに記された暗号を解読すれば、入力すべきパスワードがわかる仕組みだ。
もう一つのメール送信は別端末(PC)から行うので、くれぐれも受信漏れのないようにね。
どうだい、面白い趣向だろう。
夜までの暇つぶしにはなると思うよ。
せいぜい頭を悩ませてみることだね。 指定の場所で待っているよ。
最後に一つ、可愛い君のために重大なヒントを
寄付しよう。 お馬鹿な仲間に 苦労させられるね。
』
− − − − − − − − − − − − − − − − − − − −
(;*゚−゚) 「……という事らしいんです。
その後で送られてきたもう一通のメールを読んでみたんですけど、
もう私、なんだかちんぷんかんぷんで。
あ、これです」
しぃちゃんが横からボタンを操作し、二通目のメールを開く。
そこには奇妙な文字の羅列があった。
- 119 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:10:51 ID:lAL0DAmY0
-
− − − − − − − − − − − − − − − − − − − −
『(メールA・暗号文)
3、里ぜかね名ざ社庁 1、し廃ろQ王ちごや
4、あるらぷび町ねん 8、さめりだ欧Fらせ
5、市ーきはん足こう 7、め出おにくへ山県
2、べ海ゑ場や工川を 6、ずまご砂らつ京ぶ 』
− − − − − − − − − − − − − − − − − − − −
从゚д゚;リル 「なんだこりゃ」
正直さっぱりだ。
わかるのは、これが暗号文で、解けばパスワードとやらがわかる、という事実だけ。
(;*´−`) 「先生ならきっと、解くヒントをくれるんじゃないかって、そう思って……。
……お願いします、どうか力を貸してください」
しぃちゃんは泣きそうな顔で、ぺこぺこ頭を下げた。
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:11:25 ID:lAL0DAmY0
-
(´<_` ;) 「それはいいが、まずは警察に連絡を……」
(*゚□゚)そ 「だ、だめです! 警察はだめ!」
(´<_` ;) 「……君ならそう言うような気がしていた。
しかしだね。 一刻も早い解決を望んでいるのなら、通報すべきだ。
わざわざ犯人の思惑に乗ってやる必要など……」
険しい顔つきで両手を組む先生。
が、諭す彼の言葉を遮るように、オサムがノーパソのディスプレイをこちらに向けた。
( ´_ゝ`) 「開けたぜ」
つ【+ 】
表示されたウェブサイトは、白背景に数行の文章という、至ってシンプルなものだった。
- 121 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:11:49 ID:lAL0DAmY0
-
− − − − − − − − − − − − − − − − − − − −
『(ウェブページ・本文)
僕の頭脳が勝っているか きみの勇気が正しいか 白黒はっきりつけよう
正しい答えを入力することで道は開かれる
きみたちの挑戦を待っている
┌‐‐┬‐‐┬‐‐┬‐‐┬‐‐┐
│ │ │ │ │ │ [ OK? ]
└‐‐┴‐‐┴‐‐┴‐‐┴‐‐┘ 』
− − − − − − − − − − − − − − − − − − − −
一番下に、文字入力用のフォームとOKボタン。
フォームの形状が少々特殊なのが気になる。
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:12:12 ID:lAL0DAmY0
-
从'、`;リル 「このフォーム、普通の横長の四角じゃなくて、区切りがついてる」
( ´_ゝ`) 「入力する文章は5文字ってことか」
(´<_` ) 「なるほど、確かに5文字のようだ」
从'。`リル 「へ?」
ページを一瞥し、先生が言った。
(´<_` ) 「暗号の解読法から察するに、
パスワードは5文字で合っているはず、ってことだよ」
( ´_ゝ`) (*゚ー゚) 从'。`リル
- 123 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:12:43 ID:lAL0DAmY0
-
( ´_ゝ`) 「かい」
(*゚ー゚) 「どく」
从'。`リル 「ほう?」
「…………」
一瞬、場に沈黙が流れたあと。
(; ´_ゝ`) 「「 もうわかったの(んですか)─────!?」」 从゚ロ゚;リル
間抜けな叫びが重なった。
(´<_` ) 「おそらくは、だがね。
正確には解き方がわかっただけで、まだ実際に解いてはいないよ」
(;*゚ワ゚) 「す、すごーい」
しぃちゃんは先生のほうを見上げ、ぱっと顔を輝かせる。
- 124 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:13:13 ID:lAL0DAmY0
-
(´<_` ) 「1、2……うん、やっぱりそうだ」
先生はメールAをしばし眺めたあと、ふたたびメール@を開いてスクロールする。
最後にウェブページのほうへ視線を落とし、小さく頷いた。
僕には未だ意味不明で、
解き方なんてものが既に提示されている、
ということにすら考えが及ばなかったわけだが。
このイケメンドクターは、暗号を見た瞬間にそれを理解したというのか。
(´<_` ) 「流石にこのままじゃ解きづらいな。
まあ、実際に暗号を【 並び替えれば
】 、すぐに答えはわかるだろう。
どちらにせよ、読み取った5文字を入力してみないことには……」
(; ´_ゝ`)ノ 「ちょちょちょちょっと待て! 落ち着け!」
(´<_` ) 「お前がな。 では、私の考える解読法通りに……」
(; ´_ゝ`)三つ 「だから落ち着けって!
お、おれ達にも少しくらい考えさせろ!」
三つ_` ;)そ 「もご! そ、そんな悠長なことしてて……もごごっ」
- 126 名前:125訂正:2011/03/26(土)
23:14:58 ID:lAL0DAmY0
-
先を続けようとする先生の口を、オサムが手を伸ばして塞ぐ。
僕はひとり、灰色の脳細胞をフル稼動させる。
,_
从'、`;リル 「む………むうう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」 ポクポクポクポク
_, ,_
从゚皿゚リル 「さっぱりわからーん!」 チーン
(; ´_ゝ`) 「お前は諦めるの早ぇよ! もうちょっと考えてみようぜ!」
やっぱりお手上げだった。
というか、重大なヒントってどこに書いてあるんだよ。
(´<_` ;) 「おいおい。 この非常時に呑気なことを……」
( ´_ゝ`) 「おれは全て理解した上で行動に移したいんだ!」
(´<_` ;) 「ああもうわかったわかった。
とはいえ、このままでは暗号もわかりづらいし読みにくい。
しぃちゃん、二通のメールを兄者のPCに転送してくれないか」
(*゚ー゚) 「わかりました!」
結局のところ、先生主導のもと、皆で暗号文を解く流れになってしまっていた。
- 127 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:15:48 ID:lAL0DAmY0
-
今はまだ14時前。
指定の時間が19時なので、若干の余裕はあるといえばある。
(´<_` ) 「兄者。 送られたメール@とAには、それぞれヒントと暗号が記されている。
これらの内容が一目で参照できるようにしてくれ」
( ´_ゝ`)ノ 「あいあいさー!」
つ【+ 】
(´<_` ) 「ドクミ君は……」
゙从゚ロ゚;リル 「は、はいっ」
(´<_` ) 「……」
从゚- ゚;リル ドキドキ
(´<_` ;) 「……ええと、まあ飴でもどうぞ」
Σ从 ロ リル (ナチュラルに戦力外通告!) ガビーン
- 128 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:22:56 ID:lAL0DAmY0
-
緊迫した、それでいて昂揚したような雰囲気が漂う、午後の診察室。
メールの転送を完了したしぃちゃんが、ぽつりと呟いた。
(;*゚ー゚) 「……先生のところに来て正解でした」
゙从゚−゚;リル
とりあえずは僕もそう思った。
だがそれも。
警察への通報という、本来なら最も優先すべき選択肢。
そいつを除外するという前提においての、正解、だが。
タイミングが良いのか最悪なのか。
しぃちゃんと入れ替わりに出て行った姉者さんの姿が、僕の頭に浮かんだ。
〜 〜 〜
- 129 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:23:35 ID:lAL0DAmY0
-
──紆余曲折ののち。
診療所にひとり残る 『 弟者 』 こと流石イサムは、深々と溜め息をついた。
(´<_` ;) 「まったくあいつらは……。
ゲーム感覚じゃ済まされないかも知れないというのに!」
彼の感じる胸騒ぎの元凶。
それは、先の暗号の【 解読法 】と、世間を震わす事件との奇妙な共通点。
(´<_` ) (私の取り越し苦労であってくれればいいが)
『 兄者 』 オサムが隠れて同行することになったものの、不安は拭い去れない。
苛立ち混じりに、色の揃ったキューブを回す。
真ん中を縦に180度、横に180度、真横に向けてさらに縦へ180度──。
- 130 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:23:58 ID:lAL0DAmY0
-
玩具を置くと、イサムは代わりに携帯を手に取った。
姉の番号を表示させるも、そのままぐっと握り締め、険しい表情で顔を上げる。
『 発見現場には──の痕跡があり───
』
目の前のテレビからは、依然、猟奇事件に関する報道が流れ続けていた。
(続く)
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/26(土) 23:25:14 ID:lAL0DAmY0
-
∧_∧ パスワードはわかったでしょうか?
(,,<●><●> お暇でしたら、次回投下時までちょっと考えてみてください
τ(__u__u_) ヒントに関してですが、用語を知らないといまいちピンと来ないかも知れません
(><;) 26話と27話の本文中には、解読法に関するヒントが
/つと ノ いくつか散りばめてあるんです!
しー-J それらに気づかなくても、メール本文に最大のヒントがあるから問題ないんです
(ちょっと意地悪なヒントですけど)
∧_∧ 解読法そのものは、わかってしまえば単純なものです。
(,,<●><●>っ゙ ただしその先、実際の解読自体には知識が不可欠なので、
τ(__u____)ノ 大部分の人はググる必要性が出てくると思います
(;><) 解き方はわかったのに、
/ つ(;;゚;;) いざ解いてみると
『 あれ? 』 になることがあるんです!
しー-J パスがあくまで
『 5文字 』 であることに注目するんです!
∧ ∧ とはいえ 『
5文字の手順 』 は、ググってもちょっぴり見つけづらいかもっぽ
(*‘ω‘) お近くの本屋さんで関連本を漁ったほうがより確実かもっぽ
〜(_u_u_) 読んでくれてありがとうっぽー!
- 139 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/27(日) 18:32:58 ID:uY2B8vks0
過去ログに行くまで、しばらく余裕があるようなので……。
◎暗号文 >>119
◎解き方 >>118
今回の問題は、意図的に難易度を吊り上げている部分があるので、
ひょっとしたら意地悪に感じるかも知れない。
・ 暗号は並び替え必須
・ 並び替えた後、ある法則に従って5文字を抽出する
・ パスワード(5文字)は、いちおう意味の通った単語?になる
もし需要があれば、もう少しヒントを出します。
次話はなるべく早く投下できるよう努力する。
場合によっては、28話の前半部分、解答編だけ先に投下するかも知れない。
- 142 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/27(日) 21:17:00 ID:UGx4ukb60
- チェスは関係ある?
- 143 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/27(日) 21:46:28 ID:s1A/AZqw0
- 寄付→棋譜→麻雀 と連想した
- 144 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/27(日) 23:22:48 ID:uY2B8vks0
- じゃあヒント!
個別の質問はあえてノーコメントにさせてね。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
※突っ込んだヒント
考え方の方向としてはバッチリです。
なんとなく理解いただけるだろうが、前述の
【 重大なヒント部分 】 とは、
メールの最下部、
【 寄付しよう。 お馬鹿な仲間に 苦労させられるね。 】 の一文である。
この文章を以下のように直すので、何を意味しているのかを考えてほしい。
【 キフしよう。 お馬鹿な仲間に クローさせられるね。 】
この 『 お馬鹿な仲間 』 部分が一番のネックで、これがわからないと絶対に解けません。
但しこれは雑学の範疇になるので、
(メ欄)した上で、関連したアレやソレと一緒にググってみて下さい。
- 145 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/27(日) 23:25:10 ID:uY2B8vks0
- 並べ替えたときに読みやすい(あくまでPCで)よう、
暗号の横幅をある程度整えたものを以下に置いておきます。
3、里 ぜ か ね 名 ざ .社 .庁 1、し 廃
ろ. Q. 王 ち .ご .や
4、あ る. ら ぷ び 町 ね ん 8、さ め
り だ 欧 F ら .せ
5、市 ー .き は ん 足 .こ う 7、め
出 お に .く へ. 山 県
2、べ 海 ゑ 場 や 工 川 を 6、ず ま
.ご 砂 .ら つ .京 ぶ
その後さらにつまづくかも知れませんが、
関連本など見ずとも、『 ○○の手順 』 は見つかります。
ぶっちゃけ、wikipediaのとある関連ページに答えが掲載されていたのを見つけました。
- 146 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/27(日) 23:56:37 ID:uY2B8vks0
- 答えに到達した人は、書いてもらえれば正解か不正解かは答えます。
需要があればあともう一つだけ、さらに突っ込んだヒントを出します。
あと麻雀は関係ないです。 モールス信号とかでもないよ。
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