1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 21:44:33.07 ID:e7Kh16qt0
 

 ほらあなの かいぶつ

       さく ・ え (装丁の引っ掻き傷で読めない)


 

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 21:47:35.79 ID:e7Kh16qt0
 
 
 やまの ほらあなには、
 かいぶつが すんでいました。

 おおきな め。  おおきな はな。
 もじゃもじゃの からだに、  するどい つめ。
 くちには、 たくさんの きばが びっしり。


 みにくくて、おそろしい すがたの かいぶつ。
 くらい ほらあな からは、
 いつも おおきな うなりごえが きこえてきます。

 むらの ひとたちは、
 だれも ほらあなに ちかづきませんでした。


 

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 21:50:54.40 ID:e7Kh16qt0
 

 あるひ、ゆうかんな わかものが、
 ほらあなに でかけました。
 かいぶつを たいじ するためです。

 かいぶつは、ひくい こえで うなりました。

 じめんが われて、
 わかものは あなに すべりおちました。 

 しかし、ゆうかんな わかものは
 じわれから はいあがり、
 ふたたび ほらあなを すすみます。


 

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 21:53:32.45 ID:e7Kh16qt0
 

 かいぶつは、おおきな こえで ほえました。

 ほらあなが ゆれて、
 たくさんの いわが くずれおちました。

 しかし、ゆうかんな わかものは
 くずれた いわを おしのけて、
 ふたたび ほらあなを すすみます。


 

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 21:56:09.31 ID:e7Kh16qt0
 

 こまった かいぶつは、
 ささやくような こえで なきました。


 すると、それをきいた わかものは、
 ぶるぶる ふるえあがります。

 そうして
 てにもった つるぎを ほうりだすと、
 いちもくさんに にげだして しまいました。


 

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 21:58:18.46 ID:e7Kh16qt0
 

 かいぶつの なきごえは、
 わかものの おとうさん。



 しんだ おとうさんの ひめいに、
 そっくり だったのです。


 

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:01:00.67 ID:e7Kh16qt0
 

 怪物は、守っていた。

 ずっと、ずっと。

 長い間。

 ……宝物を。


 

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:03:10.58 ID:e7Kh16qt0
 
●第一二話 『 白昼夢 ── V.S ワカッテマスA 』

 〜 〜 〜


(,,゚Д゚) 「……さて、と。 問題は」


 部屋の奥、廊下に続く例のドアを前にして、ギコはようやくブーンのほうを振り向いた。


(,,゚Д゚) 「ここから、俺達がどのくらい ” ニオイ ” に耐えられるのか、だ」

(; ^ω^) 「はひゅっ、はひゅっ」


 対するブーンは、汗を拭き拭き現状把握を試みた。
 ギコに引っ張って来られた先は、半壊したテラスから屋敷に入ってサンルームを抜けた場所、
 つまり先程の荒れた小客間である。
 木製の棚に手をつき、荒い息を整えると、ブーンはその疑問を口にした。


(; ^ω^) 「ドアを、出る? 
       ……忘れ物って、この部屋じゃなく、廊下にってことなのかお?」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:06:07.66 ID:e7Kh16qt0
 
(,,゚Д゚) 「いや……そんなんじゃねえ」

(; ^ω^) 「はい?」


 首を傾げるブーンに、ギコは人差し指を向けて告げた。


(,,゚Д゚) 「ちゃねらーだよ、ちゃねらー」

(; ^ω^) 「……言っている意味がわからないお」

(,,;゚Д゚) 「あークソ……説明はニガテだってのに」


 ギコはそう言ってまどろっこしそうに後頭部を掻く。


(,,゚Д゚) 「このドア開けるとさ、すげえ嫌なニオイがすんじゃん」

( ^ω^) 「お。 立ちくらみしそうなニオイだお。 もう嗅ぎたくないお……」

(,,゚Д゚) 「そう、それそれ」

(,,゚Д゚)σ 「どんなニオイだった?」

( ^ω^) 「どんなって……」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:08:58.16 ID:e7Kh16qt0
 
 ブーンは先程までの悪臭を思い返してみた。
 それは昔、生ゴミとして廃棄した魚をゴミの日に出しそびれ、
 腐らせてしまった時に充満していた臭いそのもの。
 そう、感じたままをギコに告げた。


(,,゚Д゚) 「それなんだ。 ナオの奴は ” ガスの臭い ” って言ってたよな 」

( ^ω^) 「お……何かが腐ってガスが出てるのかお……」

Σ(||| ^ω^) 「まさか……し、死体!?」

(,,;゚Д゚) 「ち、ちげぇよ! ……多分」


 そこでちょうどギコの携帯が鳴り出したが、ディスプレイに表示された名前を確認するや電源を切る。
 おそらくは屋敷の外に残された三人からだろう。
 

(,,゚Д゚) 「お前の感じたニオイ、それからナオのそれ、どちらも俺の感じたニオイとは違ったんだよ」

( ^ω^) 「ギコの感じたニオイって?」

(,,゚Д゚) 「……」

(,, Д ) 「……思い出したくもねえ。 二度と嗅ぎたくないと思っていた、あの忌々しい……」


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:11:26.86 ID:e7Kh16qt0
 
 ギコはそのまま目を伏せ、吐き捨てるように呟く。


「……血と煙の混じった、むせ返るようなニオイ」


 そうして、勢いよく壁を蹴飛ばした。


(; ^ω^) 「お……」


 怒気を孕んだギコの様子に、ブーンは一瞬身じろいだ。
 彼の険しい表情の奥には、暗い何かが揺らめいているように思えた。


(,, Д ) 「……わかるか?」

(; ^ω^) 「な、何がだお」


 当然の疑問を口にするブーンに対し、ギコは怪訝な表情で言った。

 _,
(,,゚Д゚) 「同じ場所なのに、みんな嗅いでる ” 臭い ” が違うんだ。 これって変じゃねえか?」

( ^ω^) 「確かに……」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:21:08.35 ID:e7Kh16qt0
 
(,,゚Д゚) 「つまり、だ」


 ギコはそう言ってブーンのほうに向き直る。


(,,゚Д゚) 「幽霊なんかの仕業じゃねえ、この屋敷には誰かがいる。
     そして、その能力で、俺達の侵入を拒んでやがるんだ」

( ^ω^) 「……お、それって」

(,,゚Д゚) 「ああ、” ちゃねらー ” だ」


 彼の言は、廃屋敷に巣食う異能力者、その存在を示唆するもの。


(,,゚Д゚) 「俺がその……近くにいる ” ちゃねらー ” を感じ取れるってこと、前にも話したよな?」

( ^ω^) 「お」

(,,゚Д゚) 「さっき、廊下で感じたんだ。 ” ちゃねらー ” の気配を」


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:23:34.42 ID:e7Kh16qt0
 
( ^ω^) 「え? あの時にかお?」


 ブーンは首を捻った。
 適度に光度が保たれ、存外見通しのいい広々とした廊下には、
 人の隠れるようなスペースなどなかったように思えたからだ。


(,,゚Д゚) 「そう。 さっきの廊下には俺達以外誰もいなかった。 
     さらに言えば、
     俺が ” ちゃねらー ” を感知できる範囲は、せいぜい頑張って3〜4メートルってとこだ」

(; ^ω^) 「……どういう事だお?」

(,,゚Д゚) 「俺のそばを通った ” ちゃねらー ” は、お前以外にはいねェんだ。
     …… ” あの廊下では ” 」


 「つまり」 と前置きし、ギコは人差し指を宙に掲げる。


(,,゚Д゚)b 「上か」

(,,゚Д゚)q 「下だ」


 〜 〜 〜


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:27:43.11 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) 「……開けるぞ」


 数分後、” ロマネスク ” となったブーンは、廊下に続くドアをゆっくり押し開いた。


(,,゚Д゚) 「……どうだ、カラダの方は大丈夫そうか?」

( ФωФ) 「少々寒気を覚えはするが、大事無い」

(,,;゚Д゚) 「んーとにタフな野郎だな……」


 部屋から出た途端、むわりと鼻につく臭いが漂ってきた。
 ギコはハンカチ、ロマネスクは手で鼻周りを抑えているが、悪臭は依然収まることがない。
 胸を掻き毟りたくなるような不安感に苛まれ、ギコはその身を固くした。


( ФωФ) 「お主こそ、震えているように思えるが」

(,,;゚Д゚) 「……た、たいしたこたねえよ」

( ФωФ) 「無理しているのではないのか?」

Σ(,,;゚Д゚) 「武者震いだっ! ……って、うあっ」


 叫ぶと同時に、ギコはよろめき壁にもたれかかった。


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:29:05.27 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) 「大丈夫か」

(,,;゚Д゚) 「……わ、悪ィけど、ちょっとトーンダウンしてもらっていいか?
      ” 嗅覚 ” を限界まで鈍らせてる代わりに、” 聴覚 ” をアップしてるンだ。
      声が頭にガンガン響くわ」

( ФωФ) 「ほほう、便利なものだな」

(,,;゚Д゚) 「なのに、鼻を摘んでも臭ェし、胸の辺りがムカムカして仕方ねえ……。
      やっぱりこのニオイは超能力で、気分が悪いのはこいつのせいに違いねえな」

( ФωФ) 「ふむ……」


 やおら左右を振り返ると、ロマネスクは言った。


( ФωФ) 「それで、どちらを探すつもりだ」


 二階へ続く階段は左側、玄関ホールの脇から直角に伸びている。
 踊り場には採光用の窓があり、格子が嵌まってはいるが、漏れる光は明るく柔らかかった。
 電灯の類がなくとも探索は容易そうである。
 地下への階段は──そもそも地下があるのかどうかもわからないが、その付近には見当たらない。

 そして逆側、屋敷の内部へと続く廊下の奥は、玄関側と比べて薄暗い。
 周囲の悪臭とも相俟って、どこか禍々しい雰囲気を醸し出していた。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:31:50.88 ID:e7Kh16qt0
 
(,,-Д-) 「おう、ちょっと待ってくれ……」


 ギコは目を閉じ、両耳に全神経を集中させた。
 テラスから吹き込む風の音や、ロマネスクの荒い鼻息などに気を削がれつつも、
 周囲の異音を注意深く探っていく。


(,,-Д-) 「──!」


 コツ、コツ、コツ。
 寸刻ののち、ギコは微細な音の奔流の中で、一種の音を探り当てる事に成功した。


(,,゚Д゚) 「……下だ!」


 それは、確かに移動する ” 人の足音 ” 。


( ФωФ) 「よし、では手分けして、地下への入り口を探すこととしよう」

(,,;゚Д゚) 「ああ。 俺はあんまし長居できそうにねえ……急ぐか!」


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:34:08.72 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) 「待て。 一つ伝えておくことがある」


 今にも駆け出しそうなギコの背中に向かい、ロマネスクは小さく、しかし強い口調で言った。


( ФωФ) 「お主が、屋敷のどこかにいる ” チャネラー ” を見つけ出して、どうしたいのかは知らん。
        が、くれぐれも無理はしないことだ。
        お主は自分の中の正義に基づいて行動しているつもりなのだろうが、
        我々のやっていることが不法侵入には変わりないのだ」

(,,゚Д゚) 「え?」


 そんな彼の態度は想定外だったらしく、ギコはぽかんと口を開ける。


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:36:24.16 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) 「どんな危険が待ち構えてるかわからん。 マズいと思ったらすぐにココを出ること。
        それでもう、探検ごっこは諦めるんだぞ。 いいな?」

(,,゚Д゚) 「お……お……?」

(,,//Д/) 「わ、わかってんよ! おめーなんかに指図されたくねーよ!」


 ──父ちゃんかよ、お前は。
 ギコはその言葉を飲み込むと、やにわにロマネスクへ背を向け、廊下の奥へと踏み出した。

 そうして、彼ら二人による 『 屋敷探索 』 が開始されたのだった。


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:38:38.96 ID:e7Kh16qt0
 
 廊下を奥へと進むと、右手に大きなドアが現れた。


(,,゚Д゚) 「……開かねェな」 ガチャガチャ


 意匠を凝らした木製のそれは今なお重厚な佇まいを見せており、ここが廃屋敷であることを忘れさせた。
 最初に入った小客間の荒れようと比較すると、特にその美しさが際立つ。
 ほんの少し内部を改修し、邸内の埃を払えば、すぐにでもクラシック・ホテルとして営業できそうなほどだ。

 ……無論、この悪臭さえなければ、だが。


( ФωФ) 「何をしている。 我々が探しているのは地下への入り口だろう」

Σ(,,゚Д゚) 「へ……部屋ん中に、隠し階段とかあるかも知れねえだろ」

( ФωФ) 「普通は廊下から続いていると思うが……。
        第一、そんなものを探している余裕があるのか?」

(,,;゚Д゚) 「わ、わーってんよ、ンなこと!」


 ギコの弁明に応える素振りもなく、
 すたすたと奥へ進むロマネスクの背に向かって、彼は一つ溜息をついた。

 普段は至って寡黙だが、ひとたび口を開けば、出てくる言葉は殆どが正論。
 存在そのものが放つ説得力は、あのブーンの” 別人格 ” とはおよそ考えられない。
 「人はこうまで変わるものなのだな」 という、何とも言えない思いを、ギコは溜息に変えて再度吐き出した。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:40:38.32 ID:e7Kh16qt0
 
 角を曲がると、正面に広がったのはダイニング・ルームだった。
 ドアは開け放たれ、薄暗いながらも広々とした様子が窺い知れる。
 中には高価そうなテーブルと椅子が整然と並べられており、
 左奥がキッチン・配膳室へ続いているようだった。


(,,゚Д゚) 「そっちは……?」

( ФωФ) 「行き止まり、のようだな」


 食堂をスルーし、廊下の奥へと進んだロマネスクが引き返してくる。
 突き当たりの正面にある裏口は、
 ぶ厚い磨りガラスを嵌めこんだ作りで、差し込む淡い陽光をバックに彼のシルエットが映える。

 食堂のドアから裏口までの間には、さらに二つのドアが存在しており、その片方は半分ほど開いていた。
 ロマネスクがそれを押し開くと、ギコも端からひょいと顔を出し、一緒に部屋の中を覗き込む。


(,,゚Д゚) 「なんつーか、あっちに比べてぜんっぜん狭ぇな」

( ФωФ) 「先程の部屋は応接間だからであろう」


 内部はビジネス・ホテルのツイン程度の広さだが、
 それに対し、家具の大きさが些か不釣合いで、閉塞感すら感じられた。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:43:54.69 ID:e7Kh16qt0
 
 正面にはベッドが一つ、脇に幅の広いローテーブル。
 ベッドの真向かいに衣装箪笥とテレビボード、
 隣には書籍の詰まった、縦長のサイド・キャビネットがある。

 この洋館が観光用の文化財や映画のセットなどではなく、
 あくまでも住居、現代人の生活空間であったことを思い出させた。

 決して質素というわけではないが、
 アンティークの類は他の部屋に比べて乏しく、” 豪華な洋間 ” という印象はない。
 代わりにやたらと大きな窓があり、
 ロールカーテンの隙間から漏れる西日に、舞い散る埃が淡く輝いた。


(,,゚Д゚) 「階段は……特に見当たらないな」

( ФωФ) 「ふむ。 家人というよりは、使用人の部屋であった可能性が高いな」

(,,;゚Д゚) 「……つーことは、やっぱ、そっちか?」


 ギコはふたたび廊下へと視線を戻す。
 もしも、漂ってくる ” 臭い ” が現実のものだとするならば、
 発生源は食堂からであるという線が濃厚だろう。

 但し、それはまともな物体が臭気を放っている場合のこと。
 鼻腔の奥から脳を突き上げるような感覚は、
 まるで、悪臭の発生源が常に鼻先に括り付けられているかのようだった。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:46:14.84 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) 「我輩は少しこの部屋を調べてみよう。 お主は厨房へ」

(,,゚Д゚) 「なんでピンポイントで厨房なんだよ」

( ФωФ) 「地下に、食糧貯蔵庫のような物が存在するやも知れぬ」

(,,;゚Д゚) 「……あー」

( ФωФ) 「くれぐれも無茶はするな。 何かあったらすぐ我輩を呼べ」


 ギコは返事をする代わりに、ひらひら手を振りながら食堂へと向かった。

 開きっぱなしのドアを潜ると、ひときわ絢爛な内装に息を飲む。
 シャンデリア、暖炉、長テーブルを取り囲む背高椅子──。
 内部はすぐにでも晩餐会が開けそうな、華やかさと荘重さが一体となった空間だった。


(,,;゚Д゚) 「……ホテルかよ、ここ」


 呟いた直後、ああ、ホテル予定地だったか、と思い直す。
 ギコは暖炉のある食堂の奥側に向かったが、そこには階段も扉も見当たらなかった。


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:49:07.31 ID:e7Kh16qt0
 
(,,>Д゚) 「……うぐ」


 そこで彼は不意に寒々とした空気を感じ、その身をぶるりと震わせた。
 依然続く嗅覚への刺激はなお一層強くなり、
 足どりは段々重く、動かすことすら億劫になってくる。

 絶え間なく全身を駆け巡る悪寒。
 そして、圧し掛かるような疲労感。
 彼はいつしか、冷や汗すら流している自己の様子に気がついた。


(,,|||゚Д゚) (は、早く探さねえと、やべえ)


 ギコには、この症状が
 ” ちゃねらー ” の超能力による事態であることについては自信があったが、
 その影響が一過性のものだという考えに確証はなかった。

 屋敷を出さえすれば疲労感や倦怠感は収まるはずだが、
 この ” 臭気 ” を吸い続けることによる影響は、果たしてそれだけなのだろうか。
 後遺症の残るような ” 毒 ” を吸わされ続けている可能性だって充分考えられる。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:51:33.67 ID:e7Kh16qt0
 
 ギコは食堂の入り口へと引き返し、次に配膳室を覗き込んだ。

 
(,,゚Д゚) 「……おい、誰か……!」

(,,;゚Д゚) 「……いますかー……」


 後半は小声だった。
 立ち並ぶ食器棚には、高価そうな皿やグラスがいくつも鎮座していた。

 すぐ奥は煉瓦を基礎としたキッチンだが、
 水周りには現代風の改修が施してあり、ステンレスの鈍い光が目を刺した。


Σ(,, Д ) 「……うっ……!?」


 しかし、そちらへ向かおうとした瞬間のこと。


 『 ドクン 』


 そこで彼は、より一層の臭気を感じてよろめき、テーブルへ片手をついた。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:54:50.39 ID:e7Kh16qt0
 
(,,|||゚Д゚) 「……あ………え……?」


 気づいたときには、異変は既にギコの全身を侵していた。

 鼻から脳天まで突き抜けるような刺激臭、絶え間なく続く身体の痙攣──。
 体の前面を殴打されたような衝撃を感じ、襲い来る寒気に半身を抱え込む。
 体調不良はもちろんのこと、精神面に感じるはっきりとした異常。

     『 ドクン 』

 まるでホールまで音が響いてしまうのではないか、というくらい、
 大きく心臓が鼓動する。

 漠然とした、しかし確実なる不安感が彼の心を縛り、苛んだ。
 目を伏せた途端、彼は改めて、一人である現在の状況を実感する。
 不気味な静寂が黒い霧となって全身に流れ込み、不意に去来する孤独感、空虚感、

 ──そして、恐怖。


(,,; Д ) 「!!」


            『 ドクン 』


 脳裏に、あの時の情景がフラッシュバックする。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 22:57:09.03 ID:e7Kh16qt0
 

『 あ……あああ……!! 』


 ──────炎に包まれ、柱が音を立てて爆ぜた。
          何度も何度も、少年は繰り返しその名を呼ぶ。

          返事は、無い。
          彼は力なく畳に腰を落とし、声にならない叫びをあげた。 
                                      

 錆びに似た生々しい臭い。
 焦げ付く井草のむせ返るような臭気。
 執拗に絡みつき、肌を焼く熱気。  喉を刺す煙のニオイ。


      『 いやああああぁぁぁぁあああ!!! 』


 ────後方より耳を劈く金切り声は、女の子の悲鳴だった。
       のちに、それは搾り出すような泣き声へと変わり、惨劇に悲嘆の彩りを添える。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:00:09.29 ID:e7Kh16qt0
 
 白い闇の底から浮かび上がったちいさな両のてのひら。
 震えるそれに、生温かい、ぬとりとした感触が蘇る。
 滴る赤が、手首を伝い、膝を濡らして畳へ流れ落ち──。

 加速する胸の律動。
 止まらない脈動。


 ──止まっていた、鼓動。


(,, Д ) 「あ、うぁっ」


 ギコは早鐘を打つ左胸を抑え、その場所に蹲った。


 ああ、ああ。
 これは、この記憶は──、
 
 やめろ、やめてくれ。
 やめろ、たのむ、やめてくれ!


「うあああああ……!」


 屋敷に、ギコの悲痛な絶叫が響き渡った。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:03:16.26 ID:e7Kh16qt0
 
 〜 〜 〜


( ФωФ) 「……ふむ、意外である」


 同じ頃、ロマネスクは先程の部屋で、顎に手を当て唸っていた。
 もう片手には、日光に焼けて茶色がかった算数ドリルを抱えている。


( ФωФ) 「使用人の部屋とでも思っていたのだが……」


 入り口からはわからなかったが、
 その部屋はどうやら、改築された子供部屋のようだった。

 窓際にある机の脇、縦長の本棚に収められていたのは、
 どれも子供向けと思われる教科書や図鑑などであり、
 キャビネットに並んでいた書物の類も、子供向けの雑誌がその大半を占めていた。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:05:47.82 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) 「ならば隣も、子供部屋なのであろうか」


 廊下には二つのドアが並んでいた。
 屋敷の規模と比較すると、この部屋は主の寝所としては狭い印象を受ける。
 ゆえに、並んだ部屋の片方が両親の寝室であるとは考えづらい。

 兄弟の部屋であったという推測が妥当なところだが、
 ロマネスクはそれでもやはり引っかかるものを感じた。

 屋敷は充分な広さがあり、二階だって存在している。
 それなのに、果たして一階の、こんな裏口に近い場所に家人の寝室を配置するだろうか。
 それも食堂の隣に。


( ФωФ)゙ 「……むっ?」


 そうやって首を捻っていたところ。
 ロマネスクはそこで、鼻を刺す臭気が増し、体がより重くなるのを感じた。


( ФωФ) 「なんだ、これは……」

( ФωФ) 「!!」


 続けざま、廊下から漏れ聞こえるかすかな悲鳴。


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:08:11.91 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) 「ギコ……!」


 ロマネスクはドリルを放ると廊下へ駆け出した。

 食堂に入室した瞬間、左手からがしゃんと什器の割れる音が響いてきた。
 彼はそれを聞くと、わき目も振らず、音の発生源である配膳室へと飛び込んだ。


( ФωФ) 「おい、どうしたのだ!」


 ロマネスクがそこで見たものは、
 床に散らばる花瓶の破片と、食器棚へもたれかかるようにして震えているギコの姿だった。


( ФωФ) 「大丈夫か、何があった」

(,, Д ) 「い、イヤだ、嘘だ、そんな……」

( ФωФ) 「ギコ、もうここから出るのである」


 肩を貸そうと腰を落としたロマネスクだったが、
 対するギコは身を堅くしたまま、小さくかぶりを振った。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:11:59.61 ID:e7Kh16qt0
 
 聡明なる ” 別人格 ” ──ロマネスクは、おぼろ気ながら理解していた。
 ギコは超能力によって、なんらかの精神攻撃を受けている。


( ФωФ) 「やはり我々が立ち入るべき場所ではなかったのだ」


 そしてそれはギコが言っていたとおり、
 今や鼻が曲がりそうなほどに強烈な、この悪臭を通じて行われていることだと推測された。

 チャネラー本体をなんとかして探し出し、
 直接叩くことができれば、能力は解除されるだろう。
 しかし、それが容易にはいかないことも彼は重々承知していた。


(,, Д ) 「うう……なんで、なんで……!」

( ФωФ) (……ギコ)


 以前、兄であるドクオとギコが、催眠能力者(ヒュプノ)と接触する出来事があった。

 事件の顛末については、ドクオの口から簡単に語られただけで、それ以上の情報はない。
 対するブーンはただメイド服の件について叱責するばかりだったが、
 当時覚醒状態にあったロマネスクは、その殆どを記憶に留め、独自の考えを展開させていた。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:14:37.16 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) (──お主は、感応性が高すぎるのであるな)


 精神疾患の多重人格障害とは異なり、” チャネル ” による症例においては、
 一日のうち、両方の人格が覚醒している時間、片方が眠っている時間が存在する。
 (当然、両方眠っていることもあるが、それはイコール通常の睡眠状態に他ならない)

 ” Channeler ” において副人格であるロマネスクは、その活動が特に制限されている。
 一般的に、副人格(アナザー)のほうが、一日における覚醒時間が短い傾向にあるからだ。

 ただし、両人格が覚醒している状態と言っても、意識は完全に共有されているわけではなく、
 どちらかが求めない限り、完全なる意思の疎通は行われない。
 思ったことが常に相手に筒抜けになる、というわけではないので、
 ブーンはこれまで、ロマネスクの思考過程について殆ど関知する機会がなかった。

 その上ロマネスクは寡黙で、ブーンと自ら ” 脳内会話 ” を試みようとすること自体稀であった。
 ” チャネル ” の覚醒後、ブーンの生活が劇的に変容することもなく、
 至って普段どおりの生活を送れているのは、
 自己主張に乏しいロマネスクの性質によるところが大きかった。


( ФωФ) 「……」


 そんな彼も、自ら進んで肉体の ” 制動権 ” を手にすることがある。
 それは主に、草木も眠る丑三つ時のこと。
 ロマネスクはブーンが寝静まったあと、
 独自に、超能力やそれに纏わる事件に関して調査研究し、その知識を蓄えていったのだった。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:18:08.58 ID:e7Kh16qt0
 
(,, Д ) 「俺……俺は……どうして……!」


 件の事件において、ギコがドクオを呼びつけたのは、当然ながらその能力に頼ろうとしたためである。
 ドクオのそれは、アンチ・サイと呼ばれる中和能力の一種であることを、ロマネスクは理解していた。
 直接的接触の必要性という縛りが、その能力を非常に使い勝手の悪いものにしているが、
 ギコはそれでも彼の助けを必要としていた。

 相手がちょっとした使い手、程度の輩であったなら、
 ” タカラ ” と化した彼が問答無用で殴りかかればひとたまりもなかった筈。

 それが叶わなかったのは、空間を介して ” 感情を感染させる ”、
 相手の強力な催眠能力(ヒュプノシス)に対抗する手段がなかった事に他ならない。
 アンテナの鋭敏なギコは、精神感応系の能力に対して極端に弱い傾向があるのだろう。

 そもそも事件に巻き込まれた発端も、
 ギコ自身が相手の術に掛かってしまったことからではないか、とロマネスクは推察する。
 足元でわななくギコの様子が、どことなくそれを証明しているように思えた。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:21:16.13 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) (仕方ない。 背負ってでも館を出ることとしよう)


 我輩がどうにか壮健なうちにな、と心の中で付け加える。
 そうしてロマネスクが腰を落としたときのこと。


( ФωФ) 「!」


 彼はそこで気配を感じ、顔を上げた。


(; ><) 「……」


 見ると、配膳室より続く厨房の入り口に小さな人影があった。
 華奢なシルエットの少年が、不安そうな表情でこちらを見つめている。


( ФωФ) 「……お主は」


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:24:06.16 ID:e7Kh16qt0
 
(; ><) 「あ、あのぅ」


 年のころは十歳前後だろうか。
 白いシャツの上に落ち着いた濃紺のベストを着ており、前髪はぱっつん。
 そのため、どこか大人しそうな印象を与える子供だった。
 少年は入り口へ半身を隠すようにしてこちらを窺っていた。


( ФωФ) 「何者だ。 これはお主の ” 能力 ” か?」

(; ><) 「へ? な、何がです?」

( ФωФ) 「お主の仕業なのか、と聞いている!」

Σ(; ><) 「キャーなんです!」


 語気を荒げたロマネスクの様子に、男の子はびくりと体を震わせる。
 厨房へ引っ込み、顔だけひょっこり出すと、彼はこわごわ口を開いた。


|;><) 「こ、ここはぼくのおうちなんです! おじさんこそナニモノなんです!」
|と )


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:27:06.54 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) 「僕の家?」


 その言葉に、ロマネスクは眉を顰めた。


( ФωФ) 「お主、屋敷の新たな入居者か?」

|;><) 「え? いや、その」

( ФωФ) 「もしくは、管理会社の関係者か」

|;><) 「そ、そういうワケじゃ……」

( ФωФ) 「何にせよ、我輩のやるべきことは一つである」


 ロマネスクはゆらり立ち上がりと、入り口へ向かって歩を進める。
 少年はひっと小さな悲鳴を漏らし、傍らに立てかけてあったモップへ手を伸ばした。


(; ><)ノ゙ 「や、やめるんです! こっちに来るななんです!」

( ФωФ) 「……」

(; ><)ノシ 「イヤなんです! ダメなんです! ぼくは悪くないんです!」

( ФωФ) 「……」


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:30:22.84 ID:e7Kh16qt0
 
Σ(; ><) 「キャー!!」


 武器を懸命に構えようとする少年。
 その正面に立つと、ロマネスクはぴたりと止まり、それから深く頭を下げた。


( ФωФ) 「申し訳なかったのである」


 直後、その頭上をモップの柄がへなへな通過した。

      ∩
(; ><)彡 「キャー! キャー!」
   とノ彡


( ФωФ) 「我々は速やかに退去する。 なので、どうか彼を許してやって欲しい」


Σ(; ><) 「きゃ……ぁ、へっ?」
    とノ彡


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:33:14.87 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) 「館への不法侵入については充分反省している。 お主の怒りももっともである。
        しかし、このままだと彼が……」


 ロマネスクは食器棚の足元に寄りかかるギコを一瞥した。


( ФωФ) 「ゆえに、我々への” 精神攻撃 ” を解除して欲しいのだ」


 そう続け、彼はもう一度深々と頭を下げた。


(; ><) 「あ、あの……」

( ФωФ) 「頼む、この通りである」


 気勢をそがれた少年は、からんとモップの柄を取り落とす。
 暫しの沈黙を経て、彼は恐る恐る口を開いた。


(; ><) 「あのお兄ちゃん、具合が悪いんですか……?」

( ФωФ)゙ 「……ぬ」

(; ><) 「あ、あんなに震えてるんです。 とっても苦しそうなんです」


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:36:22.49 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) 「お主の所為ではないのか?」

(; ><) 「ぼ、ぼくは何もしていないんです! 花瓶にだって一度も触ってないんです!」

( ФωФ) (……何だ? 花瓶?)


 床に散らばるそれは、おそらくテーブルの上にあったもので、ギコが倒れこむ際に落としたのだろう。
 少年はこの状況を前に、花瓶によってギコが殴られた可能性でも想像したのだろうか。
 彼が知らぬ振りを決め込んでいるので無ければ、この事態は別の人間の所業ということになる。


Σ( ФωФ) 「そうではなく、この臭いが……」


 そこまで口にした瞬間、ロマネスクはハッと顔を上げた。


( ФωФ) (臭いが……消えている)

( ><) 「?」


 辺りに立ち込める悪臭は、いつの間にか、微かに感じる程度まで弱まっていた。
 体を蝕んでいた倦怠感もほぼ無くなり、辺りには埃とカビの交じった臭いが薄く漂う程度。
 あまりに唐突な臭気の消滅に、ロマネスクは丸い目をさらに丸くした。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:39:15.69 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) 「どうなっているのだ……」

(; ><) 「お、お兄ちゃんは大丈夫なんですか?」


 ギコの背中とロマネスクの顔を交互に見やり、おろおろする少年。
 不意にその後方へ視線を移すと、
 厨房の奥の暗がりに地下へ伸びる階段の手すりが見えた。


( ФωФ) 「……お主、あの下から来たのか?」

(; ><) 「そ、そうなんです。 赤いお酒がいっぱいあるんです」

( ФωФ) (ワインセラーか)


 ギコの捉えた ” 地下の足音 ” とは、やはり少年のものだったのだろう。


(; ><) 「探し物をしてたら、悲鳴が聞こえて……そしたらお兄ちゃんが……」

( ФωФ) 「探し物?」

(; ><) 「それより、お、お兄ちゃんは大丈夫なんですか?」


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/03(水) 23:42:46.50 ID:e7Kh16qt0
 
( ФωФ) 「そういうお主は大事無いのか? かなり酷いニオイだったはずだが……」

(; ><) 「ニオイ? ぼ、ぼくはオナラなんてしていないんです!」

( ФωФ) 「ハテ? お主は臭いを感じていなかったのか……?」


 ロマネスクは首を傾げた。
 無意識下で能力を発動していたのか、はたまた、少年の ” 別人格 ” による仕業なのか。

 他に考えられるのは、地下にもう一人、別の ” チャネラー ” が潜んで居る可能性。
 この少年が嘘を言っているようには見えないが、
 一応、地下へ降りてそちらも調べておいたほうが良いのだろうか。

 そこまで考えた時、後方からどさりと大きな音が響いた。


Σ(; ><) 「!」

( ФωФ) 「ギコ!」


 食器棚の足元、床へうつ伏せに倒れこんだ友人のもとへ、ロマネスクは大急ぎで駆け寄った。



 (続く)
 

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