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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:29:10.10 ID:mqmYIwiP0
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『精神とは、いくつもの機能モジュールが組み合わさった統合体だ』
27番目の『僕』が言った。
『感情、知覚、行動……。 それらの連携がうまくいかないと、こういう事が起こる』
声のするそちらに耳をかたむけていた。
いや、読んでいたのかも知れないし、においを嗅いでいたのかも知れない。
『一度膨らませた風船は、しぼんでも、元の風船には戻らないんだ』
じゃあ、もうあの優しいアルペジオと、それを奏でるしなやかな指使いは望めないのだろうか。
『それって、胃下垂みたいなものかな』
12番目の『私』が首をかしげる。
7番目の『俺』が笑った。 『僕』も笑った。
- 2
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:30:44.80 ID:mqmYIwiP0
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『レトロフィッティング、という言葉がある。 知っているかい』
いいや。 83番目の『僕』がそう答える。
『言ってみればこじつけさ。 君は弓の達人になれるし、射撃の名手にもなれる』
遠くから、一筋の風が吹いた、ような気がした。
『……ねえさんに、会いたいな』
なめらかな歪みに漂いながら、『僕』はふと、そう思った。
- 3
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:31:32.62 ID:mqmYIwiP0
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−−−−−
「……ふあ。 眠みぃ」
起き抜けの第一声はいつも通りだった。
布団に投げ出されたなまっちろい自分の腕を、しばらくボーッと眺めて、いま一度の大あくび。
そのうちにのそのそ布団から這い出し、ベッドから足を降ろす。
雑誌、ビールの空き缶、なんか丸まったティッシュ……
燃える・燃えない・資源、余すところ無く全てのジャンルを網羅している。
踏み出す大地──床のカーペットは、俺の存在を拒絶するかのごとく物が散乱していた。
足場は少なく、面積もまた心もとない。
気分はマグマに浮かぶ岩盤を飛び石にする配管工だ。 当然、足を踏み外すと死ぬ。
ああ、今日も素敵に無敵な一日がはじまるに違いない。
無理にそう言い聞かせ、片足の姿勢でカーテンをめくる。
「いやあー、今日もいー天気だぜ」
寝惚け眼に映った外は、ほどよい曇り空だった。
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:33:05.70 ID:mqmYIwiP0
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がた、がた、がた。
立て付けの非常に悪い引き戸を開ける。 レールに何か引っかかってるかのようだ。
というかなんで普通のドアじゃないんだよ。
前々から思っていたが、我が城であるこのアパートはやっぱどこかおかしい。
まあ、管理人からしてどこかおかしいので当然とも言えるが。
「うーす……うぷ、朝から牛丼かよ……」
( ^ω) 「おっお、おはようお」
四角いちゃぶ台の向こう、
テレビを見ながらどんぶり飯をかっこんでいるこいつはホライゾン。 通称ブーン。
年はだいぶ離れてるし、ところどころ脂肪のついた体型といい、
兄の俺とは似ても似つかないが、一応血の繋がった兄弟だ。
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:38:15.76 ID:mqmYIwiP0
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( ^) 「お、また市長出てるお。 よくテレビに出る人だお」
ブーンはここから高校に通っている俺の弟で、ぽっちゃりで、ピザで、メタボ予備軍だ。
こいつが俺のアパートに押しかけてきてから、早一年。
実家からの仕送りと俺のバイト代で賄ってはいるが、その大半は食費の名のもとについ消える。
我が家のエンゲル係数を引き上げる肉塊。 育ち盛りの一言では済まされない。
こいつのあだ名がブターンになる日もそう遠くはないだろう。
それでも、ブーンの家事・料理スキルは重宝してるし、
それらに頼りっきりの俺に文句は言えないのだけれども。
( ^) 「おー、今日の占い第一位だおwwwww」
案外、将来はいい旦那さんになるかも知れない。 相手ができればの話だけど。
( ^) 「おっおっ、このお天気お姉さんカワイスwwwww」
「見たことねえなー、新人さんなのかな」
欠伸を噛み殺しながら、ブーンの向かいにぺたんと腰をおろす。
うん? なんだか胸のあたりが揺れた気がした。
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:39:41.01 ID:mqmYIwiP0
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( ^) 「風邪引いたのかお? 声高くてキメエおwwww」
キメエなんて言葉は言われ慣れてるっつーの。
でも、確かになんだか声に違和感がある。
本当に風邪引いちまったのかも知れない。 参ったな。 昨夜の薬は効かなかったのか。
( ^ω) 「おうふ、そろそろ学校行かんとヤベぇ」
ブーンは牛丼の残りを味噌汁でかっこみ、醜く咀嚼しながら両手を合わせた。
俺はその様子に溜め息をつきながら、紅生姜の瓶に手を伸ばす。
( ^ω) 「ごっそーさま」
そうして、喉を鳴らして麦茶を一息に飲み込んだ。 ゴクリという音とともにコップが空になる。
というか、なんで俺はこいつの規格外な食事風景を克明に描写しなければならんのだろう。
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:41:15.88 ID:mqmYIwiP0
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そう思い、そろそろ地の文による状況説明が面倒くさくなってきたところで。
( ^ω^)彡 「ドクオにーちゃん、後片付けはたのん……」
( ^ω^) 「だ、お」
ようやく振り返ったブーンは、俺の姿を見て一瞬呆けたような表情になり、
アホ面のままフリーズした。
( ^ω^)
( ゚ω゚)
「?」
目玉がこぼれそうなくらいに見開かれている。
そのまま捻れば「きゅぽっ」て感じで取り外せそうだ。
まあ、外したところでアメリカンクラッカーにもなりやしな……
- 11
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:42:35.64 ID:mqmYIwiP0
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( ゚ω゚) 「誰ですかあんたぁぁあああ!?」
直後。
呑気に構えていた俺の耳を劈く、絶叫。
わけがわからない。 俺の肩に誰かいるのか。 憑かれやすい体質だったのか。
从'。`リル 「……あん?」
(; ゚ω゚) 「に、に、ニーチャン……なのかお?」
ブーンは泡を食って俺のほうを凝視している。
なんだなんだ。 世の顔見忘れたとは言わさんぞ。
从'、`リル 「……え? 何何? 即発性の狂牛病か何か?」
(; ^ω^) 「ご、こ、これっ!!」
从'ε`リル 「……?」
そう言って、後ろにあった大きめの手鏡をあたふたと掴み、俺の眼前に突きつける。
いつも通りの、寝癖に彩られた冴えない自分の顔を覗きこんだ。
- 12
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:45:11.02 ID:mqmYIwiP0
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从'。`リル
あら不思議。 中にいたのは別人だった。
鏡に映る人物は、俺の動きに合わせて首をかしげる。
从'。`リル
从゚д゚リル
从゚Д゚;リル 「なんじゃこりゃああぁぁああっ!!!?」
そこでようやく、鏡の中の人物が自分である事に気が付いた。
肩まで伸びた髪、白い肌、細い眉にくっきりとした眼、その下に添えられたかわいらしい小鼻。
そして、丸みを帯びた全身──。
鏡に映った内藤ドクオの姿は、文字通り、目の覚めるような美少女のそれだった。
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:47:04.74 ID:mqmYIwiP0
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●第一話 『 メイド ・ イン ・
ドクオ 』
从゚д゚*リル 「ふ、ふお、ふぬおおおお……」
外見とミスマッチな、間の抜けた息が口から漏れる。
眼前には全身鏡があり、映し出されているのは紛れも無く俺。 ミー。
白いブラウスに黒いワンピース、腰を覆うちいさなエプロン、頭にはふわふわのカチューシャ。
どう見てもメイド服姿です。 本当にありがとうございました。
从'д`;リル 「ていうか何でコレ! 替えの服が欲しいとは言ったけど……」
(; ^ω^) 「に、ニーチャン! ちょっとターンしてみて!」
从'。`リル 「え? あ、はい」
とりあえず、言われるままに一回転してみる。
ワンピースのスカートがふわりと揺れ、
フリフリしたパニエの裾から、縞模様の……トランクスが覗いた。
(* ゚ω゚) 「うっひょおおおおぉぉぉおう!」
グッ
从'д`;リル 「……ガッツポーズはやめろ」
- 14
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:49:01.10 ID:mqmYIwiP0
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結局バイトは休んだ。 休まざるを得なかった。
「内藤ドクオの弟ですが……、兄はきゅ、急病で……」
これほどに仮病オーラの漂う電話連絡もあるまい。 あとで絶対怒られるわ。
从'。`;リル 「足がスースーして落ち着かないな。 スカートなんて、何年ぶりだろ」
( ^ω^) 「履いたことはあるのかお……」
さすがに細部まで調べたわけじゃないが、俺の体型はやはり女の子そのものだった。
もともと細身の俺が所有している服は、Tシャツにしろジーンズにしろスリムなものばかり。
女の子になった自分もスレンダーには違いないのだが、ムネと腿周りが若干キツい。
さらに言えば、それぞれの所持総数は頑張って3着。
季節によってはローテーションどころか一日交替の着まわしスタイル。
ってそれはどうでもいい。 とにかく、自分の体に合う服が欲しかったわけだ。
(;*^ω^) 「ま、まさか男兄弟の僕が、肉親に萌える日が来ようとは」
ゴクリ
で、ブーンに相談してみたところこれだ。
何でメイド服なんぞ所持してんねん。 んでそれが意外にもぴったりなのがまた。
- 17
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:51:27.35 ID:mqmYIwiP0
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从'。`リル 「しっかし、何でこんな事態になっちゃったんだろ……」
スカートの両端をひらひら持ち上げつつ言った。
漏れる嘆息すらもかわいらしく、まるで別人のような響きである。
( ^ω^) 「に……ネーチャンに心当たりはないのかお?」
从'。`;リル 「ネーチャンはやめてくれよ、マジで。 絶対慣れそうにない」
从-、-;リル 「心当たりねえ……」
昨日のことを回想してみた。
ええと、確か朝からバイト行って、その帰りにハインさんとこ行って、
そのあと雨降り出して、傘持ってなかったからずぶ濡れになって、ええと……。
从'。`リル 「あとは、帰り道で何か変な人に遭ったくらいしか……」
( ^ω^) 「それめっちゃ核心臭いんだけど」
从'。`リル 「あ、そうそう。 変な薬貰った」
( ^ω^) 「……飲んだの?」
从'д`;リル 「まっさかぁ!」
- 18
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:52:54.62 ID:mqmYIwiP0
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( ^ω^) 「いや……話の流れ上その辺に原因があるとしか……」
俺は大仰に首を振って否定する。
いくら物持ちのよい俺でも、道端でもらった得体の知れない薬なんて飲むわけないじゃん。
从'。`リル 「んで帰宅して、一人酒してて、gdgdになっていつの間にか寝てた」
( ^ω^) 「本格的にダメな人や……」
从'、`;リル 「オトナには色々あるんだよ、色々と」
( ^ω^) 「はいはい。 で、その薬とやらはどこにあるんだお?」
从'。`リル 「そりゃあこっちに……」
言いながら自分の部屋へ移動する。
開け放った戸の向こうで広がる惨状と、そこから広がる据えた臭いに、ブーンが顔を顰めた。
从'。`リル 「これこれ」
ビールの空き缶や、つまみのさきいかなんかが散乱するテーブルの上。
変な女の人にもらった変な小箱を取り上げると、
変な蓋を開け、中の変なカプセルを変な弟に提示する……つもりが。
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:55:18.59 ID:mqmYIwiP0
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从'。`リル 「あれ……入って、無い」
( ^ω^) 「はい原因確定ー」
从゚д゚;リル 「ちょっと待ってよ! 無いってことは無いでしょ! 昨日まであったんだし!」
( ^ω^) 「どうせ間違って飲んだんでしょ」
从'。`リル 「いや、昨夜は寒気がしたから風邪薬を飲んだだけで……ん?」
見れば、横には未開封の風邪薬が一箱。
从'、`リル 「……」
( ^ω^) 「……」
从゚皿゚i||iリル 「ミステイク!!」
(; ^ω^) 「そんな事だと思ったお! こンの酒乱野ろ……じゃなくて、酒乱おんな!」
从゚□゚;リル 「あわわわわ、どこ? 元に戻す薬どこぉ?!」
( ^ω^) 「僕にわかるわけないお」
- 21
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 18:57:35.02 ID:mqmYIwiP0
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从;д;リル 「どどどどうしよう! これじゃあ14歳の魔法少女を嫁にするという俺の未来計画が……」
( ;ω;) 「知るかそんな事! ニーチャンが性転換したって両親に打ち明ける身にもなってみろお!」
そのまま5分くらい、二人して泣いた。
ある程度落ち着くと、ブーンは溜め息混じりに学校へ向かっていった。
時計の針はお昼を告げようとしている。
兄貴はきっちりバイトを休んでいるというに、自分はクソ真面目に午後だけでも授業を受けようなんて……。
いや、まったくもって殊勝な心掛けだ。
从'。`;リル 「はあ……どうしよ、これから」
一人になった俺は、今一度深く深ーく溜め息をついた。
駅前に向かおうかとも思ったが、
この時間じゃハインさんもまだ居ないだろうし、この格好じゃあまり外出する気にはなれない。
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 19:00:06.63 ID:mqmYIwiP0
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从'。`リル 「なんなんだろーなぁ、コレ」
事態の元凶である、カプセルの入っていた小箱を手にとり眺めてみる。
材質はプラスチック……ではないようだが、丈夫そうな外殻の割に軽い。
黒光りのつやつやとした表面に、銀縁のラインで妙な模様が描かれている。
蓋を開けると、指輪の箱みたいに中央に窪みがある。 カプセルが入っていた部分だ。
从'。`;リル 「酔ってたとはいえ、こんなモン飲んじまったのか、俺」
他には何も見当たらない。
医薬品なら取扱説明書くらい入っててもいいだろーに。
まあ、こんな効能のあるクスリなんて絶対正規品じゃないんだろーけど。
从'皿`;リル 「組織の開発した新しい毒薬……」
見かけはオンナ、頭脳はオトコ、なんてどんなバーロー。 違う方面の人気は出そうだけど。
- 24
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 19:02:10.93 ID:mqmYIwiP0
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そうやってしばらく眺め回してみたものの、特筆すべき点はなかった。
解毒剤みたいのが一緒に封入されていないかと考えたが、徒労に終わる。
やれやれと呟きながら箱を放り出す。 四肢も投げ出した。 あーあとついでに人生も。
从'、`リル 「よし!」
从'。`リル 「寝よう!」
ダメだ。 面倒臭い。 どれだけ考えてもらちがあかない。
それに時間が経てば治るかも知れないし。
「病は気から」「寝れば治る」という、先人たちのまったく有り難くない格言を思い出し、
俺はすぐさま床に突っ伏した。
从'、`;リル 「……なんか違和感が」
胸の潰れる感覚がどうにも気持ち悪い。 うつ伏せはやめにしよう。
俺は散らばるゴミの山を蹴飛ばし、メイド服姿のままベッドに潜り込んだのだった。
- 27
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 19:03:41.75 ID:mqmYIwiP0
-
−−−−−
(; ^ω^) 「おっおっ……はふう、なんとか間に合ったお」
ブーンが学校に着いたのはお昼休みの終わりごろだった。
賢明な読者なら気付いているであろうが、ドクオがいない場面ではだいたい地の文が三人称になる。
そう、地の文が三人称になるのだ。
(’e’) 「おうブーン、社長出勤だな」
( ^ω^) 「おいすー。 うん、ちょっとした風邪だお」
彼が汗をふきふき廊下を歩いていると、ツラ構えからして脇役の友達と出くわした。
そう、脇役の友達と廊下で出くわしたのだ。
( ・3・) 「あるェー? バカは風邪ひかないはずだYO」
(’e’) 「どうせ撮り溜めしてた『ましょデレ』消化してて睡眠不足とかいうオチだろ?」
( ^ω^) 「そんなわけねーお、つーか毎週欠かさず観てるし。
……あ、すまんけど後でノート見せてくれないかお?」
(’e’) 「まさかタダで見せろってんじゃなかろうな」
- 28
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 19:05:22.91 ID:mqmYIwiP0
-
( ^ω^) 「お? いったい僕にどうしろってんだお」
( ・3・) 「カラダで払ってもらうZE」
( ^ω^) 「うほっ! って何で僕がそこまでせにゃならんのだ」
彼らはどう考えても脇役っぽい、当り障りのない会話を持ちかける。
そう、当り障りのない会話を持ちかけるのだ。
( ^ω^) (ていうか遅刻したのニーチャンのせいだし、カラダ払うのはニーチャンで……)
(;* ^ω^) 「……あ」
今のドクオの状態では少々洒落になっていない事を思い出し、ブーンは顔を赤らめる。
そう、えっちなことを連想して顔を赤らめたのだ。
( ^ω^) 「てか鬱陶しいんだけど……(地の文が)」
- 30
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 19:06:21.43 ID:mqmYIwiP0
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彼がそう呟いた途端、横を通り過ぎようとした金髪の男子がピタリと足を止める。
(,,゚Д゚) 「……あん?」
そう、金髪の男子が足を止めたのだ。
(’e’;) 「お、おいブーン、何を突然……」
(; ^ω^) 「え? あ、ち、違うお! これは独り言だお!」
(,,゚Д゚) 「……!」
(; ^ω^) 「う、うっとーしいってのは、決して君のことを言ったわけでは……」
(,,゚Д゚) 「……」
(; ^ω^) 「あ、ああ、ううう」
細身で背は高くないが、ツンツン立った短い金髪と筋肉質な腕、
鋭い眼光は、対峙するブーンに重々しい威圧感を与えるに充分だった。
慌てふためき、首を大仰に振って否定を示すブーンだったが、
そんな様子を意に介さず、金髪の男子はなおも彼を睨めつけた。
- 31
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 19:07:31.22 ID:mqmYIwiP0
-
(; ・3・) 「お、おい、そろそろ授業始まるから教室行こうZE」
一人の友達がブーンの袖を引っ張り、強引にその場から連れ出そうとする。
(; ^ω^) 「お、そうするおっおっお」
ブーン達はヲタヲタしながらその場を離れた。
そう、ヲタヲタと逃げ出したのだ。 ヲタだけに。
(’e’;) 「……ったく、何から何まで世話の焼ける奴だなあ」
( ´ω`) 「……た、助かったお。 ありがとうお」
(; ・3・) 「めっちゃお前のこと睨んでたZE」
(’e’;) 「あいつは隣のクラスのギコだ。
ほら、すげー可愛い彼女がいるって噂の」
(; ^ω^) 「リアみつるめ……」
( ・3・) 「格闘技やってるって聞いたZO。 ブーン終わったNA」
( ;ω;) 「ああもう聞きたくないお!」
- 34
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 19:09:04.94 ID:mqmYIwiP0
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( ´ω`) 「はふう、今日は厄日に違いないお……」
ブーンのすすり泣きは響く予鈴に掻き消された。
そう、予鈴に掻き消されたのだ……。
(,,゚Д゚) 「……」
彼らが連れ立って教室に入る様子を、ギコと呼ばれた男子は廊下の隅から未だ凝視していた。
(*゚ー゚) 「ギコくん、授業はじまるよ」
そんな彼の横から、一人の女子生徒がちょこんと現れ、肩に手をかける。
- 35
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 19:09:29.69 ID:mqmYIwiP0
-
(,,゚Д゚) 「……」
(*゚ー゚) 「ギコくん?」
(,,゚Д゚) 「……見つけた」
(*゚ー゚) 「!」
もう一つの視線が、後ろ手に教室のドアを閉めようとしている、ブーンのもとへと伸びた。
(続く)
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