- 111 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
22:57:51.88 ID:f7ofl48/0
- (*゚ー゚)「ああ、約束の時間に遅れちゃう・・・」
エレベーターの中、小柄な女性が腕時計を確認している。
(*゚ー゚)「故障かなあ・・・? 連絡ボタン押してもどこにもつながらないよ・・・」
女性はハア、と小さく息をつきエレベーターの床に座り込んだ。
(*゚ー゚)「ギコ君、まだ待っててくれてるかなあ・・・せっかくaikoのライヴ、二人でいけると思ってたのに・・・」
手の中のチケットを握り締める。
(*゚ー゚)「なんだかココ怖いよ・・・ギコ君・・・」
女性は不安そうに膝を抱えた。
エレベーターは静かに上昇し続けている。
- 113 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:00:31.89 ID:f7ofl48/0
- (´・ω・`)「さて、出発まであと30分をきった。必要なものはそろったね。確認してくれ」
ルームエレベーター内。リビング。
5人は上下灰色の迷彩服に身を包み、傍らにはデバッグを置いていた。
手には指の部分が空いたグローブをはめ、腕には頑丈そうな腕時計をはめている。
(´・ω・`)「これから簡単な注意点を言う。しっかりと聞いてくれ」
ショボンは皆を見渡した。
(´・ω・`)「まず僕がリーダーとして皆の指揮を取る。不本意かもしれないが、ダンジョン内にいるときは僕の指示には従ってくれ」
(´・ω・`)「そして絶対勝手な行動を取らないでくれ。絶対にだ」
( ^ω^)「はいだお」
ξ゚听)ξ「わかったわ」
(´・ω・`)「何が起こっても、僕は必ず指示を出す。それに必ず従ってくれ」
- 114 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:02:18.11 ID:f7ofl48/0
- (´・ω・`)「もし僕に何かあったときは、ドクオ」
('A`)「俺?」
(´・ω・`)「君が代わりに皆を安全にゴールへと連れて行ってくれ。初めての君にとって酷かもしれないが、頼む」
('A`)「わかった・・・」
(´・ω・`)「トランシーバーは僕とドクオ、そしてツンが持つ。通信手段は命だ。絶対に落とさないように」
ξ゚听)ξ「うん」
(´・ω・`)「それと、笛は首にかけておいてくれ。だが本当に必要なとき以外吹かないこと。注意してくれ」
川 ゚ -゚)「了解」
(´・ω・`)「ドアが開いたらまず僕が先頭を行く。僕が指示を出すまで、ここからは絶対に出ないでくれ」
( ^ω^)「はいだお」
(´・ω・`)「先頭は僕。すぐ後ろにブーン、ツン、クー。しんがりはドクオ。この陣形はできるだけ崩さないでほしい。場合によって僕が一番後ろにつく。その場合先頭はドクオだ」
('A`)「OK」
- 118 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:03:39.95 ID:f7ofl48/0
- ショボンは大きく息を吐き続けた。
(´・ω・`)「僕は君たちを全面的に信頼している。全員一緒に、ひとりも欠けずに、こんな所から抜け出したいと思っている」
(´・ω・`)「だから君たちも僕を信じてくれ。何があっても僕が君たちを守る。僕について来てほしい」
ξ゚听)ξ「うん・・・今はもう信じる」
( ^ω^)「ブーン達のリーダーはショボンしかいないお」
('A`)「できる範囲で支援させてもらう」
川 ゚ -゚)「私もだ」
- 129 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:08:58.27 ID:f7ofl48/0
- (´・ω・`)「ここの奴らに見せてやろう。僕らは『ゲームの駒』でも『モルモット』でもないってことをね」
最後にそう言うとショボンはニカッと笑って見せた。
(´・ω・`)「それじゃあ、出発時間までここで待機しておいてくれ。僕はちょっとトイレへ」
( ^ω^)「あ、ちょっと待ってくれお」
ブーンは急いでバッグの中から携帯電話を取り出した。
( ^ω^)「出発前にみんなで記念撮影だお」
('A`)「おいおい、お前はノンキな奴だな」
ξ゚听)ξ「緊張感ゼロね」
川 ゚ -゚)「一気に気が抜けたぞ」
( ^ω^)「早くそっちに並ぶお!」
- 131 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:10:34.13 ID:f7ofl48/0
- ブーンはテーブルの上へ携帯電話を置くと、位置を調整し、タイマーのボタンを押した。
(´・ω・`)「まあ、いいじゃないか。この辺でいいのかい?」
( ^ω^)「OKだお! みんな笑ってお!」
5人はぎこちなく微笑む。
カシャっという音がして、時が切り取られた。
(´・ω・`)「うまく撮れてるかい?」
ブーンは携帯電話の画面を確認する。
( ^ω^)「バッチリだお!」
そのときカウンターテーブルの機械がピーッと鳴り、紙が一枚出てきた。
(´・ω・`)「いよいよだ・・・。今回の規定時間は・・・」
ショボンは紙を手に取ると、書かれている文字を読んでいく。
- 132 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:11:47.01 ID:f7ofl48/0
- (´・ω・`)「55時間・・・2日と7時間か・・・下層にしては随分と長いな・・・」
('A`)「55時間もあるのか?」
川 ゚ -゚)「どうやら長旅になりそうだな」
(´・ω・`)「ん、いや初回だから長めに設定されているのかもしれない。とにかく腕時計に時間を設定しておいてくれ」
ξ゚听)ξ「わかったわ」
(´・ω・`)「扉が開いたらすぐに時間をスタートさせるんだ」
( ^ω^)「はいだお」
('A`)「なあ、それにどんなダンジョンとか書いてねーのか?」
ドクオはショボンの持っている紙を指差す。
- 133 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:12:44.48 ID:f7ofl48/0
- (´・ω・`)「ダンジョンに関する情報はここには書かれてない。規定の時間と登録メンバー表、後はルールの確認さ」
ショボンはドクオに紙を渡すと扉のほうへ歩いていく。
('A`)「そうか・・・誰か見る?」
川 ゚ -゚)「見せてくれ」
ξ゚听)ξ「先ドアのとこ行ってるわね」
( ^ω^)「ブーンも行ってるお」
- 135 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:14:55.50 ID:f7ofl48/0
- 5人が扉の前へと集まった。
開始時刻まであと15分。
川 ゚ -゚)「ところでショボン、気になる事があるんだが」
クーはトイレに向かったショボンの後を追い、話しかけた。
(´・ω・`)「なんだい?」
川 ゚ -゚)「ホントに最上層ダンジョンとやらをクリアすれば、ここから逃がしてくれるのか?」
(´・ω・`)「なぜそんなことを聞く?」
川 ゚ -゚)「ここで行われていることは犯罪だ。意に反する身体の拘束。他にも色々と違法な事が行われているのは想像に難しくない」
(´・ω・`)「・・・そうだね」
川 ゚ -゚)「私はカバンの中にデジカメを持っている」
(´・ω・`)「・・・・・・・」
- 137 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:16:23.75 ID:f7ofl48/0
- 川 ゚ -゚)「これがどういうことだが分かるだろう?」
(´・ω・`)「ああ・・・・」
川 ゚ -゚)「さっきブーンがこの部屋を携帯でカメラを撮った。その気になればダンジョンの中や職員とやらの顔も記録に残せる」
- 138 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:17:54.23 ID:f7ofl48/0
- (´・ω・`)「・・・それについてはね、色んな憶測が飛び交っている。例えば地上へ出る前に記憶を消されるだとかね」
川 ゚ -゚)「記憶を消されるだと・・・? 漫画の読みすぎじゃないのか? 人間の脳は簡単にいじれるほど単純じゃないんだぞ?」
(´・ω・`)「まあただの仮説さ。誰も真実は知らない。最上層をクリアした者がどうなるのかはね」
川 ゚ -゚)「・・・・・・・」
(´・ω・`)「もっとも今回のダンジョンから帰ってくるころには、君の考えも多少は変わってると思うよ」
川 ゚ -゚)「どういう意味だ・・・・・・・」
(´・ω・`)「じゃあ、もれそうだから失礼するよ」
ショボンはそう言うとトイレのドアを閉めた。
- 139 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:19:17.74 ID:f7ofl48/0
- クーは扉の前へと戻る。
( ^ω^)「あーなんかドキドキしてきたお」
('A`)「お前さっきまで一番リラックスしてたじゃねえか」
ξ゚听)ξ「あーやだ緊張ってうつるからヤなのよね」
川 ゚ -゚)「確かに地下4000メートルにこんな巨大建築物を築ける技術力は驚異的だがしかし・・・」
('A`)「何ブツクサ言ってんの?」
川 ゚ -゚)「ん・・・いやなんでもない」
( ^ω^)「手のひらに人って3回書いて飲み込むといいらしいお」
川 ゚ -゚)「緊張などしていない!」
('A`)「おい・・・動き出したぞ」
エレベーターはかすかな振動とともに動き出していく。
- 141 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:21:06.49 ID:f7ofl48/0
- ξ゚听)ξ「・・・上よ。上昇してる」
( ^ω^)「とうとうかお・・・」
(´・ω・`)「さてみんな廊下の一番後ろまで下がっててくれ」
ショボンはハンカチで手を拭きながら扉の前へ立つ。
川 ゚ -゚)「どんなところなんだ・・・ダンジョンとやらは・・」
4人はショボンの指示通りに、廊下の後ろで待機している。
(´・ω・`)「どんな状況に陥っても希望だけが持ち続けるんだ。絶対にあきらめるな」
ショボンはホルスターからジグ・ザウエルを取り出し構えた。
川 ゚ -゚)「安全装置」
(´・ω・`)「おっと・・・。ははは、この瞬間だけはいつになっても慣れないね」
ショボンは苦笑いしながら、銃の安全装置を解除した。
- 143 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:23:40.54 ID:f7ofl48/0
- ドアの上部についている開閉ランプが、赤く点滅し始めた。
(´・ω・`)「みんな腕時計のカウントダウンをスタートさせて」
4人は一斉に腕時計のスタートボタンを押す。
(´・ω・`)「さあ来い・・・。必ず全員でここに戻ってきてやる・・・」
ショボンは銃口を扉に向けた。
川 ゚ -゚)「開きだしたぞ」
開閉ランプの点滅が終わり、緑色に変わる。
扉が左右にゆっくりと割れ始めた。
同時に冷ややかな空気がすっと流れ込んでくる。
- 145 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:25:31.49 ID:f7ofl48/0
- (´・ω・`)「・・・・ここは」
開き始めたドアの隙間から、外の景色が見えてきた。
それを見たショボンの動きが一瞬止まる。
(´・ω・`)「まさか・・・ここは・・・下層なのに・・・いきなり・・・クソッ!」
('A`)「あ・・・どうしたんだよ?」
(´・ω・`)「いいか! よく聞いてくれ! 背負っている荷物はここに置いていく!」
ξ゚听)ξ「え・・・でも水とか食料とかは・・・?」
(´・ω・`)「頼むから言う通りにしてくれ!」
ショボンの切羽詰った声に、皆はあわてて背負っていたデイバッグを床に置いた。
- 148 名前:
◆X7SXtDCjvQ :2006/12/30(土)
23:29:27.47 ID:f7ofl48/0
- (´・ω・`)「扉が開いたら急いで左の通路へ走ってくれ! 突き当たりの階段を駆け上がるんだ!」
ショボンのどなり声が響く。
(;^ω^)「なんだお? 何かヤバイのかお?」
(´・ω・`)「質問は後だ! 先頭はドクオ、最後に僕が行く! 早く扉の前へ来るんだ!」
('A`)「お、おう」
川 ゚ -゚)「もうすぐ全部開くぞ」
外の景色の全貌が見えてくる。
ξ゚听)ξ「・・・なにここ・・・美術館?」
( ^ω^)「写真館じゃないかお・・・?」
扉は完全に開いた。
(´・ω・`)「走れ!!!」
ショボンの声に押されるように4人は外へと飛び出した。