5 名前:第八話 ◆KAKASHIqlM :2008/04/20(日) 23:20:42.59 ID:ftYoP8fV0
('A`)「今夜も大分冷えるな」

そう言いながらドクオが店に入ってくる。
僕はいつものセリフで彼を迎えると、その前にテキーラのグラスを置いた。

(´・ω・`)「もう、今年も終わりだからね。
       いろんなことがあった分、とても感慨深いものがあるね」

('A`)「確かにな……、この店にも大分世話になったな。
    そういや今日は、長岡はいねぇのか?」


6 名前:第八話 ◆KAKASHIqlM :2008/04/20(日) 23:21:18.80 ID:ftYoP8fV0
いつもならドクオが来ると顔を出す長岡だったが、その日は実家に帰るだかで店には出ていなかった。
そのことを伝えると、「そういやそうだったな」と口では何でもないように言いながらも、表情はあからさまに落胆していた。

(´・ω・`)「まぁ、こんな日に好き好んでうちに来る人も少ないでしょ。
       内藤達が後で寄るとは言ってたけど」

('A`)「まじかよ、あいつら来るのか?
    それじゃあ、俺は早めに帰ろうかな……」

真顔でそう言ったドクオを後目に、ドアの向こうからは特徴的な語尾が聞こえてきていた。

9 名前:第八話 ◆KAKASHIqlM :2008/04/20(日) 23:24:22.16 ID:ftYoP8fV0
( ^ω^)「本当に、今日は時間がとれて良かったお!」

ξ゚听)ξ「別にあんたなんかと一緒じゃなくても良かったんだけどね」

そう口を尖らせて言う彼女も、まんざらでもないような表情でグラスを傾ける。
ドクオがカウンターの端でグチグチと文句を言っていたが、僕が彼の前に無言で新しいグラスを置くと、おとなしくなった。

(´・ω・`)「今日はデートを楽しめたようで、良かったよ」

ξ///)ξ「べ、別にそんな大したものじゃないわよ!」

窓から外を見るとちらちらと雪が降っており、聖夜を演出するのに一役買っていた。
内藤がビールをあおりながら言う。
11 名前:第八話 ◆KAKASHIqlM :2008/04/20(日) 23:28:18.01 ID:ftYoP8fV0

( ^ω^)「でもこんな大事な日まで仕事漬けだと、ちょっとかわいそうだお。
       もっと息抜きしながらじゃなくても、大丈夫なのかお?」

ξ゚听)ξ「まぁ、もう大分楽になったけどね。
      それでもまだ気は抜けないわよ」

そうやって話す二人を見ながら、ドクオが口をはさむ。

('A`)「でも、もうどれくらいあってなかったんだ?
    なんか、今月は今日までずっと会ってなかったらしいじゃねぇかよ」

ツンは若干表情を暗くした。
その大きな瞳でドクオをにらみつける。
13 名前:第八話 ◆KAKASHIqlM :2008/04/20(日) 23:30:12.54 ID:ftYoP8fV0
ξ゚听)ξ「そんなこと言ってもしょうがないでしょ。
      だいたいあんた、クーとはどうなってるのよ!
      まどろっこしいったらありゃしないわ!!」

('A`)「……あん?お前らの方こそ、さっさと身を固めろよ。
    いったい何年になるんだよ?」

ξ゚听)ξ「そ、それは別問題でしょ!」

( ^ω^)「僕は今すぐにでも結婚したいお!」

内藤がそう言うとツンは真赤になる。それを見て、僕らは声をあげて笑う。
彼女はさらに顔を赤くして強く肩をたたいたが、それでも口元は緩んでいた。
16 名前:第八話 ◆KAKASHIqlM :2008/04/20(日) 23:33:29.15 ID:ftYoP8fV0

しばらくの間は四人で飲んでいたが、やがてツンが席を立つと、内藤がポツリと漏らした。

( ^ω^)「……やっぱり、結婚とかは難しいものなのかお?
       最近はそういうことばっか考えちゃうお」

('A`)「お前にしちゃ、随分と弱気じゃねぇか。
    好き勝手に走ってきたんだろう?
    そのまま走り続ければいいだろ」

ちょっと言いすぎな気もしたが、内藤はその言葉に何か思うところがあるようだった。
一気にグラスを空にすると、静かに切り出す。
25 名前:第八話 ◆KAKASHIqlM :2008/04/20(日) 23:38:21.87 ID:ftYoP8fV0

( ^ω^)「確かに僕は、いままで好き勝手にやってきたお。
       上手く行ってるからいいもの、大学で勝手な研究してられるのも、結局は運がいいからだお」

新しいグラスを置いた僕に一言礼を言ってから、また話しだす。

( ^ω^)「それで僕が失敗したりするのはいいんだお。
       でもそのせいで、ツンに寂しい思いをさせたりするのは嫌なんだお。
       勝手な話だとは分かってるけど、やっぱりつらいお」

(´・ω・`)「確かに、彼女のことも絡むと大変だね。
       自分一人の問題じゃないと、色々と考えなきゃいけないことは増えるし」


26 名前:第八話 ◆KAKASHIqlM :2008/04/20(日) 23:39:05.22 ID:ftYoP8fV0

『でも』、と前置きしてから内藤は続ける。

( ^ω^)「結局この道を選んだのは僕なんだお。
       それなのに、こんな泣き言は言ってちゃダメな^んだお」

('A`)「まぁ、お前がどう思うかは勝手だけどよ。
    とりあえず本人の意見も聞いてみたらどうだ?」

そう言ってドクオが指さす方を見ると、ツンが立っていた。
どこか嬉しそうに、彼女は大声で言う。


29 名前:第八話 ◆KAKASHIqlM :2008/04/20(日) 23:40:30.39 ID:ftYoP8fV0

ξ゚ー゚)ξ「別にあんたなんかがいなくても平気よ。
      そう言うところも含めて、私はあんたが好きなんだからね」

ツンのその言葉を聞くと、あからさまなほどに内藤の表情は綻んだ。

(* ^ω^)「ありがとうだお!好きって言ってくれてすごい嬉しいお!!
       ツンは強がってるけど、本当は寂しいってわかってるお。
       だから、これからもそばにいてほしいお!!」

ξ///)ξ「べ、別にそんなことないわよ!」



30 名前:第八話 ◆KAKASHIqlM :2008/04/20(日) 23:42:56.74 ID:ftYoP8fV0

僅かにBGMが聞こえる程度の店内で、僕とドクオの二人は静かに飲んでいた。

('A`)「なんか。やっぱりあいつら仲いいな。
    見てるこっちが恥ずかしいわ」

(´・ω・`)「君だって、クーがいるだろう?」

('A`)「そうだけどよ……」

ドクオは頭をポリポリと掻く。


31 名前:第八話 ◆KAKASHIqlM :2008/04/20(日) 23:44:08.06 ID:ftYoP8fV0

('A`)「まぁ、俺も俺なりに悩んでたんだよ。
    仕事も忙しいし、寂しい思いをさせることもあるだろうからな。
    今日のあいつの言葉で、もう吹っ切れたわけだが」

そう言ってドクオは、僕の肩を小突く。

(´・ω・`)「選んだ選択肢が正しいかなんて、誰にも分かんないさ。
       まぁ、きっとそれなりの大変さがあったとしても、なんとかなるさ。
       みんな、一人じゃないんだからね」

('A`)「ああ、もしもの時は助けてくれよな」

(´・ω・`)「もちろんさ」

そう彼に言うと、彼はニヤッと笑う。
コートを手にとると、立ち上がった。
37 名前:第八話 ◆KAKASHIqlM :2008/04/20(日) 23:48:53.68 ID:ftYoP8fV0
何の代償もなく得られるものなんてないと思うが、それでもこの友情は変わらないと思った。
そして、彼らの間の愛も。

そんなくさいことを考えていると、ドクオが言う。

('A`)「まぁ、また来るわ、勘定はつけといてくれ」

(´・ω・`)「わかったよ、それじゃね」

間の悪さに少し愉快な気分になりながらも、彼を見送った。

とても、良い気分だった。

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