- 2 :第四話
◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月)
22:47:32.28 ID:+4cnrabj0
- その日の晩は、僕の店にはドクオの他にも2,3人のお客さんが来ていた。
しかし、日付が変わったくらいの時間に、僕は“CLOSED”も看板を出した。
もう店仕舞いの時間かと不満げなお客さんたちには、謝罪の言葉とともに、
『貸切なんです』と伝えて帰ってもらった。
(´・ω・`)「申し訳ないことしちゃったな……」
- 4 :第四話
◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月)
22:47:47.17 ID:+4cnrabj0
- 僕とドクオ、そしてバイトの長岡を残して、空っぽになった店内を眺めてつぶやく。
_, 、_
( ゚∀゚)「こんな時間から貸切なんですか?」
訝しがる彼に、少し微笑みながら言う。
(´・ω・`)「まぁ、彼は特別だからね。
そんなことよりも、長岡君は野球をやってたよね」
- 5 :第四話
◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月)
22:48:09.20 ID:+4cnrabj0
- 突拍子のない僕の質問に、長岡はさらに眉をひそめる。
_
( ゚∀゚)「大学では準硬ですけど、野球暦は小学校からですよ。
それが何か関係あるんですか?」
('A`)「それじゃあ、結構面白いことになるかもな」
その光景がつぼにはまったのか、ドクオはこらえきれずに噴出した。
ドクオをたしなめつつも、僕も自然と顔がにやけてしまっていた。
_, 、_
( ゚∀゚)「ちょっと!いったい何なんですか!?」
- 7 :第四話
◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月)
22:48:36.59 ID:+4cnrabj0
- ちょうどそのとき、空気を呼んだかのようにドアが開く。
あまりにも勢いよく開かれたせいか、ドアベルの音はその来訪者が次に発した言葉に、すぐにかき消されてしまった。
(,,゚Д゚)「なんで閉店の札がかかってんだ、ゴルァ!
来るって電話しといたじゃねぇか」
(´・ω・`)「やぁ、バーボンハウスへようこそ。
あの札をかけたのは、他のお客さんと八合わないように配慮した結果なんだけどね」
僕は笑いながら彼に言った。
- 8 :第四話
◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月)
22:48:59.23 ID:+4cnrabj0
- _
( ゚∀゚)「え、ギコ?VIPスターズの?ちょ、何でここに?」
混乱している長岡を無視して、僕はギコに椅子を勧める。
(´・ω・`)「とりあえずこのこのテキーラはサービスだから、まず飲んで落ちついて欲しい」
(,,゚Д゚)「おう!というか、本当にその言葉使ってるんだな。
恥ずかしいとかは思ったりしねぇのか?」
僕ははにかみながら、『もう慣れたよ』と答える。
相変わらずのマイペースぶりに、少しどきどきしながらも、それが懐かしくもあった。
- 10 :第四話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月) 22:49:48.49 ID:+4cnrabj0
- _
( ゚∀゚)「あ、あの!」
意を決したというかのように、長岡がギコに向かって話しかける。
_
( ゚∀゚)「VIPのギコ選手……ですよね?」
(,,゚Д゚)「おう!それがどうかしたか?」
_
( ゚∀゚)「あの!もしよければサインくd」
(´・ω・`)「あ、長岡君、適当に料理作ってー」
- 11 :第四話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月) 22:50:04.10 ID:+4cnrabj0
- 恨めしげに見つめてくる長岡が厨房に引っ込むと、ギコが話し始める。
(,,゚Д゚)「すまんかったな、ずっと来れなくて。
VIP市には何回か来てたんだが、時間がなくてよ」
('A`)「まったくだ。俺なんか毎日来ているんだぞ」
(;´・ω・`)「それはドクオだからだと思うけどね」
その言葉にドクオは脹れるが、ギコが豪快に笑うのを見て気分をよくしたのか、
笑いながら『お前のためだろうが』と言ってくる。
- 12 :第四話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月) 22:50:34.92 ID:+4cnrabj0
- (,,゚Д゚)「そういや、ショボンに会うこと自体かなり久しぶりかもな。
なかなか飲み会にも来てなかったみたいだしよ」
(´・ω・`)「それは、まぁ、いろいろ事情があってね」
僕は頭を掻きながら答える。
僕がみんなの集まりにあまり顔を出さなかったのは、自身が感じていた劣等感が原因なのだが、
野球選手になるという夢を叶え、さらにはタイトルを取るほどに活躍しているギコに対しても、
羨望に混じったその思いがあった。
('A`)「ショボン、おかわり」
その声で彼に向き直ると、ドクオが心配そうな顔でこちらを見ていた。
僕は『心配ないよ』と言う代わりに微笑んで、彼に次のジンを注いだ。
- 14 :第四話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月) 22:51:00.94 ID:+4cnrabj0
- _
( ゚∀゚)「こちら、おつまみの盛り合わせです。
あの、ギコさん、サイn」
(´・ω・`)「あ、氷切れちゃった。
長岡君、悪いんだけど裏から出してきてくれない?」
_, 、_
( ゚∀゚)「……」
(´・ω・`)「嘘だよ。今日はもうあがっていいよ。
いま試験期間なんだよね、シフト入れちゃってごめんね」
_, 、_
(; ゚∀゚)「……」
(´・ω・`)「ごめんごめん、冗談だって。
今日はギコが出してくれるそうだから、一緒に飲もうか」
- 15 :第四話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月) 22:51:47.59 ID:+4cnrabj0
- その後に『もしギコがよければだけど』と付け加えたが、当然のように彼が断ることはなかった。
それからは僕の店にはめずらしい、男四人だが騒がしい宴会となった。
_
( ゚∀゚)「ギコさんマジスゴいっす!憧れっす!!」
(,,^Д^)「ギコハハハ!そう言ってくれると嬉しいぜ!!」
豪快に笑うギコを見ていると、こちらまで楽しくなってきて、自然と笑みがこぼれていた。
すると同じように笑っていたドクオが、ギコの肩をドンドンと殴りながら言う。
- 16 :第四話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月) 22:52:00.86 ID:+4cnrabj0
- ('A`)「でも、すげぇよな、ギコは。
子供の頃からの夢をしっかり叶えたんだからよ。」
その言葉にギコは首をかしげるようにする。
(,,゚Д゚)「そうか?でもドクオだって弁護士になるの、夢だったんだろ?」
('A`)「そうだけどよ、俺だって子供の頃には野球選手って憧れてたしよ。
そういう最初に持った夢を叶えられてるってのが、すごいなと思ったんだよ」
(´・ω・`)「確かにね。僕もギコはすごいと思うよ」
- 18 :第四話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月) 22:53:10.64 ID:+4cnrabj0
- 何倍飲んでも赤くならなかった顔を赤らめて、照れ隠しだろう、ギコはまた豪快に笑った。
('A`)「それを考えたらさ、ギコってすげぇ成功者なのかって思えてくるわけよ。
別に俺は弁護士が嫌なわけじゃないけど、お前は本当にやりたかったことやれてるわけじゃん。
それで栄光とか、財産とか、いろいろと得てるしよ」
だがそれを聞くと、さっきまで騒がしかったギコが急に黙ってしまった。
ドクオは気づかずに長岡と笑いあっているが、僕はなぜか背中を冷や汗が流れるのを感じた。
一瞬遅れて、二人がギコに気づいて息を飲んだ。
ドクオがおそるおそるその顔を覗き込むと、ギコはびっくりしたようで『おう』と小さく声を上げた。
- 19 :第四話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月) 22:53:25.02 ID:+4cnrabj0
- (,,゚Д゚)「俺、いまドクオに言われたことを聞いて思ったんだけどよ」
彼にしてはめずらしく、ぽつぽつと喋りだす。
(,,゚Д゚)「たぶんよ、夢は叶えるものなんだけど、叶えてそれで終わりじゃないんだよな。
一個叶えたら、叶えれたとしても、また次のが出てくるんだよ。
内緒だけど、来期はメジャーに行こうかなと思ってるくらいだ」
ゆっくりと一つ一つ言葉を選ぶように続けていく。
(,,゚Д゚)「たしかドクオは、『弱い人を助ける』って言って、弁護士になる夢を持って、実現した。
これって、ある意味終わりのねぇ夢だから、そういうことって少ないかも知れねぇけど。
夢に終わりはないから、だから、あー」
- 20 :第四話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月) 22:53:37.15 ID:+4cnrabj0
- (,,^Д^)「ギコハハハ!!考えてしゃべるなんて、慣れないことするもんじゃねぇな!!
とりあえず、まぁ、そういうことだ」
笑う彼を見つめて、僕もまた考える。
彼の言いたいことは、なんとなくだが伝わってきた。
そしてそれは、『自分のバーを開く』という夢を叶え終えた自分にも当てはまる。
だからこそ―――――
- 21 :第四話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/31(月) 22:53:49.49 ID:+4cnrabj0
- 僕は、湿っぽくなった空気を戻そうと、テキーラを瓶から直接一気飲みしていたギコに言う。
(´・ω・`)「僕の夢は、これからもたくさんの人を支えていくことだよ。」
店を持ったいまでは、その夢はもっと大きくなってしまった。
いったいどれくらいそれを叶えられるのだろう。
(,,゚Д゚)「俺だって、もっとみんなに夢を見せられるように頑張るぜ」
ニッと格好良く笑い、それから笑い出す。
それからその晩は、僕の店から笑い声が絶えることはなかった
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