93 名前:第三話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 12:50:41.81 ID:jnob0Use0
僕の店は春にもなると固定客も増え、売り上げも着々と伸びていた。
このことはほぼ毎晩来てくれている、ドクオの貢献も少しはあるのだろう。

他にお客さんが一人も来てくれない夜でも、彼のおかげで退屈な思いをして過ごさずに済んだ。
誰も来ない店で、一人ぼっちで来るかどうかも分からない客を待つというのは、想像するのも寂しい状況だ。


94 名前:第三話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 12:50:53.15 ID:jnob0Use0
また、ドクオも一人で来ることばかりではなかった。
確かにほとんどの場合は彼一人での来店であったが、時には彼の職場の友人を連れてくることもあった。

だがしかし、今日の彼の連れはいつもとは少し違った間柄であるように思うし、僕自身、彼女のことはよく知っていた。

川 ゚ー゚)「まぁ、なんだ。遅くなってしまったが、開店おめでとう」


95 名前:第三話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 12:51:06.32 ID:jnob0Use0
(*´・ω・`)「うん、ありがとう」

ドクオの隣で、頬を赤らめながらそう言ってくれた彼女に、言葉を返す。
照れのせいからか、あるいはアルコールのせいか、妙に顔が火照って感じられた。

('A`)「そういや、クーはショボンの店に来るの初めてなんだもんな」


96 名前:第三話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 12:52:04.45 ID:jnob0Use0
川 ゚ー゚)「そうだな。私も早く来たいと思ってたんだ。
     ショボンの子どもの頃からの夢が実現したのかと思うと、一刻でも早く帰国してやりたい衝動にかられたよ」

微笑みながら彼女はそう続ける。
僕はやはり照れながら、彼女に注文されたカクテルを差し出す。

クーもまた、僕らの昔からの友人だ。
今は国際線の客室乗務員という仕事のせいもあり、日本にいることすら少なくなっているという。


97 名前:第三話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 12:52:14.87 ID:jnob0Use0
僕はそんな限られた時間の中で、彼女が店に来てくれたことを嬉しく思うと同時に、申し訳ない気もしていた。
自然と僕も無口になるが、そんな気持ちは彼女の最近の冒険譚(?)を聞いているうちに、どうでもよくなっていた。

川 ゚ー゚)「まぁ、ピラミッドの内部についてそんなところか。
     君らも興味がわいたなら、一度入ってみるといい」

(*´・ω・`)「ああ、機会があればね」

(;'A`)「なかなか日本に帰って来ないと思ったら、そんなことやってたのか……」


98 名前:第三話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 12:52:57.18 ID:jnob0Use0
そんな他愛もない話をしていると、ふっとクーが一息つく。
そして、微笑みながら言う。

川 ゚ー゚)「こんなことをやってられるのも、ドクオやショボン達のお陰だがな。
     君たちが私の心の支えとしてあるから、どんなことだってできるのさ」


99 名前:第三話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 12:53:07.61 ID:jnob0Use0
聞いているとこっちが恥ずかしくなるようなセリフを、まるで表情に出さずそんなことを言う彼女の素直さに昔を思い出しながら、
僕はクーの言うような“支え”に本当になれているのかと、思いを巡らす。




―――――きっと、出来ているのだろう。


100 名前:第三話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 12:53:17.99 ID:jnob0Use0
ドクオはこの店に、安らぎを感じてくれている、と思う。
店に来てくれるお客さんは、みんなこの店を居心地良く思ってくれている、はずだ。
自信を持って断言することなんてできないけど、でもそう感じられた。

クーがドクオに支えられているように。
僕も誰かを支えられている。
僕の店も、誰かを支えられている。

段々と、そんな自信がついてきていた。


101 名前:第三話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 12:53:28.33 ID:jnob0Use0
そして、僕自身も。

きっとこの店に支えられてるんだろう。

この店のおかげ、この店と関わっているたくさんの人のおかげで、今の僕は支えられている。


102 名前:第三話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 12:53:40.11 ID:jnob0Use0
('A`)「……ショボン!おい、ショボン!!」

不意にドクオの声で現実に引き戻される。
何事かと彼を見れば、空のグラスを目の前でちらつかせながら、次の酒を催促していた。

(´・ω・`)「次でもう6杯目だよ。その辺にしといたら?
       クーが帰って来てて、嬉しい気持ちもわかるけどさ」


103 名前:第三話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 12:53:50.10 ID:jnob0Use0
そう言うとドクオは顔を真っ赤にして言い返した。

(//A/)「ば、馬鹿野郎!そんなんじゃねぇよ!!」

こちらに向かって放たれた拳の突っ込みを軽く受け流すと、僕は改めて彼らを見つめる。
そして、おそらく昔と変わらないであろう言葉を、クーに贈った。


104 名前:第三話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 12:54:01.62 ID:jnob0Use0
(´・ω・`)「クー」

川 ゚ー゚)「ん?なんだ?」

(´・ω・`)「ドクオと末長くお幸せに」

彼女もまた、昔と変わらない言葉を言ったんだろう。

川 ゚ー゚)「当然だ」

戻る

inserted by FC2 system