6 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:12:16.56 ID:jnob0Use0
『久し振りに高校の時のメンツで飲むから、来い』とドクオから連絡が来たときは、正直あまり乗り気ではなかった。

(´・ω・`)「―――――“居酒屋う゛ぃっぷ”、ここだな」

“高校のときのメンツ”というのは、当時特に仲の良かった例のグループだということは予想がついたが、
そのメンバーの中では一人だけ中小企業に就職しているという劣等感からか、いつの間にか彼らを避けるようになってしまっていた。


7 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:12:32.78 ID:jnob0Use0
( ^ω^)「おいすー」

ξ゚听)ξ「なによ、遅かったじゃないの」

('A`)「お、これで全員揃ったな」

(;´・ω・`)「あ、うん……、久しぶり」

あので集合場所の小洒落た居酒屋に想像していたメンバーの半分しかいなかったことで、肩透かしを食らったような気分になった。


8 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:13:01.55 ID:jnob0Use0
(;´・ω・`)「えっと……、今日はここにいる4人だけなの?」

('A`)「ああ、みんな仕事だとよ。よく考えたら自由の利く仕事って俺らぐらいだしな。」

その言葉はあまりみんなには会いたくなかった僕には嬉しくもあり、同時に自分の仕事を責められているようで辛かった。
『お前は結局大したことない会社、仕事で一生を終えるんだな』、と。

そのような劣等感を最初はなかなか振り払うことができなかったが、アルコールが回るにつれだんだん気にならなくなってきていた。
おそらくブーンとドクオが昔から特に仲の良かった友人だったせいもあるのだろう。
まるで昔に戻ったかのように話は弾んでいった。


9 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:13:33.45 ID:jnob0Use0
(*´・ω・`)「えー!?そんなこと言ったっけ?覚えてないなぁ……」

(*'∀`)「お前があの時ああいう風に言ってくれてなかったら、俺はきっと今頃どっかで野垂れ死んでるぜ」

(* ^ω^)「確かにドクオはあれから人が変ったように勉強してたお!」

ξ*゚ー゚)ξ「あんたは相変わらず馬鹿やってけどね」

(; ^ω^)「ちょwwwそれでも今こうして立派にやってるお!!」


10 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:14:19.01 ID:jnob0Use0
(*'A`)「でもお前、昔っから勉強だけは出来てたしな。
    聞いたところによると春から助教授になるらしいじゃねぇか」

(* ^ω^)「たまたま上の席が空いただけだお。
       僕のやってる分野は人が少ないから、運が良かったんだお!」

ξ*゚ー゚)ξ「そんなこと言って、ドクオの方の仕事はどうなのよ?
      弁護士も5年目になると、やらなきゃならない仕事も増えてくるんじゃないの」

(*'∀`)「まぁな。でも別に大したことはやってないし、それなりに時間はあるぜ」

(* ^ω^)「おっお!でもドクオかなり評判いいって噂だお!!」


11 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:14:58.70 ID:jnob0Use0
(*'∀`)「まぁ、俺なんかまだまだだけどな。
    それよりもお前らだよ、いつになったら結婚するんだ?」

ξ////)ξ「ちょっと!何言ってるのよ!!」

(* ^ω^)「ツンの会社がある程度軌道に乗ったらと思ってたけど、なかなか忙しくて時間が取れないんだお」

(*'∀`)「まぁ、仲人は俺に任せときな!」

最初は昔話から、懐かしく感じるものからあまり覚えていないものまで。
楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。

そして、話はいつの間にかそれぞれの近況報告へと変わっていった。
13 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:15:35.50 ID:jnob0Use0
ξ*゚ー゚)ξ「そういえば、しぃも今度独立するらしいわね
      みんなで食べに行きましょ」

(* ^ω^)「クーさんは今はどの国にいるんだお?」

(*'∀`)「ヨーロッパのどこかじゃね?」

(; ^ω^)「適当すぎるお……」

(*'A`)「そういや、ショボンは最近どうなんだよ?」

そういった話題になった時から嫌な感じはしていた。
実際に自分にその質問を浴びせられた時に、その言いようのない息苦しさは頂点に達した。


14 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:16:14.78 ID:jnob0Use0
(´ ω `)「別に、大したことないよ。あの会社で……いつも通りさ」

何とかそれだけ答える。
内心では、自分の仕事にもっと土足で踏み込んで来られはしないかと怯えていた。

だが意外にも、ドクオは特に何もなかったかのようにただ一言、『そうか』と言ったのみだった。

それが逆に自分の心を刺激した。

気づいた時にはその胸の内を、感情のままに溢れ出させていた。


15 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:17:24.32 ID:jnob0Use0
(´;ω;`)「『そうか』だって!?僕の胸の内も知らないくせに!!
       そうやって別に気にしてない風に言っていても、心の中では僕のことを馬鹿にしてるんだろ!?

(; ^ω^)「……」

ξ;゚听)ξ「そ、そんなこと……」

(´;ω;`)「別にそれでもいいさ!!笑いたきゃ笑えよ!!
       三流の企業で、対して面白味もない人生を送って、一生を終えるんだろうと嘲笑えばいいさ!!!」

僕はその言葉を言い終わるか終わらないかのうちに、思いっきり殴り飛ばされていた。


16 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:18:15.34 ID:jnob0Use0
(#'A`)「てめぇッ……!!」

目の前には拳を震わせるドクオの姿。
彼らに向け怒鳴り散らしたことによるせいか、頬に走る痛みのせいか、いつしか酔いは完全にさめていた。

(#'A`)「ブーン、すまんがあとは頼んだ。俺はもう帰る」

そういうとドクオは札入れを取り出し、何枚か抜き取ってテーブルに置くと、店から出て行った。
ブーンはドクオに向かって何か言ったようだったが、僕に耳には届くことはなかった。

僕はただ、茫然と宙を見つめていた。


17 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:18:30.92 ID:jnob0Use0
数十分か、あるいは数分だろうか。
しばらくその場にいる誰も言葉を発することはなかったが、やがてツンが静かに話しだした。

ξ゚听)ξ「ドクオ、あなたのことを心配して今日みんなを集めようとしたのよ」

(; ^ω^)「ツン!それは言わない約束じゃn」

ξ゚听)ξ「あんたはちょっと黙ってて」

(; ^ω^)「……」


18 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:18:46.54 ID:jnob0Use0
ξ゚听)ξ「あんたの会社に、渡辺って子いるでしょ?その子、私の大学の同級生なのよね。
      最近あなたが元気ないって聞いたことをドクオに教えたら、なんか張り切ってね。
      『今度は俺があいつを助ける』、……って、ちょっと聞いてるの!?」

(´ ω `)「……」

( ^ω^)「……さっき話してた、ドクオがショボンに救われたって話は本当のことだお。
       『君にしかできないことをやりなよ』っていうショボンの言葉のおかげでここまで来れたって、いっつも言ってるお」

(´ ω `)「……」

( ^ω^)「それに、僕らみんな、何かしらショボンに救われてるんだお。
       ショボンの言葉に、支えられているんだお。」



( ^ω^)「―――――だから、さっきみたいな寂しいこと、もう言わないでほしいんだお」


19 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:19:02.15 ID:jnob0Use0
僕はとんでもないことをした。
僕のことを想ってくれていたドクオを、みんなを裏切ってしまった。

(´ ω `)「……ブーン、ツン」

僕は顔を上げ、二人を見つめる。

(´;ω;`)「本当にごめん!!」

( ^ω^)「気にすることないお!僕らはずっと友達だお!!それは変わらないんだお!!」

ξ゚听)ξ「そ、そうよ。あんたが頼りたいんだったら、別に頼ってきてもいいんだからね!」


20 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:20:03.00 ID:jnob0Use0
(´;ω;`)「僕、ドクオに謝らなくちゃ!!」

( ^ω^)「それがいいお!
       ドクオもきっと分かってくれるお!!」

ブーンの言葉に背中を後押しされ、僕は店を飛び出した。
腕時計を見ると、僕が叫んだであろう時刻からまだ十分と経っていなかった。

この様子ならそれほど遠くまでは行っていないだろう。
僕は駅までの道を走った。


21 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:20:21.83 ID:jnob0Use0
僕の心にはいろんな思いが渦巻いていた。
会ったら何と言って謝ろうか。
彼は許してくれるだろうか。

走りながら、細い路地裏を覗いてはドクオがいるかどうかを確認したが、彼を見ることはなかった。
駅までたどり着いたが、そこにはちらほらと酔っ払いがいる程度で、肝心のドクオの姿はない。

(´;ω;`)「……」

僕はここまで走ってきた疲れのせいか、一気に膝の力が抜け、その場にへたり込んでしまった。

(´;ω;`)「ドクオ……もう行っちゃったのかな……。
       僕が完全に悪かったのに……せめてドクオに……一言でも謝りたかった……」

涙は、次から次へと溢れ出てきた。


22 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:20:37.27 ID:jnob0Use0
(´;ω;`)「ドクオ……」

(;'A`)「何?」

(´;ω;`)「!?」

(;'A`)「いや、そこまで驚かんでも……」

いつの間にか隣には、ドクオが立っていた。


23 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:20:50.77 ID:jnob0Use0
(´;ω;`)「な、何で急にここに……」

(;'A`)「いや、さっきまで喫煙所で一服してたんだけど……。
    外に出てきたらなんか座り込んでる酔っ払いがいるから、助けようと思って近寄ったらお前だった」

(´;ω;`)「……」

僅かな静寂の後、ドクオがぷっと噴き出す。
一瞬呆気にとられてしまったが、僕も釣られて微笑み返す。

そしてしっかりとドクオに向き直り、言った。


24 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:21:06.99 ID:jnob0Use0
(´・ω・`)「ドクオ、ごめん。あと、ありがとう」

今度はドクオが一瞬呆気にとられたが、すぐにニッと笑って言う。

('∀`)「気にすんな、って言うか、殴っちまって俺の方こそごめんな。
    代わりに殴ってくれとは言わねぇけど」

(*´・ω・`)「じゃあ代わりに や ら な い か 」

('∀`)「死ね」

また殴られた。だが、今度は軽く。
そして今度は二人同時に笑いだす。

昔話に花を咲かせていた時よりも、昔に戻った気がした。


25 名前:第一話 ◆KAKASHIqlM :2008/03/29(土) 02:21:22.42 ID:jnob0Use0
結論から言うと、僕はそのあと会社を辞めた。

みんなに対する劣等感とかそういうのは関係なく、単にそれ以上にやりたいことができたからだ。
そしてたぶんそれは、自惚れかもしれないけど、僕にしかできないこと。

(´・ω・`)「やぁ、バーボンハウスへようこそ」

僕は今日も、みんなのために店を開く。

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