172◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:10:14 ID:YGRMhMt.0
【Past of Velvet】
 
 
――世界歴・507年――
 
「そろそろ、来る頃かな」
 
「あぁ、いつもの子?」
 
「最近、毎日来てくれてるからね」
 
 
( <●><●>)「――――こんにちは」
 
 
「やぁ、いらっしゃい。ちょうど、君の話をしてたんだ」
 
「そろそろ来てくれる頃かなって」
 
( <●><●>)「ギリアストさん、ファシアさん、いつもお世話になっています」
 
「いやいや、こちらこそ」
 
「ほんと、しっかりしてるねぇ。まだ十歳だっけ? とてもそうは思えないよ」
 
( <●><●>)「ありがとうございます」

173◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:11:53 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)「林檎と芋を二つずつ、葱を一束、塩を一袋、小麦を二袋、いただけますか」
 
「はいよ。いつも偉いねぇ」
 
( <●><●>)「いえ。やるべきことをやっているだけです」
 
「他にもどこか、買い物へ?」
 
( <●><●>)「はい。エリジンさんのところで魚と、レイルスさんのところで花の肥料を」
 
「そうかぁ、大変だね。はい、これ商品。お遣いがんばってね」
 
( <●><●>)「ありがとうございます」
 
 
( <●><●>)(少し、遅くなってしまいましたか)
 
( <●><●>)(早く済ませないと。お母様の機嫌を損ねかねません)
 
 ・
 ・
 ・
175◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:14:21 ID:YGRMhMt.0
%) ^ー^)「ベルベット、お帰りなさい。お買い物はちゃんとできた?」
 
( <●><●>)「はい、お母様」
 
%) ^ー^)「魚は最後に買った?」
 
( <●><●>)「はい、最後に買いました」
 
%) ^ー^)「そう、偉いわね。先に買うと鮮度が落ちるからね」
 
%) ^ー^)「同じ失敗を繰り返さないのは大事なことよ。ベルベットが成長してくれて嬉しいわ」
 
( <●><●>)「はい。今後も気をつけます」
 
%) ^ー^)「それで、今日の試験の結果はどうだったの?」
 
( <●><●>)「試験は、不正解が一問」
 
%) ^ー^)「そう。一問だけだったのね」
 
 
%) ^ー^)「じゃあ、ご飯なしは一日だけね。この前より良くなったわね」
 
 
( <●><●>)「……はい」
 
%) ^ー^)「だけど本当は一問も間違えてはいけないわ。分かってる? あなたは文官の長になるのよ?」
 
%) ^ー^)「二年上の試験を受けているとはいえ、不正解なんて許されることじゃないの。分かってるわよね?」
 
( <●><●>)「はい、分かっています」
 
%) ^ー^)「じゃあ、まず庭を掃除して。終わったら寝るまで勉強ね」
 
( <●><●>)「はい、分かりました」

176◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:16:33 ID:YGRMhMt.0
 ・
 ・
 ・
 
( <●><●>)(今日の試験は、難しい問題ばかりでした)
 
( <●><●>)(不正解が一問で済んだのは、運に助けられたからこそ)
 
( <●><●>)(次は確実に、全問正解しなければ)
 
 
( <●><●>)(……雑草、固いですね)
 
( <●><●>)(抜かれまいと、抵抗しているのですか?)
 
( <●><●>)(……ようやく抜けました)
 
 
「やぁ、ベルベットくん」
 
( <●><●>)「ギリアストさん。先ほどはありがとうございました」
 
「いやいや、こちらこそ。庭掃除のお手伝いかい?」
 
( <●><●>)「はい」
 
「ほんと偉いねぇ。うちの息子なんか遊んでばかりなのに」
 
( <●><●>)「いえ、やるべきことをやっているだけですので」
 
「いつもそう言うけど、ほんと大したもんだよ。うちの息子にも見習わせたいね」
 
( <●><●>)「……見習うべきではありません」
 
「ん? 今なんて?」
 
( <●><●>)「いえ、なんでもありません。申し訳ありませんが、掃除に戻ります」
 
「あぁ、邪魔して悪かったね。またお店に来ておくれよ」
 
( <●><●>)「はい、また伺います。よろしくお願いします」
 
「それじゃあ、また」
178◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:18:59 ID:YGRMhMt.0
 ・
 ・
 ・
 
( <●><●>)(……今夜は、月明かりが少なくて、本が読みにくいですね)
 
( <●><●>)(しかし、勉強しなければ。試験で不正解があってはいけない)
 
( <●><●>)(満点を取りつづけなければ、きっとお母様は認めてくれません)
 
 
( <●><●>)(……少し、疲れてきました)
 
( <●><●>)(眠気も、ありますが……まだ、今日やるべき分が)
 
( <-><->)(終わって……いな……)
 
( <-><->)
 
 ・
 ・
 ・
 
―――― お父さん、明日は一緒に遊べますか?
 
―――― ベルベット。悪いなぁ、ちょっと勉強が足りてないから、時間がないかもしれない。
 
―――― そうなのですね。我が侭を言ってしまいました。
 
―――― いや、本当にすまない。今度こそ昇格を果たさないといけないからな。
 
―――― では私も、勉強を頑張ります。お母様に、褒めてもらえるように。

179◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:21:06 ID:YGRMhMt.0
 ・
 ・
 ・
 
―――― どうした、ベルベット。元気がないな。
 
―――― お父さん。実は、今日の試験の結果があまり良くなかったのです。
 
―――― そうか。まぁ、そういうときもあるさ。
 
―――― 本当は一番の成績を取って、期待に応えるべきなのに。申し訳ない限りです。
 
―――― お前はまだ子供なんだから、そんなに背負いこまなくていい。お父さんがもっと頑張るさ。
 
 ・
 ・
 ・
 
( <-><->)(……お父さん……)
 
%) ^ー^)「ベルベット?」
 
( <●><●>)「ッ! はい、なんでしょうか」
 
%) ^ー^)「勉強はどう? 進んでる?」
 
( <●><●>)「はい。まだ全て終わってはいませんが、問題ありません」
 
%) ^ー^)「そう。それならいいの」
 
%) ^ー^)「――――居眠りなんか、しないようにね?」
 
( <●><●>)「はい、分かっています」
 
%) ^ー^)「じゃあ、お母さんは先に寝るから。おやすみなさい、ベルベット」
 
( <●><●>)「はい、おやすみなさい、お母様」
182◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:23:08 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(……早く勉強を終わらせて、早く睡眠を取らなければ)
 
( <●><●>)(朝の火熾しの時間に、遅れてはなりません)
 
( <●><●>)(お母様の機嫌を、損ねては、なりません)
 
 ・
 ・
 ・
 
%) ^ー^)「おはよう、ベルベット。ちゃんと火を熾せたようね」
 
( <●><●>)「おはようございます、お母様」
 
%) ^ー^)「じゃあ、早く学舎に行ってらっしゃい。お昼は戻らずに、そのまま勉強してなさい」
 
%) ^ー^)「それと、帰りはいつもどおり買い物をお願いね。買い忘れないようにしてちょうだいね」
 
( <●><●>)「はい、分かりました」
 
 
( <●><●>)(お腹は空きましたが、まだ一日も経っていないから問題ありませんね)
 
( <●><●>)(勉強に集中できそうです)
 
「おーっす、ベルベット」
 
「おはよー」
 
( <●><●>)「……おはようございます」

183◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:26:11 ID:YGRMhMt.0
「歩きながら本読んでっと危ねーぞー」
 
「気をつけろよー」
 
( <●><●>)「はい」
 
 
「……あいつ、ずっと勉強してるよなー。病的なくらい」
 
「母親がめっちゃ厳しいんだろ? 悪い点取ったら怒られるんじゃねーの? 役人目指してるらしいしさ」
 
「その役人だった父親がいきなり居なくなったんだろ? 何があったんだろうなー」
 
「分かんねーけど、色々とやばそうだよなー、あいつんとこ」
 
 
( <●><●>)「…………」
 
 ・
 ・
 ・
 
「今日の試験どうだった?」
 
「悪くはなさそう。しかし、学年が上がる前だからって、毎日試験は勘弁してほしいよなー」
 
「まぁ、悪い点を取っても命を取られるわけじゃないんだし、別にいいだろ」
 
( <●><●>)(……今日の試験は、恐らく一問も間違いはありません)
 
( <●><●>)(昨日お母様に言われたとおり、しっかり勉強しておいたおかげですね)
 
「じゃあみんな、試験の結果を返すぞ。今日も一番はベルベットだ」
 
「間違いは一問だけ。みんな見習うように」
 
( <●><●>)「……!?」

184◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:29:21 ID:YGRMhMt.0
「あいつやっぱすげーなー。たった一問かよ」
 
「二年上の学級に来て受けてるのにな。化け物だよな」
 
( <●><●>)(間違いが、一問……)
 
「ほら、ベルベット。試験の結果だ。今日もよく頑張ったな」
 
( <●><●>)「……ありがとうございます」
 
 
( <●><●>)(……単純な書き間違い。しかし、間違いであることに変わりはありません)
 
( <●><●>)(間違えた自分が悪い。当然のことです。不正解はないと慢心して、ちゃんと見直せていなかったのかもしれません)
 
( <●><●>)(明日こそ、明日こそは、全て正解しなければ)
 
 ・
 ・
 ・
 
「やぁ、今日も買い物に来てくれたんだね。ありがとう」
 
( <●><●>)「ギリアストさん、こんにちは。今日は、玉葱を二玉と、長葱を二本、里芋を一袋分、胡椒を小袋一つ分、いただけますか」
 
「はいよ。いつも贔屓にしてくれて助かるよ」
 
( <●><●>)「今日は、ファシアさんは?」
 
「ちょっと出かけてるけど、そろそろ戻ると――――あぁ、ちょうど戻ってきた」

185◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:31:40 ID:YGRMhMt.0
「ベルベットくん、いらっしゃい」
 
( <●><●>)「こんにちは、ファシアさん。今日は、荷物をたくさんお持ちですね」
 
「えぇ。今度からうちで薬草を扱おうと思って、色々仕入れてきたのよ」
 
( <●><●>)「薬草、ですか」
 
「まずは効能を自分で確かめてみたいからたくさん仕入れたけど、捌ききれるかしらね」
 
( <●><●>)「母に伝えておきます。薬草もギリアストさんのお店で買えるようになったと」
 
「いやぁ、悪いねぇ。でも買ってもらえたら助かるよ。ありがとうね」
 
( <●><●>)「ありがとうございました。では、失礼します」
 
 ・
 ・
 ・
 
( <●><●>)(最後にご飯を食べたのは、昨日の朝でしたか)
 
( <●><●>)(空腹のおかげで、眠気は我慢できますね。しっかり勉強しなければ)
 
( <●><●>)(明日の試験こそ、全問正解を達成する必要があると、分かっています)
 
%) ^ー^)「ベルベット、お母さんは先に寝るわ。ちゃんと勉強しなさいね」
 
( <●><●>)「はい、おやすみなさい、お母様」
 
%) ^ー^)「明日こそ試験、全問正解してちょうだいね。一緒にご飯を食べましょう」
 
( <●><●>)「はい、必ずや」
 
%) ^ー^)「じゃあ、おやすみ」
 
( <●><●>)(……お母様も、一緒にご飯を食べたいと思ってくれているのですね)
 
( <●><●>)(お母様の気持ちに応えるためにも、勉強に一層、励まなくてはなりません)
 
( <●><●>)(……しかし、以前は一問不正解で一食抜きだったのに……どうして……)
 
 
( <●><●>)(――――どうして、お父さんを、”居なくさせて”から――――)

186◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:34:14 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(……自分が悪いと、分かっています。自分は、無心で勉強しなければ)
 
( <●><●>)(お母様に、認めてもらわなければ)
 
 ・
 ・
 ・
 
( <●><●>)(……今日の試験は、昨日よりも、難しいですね……)
 
( <●><●>)(集中しなければならないのに、空腹で、頭が上手く回りません……)
 
( <●><●>)(試験に出ている問題は、昨日勉強したところなのに……)
 
 
( <●><●>)(……恐らく、全問正解は、厳しい……)
 
 
「――――じゃあ、今日の試験の結果を返すぞ」
 
「一番は今日もベルベット。昨日より難しい問題にしたのに、間違いは二問だけだ」
 
「よく頑張ってるな。明日の試験も頑張ろうな」
 
( <●><●>)「はい、ありがとうございます」
 
( <●><●>)「…………」
 
「ん? どうした、あんまり顔色が良くないな」
 
( <●><●>)「……いえ、間違いがあったことが悔しいだけです」
 
「そうか。ベルベットは向上心の塊だな。みんな、見習うように」

187◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:37:07 ID:YGRMhMt.0
 ・
 ・
 ・
 
( <●><●>)(あと二日、何も食べられないのが続くのですね……)
 
( <●><●>)(二日くらいなら、何とかなるのでしょうか……分かりませんね……)
 
( <●><●>)(今日の試験は、昨日よりも更に難しい問題だったと言えば、お母様も、もしかしたら――――)
 
( <●><●>)(……いや、そんなことは、望むべきではありませんね……)
 
( <●><●>)(今日は買い物に行く必要がありませんし、早く家に帰って、勉強をしなければ……)
 
「おーい、ベルベットくん」
 
( <●><●>)「?」
 
「偶然だね。今から家に帰るところかい?」
 
( <●><●>)「ギリアストさん。こんにちは。そうですね、今から帰るところです」
 
「そうかい。私も用事が終わったから、店に戻るところでね」
 
「ところで、あまり顔色が優れないようだけど、大丈夫かい? 体調が悪いようにも見えるけど」
 
( <●><●>)「いえ、試験の結果が良くなく、落ち込んでしまっていただけです。ご心配いただき、ありがとうございます」
 
「そうかぁ。じゃあ、良かったらこれでも食べて元気出してよ」
 
( <●><●>)「……これは、梨ですか」
 
「そうそう。店の売れ残りなんだけど、捨てるのももったいなくてね。まだ食べられるからさ」
 
( <●><●>)「ありがとうございます。しかし、母の許可なく受け取るわけにはいきません」
 
「いやいや、そんな大げさな。家に帰るまでの間に食べちゃってくれたらいいよ」
 
( <●><●>)「しかし……」
 
「本当に駄目なら捨ててくれてもいいから。はい」
 
( <●><●>)「……ありがとうございます」
189◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:39:10 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(……断り切れず、受け取ってしまいました)
 
( <●><●>)(これを、そのまま家に持ち帰ってしまうと、”お父さんと同じこと”に……)
 
( <●><●>)(しかし、せっかくいただいたものを、捨てるわけにもいきません……)
 
( <●><●>)「…………」
 
 
( <●><●>)(――――お母様、申し訳ありません……)
 
 ・
 ・
 ・
 
%) ^ー^)「庭の草引きと、花の水やりが終わったら、寝るまで勉強ね」
 
%) ^ー^)「明日こそ全問正解よ。大丈夫、あなたはやればできる子だから」
 
( <●><●>)「はい、お母様」
 
 
( <●><●>)(……お母様、やはりご飯なしは変わらないのですね……)
 
( <●><●>)(四日、食べられなくても大丈夫だと、確信があるのでしょうか……)
 
( <●><●>)(それとも……)
 
 
( <●><●>)(花のように、しばらく水やりだけでもいいと、思われているのかもしれませんね)
 
( <●><●>)(……いや、そんなことは考えてはいけない……お母様は、私のためを思って……)
 
( <●><●>)(……勉強しましょう。今できることは、それしかありません)

190◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:41:24 ID:YGRMhMt.0
 ・
 ・
 ・
 
( <●><●>)(……やはりまだ、耐えがたい空腹感はありますね……)
 
( <●><●>)(勉強に集中したくても、集中しきれません……)
 
( <●><●>)(試験は明日が最後……明日さえ乗り切れば、なんとかなるはずなのに……)
 
 
( <-><->)(……こんなとき、お父さんならきっと、優しくしてくれたでしょうね)
 
( <-><->)(お父さんなら……)
 
 
―――― ベルベット。勉強も大事だけど、人生はそれだけじゃないぞ。
 
―――― 人と人は支え合って生きていく。だから、人との関わりも大事なんだ。
 
―――― 勉強ばっかりして人との繋がりを失ったら、きっと生きづらくなるぞ。
 
――――だから、勉強は程々にして、誰かとお喋りしたり、遊んだりしてもいいと思うぞ。
 
――――まぁ、こんなこと言うとまたお母さんに怒られそうだけどな、ははは。
 
 
( <-><->)(お父さんは、優しい人だった……だから、お母様にも優しかった)
 
( <-><->)(でも、優しすぎたから……お母様に何も言えなくて、逆らえなくて)
 
( <-><->)(遂には――――)
 
 
( <-><->)(……お父さんに、また、会いたい……)
 
( <-><->)(でもそれは、きっともう、叶わないのですね……)

191◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:43:29 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(……お父さんが残していった、役人の試験のための本)
 
( <●><●>)(こんなものよりも、もっと残してほしいものが、たくさんあったのに……)
 
 
%) ^ー^)「ベルベット?」
 
( <●><●>)「! はい、なんでしょうか」
 
%) ^ー^)「勉強は? ちゃんと進んでる?」
 
( <●><●>)「はい、問題ありません」
 
%) ^ー^)「そう。それならいいのだけど」
 
%) ^ー^)「――――あら、その本は?」
 
( <●><●>)「これは、お父さんが役人の試験のために、勉強に使っていた本で」
 
%) ^ー^)「そう。意欲があって素晴らしいけれど、今のあなたにはまだ必要ないでしょう?」
 
( <●><●>)「はい。申し訳ありません」
 
%) ^ー^)「ベルベット。あなたはお父さんと違って、やればできる子よ」
 
%) ^ー^)「きっと優秀な成績で卒業して、長官になれるわ」
 
( <●><●>)「……はい」

192◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:45:09 ID:YGRMhMt.0
%) ^ー^)「あぁ、お父さんもあなたくらい真面目にやってくれたら良かったのに」
 
%) ^ー^)「お父さんは本当に駄目な人だったわ。自分で努力しようとしないで、人に頼ってばかりで」
 
%) ^ー^)「ああいう甘えがあるから頑張れないのね。悪い見本だわ」
 
( <●><●>)「……お母様。できればもう、お父さんのことはあまり責めないでもらえれば……」
 
%) ^ー^)「なぁに? なにか、言いたいことがあるの?」
 
( <●><●>)「いえ……ただ、お父さんはいつも、私たちのことを想ってくれていて」
 
%) ^ー^)「本当に私たちのことを想うなら、もっと努力してほしかったわ」
 
%) ^ー^)「役人の昇格試験に何回も落ちて、給与も変わらなくて、生活は苦しいままだったのよ。本当に私たちのことを想ってくれていたかしら?」
 
( <●><●>)「それでも、普通の生活はできたはずで」
 
%) ^ー^)「普通じゃ駄目なのよ。あなたのおじいちゃんは、役所の一番上まで昇り詰めた人なのよ?」
 
%) ^ー^)「おじいちゃんの血を引くお父さんだって同じところにいけたはずなのに、役人になっただけで満足して。もっと上を目指すべきだったのに」
 
%) ^ー^)「小さい頃みたいな貧しい生活は、もう絶対したくなかったのに。お父さんはほんと、志が低かったわ」
 
( <●><●>)「……確かに、役所の長にはなれませんでしたが、しかし、昇格はしました」
 
%) ^ー^)「そう。私が努力させたおかげで、やっと一つだけね」
 
%) ^ー^)「自分に甘くて、他人に頼るところがあった。強制的にやらせなきゃ、何も変わらない人だったのよ」
 
( <●><●>)「……だから、お父さんが食べ物を貰ってきたときも、あんなに怒ったのですか?」
 
( <●><●>)「お父さんは、自分が食べたいと言ったわけではなかったのに……」
 
%) ^ー^)「自分が食べたいわけじゃないなら、断れば良かったのよ。貰ってきたのは、自分が食べたかったからに決まってるじゃない」
 
( <●><●>)「それは、決めつけでは……お父さんは、相手の好意を無下にできなかったのだと……」
 
%) ^ー^)「いいえ、そうに決まってるわ。仮に断り切れなかったのだとしても、それはやっぱり甘えがあるからよ」
 
%) ^ー^)「元はといえば、昇格試験に落ちた自分が悪いのに。試験に受かりさえすれば、ちゃんとご飯は用意したのに」
 
( <●><●>)「…………」

193◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:47:51 ID:YGRMhMt.0
%) ^ー^)「ベルベット。お母さんは、あなたにお父さんと同じ道を辿ってほしくないのよ」
 
%) ^ー^)「あなたはお父さんと違って真面目で、優秀だわ。だから、中途半端な甘えがあるなら、それは捨てなさい」
 
%) ^ー^)「自分に厳しくできたら、あなたは必ず長官になれるわ」
 
 
( <●><●>)「……お母様」
 
( <●><●>)「一つ、聞かせてください」
 
 
( <●><●>)「私が長官を目指すのは、何のためですか?」
 
%) ^ー^)「……分かりきったことを聞くのね。決まってるじゃない」
 
%) ^ー^)「”私たちのため”よ」
 
 
( <●><●>)「……私たちのため、ですか」
 
%) ^ー^)「えぇ。私たち家族が、不自由なく暮らすためよ」
 
( <●><●>)「…………」
 
( <●><●>)「分かりました、お母様」
 
( <●><●>)「私が、間違っていました」

194◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:49:44 ID:YGRMhMt.0
%) ^ー^)「そう、分かってくれたのね。お母さん、嬉しいわ」
 
%) ^ー^)「やっぱりあなたはお父さんとは違うわね。安心したわ」
 
%) ^ー^)「じゃあ、お母さんは先に寝るわね。勉強、最後までしっかりやるようにね」
 
( <●><●>)「はい、おやすみなさい」
 
( <●><●>)「…………」
 
 
( <●><●>)(……今日は、寝る暇はありませんね。考えましょう)
 
( <●><●>)(私に、できることを)
 
 ・
 ・
 ・
 
「珍しいな、ベルベット」
 
「お前が、試験で七問も間違えるなんて」

195◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:51:51 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)「……申し訳ありません、先生。昨晩、よく眠れず、集中力を欠いていました」
 
「いや、謝るようなことじゃないんだが、そうか。やっぱり体調が良くないんだな」
 
( <●><●>)「徐々に、良くなっていくものと思います」
 
「まぁ、今日で試験は最後だし、少しくらい気を抜いてもいいだろう。これまでよく頑張ってきていたしな」
 
( <●><●>)「……はい。ありがとうございます」
 
( <●><●>)(……気は、まだ抜けない……)
 
 ・
 ・
 ・
 
( <●><●>)「ギリアストさん、ファシアさん、こんにちは」
 
「あぁ、いらっしゃい」
 
「こんにちは」
 
( <●><●>)「今日は、白菜を一つ、青梗菜と人参と唐辛子を一袋ずつ、いただけますか」
 
「はいよ。いつも買ってくれて助かるよ」
 
( <●><●>)「それから、ファシアさん」
 
「うん? 私?」

196◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:53:41 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)「先日、薬草などを仕入れていると仰っていたと思うのですが」
 
「そうそう。そろそろお店でも出そうかと思ってるのよ」
 
( <●><●>)「実は最近、あまり眠れない日があるのです。不眠に効くものなどはありますか?」
 
「不眠ねぇ。眠りに誘う効果があると言われている、プラリティアという花はあるわ。お香のように使えば効果が出ると思うけど」
 
( <●><●>)「ありがとうございます。できればそれも譲っていただきたいのですが、実は……」
 
「どうかしたの?」
 
( <●><●>)「……今、花を買うだけの持ち合わせがないのです。必ず明日、お金を持ってきますので、どうか今日譲ってもらえないでしょうか?」
 
「あぁ、そういうこと。それなら、お代は要らないわ。効果がどうだったかを今度教えてもらえれば」
 
( <●><●>)「しかし、タダというわけには」
 
「いいのよ、少量だし。お得意様だしね」
 
( <●><●>)「……ありがとうございます。お言葉に、甘えさせてください」
 
「あ、ちなみにその花、そのまま食べたりすると効果が出すぎるみたいだから気を付けてね」
 
( <●><●>)「……分かりました」
 
 ・
 ・
 ・

197◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:55:21 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)「レイルスさん、こんにちは」
 
「おっ、ベルベットくん。今日も花の肥料を買いにきてくれたのかい?」
 
( <●><●>)「いえ。実は、家の庭に、桜を植えようとしていて。苗木はありますか?」
 
「桜の苗木かぁ。今はないけど、数日後で良ければ用意できるよ」
 
( <●><●>)「……何とか、明日に用意していただくことはできませんか?」
 
「えっ、明日かい? そんなに急に必要なのかい?」
 
( <●><●>)「母が、どうしても、と」
 
「うーん。まぁ、それなら何とかしてみるよ」
 
( <●><●>)「申し訳ありません。ありがとうございます」
 
「ま、いつもお世話になってるからね。じゃあ、また明日来ておくれ」
 
( <●><●>)「はい。よろしくお願いします」
 
 ・
 ・
 ・
 
%) ^ー^)「間違いなく、気の緩みがあったのね。それとも、試験に集中していなかった?」
 
%) ^ー^)「七問も間違えるなんて、あってはならないことよ。今まで積み上げてきたことが全て台無しになったようなもの」
 
%) ^ー^)「お母さん、本当に悲しいわ。あなたなら大丈夫だと、信じてたのに」
 
( <●><●>)「申し訳ありません、お母様」
 
( <●><●>)「全て、自分が悪いと分かっています」
199◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:57:08 ID:YGRMhMt.0
%) ^ー^)「分かっているなら、やることは一つだということも、分かっているのね?」
 
( <●><●>)「はい。食事も取らず、寝る間も惜しんで、ひたすら勉強します」
 
%) ^ー^)「分かっているなら、それでいいのよ」
 
%) ^ー^)「大丈夫。あなたは、やればできる子。きっと乗り越えられるわ」
 
( <●><●>)「……はい」
 
 ・
 ・
 ・
 
( <●><●>)(……お父さん)
 
( <●><●>)(守ってあげられなくて、ごめんなさい)
 
( <●><●>)(今更、もう、遅すぎるかもしれませんが……)
 
( <●><●>)(……それでも、せめて――――)
 
 
%) ^ー^)「ベルベット?」
 
( <●><●>)「はい、なんでしょうか」
 
%) ^ー^)「お母さん、今日は疲れて眠いから、もう寝るけど、勉強しっかりね?」
 
( <●><●>)「はい、分かっています」
 
%) ^ー^)「じゃあ、おやすみ」
 
 
( <●><●>)(……お母様)
 
( <●><●>)(悪いのは自分だと、分かっています)
201◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 22:59:31 ID:YGRMhMt.0
%) - -)
 
( <●><●>)「……お母様」
 
%) - -)
 
( <●><●>)「……深い眠りに、就いているようですね」
 
 
( <●><●>)「お母様。私はずっと、間違っていました。勘違いしていました」
 
( <●><●>)「……お父さんがいつも、お母様に優しくて、言うとおりにしていた」
 
( <●><●>)「だから、お母様はいつも正しいのだと思っていました」
 
( <●><●>)「……いえ、本当のところは、分かりません。もしかしたら、お母様はやはり正しいのかもしれません」
 
( <●><●>)「ですが、今の私はもはや、お母様を受け入れることができません」
 
( <●><●>)「言うとおりにすることが、できません」
203◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 23:01:41 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)「私がもっと早くから優秀であれば、きっと、こんなことにはならなかった」
 
( <●><●>)「お母様の期待は私に向き、お父さんがあんな目に遭うこともなかったでしょう」
 
( <●><●>)「私もお母様と毎日、美味しいご飯が食べられたでしょう」
 
( <●><●>)「全て、私が悪いのです。分かっています」
 
( <●><●>)「分かっています」
 
 
( <●><●>)「お母様、ごめんなさい。悪いのは私です」
 
( <●><●>)「そう、分かっています。全部、分かっています」
 
( <●><●>)「分かっています」
 
 
 
 
 
 
( <○><○>)「――――分かっています」
 
 
 
 
 
 ・
 ・
 ・

204◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 23:04:10 ID:YGRMhMt.0
――翌朝――
 
( <●><●>)「…………」
 
( <●><●>)「…………」
 
「――――ベルベットくん」
 
( <●><●>)「!」
 
「おはよう。こんな朝早くから、どうしたんだい?」
 
( <●><●>)「ギリアストさん。おはようございます」
 
「お母さんに言われて、お手伝いかい?」
 
( <●><●>)「はい。実は、ここに桜を植える予定なのです」
 
「へぇ。それで、朝から穴掘りを」
 
( <●><●>)「まだ苗木をいただいていないので、どれほどの大きさを掘ればいいのか分からないのですが」
 
「あぁ、レイルスさんのお店で買うんだね。しかしちょっと、その穴は大きすぎるんじゃないかな、ははは」
 
( <●><●>)「そうですか。分かりました」
 
「桜、咲くの楽しみだね。私も見に来るよ」
 
( <●><●>)「はい。楽しみにしていてください」
 
「じゃあ、また」
 
( <●><●>)「…………」
 
( <●><●>)「…………」
 
 ・
 ・
 ・
206◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 23:06:26 ID:YGRMhMt.0
―― 一ヶ月後――
 
「そうだな、お前の言うとおり、元の学級に戻ったほうが良さそうだな」
 
「やっぱり、上の学年でやっていくのは辛かったか」
 
( <●><●>)「申し訳ありません、ご期待に副えず」
 
「いや、よくやっていたよ、本当に。でも正直、今は勉強どころじゃないだろうしな」
 
( <●><●>)「平均以上の成績は残せるように、努力します」
 
「あまり自分を追い込みすぎず、程々にな」
 
( <●><●>)「ありがとうございます、先生」
 
 
「……ベルベットのとこ、父親に続いて母親まで居なくなったらしいぜ」
 
「本当かよ。何があったんだ?」
 
「分かんねぇ。あんまり本人が喋りたがらないみたいだ」
 
「追及しづらいよなぁ、そういうことって」
 
「そっとしておこうぜ。俺たちがどうにかできることじゃないだろうし」
 
 
( <●><●>)「…………」
 
 ・
 ・
 ・
208◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 23:08:28 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(先生には、ああ言いましたが……)
 
( <●><●>)(やはり、以前のように勉強を頑張ろうという気には、なれませんね)
 
( <●><●>)(私は、役人になりたかったというより、役人を目指す自分でいなければならなかっただけでした)
 
( <●><●>)(その事実が今となっては、よく分かります)
 
( <●><●>)(……もはや、役人になる必要がなくなった今、私は何を目指して、どう生きるべきなのか……)
 
( <●><●>)「…………」
 
 
( <●><●>)「――――レイルスさん、こんにちは。先日は桜の苗木を都合していただき、ありがとうございました」
 
「あぁ、ベルベットくん。いや、貰うべきものは貰ってるし、こちらこそだよ」
 
( <●><●>)「あのときは無理を言ってしまったので、御礼と言ってはなんですが、うちにあった本などを貰っていただけないかと思いまして」
 
「そんな、わざわざいいのに。あぁでも、これは役人の登用試験に役立ちそうだなぁ」
 
( <●><●>)「確か、役人を目指している息子さんがいらっしゃったと思い出しまして」
 
「そうだね。でも実は、その気も少し変わってきているみたいなんだけどね」
 
( <●><●>)「そうなのですか?」
 
「まだあまり知られてないけど、実は、ヴィップ国軍のハンナバル総大将が亡くなったんだ」
 
( <●><●>)「!」

209◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 23:10:11 ID:YGRMhMt.0
「先日、桜の苗木を国に納品してきたんだけど、そのとき知り合いの商人から聞いてね」
 
「その話を息子にしたら、急に身体を鍛えだして。どうやら国軍入りを考え始めたみたいなんだ」
 
( <●><●>)「……役人としてよりも、軍人として、国を守りたい気持ちが芽生えたということですか」
 
「そういうことみたいだけど、親としては素直に賛成できなくてね」
 
( <●><●>)「息子さんを、失ってしまうかもしれないから、ですか?」
 
「そうだね。軍に入ったら中々会えなくなるし、戦場を生き抜けるとも限らないしね」
 
( <●><●>)「……確かに、そのとおりですね」
 
( <●><●>)(子を想う親の気持ち……そういうものなのでしょうね)
 
「この本、本当に貰っちゃっていいのかな? 一応、息子に渡してみるけど」
 
( <●><●>)「はい。一度は全て読んでいますし、今の自分には必要ないものですから」
 
「そうなのかい? じゃあ、遠慮なくいただくとするよ。ありがとう」
 
( <●><●>)「では、失礼します」
 
 
( <●><●>)(ハンナバル大将が亡くなって、きっと、国軍は混乱しているのでしょうね)
 
( <●><●>)(……軍人、ですか)
211◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 23:12:03 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(ずっと目指していた、役人への道。今は、その道を歩む気になれません)
 
( <●><●>)(目標を失って、これからどうすべきかをずっと、考えていましたが……)
 
( <●><●>)(戦場なら、”この手に残る感覚”を、薄れさせることもできるかもしれません)
 
( <●><●>)(……一考の余地は、ありそうですね)
 
 ・
 ・
 ・
 
「ベルベットくん、最近あんまりお店に来てくれなくなったなぁ」
 
「色々大変なんでしょう。家の庭で野菜を育てたりもしているみたいだし」
 
「そういえば、お金を稼ぐために山菜を採ったりもしているって聞いたなぁ」
 
「最近は身体を鍛えたり、剣術の練習をしたりもしてるみたいで、私たちより忙しそうよ」
 
「うちで引き取ってあげられないかと、思ったりもしたんだけど。あの子はそれを望まないんだろうなぁ」
 
「いつか両親が帰ってきてくれるかもしれないからって、あの家から離れるつもりもないみたいだしね」
 
「本当に、一人で生きていくつもりなんだろうなぁ。強い子だよなぁ」
 
「そうね。だからこそ、私たちが邪魔をしないように、あの子を静かに見守ってあげなきゃね」
 
「……お前は大人だなぁ、ファシア。毎日でも様子を見に行きたくなる自分が子供に思えるよ」
 
「あなたは少し、ベルベットくんを見習ったほうがいいかもしれないわね」
 
 ・
 ・
 ・

212◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 23:14:14 ID:YGRMhMt.0
――八年後(世界歴・515年)――
 
「なぁ、聞いたか? 今度の入軍試験、ブーン=トロッソ中尉が来るらしいぜ」
 
「入軍してたった一年で中尉まで昇格したのってすげぇよな。やっぱとんでもない威圧感なんだろうなぁ」
 
「試験でどんなことを試されるのか分かんねーけど、一目見れるだけでも貴重な経験だよな」
 
 
( <●><●>)(……ようやく、このときが来ましたか)
 
( <●><●>)(随分、長いときを待たされたような気がしますね)
 
( <●><●>)(……どれだけ時間が経っても、結局、”あのときの感覚”は消えなかった)
 
( <●><●>)(ヴィップ国軍には、今までの全てを上書くような、未知の世界が待っているのでしょうか)
 
( <●><●>)(願わくば、余計なことを考えないで済むような、熾烈な日々を送れますように)
 
 
―――― 人と人は支え合って生きていく。だから、人との関わりも大事なんだ。
 
 
( <-><->)(……お父さん)
 
( <-><->)(大丈夫です。私は、一人でも強く生きていけます)
 
( <-><->)(どうか、どこかで見守っていてください)
 
 ・
 ・
 ・
 
「――――君の名前は、なんていうんだお?」
 
( <●><●>)「ベルベット=ワカッテマス」
 
 
( ^ω^)「……期待してるお」

213◆azwd/t2EpE :2019/06/14(金) 23:16:11 ID:YGRMhMt.0
( <●><●>)(……あの人が、ブーン=トロッソ中尉ですか)
 
( <●><●>)(想像とは随分違いました。さほど覇気が感じられず、他を圧倒するような空気も持っていません)
 
 
( <-><->)(……ですが、どこか、懐かしいような――――)
 
 
( <●><●>)(……ブーン=トロッソ中尉は、東塔の所属でしたね)
 
( <●><●>)(あの人が戦場でどう戦うのか、興味があります)
 
( <●><●>)(東塔を希望してみるのも、面白いかもしれませんね)
 
 
( <●><●>)(――――どうか、今までの全てを凌駕するような未来が、待っていますように)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                【Past of Velvet : End】

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