112◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:31:53 ID:VEVSdu0o0
【最後の夜、静かな夜】
 
 
――世界歴・526年――
 
――ヒトヒラ城南東の森――
 
 上下に揺れる火が近づいてくることに気づいて、意味もなく目を伏せた。
 雨水を含んだ泥の、跳ねる音も同時にやってくる。
 
 何人かが無言で走り抜けたあと、誰かの大声が遠来した。
 しかし、なんと言ったのかまでは聞き取れない。
 
 恐らくは、兵に対する指示の声だろう。
 間違いなく、探している。自分と、フィルを。
 
 この森でなんとしても、しとめるべく。
 
〔;´_y`〕(かなりまずい。このままでは、見つかるのは時間の問題だ)
 
 自分の周りには誰も居ない。
 既に陽が落ちてからかなり時間が経ち、月が雲の裏に隠れていることもあって、自分の足元さえよく見えないほど森の中は暗かった。
 敵に見つかりにくい状況ではあるが、もし見つかってしまえば、間違いなく命はないだろう。
 
〔;´_y`〕(ラウンジに野戦で勝つのは厳しいと思っていたが、それにしても……)
 
 ファルロ=リミナリーを主戦とするラウンジ軍に、散々に打ち破られた。
 野戦を得意とするフィルが、その野戦で、ことごとくファルロに上回られた末の敗戦だった。

113◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:33:30 ID:VEVSdu0o0
 恐らくファルロの力だけではなく、戦を組み立てたであろうカルリナ、総指揮を執ったアルタイムの力も合わさった故の強さだ。
 それに引き換えオオカミ軍は、フィルの野戦の上手さに恃んだだけの戦い方だった。
 自分も可能な限りフィルを支えたが、それだけではどうしようもないほどの勢いの差を感じた。
 
 しかし、元より兵力差のある戦いだった。
 ラウンジ軍、十四万。それに対するオオカミ軍、六万。
 倍以上の兵を有する相手に正面から戦っては、勝てないのは当然だった。
 
〔;´_y`〕(最初から、まともに戦う気はなかった)
 
〔;´_y`〕(不意をついて相手をかき乱して、少数の兵でヒトヒラ城を守り、オオカミ城への撤退を視野に入れるつもりだったが)
 
 あまりにも考えが甘かった。
 不意をつく隙など、ラウンジは与えてくれなかった。
 まともな戦いに、させられてしまった、というべきだろう。
 
 野戦で敗北したあと、ヒトヒラ城に逃げ帰ることも許されなかった。
 ラウンジが一足早くヒトヒラ城に押し寄せ、降伏を迫ると、呆気なく城兵は開門したという。
 野戦での惨敗が伝わっていたのだろう。城兵のことは、責めたくても責められなかった。
 
 ミーナ城がどうなっているか分からない現状では、もはや、オオカミ城に戻る以外の選択肢はなかった。
 しかし、ヒトヒラ城からオオカミ城はかなり遠い。
 何より、既にラウンジが兵をオオカミ城に向かわせているのだ。
 
 最短でオオカミ城に向かう道には、間違いなくラウンジ兵が待ち構えているだろう。
 だからといって遠回りしていては時間を多く失う。
 どうすべきかと判断に迷っていたところでラウンジの追っ手に見つかり、手勢は散らされ、僅かな供の兵と一緒にこの森へと逃げ込んだ。
 
 森で多くの者が固まっていれば、敵に発見されやすくなる。
 それ故に、あえて散り散りになって動くことを選んだ。
 自分の命だけを守れ。自分のことだけを考えろ。そう命令して。
 
 そうして、独りの夜を迎えていた。

114◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:34:58 ID:VEVSdu0o0
〔;´_y`〕(決して広い森ではない。朝になって見通しが良くなれば、間違いなく敵に見つかる)
 
〔;´_y`〕(夜の間になんとしても、この森から脱出しないと)
 
 今更、自分の命が惜しいわけではない。
 しかし、国を守るために、一人でも多くの命を守るために。
 まだ、中将として為すべきことが多くあるのだ。
 
 そのために自分は、生き延びなければならない。
 
〔;´_y`〕(森の外はラウンジ兵に囲まれているだろう。不用意に出れば間違いなく討たれる)
 
〔;´_y`〕(ラウンジ兵のふりをして抜け出すか、ある程度の人数を集めて強引に突破するか。そのどちらかしかないが)
 
 選択肢が二つしかないことが、情けなかった。
 これがフィルなら、もう一つ、強力な選択肢が存在する。
 単騎で敵の包囲を突破するという選択肢だ。
 
 フィルが使用するアルファベットはR。壁は超えていないが、ラウンジのほとんどの将兵を上回るアルファベットだ。
 また、フィル自身に果敢さもあり、複数の兵に囲まれたところで簡単には怯まないだろう。
 単騎突破は現実的な選択肢だった。
 
 一方、自分が操るアルファベットはO。
 決して弱いアルファベットではない。しかし、大国ラウンジならば自分以上のアルファベット使いは何人もいる。
 知略が評価されているカルリナでさえPなのだ。あまりに見劣りしてしまうアルファベットだった。
 
 守りに優れるアルファベットではあるが、突破向きではないだろう。
 何より、自分の性格と経験も、単騎突破には向いていない。
 先陣切って戦うようなことは、したことがないのだ。
116◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:36:54 ID:VEVSdu0o0
〔´_y`〕(後方支援に優れるなどと、皮肉のように言われてきたが、誇りにも思ってきた)
 
〔´_y`〕(しかし、いざ絶命の危機に陥ってみると、何の役にも立たないんだな)
 
 潜めていた息が、自嘲気味に口から漏れた。
 
 悔やんだところで、今更、新兵に戻ってやり直せるわけでもない。
 今できることを、やりきるしかないのだ。
 
〔´_y`〕(フィルも同じようにこの森に逃げ込んだはずだが、もう脱出したのか?)
 
〔´_y`〕(もしフィルを討ち取ったようなことがあれば喚声が上がってもおかしくないが、それは聞いていない)
 
〔´_y`〕(できれば無事に生き延びていてほしい。あいつの代わりは、そうはいない)
 
 辺りを二度、三度と見回した。
 遠くには火が見える。干戈の音も聞こえる。
 まだ、戦いは続いていた。
 
 自分の代わりなどは、いくらでもいる。
 それは、自分自身が一番よく分かっていた。
 
 しかし、指揮力があり、武力もあるフィルは、オオカミではミルナに次ぐ存在だ。
 他国でも中将級の扱いを受けることは間違いない。あまり意見は合わなかったが、有能な将なのだ。
 オオカミが生き残るために、絶対にここで失ってはならない戦力だった。
 
〔´_y`〕(いざとなれば、この命を擲ってでも)
 
 フィルを生かす。フィルを、守る。
 アルファベットOの柄を強く握りながら、そう思った。
118◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:38:55 ID:VEVSdu0o0
 雨が止んだことで、方々に灯りが見えた。
 できれば降り続けてくれたほうが助かったが、残念ながら、天は敵に回ったようだ。
 いや、雲を空に残してくれただけでも、良しとすべきか。
 
 今いるのが森のどのあたりなのか、分からない。
 仮に中心だとすれば、走ったとしても森を抜けるまでに二刻はかかるだろう。
 見つからないように慎重に移動すれば、更に時間がかかる。悠長に機を狙っているわけにはいかなかった。
 
〔´_y`〕(……行こう)
 
 自分の周りには敵も味方もいない。
 音を立てないように留意しながら、ゆっくり歩き始めた。
 
 木の影から、木の影へと。
 移るたびに一息つき、周囲を窺う。
 
 炬火が遠くで上下していた。
 近いところにはない。しかし、それも罠かもしれない。
 あえて、火を消して炙りだそうとしているのかもしれない。
 
 そう思った、すぐのこと。
 
〔´_y`〕「!」
 
 不意に、炎が一つ、二つと現れた。
 四半里もない。大きな音を立てれば、間違いなく気づかれる。
 
 そして、その炎が、迫ってくる。
 
〔;´_y`〕(まずい!)
120◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:40:42 ID:VEVSdu0o0
 咄嗟に茂みに身を隠した。
 できればもう少し視線に入らないような位置に移動したいが、気づかれる恐れが高まる。
 この局面ではもう、身動きは取れなかった。
 
 そして、炎と同時に、声も徐々に大きくなっていた。
 
「一度、アクセリト大尉に指示を仰ぎますか?」
 
「それも、考えるべきだろうな」
 
 四人ほどが固まっているようだった。
 若い声と、深みのある声。しかし、将校級の兵はいないようだ。
 
「状況が膠着してしまっていますし、漫然と探しつづけていても体力を無駄にするだけです」
 
「もう森の外に出てしまった可能性も考える必要があるでしょうし」
 
「分かっているが、勝手な行動は取れない」
 
 若い兵たちの、不安と苛立ちが混じった声。
 同じように怒気を含めた、統率している兵の声。
 
 絶対に声を出せない状況であるにも関わらず、笑いが漏れそうになった。
 若い兵は悪くない。統率役の兵の判断が、あまりに遅すぎる。
 そしてそれが、自分と重なってしまったからこそ、自分を嘲りたくなったのだ。

121◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:42:47 ID:VEVSdu0o0
〔´_y`〕(外から見ればよく分かるな)
 
〔´_y`〕(慎重に考えているつもりで、実は、何も考えていないのと同じだ)
 
〔´_y`〕(こんな状況で自分を見つめ直すことになるとは、思いもしなかったが……)
 
〔´_y`〕(いや、こんな状況だからこそ、か)
 
 何かに気づける機会というのは、決して多くない。
 特に、自分の弱みであれば尚更だった。
 
 できれば、持って帰りたい。
 この課題を、オオカミ城まで。
 そして今後に活かしたい。
 
 叶うならば、フィルと共に――――
 
〔´_y`〕(ん……?)
 
〔;´_y`〕(……あれは、まさか!)
 
 近づいてくるラウンジ兵の灯りで、微かに見えた。
 木に凭れかかる男の横顔が。
 
 フィル=ブラウニーだった。
 
〔;´_y`〕(まずい! あの位置は、ラウンジ兵に見つかる!)

122◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:45:17 ID:VEVSdu0o0
 フィルに意識があるのかどうか、分からない。
 ラウンジ兵の接近に気づいて、あえて動いていないのか。
 それならまだいいが、もし意識を失っているなら、間違いなく発見されて討たれる。
 
 やるしかない。
 自分が、動くしかない。
 
 瞬時にそう判断し、アルファベットOの柄を強く握った。
 
「ひとまず、森の外を目指そう。指示を仰いでから再度、森に入る」
 
「はい。その間も、フィルやガシューを探しながら――――ん?」
 
「おい、あの木のところにいる兵、あれって」
 
「フィル=ブラウ」
 
 ――――背後から、一閃。
 胴を、斜めに斬り裂いた。
 
 アルファベットOが、鮮血を浴びて、鈍く光る。
 
〔#´_y`〕「ふんッ!」
 
 身体を半分捻って、隣にいた兵が後ろに向けかけた、その首を飛ばす。
 その奥にいた兵が咄嗟にアルファベットHを向けようとしてきたが、Oを押し付けるようにして倒し、上半身と下半身を分断した。
 
「貴様、ガシューか!」

123◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:46:55 ID:VEVSdu0o0
 統率役の兵がアルファベットIを抜いた瞬間、助かったと思った。
 左手に持っていた鉦を鳴らされていれば、絶体絶命の危機だったのだ。
 
 すかさず、前に突き出された両腕を斬り落とし、安堵感に包まれながら、首を刎ねた。
 
〔;´_y`〕「フィル!」
 
 倒れたラウンジ兵を跨いで、すぐさまフィルに駆け寄った。
 たまたま位置関係がよく、ラウンジ兵の背後を取れたためにフィルを助けることができたが、相変わらずフィルは微動だにしない。
 単に意識を失っているだけなのか、もしくは、既に――――
 
〔;´_y`〕「フィル、無事か!?」
 
 フィルの側でしゃがみ、まず脈拍を確認した。
 脈動が、指に伝わってくる。生きている。
 
 しかし、腹部を押さえた左手は、赤く染まっていた。
 
 フィルの瞼が静かに、ゆっくりと開く。
 
|;`゚ -゚|「……ガシュー中将……」
 
〔;´_y`〕「良かった、生きていてくれて」
 
|;`゚ -゚|「申し訳ありません、敵襲を受け……」
 
〔;´_y`〕「いい。命があったことが何よりだ。傷は、深いのか?」
 
|;`゚ -゚|「分かりません……血は止まりつつありますが……」
 
 自分で判断できないのであれば、恐らく、浅手ではないだろう。
 傷口に当てている布を剥がし、自分の衣服を肩口から破いて再び傷口に当てる。
 暗闇の中では、傷の深さまでは分からなかった。

124◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:49:55 ID:VEVSdu0o0
〔;´_y`〕「動けるか? さっきここで交戦したばかりだ、離れたほうがいい」
 
|;`゚ -゚|「少し、手を貸していただければ、何とか……」
 
 フィルの脇の下に腕を差し込み、抱きかかえるように身体を起こした。
 背中を木に支えてもらいながら、フィルは両脚を縦にする。
 
 なるべく闇に紛れるように、木の影になるところを選んで移動を始めた。
 フィルが傷を負っていることもあって、速くは動けない。
 時間をかけて移動するしかなかった。
 
〔;´_y`〕「今、森はラウンジ兵に囲まれている。容易には脱せない」
 
〔;´_y`〕「慎重に動く必要があるが、かといって、時間をかければ機に恵まれるとも思えない。厳しい状況だ」
 
|;`゚ -゚|「はい。しかし、時間が経てば痺れを切らして森に兵を多く投入してくると思います」
 
〔;´_y`〕「……そうか、なるほど。そのときラウンジ兵を上手くかわせれば、囲みを突破する機が見える」
 
 さすがフィルだ、と思った。
 森に敵兵が多く入ってくることは、絶望が増すだけだと決めつけていたが、確かに囲みは薄くなる。
 増援が来てしまうと厳しいままだが、全体的に混戦となっている状況では、確実に増援が来るとも言えないのだ。
 
 この状況でも、フィルは活路を見出そうとしていた。
 やはり、オオカミのためにはこの男が必要だ。
 光の宿るフィルの瞳を見て、改めてそう思った。
 
|;`゚ -゚|「オオカミの兵は、森の中にどれほど残っているのでしょうか」
 
〔;´_y`〕「分からない。逃げ込んだときは千を超える数だったと思うが」

125◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:52:18 ID:VEVSdu0o0
 自分とフィルがこの森に逃げ込んだことで、ラウンジの意識を森に向けさせることはできた。
 森に入らなかったオオカミの兵は、オオカミ城まで帰りやすくなっているはずだ。
 それだけでも、ここに逃げ込んだ意味はあった。
 
 あとは、フィルを生きてオオカミ城まで逃がすことができれば、御の字だろう。
 
|;`゚ -゚|「囲みを突破するにしても、オオカミ兵の補佐がなければ難しい。ラウンジの指揮官が誰かにもよりますが」
 
〔;´_y`〕「恐らく、アクセリト=ゼルフレアだ。アルタイムやカルリナなどに比べればまだいいが、甘い将ではない」
 
|;`゚ -゚|「しかし、アクセリトだけに任せるとも考えにくい。他にも何名か、将校が来ていても――――」
 
 ――――不意に、肩を貸していたフィルの身体に、力が入った。
 そう思った直後、視界が揺れ動き、やがて木々と夜空だけが見えた。
 
 そして、夜の闇に銀色の線を引く、アルファベットF。
 
〔;´_y`〕「なっ……!」
 
 先ほどまで、自分の胴があった位置だった。
 アルファベットFは、的確に自分を狙っていた。
 
 起き上がり、振り返った先には、不敵に笑う男がいた。
 
[ヽ´_』`]「完璧に不意を突いたつもりだったが、さすがはフィル=ブラウニー」
 
[ヽ´_』`]「DでFを引き絞る音が聞こえていたのか?」
 
 すぐさま、フィルを守るようにアルファベットOを構えた。
 フィルはまだ、起き上がることができていない。

126◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:54:15 ID:VEVSdu0o0
[ヽ´_』`]「しかし、もはや不意を狙う必要もない」
 
[ヽ´_』`]「二人まとめて、私が首を貰うとしよう」
 
 キヴィア=ディトリシア中尉。
 構えるアルファベットは、N。
 
 それだけなら、自分がアルファベットOで斬り伏せればいい。
 一騎打ちは得意ではないが、ランクで上回るならば、勝てる確率は高いだろう。
 
 しかし、キヴィアの背後から、茂みを掻き分ける音。
 一つや二つではなかった。
 
〔;´_y`〕「くっ……」
 
 恐らく、二十人はいるだろう。
 まだ背後にはいないが、いずれ囲まれるだろう。
 できれば後退したいが、フィルが倒れている以上、それもできない。
 
 打開の策は、何も思い浮かばなかった。
 
|;`゚ -゚|「キヴィアか。不意を狙うしかないとは、いかにもお前らしい」
 
 フィルが、左手で腹部を押さえながら、立ち上がっていた。
 苦悶の表情は、隠しきれていない。
 それでも、敵を見据えていた。

127◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:56:13 ID:VEVSdu0o0
|;`゚ -゚|「正面から討ち取らんとする気概はないのか」
 
[ヽ´_』`]「愚かな。彼我の実力差を冷静に判断したまでのこと」
 
[ヽ´_』`]「何せ、二人の首に私の未来がかかっているのでね。四中将を二人も討ち取ったとなれば、将官さえ夢ではない」
 
|;`゚ -゚|「生憎だが、その夢は叶えてやれそうにない」
 
|;`゚ -゚|「私が、お前の首を地に落とすことになるからな」
 
 フィルが、アルファベットRを構えた。
 腹部を押さえた左手は、赤に染まりきっている。
 
〔;´_y`〕「フィル、今のお前では厳しい。ここは、私に任せて、お前は」
 
|;`゚ -゚|「ガシュー中将」
 
 静寂さに包まれた森であっても、敵には届かない程度の声をフィルに向けた。
 しかし、フィルははっきりと、その言葉を遮った。
 
|;`゚ -゚|「私が、この場を引き受けます。お逃げください」
 
〔;´_y`〕「何を……!」
 
|;`゚ -゚|「私は恐らく、もう、永くはもちません」
 
 フィルが、両手でアルファベットを握り締めた。
 その柄から、鮮血が幾滴も垂れ落ちる。

128◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 22:58:48 ID:VEVSdu0o0
|;`゚ -゚|「仮にこの場を切り抜けても、オオカミ城まで逃げ帰ることは、難しいでしょう」
 
〔;´_y`〕「弱気になるな、しっかりした手当てを受ければ大丈夫だ。絶対に生きて帰れる」
 
〔;´_y`〕「今の状況でお前を失えば、オオカミは深手を負うことになる。ミルナ大将に次ぐ戦力がいなくなるんだぞ」
 
|;`゚ -゚|「今の状況という言葉を使うなら、私が生き延びたところであまり力にはなれません。恐らく、オオカミ城に帰っても野戦にはならないでしょうから」
 
|;`゚ -゚|「ミルナ大将に何か策があり、時間が必要なのであれば、オオカミ城では籠城戦になります。そのとき必要なのは、ガシュー中将の力です」
 
|;`゚ -゚|「私など、籠城戦では役に立てません。広い視野で、支援する力に優れるガシュー中将の存在が求められるはずです」
 
〔;´_y`〕「馬鹿なことを言うな、私などよりお前のほうが」
 
[ヽ´_』`]「――――遺言の残し合いなら大目に見るつもりだったが、作戦会議となれば話は別だ」
 
 キヴィアの合図で、背後にいた兵たちが動き出した。
 こちらの手が届かない距離を移動している。
 遠巻きに、囲むつもりだ。
 
|;`゚ -゚|「ここに二人でいても、更に増援が来てしまって共倒れになるだけです」

|;`゚ -゚|「早く、急いでください。できるだけ長く時間を稼ぎます」
 
 フィルの言うことは、分かる。
 二人がかりとはいえ、手負いのフィルと一緒では、キヴィアを討ち取るのは容易ではないだろう。
 周囲の兵を往なしながらとなれば、尚更だ。
130◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:00:43 ID:VEVSdu0o0
 フィルは、もう永くはもたないと言った。
 考えたくはないが、本音かもしれない。自分自身のことは正確に把握しているはずだ。
 それを考えれば、フィルの言うとおりにすべきだとも思える。
 
 しかし、見捨てられない。
 見捨てられるはずがない。
 
〔;´_y`〕「……フィル、やはりここは、二人で」
 
|;#`゚ -゚|「早く!! オオカミを滅ぼすつもりですか!!」
 
 一瞬、身が固まるほどの一喝。
 甘い考えを、瞬時に吹き飛ばされた。
 
 自然と、足の爪先は、背後に向いた。
 
〔;´_y`〕「……すまない……」
 
 フィルに背を向けて、走り出した。
 心の中で何度も、何度も、謝りながら。
 
 自分の無力さが、あまりにも憎かった。
 悔しかった。情けなかった。
 言葉に、できないほどに。
 
 瞼に昇ってくる感情を振り払うように、ひたすら、闇の中を駆けつづけた。
 
 ・
 ・
 ・

131◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:03:01 ID:VEVSdu0o0
[ヽ´_』`]「先ほどの大声で更にラウンジの兵がここに集まってくる。もはや絶体絶命だな」
 
|;`゚ -゚|「集まってもらわねば困るな。そのための大声だ」
 
[ヽ´_』`]「……そうか、ガシュー=ハンクトピアを逃がすために、あえて、か」
 
[ヽ´_』`]「さすがはフィル=ブラウニー。冷静さを失ったものと思ったが、そうではなかったのだな」
 
[ヽ´_』`]「ありがたい。それほどの武将の首が取れるからこそ、私の価値も上がるというもの」
 
|;`゚ -゚|「あまり、何度も言わせるな。お前の首は、私が斬り落とす」
 
[ヽ´_』`]「果たして、どこまでその強がりを言い続けられるか、見ものだな」
 
 ・
 ・
 ・
 
(アクセ~゚ー゚)「フィルの声が聞こえたのは本当なのかな? 鉦は鳴っていないんだけど」
 
「鉦を持つ兵がたまたまいなかったのかもしれません」
 
(アクセ~゚ー゚)「うーん。なんか、罠っぽい気もするんだよなぁ」
 
「罠、ですか? この状況で」
 
(アクセ~゚ー゚)「この状況だからこそでしょ。フィルもガシューも簡単に諦めるような奴らじゃない。長くオオカミで活躍してるんだから」
 
(アクセ~゚ー゚)「とはいえ、フィルがいるなら兵を向ける必要もある。囲みを解くわけにもいかないから判断は難しいけど」

132◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:04:18 ID:VEVSdu0o0
 数人の兵を連れて、ゆっくり歩を進めるのは、アクセリト=ゼルフレア。
 この森の戦で、ラウンジを指揮執る大尉だ。
 
〔;´_y`〕(やはり、フィルに兵が向けられるのか)
 
 森の外へ向かうべく、静かに駆けていたところで、敵兵に気づいて身を伏せた。
 その相手がまさか、アクセリトだとは思わなかった。
 
(アクセ~゚ー゚)「とりあえず、百人ほどを向けさせよう。この森であまり多くを投入すると混戦になるから却って危ない」
 
「はい。伝えてまいります」
 
 百人。
 今の状況で、フィルの許へ押し寄せるとなれば、間違いなく命はない。
 
〔;´_y`〕「…………」
 
 フィルは、犠牲になることを選んでくれた。
 自分を生かすために、あの場に留まってくれた。
 
 それを思えば、ここは百人が向かおうが千人が向かおうが、気にせず森の外を目指すべきだ。
 ラウンジの意識がフィルに向けば向くほど、脱出できる可能性は高くなる。
 そのためにフィルは、恐らく、一瞬でも長く時間を稼ごうとするだろう。
 
 しかし、百人が向かうと聞いて、やはり思ってしまった。
 自分は、フィルを見捨てられない。
 
 フィルを、助けなければならない。
 
〔;´_y`〕(行こう!)

133◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:06:33 ID:VEVSdu0o0
 力強く、駆けだした。
 あえて、物音が立つように。
 
(アクセ~゚ー゚)「ん?」
 
「いま、走り出した者が」
 
(アクセ~゚ー゚)「ガシューかもしれない。追ってくれ!」
 
「はい!」
 
 あえて、フィルがいる方向とは逆に向かった。
 しばらくしてから身を屈め、森の外へ向かう方に石を投げる。
 そしてそのまま静かに、方向を転換した。
 
 追ってきた兵が森の外へ向かっていくのを感じながら、少し、移動する速度を速めた。
 
〔;´_y`〕(急ごう、猶予はない)
 
 いかにオオカミ屈指のアルファベット使いとはいえ、フィルは手負いだ。
 しかも、浅手ではない。一人で持ち堪えられる時間は、長くはないだろう。
 少しでも早く行かなければ、手遅れになる。
 
 その行く手を、塞ぐ影。
 
「ガシューか!」
 
「見つけたぞ! 止まれ!」
 
〔#´_y`〕「邪魔だ!」
135◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:08:36 ID:VEVSdu0o0
 二人のラウンジ兵が、アルファベットを構えようとした。
 しかし、構え終わるよりも早く、走ったままアルファベットOを振るい、一気に二人の胴を裂いた。
 鮮血が噴き出すよりも先に、脇を駆け抜ける。
 
 もはや、誰に気づかれようと構わなかった。
 フィルが、まだ生きているうちに、到着しなければ。
 会わなければ。手遅れになる前に。
 
 まだ、声が聞こえるうちに――――
 
|;`゚ -゚|「ぐっ……!!」
 
 ――――低く、鈍い、呻き声。
 崩れ落ちていく、身体。
 
 フィルの許に、到着した。
 直後、フィルの背中は泥に塗れる。
 
 フィルの目から、光が、消えた。
 
[;´_』`]「ハァ、ハァ……この状況で十人以上を討ち取り、私にも刃を届かせるとは……」
 
[;´_』`]「侮っていたことを、認めざるをえないが……しかし、終わりだ」
 
「中尉、傷が!」
 
「すぐに手当てを!」
 
[;´_』`]「そうだな。しかし、フィルの首を取るのが先だ」

136◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:10:21 ID:VEVSdu0o0
[;´_』`]「鉦も鳴らさず、私の力で討ち取ったんだ。首を取って、大いなる武勲を持ち帰る」
 
[;´_』`]「アルタイム大将もきっと私を将官に引き上げてくださるだろう。積年の願いであった将官に」
 
〔#´_y`〕「うおあああああぁぁぁ!!!」
 
 自分でも気づかぬ間に、雄叫びをあげていた。
 アルファベットNの切っ先をフィルの首に向けている、キヴィアを目掛けて、突進する。
 振り下ろしたアルファベットOは、空を切った。
 
[;´_』`]「ガシュー=ハンクトピア。戻ってきたのか」
 
[;´_』`]「あまりにも愚かだな。フィル=ブラウニーの覚悟を無下に」
 
〔#´_y`〕「あああぁぁぁ!!」
 
 二度、三度とアルファベットを振るう。
 キヴィアが何かを言っているのは分かったが、内容は分からなかった。
 理解する気も、なかった。
 
[;´_』`]「ぐっ! 全員で一斉に斬りかかれ!」
 
 耐えかねたような声をキヴィアが出した。
 同時に、複数の兵が動く気配。
 まずは両脇から、アルファベットIが突き出された。
 
〔#´_y`〕「はぁっ!!」
 
 薙ぐようにOを振るい、アルファベットIを破壊する。
 隙を狙うようにキヴィアがNを振り下ろしてきたが、際どいところで防いだ。
 次いでアルファベットHが襲いかかってくる。しかし、身体を捻りながらOで腕ごと斬り落とした。

137◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:12:18 ID:VEVSdu0o0
[;´_』`]「鉦だ! 鉦を鳴らせ!」
 
 キヴィアが、焦燥に駆られた。
 味方を、呼ぼうとした。
 
 ――――それこそが、好機だった。
 
[;´_』`]「ぐあああああああ!!!」
 
 キヴィアの腹部に、アルファベットOの刃が入り込んだ。
 身体を上下に分断することはできなかったが、確かに、刃は届いた。
 
 元より肩口に浅くない傷があった。
 恐らく、フィルが浴びせた一撃だろう。
 そのおかげでキヴィアの動きは鈍かった。
 
 フィルによる一撃がなければ、先ほどのキヴィアの振り下ろしは、防げていなかった可能性が高い。
 こうしてキヴィアの膝を折ることも、できなかっただろう。
 
 フィルの仇を、討つことができた。
 今は、それだけで良い。
 
 ――――自分の背中から腹部を貫いた、アルファベットIを見ながら、そう思った。
139◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:14:08 ID:VEVSdu0o0
[;´_』`]「く……そ……」
 
[;´_』`]「私……は……こんな、ところで……」
 
[;´_』`]「終わる、ような……男では……」
 
 キヴィアの声が、先ほどより小さくなっているのに、何故か聞こえやすくなったと感じた。
 恐らくは、自分の膝も地に着いたからだろう。
 アルファベットが異様に重く感じる。視界も、安定しない。
 
 それでも、僅かに残った力で、更にアルファベットを突き立てようとしてくる敵兵を斬り伏せることはできた。
 
 周囲に、ラウンジ兵の気配は、感じなくなっていた。
 
〔´_y`〕「……フィル……」
 
〔´_y`〕「間に、合わなかった……すまない……」
 
 うつ伏せに倒れたフィルに、手を伸ばす。
 届かないことは、分かっていた。それでも、縋るように。
 
 謝りたいことは、いくつもあった。
 助けられなかったこと。戻ってきてしまったこと。
 そして、何よりも、今まで力になれなかったこと。
 
 足りないものが、多すぎた。
 分かっていたつもりで、何も分かっていなかった。
 それに気づくのが、遅すぎた。
 
 もっと早く気付けていれば、オオカミを守れただろうか。
 フィルを、守れただろうか。

140◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:15:51 ID:VEVSdu0o0
 無意味な思考が脳内を駆け巡る。
 虚空を見上げると、自分の身体も、いずれ闇に染まるのだと感じた。
 
 このまま、ここで二人で、果てるのだと――――
 
|` - |「……うっ……」
 
〔´_y`〕「……!」
 
 もはや、視線を向ける気力さえない。
 しかし、はっきりと分かった。
 
 フィルの、声だった。
 
〔´_y`〕「フィル……! まだ、生きてくれて、いたんだな……良かった……」
 
| `゚ -゚|「その声は……ガシュー中将、ですか……」
 
| `゚ -゚|「もはや、目は何も、見えませんが……声だけは、何とか……」
 
〔´_y`〕「フィル、すまない……お前が身を呈して、逃してくれたのに……戻ってきてしまった……」
 
| `゚ -゚|「いえ……本当の最善は、二人で切り抜けることだったのに……私の我が侭で……」
 
 本当は、フィルも分かっていたのだろう。
 例え傷が深くとも、国のために動くのであれば、二人で生きる道を選ぶべきだと。
 あのときのフィルは、今までに見たことがないほど、感情を剥き出しにしていた。
 
 フィルの気迫に気圧されて、一人で逃げる道を選んだが、失策だった。
 無様に足掻いてでも、二人で生きる術を考えるべきだったのだ。
 しかし、今更遅すぎた。

141◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:17:27 ID:VEVSdu0o0
〔´_y`〕「しかし、一度は逃げる選択をしたのだから……それを貫くべきだった……すまない……」
 
| `゚ -゚|「いえ、本当は……独りきりで、逝くことを……寂しく思っても、いたので……」
 
| `゚ -゚|「戻ってきてもらえて……少し、安堵もしました……」
 
〔´_y`〕「……!」
 
 初めて、かもしれない。
 フィルが、弱みを見せるのは。
 
 それは、もう、幾許も時間が残されていないことを表してもいた。
 
| `゚ -゚|「……オオカミは……どうなるのでしょうか……」
 
〔´_y`〕「……分からない……残った者に、託すしかない……
 
| `゚ -゚|「……そうです……ね……」
 
 フィルの声は、掠れている。
 もしかしたら、自分が上手く聞き取れなくなっているのかもしれないが、分からなかった。
 
| `゚ -゚|「……静か、ですね……」

142◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:20:06 ID:VEVSdu0o0
 夜闇の静寂に、ゆっくり溶け込むような、フィルの声。
 あまりにも、淡く、儚いものだった。
 
〔´_y`〕「……そうだな……随分、静かだ……」
 
 とても、戦場にいるとは思えない。
 まるで、オオカミ城の居室で、何の不安もなく寝床に入るような感覚だった。
 
| `゚ -゚|「……最後の、夜が……」
 
 フィルの声が、空に向かう。
 そしてゆっくり、降りてくる。
 
| `゚ -゚|「静か、な……夜で……」
 
| `゚ -゚|「……良かっ、た……」
 
 あまりにも、静かな夜。
 互いの吐息さえ、はっきり届いていた。
 
 
 ――――だからこそ、フィルの呼吸が途絶えたのも、はっきりと分かった。

143◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:22:03 ID:VEVSdu0o0
〔´_y`〕(……ゆっくり、休んでくれ……フィル……)
 
〔´_y`〕(私も……すぐ、追いつくから……)
 
〔´_y`〕(……あっちで、少しだけ、待っていてくれ……)
 
 もはや、思考すらほとんど何もできない。
 国への想いすら、言葉にできなくなっている。
 
 分かることは、フィルが安らかに眠れたこと。
 
 自分もどうやら、静かに眠れそうなこと。
 
 
 夜明けのように白みゆく空を、見上げながら。
 
 それだけは、はっきりと、思うことができた。
 
 
 ・
 ・
 ・
145◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:23:51 ID:VEVSdu0o0
「間違いなく、フィルとガシューですね」
 
(アクセ~゚ー゚)「そうだね。格好だけ似せた偽者なんかじゃない」
 
(アクセ~゚ー゚)「二人とももう、息はないようだね」
 
「状況を確認して報告しにきた兵によれば、フィルが一度はガシューを逃がしたものの、ガシューは再び戻ってきたようです」
 
(アクセ~゚ー゚)「ってことは、途中で見たガシューっぽいやつは本当にガシューだったのかも」
 
「ともかく、ここでの戦は終わりですね」
 
(アクセ~゚ー゚)「だね。素早く兵をまとめて南に向かわないと」
 
「はい。では、フィルとガシューの首をお取りします」
 
(アクセ~゚ー゚)「ん?」
 
「おめでとうございます、アクセリト大尉。この武勲で恐らく、将官まで昇格することは間違いないかと」
 
「今回のオオカミ軍殲滅戦で、一番の勲功となりえるでしょう」
 
 
(アクセ~゚ー゚)「……いやいや、あのさぁ。何言ってんの、二人とも」
 
「え?」

146◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:26:33 ID:VEVSdu0o0
(アクセ~゚ー゚)「僕言ったよね、素早く兵をまとめて南へって。誰が二人の首を取れって言ったの」
 
「い、いや、しかし。ここで首を取らないなどありえない話で」
 
(アクセ~゚ー゚)「確かにこの森の戦で指揮を任されたけどさ、別に僕が討ち取ったわけじゃないし」
 
(アクセ~゚ー゚)「それより何より、あまりにも無粋すぎるでしょ」
 
「……無粋、とは?」
 
(アクセ~゚ー゚)「だってさ、フィルは逃がしたんだよ。ガシューを。自分が死ぬであろうことを分かってて」
 
(アクセ~゚ー゚)「そしてガシューも戻ってきた。多分、フィルを助けるためだけに」
 
(アクセ~゚ー゚)「本当は、国のためだけを思うなら、二人とも褒められた行動じゃないんだ。どっちかだけじゃなく、二人とも生き延びる道を選ぶべきだった」
 
(アクセ~゚ー゚)「今の状況を考えたら、間違いなく、二人ともオオカミに欠かせない存在だったんだから」
 
「それは、確かに」
 
(アクセ~゚ー゚)「でも二人は、互いを生かそうとした。国のためじゃなくて、多分、かけがえのない戦友だからっていう理由で」
 
(アクセ~゚ー゚)「二人とも、戦場に生きる者として、最後は自分の気持ちを優先した。僕はそんな最期が、嫌いじゃないんだ」
 
(アクセ~゚ー゚)「だからここは、このまま二人を眠らせてあげよう。それがこの二人に払える、最大限の敬意だ」

147◆azwd/t2EpE :2019/03/21(木) 23:29:13 ID:VEVSdu0o0
「しかし大尉、敵将を討ち取ったという確たる証も持たずに帰れば、どんな処分を受けるか」
 
(アクセ~゚ー゚)「ま、さすがに打ち首にはならないでしょ。ちゃんと話せばアルタイム大将もカルリナ中将も分かってくれると思うし」
 
(アクセ~゚ー゚)「フィルとガシューは生死不明のまま歴史から去るってことになるかもだけど、それはそれで悪くないんじゃない? ダメかな?」
 
「そう仰るのであれば、私たちは、大尉の意向に従います」
 
(アクセ~゚ー゚)「ありがとう。やっぱりどう考えても、ここで二人の首を取るのは、どうにも気分が乗らなくてね」
 
 
(アクセ~゚ー゚)「戦場に生きる者としての想いをかけて戦った二人が、静かに眠れることを、心から願おう」
 
 
(アクセ~゚ー゚)「どうか、安らかに」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
               【最後の夜、静かな夜 : End】

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