- 2 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金)
21:54:50.63 ID:DDE2GMxX0
- 〜ヴィップの兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
31歳 大将
使用可能アルファベット:V
現在地:ミーナ城
●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
45歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:ヴィップ城
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
36歳 中将
使用可能アルファベット:X
現在地:???
●( ゚д゚) ミルナ=クォッチ
46歳 中将
使用可能アルファベット:U
現在地:ミーナ城
●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
46歳 中将
使用可能アルファベット:T
現在地:ハルヒ城
- 5 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金)
21:55:47.95 ID:DDE2GMxX0
- ●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
49歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:ハルヒ城
●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
42歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城
●( ><) ビロード=フィラデルフィア
34歳 大尉
使用可能アルファベット:O
現在地:オオカミ城
●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
44歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:シャッフル城
- 15 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 21:56:39.26 ID:DDE2GMxX0
- ●(´<_` ) オトジャ=サスガ
44歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:シャッフル城
●( ФωФ) ロマネスク=リティット
24歳 中尉
使用可能アルファベット:M
現在地:ハルヒ城
●(个△个) ルシファー=ラストフェニックス
24歳 ミルナ中将配下部隊長
使用可能アルファベット:K
現在地:ウタワレ城
- 19 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 21:57:24.81 ID:DDE2GMxX0
- 大将:ブーン
中将:ジョルジュ/モララー/ミルナ/ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー
大尉:ビロード/アニジャ/オトジャ
中尉:ロマネスク
少尉:
(佐官級は存在しません)
- 24 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE
:2008/03/07(金) 21:58:15.17 ID:DDE2GMxX0
- A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:ルシファー
L:
M:ロマネスク
N:
O:ヒッキー/ビロード
P:アニジャ/オトジャ
Q:
R:プギャー/フサギコ
S:ファルロ/ギルバード
T:ニダー/アルタイム
U:ミルナ
V:ブーン/ジョルジュ
W:
X:モララー
Y:
Z:ショボン
- 30 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE
:2008/03/07(金) 21:58:49.70 ID:DDE2GMxX0
- 一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml
(現実で現在使われているものとは異なります)
---------------------------------------------------
・全ての国境線上
- 36 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 21:59:40.42 ID:DDE2GMxX0
- 【第97話 : Conceal】
――オリンシス城――
出立は、秋の中頃だった。
あまり寒くならないうちに、と思って早めにヴィップ城を発ったのだ。
しかし、気づけばもう秋の収穫が終わり、冬の入り口に近づいていた。
一日に長時間移動できないため、思ったよりも時間がかかってしまったのだ。
それでも、オリンシス城までは無事に到達できた。
( ゚∀゚)「久しぶりだな、フサギコ」
ミ,,゚Д゚彡「ジョルジュ大将、御身体のほうは?」
( ゚∀゚)「相変わらずだ。それに、俺はもう大将じゃねぇって」
ミ,,゚Д゚彡「あ……申し訳ありません。昔からの癖で、つい」
オリンシス城守将の、フサギコが迎え入れてくれた。
次の戦で前線とはならないが、それでも要点であることに変わりはない城だ。
戦の準備に追われているようだった。
( ゚∀゚)「本物の大将は元気か?」
ミ,,゚Д゚彡「えぇ。日に日に、頼もしくなっている気がします」
( ゚∀゚)「報告は受けた。ミーナ城戦は完勝だったらしいな」
- 54 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:01:45.82 ID:DDE2GMxX0
- ミ,,゚Д゚彡「ぶつかった敵勢が、ほぼ同数でしたから」
( ゚∀゚)「にしたって、大したもんだ。お前も奮戦したって聞いてるぞ」
ミ,,゚Д゚彡「恐縮です」
その日は、オリンシス城で一晩、フサギコと語りあった。
ブーンのことやミルナのこと、ラウンジのことなど聞きたいことは挙げきれないほどあったのだ。
特に、カルリナが居なくなってラウンジがどう変わったのか、は知っておきたかった。
翌朝になって、すぐオリンシス城を発つことになった。
このまま老医の許へ向かいたいところだが、ミルナから話を聞かなければならない。
それに、ブーンに一度会っておきたい気持ちもある。
ミ,,゚Д゚彡「ジョルジュ中将……決して無理はなさらないで下さい」
( ゚∀゚)「分かってる。こんなとこで無理して戦場に復帰できなくなったら、最悪だからな」
ミ,,゚Д゚彡「……その復帰さえもです」
馬に跨り、今からミーナ城へ向かう、といったタイミングだった。
つまり、出発直前になって、フサギコはそんなことを言い始めたのだ。
ミ,,゚Д゚彡「ジョルジュ中将は、長年にわたってヴィップに貢献してきました。
それは他のどの将とも比較にならないほどです」
( ゚∀゚)「だからもう、戦をやめても誰も責めたりしない、って言いたいのか?」
- 58 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:03:49.29 ID:DDE2GMxX0
- ミ,,゚Д゚彡「というよりも、ゆっくりと体を休めてほしいのです。
皆、ジョルジュ中将の功績を知っています。だからこそ、無理はしないでほしいと思うのです。
自分たちが必ずや、天下をご覧にいれますから」
フサギコは、知らない。
今、病身となった自分が、これからどこへ向かおうとしているのか、知らされていない。
それでも、自分の生を願ってくれている。
十分な休養を取り、ヴィップの天下を共に見ようと言ってくれているのだ。
いい部下を持った。
何物にも代えがたい、宝のようなものだった。
ハンナバルも、死の直前、同じような気持ちを抱いてくれていたのだろうか。
( ゚∀゚)「……フサギコ、俺は三十年も前からずっと戦に生きてきたんだ」
ミ,,゚Д゚彡「……?」
( ゚∀゚)「今さら、身を引くことなんてできねぇさ。例えどんな状態であろうと。
これからも、戦に生きていくしかない男なんだ」
ミ,,゚Д゚彡「……そうですか……」
しょげた顔になると、ますます弟に似る。
優しげな表情、と言ったほうがいいのだろうか。
( ゚∀゚)「だが、お前の気持ちは心から嬉しく思う」
- 66 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:05:50.70 ID:DDE2GMxX0
- 供の者に合図し、フサギコの反応を確かめないまま、駆けだした。
体にぶつかる風は、冬の匂いを伴わせている。
木々から木の葉も落ち、風に乗って舞い上がっていた。
夜は汗を感じるほど暖を取り、疲労が溜まらないようにしながら移動した。
侍医もヴィップ城から伴っている。体調の管理には、常に気を配っていた。
やがて、ミーナ城に着いた。
城外で、ブーンとミルナが待ってくれていた。
( ゚д゚)「変わりはないようだな、ジョルジュ」
( ゚∀゚)「まーな」
( ^ω^)「疲労はありませんかお?」
( ゚∀゚)「ちょっとだけだ。問題ねー」
やけに落ち着き払って見えた。
二人とも、だ。
もうすぐラウンジと戦になるというのに。
城内に入ったあと、既に用意されていた一室に入った。
治療のための用具一式も、部屋の片隅に整えられている。
侍医が嬉しそうに何かと鞄に詰めていた。
( ゚∀゚)「ここまで来るだけで、やけに時間喰っちまった。
情けねーな。俺がこんなに病弱だったとは」
- 70 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:07:58.31 ID:DDE2GMxX0
- ( ゚д゚)「長いこと大将をやっていれば、体のどこかは壊すさ」
( ゚∀゚)「そーいや、お前も一時期やたらと病気になってたな」
( ゚д゚)「過労が祟るのさ。ベルも最後は実質的に病死だった」
この部屋には今、ブーンもいる。
同じように座って話を聞いている。
なのに、ミルナはベルの話を出した。
単に話の流れだろうか。それとも、ブーンに話しておいたほうがいい、という意味だろうか。
自分が、これからベルを一時的に復活させた老医の許へ行く、と。
黙っておきたい。
余計な心配は、かけたくない。
ブーンはあまり器用な男ではない、と思うからだ。
( ゚∀゚)「オオカミの元大将アテナットも、病死だったか?」
ベルから、不自然でない程度に話を逸らした。
やはり、ブーンには伝えたくない。
( ゚д゚)「そうだな。長期間、大将をやってて体を壊していないのは、今はショボンだけだろう」
( ゚∀゚)「ハンナバル総大将も、病死だったしな……。
アルタイムも健康だが今は中将になってる……確かに、ショボンだけだな」
( ^ω^)「鍛えてるから……なんですかお?」
- 80 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:10:28.20 ID:DDE2GMxX0
- ( ゚д゚)「さぁな。確かにあいつの体つきは、同じ人間とは思えんがな。
よほど体調管理に気を配っているんだろうと思うが」
( ^ω^)「ブーンももっと鍛えなきゃですお……」
ショボンの後を追っているわけではないだろうが、そういえばブーンは逞しくなった。
以前より肩が張り、胸板も厚くなっている。
入軍当初は脂肪が少し気になるほどだったが、引き締まった体になっていた。
だから、なのだろうか。
それとも、関係ないのだろうか。
少し、ブーンの表情が、違って見える。
それも、以前よりも暗いように感じるのだ。
ベルベットやエクストが戦死したことの影響だろうか。
肯定されれば納得できる。しかし、否定されたとしても、納得できてしまう。
( ゚д゚)「そうだ、ジョルジュ」
( ゚∀゚)「ん?」
( ゚д゚)「聞いておいてもらおうじゃないか。ブーンの、逆転の策を」
( ゚∀゚)「……逆転の策、だと?」
( ^ω^)「お話しますお、ジョルジュ中将」
居住まいを正して、静かに、ブーンは話し始めた。
一言ひとこと、丁寧に。
- 85 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:12:56.93 ID:DDE2GMxX0
- 時間はかからなかった。
話の内容も、ある意味では、単純明快だった。
( ^ω^)「――――以上ですお」
( ゚д゚)「どう思う、ジョルジュ」
( ゚∀゚)「……どうって……」
( ゚∀゚)「笑うしかねーだろ、こりゃ」
背凭れを、大きく軋ませた。
(;^ω^)「無謀な策、ですかお?」
( ゚∀゚)「あぁ」
( ゚д゚)「百も承知だ。しかしジョルジュ、他に方策が」
( ゚∀゚)「勘違いすんなって。別に否定するわけじゃねーさ」
手を前に出して、横に振った。
ミルナの言葉を、遮った。
( ゚∀゚)「笑っちまうような策だが、なるほど悪くない。
いや、現状じゃ最善かつ最高だ。俺は、賛成するさ。
この策を立てたお前の度胸を買いたいくらいだ、ブーン」
ブーンとミルナが顔を見合わせた。
どうやら、自分に否定されることを恐れていたらしい。
- 95 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:15:10.78 ID:DDE2GMxX0
- それに、二人で行動している間に、随分と気心の知れた仲になったようだ。
いい組み合わせになるだろう、という気がした。
( ゚∀゚)「しかしその策は、実現困難と言ってもいいな。
二段階、実現させなきゃならねーが、第一段階が特にきつい」
( ^ω^)「そうなんですお。第一段階さえ達成すれば、後はそう難しくないと思うんですお。
策が成るかどうかは別としても、実現についてはさほど心配してませんお」
( ゚∀゚)「あぁ。第二段階は、問題ねーさ。俺が保証してもいいくらいだ。
ショボンの性質は熟知してるつもりだ。あいつが大将を務める限りは、問題ない」
( ゚д゚)「クラウンがどう出てくるかは、多少気になるがな」
( ゚∀゚)「問題ねーって。クラウンが居ようと、ショボンが大将なら大丈夫だ」
確信がある。
あいつの本性は見抜けなかったが、戦に対する考え方なら、把握しているつもりだ。
大将と大将。ショボンとそういう関係だった自分だからこそ、分かることもある。
( ゚∀゚)「このミーナ城を奪ったのは、第一段階の、そのまた初期段階ってとこか?」
( ^ω^)「ですお。まだ、やらなきゃいけないことが山積してますお」
( ゚д゚)「あぁ。しかも、達成困難だ」
( ゚∀゚)(……なら、やっぱ俺の力は必要になるな……)
- 104 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:17:19.35 ID:DDE2GMxX0
- 心の中で、呟く。
ブーンが立てた策の実現には、戦力が必要だ。
ヴィップで療養しているモララーの力、そして自分の力。
たとえ一時でもいい。
ヴィップの天下の、一助になれれば。
何の悔いも残らない。
( ゚∀゚)「……しかし、いいのか?
ブーン」
( ^ω^)「何がですお?」
( ゚∀゚)「その策を、実行して……そして、最後……お前、覚悟はできてるのか?」
( ^ω^)「…………」
一瞬、入軍したころのような顔に、ブーンは戻った。
本当に一瞬だけ、だが確かに、表情が幼くなったのだ。
( ^ω^)「……もちろん、覚悟はできてますお。じゃなきゃ、こんな策立てられませんお」
( ゚∀゚)「そうか……すまなかった。わざわざ聞いたりして」
( ^ω^)「いえ。ブーンも、覚悟を再認識できましたお」
やはり、ブーンの様子に、違和感を覚えてしまう。
本来は喜ぶべき違和感なのかも知れない。
しかし、引っかかる。
( ゚∀゚)「何も感じないか? ミルナ」
- 115 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:19:37.25 ID:DDE2GMxX0
- ブーンが任務に戻った後、老医の場所を紙に書いてもらうため、ミルナの部屋に向かった。
城は放棄でなく、守兵の降伏によるものだったため、部屋の設備は整っている。
( ゚д゚)「何がだ?」
( ゚∀゚)「ブーンさ。どことなーく、不自然に思うんだが」
( ゚д゚)「……そうか? 確かに最近、武将としての質は変わりつつあるがな」
( ゚∀゚)「俺も感じた。随分、落ち着き払った将になった」
( ゚д゚)「問題あるのか? あいつは、着実に進化していると思うが」
( ゚∀゚)「いや、まぁな。良いっちゃ良いんだ。あいつも、歴戦の大将に似てきたかな、と」
( ゚∀゚)「ただ……」
その先の言葉は、口にできなかった。
口にすれば、きっと自分のなかで確信に変わってしまう。
( ゚∀゚)「……まぁ、大将って職に慣れてきたのかもな、あいつも」
( ゚д゚)「俺もそう思っているが」
( ゚∀゚)「それに、俺はあいつに会うのも久しぶりだった。
だからお前が普段感じない些細な変化も、急激な変化のように感じてるのかも知れねぇ」
( ゚д゚)「引っかかっているようだな、やけに」
- 121 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:21:44.75 ID:DDE2GMxX0
- ( ゚∀゚)「いや、悪い傾向じゃないと思うんだ。
もしあいつに、確実な冷静さが加わったら、怖いくらいの武将になる。
んで、今はその道を進みつつある」
( ゚д゚)「なら問題ないだろう」
( ゚∀゚)「あぁ……」
ベルベットらの死は、無関係ではないだろう。
恐らくそこに端を発し、ブーンに何らかの影響を及ぼしている。
そしてきっと、いい影響と呼ぶべき状態になっているのだ。
そのはずだ。
だから、ミルナが言うとおり、何の問題もないはずなのだ。
( ゚∀゚)「……老医のとこに行って、また戻ってきたとき、見極めることにする」
( ゚д゚)「お前がそこまで言うなら……俺も留意しよう」
( ゚∀゚)「頼む」
ミルナから地図を受け取ったあとは、シブサワと会った。
オオカミ将校のアルファベットを作っていたという職人だ。
いずれ復帰するときに、アルファベットを作ってもらう約束を交わした。
一通り話し合うべきことを終えたあと、すぐに休息を取った。
老医の住んでいる場所は、ミーナ城からそれほど遠くはない。しかし、またしばらく馬上の旅だ。
寝具で休めるときに、思いきり休んでおきたかった。
- 128 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:23:52.46 ID:DDE2GMxX0
- 翌朝、まだ空が青くならないうちに出発した。
少しでも早く戦場に戻りたい気持ちがあったからだ。
ブーンの逆転の策に、貢献したいと思ったからだ。
( ゚∀゚)(……ブーン……)
もう一度だけ、ブーンと話をしていこうか。
そうも思ったが、意味のないことだとすぐ思い直し、前へ進んだ。
しかし、しばらくは城に袖でも引っ張られているような感覚があった。
――ダカーポ城・南――
(´・ω・`)「後方、問題はないか?」
川 ゚ -゚)「はい」
兵士の身なりで行軍に随行しているクーが、馬を走らせてきた。
最近、リディアルやカルリナといった主だった将を立て続けに失い、人材が不足しはじめているのだ。
ヴィップの結束が固いこともあって、クーも間者としての役割が減りつつあった。
(´・ω・`)「ファルロの復帰が、ありがたいな」
川 ゚ -゚)「大きいですね、非常に」
一年近く休養に徹していたファルロが、戦場に戻る。
もう長駆が苦にならないほど体力も回復しているという。
- 139 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:26:15.71 ID:DDE2GMxX0
- アルファベットも上手く壁で引っかかってくれたようだ。
Rに落ちることはなかった、という報告を受けている。
Sの壁突破者が再び戦ってくれるのは、クーの言うとおり非常に大きい。
(´・ω・`)「それに――――モララーも間に合った」
川 ゚ -゚)「……はい」
左に並ぶはクー。
そして、右に並ぶは――――
顔の隠れた、切り札。
脱け殻のように、呆然と馬を進めている。
表情もきっと虚ろだろう。しかし、布に覆われているため分からない。
(´・ω・`)「無事、戦場に立つことができたら、新しい名前を付けてやろうか」
川 ゚ -゚)「そうですね」
僅かな反応を、見せた気がした。
しかし、本当に気のせいかもしれない。
(´・ω・`)「惜しまず使うぞ。最初からだ」
川 ゚ -゚)「そのほうが、ヴィップに与える衝撃は大きいでしょう」
(´・ω・`)「あぁ、だからこそだ」
- 155 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:28:21.41 ID:DDE2GMxX0
- 負けられない戦になる。
フェイト城戦。
ヴィップは何がなんでも落とそうとしてくるだろう。
勢いに乗っている。士気も高い水準で維持されている。
だからこそ、挫いておきたいのだ。
動員兵力は四万。
兵糧を得ることはできたが、一年を見通して計画を立てなければならない。
兵数が少なく、また物資が多量に得られるヴィップのほうが余裕を持っているのだ。
フェイト城の三万五千と合わせ、七万でヴィップと戦う。
ヴィップ軍の兵力は分からないが、恐らく四万か五万程度だろう。
兵の錬度で劣っていても、優位に立てる兵力差だ。
(´・ω・`)「……やっとか」
ダカーポ城を出てから、随分とかかった気がする。
トーエー川の北岸に着いた。
船の準備は既に整えさせていた。
中型船を使って、南岸へと移る。
五万の兵を移動させるのは、かなりの時間がかかりそうだった。
馬を乗せるのも手間がかかる。
暴れ出しはしないが、一頭ずつ曳いていくのが面倒なのだ。
もっと効率性に優れた船が欲しいところだった。
(´・ω・`)「ん……?」
- 172 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:30:24.21 ID:DDE2GMxX0
- 馬がスムーズに流れるよう指示を下していた。
船内の馬室までに乱れがあると、進軍予定にさえ影響を及ぼしてしまう。
だが、馬の足並みなどより更に重大な乱れが、発生した。
アルタイムが、報せを運んできた。
(`・ι・´)「ギフト城から伝令が来た。パニポニ城に兵が集結しているらしい」
(´・ω・`)「!!」
ミーナ城を奪われたあと、アルタイムは一度北に戻っていた。
体勢を立て直すためにだ。
そして今回、共にフェイト城へ向かっていた。
(´・ω・`)「そうか……来たか」
ニダーやヒッキーが、動いたようだ。
ギフト城は確かに手薄。堅城パニポニ城から狙われることも考えてはいた。
しかし、嫌なタイミングだった。
(`・ι・´)「俺はギフト城に向かおう」
(´・ω・`)「あぁ、そうしてくれ」
(`・ι・´)「兵はどうする?」
(´・ω・`)「ラウンジ城にすぐ伝令を出して、呼び寄せるんだ。
そうだな……四万といったところか」
(`・ι・´)「少々、辛い数だな」
- 182 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:32:53.91 ID:DDE2GMxX0
- (´・ω・`)「あぁ。兵糧の運用計画が大きく乱れる」
本当なら一兵も出したくはない。
戦となると、まとまった兵糧が必要になってしまうからだ。
遠征地であればあるほど、兵が多ければ多いほど、だった。
(´・ω・`)「アルタイム、できれば籠城戦には持ち込まれないようにしてくれ。
ヴィップは兵糧を潤沢に抱えている。兵糧の勝負では勝てない」
(`・ι・´)「野戦で凌ぐべきか」
(´・ω・`)「あぁ。兵糧を浪費させられるのが今は最も痛い」
(`・ι・´)「難しい戦になりそうだが……最善を尽くそう」
(´・ω・`)「オワタを伴って行ってくれ。多少は役に立つはずだ」
(`・ι・´)「分かった」
アルタイムが駆け去った。
これで遠征軍は二つ。
兵糧を得て早々、大幅な消費を強いられることとなる。
圧倒的な大軍というのも、やはりいいことばかりではない。
ラウンジは領土も広大だが、寒冷地が多く、農作物が育ちにくいのだ。
よって、満足できるほどの兵糧は得られない。
- 189 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:35:00.83 ID:DDE2GMxX0
- 遠征に出て敵軍を攻められるのは、年に三度か、上手くいっても四度。
季節が変わるごとに一度、という見積もりを立てていた。
しかし、こちらよりもはるかに多く戦に出られるヴィップが、攻め込んでくることも考えなければならなかった。
二つ同時に戦線を抱えたくない、とは思っていた。
だからこそ、フェイト城への行軍は急いだのだ。
(´・ω・`)(……しかし……)
パニポニ城にも、ヴィップは三万から五万ほどの兵力を動員するだろう。
新兵募集によって、兵が徐々に増えているという情報もある。
そこで、疑問が生じる。
いくら兵糧があると言えど、ヴィップは動きすぎではないか、と。
守る側より攻める側のほうが、当然だが兵糧を多く要する。
数千といった規模なら大した差ではないが、数万ともなれば攻守による消費量差は大きい。
攻撃側は、いずれ必ず城に迫る必要がある。
そのとき後方の兵站が乱されることを考慮し、多めに運んでおくのが基本だ。
野営となった場合は調理できる兵糧も限られる。
城を守るのに比べると、辛い部分が多い。
だから、いかに兵糧の潤沢なヴィップといえど、攻め続けるのは辛いはずなのだ。
(´・ω・`)「どう思う、クー」
川 ゚ -゚)「フェイト城、ギフト城の二城を奪って秋まで保持するつもりでは、と」
(´・ω・`)「なるほどな。しかし、それほど甘い見通しを立てる国とも思えん」
- 193 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:37:03.53 ID:DDE2GMxX0
- 川 ゚ -゚)「でしたら、やはり機先を制しにきたと単純に考えるべきでは」
(´・ω・`)「一気に二つの城を、攻めるだけ攻めに来た、か」
川 ゚ -゚)「しかし、隙を突かれて逆に城を奪われることを、恐れていないとも思えません」
(´・ω・`)「そのとおりだな。やはり、そんなに甘い男たちではない」
川 ゚ -゚)「ですが正直、ヴィップの戦略は無謀としか思えません」
同意見だが、それで納得して終わらせるわけにはいかない。
必ず何かある。何か、狙いがあるのだ。
(´・ω・`)「……とりあえず、戦に集中するとしよう。
フェイト城を守り切って、然る後に攻め込む」
川 ゚ -゚)「ヴィップの目論見など、戦力で潰してしまえばどうということもありません」
(´・ω・`)「あぁ」
ヴィップの狙いが何であろうと、負けを目指していることはないだろう。
あくまで勝利の上に成り立っている目論見のはずだ。
だったら、戦に勝てばいい。
城を奪えば領土が増える。
得られる兵糧も、増える。
- 199 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:39:11.41 ID:DDE2GMxX0
- 単純に考えて、単純に攻めていけばいいのだ。
奇策、珍策をいくら考えようと、圧倒的勢力の正攻法には全て敵わない。
ラウンジ、ヴィップが共闘してオオカミを潰した戦など、正にそうだった。
臆せず、戦えばいい。
――パニポニ城――
攻めの戦は、久しぶりだ。
ショボンが裏切って以来、北東方面は守りに徹してきたが、反撃に出る。
おかげで、軍内の士気は高かった。
(-_-)(これで、全軍か……)
居室で編成が記された書類を眺めていた。
表組みになっていて、一目でI隊やH隊の人数が分かる。
部隊の錬度もおおよそだが、数値化されていた。
(;ФωФ)「失礼致します、ヒッキー少将」
(-_-)「……ん……ロマネスクか……」
汗まみれのロマネスクが、具足に身を纏ったまま入ってきた。
どうやら、先ほどまで調練をおこなっていたらしい。
(;ФωФ)「編成に不備は?」
(-_-)「問題ない……助かった……」
- 205 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:41:17.19 ID:DDE2GMxX0
- (;ФωФ)「はっ、ではこれにて」
機敏な動きですぐに立ち去った。
まだ二十四と若い。溌剌としている。
シャッフル城戦で戦死した、ベルベットのような働きを求められている男だった。
考え方は若い将校と思えないほどしっかりしている。
ベルベットを彷彿とさせられるのも分かる。
が、少し元気が良すぎるのではないか、とも感じていた。
常に全力で物事に取り組むため、どこかで破裂してしまわないかと不安になる。
調練だけならまだいいが、今回任せた編成も、編成表まで作ってこちらに回してくれた。
厩舎にも寝る前に必ず訪れ、馬の調子を管理しているらしい。完全に、働きすぎだった。
(-_-)「…………」
自分が、あまり物事に積極的でないため、そう思うのかも知れない。
それに、人によって働ける限界量は違う。
自分は将校のなかでも群を抜いて低いだろう。だからこそ、ロマネスクの動きが目につくのかも知れない。
(-_-)(……ダイオードを探しに行くか……)
部屋から出て、城内を歩き回った。
この城に入るのも久しぶりだが、相変わらず造形は美しい。
しかし、ところどころ老朽化が目立ち始めているのは残念だった。
/ ゚、。 /「ヒッキー少将?」
いつの間にか目的を忘れ、散歩に変わっていたところ、ダイオードのほうから話しかけられた。
一緒にアルファベットでも訓練しようか、と持ちかけるつもりだったのだが、どうやらダイオードは疲労困憊のようだ。
- 214 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:43:21.18 ID:DDE2GMxX0
- (-_-)「……何をしていたんだ……?」
/ ゚、。 /「兵糧移送の指示を」
そういえば、山を登ってくる輸送隊に正しいルートを示してやってくれ、と頼んでいた。
どうやら城内に運び込む作業が終わり、ダイオードは今から夕食に向かうところのようだ。
(-_-)「……中尉に上がったんだったな……」
先日までと違う将校章が目についた。
長年、ダイオード=ウッドベルは少尉の地位に留まっていたのだ。
/ ゚、。 /「はい。エクスト中尉がお亡くなりになられましたから」
相変わらず、淡白な性格だ。
エクストが殿軍を務め、ニダーを守って戦死したことに対しても、淡々としている。
事実のみを捉え、自分のなかに沁み込ませているのだ。
だからお前は少尉に留め置かれていたのだ、と言っても無駄だろう。
この歳になって今更、性格が変わるとは思えない。
散々ジョルジュに性格のことで苦言を呈されてきた自分が、一番よく分かっている。
(-_-)(……自分と、似通っているな……)
戦に対する姿勢は、瓜二つと言っていい。
積極性がない。勝てる戦ではなく、負けない戦を優先してしまう。
そうやって共通している部分があるため、ダイオードのことは嫌いではなかった。
会話しているときも、盛りあがることは決してないが、気を遣わずに済むため楽だ。
- 222 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:46:03.33 ID:DDE2GMxX0
- だが、自分に似ているからこそ、変わってほしいとも思う。
自分のようにはなってほしくない、と思ってしまう。
(-_-)「…………」
ダイオードと別れたあとは、また自室に戻った。
一緒に食堂へ向かっても良かったが、空腹を感じなかったのだ。
自分ももう五十に近い。若いころと同じようには食べられなくなっている。
先も、長くはないだろう。
この国の行く末を最後まで見守れるか、分からない。
ギフト城へともうすぐ攻め込む。
率いるは三万の兵。対するラウンジは、四万以上を使ってくるだろう。
パニポニ城を上手く利用して戦うしかなさそうだった。
そうやって、戦のことを考えるたびに思う。
次の戦が、最後になるかも知れない、と。
軍人である以上、いつだって死は覚悟してきた。
常に隣り合わせで、実際、頬を掠めたこともあった。
しかし、今まで生き続けることができた。
(-_-)(……思いもしなかったな……)
入軍してからずっと、いつかは軍人を辞めるつもりでいた。
粉になるまで戦う先達のようにはなれない、と冷めた目で見ていたのだ。
だから、自然といずれは戦場から去るだろうと考えていた。
- 227 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:48:08.39 ID:DDE2GMxX0
- しかし、結局ここまで来た。
既に四十九。経験した戦場の数ももはや覚えていない。
これほど長く戦うことになるとは、思いもしなかった。
まだ、戦場を後にすることはできない。
アルファベットを振るう気力は、残っている。
そして、何よりも。
何よりも、また、ジョルジュと共に戦いたい。
ジョルジュの指揮下で、アルファベットを振るいたい。
病床に伏しているジョルジュだが、きっとまた戦場に戻ってくる。
あの人は、ずっと戦に生きてきた武人だ。
最後まで、戦場に立ち続けてくれるはずなのだ。
(-_-)「…………」
しかし果たして、共に戦う日はやって来るのだろうか。
――フェイト城・南――
(´・ω・`)「単純な戦になるな」
( ^Д^)「しかし、そのときこそラウンジの本領発揮でしょう」
- 240 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:50:39.91 ID:DDE2GMxX0
- フェイト城に五千の兵を残し、南下していた。
兵数、七万。本当は十万以上を使いたかったが、兵糧を得たばかりで大軍は動員できない。
しかし、ヴィップ軍を二万以上、上回っているはずだ。
個々の部隊錬度では、劣っているかも知れない。
が、そこは戦術で補えばいいだけの話だ。
(´・ω・`)(カルリナがいれば、俺はアルファベットを振るうことだけに集中できたんだがな)
今更、考えても仕方ないことだった。
先の戦では、隣にカルリナがいた。しかし今はプギャー。
比較したくもないほどの差だ。
自分で戦術を考えても、カルリナに劣るとは思わない。
しかし、武勇への比重がどうしても減ってしまう。
それが、自分としては苦々しい。
だからカルリナの存在は、貴重だったのだ。
失いたくなかったのだ。
(´・ω・`)(……プギャー、ギルバード、ファルロか……)
主だった将校は、悪くない面々だ。
それぞれ、野戦の経験が豊富にある。
だから今回は、野戦を見据えていた。
ヴィップを、原野へと誘っているのだ。
- 255 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:52:48.94 ID:DDE2GMxX0
- ( ^Д^)「ちょうど、中間点ですか」
(´・ω・`)「あぁ」
フェイト城と、ミーナ城を繋いだ線の、中点。
そこまでおよそ、半里の地点で、全軍を停止させ陣容を固めた。
同じように、ヴィップも中間点に迫っている。
半里の距離を、取っている。
(´・ω・`)(ちょうど、一里を挟んで向かい合う形か)
どちらかが動き出せば、すぐ戦になる。
しかし、動きにくい。そんな微妙な距離だ。
互いに陣を整えた。
(´・ω・`)(単純な戦になるな、やはり)
単純だが、あまりやったことのない戦だ。
互いの防衛線を、押し合う戦。
中間点から、負けたほうが徐々に押される。
押されに押され、最後、城まで到達されると、放棄せざるを得ない。
後背を塞がれた挙句、兵站を断たれかねないからだ。
城まで押し込まれれば、士気も地に落ちるだろう。
恐らく、城を守り切れなくなるはずだ。
両軍ともに、だった。
- 262 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:54:54.77 ID:DDE2GMxX0
- 特にラウンジは、籠城できるような兵糧がない。
ヴィップも、ミーナ城に籠りたくはないはずだ。
だから、この戦は原野で全てが始まり、全てが終わる。
思わず高揚してしまう。
やはり、戦はこうでなければ、と思ってしまう。
(´・ω・`)「…………」
原野を吹き抜ける風が、戦場に唯一の音を生み出した。
両軍、声もない。鉦の音も響いていない。
ただじっと、睨みあっている。
一刻ほども膠着が続いただろうか。
広壮な原野で、向かい合う数万規模の両軍。
自分の足首あたりまでしかない長さの草が、風に揺れる。
そんな、なかで。
(´・ω・`)「……!!」
ブーンが、前に出てきた。
馬にも跨らず、単身で。
こちらを見据えていた。
そして構えるは、アルファベットW。
(;^Д^)「ショボン大将……!!」
(´・ω・`)「どいてろ」
- 286 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:57:23.46 ID:DDE2GMxX0
- 同じように、前へと踏み出す。
そして、アルファベットZを構える。
(´・ω・`)(ベル=リミナリーのように、か)
ブーンは、じっとWを構えていた。
自分の体勢が整うのを、待っているかのように。
また一瞬だけ、静寂が蘇った。
しかし、風を裂く音が、高速で近づいてくる。
左腕だけを、動かした。
一本の線となって迫ってきたFが、自分の目の前で砕ける。
残骸が、草原に散った。
(´・ω・`)「鏑矢代わりとしては悪くないが――――お前では、ベル=リミナリーには及ばんさ」
即座に、進軍命令を下した。
ほぼ同時に、ヴィップも軍を動かし、互いの距離が詰まる。
互いに、先頭の騎馬隊がぶつかった。
自分の近衛騎兵隊はまだ使わない。
先に、敵の出方を窺う。
両軍、鶴翼を裏返したような陣立てだ。
だがいくらでも組み換えが利く。
まだ、敵軍の狙いを判断してはならない。
- 293 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 22:59:42.36 ID:DDE2GMxX0
- ぶつかりあった騎馬隊は、競ったあと、すれ違うように離れて自陣に戻った。
互いに五千程度。実力は、拮抗していた。
ただ、そのあとにぶつかった歩兵七千は、隊を乱された。
すぐに立て直せたが、被害は決して少なくない。
やはり、歩兵隊の錬度差が大きい。
歩兵隊が下がった後は、再び騎馬隊を繰り出した。
騎馬隊の移動速度はこちらのほうが速い。歩兵隊に、襲いかかる。
上手くいなされたが、主導権を握ったのはラウンジだった。
ここで勢いを緩めたくはない。
しかし、敵に守勢を取られたくもない。
二つの要素を考慮した結果、自分が近衛騎兵隊を使わずに出ることを決断した。
騎馬隊を率い、敵軍の左翼に向かう。
しかし、左翼は動きを見せ、中央との合流を図ってきた。
やはり自分が出ると、警戒されてしまうか。
(´・ω・`)(……ん……?)
はっきりとブーンの姿が確認できた。
ブーンも、自分を見ている。いや、睨んでいる。
(´・ω・`)(面白い)
望むのなら、やってやる。
一騎打ちでも、何でもやってやる。
どうせブーン、お前は俺に勝てない。
- 303 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 23:01:45.14 ID:DDE2GMxX0
- 心の中で、話しかけた。
しかしブーンは、自陣の奥へと引っこんでしまった。
一騎打ちは、回避してきた。
(´・ω・`)(冷静になっているようだな)
勝てない勝負には、挑まないつもりだろう。
それも当然だ。あいつは、一国の大将なのだ。
以前のように、誰にでも一騎打ちを仕掛けられる立場ではなくなっている。
相手が上位アルファベットとなれば当然だろう。
回避してきたのは、自分としては残念だが、致し方ない。
やはり、別のやり方でヴィップを破るしかなさそうだ。
自陣に戻り、歩兵隊を繰り出した。H隊だ。
ヴィップはG隊を使って、押しこまれないように防いできた。
H隊を下げ、五千の騎馬隊で攻め込ませる。
対するヴィップも騎馬隊を使ってきた。
兵数は、三千ほどだろうか。ラウンジの五千より少ない。
しかし、どうやら精兵を出してきたようだ。
(´・ω・`)(大軍には、少数精鋭で挑んでくる気か)
兵力差を埋めるには、それしかないだろうとは思っていた。
予測は、できていた。
ただ、小細工で破れる戦法ではない。
-
- 313 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 23:03:55.89 ID:DDE2GMxX0
- ブーンは戦況を上手く見極めている。
どの部隊を、どの部隊に当てるのか、の判断が的確だ。
しばらく見ない間に、戦が上手くなった。
ただ、以前のような奥深さは感じられない。
ブーンの戦い方は未知数で、無数の広がりを秘めていたのだ。
それが、鳴りを潜めている。
どちらが手強いのか、は判断づかない。
今の賢明な戦術も、嫌な戦い方だ。
(´・ω・`)(攻めにくい戦、か)
堅実さが増したことで、攻め込みにくくなった。
確実な守りを見せつつ、こちらの隙を窺ってきているのだ。
穴らしい穴が見当たらない。
(´・ω・`)(……誘い出すか)
わざと、隙を見せる。
攻め込みたくなるような隙を。
(´・ω・`)「行くぞ」
近衛騎兵隊が、一斉にアルファベットを構えた。
一糸乱れぬ動きで駆けだし、敵陣に迫る。
備えはあったようだ。
取り囲むようにI隊とG隊が前に出てきて、勢いを削ごうとしている。
これでは、敵陣に突っ込むことはできない、という素振りを見せた。
- 318 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 23:06:19.76 ID:DDE2GMxX0
- 大回りして、自陣に戻る。あえて、大回りして。
隙が背中にある。
それを、ヴィップが見逃すはずはない。
すぐにブーン率いる騎馬隊が、飛び出してきた。
(´・ω・`)(さぁ、行って来い)
騎馬隊と、ヴィップの追撃隊の間に、ラウンジの騎馬隊。
ヴィップの不意を突いたわけではない。
分かっていたはずだ。ヴィップも、遮られるであろうことは。
ただ、たとえ遮られても、遮断部隊に対しては先手を取れる。
だから、ヴィップはあからさまな隙に食いついたのだろう。
――――しかし、充分だ。
ヴィップの追撃を遮断した騎馬隊。
その、先頭に立つ男。
(;^ω^)「ッ!?」
(;゚д゚)「ッ!?」
ヴィップ軍の動揺が、こんなに遠くまで伝わる。
(´・ω・`)「……そうだな……あいつの新しい、ちゃんとした名前は――――」
抜き放たれたアルファベットは、V。
ヴィップ軍大将のブーンと、同等。
- 357 :第97話 ◆azwd/t2EpE :2008/03/07(金) 23:08:58.89 ID:DDE2GMxX0
- (´・ω・`)「――――シャイツー。歴史に名を残したニチャンの大将と、同じ名にしよう」
その男の容姿は、似ていた。
ヴィップ軍のモララー=アブレイユに、似ていた。
(・∀ ・)「あははははははははははははははははははははははははははははは」
シャイツー=マタンキ。
ラウンジが長年、秘匿し育ててきた、切り札だ。
ブーンと、シャイツーの間に、遮るものは何もない。
そして、シャイツーの接近は驚くほど速い。
一騎打ちは、避けたくとも、避けられないだろう。
第97話 終わり
〜to be continued
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