4 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:14:48.65 ID:aqKxTFXg0
〜ヴィップの兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
31歳 大将
使用可能アルファベット:V
現在地:オリンシス城・北

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
45歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:ヴィップ城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
36歳 中将
使用可能アルファベット:X
現在地:ヴィップ城

●( ゚д゚) ミルナ=クォッチ
46歳 中将
使用可能アルファベット:U
現在地:キョーアニ川中流

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
46歳 中将
使用可能アルファベット:S
現在地:カノン城
8 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:15:59.45 ID:aqKxTFXg0
●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
49歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:カノン城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
42歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オオカミ城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
34歳 大尉
使用可能アルファベット:O
現在地:オオカミ城

●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
30歳 大尉
使用可能アルファベット:R
現在地:シャッフル城

●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
44歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:シア城

●(´<_` ) オトジャ=サスガ
44歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:リン城
24 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:17:13.75 ID:aqKxTFXg0
●( ФωФ) ロマネスク=リティット
24歳 中尉
使用可能アルファベット:L
現在地:カノン城

●プー゚)フ エクスト=プラズマン
32歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:カノン城

●(个△个) ルシファー=ラストフェニックス
24歳 ミルナ中将配下部隊長
使用可能アルファベット:K
現在地:ウタワレ城
30 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:18:43.91 ID:aqKxTFXg0
大将:ブーン
中将:ジョルジュ/モララー/ミルナ/ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー

大尉:ビロード/ベルベット/アニジャ/オトジャ
中尉:ロマネスク/エクスト
少尉:

(佐官級は存在しません)
35 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:19:59.58 ID:aqKxTFXg0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:ルシファー
L:ロマネスク
M:
N:
O:ヒッキー/ビロード
P:アニジャ/オトジャ/カルリナ
Q:
R:プギャー/ベルベット/フサギコ
S:ニダー/ファルロ/ギルバード
T:アルタイム
U:ミルナ
V:ブーン/ジョルジュ
W:
X:モララー
Y:
Z:ショボン
38 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:20:43.08 ID:aqKxTFXg0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

---------------------------------------------------

・全ての国境線上

43 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:21:45.29 ID:aqKxTFXg0
【第93話 : Pessimism】


――リン城――

 属城に一万ずつを配する。
 そう決断したのはベルベットだった。

 どうやら、当初の思惑どおりになったようだ。
 だが、思惑どおりにならなかった部分も、大きい。

(´<_` )「む……」

 城塔から敵軍を眺めていた。
 どうやら、ラウンジは属城を一つずつ潰す作戦に出たようだ。
 大軍を抱えているにしては、冷静な判断だった。

 属城に攻め寄せたのはプギャーとオワタ。
 元々はヴィップにいた兵であり、特にプギャーはシャッフル城の守将を務めていた。
 地の利があるのは、向こうのほうかも知れない。

 五万の大軍が、このリン城に迫っている。
 まともに戦えば抗えないだろう。
 これはたかが属城だ。ラウンジからすれば、囲むことも容易い。

 だが、この城を奪われるわけにはいかないのだ。

(´<_` )「さて……」
60 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:23:43.75 ID:aqKxTFXg0
 城外へと歩を進めた。
 城には篭れない。そんな兵糧はない。
 それに、ブーンたちがこちらを助けてくれる望みも薄い。

 野戦で打ち破るより他ない。
 そんな逼迫した状況だ。
 戦う前から、分かっていたことだった。

(´<_` )(アニジャ……頼むぞ)

 一万で五万に抗うのは不可能だ。
 シア城にいるアニジャが、うまく攻め込んでくれなければ。

 ここは守るだけでいい。
 守って、五万の敵軍を防ぐだけでいいのだ。

 城外で、構えた。
 ラウンジは緩むことなく進軍してくる。
 地が、揺れている。

(´<_` )「馬止めの柵を」

 準備は整えてあった。
 すぐに馬止めの柵が押し出される。

 ラウンジは騎馬隊を先陣としていた。
 柵は効果的だろう。取り除くまで、自由に動けないはずだ。

(´<_` )「…………」
67 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:25:43.50 ID:aqKxTFXg0
 思考が止むことはなかった。
 シャッフル城を守るために、何が最善かを、常に考え続けている。
 ベルベットも、そうだった。

 ベルベットは英邁な武将だ。
 自分やアニジャなどより、はるかに才がある。
 攻めも守りも、上手くこなせるバランスを持ち合わせている。

 策を考えるのも得意なようだった。
 この馬止めの柵にも、実は些細な仕掛けが用意されている。
 機能するか、役立つかは分からないが、あって損はないのだ。

 だが、この仕掛けをどう使えばいいのか、まだ分からなかった。
 ベルベットも、機能を施してみただけで、可能性については未知数だという。
 実際、使ってみないとわからないことも多いのだ。

(´<_` )「このままでいい」

 周章する部隊長に、言った。
 ラウンジが、馬止めの柵を取り払うべく、動いている。

 シャッフル城は今、どうなっているだろうか。
 ベルベットは、苦戦しているだろうか。

 楽な戦でないことは確かだ。
 相手は、倍数。十万の大軍だ。
 城を背にしているとはいえ、埋められるはずもない大差だった。

 自分たちが五万を引きつけている。
 それで、ベルベットは幾分か楽になったはずだ。
78 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:27:54.38 ID:aqKxTFXg0
 だが、物足りない。
 自分たちの貢献度合いが、実に物足りない。

(´<_` )「よし、行こう」

 一万の兵は、全て歩兵だ。
 騎馬隊とまともにぶつかることはできない。

 しかし、側面。

 ラウンジ軍を襲う兵たち。
 先頭に立つのは、アニジャだ。

(´<_` )「流石だな、アニジャ」

 ラウンジは、後に引き下がることもできず、馬止めの柵に拘った。
 そしてすぐに柵が倒れる。

 騎馬隊が、存分に駆け出してきた。

(´<_` )「二手に分かれるぞ!」

 まともに戦えば勝機はない。
 敵に背を見せてでもいい。とにかく、守り切ることだ。

(´<_`;)「くっ……!!」

 騎馬隊の攻撃を、空振らせようとした。
 が、やはり甘くはない。
 軌道をしかと修正し、ヴィップ軍を襲ってくる。
86 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:29:54.00 ID:aqKxTFXg0
 I隊を使って、騎馬隊を牽制した。
 狙うのは人ではなく、馬だ。
 そちらのほうが近い。

 それでも犠牲はあった。

(´<_`;)「立て直すぞ!」

 数百は失っただろうか。
 ラウンジの騎馬隊は、うまく攻撃を躱して、攻め込んできた。
 やはり、機動力では敵わない。

 指揮官はプギャー=アリスト。
 野戦で敵を攻める力は、それなりにあったと記憶している。
 ただ相手を潰すだけなら、オワタよりも上手くやるのだろう。

 そのオワタは、アニジャの部隊に襲いかかっていた。
 アニジャは守りに徹さず、攻め返して互角に戦っている。
 ああいった決断力が、自分には欠けていた。

 一度、プギャーと距離を取った。
 プギャーも再び体勢を整えている。

 また、アニジャのほうに目をやってみた。
 果敢な攻め。大軍であるオワタのほうが怯んでいる。
 アニジャの猛攻は、止まらない。

 だが、勇み足だ。
90 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:31:59.59 ID:aqKxTFXg0
(´<_`;)(アニジャ、それでは……!!)

 城から、離れすぎてしまう。

 城内には三千ほどを残してある。城門も閉ざしている。
 だが、本気で囲まれるとなると、ヴィップは苦しい。
 時間が経てば必ず落とされる。

 こちらの隙を突いて城を掠め取る、くらいのことはプギャーもオワタもやってのけるだろう。
 属城方面でラウンジに蹴散らされ、更に城まで取られると、シャッフル城の堅持は絶望的だ。

 ここは守りだ。
 アニジャ、攻めが過ぎると――――

(´<_` )「!!」

 違う。
 アニジャは、踏み込みすぎたわけではない。

 そうか、その手があった。

(´<_` )「行くぞ!!」

 プギャーの部隊を尻目に、強引な移動に出た。
 当然、プギャーは追ってくる。

 今、城にはプギャーのほうが近くなっている。
 しかし、ヴィップ軍を潰走させない限りは城を囲むこともできない。
 プギャーの判断は賢明だった。
102 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:34:22.45 ID:aqKxTFXg0
 騎馬隊の接近は速い。
 際どいところだ。余裕などない。
 それでも、賭けるしかない。

(´<_` )「柵だ!」

 配下の兵は、機敏に動いた。
 即座に仕掛けを起動させる。

 騎馬隊が、もう、背後にまで迫っている。
 強烈な馬蹄音と、振動で、手元が狂う。

 それでも、発動させることができた。

(´<_` )「よし!」

 もう、振り返らなかった。
 あとは一直線に駆けるだけだ。
 シャッフル城への道を。

 あの馬止めの柵は、崩れたと見せかけて、またすぐ立て直せる仕掛けがあった。
 だが、それには両横から柵を引っ張り上げる必要があったため、いまひとつ上手い使い方が思い浮かばなかったのだ。

( ´_ゝ`)「オトジャ、ナイスだナイス!」

(´<_` )「流石だな、アニジャ」

 アニジャの部隊が左から引っ張り、自分の部隊が右から引っ張った。
 再び柵が出現して、背後から迫る騎馬隊を完全に封じ込めることができた。
111 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:36:24.07 ID:aqKxTFXg0
 後方から喧噪が届いてきた。
 どうやら騎馬隊が柵に激突したらしい。
 多少なり犠牲も出ているだろう。しかしそれ以上に、ヴィップを追えないのが手痛いはずだ。

 歩兵隊が慌てて迂回し、追いかけて来ているようだが、振り切れる。
 シャッフル城への最短距離なら、自分たちのほうが知り尽くしている。

 ラウンジは躍起になって追撃してくるだろう。
 属城を取っても旨味はない。フェイト城と属城は繋がらないからだ。
 兵糧がほとんどないことも分かっているだろう。五万の軍は留まれない、と把握しているはずだ。

 属城を占拠するのにも時間がかかる。
 防備は充分に強化した。
 長く篭城するのは不可能だが、抵抗すれば数千といった数も削れる。

 そしてその間に、ショボンらが潰走してしまうかも知れない。
 ならば今すぐ追撃するべき、と考えるだろう。

 いずれにせよ、五万の軍を属城に引きつけられたまま、ヴィップを取り逃がすのは想定外だったはずだ。
 ラウンジが予想していない攻撃を繰り出せる。側面や背後を突くことも可能だ。
 戦況がひっくり返る可能性もあった。

 プギャーやオワタも、充分に分かっているからこそ、慌てて追いかけているのだろう。
 だが、追いつかれはしない。

 このまま、二人でラウンジを撃滅してやる。
124 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:38:37.77 ID:aqKxTFXg0
――シャッフル城――

 西門に対し、半月のような形の陣を敷いてきた。
 鶴翼にしては鋭さがない。

 結局、最初の形に戻った。
 ひどく緩やかに動きながら、だ。

 M隊の動きは止まっている。
 こちらのD隊を使える距離でもない。

 戦況は、完全に膠着していた。

( <●><●>)「…………」

 やはり、不可解だ。
 ラウンジは援軍の到着を嫌っている。
 ブーンらが来る前にシャッフル城を奪いたいはずなのだ。

 なのに、この鈍重とも言える動き。
 何か狙いがあると見て間違いない。

 騎馬隊は存分に辺りを確かめたあと、大軍に加わった。
 罠の存在を疑ったのだろうか。

 じりじりと間を詰めてくる。
 緊張感の持続が難しい。
 喉の奥に栓が入り込んだように、息も苦しい。

 だが、不意に。
138 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:40:54.91 ID:aqKxTFXg0
( <●><●>)「構え!!」

 ラウンジが、突撃してきた。

 尋常ならざる速さだ。
 城壁のD隊も不意を突かれ、Fが追い付いていない。

 一万ほどの騎馬隊。
 五千ずつに分かれ、斜めに切り込んでくる。

 陣の堅さには自信があった。
 それなのに、兵が抉り取られていく。
 抗いも微弱なものとなった。

 D隊は動けない。
 自陣にまで攻撃してしまう。
 今はただ、騎馬隊の攻撃を地上で凌ぐしかなかった。

 犠牲を伴いながら防ぎ、なんとか騎馬隊が引き下がるまで耐えた。
 が、即座に次の攻撃がやってくる。

 そのとき、全身を駆け抜けたものがあった。

 強烈な、悪寒だ。

 漆黒の騎馬隊。
 ショボンが率いる、全土最強部隊。

 下がっていった二隊の背後から、突如として姿を現した。
 そして、一気に迫ってきた。
154 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:43:29.16 ID:aqKxTFXg0
 噛みつかれる。
 食い千切られる。

 騎馬隊が攻め込んだ先だけ、人が、いない。
 立っていない。

 一噛みで、数百。
 いや、千にさえ達しているか。
 どちらにせよ、信じがたい数を失った。

 ヴィップにいたときは、本気を見せていなかったのだ。
 あのときでさえ凄まじいと思ったが、比較にならなかった。
 今更そんなことに気づいても、遅すぎる。

 ショボンの騎馬隊が、瞬時に下がった。
 また、後ろから追撃が来るはずだ。
 身構えた。

( <●><●>)「……!?」

 だが、今度はまったく動きを見せてこない。
 無理やりに体勢を立て直したというのに、攻め込んでこないのだ。

 しかしまた、不意を打ってきた。
 急な攻めで撹乱され、ペースを掴めない。
 主導権を、握れない。

 無理に体勢を立て直したのが、良くなかった。
 いっそ、連続で攻められたほうがまだ被害は少なかっただろう。
 ラウンジの意図どおりに動いてしまったのか。
167 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:45:54.32 ID:aqKxTFXg0
 また攻撃が止んだ。
 今度は、無理な姿勢で守らない。
 跳ね返してやる、という気概で立ち向かう。

 が、異様に長い時間を置かれた。
 焦れる。自分ではなく、兵たちがだ。
 気持ちが、途切れてしまう。

 そして、絶妙のタイミングで攻め込まれた。
 体勢を立て直すのに、充分すぎるほどの時間があったのに。
 何もしなかったのは、もったいなかった。

 また、ショボンの騎馬隊だった。

 大口を開けて攻め込んでくる。
 反撃。守りに徹していたら、一方的に損害を被るだけだ。
 多少無理な形でもいい。逆に攻め込んでやれば怯んでくれるかも知れない。

 ――――が、その認識は、甘すぎた。

 反撃に出たところを、瞬時に叩かれる。
 そして蹂躙され、さらに深みへと到達された。
 振るわれるアルファベットが、一本一本の牙のように見える。

 食い散らかされ、そして難なく脱出された。
 今度は、千以上の兵を失っている。
 それに対する近衛騎兵隊の損害は、ごく僅かだろう。
184 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:48:02.27 ID:aqKxTFXg0
 騎馬隊の錬度と、アルファベットの錬度。
 それら二つが合わさり、高まれば、信じがたいような力を発揮するのだ。
 今まで、知らなかった。目の当たりにしたことがなかった。

 分かっていたつもりだったのだ。
 自分の中の認識を想定して、戦術を組み立てた。
 それが上手く嵌まっていれば、こんな一方的な戦にはならなかった。

 想定以上の力を、見せつけられた。
 分かっていたつもりで、実のところ、何も分かっていなかったのだ。

( <●><●>)「体勢を――――ッ!!」

 立て直せ、と言えるはずもなかった。
 もう、そんな段階はとうに過ぎている。

 逃げ出すことも、できない。

 ラウンジの狙いが、やっと掴めた。
 最初から、城ではなかったのだ。
 だから城門へ近づこうとはしなかったのだ。

 一兵でも、多く。
 殺して、殺して、殺し尽くす。
 そんな戦を、ラウンジは展開している。
190 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:50:02.79 ID:aqKxTFXg0
 そしてそのために、裏の裏をかいてきた。
 ショボンとカルリナ。二人が組み合わさったのだから、何らかの策を用いてくると予想していた。

 実際、そう思えるような動きもあった。
 しかし、あれは完全に惑わしだったようだ。
 ラウンジは、基本に忠実な戦を見せてきたのだ。

 いわゆる、緩急。
 ゆっくり動いたあと、急激に攻める。
 そうすることによって、敵軍を揺さぶることができるのだ。

 戦場に立つものなら、誰でも知っている。
 皆が、知らず知らずのうちに実行している。

 だが、ラウンジはあえて、極端な形で用いてきた。
 大軍を擁しながら、だ。
 やり方によっては、絶え間なく攻めることも可能だったのに、あえて緩急を使ってきた。

 裏の裏だった。
 これほどセオリーに徹した戦法とは、まるで想定していなかった。

 考えたのはカルリナか。
 智の部分でも、ラウンジには上回られていたのか。

 ショボンの部隊が最も活きるやり方を考えたのだろう。
 凄まじい速度と威力を見せつけられた。
 戦意を喪失した兵も少なくない。

 士気は底にまで落ちた。
 抗いようなく、兵数も減っている。
203 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:52:49.67 ID:aqKxTFXg0
 包囲も狭まってきた。
 どうやっても、逃げ出せない。

 ヴィップ軍に、再び食い込んでくる。
 ショボンの近衛騎兵隊。縦横無尽に、駆け回っている。
 次々に倒れゆく兵。

 ショボンの顔が、見えた。
 残酷、そのもの。凶悪としか言いようがない。
 触れるものすべてが、地に伏していく。

 だが、そんなとき。

( <●><●>)「ッ……?」

 少しだけ、ラウンジの陣が揺れた。

 南からの一撃。
 ラウンジからの攻勢が、弱まっている。

 サスガ兄弟だ。
 南の属城から駆けつけてくれたらしい。

 兵数は確認できないが、一万を超えているだろうか。
 どうやって敵軍を置き去りにしてきたのかは分からない。しかし、来てくれた。
 これなら、まだ盛り返せる可能性はある。

 ――――そんな希望を、抱いた。

 瞬間、獣の双眸が、鋭い眼光を放った。
220 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:55:21.12 ID:aqKxTFXg0
( <●><●>)「ッ!!」

 激化した。
 ショボンの騎馬隊が、激しく攻め込んできた。

 後ろから歩兵も続いているようだ。
 それに向かっては、城壁の上からD隊がFを射ている。
 視界が塞がれるような量だった。

 だが、ラウンジは怯まずに駆け寄ってくる。
 そして、アルファベットを振るってくる。

 大混戦だった。
 敵も味方も分からないような、そんな状況だ。
 自分も、無我夢中で飛び出して、アルファベットを振るった。

 鮮血が雨のように降り注ぐ。
 それを切り払うように、またアルファベットを振るう。
 何度も、何度も。

 この城を、守ってみせる。
 ブーンから託された、この城を。
 失うわけにはいかないのだ。

 狂気に満ちた表情で迫ってくる兵を、両断した。
 さらに背後から、アルファベットI。
 粉砕して、すかさず首を取る。
231 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:57:37.77 ID:aqKxTFXg0
 倒れこんでくるラウンジ兵を蹴り飛ばし、踏み込んで斬りつける。
 身を屈め、振り上げ、そして振り下ろす。
 瞬時に突き出し、さらに兵を討ち取る。

 何も考えられなかった。
 ただ必死で、アルファベットを握っていた。
 振るっていた。

 そんな自分の、視界が染まる。
 漆黒に。

 逆光で、その男の顔は、よく見えなかった。
 が、誰なのかは、分かった。

(´・ω・`)「お前は、まだまだこれからも成長する男だったろうな」

 反応は、早かった。
 襲い来るアルファベットZ。
 頭を沈めて、躱した。

(´・ω・`)「実に無慈悲なことだ、が――――なに、悲観することはない」

 馬上のショボンの視線が、近づいた。
 あえて、ショボンが馬から降りたのだ。

 だが、余計に威圧感があった。

 アルファベット、Z。
 対する自分は、Sの壁さえ越えていない。
241 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 22:59:38.87 ID:aqKxTFXg0
(´・ω・`)「誰もが、いつでも、死に果てる可能性を持っている。
      それが戦だろう? なぁ、ベルベット」

 視界に移っていたものが、ぶれた。
 そう思った瞬間、自分にZの刃は向いていた。

 どうやら、敗戦の責任を取ることさえ、叶わないようだ。
 しかしそれもまた、戦だった。

 最初から、分かっていたことだ。

 だが、せめて、できることなら。
 ブーンに、謝りたかった。

 道半ばで果てることを。



――シャッフル城・南西――

 遠目からでも把握できた。
 途轍もない、混戦になっている。

 駆けに駆けてここまできた。
 既に疲労は溜まりきっている。
 それでも、駆け抜けた。

 ベルベットらを助け、シャッフル城を守り抜くために。
260 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:01:59.58 ID:aqKxTFXg0
( ゚д゚)「どう当たる? ブーン」

(;^ω^)「このまま一気に!」

 焦燥は隠せなかった。
 ラウンジは、シャッフル城西門のあたりを覆い隠すように攻め込んでいる。
 あれでは、たとえ不利になっても逃げ出すことさえできない。

 南から、ラウンジの包囲を破ろうとする動きがあった。
 サスガ兄弟だ。
 属城から駆けつけたのだろうか。

 サスガ兄弟の攻めが続けば、いずれは破れるかもしれない。
 しかし、その背後から更に敵軍が迫っている。
 数を把握しきれないほどの大軍だ。

 自分たちが為すべきは、まず南からやってきたラウンジ軍への牽制。
 いや、そのまま攻め込んだほうが確実か。

( ゚д゚)「ブーン、南に」

( ^ω^)「そのつもりですお」

 アルファベットを、強く握りしめた。
 隊の向きを変え、更に加速する。

 一気に寄った。
 そして、そのまま横を突いて、駆ける。
269 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:04:01.53 ID:aqKxTFXg0
 アルファベットVを縦横に振るいながら、敵陣を突破した。
 不意を打たれたラウンジ軍は、ほとんど抵抗することなく進軍を停止した。

 反転してもう一度攻め込む。
 が、今度は敵の意識もこちらに向いていた。
 突き抜けることはなく、端を掠める程度の攻めに留める。

 更に南から、今度は騎馬隊がやってきた。
 あれも、ラウンジの軍だ。
 どういった状況かは分からないが、何故か騎馬隊のほうが遅れている。

 あの騎馬隊に追われると、厳しい。
 いったん、敵軍から離れた。

 シャッフル城へと向かう。
 ミルナの意思も同じなようだ。
 サスガ兄弟と共に攻勢をかけ、包囲を破る必要がある。

 背後をラウンジに攻められるまで、まだ多少の猶予があるはずだ。
 なんとか、その隙に。

 しかし、狙われた。

 包囲陣の厚みから飛び出してきた部隊。
 ショボンの近衛騎兵隊ほどではないが、動きがいい。
 かなりの調練を積んでいることは、見るだけで分かる。

 的確なタイミングで、的確に動いてきた。
 カルリナ=ラーラスだ。
279 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:06:05.40 ID:aqKxTFXg0
 包囲陣を攻めているサスガ兄弟の背後を塞ぐと同時に、自分たちの攻めも防がれた。
 一度の動きで二つの意味を持たれると、寡兵であるヴィップは動きが取れない。

 だが、攻め込むより他なかった。

(#^ω^)「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!」

 敵兵を、斬り裂く。
 道を、切り開く。

 飛び出してきたカルリナの部隊は、一万ほどか。
 こちらは五千。はっきりと不利な戦いだ。
 が、今なお抗っているベルベットは、もっと苦しい戦いを強いられているのだ。

 大将である自分が、この程度で弱音を吐くわけにはいかない。

(#^ω^)「どけおッ!!」

 立ちふさがる敵兵を薙ぎ倒した。
 二撃、三撃。重ねていく。
 刎ね飛ぶ首が空を翔ける。

 カルリナの部隊は、堅い。
 知略だけではない。指揮力もある。
 ぶつかってみて、初めて分かった。

 だが、経験した戦の数なら負けない。
 実力も、負けてはいない。
 更に深く攻め込んだ。
286 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:08:41.26 ID:aqKxTFXg0
 強引すぎるほど強引に、押す。
 押して押して、押し潰す。

 互角の戦いだった。

 突破できるかどうか、微妙なところだ。
 しかしカルリナは、時間さえ稼げればいい、という考えだろう。
 無理はしてこない。そうなるとまた、攻め方に迷いが生じる。

 これ以上踏み込むと、敵が道をあえて開けてくる可能性もある。
 そして背後を攻める、といったことをされると、数の差が突き刺さってくるのだ。
 踏み込みは、ここが限界か。

 そんな折だった。
 ラウンジが、包囲を一部崩して、門を狙いに行ったのは。

 嫌な予感がした。

(;^ω^)(まさか……!!)

 ラウンジが、包囲陣を崩す理由。
 それは、目標を達成したからではないだろうか。

 敵将を討ち取るという目標を。

 北門と南門へ向かって、騎馬隊が駆けていく。
 それを静止させる手段は、ない。
293 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:10:47.64 ID:aqKxTFXg0
 が、何故か門の近くになって、騎馬隊が乱れた。
 大勢、土に足を取られて、倒れこんでいる。
 何らかの罠があったようだ。

 そこに、大量のFが降り注いだ。
 後続の騎馬隊も止まれずに、Fの餌食となっている。
 城門の前を、兵と馬が塞いだ。

 ラウンジに走った動揺を、見逃すわけにはいかなかった。
 すかさずカルリナの部隊を破り、本陣へと攻め込む。

 ショボン。
 どこにいるのだ。

(#^ω^)「ブーン=トロッソはここだお!! ショボン、来いお!!」

 叫んだ。
 干戈の声がけたたましく響く、この戦場で。

 ショボンは見当たらない。
 ならば、先にベルベットの救援を考えるべきだ。
 これだけの混戦、討ち取られずに済んでいる可能性は少なくない。

 敵陣を、五千の兵で乱しはじめた。
 背後からの攻めには、脆い。それが包囲陣だ。
 サスガ兄弟の攻撃も激しさを増している。

 必死で圧力をかけ、鋭さを加え、攻める。
 アルファベットVは深紅に染まっている。
306 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:12:59.57 ID:aqKxTFXg0
 ラウンジ軍の、鉦が鳴った。
 同時に、包囲陣が組み替わる。

 退却だ。

 南からやってきたラウンジ軍も、同じように西へ向かっていく。
 完全なる撤退。シャッフル城を、諦めた。

 罠にかかって城門に近づけなくなったことが原因だろう。
 援軍の数も予想外だったはずだ。
 本陣があれだけ乱れては、城を取るのも難しくなる。

 しんがりはしっかりと機能しているようだ。
 追い討つことはできない。
 そんな力もない。

( ゚д゚)「……被害は、甚大だな……」

 目を背けたくなるような惨状だった。
 数は把握しきれないが、しかし、一万では済まないだろう。
 亡骸の数が、膨大だった。

 十五万もの大軍で攻められた。
 それに対し、可能な限り抗った結果が、これだ。

 今後も、こんな戦が続くのか。
 圧倒的な大軍を、相手にしなければならない戦が。
321 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:15:09.94 ID:aqKxTFXg0
( ゚д゚)「…………」

 しかし、この戦場に漂う悲壮感は、それだけが原因ではなかった。

( ´ω`)「…………」

 ふらふらと、歩き出す。
 西門に向かって。

 兵の死骸を踏まないように歩いた。
 それが困難なほど、亡骸が重なっている。

 血溜まりで足が濡れた。
 まるで雨が降ったあとのように地面が湿っている。

 城門から、半里ほど離れた地点に、人が固まっていた。
 数人で抱きかかえている。
 大粒の涙を流しながら。

 ベルベット。

 首は、なかった。
351 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:17:29.26 ID:aqKxTFXg0
――フェイト城――

 本当は、アルタイムに直接言いたかった。
 が、ヒトヒラ城に行ってもらったばかりで、また戻ってきてもらうのも申し訳ない。

 手紙を認め、それを読んでもらうに留めることとした。
 話す機会は、またいつでもある。

( ’ t ’ )「…………」

 報告すべきことは多い。
 まずは、ヴィップのベルベット=ワカッテマスを討ち取ったこと。

 ショボンが一騎打ちにて、首を刎ねた。
 数合、真正面から打ち合い、最後はRが破壊されたという。
 ショボンも左腕に僅かな傷を負っていた。

 ベルベットは、モララーと同じような働きを期待されていた武将だ。
 アルファベットに優れていたうえ、知力まであった。
 そのベルベットを討ち取れたのは大きい。さすがはショボンとしか言いようがない。

 それでもヴィップは抵抗を見せてきた。
 救援がない状態なら、ベルベットを討ち取った時点で終わっていただろう。
 しかし、南からサスガ兄弟、そしてブーンとミルナが来たとあっては、引き下がらざるを得なかった。

 ベルベットの罠にもやられた。
 討ち取った余勢を駆って城も奪おうとしたが、泥濘に足を取られたのだ。
 歩兵なら何とかなったかも知れないが、騎馬隊ではどうしようもなかった。
363 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:19:54.02 ID:aqKxTFXg0
 死した将が残したものには気をつけろ。
 昔、ベルにそう言われたことがある。
 実際、今回はそれでやられてしまったのだ。

( ’ t ’ )(……シャッフル城は、奪いたかったが……)

 今回は、仕方がない。
 最優先していたのは、敵兵を可能な限り削ることと、ベルベットの首だ。
 そのため、城の奪取はかなり後回しになっていた。

 ショボンの力が、最大限発揮できるよう、考慮したつもりだ。
 実際、戦が終わったあとは褒められた。
 これほど気持ちよく戦えたのは初めてだと。

 皆がショボンを称えた。
 ヴィップ軍の要とも言えたベルベットを討ち取ったのだ。
 自分では無理だっただろう。Zを操るショボンだからこその戦功だ。

( ’ t ’ )(……それは、置いておくとしても……)

 大事なのは次の戦だ。
 次、どこをどう攻めるのかが、自分にとっては肝要になる。

 ショボンとの組み合わせは、自分でも恐ろしいくらいに上手くいった。
 二人で戦えば、ラウンジの力は二倍にも三倍にもなる。
 誰かに話せば不遜と思われるかも知れないが、客観的に見て、間違いないと思っていた。

 手紙にも、そう書いた。
 アルタイムは、この文面を見て、いったい何と感じるだろうか。
376 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:22:00.69 ID:aqKxTFXg0
 次の戦では、必ず城を奪います。
 最後にそう記して封筒を閉じた。

 伝令を呼んで手紙を渡したあと、寝床に身を投げた。
 丸いというには少し物足りない、半端な月が浮かんでいる。

 ショボンとともに戦い、見えてきたものがあった。
 半ば、確信に近いが、まだはっきりとしない。
 次の戦で明らかになるだろう。

 ショボンと自分の組み合わせは、ラウンジ史上、最高かも知れない。
 ショボンがそう感じたように、自分も、戦っている最中に愉悦があった。
 軍人であることに、喜びを覚えた。

 次の戦でも、それは続くだろう。



――シャッフル城――

 ブーンの落胆は、誰の目にも明らかだった。
 大敗。そして、ベルベット=ワカッテマスの戦死。
 いずれも、心を深く抉ったはずだ。

( ゚д゚)(凄まじい戦だったな……)

 自分の心が動くことはない。
 たとえどれほどの損害を受けようとも。
 ベルベットがいなくなろうとも。
382 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:24:04.33 ID:aqKxTFXg0
 損害兵数は、二万五千に上るという。
 これは、総兵数が十五万ほどだったヴィップにとって、かなり辛い結果だ。
 それに加えてベルベットまで失ったのだ。大将としては、敗戦の責を負う必要があるだろう。

 だが、そうも言っていられない状況が続く。
 さすがにラウンジも、一時的に休息を取るだろうが、ヴィップよりは余裕がある。
 またすぐにシャッフル城を攻めてきたとしても不思議はないのだ。

 できれば、間を置いてほしいところだ。
 今のブーンは感情的になりすぎている。
 気落ちが、激しすぎる。

 自分が理想とする大将像ではなかった。
 やはり、自分は根底にアテナットやベルが眠っているのだ。
 二人は、冷静な軍人であり、人の死に心を揺らすことはなかった。

 自分とブーンは世代が違う。
 それに、従ってきた将も違う。

 ブーンの、大将としての在り方は、自分としては理想ではない。
 が、それもまた一つの在り方だ、という気もする。
 かつてヴィップの総大将だったハンナバルが、感情を露わにする人だったとも聞いている。

 仲間の死に悲しまないというのも問題だ。
 それを大将が表に出していることで、発奮する兵もいるだろう。
 が、ブーンがいつまでも引きずっていると、軍が機能しなくなる。

 ブーンにとっては辛いだろうが、仲間を失った兵は他にも大勢いる。
 大将なら、早めに毅然とした振舞いを見せてほしいところだ。
 兵卒にとっての、拠り所となるべきなのだ。
391 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:26:06.15 ID:aqKxTFXg0
( ゚д゚)(それにしても……)

 ショボンとカルリナの組み合わせは、脅威的だった。
 まさに、知勇が存分に発揮されていた。
 兵卒からも話を聞いたが、自分たちが駆けつける前は更に凄絶な戦だったらしい。

 ショボンの武勇は、誰しもが恐れるものだ。
 そしてそこに、カルリナの知略が加わってしまった。

 例え同数の兵を持っていたとしても、勝てるかどうか。
 寡兵ならまず勝ち目はない。
 そう思わされるような敗戦だった。

 これからも、同じような戦が続くだろう。
 ヴィップは、苦境と分かっていながら抗わなければならない。

 問題になってくるのは、ヴィップ兵の心が折れてしまわないか、ということだ。

 勝ち目のない戦に挑みつづけるのは辛いことだ。
 滅亡寸前のオオカミで指揮執っていた自分は、士気の大事さをよく知っている。
 それが削がれると、まともな戦ができなくなってしまうのだ。

( ゚д゚)(となると……)

 やはり、必要になってくる。
 あの策が。

 ブーンが、オオカミ城の地下で、過去の大戦についての資料を見つけた。
 そこに記されていたものを見て、思いついたらしい。
400 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:28:27.83 ID:aqKxTFXg0
 策の内容は、既に聞いた。
 本気か、とすぐ問い返してしまうようなものだった。

 不可能ではない。
 が、限りなく非現実的だ。
 あの策がラウンジに通じると、自分には思えない。

 しかし、ブーンには自信があるようだった。
 顔を見ていると、不思議に策が成るような気がしてくるのだ。

 だが、その策を使うのにも、準備が要る。
 そしてその準備も、同様に困難を極めるのだ。

 いずれにせよ、戦に勝たなければならない。
 ラウンジはこれからも攻め込んでくる。

 戦についての対策は、自分もいくつか考えている。
 条件にもよるが、上手くすれば勝てるかも知れない策もある。

( ゚д゚)(……しかし……)

 ショボンを、討ち取れるだろうか。
 その段階に到達するだろうか。
415 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:30:53.26 ID:aqKxTFXg0
 もしこのまま押され続け、ひたすら守りに徹することとなったら。
 ショボンの首を取るのは、限りなく難しくなる。

 そのときは――――

( ゚д゚)(……もう一人の仇だけでも……戦場で……)

 仇が、いる。
 オオカミを滅ぼした、国の仇が。

 ラウンジだけではない。
 ヴィップにも、もう一人。

 そいつを、戦場で果てさせてやる。
 ショボンを討ち取る望みが、叶わないのであれば。

 そのために自分はヴィップに入ったのだ。
 背中を押したのはショボンの言葉だったが、いずれ、何らかの形でヴィップと共に戦っただろう。
 仇を討つために。

 どちらかの仇を、討ち終えたら。
 そのときは、戦場を去ることになる。
427 :第93話 ◆azwd/t2EpE :2008/02/21(木) 23:33:01.64 ID:aqKxTFXg0
 いずれにせよ、遠い話だ。
 しかし、必ずどちらかは討ち取る。

 戦場から、消してみせる。
 オオカミの忠臣、ミルナ=クォッチとして。















 第93話 終わり

     〜to be continued

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