- 3
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:23:04.68 ID:uqbS+GwU0
- 〜ヴィップの兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
31歳 大将
使用可能アルファベット:V
現在地:???
●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
45歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:ヴィップ城
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
36歳 中将
使用可能アルファベット:X
現在地:ヴィップ城
●( ゚д゚) ミルナ=クォッチ
46歳 中将
使用可能アルファベット:U
現在地:オオカミ城
●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
46歳 中将
使用可能アルファベット:S
現在地:カノン城
- 15
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:24:35.81 ID:uqbS+GwU0
- ●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
49歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:カノン城
●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
42歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オオカミ城
●( ><) ビロード=フィラデルフィア
34歳 大尉
使用可能アルファベット:O
現在地:オオカミ城
●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
30歳 大尉
使用可能アルファベット:R
現在地:シャッフル城
●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
44歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:シャッフル城
●(´<_` ) オトジャ=サスガ
44歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:シャッフル城
- 20
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:25:39.67 ID:uqbS+GwU0
- ●( ФωФ) ロマネスク=リティット
24歳 中尉
使用可能アルファベット:L
現在地:カノン城
●プー゚)フ エクスト=プラズマン
32歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:カノン城
●(‐λ‐) レヴァンテイン=ジェグレフォード
24歳 ミルナ中将配下部隊長
使用可能アルファベット:L
現在地:オオカミ城
●(个△个) ルシファー=ラストフェニックス
24歳 ミルナ中将配下部隊長
使用可能アルファベット:K
現在地:オオカミ城
- 28
名前:階級表
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:26:43.07 ID:uqbS+GwU0
- 大将:ブーン
中将:ジョルジュ/モララー/ミルナ/ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー
大尉:ビロード/ベルベット/アニジャ/オトジャ
中尉:ロマネスク/エクスト
少尉:
(佐官級は存在しません)
- 35 名前:使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE
:2008/02/14(木) 00:27:51.32
ID:uqbS+GwU0
- A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:ルシファー
L:ロマネスク/レヴァンテイン
M:
N:
O:ヒッキー/ビロード
P:アニジャ/オトジャ/カルリナ
Q:
R:プギャー/ベルベット/フサギコ
S:ニダー/ファルロ/ギルバード
T:アルタイム
U:ミルナ
V:ブーン/ジョルジュ
W:
X:モララー
Y:
Z:ショボン
- 40
名前:この世界の単位&現在の対立表
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:29:00.54 ID:uqbS+GwU0
- 一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml
(現実で現在使われているものとは異なります)
---------------------------------------------------
・全ての国境線上
- 45
名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:30:49.74 ID:uqbS+GwU0
- 【第91話 : Power】
――オオカミ城・三階――
顔が、歪む。
リディアル、レヴァンテイン、そして自分。
誰一人として、例外なく。
肩口から腰にかけて、斜めに胴を裂かれたレヴァンテイン。
噴き出した血はリディアルの表情を、真紅に染める。
首から離れた、リディアルの顔を。
(;゚д゚)「レヴァンテイン!」
倒れこんだレヴァンテインを抱きかかえる。
息はある。ひどく、淡い息が。
微かに、しかし確かに、吐き出されている。
だが――――
(;‐λ‐)「リ……リディアル……は……」
掠れ声が、少しだけ宙に浮いて、すぐ床に落ちた。
顔を近づけなければ、聞き取れなかったであろう小さな小さな声。
儚さに、彩られていた。
- 55
名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:33:00.49 ID:uqbS+GwU0
- (;゚д゚)「俺が討ち取った。お前を斬った隙に、首を刎ねた。だから心配するな」
(;‐λ‐)「良かっ……た……」
やはり、そうなのか。
レヴァンテインは、自ら囮となったのか。
何の打ち合わせもなかった。
レヴァンテインは、ただ、一瞬の隙を見て飛び出した。
(#゚д゚)「動くな!!」
恫喝した。
ラウンジの兵たちに対してだ。
自分たちを一瞬、狙う気を見せた。
上官が討ち取られたとなっては、仇討ちに動くのも不自然ではないことだ。
だが、それは許さない。
(#゚д゚)「お前ら全員を討ち取るくらい、造作もないことだ。分かったら大人しくしていろ」
完全に竦みあがった兵から、視線をレヴァンテインに移す。
やはり、淡い。レヴァンテインの身体から、色が抜けていく。
今まで、幾万もの命に触れてきた。
それが失われる様も、目の当たりにしてきた。
自分で奪った命も数え切れないほどにある。
だから、分かってしまうのだ。
- 62
名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:35:04.53 ID:uqbS+GwU0
- レヴァンテインは、もう助からない、ということが。
今の自分は、消えゆく命に対し、ただ言葉を掛けることしかできない。
霞むような言葉に、必死で耳を傾けることしか、できない。
( ゚д゚)「レヴァンテイン……すまない……」
(;‐λ‐)「……最善を、尽くしたまでです……意を汲んで下さり、感謝しています……」
レヴァンテインには、自責の念があったのだろう。
目標である敵将の前から逃げ出し、自分に助けられた。
それは最善だったが、しかし、レヴァンテインが素直に納得できるはずはなかった。
戦場に立った以上、誰しもが軍人だ。
そして、武人でもある。
どちらかの立場で最善の行動が、どちらかにとって最悪となることは、決して珍しくない。
(;‐λ‐)「自分にも……できることが、あって……それが、何よりです……」
レヴァンテインは囮となり、後ろにいた自分に全てを託した。
千人のヴィップ兵が入ったとの報もあった。にも関わらず、レヴァンテインは飛び出したのだ。
今、囮となることが最善、と判断した結果だろう。
千人の兵が入城、となればリディアルに逃げられる恐れがある。
完全な守りに入られた場合、不利なのは間違いなくヴィップのほうだ。
自分たちを討ち取る意思がリディアルにあった。
だからこそ、リディアルを討ち取る機も生じていたのだ。
つまり、報せが入った直後は、最後のチャンスでもあった、ということだ。
- 73
名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:37:52.80 ID:uqbS+GwU0
- 報せが入り、リディアルがそちらに気をとられた瞬間、レヴァンテインは飛び出した。
最善としか言いようがないタイミングだった。
だが――――悔しさは治まらない。
( ゚д゚)「すまない……俺に、もっと力があれば……」
独り言のように呟いた。
レヴァンテインは、微かに首を動かす仕草を見せただけだ。
もう、声が出ないのかも知れない。
(;‐λ‐)「さ……ご……に……」
それでも、レヴァンテインは何とか声を絞り出していた。
途切れ途切れでも、意味は分かる。
分かりたくもない、と一瞬思えた言葉。
最後に、だ。
( ゚д゚)「最後に……なんだ? なんでも言ってくれ」
不安がらせないよう、冷静に。
いつものような口調で言った。
それがレヴァンテインに伝わるほど、深い付き合いではなかった。
しかし、この作戦を共に実行した。
そして、完遂した。
- 84
名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:40:03.46 ID:uqbS+GwU0
- 目的や立場は違えど、戦友だった。
だが、今の自分にはやはり、耳を近づけることしかできないのだ。
(;‐λ‐)「……う……わ……を……」
( ゚д゚)「ッ……!!」
(;‐λ‐)「おね……い……しま……」
首が、静かに傾いた。
一瞬目を伏せ、抱きかかえていたレヴァンテインの身体を、床に下ろした。
周りにいる幾十もの死骸と、見かけ上、何ら変わりはない。
しかし、確かな存在感がここにある。
将来を嘱望された若き兵が、死んだ。
自分の、腕の中で。
ミ,,;゚Д゚彡「ミルナ……!」
フサギコの声が聞こえた気がした。
できれば、今は人と会話したくない。声を出したくない。
だが、やはり気のせいではないようだ。
ミ,,;゚Д゚彡「……レヴァンテイン……」
亡骸を見たフサギコが、呟いた。
悲痛な面持ちが、見える。視界に入る。
すぐに目を逸らして、立ち上がった。
- 88
名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:42:20.42 ID:uqbS+GwU0
- ( ゚д゚)「ラウンジの兵よ。今からこの城はヴィップ国のものだ」
呆然と立ち尽くす兵たちに向かって言った。
戦意はない。今更、抗う気にはなれないようだ。
( ゚д゚)「千の兵が入城した。東から更に援軍も来ている。
抵抗しないのであれば、命は保障しよう」
アルファベットを向けてくるとも思えないが、一応そう言った。
嘘ではない。今頃は、ブーンかベルベットあたりがこちらへ向かってきてくれているだろう。
数日もせずここに到着するはずだ。
( ゚д゚)「フサギコ、頼みがある」
ラウンジの兵に言うべきことを言い終えたあと、リディアルの側に寄った。
転がっている首を掴む。
切り離された部分から、血が滴っていた。
ミ,,゚Д゚彡「リディアルの、首?」
( ゚д゚)「これを持って、ウタワレ城に向かってくれ」
放り投げた。
フサギコは片手でそれを掴む。
( ゚д゚)「ウタワレ城は実質、オオカミ城の属城だ。
守兵も五百に満たないだろう。俺は百程度と予想しているが。
リディアルの首を持っていけば、降伏させるのは容易い」
- 98
名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:45:20.11 ID:uqbS+GwU0
- ミ,,゚Д゚彡「なるほどな……確かに、そうだろう」
( ゚д゚)「五百の騎兵を率いて、ビロードと共に向かってくれ。
迅速にだ。オオカミ城奪取の報が、ラウンジに届く前に」
ミ,,゚Д゚彡「分かった。すぐに出立しよう」
踵を返し、フサギコが駆けていく。
私情ではなかった。これもあくまで、最善手だ。
だが、フサギコに少し、申し訳ないような気持ちもあった。
オオカミを失ったときとは、違う。
ドラルが死んだときの感情とも異なっている。
軽重の差ではなかった。性質の差だ。
だが、しっかりと自分の中に、暗い影が降りている。
(;个△个)「レ、レヴァンテイン!!」
( ゚д゚)「ッ……ルシファー……」
駆けつけてきたルシファーが、絶句した。
そして自分は、何も言えないでいる。
いや、自分から何かを言うべきではないのだ。
何を言っても自分を軽くするための言葉にしかならない。
ルシファーはただ、無言で涙を流していた。
それに対する言葉を、やはり自分は発せないままに。
- 108 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:47:32.26 ID:uqbS+GwU0
- ――数日後――
――ギフト城――
フェイト城への行軍中だった。
滞りはない。急な出立だったにも関わらずだ。
士気も高く、全て順調と言ってよかった。
オオカミ城陥落の報せを受けるまでは、だった。
(´・ω・`)「ミルナか……」
川 ゚ -゚)「はい。他にも、フサギコやビロードなどがいたようです」
ギフト城で居室として使っている部屋に、クーと二人きりだった。
兵の身なりで、傍目からは男にしか見えない。
しかし、よく見れば見目の美しさには気付ける。
オオカミ城の陥落は、自分の失策だ。
警戒が、あまりにも足りなさすぎた。
オオカミ城はミルナが長く根城としてきた。
そこに、もっと気を払うべきだったのだ。
何か抜け穴があるかも知れない。内応者がいるかも知れない、など。
どうやって城内に侵入したのかは分からないが、恐らくは秘密の抜け道があったのだろう。
無論、城内図は調べさせているし、実際に城内を歩いて調査させた。
外と通じている道などは、確認されなかったのだ。
- 115 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:49:37.11 ID:uqbS+GwU0
- よほど見つかりにくいところにあったのだろう。
その可能性を考慮しきれなかった自分のミスだ。
川 ゚ -゚)「他にも一人、部隊長がいたようですが、これは討ち取っています」
(´・ω・`)「ヴィップの損害は、たった一人か?」
川 ゚ -゚)「城外から攻め込んだ騎馬隊に若干の損害が出ているようですが」
百にも満たない、ということだろう。
本来、数万の兵を動員し、数千以上を失ってやっと得られるかどうか、の城だ。
さすがミルナとしか言いようがなかった。
川 ゚ -゚)「それと、ウタワレ城もフサギコとビロードによって落とされたようです」
それは、オオカミ城が陥落したと聞いたときに覚悟した。
ウタワレ城は、オオカミ城の属城に等しい城だ。オオカミ城がなくては、維持できない。
防衛の構えを整えられる時間があれば話は別だったが、さすがにヴィップは抜け目なかった。
(´・ω・`)「やられたな……やはりミルナは手強い」
川 ゚ -゚)「ヴィップに入れてはならない男でしたね」
(´・ω・`)「だが、止める手立てもなかった。あいつは俺を憎んでいるからな。
いずれラウンジに立ち向かってくるかも知れないというのは、予測していたことだが」
オオカミを滅ぼしたとき、何がなんでもミルナを討つべきだった。
その努力はしたが、あのときの自分は、まだヴィップの大将だったのだ。
やれることにも、限界があった。
- 122 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:51:45.90 ID:uqbS+GwU0
- 無論、ミルナを捜索させたりもしたが、ミルナにとってオオカミの地は庭のようなものだ。
見失えば不利、とは分かっていた。
あのとき、オオカミ城に迫ったミルナを見つけたのはラウンジ側だった。
できればアルタイムには、深く追ってほしかったが、最優先はやはりオオカミ城の確保だったのだ。
地の利のある相手を追いかけるには、条件があまりにも不揃いだった。
しかし、それが今、これほどに手痛い形で響いてくるとは。
自分の予測を、はるかに上回っていた。
(´・ω・`)「要衝を得たヴィップの今後が、怖いところだ。土地も増えたことだしな」
川 ゚ -゚)「次に狙ってくる城は、恐らくミーナ城かと」
(´・ω・`)「ギルバードがいるな。兵も少なくない。
易々と落とされることはないと思うが」
川 ゚ -゚)「抜け道があるかも知れないので、留意するようにと。
ショボン様からの伝言として、既に伝令を送ってあります」
(´・ω・`)「そうか、助かる。迅速に伝えなければならない事案だからな」
川 ゚ -゚)「それと、プギャー様とオワタ様をお呼びしておきました」
(´・ω・`)「ちょうど、二人を呼ぼうと思っていた。もう部屋に外にいるのか?」
川 ゚ -゚)「はい」
(´・ω・`)「二人とも、入って来い」
- 129 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:53:57.12 ID:uqbS+GwU0
- 呼びかけに応じ、二人が室内へと歩みを進めてきた。
オワタの具足は少し汚れている。任務を終えた後なのだろう。
プギャーの身なりは、行軍中の指揮官とは思えないほど綺麗だった。
(´・ω・`)「既にクーから聞いただろうが、オオカミ城とウタワレ城が落ちた」
二人が少し、俯いた。
誰もがそうだ。あの要害が落ちることなど、予想していなかった。
落胆するのは当然のことだった。
(´・ω・`)「落とされたものはしょうがない。切り替えて先を見据えるべきだ。
さて、今後ラウンジが取る道についてなんだが」
\(^o^)/「まず、オオカミ城のカウンターを考えるべきではと」
オワタの甲高い声が響いた。
他にはないような、独特の声だ。
(´・ω・`)「考えはしたさ。しかし、陥落があまりに急すぎた。
カウンターに出る準備など、まるで整っていない」
( ^Д^)「それに引き換え、ヴィップには充分、守りを固めるだけの時間があるということですか」
(´・ω・`)「あぁ、その通りだ」
その通りだが、いちいち言わなくてもいいことだ。
自分もオワタも、分かりきっている。
- 137 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:56:05.34 ID:uqbS+GwU0
- (´・ω・`)「カウンターは無理だ。それどころか、いま南西部は大きく揺れている。
フェイト城はアルタイムとカルリナがいるからいいが、ミーナ城とヒトヒラ城が危ない」
( ^Д^)「主だった将は?」
(´・ω・`)「ミーナ城にはギルバードがいる。しかし、ヒトヒラ城は手薄だ。
リディアルがいれば良かったんだがな……討ち取られたのは痛い」
\(^o^)/「アルタイム中将に向かってもらうしかなさそうですが」
(´・ω・`)「そうだな。俺も同じことを考えていた」
恐らく、アルタイムはもう動いているだろう。
カルリナならすぐヒトヒラ城の危険性には気付いたはずだ。
そして、向かうべきはアルタイム、ということにも。
ヴィップが電撃戦を仕掛けてこなければ、二つの城は守れるだろう。
どの程度、用意を整えてあったのかは分からない。一気に次なる城を狙えるほどの力は、あるだろうか。
ただ、シャッフル城から大軍が動いたという報せはなかった。
オリンシス城にいたのは五万にも満たない兵だったはずだ。
それなら、ミーナ城やヒトヒラ城がすぐに落とされることはないだろう。
電撃戦を行えるほどの兵を動員できるはずはないからだ。オリンシス城が限りなく手薄になる。
だが、油断してはならない。
オオカミ城にいるのは、あのミルナだ。
ブーンやベルベットが動いている可能性もある。安堵していると、隙を突かれかねない。
- 158 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
00:59:17.93 ID:uqbS+GwU0
- (´・ω・`)「一城を安心して任せられる将が少ないのは、辛いな。
ただでさえ少なかったのに、リディアルまで討ち取られた」
( ^Д^)「元よりラウンジにいた将は、頼りになりませんか?」
(´・ω・`)「まぁ、将によるが」
遠まわしな皮肉は、プギャーに通じない。
どうやら、意味を理解できないらしい。
分かっていながら言ったことではあるが、嘆息が漏れる。
( ^Д^)「ラウンジが一度、オオカミに大敗した戦。
あれが今になってもまだ、響いているように思えます」
(´・ω・`)「あぁ、そうだな。確かにあれは痛かった」
\(^o^)/「ミーナ城を狙いに行って、逆にフェイト城を落とされた戦ですか?」
(´・ω・`)「そうだ」
519年のことだった。
ラウンジは、連敗で弱っていたオオカミを狙い、ミーナ城へと攻め寄せた。
当時は四中将がまだ健在だったが、肝心のミルナが病を得ており、かつてないほどオオカミは弱体化していたのだ。
ラウンジは力を溜めていた。
おまけに、南ではヴィップがオオカミのオリンシス城に迫っていたのだ。
負けようがない戦だ、と当時思ったのを覚えている。
- 167 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:01:45.45 ID:uqbS+GwU0
- が、負けた。
病を押して出陣してきたミルナに、為す術なくラウンジは大敗した。
四万の兵と五人の将校を失うという、かつてない敗北だった。
(´・ω・`)「イアン=フラジャイルやディク=ショナリーといった若く有能な将が、討ち取られた。
あのときの将が今も健在なら、もっと違った形になっていたんだろうが」
\(^o^)/「過ぎたことを悔いても、致し方がないことではありますが……」
(´・ω・`)「まぁな。しかし、あの敗戦がここまで響いてくるとは」
( ^Д^)「あのとき、ヴィップが軍を出さなければ、アルタイムやカルリナさえ討ち取られていたかも知れませんね」
(´・ω・`)「それに関しては、制約があるなかで、最善の行動を取れたと思っているさ」
クーが、誰よりも早く正確な情報を伝えてくれた。
オオカミが逆転したこと。ラウンジが危機に陥ったこと。
それを聞いて、自分はすぐに軍を出したのだ。
あのときオオカミは、オリンシス城からミルナ隊への援軍を出していた。
だからオリンシス城を狙う、という名分は充分に立ったのだ。
出陣に迷いはなかった。
ヴィップがオリンシス城に向けて出兵したことにより、オオカミはラウンジへの攻めを緩めた。
オリンシス城が落ちればオオカミ城まで危うくなる。オオカミの選択は、当然だった。
自分は、何とかヴィップの将として、ラウンジを助けることができたのだ。
- 178 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:04:21.02 ID:uqbS+GwU0
- (´・ω・`)「カルリナとアルタイムがいなかったらと思うと、ぞっとするな。
ファルロやギルバードといった将も欠かせない」
\(^o^)/「あとは、僕たち次第ですね」
(´・ω・`)「そうだな。先の戦では、天に嫌われた。
もう負けられんぞ。今度は、是が非でも勝利を収めなければな」
カルリナが、自分と共に戦う意思を持ったという。
それは純粋に、そして心の底から、嬉しい出来事だった。
ラウンジの天下に大きく近づいた、と思えたのだ。
共闘したことはないが、上手く歩調を合わせて戦いたい。
カルリナの鋭才は自分と合う、というような気がするのだ。
実際に轡を並べてみるのが、楽しみでもあった。
カルリナはフェイト城にいる。
今は、一日でも早く合流したい気持ちだった。
(´・ω・`)「二人の働きにも、期待している」
そう言って、二人を退出させた。
クーが黙って茶を運んでくる。
一息で飲み干し、湯呑みを置いて大きく息を吐いた。
外光は赤く、形を成して部屋に射し込んでいる。
クーの身体にのみそれが当たり、顔は暗くなって見えない。
だが、いつもどおり冷静な表情だろう、と予想はつく。
- 187 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:06:54.26 ID:uqbS+GwU0
- (´・ω・`)「クー」
川 ゚ -゚)「はい」
凛とした声が返ってくる。
まるで、風鈴を鳴らしているようだった。
(´・ω・`)「頼みがある。"モララー"を」
川 ゚ -゚)「分かりました」
全てを伝えなくとも、クーは理解してくれる。
だからこそ自分の手足のように使えるのだ。
(´・ω・`)「ヴィップを揺るがすには、ちょうどいい時機か、と思う」
川 ゚ -゚)「そうかも知れません」
(´・ω・`)「よろしく頼んだ」
言った瞬間、クーの気配は消えていた。
- 212 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:09:40.28 ID:uqbS+GwU0
- ――オオカミ城――
ラウンジ兵を降伏させ、城内の統治も少しずつ進めていた。
人手は足りない。しかし、元々ここは、自分が数十年にわたって治めていた城だ。
勝手の知らない城よりは随分と楽だった。
( ゚д゚)「ふぅ……」
城内の慌しさは、少し息苦しい。
一応、元ラウンジの兵に牙を剥かれることも考えているため、常に気を張っているのだ。
四千強の兵は解体してヴィップ軍に取り込むつもりだが、それも東から援軍が来てからだ。
ウタワレ城は難なく得られたという。
あそこは、兵站もオオカミ城に頼り、実質リディアルが統治していた城だ。
オオカミ城とリディアルを失っては何もできない。
一度に二城を落とすことができた。
自分の戦歴のなかでも、最も鮮やかな戦だった。
たった数十の損害で二つの城を得られることなど、そうそうあることではない。
だが、両手を広げて喜べるような心境ではなかった。
(个△个)「ミルナ中将」
夜の光に照らされたルシファーが、こちらへ歩み寄ってくる。
オオカミ城の三階にあるバルコニー。昔は円卓と椅子が幾つかあったが、前線となってからは排除された。
そのせいだろうか、やけに空虚感を覚える。
- 231 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:12:32.90 ID:uqbS+GwU0
- ( ゚д゚)「すまんな、呼びつけたりして」
(个△个)「いえ。用向きをお伺いします」
疲労が顔に浮かんでいた。
今のルシファーには、ほとんど将校と同じ仕事を与えている。
慣れない日々を過ごさせてしまっている。
( ゚д゚)「少し、話がしたかった。それだけだ」
アルファベットを背から離し、床に置いた。
柵に背を預けて座り、ルシファーを手招きする。
( ゚д゚)「今回の戦は、手放しで喜んでいいほどの大勝だった」
隣に腰を下ろしたルシファーが、小さく頷いた。
( ゚д゚)「指揮官は常に損益を考える。いかに少ない損で、いかに多くの益を得られるか。
そういった観点から見れば、俺は自分で自分を褒めてもいいくらいだと思っている」
(个△个)「僕もそう思います。此度の策は、実に素晴らしいものだったと」
( ゚д゚)「だが、俺もお前も、引っ掛かりが残った」
また、ルシファーは頷いた。
先ほどよりも、更に小さく。
( ゚д゚)「性質は違う。お前は、唯一無二の友を失った。
俺は、自分にもっと力があれば、失わずに済んだものを失った」
- 240 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:15:07.36 ID:uqbS+GwU0
- (个△个)「それが戦です。僕は、入軍したときから理解していました」
( ゚д゚)「俺とて、そうだ。そして俺は、同じような事態を何度も味わってきた」
(个△个)「今回、"何故か"引っかかってしまっている、ということですか?」
( ゚д゚)「そうだ」
オオカミを失ったこともそうだ。
四中将たちを失ったことも、そうだ。
自分に力さえあれば、何ら問題なかった。
もっと力が。一人でも全てを成せるような、力が。
それさえあれば良かった。
無力さは自分の責任だ。
指揮官として、当然負うべきものだった。
( ゚д゚)「誤解のないよう、聞いてもらいたいんだが」
(个△个)「はい」
( ゚д゚)「恐らく、俺の心にレヴァンテインの存在が深く残ったのは、お前たちと目的が違うからだ」
そう言っても、ルシファーの表情は変わらなかった。
相変わらずの無表情で、淡白にも見える。
- 254 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:17:27.64 ID:uqbS+GwU0
- ( ゚д゚)「俺はただショボンを討ちたい。あいつがオオカミの仇だと考えているからだ。
だがお前たちはヴィップの天下を望んでいる。自国の勝利を渇望している。
互いに、最も大事な部分が食い違っているんだ」
(个△个)「それは、みな分かっていることです」
( ゚д゚)「だったら何故、お前たちは俺を信じられるんだ?
どうして俺を信じて戦える?」
( ゚д゚)「レヴァンテインは、俺を信じきって最後の一撃を繰り出した。
自分が囮となれば、俺がリディアルを討ち取ると信じていた。
そうでなければ、あんな行動には出られない」
(个△个)「はい」
( ゚д゚)「ルシファー、お前も同じだ。
千の騎兵を率い、オオカミ城に攻め寄せるのは、かなりの危険が伴った。
なのに俺を信じて、ひたすらここへ駆けてきた。その理由は、なんなんだ?」
疑問が、自分を惑わす。
その事実に、いま初めて気付いた。
分からないから、深みにレヴァンテインは居るのだ。
(个△个)「まず、僕の考えについて」
( ゚д゚)「聞かせてくれ」
- 265 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:19:48.64 ID:uqbS+GwU0
- (个△个)「ショボンを討ちたいとする気持ちは、同じです」
それは分かっている。
ヴィップの兵も望んでいると知っていたから、自分は心置きなくヴィップで戦えるのだ。
だが、果たして自分を信じる理由になるだろうか。
なりえる、とは思う。
しかし、引っかかる。
( ゚д゚)「ルシファー、考えどころだ」
(个△个)「何が、でしょうか」
( ゚д゚)「これからも俺の許で、戦えるかどうか。よく考えてみてくれ。
俺を信じられる相応の理由があれば、俺はそれに全力で応えよう。
だが、微かでも疑う余地があれば、他の将と共に戦うべきだ」
ルシファーだけの問題ではなかった。
ヴィップの将、いや全兵卒にも言えることだ。
一部の目的を同じくしている。
それだけでいい、と思っていた。
だが、自分の命令を受けて死にゆく兵は、それでいいのだろうか。
自分はヴィップの天下など、まるで望んでいないのに。
引っかかりの正体は、突き詰めると、そこにあるのだった。
(个△个)「考える必要など、ありません」
- 274 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:22:29.99 ID:uqbS+GwU0
- はっきりと、言い放った。
ルシファー。やはり、表情は変わらない。
即答に近かった。
(个△个)「僕もレヴァンテインも、同じです。
ミルナ中将を信じています」
( ゚д゚)「俺の、何をだ?」
(个△个)「力です」
やはり、決然と。
真っ直ぐ、心を打ち鳴らすように。
(个△个)「疑う余地などありません。ミルナ中将は、絶大な力をお持ちです。
此度の戦勝でも、それは証明されています」
( ゚д゚)「しかし」
(个△个)「中将の力を信じていたからこそ、レヴァンテインも囮となれたのだと思います。
きっと討ち取ってくれると」
( ゚д゚)「……しかし、俺にもっと力があれば」
(个△个)「際限はないでしょう。力は、どこまでも追い求めることができてしまいます。
あくまで、対比です。僕たちから見て、ミルナ中将には途轍もない力があります」
そんな風に考えたことはなかった。
ルシファーたちから見ての、力。
自分からは決して見れない、知ることのできない力だ。
- 290 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:25:11.86 ID:uqbS+GwU0
- (个△个)「意地の悪い見方をすれば、僕たちはお互いの力を利用しあっています。
ミルナ中将は、ショボンを討ち取るためにヴィップを。
そしてヴィップは、ラウンジに勝つためにミルナ中将を」
( ゚д゚)「……それは、そうかも知れんな」
(个△个)「僕は、それでいいと思っています。
だから、ミルナ中将の力さえ信じていれば、戦えるのです。
中将が比類なき力を、見せてくれる限りは」
思わず、口元が綻んだ。
簡単なことだった。
自分はただ、自分の力を誇示していればいい。
内外に見せつけてやればいいのだ。
あとは、今までどおり、配下の死を負っていけばいい。
自分を責めながら、更に精進していけばいい。
全てを、力に変えて。
(个△个)「雨が、降ってきましたね」
ルシファーが掌を天にかざした。
同時に、自分の鼻先を雨粒が掠める。
(个△个)「屋内に戻りましょう」
( ゚д゚)「いや……」
- 297 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:27:55.70 ID:uqbS+GwU0
- 空を見上げた。
雨粒が作る線はやがて長くなり、広がって落ちてくる。
音も聞こえ出した。
自分も、掌を伸ばした。
触れる雨の勢いが、強さを増したように感じる。
( ゚д゚)「少しだけ、雨に濡れていたい気分だ」
ルシファーが、今日はじめて笑った。
自分の口も、また少し緩んだ。
――翌日――
――オオカミ城――
嫌な思い出が蘇る。
否が応にも、だ。
忘れはしない。
一度得たこの城を、自分のせいで手放すことになった。
あのとき、もっと注意深く行動していれば。
そんな思いと共に、オオカミ城へと入った。
( ゚д゚)「突然、すまなかったな。感謝している」
( ^ω^)「お礼を言いたいのはこちらのほうですお」
- 305 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:30:30.81 ID:uqbS+GwU0
- 出迎えはミルナだった。
フサギコとビロードはウタワレ城に留まっており、不在だという。
兵的にも不足があったが、自分が一万を率いてきたため緩和されるはずだ。
( ゚д゚)「本来ならば大将に断るべきだ、と分かってはいたんだが」
( ^ω^)「自分からの返答を待ってたら機を逃してたはずですお。
結果さえ伴えば何ら問題なし、ですお」
( ゚д゚)「だから、結果を出すのには拘ったさ」
ドクオを討った将と、こんな風に話す日が来るとは思わなかった。
やはり、ドクオの死にショボンが大きく絡んでいたことが影響している。
( ゚д゚)「この城を奪えたのは大きいな。今後のラウンジ戦で、必ず有利に働く」
( ^ω^)「ミーナ城とヒトヒラ城を脅かせますお。
ラウンジは、そっちに人員を割く必要が出てきますお」
( ゚д゚)「しかし、ラウンジがどう出てくるかは分からん」
( ^ω^)「シャッフル城を攻める構えを見せてますお。
おまけに、北からショボンが行軍しているという情報も」
( ゚д゚)「そうか。遂に、全力を出してくるか」
( ^ω^)「カルリナとショボンはしばらく別々に動いてくる、という予測は」
( ゚д゚)「外れていたわけか。あるいは、どちらかが心変わりしたか」
- 315 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:33:00.79 ID:uqbS+GwU0
- ( ^ω^)「多分、カルリナが協力体制を取ったんだと思いますお」
( ゚д゚)「突然やってきたショボンに拒否反応を示していた、としても不思議はないからな」
一万の兵のうち、八千を入城させた。
あとの二千はそのままウタワレ城に向かっている。
ラウンジの兵を解体して東へ送れば、とりあえずの編成は整うはずだ。
( ^ω^)「ヴィップにとっては辛いところですお。二人の結託は」
( ゚д゚)「また東に戻るのか?」
( ^ω^)「編成が整い次第、シャッフル城に」
( ゚д゚)「誰を伴う? 一人で戻るわけじゃないだろう。
俺の考えだが、ルシファー=ラストフェニックスにはウタワレ城を任せてもいいくらいの力がある」
( ゚д゚)「このオオカミ城は一人の将校で問題ないはずだ。
一人をオリンシス城に戻すとしても、あと一人、シャッフル城防衛戦に連れていける余裕がある」
( ^ω^)「じゃあ、ミルナさんを」
シャッフル城戦は、苦しい戦いになるだろう。
最も力のある将を連れて行くべきだった。
( ゚д゚)「分かった」
ある程度、予想はしていたようだった。
いや、もしかすると、ミルナはそれを望んでいたのかも知れない。
ショボンと戦える機会だからだ。
- 326 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:35:33.74 ID:uqbS+GwU0
- 自分も、ショボンと戦う日を心待ちにしていた。
自分の手で討ちたいと思う気持ちは、強い。
恐らく、ミルナ以上に。
( ゚д゚)「それと、前に頼まれていたアルファベット職人だが」
( ^ω^)「どうなりましたお?」
( ゚д゚)「いや、まだ探していない。所在は知っているが、移っている可能性もあるからな。
以前のままなら、こことオリンシス城の中間地点あたりに住んでいるはずだ」
( ^ω^)「オオカミ城で匿っていたわけじゃないんですかお?」
( ゚д゚)「城に住まうのを嫌っていた。だから、見つかりにくいところに隠れ住んでもらっていたんだ」
心の色が変わる。
それは、放っておけばやがて、表情にまで及ぶ。
何とか、胸で押し留めた。
( ゚д゚)「所在を知っているのは俺だけだろうな。ラウンジに狙われていることはないだろう」
( ^ω^)「それは、良かったですお」
将校が持つアルファベット、特にS以上について、今は困窮していた。
早めに問題を解決したい気持ちがあった。
( ^ω^)「そういえばミルナさん、もう一つ」
( ゚д゚)「なんだ、また頼みごとか?」
- 335 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:37:52.51 ID:uqbS+GwU0
- ( ^ω^)「いえ、実は今、とある資料を探していて」
事情を説明した。
とは言っても、ほんの一言、二言だ。
ヴィップが勝つための策を模索している、ということさえ伝わればよかった。
ミルナなら、元オオカミ領だった城については詳しいだろう。
小さな村落にも可能性はある。とにかく、情報が欲しかった。
( ゚д゚)「可能性が一番高いのは」
( ^ω^)「どこですかお?」
( ゚д゚)「恐らく、ここだ」
オオカミ城。
確かに、この城は古くから存在しているという。
城の規模も相当なものだ。資料が見つかる可能性はある。
すぐに資料室と書物室を探し回った。
ミルナと手分けして、ひとつひとつ確かめていく。
膨大な量だ。それでも、古い物にはしっかりと目を通した。
第一資料室と第二書物室には、それらしき記述が見当たらなかった。
数十人の兵卒にも手伝ってもらい、次々に資料を漁っていく。
( ゚д゚)「俺も昔、調べたことはあるが……過去の大戦がどう終わったのかは、分からなかったな」
( ^ω^)「どこにも載ってないんですお。基本的には、戦に関することさえ」
- 345 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:40:05.66 ID:uqbS+GwU0
- ( ゚д゚)「何か、作為めいたものさえ感じるが……」
何故かは分からない。
何らかの理由がありそうだ、とは自分も思うが、分かりそうもない。
どのように始まったのか、は大体の察しがつく。
分かり合えない者同士がぶつかれば、戦となるのだ。
始まりは些細なことでも、やがて広がって大戦となる。
始まりの経緯はどうでもよかった。
とにかく今は、終わり方を知りたい。
全土を巻き込むほどの戦が、いかにして終わったのか。
( ゚д゚)「ダメだな……ここにもない」
第四資料室の扉を閉めた。
七百年ほど前から残っている資料さえほとんどない。
なのに、その中から戦についての記述、そして終焉についての記述を探そうというのだ。
城の抜け穴でも探索するほうがまだ楽だろう、と思った。
いつの間にか日も暮れている。
あまり時間はかけられない。大将としてやるべき仕事は、他にもある。
今は諦めるしかないのだろうか。
( ゚д゚)「あとひとつだけ、探してみるか」
( ^ω^)「どこですかお?」
( ゚д゚)「地下の、荷物室だ」
- 353 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:42:07.87 ID:uqbS+GwU0
- ミルナに導かれるまま、階段を下りた。
地下の荷物室。話では、ここに抜け道があるのだという。
( ゚д゚)「外から入ってこられないよう、既に抜け道は塞いである」
荷物室に入る直前、そう教えてくれた。
さすがにミルナの対応は早かった。
室内に入った。
瞬間、夥しい量の埃が舞う。
地下なだけあって光がなく、手元のランタンでは室内を照らしきれなかった。
雑多に物が放り込まれている部屋だった。
車輪のついた荷台、細長い棒、木製の箱などが近くに見える。
物の上に更に物が重なっており、歩く隙間もないほどだった。
荷物を踏み越え、ミルナの後についていった。
口と鼻を手で塞ぎながら、微かに空気を取り込む。
誤って深呼吸でもしようものなら大変なことになるだろう。
( ゚д゚)「確か以前、本棚を見かけたような気が……あぁ、あれだな」
ミルナが指差しているようだが、暗すぎて何も見えない。
ただひたすら、ミルナの背中だけを追っていった。
百冊程度が収められていると見える本棚。
どれも見るからに古い書籍ばかりだった。
- 359 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:44:07.37 ID:uqbS+GwU0
- 二人で一冊ずつ確かめていく。
内容も確かに、旧い。昔の流通についてなどが記されている。
だが、せいぜい三百年か四百年といったところだ。
興味深い書物が多くあるのは事実だった。
例えば、世界暦についての記述。
世界暦の制定は、過去の歴史家が歴史を編纂した際、便宜上その年を0年としたものが広まったのだという。
それ以前は紀元前と表記されていた。
求めているのは、紀元前二百年から三百年ほど前の記述だ。
念入りに確かめていく。片隅に残されている可能性もあるのだ。
とにかく、見逃したくない。
だが――――。
( ゚д゚)「……ダメだ、ないな」
ミルナが本を閉じて、言った。
溜息で埃が舞い上がったのが見える。
落胆の色は隠せなかった。
これほどに古書が集まっている場所はそうそうない。
オオカミ城でも見つからないとなると、かなり希望は薄かった。
自分で考えて見出せばいいだけの話だ。
それは分かっている。
だが、何か手助けとなってくれるのではないかと期待していた。
- 364 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:46:13.97 ID:uqbS+GwU0
- 逆転の策が、浮かびそうな気はする。
するのだが、浮上の際、どこかに引っかかってしまうのだ。
そしてまた深層へと沈んでいく。
ちょうど、自分の気分のように。
自分の、視線のように――――。
( ^ω^)「ん……?」
ふと、気に掛かった。
足元の資料。
自分の足跡がついている。
十数枚の紙に穴を開け、糸を通しただけの簡素なものだ。
表紙さえない。
紙は、見かけ上きれいだったが、触ってみるとかなり劣化しているのが分かった。
破らないよう、慎重に捲っていく。
( ゚д゚)「ん? なんだ、それは」
ミルナの問いかけに、答える余裕はなかった。
手が、止まる。
そして一瞬、思考さえも。
誰かの日記のような、雑な書き方、字。
おおよそまともな資料とは呼べない。
- 371 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:48:30.62 ID:uqbS+GwU0
- だが、あった。
確かに、はっきりと。
記述が、終焉についての詳細が、ここに残されていた。
( ゚д゚)「これは……!」
紙を覗き込んだミルナが、一瞬黙り込んだ。
( ゚д゚)「……驚いたな……ニチャン国大将、シャイツー……。
しかし、ある意味では……これは――――」
( ゚д゚)「――――ブーン?」
呼吸さえも、暫時、忘れていた。
ただじっと、資料を見つめつづけていた。
探し物が、見つかった。
資料ではない。もっともっと、大事なものだ。
おぼろげながら捉えていたものを、はっきりと掴んだ。
深層から、浮かび上がってきた。
鮮明に、見えた。
(;゚д゚)「ブーン、まさか……!!」
- 388 名前:第91話
◆azwd/t2EpE :2008/02/14(木)
01:50:34.79 ID:uqbS+GwU0
- ――――これだ。
これしかない。
逆転の策は、これしか、ない。
第91話 終わり
〜to be continued
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