- 7 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土)
22:39:09.60 ID:m9RGbW/n0
- 〜東塔の兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
18歳 少尉
使用可能アルファベット:I
現在地:エヴァ城付近
●('A`) ドクオ=オルルッド
18歳 新兵
使用可能アルファベット:C
現在地:ヴィップ城
●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
28歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:エヴァ城付近
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
23歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:エヴァ城付近
●( ,,゚Д゚) ギコ=ロワード
26歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:アラストール城
- 8 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土)
22:40:27.93 ID:m9RGbW/n0
- ●( ^Д^) プギャー=アリスト
24歳 大尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ベヘモット城
●( ><) ビロード=フィラデルフィア
21歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:シャナ城
〜西塔の兵〜
●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
33歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ハルヒ城
●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
34歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城
●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
37歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ハルヒ城
- 11 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 22:42:04.67 ID:m9RGbW/n0
- 〜東塔〜
大将:ショボン
中将:モララー・モナー
少将:ギコ
大尉:プギャー・シラネーヨ
中尉:
少尉:ブーン・ビロード
〜西塔〜
大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:
大尉:ヒッキー
中尉:
少尉:
- 13 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE
:2007/01/13(土) 22:44:26.82 ID:m9RGbW/n0
- A:
B:
C:ドクオ
D:
E:
F:
G:
H:
I:ブーン
J:
K:
L:プギャー
M:
N:ヒッキー
O:
P:
Q:
R:モララー
S:ジョルジュ
T:ショボン
U:
V:ベル(ラウンジ)
W:
X:
Y:
Z:
- 16 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 22:47:19.37 ID:m9RGbW/n0
- 【第9話 : Recovery】
心を反映したような色が空に広がっている。
相手の隙を突いた夜襲。モララーの作戦は、完璧だった。
自分さえ、ミスをしなければ。
(#;‘_L’)「とにかく追わないと! 取り返しがつかなくなります!」
(;´ω`)「もう無理だお……追いつけないお……」
(#;‘_L’)「援軍のほうが早くエヴァ城に到達しても、ヴィップ軍を攻めている間に後ろから攻撃できます!
とにかく今ならまだ姿が見えてる!!
少しでも早く!!」
(;´ω`)「……そ、それもそうだお……すぐに向かうお!」
馬の首を引き、駆けた。
敵援軍は騎兵もいるが、歩兵も混じっている。その歩兵には、追いつけるかも知れない。
エヴァ城の城塔がここからはっきり確認できるほど迫っている。
暗闇から干戈の声が遠来し、戦の匂いも漂ってくる。
激戦が、闇の中で繰り広げられているのだ、と分かった。
草原を敵援軍が駆けていく。やはり速い。
歩兵も全力で駆けている。こちらの馬は、走り続けで息が上がっている。
思うように、追いつけない。
駄目だ、届かない。敵の姿が、霞むように消えていく。
しかしそのとき、突如地鳴りが響いた。
- 19 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 22:49:34.05 ID:m9RGbW/n0
- 敵援軍が、浮き足立った。
隊を乱された敵援軍は次々に討ち取られ、逃げ出し、そしてそれをブーンは迎え撃つ。
かなりの数を、犠牲もほとんどなく討ち取った。
(;‘_L’)「伏兵……! あれは、ショボン大将の兵……!」
(;^ω^)「ショボン大将の、伏兵!?」
援軍がエヴァ城に近付いたとき、闇から突然兵が飛び出してきた。
数は恐らく三千程度。しかし、不意を突かれて敵援軍は為す術もなく崩れた。
的確な伏兵配置。予見していなければ、まず無理だろう。
それが、何よりも悔しかった。
エヴァ城が近付き、戦いの様もはっきり把握できるようになってきた。
入り乱れていて分からないが、エヴァ城を慌しく人が出入りしているのが見える。
あの慌て様を見るに、押しているのだと思った。
そしてすぐにショボンから伝令が飛んできた。
その場で待機し、エヴァ城に向かってくる残りの敵援軍を掃討せよ。
そう伝えた伝令にも、浅い傷がいくつか見えた。
月の傾きでフィレンクトが時刻を計った。
戦の開始からはかなり経っている。そろそろ、決着がついてもおかしくない。
時々現れる敵援軍は適宜撃破した。まとまった数を通してはいない。
それを、本当は一人でやらなければならなかったのだ。
鶏鳴が暁を告げる頃、ようやく静寂が草原に戻った。
オオカミの兵はエヴァ城に入ったようだ。
- 22 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 22:52:10.76 ID:m9RGbW/n0
- ――朝――
――エヴァ城付近――
( ・∀・)「エヴァ城の敵軍、一万は確実に討ち取りましたね」
(´・ω・`)「だが、こちらの犠牲も大きかった……敵の犠牲に比べれば小さいことは確かだが……」
( ・∀・)「そりゃー仕方のないことです。みんな死を覚悟して戦に臨んでるんですから」
エヴァ城を三万で囲んだ。
各城の守りは部隊長レベルに任せ、将校クラスは全員前線に上がってきている。
( ・∀・)「それにしてもショボン大将、さすがです。兵を伏せたタイミングと位置、完璧でしたね」
心を、握り潰すような一言。
プギャーからは気の毒そうな視線を向けられた。ギコは少し、残念そうに見える。
そしてビロードは、昨日までの柔和な表情からは考えられないほど、無が貼り付いていた。
(;´ω`)「……本当に、申し訳ありませんでしたお……」
( ・∀・)「期待外れ。それだけの話だろ?」
(´・ω・`)「言葉が過ぎるぞ、モララー」
( ・∀・)「すみません。ですがショボン大将、やっぱり見込み違いです」
(‘_L’)「……いえ、私の責任です」
- 26 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 22:54:42.82 ID:m9RGbW/n0
- 突如、後方に居たフィレンクトが声を発した。
モララーは首を傾げている。
( ・∀・)「どういう意味だ?」
(‘_L’)「ブーン少尉を、上手く補佐できませんでした。私のほうが経験もあって、地形にも詳しいのに……。
戦が始まる前にもっと進言すべきでした。モララー中将も、それを期待して下さっていたのに……」
(;´ω`)「違いますお! ブーンがフィレンクトさんの言うことを聞かなかったんですお!」
(‘_L’)「いえ、私の言動が的確ではありませんでした。ブーン少尉は、初指揮とは思えぬ働きでした」
( ・∀・)「もういい。どっちにしろ、援軍撃退に失敗したことに変わりはねーんだ」
モララーの声に変わりはない。
しかし、だからこそ冷徹な一言が、重く圧し掛かる。
( ・∀・)「ショボン大将の伏兵は完璧だった。が、そっちに兵を割いたことで、エヴァ城を攻め切れなかった部分もある。
ブーン、一人が役目を果たせないと、全員が役目を果たせない可能性が出てくる。覚えとけ」
その後すぐ、モララーは陣を回るために幕舎から退出した。
気まずい空気は、とてもかき消せそうになかった。
(;^Д^)「……ちょっと厳しすぎませんか?
たった一回の失敗、それも初指揮なのに……」
( ,,゚Д゚)「言い訳したって死んだ兵は蘇らない……指揮権を持った以上、役割を果たす義務がある」
(;´ω`)「それは、もちろん分かってますお……だからこそ、自分が情けなくて……」
(´・ω・`)「ブーン、戦の状況を詳しく教えてくれ。何故突破された?」
- 28 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 22:57:07.12 ID:m9RGbW/n0
- ショボンの巨躯が近付いた。
脅されているようで、萎縮してしまう。このときに限っては、だった。
(;´ω`)「……最初のH隊二千を打ち破って……そこで、迅速な行動が取れなくて……。
焦ってしまって、G隊三千に苦戦してしまい……同時にE隊五千が来て、わけ分かんなくなりましたお……」
(´・ω・`)「隊を分ければ良かったんだ。E隊五千なら、I隊一千で充分翻弄できる。
G隊三千もI隊二千で充分。敵を殲滅するなら手勢は多いほうがいいが、乱すだけなら少数でいい」
そう言われれば、確かにそうだった。
あのときは、敵の援軍を討ち取ることに必死になりすぎた。
ただ行く手を遮るだけで良かったのに。
(´・ω・`)「敵援軍をかなり討ち取ったと聞いたが、戦は敵を討ち取るだけが全てじゃない。
臨機応変に戦わないと、いたずらに犠牲も増えてしまう」
まともに敵とぶつかって、そのせいでこちらにも犠牲が出た。
突き破って敵を乱すだけなら、死ぬ可能性はほとんどない。
何故、それが分からなかったのか。今更悔やんでも、死んだ兵は帰らない。
(´・ω・`)「しかし、援軍が一万は多いな……モララーの計算以上だ……。
多くても八千と踏んでいたからI隊三千で充分だと思ったが、一万なら四千か五千は必要だったな」
( ^Д^)「やはり、ブーンのせいでは」
(´・ω・`)「いや、ブーンにも省みるべき点は多い……残念だがな……。
さっき挙げたこともそうだが、シャナ城に援軍を要請しなかったこともだ。
G隊三千を相手にしている途中でE隊五千が出てきた。そこで要請すれば問題なかったはずだ」
(;´ω`)「それは……」
- 29 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 22:59:31.35 ID:m9RGbW/n0
- 一人でやり遂げたかった。そういう、戦にあってはならない個人的願望だ。
少尉として、命を預かる者としての自覚が、足りなさすぎた。
( ><)「……んです」
(´・ω・`)「ん? どうした? ビロード」
( ><)「要請しなかったのは、ブーン少尉が僕を頼りないと思ったからなんです。
そうに決まってるんです。分かってるんです」
(;´ω`)「!?」
(´・ω・`)「どういうことだ?」
わずか数人しかいない幕舎が、騒然となった。
普段のビロードには程遠い、静かな声だった。
( ><)「僕は今年少尉になったばかりなんです。僕だって、大戦の指揮は初めてなんです。
頼りないと思われるのはしょうがないんです。分かってるんです」
(;´ω`)「違いますお! 助けを求めなかったのは、自分ひとりでやり遂げたいって思ったからで……」
( ><)「僕が行くくらいなら、一人のほうがマシってことなんですか?」
(;´ω`)「そうじゃありませんお……ただ、援軍撃破を任されたブーンが一人でやるのが最上だと……」
- 33 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:02:19.46 ID:m9RGbW/n0
- ( ><)「戦に勝つことが最重要なんです。ブーン少尉も分かってるはずなんです。
一人でやるのが最上なんて、言い訳なんです。ホントは頼りたくなかっただけで」
(´・ω・`)「やめろビロード。さっきから何を言っているんだ?
ブーンはお前を頼りないなんて思ってない。
気が動転して、助けを求めることに頭が回らなかっただけだ」
ビロードの手が微かに震えている。
うつむき加減のその表情を伺うことはできない。
しかし、細い喉から搾り出された声は、手と同じように震えていた。
( ><)「……いつだって戦に行く準備はできてたんです……。
いつだって行けたんです……覚悟はできてたんです……。
……僕は……僕は……」
ビロードが一瞬、言葉に詰まった。
( ><)「……僕は、初指揮のブーン少尉を……助けてあげたかったんです……」
目頭が熱くなった。
慌てて顔を伏せる。滲む視界。
瞼を閉じれば、溢れ出してしまう。
(´・ω・`)「……お前のその優しさはきっと、いつか誰かを救うさ……」
ショボンが、優しい手つきでビロードの頭に触れた。
誰かが鼻をすする音が聞こえたが、ぼやけた視界では誰なのか分からなかった。
- 34 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:04:27.02 ID:m9RGbW/n0
- ――昼――
――エヴァ城付近――
(‘_L’)「先ほどの私の発言は、ブーン少尉を庇おうと思って咄嗟に出た一言……というわけではありません」
幕舎から二人で出て、すぐにそう言われた。
足早に歩いていくフィレンクトに、ついていくようにして並び歩く。
エヴァ城とは逆の、昨日は戦場になった草原の方向だった。
(;^ω^)「……お?」
(‘_L’)「ブーン少尉は、本当に初指揮とは思えぬ動きをしていました。とても果敢で……。
隊の先頭に立って、最初に敵に当たって、薙ぎ倒していく……おかげで、兵の士気は高かったと思います。
証拠に、敵兵をおよそ三千討ち取ったにも関わらず、こちらの犠牲は二百程度で済みました。
敵の戦力を大きく削ったことは間違いありません」
(;´ω`)「……だけど、ブーンの行動は適切ではありませんでしたお……。
フィレンクトさんがせっかく助言して下さったのに……」
(‘_L’)「私は才のない人間です。ショボン大将の仰ったことを、私があの場で言えれば良かったのですが、
全く思い浮かびませんでした。冷静に補佐しきれませんでした」
(;´ω`)「……それは、ブーンの責任ですお。少尉になった以上、ブーンがやらなきゃいけなかったんですお」
(‘_L’)「的確な補佐が私の役目です。任務を遂行しきれなかったのは私のほうです」
(;,,゚Д゚)「……おい、まだ責任の被り合いしてたのか」
- 36 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:06:39.51 ID:m9RGbW/n0
- 気付かぬ間に、ギコ少将が後ろに立っていた。
呆れかえって、溜息を一つ向けられる。
( ,,゚Д゚)「お前らが失敗したのは事実だよ。だけど、作戦全体としては成功だったんだ。
モララー中将だって別にお前らを罰そうなんて考えちゃいない。
今からは、今晩の戦のことだけを考えろ」
(;^ω^)「……今晩!?」
朝まで戦をしていた。
その後、大急ぎで城を囲み、陣容を整えた。
まだ落ち着いてはいないのだ。
なのにもう戦とは、さすがに性急すぎるのではないか、という気がした。
( ,,゚Д゚)「エヴァ城を囲んだことはもうとっくに知られてる。
オオカミ本城から軍が送られてくるのは遠くない。
篭城戦で一番痛いのは敵の援軍だ。その前に、エヴァ城を落とす」
(;^ω^)「落とす、って……一体、どんな方法で……?」
( ,,゚Д゚)「それについて、今からモララー中将の説明があるそうだ」
そしてギコは背を向ける。
さっき外に出てきたばかりだが、すぐに幕舎に引き返すこととなった。
- 38 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:08:57.90 ID:m9RGbW/n0
- ――幕舎内――
( ・∀・)「作戦の決行は今夜。仮に失敗した場合は全軍シャナ城まで引き返す。
もう一度エヴァ城を攻めるのは無理だ。兵站も整備していないし、滞陣する余裕はない」
モララーが紙を広げた。
城壁の高さや城の内部の情報が詳細に書かれている。
エヴァ城の見取り図だ。
( ・∀・)「二年前の見取り図だが、今もほとんど様変わりしていないという話だ。
北と南に門がある。城壁にはD隊がずらりだ。強攻すると犠牲はかなり大きいだろうな」
(´・ω・`)「城壁は高くない。D隊さえいなければ雲梯をかけて城壁を越えるところだがな……」
( ・∀・)「一応攻城兵器は用意してありますが、ほとんどはカムフラージュです
使うのは、投石器だけですから」
ショボンが微かに眉を動かした。
顰めた、と言ったほうが適切かも知れない。
(´・ω・`)「投石器……そのまま使うわけじゃ、ないんだろうな?」
( ・∀・)「もちろんです。石なんか投げませんよ。投げるのは、油です」
(´・ω・`)「!! そうか、火計か」
( ・∀・)「エヴァ城の中心に存在する、"ダイサントーキョー"という木造建造物。
秀麗な出来栄えで、アラマキ皇帝もいたくお気に入りだったそうですね」
- 39 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:11:09.12 ID:m9RGbW/n0
- モララーの人差し指が紙を叩く。
ダイサントーキョーと書かれたそれは、城の中心に存在していた。
( ・∀・)「二年前、エヴァ城を奪われたときは空隙を衝かれただけで、城が戦場になったわけじゃない。
オオカミは火計の恐れを認識できてない、と踏みました。
油を大量に浴びせて、燃やします。オオカミ軍は城を飛び出てくるでしょう」
(´・ω・`)「そこで敵軍を討ち取り、火を消してエヴァ城を支配するわけだな」
( ・∀・)「そうです。アラマキ皇帝には申し訳ないですが、アレは燃やしたほうが今後のためだと思います。
敵が消火に集中した場合は雲梯で城壁を越えます。D隊もこちらを狙っている場合じゃないでしょうから」
(´・ω・`)「そうだな。まぁ、十中八九、城を捨てるだろうがな」
( ・∀・)「北門と南門で待ち伏せます。討ち取れるだけ討ち取りましょう。
そして、大事なのはやはり、ミラルド=クァッテンの首ですね」
(´・ω・`)「討ち取っておきたいな。それで、この戦は完全勝利だ」
ミラルドは、エヴァ城の守将らしい。
オオカミの大尉で、使用アルファベットはL。
昨晩の戦でも、指揮官として活躍したという。
( ・∀・)「ブーン、チャンスだ」
(;^ω^)「え?」
突然名前を出され、情けない声が出てしまった。
そして、発言の意味は理解できない。
- 40 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:13:26.94 ID:m9RGbW/n0
- ( ・∀・)「北門には俺が行き、南門にはショボン大将が行く。
ブーン、お前はショボン大将と共に行け。そこで、ミラルドを討ち取れ」
(;^ω^)「ブ、ブーンがですかお?」
( ・∀・)「南門のほうが逃げやすい。間違いなく、南門から出てくる。
ショボン大将が行っても全力で逃げられてしまう。だが、お前なら敵は向かってくるだろう。
そこを討ち取ってやれ」
しかし、相手はLだ。
そう言いかけた。あまりにしょうもない一言を。
やるしかない。それは、最初から分かっている。
( ^ω^)「ありがとうございますお!
頑張りますお!」
その後、各部将に細かく指示を出し、準備のために散会した。
いつ援軍がやってくるか分からない。早急な準備が求められていた。
二百ほど減り、二千八百になったI隊の装備を整えさせた。
兵はみな年上だが、言うことにはしっかり従ってくれる。
国軍兵士として当たり前の姿なのかも知れないが、今の心境には嬉しさとして沁み込んだ。
(´・ω・`)「ブーン」
装備を整え終えて、隊も組んだあと、ショボンに声をかけられた。
大将として慌しく指示を下しているのがさっき見えたが、合間を縫って来てくれたのだろう。
部下を思いやることで有名なショボンらしかった。
- 43 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:16:07.06 ID:m9RGbW/n0
- (´・ω・`)「モララーも頑なじゃない。チャンスを与えてくれた。
絶対に逃すなよ。俺も全力でサポートする」
ショボンに肩を引き寄せられる。
口が耳元に近づいた。
(´・ω・`)「ミラルドには正面からぶつかるな。
相手のLと刃を交えた場合、アルファベットが破壊される可能性がある。
横か後ろから、不意の一撃を与えるんだ。
俺がミラルドを追い立てる。お前はミラルドを待ち伏せて、討ち取れ」
(;^ω^)「で、でも、それは……失敗を取り返したとは言わないのでは……」
(´・ω・`)「バカを言うな。ミラルドを討ち取ればお前の勲功は充分だ。
俺は今更敵の首など欲しくはない。お前が討ち取ればそれでいいんだ」
ショボンが距離を置いた。
二度三度、背中を叩かれる。
(´・ω・`)「大丈夫だ。何も心配は要らない。お前は自分のことにだけ集中するんだ」
軽く微笑んで、ショボンは遠ざかっていった。
蟠りをその場に残して。
- 46 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:18:29.98 ID:m9RGbW/n0
- ――夜――
――エヴァ城付近――
初更の月が輝き始めた。
乾いた風が草原を揺らす。篝火も姿を乱した。
城の北と南に配備された投石器。
油の詰まった木箱が次々と運び込まれる。
戦が始まる。
その空気が肌を突き刺す。
緊張感で体が硬い。
失敗を繕う戦であると同時に、エヴァ城を一夜で奪取する大作戦。
皆の表情が強張っているのも、当然だった。
(´・ω・`)「始めろ」
ショボンがエヴァ城を見据えたまま言った。
投石器が軋む音を立てながら、ゆっくり動く。
途中から加速し、勢い良く木箱を城に投げ入れた。
落下すれば箱が砕けて油が散るはずだが、ここからは確認できない。
手当たり次第、投げ込むしかなかった。
次々と放り込まれる木箱。北門でも同じことが行われているはずだ。
時々方向を変えて、万遍なく打ち込む。
- 48 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:20:49.89 ID:m9RGbW/n0
- 城壁からD隊が顔を出して、様子を伺いに来た。
威嚇でFを放ってくるが、到底届かない。
容赦なく木箱を飛ばし続けた。
(‘_L’)「木箱の投擲、完了致しました」
(´・ω・`)「よし。攻城塔のD隊に合図を送れ。火をつけたFを放て、と」
フィレンクトが鉦を打ち鳴らした。
即座に打ち込まれるF。
燃え盛る火が赤い線となって、エヴァ城に次々射込まれていく。
しかし、エヴァ城は燃え上がらない。
間断なく射ち続けられるF。すぐに炎上してもおかしくないはずだ。
だが、エヴァ城はいまだ静穏を保っている。
(;^ω^)「ショボン大将……」
不安が、口から飛び出た。
ショボンは冷静にエヴァ城を眺めている。
案じている様子はない。
しかし、エヴァ城はいつまで経っても色を同じくしている。
居ても立っても、いられなくなった。
(;^ω^)「ショボン大将、オオカミは何か対策を講じてたんですお。
これだけ射ても燃えないってことは、きっとダイサントーキョーを防護する何かが」
(´・ω・`)「ブーン、今後役立つことはない情報を一つ、教えてやる」
- 50 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:23:33.95 ID:m9RGbW/n0
- ショボンが馬に跨った。
同時に、近衛騎兵が次々準備を整える。
五百の騎馬隊。全て、黒馬。
その固まりは、不気味な、竦んでしまうような威圧を持った、黒い獣だった。
(´・ω・`)「今回のオオカミの指揮官、ミラルドは、バカで有名なんだ」
瞬間、堰を切ったように立ち上る火柱。
空や、兵の表情が赤く染まっている。
悲鳴や喊声が入り混じった。
(;^ω^)「な、なんでこんなにいきなり……」
(´・ω・`)「火なんてすぐに着くもんじゃない。時間はかかるさ。
しかし、一度燃え始めてからは、早いぞ」
乾いた風に煽られて轟々と燃え盛る。
先ほどまでの静寂が嘘のようだった。
(´・ω・`)「さぁ、来るぞ」
城門にオオカミの兵が傾れ込んでいる。
すぐに開かれる城門。算を乱して逃げ惑う兵。
(´・ω・`)「ブーン、手筈通り頼むぞ」
ショボンが駆け出した。
一つの獣となった近衛騎兵隊が動く。
最低限の陣形を組んだだけの敵兵に、ぶつかった。
- 55 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:25:46.43 ID:m9RGbW/n0
- 先鋭な槍のようだった。
高速で突き出され、的確にしとめる。
敵兵はほとんど何もできずに打ち倒されていく。
ショボンの騎兵隊は一糸乱れぬ動きで何度も敵兵に当たり、食い漁っていく。
人が操って、あそこまでになれるのか。
実際、目の当たりにしても、信じられなかった。
敵兵を蹂躙しつづける獣。牙を立て、爪で掻く。
原野を支配する、黒い獣だった。
そして特に際立った動きを見せるのが、やはりショボンだった。
隊の先頭に立ち、アルファベットTを振るう。
長い柄と、片側に刃、片側に槌を備えたアルファベットが、敵の喉を突いたあと、返しざまに頭を叩く。
全く無駄のない動きで、次々と敵兵を討ち取る。
敵兵の上から振り下ろされる槌が、頭蓋を砕いたのが見えた。
その隙を狙ってくる敵兵を、流れるように刃で突き倒す。
巧みなアルファベット技術。
ヴィップ国軍、最強武将という言葉は、この人のためにあるのだと思った。
できればずっと見ていたかったが、自分の任務を疎かにはできない。
I隊二千八百を率いて、南の林に軍を隠した。
エヴァ城から逃げるとすれば、南西のマリミテ城だ。
北のシャッフル城のほうが距離的には近いが、悪路であり逃げ切るのは容易ではない。
南で、ミラルドを待つようショボンに言われていた。
- 57 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:28:10.69 ID:m9RGbW/n0
- ショボンの隊が戦う姿が微かに見える。
その他、プギャーやシラネーヨといった尉官クラスが敵を討ち取っている。
相手は装備も充分でなく、ただ命からがら逃げ出してきたという感じだ。
臨戦態勢を取れている隊はショボンの軍にあっさり潰されている。
そのとき、乱戦の中から一つの隊が抜け出して来た。
こちらに向かっている。
(‘_L’)「ミラルドです!」
血の滴るLを握り締めて走り来る、ミラルド。
口を大きく開けて呼吸し、何度も後ろを振り返っている。
自分の命を守るのに、必死になっているのが分かった。
ミラルドが率いているのは二千ほど。護衛部隊だろう。
アルファベットはIで、ブーンが率いる一隊とほぼ互角の軍勢だった。
その後ろから迫るのは、ショボンの一隊。
闇に溶け込まぬ黒き猛獣。あれに追いかけられたくはない、と心の底から思った。
(‘_L’)「このままなら横からの一撃で討ち取れますね」
フィレンクトの言葉に、無心で頷きかけた。
ショボンが、そうしろと言った。しかし、釈然としない。
本当にそれが、モララーの言葉に沿うのか。
ショボンやプギャーが頑張ったのを、最後に横取りするようなものだ。
果たしてそれは、失敗を償ったことになるのか。
違う、と心のどこかから声が聞こえた。
- 59 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:30:34.22 ID:m9RGbW/n0
- ( ^ω^)「行きますお」
(‘_L’)「え?」
( ^ω^)「正面から、堂々とぶつかりますお。ミラルドは、一騎打ちで討ち取りますお」
(;‘_L’)「はっ……!?」
駆け出した。
必死で馬を走らせるミラルドが、こちらに気付いたようだ。
馬の嘶きが響く。
正面に回りこんだ。
ショボンの一隊は動きを止めたようだ。ありがたかった。
あとでどれほど叱られてもいい。自分の納得のいく形でなければ、必ず悔いが残る。
無情に命を奪い合う戦争であっても、義を失いたくはなかった。
単騎で前に出る。
隊の先頭に立っているミラルドに向かって、アルファベットの刃先を向けた。
ゆっくりと、ミラルドも前に出た。
( ^ω^)「ブーン=トロッソ」
名を発した。
声が返ってくる。嘲笑交じりに。
〈>`e´〉「若造が……調子に乗るなよ。
ミラルド=クァッテン、一撃で貴様をしとめてやろう」
- 66 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:33:27.13 ID:m9RGbW/n0
- 馬蹄の音が交差した。
余裕の表情が、近付いてくる。
干戈を交えた場合、アルファベットが破壊される恐れがある、とショボンに言われた。
打ち合うことはできない。
一撃でしとめる、と豪語したミラルド。
しかし、余裕と焦燥で、その動きは、隙だらけだった。
ミラルドと馬の荒ぶる吐息が、聞こえる距離にまで迫った。
ショボンの一隊の、槍のような鋭い攻撃を思い出した。
相手の喉元を掻っ切るような、的確な一撃。
あんな風に攻撃できたら。
真横に構えられたLが、振られた。
鋭い輝き。
だが、大振りすぎる。
頭を沈めて躱した。
同時に、切り裂いた首筋。
鮮血が放たれた。
半分だけ繋がった首がぐらりと傾く。
その頭を左手で掴んで、もう一撃を加えた。
離れた頭部と胴体。
咆哮を上げた。
ヴィップ軍の兵が武器を天に掲げた。
(´・ω・`)「俺の助言を無視するとは、やってくれるな……だが、最高だ」
ショボンが駆け寄ってきて、嬉しそうにそう言った。
- 74 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:36:17.05 ID:m9RGbW/n0
- ――翌々日――
エヴァ城を見事奪還し、ヴィップ軍の完全勝利に終わったオオカミ戦。
守将にモララーを据え、シャナ城は新たにビロードが守将となった。
ビロードとは翌日の戦勝祝宴で会話した。
やはり謝り合戦になったが、蟠りはなくなった。
今では一番仲の良い武将だ。
今日はヴィップ城に帰還することになっていた。
ショボンとプギャー、ギコがヴィップ城に戻る。
行軍の準備で慌しかった。
( ・∀・)「認めたわけじゃねーけどな。まぁ、一定の評価はやってもいい」
ヴィップ城へと旅立つ直前、見送りのモララーにそう言われた。
言葉に裏の意味を込めない、モララーらしい言葉だと思った。
( ・∀・)「頑張れよ。今度のオオカミ戦までには、もっと成長してこい」
そう言ってモララーはエヴァ城に戻っていった。
エヴァ城の修復や、属城との連絡線整備など、やるべきことは山積しているという。
シラネーヨと二人でそれにあたるそうだ。
(´・ω・`)「さぁ、帰るぞ」
ショボンが手綱を引いた。
突き抜けるような青空。通り過ぎる風。
何もかもが、笑顔に変わった。
- 79 :第9話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/13(土) 23:38:42.66 ID:m9RGbW/n0
- しかし、その数日後、ヴィップ城に戻ったとき。
予想だにしていなかった二つの事実を、知ることになる。
第9話 終わり
〜to be continued
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