7 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 22:40:26.59 ID:C++iiX020
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
18歳 少尉
使用可能アルファベット:G
現在地:シャナ城

●('A`) ドクオ=オルルッド
18歳 新兵
使用可能アルファベット:C
現在地:ヴィップ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
28歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヴィップ城

●( ,,゚Д゚) ギコ=ロワード
26歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:シャナ城

●( ^Д^) プギャー=アリスト
24歳 大尉
使用可能アルファベット:L
現在地:シャナ城

8 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 22:41:30.03 ID:C++iiX020
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
33歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:ハルヒ城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
34歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:ハルヒ城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
37歳 大尉
使用可能アルファベット:N
現在地:ハルヒ城

9 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 22:42:51.78 ID:C++iiX020
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー・モナー
少将:ギコ

大尉:プギャー
中尉:
少尉:ブーン


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:

大尉:ヒッキー
中尉:
少尉:

10 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 22:44:07.45 ID:C++iiX020
A:
B:
C:ドクオ
D:
E:
F:
G:ブーン
H:
I:
J:
K:
L:プギャー
M:
N:ヒッキー
O:
P:
Q:
R:
S:ジョルジュ
T:ショボン
U:
V:ベル(ラウンジ)
W:
X:
Y:
Z:

12 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 22:46:02.91 ID:C++iiX020
【第8話 : Impatience】


( ・∀・)「ははは、こりゃまたショボイのが来たな」

 シャナ城軍議室。
 最奥で椅子に背を預けながら喋る男。

 モララーの第一声は、予想だにしないものだった。

( ・∀・)「二ヶ月で少尉になったブーンってのは、そいつか。ちっせぇな」

 右手で握ったアルファベットの刃先で、指された。
 二つの刃が重なり、柄を動かすと刃も動く。
 鋏のようなアルファベット、Rだ。
 片手では扱いにくそうだが、モララーが握るとそう思えなかった。

(;^ω^)「ブーン=トロッソですお。よろしくお願いしますお」

( ・∀・)「なんで少尉になれた?」

(;^ω^)「え? あ、それは……」

( ^Д^)「騙りのファットマンを討ち取ったからです。長きに渡って誰も討ち取れなかった敵将ですから」

( ・∀・)「俺に対して敬語なんて使うなよ、プギャー大尉。アンタのほうが年上だし、同期だろ」

( ^Д^)「…………」

 想像と、違いすぎた。

13 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 22:47:48.31 ID:C++iiX020
 天才との呼び声高いモララー。二十三の若さで中将にまで昇格した。
 二年前、オオカミとの戦に敗れてエヴァ城を失った際、オオカミが勢いに乗ってシャナ城も奪おうとした。
 それを食い止めたのが、モララーだという。

 わずか二千の騎兵で、一万を超える敵勢を翻弄し、潰走させた。
 その獅子奮迅の活躍で、ヴィップは何とかシャナ城で踏みとどまることができた。
 地形的に見て、もしシャナ城を失っていた場合、本城まで脅かされることになる。
 モララーの活躍は大きかったという。

 きっと、冷静沈着で、威厳のある武将だと思っていた。
 それが、微塵も感じられない。
 ジョルジュに近い匂いさえ感じてしまっていた。

( ・∀・)「なーんでかなぁ……格別の空気を持ってるわけでもなさそうだし……」

( ,,゚Д゚)「もうGですよ。二ヶ月で」

( ・∀・)「あぁ、普通に見ればそれは中々だな。Gなんて持ったことないから分からんけど」

( ^Д^)「モララー中将は、入軍テストでいきなりHを握ったんだ。試験官が落としたやつを、拾う形でな」

 プギャーが小声で教えてくれた。
 Hといえば、Gの次。モララーが天才と呼ばれる所以が、よく分かった。

( ・∀・)「でもなーんか、期待できねーんだよなー……まぁいいや。俺が決めるこっちゃねぇ」

 モララーが立ち上がった。
 扉に向かって、歩いてくる。体躯は人並みだ。
 しかし、近付けば近付くほど、押し寄せる威圧感。
 空気が震えているのか、自分が震えているのか、分からなかった。
15 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 22:49:30.33 ID:C++iiX020
( ・∀・)「ブーン、お前の初指揮は近いぞ。オオカミには電撃戦を仕掛ける」

( ^Д^)「電撃戦……まさか、もう攻め込むと?」

( ・∀・)「おう。それも、ちまちま一城ずつ攻め落とす気はない。一気にエヴァ城を奪る」

(;^Д^)「エヴァ城を……!?」

( ・∀・)「オオカミが迎撃体勢を整えるまでが勝負だ。体勢不十分のうちに攻め込むべきだろ」

 モララーが地図を広げた。
 エヴァ城、そしてその近隣の城三つを順に指差していく。

( ・∀・)「エヴァ城の属城は三つ。シンジ城、レイ城、アスカ城だ。今それぞれに五千の兵が居る。
     エヴァ城には二万。総勢で三万五千だが、いずれは六万にまで増えるだろうな。
     六万がエヴァ城の周りに布陣すると辛い。勝負を仕掛けるなら、その前だ」

( ^Д^)「となると、年明けには戦ですね」

( ・∀・)「バカ言うなよ。遅すぎるだろ」

(;^Д^)「まさか、今年中ですか?」

( ・∀・)「十日後。電撃戦って言っただろ? ショボン大将にはすぐ来てもらう」

(;^Д^)「十日なんて、そんな……こっちの準備も整いませんよ!」

( ・∀・)「逆に言えば、十日で整えられたら相手の意表を突ける。
     戦では、相手の上を行ったほうが勝つんだ。何とかなるだろ」
17 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 22:51:12.51 ID:C++iiX020
( ,,゚Д゚)「プギャー、無理は承知さ。だが、それくらいしないと、数で劣るヴィップは勝てない。
     今シャナ城と周りの城を合わせると二万の兵が居る。本城には更に二万を要請する。
     合計四万。十日後に攻め込めば、数でも上回る」

( ・∀・)「敵に気付かれないように、ショボン大将には動いてもらう。こっちを二万と思わせるんだ。
     十日後の夜、奇襲をかける。エヴァ城の周りには今、一万が布陣しているが、それを壊滅させる。
     属城からの援軍は適宜撃破。そのあと、エヴァ城を囲む」

( ^Д^)「篭城戦……? そんな余裕があるとは思えませんが……」

( ・∀・)「そこらへんは策があるさ。とにかく、アラストールとベヘモットを奪って、
     オオカミ軍がエヴァ城の周りに布陣している今がチャンスだ」

 モララーがアルファベットRを掲げた。
 頭上で二度三度、振り回す。

( ・∀・)「二万に立ち篭られたら攻め切れねーが、一万まで減らせば何とかなる。
     オオカミ本城から援軍が来る前に、エヴァ城を陥落させるぞ!」

 Rの刃先で、紙上のエヴァ城を貫いた。
 突き刺さる音が澄んで聞こえた。

( ・∀・)「さて、今のうちに配置も決めとこうか」

( ^Д^)「ショボン大将の指示を、仰がなくてもよろしいのですか?」

( ・∀・)「異論があったら変えるだけの話さ」

 筆を手にとって、地図に書き込んでいく。
 武将の名だ。
19 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 22:52:55.35 ID:C++iiX020
( ・∀・)「まずアラストール城はギコ少将に。ベヘモット城はプギャー大尉。
     シャナ城にはビロード少尉に残ってもらう。マルコシアス城はイヨウ少将。
     ハルファス城は、ブーン少尉だ」

(;^ω^)「ハルファス城?」

 エヴァ城に一番近いのはアラストール城で、その次に近いのはベヘモット城。
 しかし、属城であるレイ城やアスカ城に近いのはハルファス城だ。

( ・∀・)「お前の役目は援軍撃滅。レイ城やアスカ城に動きがあったらすぐに潰せ。
     エヴァ城を攻めているときに後ろから攻撃されるとキツイ。絶対に突破させんなよ。
     二ヶ月で少尉に昇格した力が本物なら、示してみろ」

 モララーの目つきは鋭かった。
 この人の言葉には、裏がない。常に本音を言う人だ、と感じた。
 恐らく、皮肉などではなく、純粋に力を見たがっている。

( ・∀・)「そんで、俺とショボン大将でエヴァ城を攻める。これ以上の攻め手はねーな」

( ^Д^)「……そうですね」

 それぞれの将に次々役割を伝えていく。迅速だった。
 頭の回転が早い。発想力も並ではない。

 偉大な二大将に、次ぐ存在だと感じた。

 そのとき突然、大きな音が鳴り響く。
 風が入り込んで、空気が変わった。
21 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 22:54:47.76 ID:C++iiX020
( ・∀・)「おう、ビロード。やっと起きたか」

(;><)「遅れてしまって申し訳ないんです!」

 豪快に扉を開けて、一人の男が登場した。
 肩を大きく上下させて呼吸している。

( ,,゚Д゚)「ブーンは初めて会うだろうな。ビロード=フィラデルフィア少尉だ」

(*><)「よろしくなんです!」

 童顔で、あどけなさの残る武将だった。
 小柄で、とてもではないが、将校には見えない。

(;><)「噂のブーン少尉と握手なんて、緊張するんです!」

(;^ω^)「こ、こちらこそですお」

 か細い手。
 本当に、アルファベットを扱えるのか、と思ってしまった。

( ,,゚Д゚)「今、対オオカミの配置を伝えたとこだ」

( ><)「僕はどこなんですか? わかんないんです」

(;,,゚Д゚)「そりゃ言ってねーからな……お前はココだよ。シャナ城だ」

(;><)「……シャ、シャナ城を僕一人で守るんですか!?」

22 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 22:57:04.73 ID:C++iiX020
( ・∀・)「お前以上の適役はいねーよ、ビロード。それに、役割は守るだけじゃない。
     シャナ城には五千を残す。そのうち三千は、いつでも救援に出せるようにしろ。
     特にハルファス城との連携が大事だ。ブーンから要請があったらすぐ駆けつけろよ」

(;^ω^)「よ、よろしくお願いしますお」

(;><)「こ、こちらこそなんです」

( ・∀・)「よし、とりあえずお終いだ」

 モララーが筆を置いて、足早に軍議室から去った。
 掴みどころのない人だ、と思った。

( ,,゚Д゚)「それにしても……モララー中将は思い切った配置にしたな」

( ^Д^)「今年少尉になったばかりの二人に、重要な役を与えましたね」

(;^ω^)「ちょっと不安ですお」

(;><)「怖いんです」

( ,,゚Д゚)「二人とも、大戦の指揮はこれが初めてだ。真価が問われるぞ」

( ^Д^)「まぁ、ショボン大将の異論がなければですが……恐らく、通すでしょうね」

( ,,゚Д゚)「だろうな。ショボン大将はモララー中将を信頼しているし……。
     何より、最初に見たときは冒険とも思えたこの配置が、今見るとベストだと感じる。
     他の配置が思いつかないくらいだ」

( ^Д^)「それに、わずか十日で攻め込むという決断力……やはり、並ではありませんね」
24 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 22:58:48.45 ID:C++iiX020
 安心していいのか、まだ分からなかった。
 率いる兵たちから、反発を受ける可能性がある。それはずっと懸念していた。
 まだ入軍して二ヶ月の少尉。指示に従いたいと、普通思うだろうか。

( ,,゚Д゚)「よし、調練行くぞ。攻め込む空気を出さないよう、普通の調練を装うんだ」

 プギャーが頷く。つられて、ブーンも頷いた。


――シャナ城・城外――

 外に出て、調練を開始した。
 まだEの訓練をしていた頃、新兵として調練には参加していたが、あまり本格的ではなかった。
 空気に慣れる程度の、優しいもの。
 今、調練を経験して、感じたのがそれだった。

(;´ω`)(シンドイってレベルじゃねーお……)

 全身汗にまみれた体が、息を切らせていた。
 五肢が上手く動かない。

 少尉になった以上、本来なら指示を下す立場だが、まとまって動くことに慣れていないため参加させられた。
 動きは悪くなかった、と自分で思う。元々、身のこなしには自信がある。
 それはギコにも評価してもらえた。

 ただ、その後の調練の初指示は未熟さを露呈してしまった。
 目まぐるしく動く状況に慌ててしまい、的確な指示を下せない。
 初めてだから仕方ない、とプギャーは庇ってくれたが、忸怩たる思いがあった。
 兵の視線も怖く感じてしまう。

25 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:00:28.66 ID:C++iiX020
( ^Д^)「大丈夫だ。ちょっとずつ慣れろ。みんな分かってることだ、気にすんな」

(;^ω^)「はいですお……」

 プギャーはいい人だ、と思う。
 ただ、今はあまり喋りたい気分ではなかった。


――シャナ城・屋上――

( ^ω^)「いい感じの風だお……」

 屋上に昇って一人になっていた。
 見張りの兵はいるが、声が届くほどの距離ではない。
 気にはならなかった。

 調練では、当たり前だが実戦形式も行った。
 相手はプギャー。手加減してくれていたのがはっきり分かった。
 それでも、翻弄されてしまった。

( ´ω`)「……こんなんで、大丈夫なのかお……?」

 早すぎたのだ、と思った。
 ショボンが自分を少尉にしたのは、ラウンジ戦から呼び戻すためだ。
 決して実力に見合ったものではない。

 指揮経験は皆無。なのに、いきなり大役を任された。
 エヴァ城を攻めるとき、間違いなく属城からは敵援軍が出る。
 それを撃破する。

26 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:02:23.54 ID:C++iiX020
 失敗すれば、エヴァ城を攻め切れない可能性が出てくる。
 そうなれば、モララーの作戦は破綻する。

 果たすべき役割が、大きすぎた。

(;´ω`)「やばいお……こんなの、絶対無理だお……」

(;><)「そうなんです……僕には無理に決まってるんです……」

(;´ω`)「いやいや、ブーンのほうが無理だお……」

(;><)「いやいやいや、僕のほうが無理なんです……」

(;´ω`)「どうぞどうぞ……って……」


(;゚ω゚)「おぉっ!? ビロード少尉!?」

(;><)「あれ!? ブーン少尉、こんなところで何してるんです!?」

(;^ω^)「いや、別に……ちょっとぼーっとしてただけですお」

( ><)「そうなんですか……僕もぼーっとしてたんです」

 ビロードが隣に腰掛けた。
 右方からの風が遮られ、正面からのみ風を受ける。
 心地良さに変わりはなかった。

( ^ω^)「今度の戦……ビロード少尉も、初指揮なんですかお?」
61 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:35:30.36 ID:C++iiX020
( ><)「この前、アラストール城を攻めたときは一緒に行ったんです。
     でもあれは小さな戦で……今度の戦みたいな大きいのは、初めてなんです」

( ^ω^)「今年昇格したばかりだって聞きましたお」

( ><)「春先に昇格したんです。ショボン大将が推挙してくれて……。
     でも正直、どこを見込まれたのかよく分かんないんです」

( ^ω^)「ブーンもですお……実績なんてまるでないのに……」

( ><)「だけど、昇格した以上はやるしかないんです。それが国軍兵士の務めなんです」

( ^ω^)「……もちろん、それは分かってますお……だけど、不安はやっぱり拭えないんですお……」

( ><)「僕だって同じなんです……もしシャナ城を奪われたら、ヴィップ自体の存続に関わる……。
     そんなところを一人で守るなんて、怖くて仕方ないんです……。
     だけど、ショボン大将やモララー中将だって最初は初めてだったんです。
     僕たちにだって、それは訪れるんです」

( ^ω^)「…………」

( ><)「ブーン少尉はまだ十八なんです。僕だって二十一なんですけど……まだ若いんです。
     経験だって全然ないし、年上の兵ばかりで萎縮しちゃうし……でも、仕方ないんです。
     そういうのを味わって、僕たちは成長していくんです」

 何故ショボンがビロードを推挙したのか、分かったような気がした。
 幼げで、頼りない印象を最初は受けたが、芯のしっかりした人だ。
 心強い、と思った。
28 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:04:13.04 ID:C++iiX020
(;><)「な、なんか偉そうに言ってしまって申し訳ないんです!」

(;^ω^)「そ、そんなことないですお!」

 この人と話していると、遠慮合戦になる。
 それが、面白くも感じた。

( ^ω^)「……今度の戦、よろしくお願いしますお!」

( ><)「こちらこそなんです! お互い頑張るんです!」

 軟風がどこまでも気持ちよかった。



――十日後・夕方――

――シャナ城――

( ・∀・)「行軍お疲れ様です」

(´・ω・`)「全く……性急すぎるんじゃないか? こっちの事情も考えてくれよ」

( ・∀・)「でも、早いに越したことはないでしょう?」

(´・ω・`)「それはそうだがな……」

 ショボンがシャナ城に入るのを、将校全員で出迎えた。
 ショボンが率いてきたのは一万。あと一万を、イヨウとシラネーヨが率いてくるという。

29 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:06:00.09 ID:C++iiX020
(´・ω・`)「だがモララー、分かっているだろう? 今、ヴィップはラウンジと戦争中だ。
      ジョルジュ大将には『オオカミとの戦端を開くな』と言われた。それなのにな……」

( ・∀・)「だからこそ、オオカミと戦でしょう。ラウンジと戦っている、今こそ。
     弱小ヴィップが戦線を二つ抱える余裕はない、とオオカミは高を括ってるはずです。
     裏をかくなら今が一番。一気にエヴァ城を奪りましょう」

(´・ω・`)「絶好機であることは確かだ。今はオオカミの警戒も薄い。
      しかし、まさかラウンジとの戦で大変なこの時期を選ぶとはな……。
      全く……誰がジョルジュ大将に叱られると思ってるんだ?」

( ・∀・)「ははは、すみません」

(´・ω・`)「まぁ、今更あの人に叱責されたところで何とも思わんがな」

 談笑しながら、城内へと入る。
 兵はそれぞれの城へと向かった。時間はない。

(´・ω・`)「俺が来たことはすぐにオオカミにも知れ渡る。明日になれば、警戒態勢が取られてしまう」

( ・∀・)「だからこそ、今夜ですね」

 階段を昇って軍議室に向かっていた。
 ビロードがショボンの後ろについているが、まるで大人と子供のようだ。
 段差で余計に身長差が生まれている分、尚更そう思えた。

(´・ω・`)「あぁそうだブーン。お前の新しいアルファベットが完成したぞ」

(;^ω^)「も、もうですかお? Gになってから半月くらいしか経ってないですお……」
31 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:07:48.57 ID:C++iiX020
(´・ω・`)「扱えるかどうかは分からんがな。あとで渡すが、次はIだ。Hは飛ばしてみる。
      まぁ、大丈夫だと思うがな……ツンさんも『多分大丈夫』と言っていた。
      あぁそれから、ツンさんが昇格おめでとうと言っていたよ。嬉しそうにな」

( ^ω^)「嬉しそうに?」

(´・ω・`)「まぁ、そこは気にするな」

(´・ω・`)(……本当は『う、嬉しくなんかないんだからね!』なんて言ってたが……まぁ、嬉しいというのが本心だろうしな……)

( ・∀・)「実際のところ、ブーンはどうなんですか? ショボン大将」

(´・ω・`)「……ん? どうなんですか、とは?」

( ・∀・)「俺にはよく分かりませんでした。何でこいつを昇格させたのかが」

 やはり、ストレートな人だ。
 それはある意味で美徳だが、時に人を傷つけることもある。
 特に今は、その意味合いが強いと思えた。

(´・ω・`)「まぁ、色々事情もあったが……俺は正しかったと思っているよ。
      ブーンは間違いなくこれから伸びる。早めに昇格させて、才を伸ばすべきだ。
      若くて有能な人材というのは、何よりの財産になる」

( ・∀・)「その才ってのが、俺にはよく分かんないんですよね……ま、人を見る目がないのかも知れませんけど」

(´・ω・`)「お前もいずれ分かるさ。きっとな」
34 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:10:03.29 ID:C++iiX020
 ショボンが何故そこまで肩入れしてくれるのか、分からなかった。
 しかし、聞くこともできない。嬉しいことではあるからだ。
 不用意に、ショボンの機嫌を損ねたくない。

 しかし時々、本当に自分は凄い才能を持っているのではないか、と自惚れてしまいそうになる。
 それが怖かった。足元を掬われそうだ、と思った。
 不遜にはくれぐれも注意しよう、と常日頃から考えている。

( ・∀・)「それじゃー、軍議といきますか」

 軍議室の扉を開いて、モララーはすぐに説明を始めた。
 ショボンは黙って頷いている。
 わずか数分で、モララーは言いたいことを全て伝えきったようだ。

( ・∀・)「ま、こんな感じですね」

(´・ω・`)「エヴァ城の周りの兵を襲ったあとは、十中八九篭城してくるだろう。
      それを破る策とは、一体なんなんだ?」

( ・∀・)「それは後で言いますよ。ここに間者が紛れ込んでいないとは、言い切れませんからね」

(´・ω・`)「まぁ、当然のことだな……」

 今軍議室に居るのは将校クラスだけではなく、部将も同席している。
 全部で二十人を超えており、確実に信頼できる者ばかりではない、と考えているようだった。

(´・ω・`)「……少し、少尉二人の荷が重いような気もするがな……」
36 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:12:05.01 ID:C++iiX020
( ・∀・)「大丈夫でしょう。ビロードの戦局眼があればシャナ城はほぼ安泰です。
     ブーン少尉は、力を示してみろってことで」

(´・ω・`)「まぁ、信頼するしかないな……」

 確定した。
 今更覆るとは思っていなかったが、援軍撃破が決定した。

 十日間、調練はやりぬいた。最初に比べれば、指揮もましになってきた。
 あとはもう、やるしかない。

 軍議散会。ショボンのあとについて、荷物を取りに行った。
 新しいアルファベットを渡してくれるという。

(´・ω・`)「Iはデカイんだ。見たことあると思うが」

( ^ω^)「帰らずの森に行ったとき、衛兵さんが持ってましたお」

(´・ω・`)「そうだったな。えーっと……コレだ」

 壁に立てかけられていた長い包みを手渡してくれた。
 礼を言って、すぐに包みを解く。長槍のIが姿を現した。

 ゆっくりと、柄に手をかけてみる。
 熱はない。
 しっかりと握り締めても、大丈夫だった。

(´・ω・`)「よし、Iもオッケーだ。お前が率いるのはI隊になりそうだからな。部下と一緒なら、問題ない」
38 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:14:47.89 ID:C++iiX020
(;^ω^)「指揮官のアルファベットのほうが弱いと、ちょっとカッコつかないなって思ってましたお」

(´・ω・`)「はは、確かにな」

 自室に戻って振り回してみた。
 これほど長い得物は初めてだが、思ったより扱いやすい。
 世界一の名工であるツンが作ってくれたおかげだろうか。

 少しだけ、今日の戦に自信が出てきた。


――夜――

――ハルファス城――

 最初に比べれば扱いも慣れた馬に跨り、ハルファス城に移動した。
 ここに居るのはI隊三千とG隊一千。敵援軍の撃破に出動するのは、I隊三千だ。
 敵がどの程度出てくるかは、そのときになってみないと分からない。

(‘_L’)「……よろしくお願いします」

( ^ω^)「よろしくお願いしますだお」

 フィレンクト=ミッドガルドという、この城の守りを任されていた部将に挨拶した。
 今回は戦に帯同するのだという。
 年齢、軍歴ともに七つ上だった。

(‘_L’)「……何か不都合があれば、遠慮なく仰ってください」

( ^ω^)「何もありませんお。大丈夫ですお」
40 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:16:40.95 ID:C++iiX020
(‘_L’)「そうですか……それなら良いんですが……」

 人柄の良さそうな人で、安心した。
 もしキャリアに物を言わせるような人だったら、と不安だったのだ。

 すぐに伝令を飛ばして、準備が整ったことを伝えた。
 オオカミの警戒はいまだ薄い。
 少しでも早く、攻め込むことが鍵になる。

( ^ω^)「ここからレイ城まではどれくらいですかお?」

(‘_L’)「馬で急ぎ駆ければ、一時間ほどでしょうか……」

( ^ω^)「ということは……敵がエヴァ城に向かう途中で当たるとすれば、三十分か四十分くらいで激突ですかお?」

(‘_L’)「そうですね……そんなところでしょう……」

(‘_L’)「…………」

 後ろから攻撃すれば、勢いを得て被害を抑えられる。
 敵軍の壊滅は無理だろうが、隊を乱せばエヴァ城へ向かうこともできない。
 とにかく、エヴァ城に着かせなければいいのだ。

 城に伝令が到着した。シャナ城からだ。
 ショボン大将、モララー中将、シラネーヨ大尉、出撃の報せ。
 軽装で駆けているという。

 情報漏洩を防ぐため、部将以下には今日まで作戦を知らせていなかった。
 兵卒に至っては、出撃の一時間前にようやく知らされたという。
 だが、おかげでオオカミの警戒は強まることもなかった。

41 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:18:40.49 ID:C++iiX020
( ^ω^)(ショボン大将たちがエヴァ城に到達したらすぐに援軍が出てくるはずだお……)

 それまで待ち、出てきたら即動かなければならない。
 常に緊張を抱えなければならない。

 不安や恐怖は当然ある。しかし、やるしかない。
 兵の命を預かる身なのだ。

 自信も、昨日までに比べれば幾分か湧いている。
 いざというときはビロードに助けを求めるよう言われているが、きっと大丈夫だ。
 上手くやれば、一人で援軍を撃破できる。
 何より、それが最上なのだ。


 二時間後、エヴァ城の外に布陣したオオカミ軍と交戦の報せが届いた。
 押しているというが、当然エヴァ城内からも敵兵は出てくる。
 大軍と大軍がぶつかり合えば、時間がかかる。

 属城へはもうすぐ伝達が行くはずだ。早馬を使えばすぐに知れ渡る。
 体勢を整えた。

( ^ω^)「城外に出るお」

 城門をくぐって、城外で隊を組んだ。
 そのまま駆けて、エヴァ城と属城を繋ぐラインで敵を待つ。
 そして驚くほど早く、響き渡る馬蹄。

(;^ω^)「もう来たのかお!?」

(‘_L’)「あれは……恐らくレイ城からの援軍ですね……」
43 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:20:42.23 ID:C++iiX020
( ^ω^)「行くお!」

 馬の足に草鞋を履かせ、静かに駆けた。
 後ろから襲いたいが、敵はかなり早い。
 横からの攻撃に切り替えた。

( `ω´)「うおおおおおお!!」

 突然の敵軍に驚いたオオカミ軍は、初撃で算を乱した。
 オオカミ軍はH隊二千。こちらのほうが圧倒的に有利だった。
 散り散りになったオオカミ軍が引き返してく。

 あまりまともにアルファベットを振るわないうちに、敵が潰走してしまった。
 呆気なさで、思わず胸をなでおろした。

(;‘_L’)「何してるんですか!?」

(;^ω^)「……え?」

(;‘_L’)「アスカ城からも敵軍が出て来ているんですよ!」

 はっとして、慌てて隊を整えた。
 すぐにそちらへ向かう。エヴァ城が、かなり近くなってきている。

 敵軍を捉えた。G隊三千。
 正面から迎え撃つ。アルファベットIで、敵兵の喉を突いた。
 Gで防がれるも、力任せにそれを弾いて馬から叩き落す。
 必死だった。

(;‘_L’)「シンジ城から更に敵援軍!」
45 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:22:38.92 ID:C++iiX020
 まだG隊三千と交戦中だった。
 強引に敵軍を突き破り、すぐにシンジ城からの援軍に当たりに行く。
 今度はE隊だが、五千だ。まだH隊二千のほうがましだった。

 E隊の敵軍を次々に討ち取るが、数が多すぎる。
 そして、最初のH隊が再びエヴァ城に向かっているとの情報が飛び込んだ。

(;‘_L’)「シャナ城に援軍要請を! このままでは突破されます!」

(;^ω^)「ちょっと待つお! 今更シャナ城から出たって遅いお!」

(#;‘_L’)「このままよりはよっぽどマシです!! 早く!!」

 そのとき、目の届く距離を、H隊二千が駆けていった。
 先ほどのG隊三千も、すぐに隊を組み直している。

(#;‘_L’)「何やってんだアンタは……!!」

 E隊を多く討ち取り、潰走させてから、H隊とG隊を追う。
 しかし、遠すぎた。

(;^ω^)「う……う……」

 全力で駆けても、届かない。
 それより先に、エヴァ城に到達されてしまう。

 力のない手から、アルファベットが滑り落ちた。

46 :第8話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/08(月) 23:24:32.82 ID:C++iiX020
(#;‘_L’)「……敵援軍、ヴィップ軍の防衛線を突破」

 フィレンクトが、静かに言い放った。

















 第8話 終わり

     〜to be continued

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