- 4 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金)
15:10:44.04 ID:kWWtgkGx0
- 〜東塔の兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
31歳 少将
使用可能アルファベット:V
現在地:ヴィップ城
●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
41歳 大将
使用可能アルファベット:Y
現在地:ヴィップ城
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
36歳 中将
使用可能アルファベット:X
現在地:ヴィップ城
●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
39歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:ヴィップ城
●( ^Д^) プギャー=アリスト
37歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:ヴィップ城
- 6 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金)
15:11:28.65 ID:kWWtgkGx0
- ●( ><) ビロード=フィラデルフィア
34歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
30歳 大尉
使用可能アルファベット:R
現在地:ヴィップ城
●( ФωФ) ロマネスク=リティット
24歳 中尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ヴィップ城
●(´・_ゝ・`) デミタス=コーフィー
29歳 少尉
使用可能アルファベット:O
現在地:ヴィップ城
●\(^o^)/ オワタ=ライフ
27歳 少尉
使用可能アルファベット:M
現在地:ヴィップ城
- 9 :階級表
◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金)
15:12:00.40 ID:kWWtgkGx0
- 〜東塔〜
大将:ショボン
中将:モララー/ギコ
少将:ブーン/プギャー
大尉:ビロード/ベルベット
中尉:ロマネスク
少尉:デミタス/オワタ
〜西塔〜
大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー
大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:
少尉:
(佐官級は存在しません)
- 12 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE
:2007/08/31(金) 15:12:29.10 ID:kWWtgkGx0
- A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:ロマネスク
M:オワタ
N:
O:ヒッキー/デミタス
P:アニジャ/オトジャ
Q:
R:ギコ/プギャー/ベルベット
S:ニダー
T:アルタイム
U:
V:ブーン/ジョルジュ
W:
X:モララー
Y:ショボン
Z:
- 13 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE
:2007/08/31(金) 15:13:03.52 ID:kWWtgkGx0
- 一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml
(現実で現在使われているものとは異なります)
---------------------------------------------------
・現在対立はありません
- 17 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:13:39.84 ID:kWWtgkGx0
- 【第70話 : Long】
――ヴィップ城――
何も考えらなかった。
ただ、必死で駆けた。
何故、燃えているのだ。
誰が、燃やしたのだ。
何も分からない。
ただただ、駆けた。無我夢中で駆けた。
階段を下り、城門を潜った。
戦の準備で外に多くの輜重が並べられている。
押しのけて、進んだ。
外は慌しくなっていた。
森の状態に気付いたようだ。
(;`ω´)「すぐに水を持ってくるんだお!
消火するんだお!」
周りの兵に怒号を飛ばして、森に急行した。
両腕を広げ、加速を続ける。
⊂二二二(;`ω´)二⊃「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!」
一刻も早く、森へ。
ツンを、助けに行かなければ。
- 23 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:15:21.79 ID:kWWtgkGx0
- ここからでも森の火がはっきり確認できた。
勢いはさらに増してゆく。
ツン、無事でいてくれ。
必ず助け出してみせるから。
少しだけ待っていてくれ。
心の中で呟きながら駆けた。
それは祈りにも近かった。
息絶え絶えになりながらもようやく、森についた。
走ってきたこと、そして炎の熱気。
その二つが重なって、汗が止まらない。
だが、体にはむしろ悪寒が走っていた。
(;`ω´)「ツンさん!! ツンさん!!」
火の勢いが強い。
森を取り囲む金網の付近にまで達している。
構うか。
まだ中にツンがいるのだ。
(#-_-)「待て! ブーン少将!!」
金網をVで斬り裂いた。
その自分を、後ろから抱えるヒッキー。
- 29 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:17:06.45 ID:kWWtgkGx0
- (;`ω´)「離してくださいお!」
(#-_-)「ここで火中に飛び込んだら死ぬぞ!!」
(;`ω´)「死にませんお! 必ずツンさんを助け出しますお!!」
(#-_-)「バカを言うな!!」
振り解いて森に入ろうとした。
しかし、ヒッキーが渾身の力で食い止めてくる。
振り解けない。
(;-_-)「……耐えろ……耐えてくれ、ブーン……」
羽交い絞めにするヒッキーの力は、弱まらない。
逆に自分の体の力が抜けていく。
( ;ω;)「やだお……やだお……」
轟音を立てて燃え盛る森。
崩れ落ちる木々。
ツンが、いる。
あの中に、ツンが。
いるのに。
助けに、行きたいのに。
――――行ってはならないと、周りが、そして心が告げる。
- 37 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:19:13.44 ID:kWWtgkGx0
- 膝が崩れた。
涙で何も見えなくなる視界。
こんな、こんな――――
愛することも告げられないままなんて――――
( ;ω;)「うああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
森は、朝までずっと燃え続けていた。
何もかも飲み込むようにして。
――翌朝――
――ヴィップ城・第一軍議室――
森は、一晩中燃え続けた。
必死の消火活動が行われ、それでも一晩中。
何もかも焼け焦げた森。
多数の動物の死体が発見された。
そして、小屋。
寝床で、焼死体が発見されたという。
- 45 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:21:15.11 ID:kWWtgkGx0
- ( ω )「…………」
何も考えたくなかった。
信じたくなかった。
全てを拒否したかった。
軍議室内は、静まり返っていた。
ジョルジュ以外の将校が集まっているが、誰も言葉を発さない。
ただただ、絶句している。
まさか、帰らずの森とは。
ツン=デレートとは。
そういった心境だろう。
( ・∀・)「……報告があります」
モララーの沈んだ声が、小さく響いた。
手にメモ書きらしきものを持ちながら、立ち上がっている。
( ・∀・)「昨晩、城門の前で輜重に物資を詰め込んでいた兵からの話です。
何者かが城内から輜重を運び出してきて、そのまま帰らずの森に向かったとのことです」
(´・ω・`)「……ほう……」
- 52 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:23:14.78 ID:kWWtgkGx0
- ( ・∀・)「三人が三台の輜重を率い、帰らずの森に向かった、と。
何のために帰らずの森へ行くのか、と問いかけたところ、
『ジョルジュ大将の命により、贈り物を届けるため』と答えたそうです」
(;^ω^)「ッ!?」
城内から、運び出された輜重。
帰らずの森へ向かった。
それが、ジョルジュの命令?
いや、そんなはずはない。
( ・∀・)「当然のことですが、虚偽でしょう。
本当にジョルジュ大将の命令なら、そんなことを言うはずがありませんから」
(´・ω・`)「だろうな」
あくまで、欺くためにジョルジュの名を使っただけだろう。
そうに決まっている。
( ・∀・)「森を警護させていた門兵は、全員首を落とされていました」
(´・ω・`)「それが今回、一番不思議なところだ。
門兵は腕のいいやつを多く置いていた。Jの壁突破者すらいたんだ。
あれを全員となると、相当アルファベットに優れた者でなければ無理だ」
アルファベットに優れた者。
それは、Sの壁突破者だろうか。
- 59 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:25:34.12 ID:kWWtgkGx0
- 門の前をいつも固めていたのは、Lを操る兵だった。
帰らずの森は国にとって重要だった。だから壁の突破者を置いていたのだ。
不審者が近づかないよう、監視体制も取られていた。
それを掻い潜った、となると。
アルファベットに優れた、少数人数による犯行だろう、と思った。
(,,゚Д゚)「……やはり、ラウンジの仕業ですか?」
ギコの声も、低いトーンだった。
(´・ω・`)「ツンさんを狙って利があるのはラウンジだけだ……。
十中八九、間違いないだろう……」
ショボンの拳が、握り締められていた。
強く強く、強く強く。
それを、机に叩きつけた。
長大なテーブルが大きく揺れる。
ショボンの表情は、怒りに満ちていた。
(´・ω・`)「みんな、この悲しみを忘れないでくれ」
ショボンが静かに立ち上がった。
その拳に、力を込めたまま。
- 66 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:27:49.81 ID:kWWtgkGx0
- (´・ω・`)「ラウンジと戦おう。ラウンジを、討ち滅ぼそう。
こんな非道を許してはならない。決して許してはならないんだ。
俺はラウンジとの条約を破棄する。ラウンジの準備が整わないうちに攻め込む。
先に手を出してきたのはあっちだ。何も文句は言わせない」
力強い言葉。
悲しみと憎しみが込められた声だ、と思った。
(´・ω・`)「今日から準備を急ピッチで進める。一日でも早く整える。
終わったらすぐに進発。そしてラウンジ領へ攻撃だ。
休んでいる暇はないぞ。みんな、死ぬ気で動いてくれ」
皆が頷いた。
ショボンの言葉に、深く胸を打たれて。
突き動かされるようにして。
それから、細かい配置や行軍日程などが話し合われた。
本来なら戦の直前に行われるような話まで出た。
明日にでも戦ができる。気概だけを見れば、そう思えた。
( ω )「ショボン大将」
軍議が終わり、皆が退出したあと、二人だけが残った。
自分があえて、部屋から出るのを遅らせたのだ。
( ω )「……必ずラウンジを討ちましょうお。絶対に、絶対に」
込められうる限りの憎しみを込めた。
悲憤を込めた。
- 72 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:29:51.37 ID:kWWtgkGx0
- ( ω )「そのためならブーンは、身を粉にして戦いますお。
力の限り戦って、ラウンジを滅ぼしますお」
(´・ω・`)「……あぁ、必ずだ」
ショボンが肩に手を回してくれた。
悲しみを、分かち合うようにして。
ツンの仇を討つ。
必ず、必ず。
絶対にラウンジを滅ぼしてやる。
例え手を失っても、足を失っても。
腕一本になっても。
それが、言葉を伝えられなくなった自分にできる、精一杯だからだ。
( ω )「……必ず仇を討ちますお」
改めて声に出してから、戦の準備へ向かった。
―― 一ヶ月後――
――オオカミ城――
二万の兵ではあまりに少なすぎる。
それほどの大城だった。
- 84 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:32:04.54 ID:kWWtgkGx0
- 長くオオカミが本拠として使っていた城、オオカミ城。
ヴィップ城以上に大きく、また細部に趣向が凝らされている。
全土でも屈指の名城だろう。
かつてはウンエイ国が根城としたウンエイ城だったという。
そのウンエイ国を滅ぼしたオオカミが本城とし、城を改名したのだ。
今や誰もがオオカミ城と呼ぶ城になっていた。
この城を再び改名する案は出ていた。
しかし、数十年にわたってオオカミ城と呼称されてきたため、困惑を招くのではないかという反対があるのだ。
結局まだ議論はまとまっておらず、オオカミ城と呼ばれつづけている。
( ^ω^)(……このままずっとオオカミ城って呼ばれそうな気がするお……)
城内を歩き回っていた。
ヴィップ城以上の広さを有するため、全てを把握するのにも一苦労だ。
多くの文官が入って仕事をこなしているが、まだまだ人手は足りていない。
オオカミは、降伏という形を取った。
そのとき、城内にいた兵は半数ずつラウンジとヴィップに組み込まれた。
ただし、文官は丸ごとオオカミ城に残されている。
それでもまだまだ足りていないのだ。
オオカミの文官の少なさに、最初は腰を抜かすほど驚いたものだった。
いったいミルナはどうやって戦をやっていたのだ、と皆が口を揃えていた。
( ^ω^)(……この窓、ヒビが入ってるお……)
この城は、ヴィップとラウンジが同時に攻めた。
そして同時に城内に入った。
- 90 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:34:08.67 ID:kWWtgkGx0
- 本来なら所有権でもめるところだが、ラウンジはすんなり引き下がってくれた。
前回の戦、奪った城数はラウンジが四つ、ヴィップが三つだ。
そのバランスを取るためだろう。
あるいは、あまりにラウンジ城から離れすぎているため、保持が難しいと判断したか。
ヴィップに城を整えさせ、それから戦で奪おう、と考えたか。
ラウンジならそれくらいを企んでいても不思議はない。
( ^ω^)「オワタ、ブーンはちょっと町へ行くお。城を頼むお」
\(^o^)/「分かりました」
今回の戦は、オワタと一緒だった。
少尉となってまだ日が浅いため、単独では城を任されていない。
巨大なオオカミ城なら二人でちょうどいい、という事情もある。
これからの戦で攻めるウタワレ城は、かなり小さな城だ。
城内にいる兵数も少ないという。
攻めるのは自分ひとりで充分だろう、と思っていた。
オワタに城を任せた後、城外に出て馬を駆った。
城下町へと急ぐ。
懐を確認した。
手紙は、ちゃんと持ってきている。
ドクオから妹へ宛てられた手紙だ。
孤児院の位置は事前に確認してある。
顔を隠して、馬を走らせた。
さほど遠くはない距離だった。
- 97 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:36:26.82 ID:kWWtgkGx0
- ( ^ω^)(ここかお……)
馬を降りて、町の外れにある孤児院に到着した。
壁は薄汚れていて、ヒビの入った窓もある。
古い建物だった。
周りに人がいないことを確認した。
自分は、ヴィップ軍の将校だ。城下町はヴィップの領土になったとは言え、つい最近までオオカミ領だった。
愛国心に満ちた人にとっては、自分は仇なのだ。
顔を知っている者が中には居るかも知れない。
万一のことを考え、一般人には見つからないほうがいい、と思ったのだ。
だから顔も隠してきた。
( ^ω^)「失礼しますおー……」
孤児院の中に踏み入った。
入ってすぐのところには何もなく、扉が二つ見えるだけだ。
玄関になっているようだった。
( ^ω^)「あのー……誰か……」
いませんか、と言おうとした。
そのとき、奥の扉がゆっくり開いた。
川 ' - ')「どちらさまですか?」
小さな女の子だった。
まだ五つか六つくらいだろう。
- 104 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:38:32.88 ID:kWWtgkGx0
- ( ^ω^)「リリィ=オルルッドって人を探してるんですお。いますかお?」
川 ' - ')「何のごようでしょうか?」
小さいながら、はっきりとした口調だった。
大人びていた。
( ^ω^)「お渡ししたいものがあるんですお。いま居ないのなら、後で渡してもらいたいんですお」
川 ' - ')「……少し、待っててください」
少女は再び扉の奥に消えた。
どうやらリリィは居るようだ。
壁に凭れ掛かって身を休めた。
やはり薄汚れている。脆さも感じた。
少しの衝撃で崩れてしまいそうなほどだった。
呆然としていたら、不意に扉が開いた。
ただし、先ほど少女が出てきた扉ではない。
自分に近いほうの扉だ。
(θοθ)「……誰あんた」
先ほどの少女より、幾分か年上に見えた。
十二歳くらいだろうか。男の子だった。
( ^ω^)「初めましてだお。リリィさんのお友達だお」
(θοθ)「……もしかしてブーン=トロッソじゃね?」
- 113 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:40:59.43 ID:kWWtgkGx0
- (;^ω^)「お!? なんで分かったんだお!?」
(θοθ)「語尾に"お"をつける間抜け顔で有名じゃん」
(;^ω^)「…………」
(θοθ)「でもスゲー! おいみんな来いよ!
国軍将校がいるぞ!」
(;^ω^)「ちょちょちょ、ちょっ」
あっという間に囲まれた。
これが戦なら絶体絶命、というほどに。
(;^ω^)「え、将校章くれ? ダメに決まってるお!」
(;^ω^)「アルファベット? 見るだけならいいお」
(;^ω^)「ショボン大将? ジョルジュ大将?
二人とも凄い人だお」
(;^ω^)「モララーさんのサイン?
そんなの頼んだら軽蔑されちゃうお」
(;^ω^)「ちょ、アルファベットに触っちゃダメだお!
めちゃくちゃ熱いお!」
(;^ω^)「あー……だから言ったのに……」
(;^ω^)「詳しい理由は言えないけど、普通の人が触るとめちゃくちゃ熱いんだお。君たちにはまだ早いお」
( ^ω^)「ブーンかお? もちろん触れるに決まってるお。ほらほら」
(*^ω^)「おっおっおっ、アルファベット握って拍手されたのは初めてだお」
- 122 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:43:22.06 ID:kWWtgkGx0
- (;^ω^)(……こんなのバレたらめちゃくちゃ叱られるお……ショボン大将には黙っておくしかないお……)
十人ほどの子供たちに囲まれ、もみくちゃにされていた。
最初は訝しげな視線で見られたが、それがすぐ尊敬の眼差しに変わっていった。
なんとなく、嬉しくなった。
从*‘ー‘)「こらみんな、困らせちゃダメだよ」
奥の扉から、一人の女性が子供たちを窘めた。
自分より少し身長が低いくらいの、可愛らしい女性だった。
皆が素直に引き下がって、また扉の向こうへと戻っていった。
建物の入り口に、自分と女性の二人だけが残った。
从*‘ー‘)「お久しぶりですね」
( ^ω^)「覚えててくれたかお?」
从*‘ー‘)「忘れるわけありません」
そう言って、リリィは微笑んだ。
昔より、大人になった。そんな当たり前のことを実感する笑顔だった。
来客用の部屋に案内され、リリィと話をした。
積もる話はたくさんあった。
从*‘ー‘)「ブーンさん、よく分かりましたね。私がリリィだって」
( ^ω^)「そりゃ覚えてるお。小さい頃よく一緒に遊んだお」
- 132 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:45:33.25 ID:kWWtgkGx0
- 从*‘ー‘)「少しは成長しているつもりだったんです。だから悔しかったりもします」
( ^ω^)「驚くくらい大人っぽくなったお。でも昔の可愛さはそのままだったってことだお」
从*‘ー‘)「ブーンさんは、ずいぶんと変わられましたね」
リリィがお茶を出してくれた。
ハーブの香りが漂う紅茶だった。
从*‘ー‘)「まさか国軍の将官になってるなんて……最初知ったときは、びっくりしました」
( ^ω^)「将官にまでなれるとは思ってなかったお……自分でもびっくりだお」
从*‘ー‘)「ずっとヴィップのために戦ってたんですね。
まさかこの町がヴィップの領土になる日が来るなんて、夢にも思いませんでした」
( ^ω^)「いっぱいいっぱい、頑張ったお。
……ドクオと一緒に、頑張ってきたんだお」
少しだけ、リリィは表情を暗くした。
無理な笑いが辛く見えた。
从*‘ -‘)「……兄は……」
( ^ω^)「みんなに信頼された将校だったお……活躍だって凄かったお」
从*‘ -‘)「私も、少しだけ存じています。マリミテ城を守ったときに大きな戦功を得たと」
( ^ω^)「あんときは物凄かったお!
ミルナ率いる五万の兵相手に完勝したんだお!
あれでみんなからの信頼が厚くなって、オオカミからも恐れられる将になったんだお!」
- 139 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:47:33.25 ID:kWWtgkGx0
- 思わず声が大きくなった。
リリィは、少しだけ表情を明るくした。
その後も、ドクオの活躍についてずっと語った。
シャッフル城戦でシア城を奪った、リレント相手に守りきった。
兵糧を燃やす役目も果たした。
途中、取り返しのつかないような失敗を犯したが、それをリカバリーする働きを見せた。
アルファベットだって最後はRまで到達した。
ドクオがずっとリリィのことを想っていた、とも話した。
そのためにドクオは戦っていたのだ、と。
オオカミ城を落とすためにずっと頑張っていた。
ドクオはもう居ないけれど、念願は果たせた。
ドクオの想いがあったからこそオオカミに勝てたのだ、と。
从*‘ー‘)「ありがとうございます、ブーンさん」
リリィはまた微笑んでいた。
暗さは消えていた。
从*‘ー‘)「ブーンさんのような友人を持てた兄は、幸せ者ですね」
(;^ω^)「おっおっおっ、そんな大したもんじゃないお」
从*‘ー‘)「いえ。本当にありがとうございます」
- 151 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:49:39.67 ID:kWWtgkGx0
- 他には、リリィの話をいくつか聞いた。
今はこの孤児院で、院長をやっているのだという。
前の院長が亡くなったため、それを継いだらしいのだ。
本人が望むなら故郷であるアロプス町まで、と思っていたが、その必要はなさそうだった。
先ほどの様子を見る限り、孤児たちにも慕われているようだ。
リリィがここを離れるわけにはいかないだろう。また、それを望んでいるはずもない。
その日は夕食を振舞ってもらった。
孤児院にあまりお金はないはずだが、少しでも品目や量を増やすために工夫しているのだろう。
普通の家の食卓を比べても、遜色なかった。
大きな机に並べられたいくつもの料理を、孤児たちと共に平らげる。
肉と白菜と煮込んだものや、魚の塩焼き、芋のスープやパンに卵を挟み込んだものなど。
どれもリリィの愛情が詰まっているように感じた。
( ^ω^)「それはブーンのだお! 渡さないお!」
(θοθ)「将校ならいいもん食ってんだろ!?
意地張るなよ!!」
( ^ω^)「この料理は国軍の食堂にも負けないくらい美味しいお!
だから渡さないお!」
从*‘ー‘)「プレミオ、ブーンさんはお客様なんだから」
(θοθ)「知らねーよ! 俺だって将来ヴィップの国軍兵士になるんだから、たくさん食べなきゃなんだよ!」
( ^ω^)「どうしてもというなら、ブーンはVを抜かせてもらうお」
(;θοθ)「お、大人げねー!! こんな子供相手にアルファベットかよ!!」
- 161 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:51:53.71 ID:kWWtgkGx0
- ( ^ω^)「冗談だお。将来ヴィップを助けてもらうためなら仕方ないお、たくさん食べるといいお」
(*θοθ)「サンキュー!」
プレミオと呼ばれた子供が料理にがっついた。
この中で一番体が大きく、またよく食べるようだった。
从*‘ー‘)「もー……」
呆れ声を出すリリィ。
しかし、その顔にはどこか充実感が見えた。
子供たちを眺める眼も穏やかだった。
( ^ω^)(……平和だお……)
自分も自然と笑みがこぼれた。
和やかさを感じつつ料理に手を伸ばそうとしたら、自分の前の料理は既に全てなくなっていた。
――その日の晩――
みんなで食卓を囲んだ部屋の、更に奥。
薄暗い廊下の突き当たりに、梯子があった。
月明かりに照らされ、梯子はその形を明確にしていた。
从*‘ー‘)「お城からの風景とは比べものにならないと思いますけど……」
そう笑いながら、リリィと共に梯子を昇り、屋上へ出た。
柔らかい風が体を撫でていく。
- 174 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:54:39.66 ID:kWWtgkGx0
- 春の訪れを感じるような風だった。
( ^ω^)「……いい景色だお」
城からでは見えないものが、ここからはよく見える。
そして感じることができる。
家の形や人の往来。そして何より、町の空気や音だ。
暗くなったことでさすがに人は少ないが、静かな町というのもいいものだった。
从*‘ー‘)「ごめんなさい、プレミオがたくさん食べてしまって……」
( ^ω^)「気にしないでいいお。小さい子がたくさん食べたほうがいいんだお」
从*‘ー‘)「昔のままですね、ブーンさん。兄にからかわれたりしてた私を、よく守ってくれましたよね。
あのときのまま……優しいまま、ですね」
(;^ω^)「忘れちゃったお、そんな昔の話」
ドクオは、妹が可愛いあまりすぐにいじめてしまう癖があった。
リリィはそれでよく泣いていた。
それを自分はかばうことが多かった。
結局はドクオが謝るのだが、慰めるのはいつも自分の役目だったのだ。
あの頃のことは、今でもよく覚えている。
懐かしかった。
リリィのことも、そしてドクオのことも。
从*‘ -‘)「……ずっと気になってたんですけど……」
- 182 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:56:54.67 ID:kWWtgkGx0
- ( ^ω^)「お?」
从*‘ -‘)「ブーンさん……どうしてそんなに悲しそうなんですか?」
不意を突かれた感覚だった。
驚いた。
平静を、装っていた。
オオカミ城でも、孤児院でも。
久方ぶりに会ったリリィに、まさか気付かれるとは。
全く思わなかった。
(;^ω^)「……そんなに悲しそうだったかお?」
从*‘ -‘)「はい……悲しそうで、寂しそうで……」
(;^ω^)「まさか悟られるとは思わなかったお……びっくりだお……」
しかし何故か、心が安らいだ気がした。
ずっと張り詰めていた、堪えていた自分に、気付いてくれた。
それがどこか、嬉しくすらあった。
从*‘ -‘)「あの……私でよければ、お話お聞きしますけど……」
優しさが、嬉しかった。
そしてそれが、自分の弱かった部分を崩していった。
今まで何とか保っていた部分を。
- 193 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 15:59:06.05 ID:kWWtgkGx0
- リリィに、全て話した。
何年も前から好きだった人のことを。
そしてその人が、死んでしまったことを。
思い出も話した。
初めて会ったとき、身を守るためとは言え思わず抱きしめてしまったこと。
仕事で荒れた手を、いつも握りしめていたこと。
戦に関することや、他愛ない世間話。
リリィのことだってツンと話した。
色んなことを、たくさん話した。
恥ずかしがり屋で、自分の気持ちをストレートに表現できなくて。
いつも可愛くて、優しくて、でもやっぱりツンツンしてたりして。
そんなツンが、大好きで――――
涙が、溢れ出た。
( ω )「……ごめんだお……」
袖で涙を拭った。
拭えば拭うほど溢れ出てきて、それでも何度も拭った。
そんな自分を、リリィは慰めてくれた。
優しく、寄り添ってくれた。
从*‘ -‘)「辛かったんですね……」
- 201 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:01:11.92 ID:kWWtgkGx0
- 優しさが染み入る。
傷だらけの自分の心に。
出すまい、出すまいと思っていた。
この悲しみを、表に出すまいと。
ツンがいない。
あんなに愛したツンが、もう、いない。
最後まで想いを口にできなかった。
ツンに、愛を伝えられなかった。
あの日、言ってしまっていれば。
ツンが好きだ、と。結婚してほしい、と。
言ってしまっていれば、状況は違っていたかも知れないのに。
自分が臆病だったから。
踏み出す勇気を持てなかったから。
だからツンはいなくなってしまった。
そういった自責がずっと、心の中にあったのだ。
しかし、誰かに否定してもらいたいがためにそれを言う。
そんな気には、とてもなれなかった。
甘えのような気がして、憚られてしまったのだ。
だからずっと我慢していた。
苦しんでいた。
- 212 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:03:41.77 ID:kWWtgkGx0
- それを、癒してくれた。
話を聞いてくれた。
安らげた。
( ^ω^)「……ありがとうだお、リリィ」
そう言うと、リリィはまた微笑んだ。
何の屈託もない笑みだった。
( ^ω^)「ブーンは戦わなきゃいけないんだお。
ツンさんのためでもあるけど、やっぱりヴィップのために。
でもずっと塞ぎこんでて……心の中の悲しみを出せなくて……」
从*‘ -‘)「そんなことも我慢しなきゃいけないなんて……将校は大変なんですね……」
( ^ω^)「でも今、我慢を解放できたお。リリィのおかげだお。
本当にありがとうだお。ブーンはきっと、いつも通り戦えるお」
从*‘ー‘)「……はい」
リリィに深く頭を下げた。
またリリィは笑った。
静かな町を照らし出す月明かり。
悠々とした空気の中を風が通り抜ける。
近くの家からは家族の笑い声。
窓から立ち上る炊煙。
暖かな光が漏れている。
- 218 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:05:55.43 ID:kWWtgkGx0
- こんな風に、穏やかに物を見れるようになった。
それもまた、嬉しかった。
遅くならないうちに、孤児院を出た。
子供たちの居る部屋は寝静まっていた。
从*‘ー‘)「またいつでも来てくださいね。きっと子供たちも喜びます」
( ^ω^)「必ず来るお。プレミオには体を鍛えとけって言っといってほしいお」
从*‘ー‘)「ふふ。きっと凄く頑張りますよ、あの子。ブーンさんのこと、尊敬してるみたいだから」
( ^ω^)「国軍に入ってきたらブーンがビシバシ指導してやるお」
从*‘ー‘)「楽しみですね。きっと強くなりますよ、プレミオは」
馬に跨った。
帽子を深くかぶって顔を隠し、手綱を握る。
リリィはじっとこちらを見上げていた。
(;^ω^)「……あっ!!」
从*‘ー‘)「?」
慌てて馬から下りた。
忘れていた。渡しそびれるところだった。
(;^ω^)「これ、ドクオからの手紙だお」
从*‘ -‘)「ッ!!」
- 229 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:08:10.20 ID:kWWtgkGx0
- (;^ω^)「オリンシス城に残されてたらしいんだお。中は見てないけど、きっとリリィ宛だお。
今日はこれを渡すために来たんだお」
从;‘ー‘)「帰っちゃうところでしたね」
(;^ω^)「危なかったお……」
白い封筒を、手渡した。
リリィは大事そうにそれを受け取る。
そして、ぎゅっと胸に抱えた。
从*‘ー‘)「後でじっくり読ませていただきますね」
( ^ω^)「だおだお」
从*‘ー‘)「でも、もしブーンさん宛だったらどうします?」
( ^ω^)「また今度来たときに読ませてもらうお」
从*‘ー‘)「分かりました。では、お気をつけて」
( ^ω^)「色々とありがとうだお」
再び馬に跨り、手綱を引いた。
馬が嘶いて、前足を高く上げる。
手を振って、別れを告げた。
馬を走らせ城への道を急いだ。
馬蹄が地面を叩く音が大きく響く。
- 240 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:10:40.84 ID:kWWtgkGx0
- 自分の体は、不思議と軽く感じた。
ふわりと浮き上がって、そのまま空まで行って、月や星々に笑いかけられそうだった。
――三日後――
( ^ω^)「……うん、いい感じだお」
一万五千の兵が城外に並んでいた。
うち五千は騎馬隊。残りは歩兵。
騎馬隊は全員がI兵で、歩兵はH兵とG兵が入り混じっている。
兵の選別は、オワタが願い出てきた。
色んなことを経験してみたい、と言ってきた。
実験的にやらせてみたが、悪くなかった。
上手くバランスが取られている。
これなら戦も有利に戦えそうだ、と思った。
( ^ω^)「それじゃあ行ってくるお」
守将として城に残るオワタに、そう告げた。
ここは要衡だ。将校を残さざるを得ない。
できれば伴って行きたいが、仕方なかった。
\(^o^)/「行ってらっしゃいませ」
オワタが両腕を挙げて手を振っていた。
その光景に、思わず笑ってしまった。
- 249 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:12:49.03 ID:kWWtgkGx0
- 号令をかけて、兵を進発させた。
騎兵から徐々に動いていく。
しっかり統率を取って、軍がばらけないようにしなければならない。
やがて自分も駆け出した。
( ^ω^)(…………)
一度、振り向きたい気持ちになった。
意味もなく、何故か。
振り向かず、そのまま駆け出した。
気持ちを、振り払うようにして。
それでも何故か、振り向きたい気持ちでいっぱいだった。
感情を拭いきれないまま、速度を速めていった。
――ウタワレ城付近――
一斉攻撃。
それが今回の作戦だった。
ウタワレ城、ヒトヒラ城、ネギマ城、ギフト城、ダカーポ城を同時に狙う。
ラウンジの準備はまだ万端ではない。それを狙っての攻撃だ。
上手く嵌まれば一気に五城を奪える。
- 261 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:15:03.24 ID:kWWtgkGx0
- ウタワレ城は自分が。
ヒトヒラ城はショボンとギコが。
ネギマ城はモララーとプギャーが、ギフト城とダカーポ城は西塔が。
それぞれ狙いに行く。
( ^ω^)(……あんまり大きくない城だお……)
南西の辺境に位置するウタワレ城。
今までほとんど戦火に晒されたことがないせいか、城としての機能性は低そうだった。
あまり防衛に適した城ではないのだろう。
ラウンジは、城外に布陣していた。
( ^ω^)(……一万……いや、八千くらいかお……)
ラウンジの総兵数を考えれば、かなり少ない数だ。
やはり準備は整いきっていないようだった。
しかし、守将はギルバードだ。
カルリナと同じ、中将の地位に座する男。
決して侮れない相手だ。
互いに睨み合った。
そのまましばらく、膠着が続く。
敵の気迫が、寡兵とは思えないほどだ。
ラウンジは一歩も引き下がらない。
倍近い相手を前にしても。
- 275 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:17:10.23 ID:kWWtgkGx0
- 気概が、肌で感じられた。
( ^ω^)「行くお!!」
動かした。
まずは騎馬隊だ。
鋭く敵陣に向かった。
敵も騎馬隊を前面に押し出してきている。
ただし、数は三千に満たない。
一気に突き破った。
ラウンジの騎馬隊は散り散りになっていく。
後ろから更に歩兵が騎馬隊に攻撃を仕掛けているはずだ。
そのまま、歩兵を蹂躙した。
小さく固まっていたが、騎馬隊の力なら容易い。
敵の反撃も軽くはないが、打ち破れる程度だ。
反転してもう一度歩兵を潰しに行った。
ラウンジの騎馬隊は既に算を乱したようだ。
(;^ω^)「ッ!!」
しかし、そう易々と勝たせてくれるはずがない。
分かっていたことだ。
ラウンジとて、この戦を落としたくはないだろう。
ギルバード=インダストルが、アルファベットを振るってきた。
湾曲した刃を持する、Sだ。
- 290 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:19:11.17 ID:kWWtgkGx0
- Vとのリーチ差はさほどない。
いい勝負になりそうだ、と思った。
(#^ω^)「おおおおぉぉぉッ!!」
ぶつかった。一合目。
体に衝撃が走る。
見るからに屈強そうな男だ。
さぞかし力に秀でているのだろう。
しかし、アルファベットの腕は、力だけでは左右されないのだ。
(;`゚ e ゚)「ぐっ!!」
ギルバードの焦りが見て取れた。
Sの刃を掻い潜って、Vが頬を掠めたからだ。
涙のように血が流れ落ちた。
馳せ違った。二合目。
上手くSを振るってきたが、防いだ。
特徴的な刃の使い方は分かっているようだ。
だが、Sを既に通過した自分は、それくらいとっくに把握している。
無論、その防ぎ方も。
上位者の強みが、活かせるのだ。
(#^ω^)「おおおおぉぉぉッ!!!」
- 303 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:21:08.28 ID:kWWtgkGx0
- (#`゚ e ゚)「ぬうううぅぅぅん!!!」
力任せに振り下ろしてきた。
雑な動作だ。繊細さの欠片もない。
焦りに駆られ、冷静さを欠いたのだろうか。
しかしそれでは、Sを活かすことなどできない。
受け止める。
さすがに力は強い。身が震えるほどだ。
しかし、弾けないほどではない。
押し返して、互いに体勢を立て直した。
こちらのほうが一瞬早い。
すかさずVを向けた。
ギルバードは、上手く躱した。
見かけによらず、動きは機敏だ。
身のこなしがいい。
(;`゚ e ゚)「……くっ……」
ギルバードが、退いた。
自分だけではない。軍自体を退かせた。
周りの状況を見て、敗戦濃厚を覚ったようだ。
( ^ω^)「追わなくていいお、ウタワレ城の確保を優先するお」
その城からも、兵たちが逃げ出していた。
どうやら放棄を決断したようだ。
- 313 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:23:21.87 ID:kWWtgkGx0
- 城に罠などがないことを確認し、兵を入れた。
恐らくここの戦が緒戦だったはずだ。幸先のいい勝利、ということになるだろう。
これから随時、各地で戦が行われていくはずだった。
ウタワレ城には一万二千の兵を残した。
この数なら急に攻められても守りきれるだろう。
三千の騎兵を率いて、再びオオカミ城に戻った。
恐らくだが、ウタワレ城の奪還をラウンジは狙ってこないはずだ
あれほどあっさり放棄したということは、まず間違いない。
ラウンジにとっては遠隔地で、守りにくい城だったはずだからだ。
ひとまずオオカミ城から兵糧を運び、次の戦に備えなければならない。
ヒトヒラ城を落とすのに参加するとなると、オオカミ城からでもウタワレ城からでも行けるようにする必要があるのだ。
とにかくオオカミ城で一度編成を整える。
それからショボンの指示を仰ごう。
――――そう、何気なく考えていた自分に。
全てを打ち壊すような真実が、直撃した。
(;^ω^)「……どういう……ことだお……?」
三千の騎馬隊と共に。
たどり着いた、オオカミ城。
閉ざされた城門。
- 326 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:25:20.30 ID:kWWtgkGx0
- 出迎えがなかった。
その時点で違和感はあった。
しかし、何故、城門が閉ざされている。
分かる。しかし、分からない。
いや、信じたくない。
\(^o^)/「うびゃびゃびゃびゃwwwwwwwwwお前の人生オワタwwwwwwwwwwww」
城壁から嘲笑するオワタ。
そして、配下の兵たち。
はっとして、見上げた。
オワタより更に上を。
大空を、虚空を見上げるようにして。
オオカミ城の城塔に、掲げられている旗。
それは、ヴィップのものではなかった。
(;゚ω゚)「ね、寝返ったのかお……!?
ラウンジに……!!」
\(^o^)/「こんな国で少尉なんかやってられるかwwwwwww
これで楽々ラウンジの大尉wwwwwww俺の人生ハジマタwwwwwwwwww」
そして、Dを構える兵たち。
一斉にFを番える。
(;゚ω゚)「に、逃げるお!!」
- 361 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:27:36.52 ID:kWWtgkGx0
- 馬を走らせた。
Dが届かない位置まで、懸命に駆ける。
やられてしまった者が何人かいるようだ。
(;゚ω゚)(そんな、まさか……オワタが……)
裏切りが起きた。
オワタが、裏切った。
自分の失態だ。部下であるオワタを、ラウンジに引き抜かれてしまった。
重要な城であるオオカミ城を失ってしまった。
自分のせいだ、自分のせいだ。
謀反を起こさせてしまった。
オワタ一人を残すべきではなかった。
ウタワレ城戦に伴うべきだったのだ。
そうすればこんな事態は防げたのに。オオカミ城を失わずに済んだのに。
しかし、とにかく今は伝えることだ。
ショボンに、皆に、この事実を。
ミーナ城に行けばショボンとギコがいる。
大将に伝えることができる。
(;^ω^)「ハァ、ハァ……」
休む間もなかった。
後ろからの追撃があるかも知れないからだ。
- 375 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:29:19.78 ID:kWWtgkGx0
- オオカミ城に残していた兵は五千。
その全員が裏切ったのだろうか。
いや、恐らく半数程度だろう。
後は不意を突かれて殺されたか、便乗して寝返ったか。
ともかく、あの状況ではもう、ヴィップの兵は存在していないだろう。
今後はどうすべきだ。
やはりオオカミ城の奪還を狙うべきか。
しかし、あの堅城が相手では容易くない。
ウタワレ城には既に伝令を送った。
一万二千の兵を残してきたが、すぐに引き上げるように、と。
あの城は恐らく、守りきれない。今は兵の命のほうが大事だ。
夜になって、やがて朝になった。
馬を潰さないようにだけ気をつけながら、ひたすら駆け続ける。
そしてようやく、ミーナ城に到着した。
どうやらまだ兵はいるようだ。
城壁に人並みが見える。
(;´ω`)「ハァ、ハァ……ショボン大将……ギコさん……」
城に駆け寄った。
疲労困憊、呼吸も苦しい。
それでも伝えなければ。裏切りの事実を。
――――伝えなければ。
- 385 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:30:40.76 ID:kWWtgkGx0
- 伝え――――なければ――――。
(;゚ω゚)「……お……?」
なんだ。
これはいったい、どういうことだ。
何が、起きているのだ。
ただ、呆然としてしまった。
目の前の、光景に。
見上げる城壁。
降り注ぐ雨。
真っ赤な真っ赤な、血の雨。
城壁を、転がり落ちる。
ギコの、首。
- 419 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:32:16.54 ID:kWWtgkGx0
- (;゚ω゚)「お……お……お……」
首から幾滴も落ちる血液。
まるで、涙のように。
そのギコの体を、抱え込む男。
首を、切り落とした男。
今まで、自分の何もかもを託してきた――――
――――最も、信頼していた男。
(´・ω・`)「実に、長かった。あまりにも、長すぎた」
- 476 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:34:08.02 ID:kWWtgkGx0
- ギコの体を、投げ落とした。
無表情のままで。
ショボン=ルージアル。
まさか、まさか、まさか――――!!
そんな、バカな。
(´・ω・`)「しかし、終わった。やっと終わってくれた。
さぁ、ラウンジの天下がやってくる。天下はもう、すぐそこにある」
高笑い。
耳を、劈くような声。
信じたくない、信じたくない。
しかし、疑いの余地もない。
本当に、裏切ってしまったのだ。
ショボンが、ラウンジに。
- 515 :第70話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/31(金) 16:35:40.19 ID:kWWtgkGx0
- (;゚ω゚)「う……」
それだけが、恐ろしいほどの、絶望するほどの、真実――――
(;゚ω゚)「うああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」
わけも分からず、咆哮した。
何も、考えられなくなってしまった。
第70話 終わり
〜to be continued
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