- 3 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木)
21:25:07.19 ID:s2UGYz7G0
- 〜東塔の兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
18歳 新兵
使用可能アルファベット:G
現在地:牢乎の森
●('A`) ドクオ=オルルッド
18歳 新兵
使用可能アルファベット:C
現在地:ヴィップ城
●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
28歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヴィップ城
●( ,,゚Д゚) ギコ=ロワード
26歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:シャナ城
●( ^Д^) プギャー=アリスト
24歳 中尉
使用可能アルファベット:L
現在地:牢乎の森
- 6 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木)
21:26:45.43 ID:s2UGYz7G0
- 〜西塔の兵〜
●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
33歳 大将
使用可能アルファベット:S
現在地:牢乎の森
●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
34歳 中将
使用可能アルファベット:?
現在地:牢乎の森
●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
37歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:牢乎の森
- 9 :階級表
◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木)
21:28:58.93 ID:s2UGYz7G0
- 〜東塔〜
大将:ショボン
中将:モララー・モナー
少将:ギコ
大尉:
中尉:プギャー
少尉:
〜西塔〜
大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:
大尉:ヒッキー
中尉:
少尉:
- 12 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE
:2007/01/04(木) 21:30:26.67 ID:s2UGYz7G0
- A :
B :
C : ドクオ
D :
E :
F :
G : ブーン
H :
I :
J :
K :
L : プギャー
M :
N :
O :
P :
Q :
R :
S : ジョルジュ
T : ショボン
U :
V : ベル(ラウンジ)
W :
X :
Y :
Z :
- 13 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 21:32:38.26 ID:s2UGYz7G0
- 【第7話 : Exception】
柄は両手でなんとか握れる程度しかない。
男の胸のあたりまである、アルファベットVは、それ以外が全て刃だ。
下端部が地面に突き刺さっている。
両刃の、あまりに凶悪な、先鋭なアルファベット。
押し潰されそうだった。
( `∠´)「……ヴィップの者だな」
ゆっくりと近付き、冷たく放たれるベルの言葉。
すっと、音がした。
振りあがる、アルファベット。
(;゚ω゚)「ッ!!」
横に飛んだ。
ブーンの鼻の先を、掠めるように振り下ろされたV。
土に浮いた水が、弾けた。
片手で軽々とアルファベットを振り下ろした。
重量は分からないが、この大きさならかなりあるだろう。
それを、なんでもないように。
(;゚ω゚)(やばいお……やばいお……!!)
- 14 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 21:34:46.43 ID:s2UGYz7G0
- 逃げろ。
ショボンには、そう言われた。
しかし、まるで腰を抜かしたような状態で地面に座り込んでいる、この現状。
逃げられるはずがない。
( `∠´)「私の名はベル=リミナリー。お前が、最後に出会った男になる」
今度は横に払った。
頭を後ろに倒して、それも間一髪で躱す。
しかし、攻撃は続く。
今度は真上から落ちるように。
(;^ω^)「くぉっ!!」
再び横に飛び、刃を回避する。
攻撃を何度も躱されたことにより、ベルの苛立ちが、顕著になってきていた。
( `∠´)「……躱すだけか?
それではつまらんな。
しかし、懸命とも言える。お前のGなど、一撃で破壊できるからな」
不意に、衝撃を受けた。
腹部。
アルファベットは、喰らっていないのに。
(;゚ω゚)「うぐぉっ……!」
蹴り飛ばされ、仰向けに倒れこんだ。
アルファベットばかり見ていて、足の動きに反応できなかった。
( `∠´)「若い命が、今日も散る」
- 18 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 21:36:53.41 ID:s2UGYz7G0
- ベルが、アルファベットを振り上げた。
情景がぼやける。
雨に顔が濡れ、こめかみを流れ落ちた。
涙ではない、と思った。
何もできなかった。
何も残せないまま、死んでゆく。
ショボンに、入軍テストでの恩を返していない。
プギャーに、面倒を見てもらったお礼も言っていない。
ジョルジュに、何も言い返せていない。
まだ、世界は平和になっていない。
かーちゃんが安心して暮らせる世界に、なっていない。
( ω )「……やってやるお……」
( `∠´)「……ん?」
Vが、雷のように頭上から落ちてくる。
これを、何もせずに受け入れたまま、死ぬ。
それだけは、絶対にしてはならない。
最後の一瞬まで戦い抜け。
できることを全てやり尽くして、死ぬならそのあとで死のう。
それまで、極少たりとも諦めるな。
( `ω´)「おおおぉぉぉっ!!」
- 21 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 21:39:20.00 ID:s2UGYz7G0
- 金属音が響き、雨に溶けた。
弾かれたV、弾いたG。
受け流すように、Vの側面を叩いた。
(;`∠´)「……バカな……この状況で攻撃を弾くなど……よほど反応が良くなければ……」
( `ω´)「簡単に死ぬわけにはいかないんだお!!」
Gを背中に回し、勢いをつけて振り回した。
ベルが仰け反るようにしてそれを躱す。しかし、追撃。
首を掻っ斬るようにして振るったGが、ベルの顔を掠めた。
頬から流れ落ちる、鮮血。
雨と一緒に、下顎から地面へと向かった。
( `ω´)「ブーン=トロッソ。お前が最後に出会った男の名だお!!」
Gを突き上げた。
ベルが首をずらして回避する。そして、真横から襲い来るV。
だが、素早く身を屈めて、Vに空を切らせた。
そして、広げる両手。
⊂二二二( `ω´)二⊃「うおおおおお!!」
腹部に、頭をめり込ませた。
ベルが呻きを漏らして、ふらつく。
すかさず突き出すGが、ベルの右腕を斬り裂いた。
紅血が雨中に混じる。
(#`∠´)「貴様……!!」
- 23 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 21:41:14.06 ID:s2UGYz7G0
- そのまま横に払って、ベルの首を狙う。
しかし、弾けるように頭を後ろに持っていかれ、躱される。
ベルの双眸が、色を変えた。
(#`∠´)「調子に乗るのはここまでだ!!」
ベルの右足が地を離れた。
躱そうとして膝を曲げる。しかし、避けきれない。
左耳に、強烈な蹴りが直撃した。
一瞬にして、地に倒れこむ。
頭が眩んだ。
そして、首を掴むベルの右手。
(#`∠´)「じゃあな」
視界遠くから、一気に近くまで迫る、V。
それの、狙いが逸れた。
顔の真横、地面に突き刺さり、そのまま倒れる。
完全にベルの手から離れたアルファベット。
そして、ブーンの顔に降り注ぐのは、ベルの温血。
ベルの首筋に、Gの刃が深く斬りこまれていた。
(;゚ω゚)「ハァッ……ハァッ……」
- 24 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 21:43:18.83 ID:s2UGYz7G0
- 不用意に近寄りすぎたベルの首に、Gを力の限り斬り込ませた。
ベルが体の上に、圧し掛かるのようにして倒れこむ。
瞳孔が開ききった眼、夥しいほどの流血。
死んでいるかどうか、分からない。ただ、ベルは微動だにしない。
(;゚ω゚)(首を……)
ベルを体の上から押しのけ、地の上に転がした。
そして、Gの刃を、首に振り下ろす。
渾身の力で、首を取った。
(;^ω^)「か……勝ったお……」
信じられない。
ベル=リミナリーを、討ち取った。ラウンジ軍最強の武将を。
首のない死体も、鼻腔を満たす血の匂いも、何も気にならない。
全て夢なのではないか、と思えた。
入軍して二ヶ月も経っていない自分が、敵将を討ち取るなど、本当にあり得るのか。
しかし、確かにベルの死体はここにあった。
(-_-)「ブーン……!」
- 29 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 21:45:31.43 ID:s2UGYz7G0
- 多くの兵の足音が響いた。
ヒッキーが数百の兵を連れている。
(;^ω^)「ヒッキー大尉……」
(-_-)「……これは……!
ブーン、お前が討ち取ったのか……?」
(;^ω^)「は、はいですお……」
ヒッキーが首を確認した。
右手で髪を掴んでぶら下げている。一滴、二滴と血が滴っていた。
(-_-)「信じられない……まさか、お前が……」
(;^ω^)「う、討ち取っちゃいましたお……」
(-_-)「見事だ……ファットマン=フィギンズ少尉を、新兵が討ち取るとは……」
(;^ω^)「は、はい……」
(;^ω^)「……え?」
全く聞いたことのない名を、ヒッキーは口にした。
誰だ。
こいつは、ベル=リミナリーではないのか。
- 33 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 21:47:42.31 ID:s2UGYz7G0
- (;^ω^)「あの……この人は、ベル=リミナリーって名乗ってましたお……」
(-_-)「"騙りのファットマン"……ベルと風貌が似ていることを利用して、ベルになりきっている武将……。
α成分が全く入っていない、アルファベット型の武器を使って、こけおどしだけで戦うやつだ……。
見慣れている者でも騙される……手ごわい相手だ……」
(;^ω^)「……ベルじゃ、ないんですかお……?」
(-_-)「当たり前だ……本物なら瞬殺されている……」
ヒッキーが懐から布を取り出し、首を包んだ。
白い布がじわじわと赤く染まっていく様が、生々しく思えた。
(-_-)「ブーン、お前は俺と一緒に来い……俺は遊撃隊として森を転々とする……」
(;^ω^)「ダ、ダメですお。ニダー中将に、伝令が」
(-_-)「その伝令なら、さっき俺が伝えてきた……偶然会ったから、ついでにな……」
(;^ω^)「え? あ、そうなんですかお……」
(-_-)「あとは俺についてくるだけでいい……戦争には加わらなくていい……。
途中でプギャー中尉に出会ったら、お前を引き渡そう……それでいいか……?」
(;^ω^)「は、はいですお」
- 36 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 21:50:04.77 ID:s2UGYz7G0
- ヒッキーは軽く頷いて、歩を進めた。
隣を歩いて、森の中央へ向かう。干戈の音が、少しずつ近付いてくる。
後ろにはIを携えた数百の兵。
厳しい顔で、黙々と進軍を続けている。
みな、一秒後に命を失う覚悟を持っている。
その覚悟の側で、ただ呆然と戦況を見守る。
果たして、本当にそれでいいのか。
国軍の兵士として、正しいのか。
答えは、否だと思った。
(;^ω^)「……あの……」
(-_-)「……なんだ……?」
(;^ω^)「……もし相手が、G隊以下なら……ブーンも戦わせてほしいですお」
ヒッキーの薄い眼が、微かに広がったように見えた。
眉をひそめ、じっとこちらを見つめている。
無気力そうな顔が、厳格な表情へと移ろった。
- 37 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 21:52:25.05 ID:s2UGYz7G0
- (-_-)「……ファットマンを討ち取って、自信を得たというわけか……?」
(;^ω^)「違いますお……ただ、みんなが戦ってるのに、一人だけ見てるのはイヤなんですお……」
(-_-)「俺の隊は全員Iだ……一人だけGというのは」
(;^ω^)「迷惑はかけませんお! お願いしますお!」
ぼそぼそと喋り、あまり大きく動かない口から、嘆息が漏れた。
一旦眼を閉じ、再び開いたときは、いつもの表情に戻っていた。
(-_-)「戦いたい、と言っているやつを止める権利はない……戦いたいなら、戦え……」
( ^ω^)「ありがとうございますお!」
(-_-)「…………」
木々の合間を潜り抜け、茂みを踏み潰す。
その先で、戦が繰り広げられていた。
(-_-)「G隊が五百と、H隊が五百だな」
ヒッキーがアルファベットを抜いた。
ファットマンが握っていたVより、更に大きな、N。
両端を繋ぐ斜めの部分が柄になっていて、それ以外が刃で構成されている。
柄の中央を握り締めて、右に左にと、Nを振り回した。
充分に広い場所とは言えず、木々が犇めき合うような地形での戦闘を強いられている。
ヴィップ側の軍も、G隊だ。
数は千に満たないと思えた。
- 39 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 21:54:33.37 ID:s2UGYz7G0
- (-_-)「プギャー中尉の軍か……」
(;^ω^)「プギャーさん!?」
確かに、プギャーが居た。
Lを豪快に扱い、敵兵を叩き斬っている。
だが、その表情には疲労が伺えた。
(-_-)「プギャー中尉の隊はG隊が……一千か……?
……多少不利だ……」
(;^ω^)「助けなきゃですお!」
(-_-)「分かっている……」
ヒッキーが咆哮をあげて、飛び出した。
呆気に取られた敵兵を斬り裂き、返す刃で後ろの敵兵も斬りつける。
普段の無気力さからは、考えられないほど機敏な動きだった。
⊂二二二( `ω´)二⊃「おおおおおぉぉぉっ!!」
他の兵も相次いで戦場に混じっていく。
それに続いて、突撃した。
ヴィップ軍のG兵と戦っていた敵軍H兵を、後ろから攻撃。
首筋に深くGの刃を押し込み、敵兵を討ち取る。
後ろから攻撃をかけてくるG兵は足をかけて倒し、首を取った。
(;^ω^)「ハァ、ハァ……」
- 42 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 21:56:51.95 ID:s2UGYz7G0
- ヒッキーは次々と敵兵を討ち取っていく。
柄の両面にある二本の刃の使い方が上手く、複数の相手も苦にしない。
もう三十七になるというが、それを全く感じさせない動きだった。
その隙に、襲い来る刃。
[# ̄皿 ̄]「死ねやぁぁぁ!」
(;^ω^)「ッ!!」
ヒッキーの動きに気をとられていた。
後ろからの攻撃。Gを咄嗟に向けたが、間に合わない。
(メ^Д^)「ブーン!!」
プギャーのLが、敵兵の頭上から振り下ろされる。
頭蓋が断ち割れた。
(;^ω^)「プギャーさん! すみませんお!」
(メ;^Д^)「なんで戦争に参加してんだよ!
お前は伝令だろ!?」
(;^ω^)「ブーンが参加したいって言ったんですお!
他の人たちが命がけで戦ってるのを黙って見てられませんお!」
(メ;^Д^)「その気持ちは分かるが……いや、とにかくありがとう。
おかげで、劣勢は盛り返せた。この勢いなら、ラウンジは……」
- 44 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 21:59:03.24 ID:s2UGYz7G0
- 甲高い鉦の音が鳴った。
戦闘を続けていたラウンジの兵が、徐々に後退していく。
潰走を始めていた。
(メ^Д^)「追うな! 体勢を立て直すぞ!」
プギャーが大声を出して隊を整えた。
雨は小降りになっている。土のぬかるみも落ち着きつつあった。
(メ^Д^)「ヒッキー大尉でしたか。ご助力ありがとうございます」
(-_-)「……怪我は、大丈夫か?」
(メ^Д^)「大したことはありません。戦況は、いかがですか?」
(-_-)「五分五分だ……が、しかし、ベルの居場所が掴めない……。
当初情報があった森北部には居なかった……ジョルジュ大将はもう情報を掴んでいるかも知れんが……。
ビコーズの部隊は敗北して森から出たと聞いた……」
(メ^Д^)「ビコーズ中尉が敗走しましたか……となると、森の南部は……」
(-_-)「今はニダー中将が守っている……森を突破されたわけではない……。
仮に突破されてもフサギコ少将が居る……ハルヒ城は大丈夫だ……」
(メ^Д^)「成る程……ジョルジュ大将は?」
- 45 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:01:09.81 ID:s2UGYz7G0
- (-_-)「森の中央を進軍中のはずだが……まぁ、案ずることはない……。
ジョルジュ大将はこの戦で、敵の上位兵を少しでも減らしたいと思っているようだ……。
そのために、自らが中央を進んでいるのだと思う……」
(メ^Д^)「となると……私は南東部に戻ったほうが良さそうですね」
(-_-)「プギャー中尉、お前が預かっていたのは二千のはずだが……
残りの一千は南東部に置いてきたのか……?」
(メ^Д^)「何の指令も来ないので、様子を見るために半分でここに来ました。
敵兵と当たってしまいましたが、ヒッキー大尉のおかげで勝利を収めることができました」
(-_-)「…………」
そのあとヒッキーは、ブーンを連れて行ってくれと一言だけ言って、中央を進んでいった。
プギャーの軍は南東へ向かい、残してきた一千と合流して再び編成を整えた。
伝令が一人やってきて、プギャーに情勢を伝える。ジョルジュが敵将を一人討ち取ったらしかった。
( ^ω^)「これからどうなるんですかお?」
( ^Д^)「分からんが、これは消耗戦だ。あわよくば森を突破してヒグラシ城を奪取したいところだが、
森に入ったラウンジ軍を全滅でもさせなきゃ無理だ。となると、どれだけ敵を減らせるか……。
ベル=リミナリーの動きが掴めないのが厄介だな。どこに潜んでるのか……」
プギャーが傷の手当を終えた。
血は多く流れていたが、深い傷ではなかったようだ。
- 47 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:03:54.47 ID:s2UGYz7G0
- ( ^ω^)「そういえばさっき、森の北でファットマンっていう敵将に出会いましたお」
( ^Д^)「騙りのファットマンか! 逃げてきたのか?」
( ^ω^)「いえ、がむしゃらに戦ったら勝てましたお。ベルじゃないって知ってビックリしましたけど、納得でしたお」
(;^Д^)「……勝った!? 討ち取ったのか!?」
( ^ω^)「討ち取りましたお。ヒッキー大尉が首を預かってくれましたお」
( ^Д^)「……そうか……よし……よくやった」
プギャーが、右手で握り拳を作った。
しかし、その意味はよく分からなかった。
森の上に、狭まった空が見える。
まだ暗く染まっていて、陽の角度は確認できない。
しかし、もう太陽は沈みかけているはずだ。
互いの軍も疲弊を始めており、このまま長く続くとは考えにくかった。
( ^Д^)「このぐらいのときが、一番怖いぞ」
( ^ω^)「?」
- 50 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:06:03.53 ID:s2UGYz7G0
- ( ^Д^)「敵に疲れが見える。動きが鈍る。何か仕掛けるとしたら、今が一番効果的だ」
(;^ω^)「警戒が必要、ってことですかお?」
( ^Д^)「あぁ……特に、動きの見えないベル=リミナリーが怪しい。
一気にジョルジュ大将の首取り、ハルヒ城の奪取……そこまでやってもおかしくない。
ブーン、俺はハルヒ城に戻ろうと思う。万が一があると大変だからな」
ここまで深く戦況を読めている。
プギャーが無能など、一体どの口が叩いたのだ。あり得なかった。
あまりに的確な、この行動。きっとジョルジュも舌を巻くはずだ、と思った。
千八百ほどになったG隊を率いて、プギャーは森の外を目指した。
敵に出会う可能性はほとんどない。細かく斥候を出すこともなく進んだため、森の外までが短く感じた。
( ^Д^)「いつの間にか、雨上がってたんだな」
雲の切れ間から赤い光が射している。
地面にできた水溜りの水面は風で波を打つ。そして、灰がかった雲を静かに映し出した。
汗ばんだ肌にぶつかる野分が快かった。
( ^Д^)「……ハルヒ城は無事みたいだな。とりあえず、ここに布陣しようか。
ブーン、お前はフサギコ少将の許へ行って話を聞いてきてくれ。
何か新しい情報があるかも知れねぇ」
( ^ω^)「了解ですお!」
森の外に出た開放感のせいか、体が軽く感じる。
何故か全く疲れが気にならず、フサギコの許へ行くのにも時間はかからなかった。
- 52 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:07:43.70 ID:s2UGYz7G0
- 伝令章を示して、フサギコに話しかけようとしたが、それより先にフサギコが声を発した。
ミ,,゚Д゚彡「もう指令が伝わったのか?
随分、早かったな」
(;^ω^)「……どういう意味ですかお?」
ミ,,゚Д゚彡「今日の戦は終了だ。全軍、森から撤退。敵軍も続々森から抜けてるらしいからな」
そう言って、フサギコは森の北東部を指差した。
ヒッキーの一軍が森から出てきている。
そしてすぐにプギャーの一隊の近くから、ジョルジュが姿を現した。
全軍がハルヒ城まで戻った。
ジョルジュは再び前に立ち、静かに喋り始める。
その表情に、あまり疲労は浮かんでいなかった。
( ゚∀゚)「ひとまず、今日の戦は終わった。みな、よく頑張ってくれた。
ヒグラシ城を落城させることはできなかったが、ラウンジの思惑は打ち破った。
これは勝利だ。見事な戦ぶりだったぞ!
勝ち鬨をあげろ!」
全兵から声が上がる。
闇に包まれつつある空に、それは届きそうなほど大きな声だった。
そして兵が城へと戻っていく。
ジョルジュは城外でずっとヒッキーと話していた。どうしていいか分からず、立ち止まる。
今後のことをジョルジュに訪ねようと思ったが、話が終わるまでは話しかけられなかった。
しかし、途中でジョルジュとヒッキーがこちらに気付いた。
- 54 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:10:19.03 ID:s2UGYz7G0
- ( ゚∀゚)「ブーン、よく頑張ってくれたな。話は聞いたぞ。ファットマンを討ち取ったらしいな」
(;^ω^)「は、はいですお」
やはり、ジョルジュと喋るときはどうしても緊張してしまう。
大将の持つオーラは、他の武将とは全く比べ物にならかった。
自然と、汗が滲み出る。
( ゚∀゚)「あれはベルが出陣するたびについてきて、戦を撹乱してくる、厄介な相手だ。
この戦で討ち取っておけたのは幸運だった。このことは、ラウンジ戦が終わり次第、本城に報告しよう」
(*^ω^)「ありがとうございますお!」
( ゚∀゚)「それから、今後についてだが……ん?」
南のほうから、馬蹄が響いている。
茶と緑が混じったような色をした馬に跨って、一人の兵がジョルジュに近付く。
馬を降りて示したのは、伝令章だった。
( ゚∀゚)「本城からか? なんだ?」
- 56 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:12:23.85 ID:s2UGYz7G0
- 〔伝 ゚=゚〕「ご報告申し上げます。
西のシャナ城近郊にて、モララー中将とギコ少将がアラストール城を奪取。
謀反したレナッド=ロールファーを討ち取り、駆けつけた援軍も散々に打ち破った模様。
余勢を駆ってベヘモット城も支配下に収めました」
( ゚∀゚)「……なんだと……?」
ジョルジュの顔が引きつった。
全く隠す様子もなく、不快感を露わにしている。
( ゚∀゚)「……どうやってアラストール城を奪った?
レナッドをどうやって討ち取った?」
〔伝 ゚=゚〕「申し訳ありません、詳細はまだ伝わっておらず……」
ジョルジュが眉間に皺を寄せて、伝令兵を睨んだ。
小柄な伝令兵は竦みあがり、ただ頭を下げていた。
( ゚∀゚)「……もういい、行け」
〔伝;゚=゚〕「は、はい……失礼します」
伝令兵は再び頭を下げて、馬に跨った。
馬蹄が徐々に遠のく。
ジョルジュが軽く舌打ちをしたのが聞こえた気がした。
( ゚∀゚)「有能な部下をお持ちだぜ、ショボン大将殿は……」
呟きのようにそう言って、ジョルジュは馬首を返した。
- 57 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:14:38.74 ID:s2UGYz7G0
- ――夜――
――ハルヒ城――
次の戦はいつになるか分からない、とジョルジュに言われた。
今回、どこで何をしていたのか全く分からなかったベルのことを、入念に調べ上げるのだという。
それまでヴィップから仕掛けることはない。ラウンジも、しばらくは大人しくしているはずだ、と言った。
上手く攻め切れていないラウンジの、次の一手は分からなかった。
得意とする森の戦で、勝てなかった。ならば次は、正攻法だろうか。
しかしそれは初戦で破られている。
(;^ω^)(……戦のことはよく分かんないお……)
考えるのをやめて、毛布に包まった。
ここはプギャーと二人で使っているが、プギャーは不在だった。軍議中だろうか。
( ^ω^)(……初戦争は……なんだか、思ったより淡々としてた気がするお……)
絶対に勝てない相手だと思った。
だから、がむしゃらだった。死ぬ覚悟だった。
しかし、結果的には勝てた。あれが、初めて人を殺した感覚だ。
呆気ない、と思った。
( ^ω^)(……ラッキーだったんだお、きっと……)
普通に初戦争を経験するより、このほうが良かったはずだ。
罪悪感に駆られることが一切ない。苦しまなくて済んだ。
不思議な安堵感と毛布に包まれていたそのとき、部屋の扉を叩く音が聞こえた。
- 59 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:16:45.55 ID:s2UGYz7G0
- (兵゚ ム゚)「……軍議室へ」
(;^ω^)「え?」
(兵゚ ム゚)「軍議室へ」
短くそう言って、兵士は扉を閉めた。
毛布から出て、アルファベットを背負った。
具足はもう脱いでしまっている。付け直している時間があるとも思えなかった。
すぐに部屋を飛び出て、さっきの兵士を追い越して軍議室に向かった。
硬い石で敷き詰められた廊下が音を立てる。連続して、何回も。
その音が等間隔で耳に響いて、それのみに集中している間に、軍議室に到着した。
(;^ω^)「ハァ、ハァ……失礼しますお」
息の乱れを整えて、軍議室の扉を開いた。
中に居たのは、西塔の将校と、プギャー。
そのプギャーがすぐに歩み寄ってくる。
( ^Д^)「ブーン、お前はよくやってくれたよ」
(;^ω^)「???」
( ^Д^)「本城から早馬が駆けつけて、これを届けてくれた」
プギャーがその右手に握り締めていたのは、一枚の書簡だった。
一瞬、ジョルジュが鬼のような形相でプギャーを見たのが、視界の端に映った。
- 61 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:18:53.15 ID:s2UGYz7G0
- ( ^Д^)『昨日、モララー中将とギコ少将によってアラストール城の奪還、ベヘモット城の奪取に成功。
現在オオカミに対し臨戦態勢を継続。今後指揮を取れる人材が不足することが予測される。
よって対ラウンジ戦に参戦中のプギャー大尉、並びにブーン"少尉"の本城帰還を要請する。
ショボン=ルージアルより』
場は静まり返っていた。
苦虫を噛み潰したような表情で見てくる者もいれば、無表情の者もいる。
ジョルジュは前者、ヒッキーは後者だった。
様々な表情を浮かべ、しかし誰も言葉を発さない。
そこでようやく、さっきの言葉の意味を理解した。
少尉に、昇格している。他の誰でもない、自分が。
ただただ、呆然としてしまった。
( ^Д^)「ブーン、今から本城に帰還だ。荷物をまとめるぞ」
(;^ω^)「え、え? こっちの戦は……?」
( ^Д^)「やむを得ぬ事情があった場合は戻れるように約束されてたみたいだ。
ですよね、ジョルジュ大将」
( ゚∀゚)「……あぁ、そうだよ。借り物であるお前たちを、強制的に拘束する力はない」
( ^Д^)「だそうだ。心置きなく、本城に帰れるぞ」
(;^ω^)「……は、はいですお……」
ジョルジュの視線に、袖を引っ張られているような気分になった。
怖くて、とても瞳を直視できない。竦んで、動けなくなってしまいそうだった。
- 62 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:21:30.46 ID:s2UGYz7G0
- プギャーが軽く頭を下げて軍議室の扉を開く。
足早に外に出てしまった。
すぐについていこうとしたが、やはり後ろめたいような気持ちがあり、深々と頭を下げてから退出した。
扉を閉めたあと、すぐに話し声が聞こえたが、内容を聞き取ることはできなかった。
――二日後――
――ヴィップ城――
起きてすぐ、東塔の最上階に呼び出された。
(´・ω・`)「よく無事で帰ってきてくれた、ブーン少尉」
聞き慣れない呼ばれ方だった。
やはり、どうしても違和感が付きまとう。
(´・ω・`)「ファットマンを討ち取ったのは見事だったな。おかげで、助かったよ」
(;^ω^)「助かった?」
- 65 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:23:35.81 ID:s2UGYz7G0
- (´・ω・`)「お前を呼び戻す方法を、ずっと考えていたからさ。
ただの一兵卒であるお前を、指揮を取らせるために帰還させるわけにはいかない……。
何か昇格させる理由が欲しい、と思っていたんだ。その矢先に、ファットマンを討ち取ってくれた。
皇帝に必死で頼み込んで、何とか昇格させてもらったよ。異例の早期昇格だから、苦労はしたがな」
(;^ω^)「あ、ありがとうございますお……」
戸惑いは、隠しきれなかった。
入軍して僅か二ヶ月。一緒に入った他の新兵は、まだ戦すら経験していない。
なのに、もう上の立場。指示を下す階級になってしまった。
(´・ω・`)「プギャーも同時に大尉に昇格した。お前の戦功を教えてくれたのもプギャーさ。
そこでなんだが、お前たちには早速シャナ城に行ってもらう」
(;^ω^)「も、もうですかお?」
(´・ω・`)「明日の朝、出立してもらう。今日は色々やることがあるからな。
少尉になったから、他の兵と相部屋じゃなくて個室が与えられる。引越し作業だ。
他にも、昇格に伴う手続きがある。忙しいぞ。とにかく、荷物を個室に運べ」
一礼して、すぐに部屋に戻った。
ドクオが眼をこすっている。今起きたばかりのようだ。
('A`)「おう、ブーン……どっか行ってたのか?」
( ^ω^)「ショボン大将のところだお。少尉になったから、荷物を運ばなきゃなんだお」
('A`)「そうだったな……しかし、驚いたぜ。お前が敵将を討ち取って、もう少尉になるなんてな……。
普通は部隊長とかを経験してからだが、全部抜かしていきなり将校……うらやましいぜ」
- 66 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:26:19.55 ID:s2UGYz7G0
- ( ^ω^)「あれはまぐれだお。でも、戻ってこれて嬉しいお」
('A`)「だろうな……西塔の連中ばかりの場所に長居はしたくねーよ、普通……。
しかし、個室か……女も連れ込み放題だな」
(;^ω^)「女なんて居ないお」
('A`)「国軍の少尉だぜ? 町で声かけりゃついてくるさ。将校は金もかなり貰えるらしいし……。
でもま、東塔の人間は西塔に比べりゃ淡白らしいからな。女好きはプギャー大尉くらいじゃないかな」
( ^ω^)「ショボン大将も全然なのかお?」
('A`)「あの人は一番女に興味がないな。あれくらいの地位になったら女なんて選り取りみどりなんだが……。
現に好色のジョルジュ大将なんて、暇さえありゃ女を抱いてるって話だ。
だがショボン大将は独り身で、女を娶る気配も一向にない。
噂じゃ"女より男に興味があるんじゃないか"とか……」
(;^ω^)「マ、マジかお?」
('A`)「入軍初日に、食堂でショボン大将に『軍議室に来い』って言われたことあったろ?
あれはお前がショボン大将に"別の意味で"目を付けられたんじゃないかって噂されてたぜ。
入軍してわずか二ヶ月で少尉になれたのはそういう理由か、とかな」
(;^ω^)「ちょwwwwwww」
ドクオとのバカ話は楽しかった。できれば、もっと話していたい。
しかし、あまりのんびりはしていられない。色々、やることがあるらしい。
- 70 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:28:38.60 ID:s2UGYz7G0
- ( ^ω^)「じゃあそろそろ行くお」
('A`)「おう、頑張れよ。応援してるぜ」
(*^ω^)「ありがとだお! 行ってくるお!」
あまり多くない荷物を抱えて、部屋を出た。
気分は軽やかだった。
('A`)「……けっ」
――四日後――
――シャナ城――
( ,,゚Д゚)「おう、よく来てくれたな」
( ^Д^)「お久しぶりです、ギコ少将」
( ,,゚Д゚)「昇格したらしいな。東塔は昇進が早めとは言え、二十四で大尉か……」
( ^Д^)「ギコ少将と同じですよね?」
( ,,゚Д゚)「よく知ってるな。俺のときは早い早いって騒がれたもんだが……それにしても、二ヶ月で少尉は、早すぎだろ」
ギコは軽い笑みを浮かべていた。皮肉っぽさはない。
一歩歩み寄って、手を差し出された。
- 78 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:31:03.93 ID:s2UGYz7G0
- ( ,,゚Д゚)「ギコ=ロワードだ。新兵が入軍した日に、みんなの前で説明をしたが……覚えてるか?」
(;^ω^)「ブーン=トロッソですお。よく覚えてますお」
( ,,゚Д゚)「はは、光栄だ」
右手を出して、握手を交わす。
思ったより細い手で、柔い。あまりがっちりした体格ではなく、むしろ細身だ。
しかし、顔立ちはヴィップ国軍で最も端整なのではないか、と思えるほどだった。
ギコに案内されて城内に入る。
ヴィップ城と比べればあまりに小さな城だが、ハルヒ城よりは大きかった。
壁やアーティファクトが赤で統一されていて、まるで燃えているような鮮やかさがある。
城の頂上に聳える塔は、まさに炎のような優美な曲線を描いていた。
( ,,゚Д゚)「この城が対オオカミでは肝要になる。他の城と連携が取れるようになってるからな。
過日、モララー中将の活躍でアラストール城とベヘモット城を奪ったが、安心はできない。
オオカミも戦の準備を始めているとの情報がある」
階段を昇っていく。
窓の外から見えるのは雄大な草原。馬を走らせるのが気持ち良さそうだ、と思った。
ここで戦をすれば、間違いなく騎馬戦になる。小細工の通用しない、力と力のぶつかり合いだ。
不意に、ギコが立ち止まった。
その場所には、大きな扉があり、それを守る二人の兵士もいる。
プギャーはここが何の部屋か、知っているようだった。
(;^ω^)「あの……ここは?」
ギコが扉を二度叩いた。
- 83 :第7話 ◆azwd/t2EpE :2007/01/04(木) 22:33:34.61 ID:s2UGYz7G0
- ( ,,゚Д゚)「ここには今、モララー中将がいる」
ゆっくりと、開かれる扉。
やはりそこも、鮮やかな赤に染められていた。
第7話 終わり
〜to be continued
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