- 288 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:42:57.55 ID:T4wa73SK0
- 〜東塔の兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
31歳 少将
使用可能アルファベット:U
現在地:ヴィップ城
●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
41歳 大将
使用可能アルファベット:Y
現在地:ヴィップ城
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
36歳 中将
使用可能アルファベット:X
現在地:ヴィップ城
●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
39歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:ヴィップ城
●( ^Д^) プギャー=アリスト
37歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:ヴィップ城
- 314 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:44:51.42 ID:T4wa73SK0
- ●( ><) ビロード=フィラデルフィア
34歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
30歳 大尉
使用可能アルファベット:R
現在地:ヴィップ城
●( ФωФ) ロマネスク=リティット
24歳 中尉
使用可能アルファベット:L
現在地:ヴィップ城
●(´・_ゝ・`) デミタス=コーフィー
29歳 少尉
使用可能アルファベット:O
現在地:ヴィップ城
●\(^o^)/ オワタ=ライフ
27歳 少尉
使用可能アルファベット:M
現在地:ヴィップ城
- 326 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:45:58.41 ID:T4wa73SK0
- 〜西塔の兵〜
●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
45歳 大将
使用可能アルファベット:V
現在地:ヴィップ城
●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
46歳 中将
使用可能アルファベット:S
現在地:ヴィップ城
●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
49歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:ヴィップ城
●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
42歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
- 334 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:46:43.61 ID:T4wa73SK0
- ●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
44歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:ヴィップ城
●(´<_` ) オトジャ=サスガ
44歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:ヴィップ城
- 341 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:47:14.84 ID:T4wa73SK0
- 〜東塔〜
大将:ショボン
中将:モララー/ギコ
少将:ブーン/プギャー
大尉:ビロード/ベルベット
中尉:ロマネスク
少尉:デミタス/オワタ
〜西塔〜
大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー
大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:
少尉:
(佐官級は存在しません)
- 342 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE
:2007/08/29(水) 03:47:57.50 ID:T4wa73SK0
- A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:ロマネスク
M:オワタ
N:
O:ヒッキー/デミタス
P:アニジャ/オトジャ
Q:
R:ギコ/プギャー/ベルベット
S:ニダー
T:アルタイム
U:ブーン
V:ジョルジュ
W:
X:モララー
Y:ショボン
Z:
- 352 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE
:2007/08/29(水) 03:48:55.62 ID:T4wa73SK0
- 一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml
(現実で現在使われているものとは異なります)
---------------------------------------------------
・現在対立はありません
- 365 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:50:57.96 ID:T4wa73SK0
- 【第69話 : Forest】
――世界暦・527年――
――ヴィップ城――
盛大な祝宴が開かれた。
年が明けてからの宴だが、今回は新年を祝う意味だけではない。
オオカミを、討ち滅ぼしたことを祝う意味もある。
しかし、皆のように騒ぐ気にはなれない、というのが正直なところだった。
( ^ω^)(……今日は寒いお……)
宴の場から抜け出して、ひとり、屋上に昇ってきた。
やはり、皆と同じようには騒げない。
遠景を見ようとして壁際に行くも、漆黒が見えるのみだった。
手を伸ばした先さえ薄暗い。
今日は月明かりも弱かった。
屋内の騒がしさが嘘のように、闇は静寂に染まっていた。
風の動く音が何度か聞こえる程度で、獣の遠吠えさえない。
視線を落としてみた。
それほど遠くない位置に、帰らずの森が見える。
今日もツンはアルファベットを作っているのだろう。
- 381 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:52:51.84 ID:T4wa73SK0
- 今度戦勝の報告に行こう、と思っていた。
ヴィップ城に帰ってきたのはつい最近のことで、帰ってきてからも慌しかった。
帰ってくる前は奪った城の整備などで忙殺されていて、手紙を送る暇さえなかった。
( ^ω^)(……ひとつの国を倒したあとは、このくらい忙しいもんかお……?)
オオカミを、滅ぼした。
遂に念願が叶った。
ずっとそのために戦ってきたのだ。
入軍して十二年間、ずっとオオカミと戦ってきたのだ。
そして、勝利を収めることができた。
もっと喜ばしいはずだった。
心の底から嬉しくなるはずだった。
なのに何故、空虚感が身を包むのか。
ずっと戦ってきた相手がいなくなった。
それが、寂しいのだろうか。
いや違う。理由はそんなことではない。
自分でもよく分からないのだ。
確かにずっと違和感はあった。どこかおかしい、と思った。
オオカミに勝つことを目標にしてきた自分にとっての、違和。
リレントや、他の兵たちの、国を想う気持ちに触れた。
それは大きかった。
国を滅ぼすことの、痛みを知った気がした。
- 390 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:54:43.51 ID:T4wa73SK0
- だが、頭の中では分かっていたはずなのだ。
皆が命を賭けて創り上げ、守ってきた国。
それを、討ち滅ぼすのだから。
相手は必死だ。
こちらも、必死にならなければならなかった。
その二つがぶつかれば、互いに痛みを伴うに決まっている。
それは、分かっていたはずだった。
いや、おぼろげながら理解していた。
だから、いま気分が沈んでいることと、直接的な関係はないのだ。
では、いったい何故なのか。
何故、素直に喜べないのか。
答えが見つからない。
そして余計に、気分は沈んでいく。
( ><)「あれ? ブーン少将、どうかしたんですか?」
呆然と景色を眺めていた自分の後ろに、ビロードがいた。
顔がほのかに赤い。いくらか酒を飲んでいるようだった。
( ^ω^)「どうもしてないですお。ちょっと風に当たりに来ただけですお」
( ><)「実は僕もなんです。ちょっと飲みすぎちゃったんです」
ビロードはあまり酒に強くなかったはずだ。
そのビロードが飲みすぎた、ということは、周りの兵たちと喜びを分かち合っていたのだろう。
- 399 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:56:41.28 ID:T4wa73SK0
- それが普通だった。
こんな風に気分が晴れないのは、きっと自分くらいのものだ。
( ><)「……どうして落ち込んでるんですか?」
(;^ω^)「うぇ!?」
全身が反応してしまった。
たった一言話しただけで、見破られるとは。
ビロードとは、入軍以来の付き合いだった。
しかしあまり戦で一緒になることがなく、近年は会話もさほど多くなかった。
だが、ビロードは一瞬で見抜いた。
抜けているところもある将だが、鋭さは持っているのだ。
思い出させられた気分だった。
( ^ω^)「……実は、どうして落ち込んでるのか、自分でもよく分かんないんですお……」
正直に言った。
ビロードは、真剣な表情で自分の言葉を聞いてくれている。
( ^ω^)「オオカミに勝ったことは嬉しいんですお。でも、どこか虚しくて……。
オオカミがなくなったことが、じゃないんですお……それは喜ばしいことなんですお……
……でも、理由が見つからないんですお……」
( ><)「……そうなんですか……」
- 407 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:58:30.29 ID:T4wa73SK0
- オオカミが誇った四中将は、みな死んだ。
ドラルとリレントは自分が討ち取り、フィルとガシューもラウンジによって討ち取られた。
主だった将では、唯一、ミルナだけが行方知れずだ。
どこかで死んだかも知れない。
あるいは、ひっそりと生き延びているかも知れない。
もしかしたら、オオカミの復興を狙って、野に伏しているのかも知れない。
何も分からないが、オオカミという国が消えたのは確かだ。
しかし、それによる虚しさではないのだ。
リレントと戦ったときに感じた痛みを、また違うところでも感じた。
オオカミ城に入った際、オオカミの兵は全て降伏しているはずだった。
しかし、中には最後まで抗ってくる者もいたのだ。
オオカミ国の王子であった、ディアッド=ウルフ。
そしてそれに従う、数百の兵たちだ。
城内への侵入を、最後まで防ごうとしてきた。
オオカミを、最後まで守ろうとしていた。
やはり、胸が痛んだ。
王子のディアッドを斬ったときにだ。
あの果敢な王子は死に、白旗を振った国王は捕虜として生きている。
惨めな生き様だが、それでも生きている。
それがまた、無慈悲なものに思えた。
- 416 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:00:45.64 ID:T4wa73SK0
- 自分たちでやっておきながら無慈悲などとは、誰かに批判されてもおかしくない感情だった。
しかし、何故かそう感じてしまうのだ。
何もかも分かっていたはずなのに、感じてしまったのだ。
その理由が、分からないのだ。
( ><)「……ブーン少将、僕たちはずっと、ヴィップという国で戦ってきました」
ビロードが、静かに話し始めた。
落ち着いた声だった。
( ><)「西塔との諍いを抱えながら、単身でオオカミと戦い……勝利してきました」
( ^ω^)「……ですお」
( ><)「そうじゃなかったから、ブーン少将は、落ち込んでいるような気がします」
一瞬、わけが分からなかった。
しかし、はっとした。
( ><)「最後の戦いは、ラウンジとの共同戦線でした。
今までヴィップだけで戦ってきたのに、最後はラウンジと一緒だったんです。
それは勝利ということを考えれば凄くいい作戦で……文句のつけようもなかったんです。
だけど……」
ビロードが、少しだけ言葉に詰まっていた。
( ><)「……きっとブーン少将は、自分たちだけで勝ちたかったんです。
今までそうだったように、最後も、ヴィップの力だけで勝ちたいと思ったんです。
でもそうじゃなかったから、引っ掛かりが残っちゃったんだと思うんです」
- 425 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:02:34.32 ID:T4wa73SK0
- ――――そうだ。
その通りだ。
今まで、ヴィップの力だけで戦ってきた。
時には敗北しながらも勝利を重ね、着実に前進してきた。
しかし、最後になってラウンジと共に戦ってしまった。
間違った作戦ではなかった。むしろ、最上の策だった。
それでも感情的に、釈然としない部分が残ってしまったのだ。
(;><)「勝手な推測なんです。僕には分かんないんです」
( ^ω^)「……ありがとうございますお」
答えを、導き出してくれた。
ほんの少し会話しただけで、見抜いてくれた。
嬉しかった。
そして、助かった。
過ぎたことを悔やんでもしょうがない。
それは分かっていた。
だから、答えが欲しかったのだ。
( ^ω^)「ビロードさん、そろそろ戻りましょうお」
( ><)「了解なんです」
( ^ω^)「実はまだ一滴もお酒を飲んでないんですお。ちょっと飲みたい気分ですお」
- 435 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:04:21.22 ID:T4wa73SK0
- (*><)「お付き合いするんです」
(*^ω^)「おっおっおっ、ありがとですお」
ビロードと並び歩き、屋内への道を辿った。
形はどうあれ、オオカミに勝利したことに変わりはない。
自分たちの力だけで勝ちたかったと思っても、もうオオカミが戻ったりはしないのだ。
これからは、ラウンジを見据えていかなければならない。
この地に存在するのは、もう二国だけなのだから。
天下は、ヴィップとラウンジのどちらかに絞られた。
有する領地もほぼ同等。兵数にはまだ差があるが、いずれ追いつくだろう。
互角の戦いになる。
ベルの後継者として立派に成長したカルリナ=ラーラス。
老練さを身につけつつあるアルタイム=フェイクファー。
ベルの実子であるファルロ=リミナリー。
他にも、ギルバート=インダストル中将や、リディアル=ロッド少将といった手ごわい将がいる。
今後のヴィップが東、西ともどもラウンジに当たっていくとは言え、易い相手ではない。
天下の帰趨は、まだ誰にも分からない。
だが、今後こそ正真正銘、ヴィップのみの戦いだ。
しかも、東と西が同時に当たる、真のヴィップだ。
遂に、東と西のしがらみが取り除かれる。
戦いは、まだまだこれからだ。
- 440 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:06:20.04 ID:T4wa73SK0
- ――十日後――
――軍議室――
(´・ω・`)「戦の疲れは取れたか?」
ショボンが東塔の将に向かってそう言った。
年が明けてから十日。その間、皆が思い思いに過ごした。
(,,゚Д゚)「もう万全ですよ」
軽い調子でギコが言った。
ギコは城に帰ってきてからずっと、しぃと一緒だったようだ。
しぃが嬉しそうな顔で廊下を歩いているのを何度か見たことがある。
( ・∀・)「ま、ぼちぼちですね」
モララーはずっとアルファベットの訓練をしていたようだ。
既にXに到達している。
ショボンとの差は常に付かず離れずだった。
(´・ω・`)「まぁ、みんな元気そうで何よりだ」
ショボンは一度、西塔のほうを見た。
この軍議には、東と西の全ての将校が集まっている。
ただし、ジョルジュのみを除いて、だ。
ジョルジュの病は、想像以上に重いようだった。
命に別状はないと言われているが、ほとんど大将室から出てこないのだ。
戦う気力が萎えているのではないか、とも噂されていた。
- 448 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:08:17.49 ID:T4wa73SK0
- 現にこの軍議にも参加していない。
普通に動くのがまだ辛い状況だというから、当然と言えば当然だ。
しかし、本当にもう戦わないのではないか、と思ってしまう状況だった。
(´・ω・`)「さて、今後のヴィップが取るべき道だが、当然ラウンジとの一騎打ちだ」
ニダーやフサギコは憮然としていた。
何を当然のことを、とでも言いたげだった。
(´・ω・`)「ラウンジとの不可侵条約は今年の春まで続く。
だが裏を返せば、春から戦になることは間違いない」
ミ,,゚Д゚彡「ラウンジが条約を無理やり破棄して急襲してくる可能性は?」
(´・ω・`)「無論あります。しかし、国境線にほとんど兵を置いていないのは調査済みです。
今から準備を始めれば、ラウンジに急襲されて城を失うようなことはありません」
挑発的なフサギコの声にも、ショボンは冷静に対応していた。
フサギコはショボンから視線を逸らし、机の上に落としている。
(´・ω・`)「配置は今まで通り、西は東塔が、北は西塔が、という担当でいく。
熾烈な戦いになるのは恐らくヒトヒラ城とミーナ城の間。
そしてパニポニ城とギフト城の間だろう」
確かに、そうなるだろう。
地形的に見て、最も戦いが起きやすい地域だ。
西塔にとってはギフト城の奪還狙いとなる。
(´・ω・`)「……それと、ジョルジュ大将のことだが」
- 458 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:10:01.27 ID:T4wa73SK0
- 場の空気が、一瞬、動いた。
皆の視線と同じように。
(´・ω・`)「しばらく戦には参加できそうもない、とのことだ。
俺たちは復帰を待ちつつ、ラウンジと戦っていく必要がある」
( ・∀・)「ジョルジュ大将の代わりは?」
(´・ω・`)「ニダー中将しかいないだろう。中将、よろしいですか?」
<ヽ`∀´>「……問題ないニダよ」
やはりニダーは憮然としていた。
ジョルジュの腹心として活躍を続けてきたニダーだ。
次の戦で、実質ショボンが総指揮官となることに、納得いかないのだろう。
ジョルジュの許で戦いたい、という気持ちが強いはずだ。
それはフサギコも、サスガ兄弟も同じようだった。
何も変わりはなさそうに見えるのはヒッキーだけだ。
そのヒッキーさえ、心の中ではやはり、ジョルジュと共に戦いたいと思っているに違いない。
長年、ジョルジュに仕えてきた面々だ。
急にショボンの許で戦え、と言われても気持ちがついていかないだろう。
それは詮無いことだった。
(´・ω・`)「とりあえず、戦に向けて士気を高めてくれ。調練にも熱を入れていく。
細かい配置についてはまた今後の軍議で詰めていくとしよう。
じゃあ、今日の軍議は終わりだ――――あぁ、ブーンは残ってくれ」
- 468 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:12:30.39 ID:T4wa73SK0
- ( ^ω^)「? 了解ですお」
皆が立ち上がり、相次いで退出していく中、一人だけ椅子に座っていた。
どうしたのだろうというような視線を送る者もいれば、無関心のまま立ち去っていく者もいる。
最後に立ち去ったヒッキーの背中を見届けると、ショボンはゆっくり口を開いた。
(´・ω・`)「まぁ、用ってのは大したことじゃないんだ。お前に渡したいものがある」
( ^ω^)「……渡したいもの?」
(´・ω・`)「あぁ、一緒に大将室に来てくれ」
ショボンがアルファベットを抱えて立ち上がり、その後についていった。
軍議室の外にはもう、誰もいなかった。
渡したいものとは、いったい何だろうか。
不意に大将室の引き出しのことを思い出したが、それとは無関係だろう。
となると、心当たりがない。
屋上に出た。
風が顔に当たって、一瞬息が苦しくなる。
それだけでは、なかった。
息苦しさを感じたのは、それだけではなかった。
ジョルジュが、屋上で風に当たっていた。
(´・ω・`)「……お体は大丈夫なのですか?」
- 481 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:14:37.38 ID:T4wa73SK0
- ショボンが、声をかけた。
当然のことだが、意外だった。気付かぬふりで、大将室に向かうと思っていた。
( ゚∀゚)「たまには外の空気を吸わねーとな」
ジョルジュと会うのは、久しぶりだった。
だからだろうか。いや、違う。
きっと病のせいだ。
頬はこけ、体の肉も削げ落ちているように感じた。
元々体格の大きなほうではないが、これほどの痩身ではなかったはずだ。
思わず、息を呑んでしまうほどだった。
(´・ω・`)「あまり長い間、風に当たっていると、お体に障ります」
( ゚∀゚)「そこまで重病じゃねーよ」
嘯いている。
そう感じた。
いま見せている平静は、装いなのだと、すぐに気付けたからだ。
ジョルジュが重い病を得ているという噂は、本当だった。
そして、同時に感じさせられた。
本当にもう、戦には出られないのではないか、と。
ジョルジュは長年、ヴィップの大将として戦ってきた。
傍若無人なところもあるが、慕う者も少なくない。
西塔の将校は皆、ジョルジュに憧れて戦っているのだ。
- 487 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:16:51.25 ID:T4wa73SK0
- そのジョルジュがもう、戦わない。
もしそうなってしまえば、ヴィップという国自体に影響を及ぼしてしまう。
いずれは病を治し、戦列に復帰するつもりだ。
そう思い込むしかなかった。
そう思いたかったからだ。
( ゚∀゚)「ショボン」
微かに声が、掠れているように聞こえた。
気のせいかも知れない、と思う程度のものだった。
( ゚∀゚)「ラウンジとの戦いは、しばらくお前に任せた。
……迷惑かけてすまん。よろしく頼む」
思わず、鳥肌が立つような。
そんな、ジョルジュの言葉。
これほどまでに変わってしまうものなのか。
あのジョルジュが、ショボンに対して謝るなどとは。
夢寐にも思わなかった。
信じられなかった。
(´・ω・`)「……はい」
ショボンの声は、力強かった。
意志が、受け継がれたからこそのような気がした。
- 501 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:19:27.92 ID:T4wa73SK0
- ショボンはジョルジュに背を向け、東塔の大将室へと進んでいった。
ぺこりとジョルジュに頭を下げ、慌てて後を追う。
ジョルジュの表情は、無そのものだった。
――東塔・大将室――
(´・ω・`)「お前に渡したいのは、これさ」
ショボンが机の上から、ひとつの封筒を手渡してくれた。
真っ白な封筒だった。
( ^ω^)「これは……?」
封筒を裏返してみた。
差出人の名前が記してある。
(;^ω^)「ッ!!」
驚いた。
これは、ドクオの残した手紙だ。
(;^ω^)「これ、どうしたんですかお!?」
(´・ω・`)「オリンシス城で発見された。オリンシス城の守将をやっていたときに残した手紙のようだ」
しかし、宛名がない。
誰宛かは分からない。
- 508 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:21:21.32 ID:T4wa73SK0
- だが、恐らくは――――
(´・ω・`)「恐らく、妹に宛てた手紙だと思う。開封していないから分からんが」
封筒はしっかりと閉じられ、×印がつけられていた。
(´・ω・`)「妹は、オオカミ城の近くにある町の孤児院にいるらしいな。
ブーン、次の戦ではお前をオオカミ城に据える予定でいる。
そのときに渡してやったらどうだ?」
ドクオが、死んだこと。
恐らく、妹は知っているだろう。
主だった将の死亡の報は町にも広まる。
妹は確か、今年で二十五になるはずだ。
遅くなったが、ようやく妹をヴィップに迎えることができた。
ドクオの念願を果たしてやることができた。
( ^ω^)「……ありがとうございますお。この手紙、必ずドクオの妹に届けますお」
ショボンは微笑みながら頷いた。
自分も嬉しくなって、微笑んだ。
それからしばらくの間、調練に没頭した。
遂に最終戦が始まるのだ、という気持ちがあるせいか、兵の動きは機敏だ。
自然とこちらの士気も上がった。
将校たちはそれぞれ、アルファベットを訓練したり、兵を調練したりと、忙しかった。
遠征の準備を整える必要もあった。
- 516 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:23:05.87 ID:T4wa73SK0
- 春先にはヴィップ城を発つ。
皆が一斉に城から前線へと向かう。
ラウンジも、少しずつ動き始めているとのことだった。
総兵数およそ二十四万。そのうち、十七万は使ってくるだろう。
新たな城をいくつも奪ったことで、兵糧に余裕もできたようだ。
ヴィップの総兵数は二十一万。
そのうちの十五万ほどを使う予定だ。
兵糧は潤沢だった。
機運は高まりはじめていた。
士気を上げようとして調練してきたが、むしろ兵たちの逸る気持ちを抑えるのに必死だった。
皆、ヴィップの天下を一日でも早く成し遂げようとしている。
( ^ω^)(今日も疲れたお〜……)
調練を終え、汗だくになった体を布で拭いた。
冬の寒さは和らぎつつあるとは言え、服を脱ぐとやはり寒い。
その日、久方ぶりにツンの小屋へ向かった。
陽が沈みかけた頃だった。
帰らずの森は相変わらず鬱蒼としている。
獣の眼光が木々の奥から届いている。
扉を叩き、ツンの反応を待った。
いつもならすぐ出てきてくれるが、今日は突然だったためか、出迎えが遅い。
しばらく待ってからようやく中で動く音が聞こえた。
- 525 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:24:57.42 ID:T4wa73SK0
- ξっ-)ξ「はーい……」
眼を擦りながら姿を現したツン。
衣服は乱れ、髪も上下左右に跳ねていた。
(;^ω^)「おやすみだったんですかお?
すみませんお……」
ξっ-)ξ「ううん、気にしな……」
ξ;゚听)ξ「えっ!? ブーンくん!?」
大きな音が響いた。
ツンが、慌てて扉を閉めたからだ。
ξ///)ξ「い、いきなり来ないでよ!
びっくりするじゃない!」
(;^ω^)「す、すみませんお。会いたくなっちゃったんですお」
ξ///)ξ「そ……それは、いいんだけど……」
髪や衣服の乱れを気にしているのだろうか。
そんなの自分は気にしないのに、と思った。
ξ///)ξ「ちょっとだけ待ってて!」
また中から慌しい音が聞こえた。
どうやら急いで乱れを正しているようだ。
近くにいた猫としばらくじゃれ合っていて、それに飽きた頃ようやく、ツンは姿を見せてくれた。
- 539 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:27:08.44 ID:T4wa73SK0
- ξ*゚听)ξ「お……おはよう」
(;^ω^)「もう夕方ですお」
ξ;゚听)ξ「昨日徹夜で作業してたから、さっきまで寝てたの……それで、あの……」
(*^ω^)「そんなツンさんも可愛かったですお!」
ξ///)ξ「う、うるさいわね! バカにしてんの!?」
(;^ω^)「そんなつもりじゃないですお」
ξ*゚听)ξ「とにかく中に入って。待たせちゃってごめんね」
ツンの導くままに屋内へと入った。
徹夜で作業した後は、どうやらすぐ寝てしまったようだ。
屋内はかなり散らかっている。
工具がそこかしこに置いてあった。
ξ*゚听)ξ「す、すぐ片付けるから!」
ツンは忙しなく動いていた。
出されたお茶を啜りながら、動き回るツンを眺めていた。
いつまでも衰え知らずの美貌。揺れる金の髪の毛。
見ているだけでも満ち足りる気がした。
ξ゚听)ξ「お待たせー……」
- 549 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:29:40.55 ID:T4wa73SK0
- ツンのことは、心の底から好きだった。
そして恐らく、ツンも自分のことを好きでいてくれている。
しかし、踏み出せなかった。
ツンを娶りたいと、言い出せなかった。
それはひとえに、恐怖心だった。
もし断られたら、と思うと怖いのだ。
多忙な仕事を抱える身であるツンには、充分ありえることだった。
しかし、このままでは駄目だ。
互いにとって良くない。
少しでも、踏み出さなければ。
( ^ω^)「ツンさん!」
ξ*゚听)ξ「は、はい」
ツンと、向き合った。
肩を掴んでこちらを向かせた。
高鳴る鼓動。
ツンの心音まで、聞こえてきそうだった。
( ^ω^)「……お願いがありますお」
ツンが、二度三度と頷いた。
口を薄く開けながら。
頬を、いっそう赤らめながら。
- 556 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:31:29.58 ID:T4wa73SK0
- (;^ω^)「ブ、ブーンと……」
言え、言うんだ。
結婚してほしい、と。
(;^ω^)「……け、けけけけけ、けけけここけけこけこけこけ」
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと落ち着いてよ。鶏みたいになってるわよ」
(;^ω^)「す、すみませんお……」
言えない。
勇気が、踏み出しが足りない。
いや、言うしかない。
言ってしまうしかないのだ。
(;^ω^)「け、け、けけけ、けけけけけけけけ」
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと……今度は悪役の笑い方に……」
(;^ω^)(な、なんで言えないんだお……!!)
結婚してほしい。
ただそう言うだけなのに。
何か背中を押すものがないと。
でないと、自分には言えない。
こんなこと、今まで言ったことがないから。
- 571 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:33:19.56 ID:T4wa73SK0
- (;^ω^)「こ、今度のラウンジ戦に勝ったら!!」
自然と、出た言葉。
結婚してほしい、ではなかった。
(;^ω^)「……勝ったら……言いたいことがありますお」
それでも、結婚までは踏み出せなかった。
いや、同じだ。もし勝てたら必ず言う。
今度こそ、今度こそだ。
ξ゚听)ξ「……うん」
ツンは静かに答えた。
全てを理解した表情で。
次の戦に、必ず勝とう。
そして、ツンに言おう。
今までずっと言えなかった言葉を。
必ず。
――夜――
――ヴィップ城・第二訓練室――
ツンの小屋から帰ったあとは、アルファベットの訓練に励んだ。
夕食はツンに振舞ってもらった。相変わらず見た目と相反する美味しさだった。
- 580 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:34:57.84 ID:T4wa73SK0
- (,,゚Д゚)「くはー、やっぱ強ぇなぁ」
ギコが息を上げていた。
アルファベットRを右手に持ちながらへたり込んでいる。
(,,゚Д゚)「お前が入軍したてだった頃に戻りてーよ。あんときなら俺のほうが上だったのに」
(;^ω^)「もう十三年も前ですお」
(,,゚Д゚)「たった十三年で抜かれちまうとは……いや、長いな。十三年っていうと」
( ^ω^)「最弱国だったヴィップが、今やラウンジと肩を並べましたお」
(,,゚Д゚)「あぁ、いずれは天下と思ってやってきたが……感慨深いもんがあるな」
ギコの口端が上がった。
少し、渋みがあった。
(,,゚Д゚)「まだ四十にもなってねぇ。これからだ、これから」
( ^ω^)「ですおですお」
(,,゚Д゚)「ラウンジにスパっと勝って、平和を謳歌したいもんだぜ」
ギコが立て膝に手を突いて立ち上がった。
軽く礼を言われる。
その流れのままに立ち去っていった。
- 592 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:36:42.63 ID:T4wa73SK0
- 自分もそろそろ寝ようか。
いや、その前に熱された体を屋上で冷やしていこう。
そう思って、屋上へ向かった。
――――そして。
その熱が冷やされることは、なかった。
(;゚ω゚)「お……お……お……」
膝が震え、崩れた。
やがて、全身も。
漆黒に染まった空。
同じく、大地。
それがいつも光景だった。
なのに何故、赤みが射すのか。
――――何故、帰らずの森が燃えているのか。
- 614 :第69話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 04:38:43.56 ID:T4wa73SK0
- (;゚ω゚)「ツンさんッッ!!!!!!!」
全力で駆け出した。
恐怖に総身を襲われながら。
第69話 終わり
〜to be continued
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