3 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:37:20.34 ID:T4wa73SK0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
30歳 少将
使用可能アルファベット:U
現在地:ミーナ城付近

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
40歳 大将
使用可能アルファベット:Y
現在地:ミーナ城付近

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
35歳 中将
使用可能アルファベット:W
現在地:ミーナ城付近

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
38歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:ミーナ城付近

●( ^Д^) プギャー=アリスト
36歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:ミーナ城付近
5 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:38:10.74 ID:T4wa73SK0
●( ><) ビロード=フィラデルフィア
33歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ミーナ城付近

●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
29歳 中尉
使用可能アルファベット:R
現在地:ミーナ城付近

●( ФωФ) ロマネスク=リティット
23歳 少尉
使用可能アルファベット:K
現在地:ミーナ城付近

●(´・_ゝ・`) デミタス=コーフィー
28歳 少尉
使用可能アルファベット:N
現在地:フェイト城

●\(^o^)/ オワタ=ライフ
26歳 少尉
使用可能アルファベット:L
現在地:オリンシス城
9 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:39:18.61 ID:T4wa73SK0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/ギコ
少将:ブーン/プギャー

大尉:ビロード
中尉:ベルベット
少尉:ロマネスク/デミタス/オワタ


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:
少尉:

(佐官級は存在しません)
14 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:40:08.84 ID:T4wa73SK0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:ロマネスク
L:オワタ
M:
N:デミタス
O:ヒッキー
P:アニジャ/オトジャ
Q:
R:ギコ/プギャー/ベルベット
S:ニダー
T:アルタイム
U:ブーン/ミルナ
V:ジョルジュ
W:モララー
X:
Y:ショボン
Z:

15 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:40:32.31 ID:T4wa73SK0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

---------------------------------------------------

・ヴィップ 対 オオカミ
(ミーナ城〜オオカミ城)

・ラウンジ 対 オオカミ
(ヒトヒラ城〜オオカミ城)

 

19 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:41:52.43 ID:T4wa73SK0
【第68話 : Breath】


――ヴィップ城――

 近づきつつある秋。
 終わりつつある夏。

 巡り、巡る。

(-_-)「失礼します……」

 扉を叩いて、中に入った。
 従者に出迎えられる。

 案内を断って、奥へ進んだ。
 いつしかこの部屋にも入り慣れてしまっていた。

(-_-)「……お加減は、いかがですか……?」

 寝床で窓の外を見ながら朝日を受けている、ジョルジュ。
 自分の声に、ゆっくりと反応した。

( ゚∀゚)「まぁまぁだな……」

 幾分か、やつれていた。
 光を浴びていると、ジョルジュの体に陰ができる。
 それが尚更、悲痛なものに見えてしまった。
25 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:43:36.79 ID:T4wa73SK0
 ジョルジュが倒れたのは、二十日ほど前のことだった。
 調練に参加して、城内に戻った後、突然倒れてしまったのだ。
 皆が慌てた。騒然となった。

 侍医の診察によれば、命に別状はないという。
 療養すれば普通の生活に戻れる、とのことだ。

 ただし、以前のように戦に参加できるかどうかは、分からないという。

 戦場に立ち、指揮執ることはできるかも知れない。
 しかし、もうアルファベットは振るえないのではないか。
 敵兵とぶつかることはできないのではないか。そう言われている状態だった。

 実際、ジョルジュと会って話してみると、否が応にもそう思わされた。

( ゚∀゚)「兵への影響は、大きいか?」

(-_-)「……無論です……」

( ゚∀゚)「そうか……迷惑かけるな、将校たちには」

 どこか、穏やかになったように見えた。
 あるいは、気弱になったように。

 ジョルジュらしさを失った、と感じることもあった。
 傍若無人で、不遜な振る舞い。それさえ自分は好きだった。
 唯我独尊。そうありつづけてほしい、と思っていた。

 果たして、病のせいなのだろうか。
 それとも、オオカミが危機に陥っていることが関係しているのだろうか。

26 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:45:21.20 ID:T4wa73SK0
( ゚∀゚)「……東塔はどうなった?」

 自分の考えを見透かしたようなことを、ジョルジュは言った。
 思わず、言葉に詰まってしまうような。

(-_-)「……ミーナ城を奪い……オオカミ城に迫ったようです……」

( ゚∀゚)「そうか……」

 平静を、装おうとしているのだろうか。
 それとも、平静なのだろうか。

 いずれにせよ、ジョルジュは表情を変えなかった。

(-_-)「……よろしいのですか……?」

 窓の外からは小鳥の囀りが聞こえる。
 遠来する蝉の羽音と入り混じって。

 そんな静かな音を、自分の踏み込んだ声で、掻き消した。
 後に聞こえて来たのは、次第に大きくなる自分の心音だった。

( ゚∀゚)「……何がだ?」

(-_-)「ショボン大将に……手紙を送らなくても……よろしいのですか……?」

 ジョルジュは、ショボンに何度も手紙を送っていた。
 ラウンジと不可侵条約を結んでから、何度も。
 内容は知らない。しかし、重要な手紙だったはずだ。
33 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:47:35.07 ID:T4wa73SK0
 病に倒れてからというもの、ジョルジュは全く手紙を送らなくなった。
 書く気力がないのだろうか。いや、筆を取るくらいはできるはずだ。
 何か違う理由があるはずだった。

 気になっていた。
 しかし、聞けなかった。

 オオカミと、通じているのではないか。
 ジョルジュは再三、そう疑われた。
 ヴィップに入軍したときから、ずっとだ。

 だからこそ手紙の内容が気になる、という部分もある。
 しかし、ジョルジュは西塔大将としての立場から手紙を送っている。
 その事実のほうがよほど気になるのだ。

 西塔大将として、いったいどんな言葉を向けたのかが、気になるのだ。

( ゚∀゚)「もう、いいんだ」

 静かな囀りに、かき消されそうな。
 そんな力ない声で、ジョルジュは、呟いた。

 まるで何かから、解放されたような感情を込めながら。

(-_-)「もういいんだ、とは……いったい……」

( ゚∀゚)「もういい。もう、いい。自然の流れに任せるしかねぇ」
40 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:49:52.18 ID:T4wa73SK0
(;-_-)「理解致しかねます……どのような意味なのですか……?」

( ゚∀゚)「物分かりのいいお前なら、分かるはずだ」

 そう言ってジョルジュは再び窓の外を見た。
 目を細くしながら、遠くを見ていた。

( ゚∀゚)「ちょっと眠くなってきた。下がってくれるか?」

(-_-)「……また来ます……」

 頭を下げ、寝床から遠ざかった。
 ジョルジュは目を閉じていた。

 何も、言えない。
 そして、何もできない。

 所詮、自分はその程度だ。
 ジョルジュの力になることもできない。
 思惑を、汲み取ることもできない。

 ジョルジュは、自然の流れに任せると言った。
 つまり、もう東塔に対して行動を起こすことはしないのだろう。
 無論、オオカミを助けに行くこともない。

 そして同時に、不安があった。
 流れに任せる、という言葉にだ。
49 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:51:58.14 ID:T4wa73SK0
 ジョルジュは、戦うことをやめてしまうのではないか、と思えた。
 もう四十四。決して若くはない。衰えもあるのだろう。
 先ほどのジョルジュは、闘争心など欠片も感じられなかった。

 ヴィップはまだまだ天下に遠い。
 もしこのままオオカミが滅んだとしても、まだラウンジがいる。
 カルリナの成長により、力を取り戻しつつあるラウンジが。

 戦わなければならない。
 兵たち皆が。そして、大将が。

 しかし、ジョルジュはどうするつもりなのだろうか。
 流れに任せる。それはつまり、力が戻らなければ戦をやめる。
 力が戻るようなら戦を続ける。そういった意味ではないのだろうか。

 ジョルジュの病が完治する保証はない。
 このまま満足に動けない状態が続くようなら、もう戦場に立つことはないのではないか。
 そう思ってしまった。

 自分は、ヴィップの天下のためなら戦える。
 将校として、ヴィップに生まれた男として。

 しかし、ジョルジュの許で戦いたい気持ちは、やはり強かった。

(-_-)(……ジョルジュ大将……)

 大将室から退出したあと、しばらく呆然と外を眺めていた。
 ヴィップ城屋上。これほどの高みはそうそうない。
 吹き付ける風もずいぶんと強い。
54 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:54:18.40 ID:T4wa73SK0
 朝の空気が、徐々に薄れつつあった。
 陽は時間と共に高度を上げていく。

 やがて真上に来れば、自然と皮膚から汗が出るようになる。
 秋が近づいているとは言え、まだまだ暑い日が続いていた。

(-_-)(……今日は、さほど暑くないな……)

 最近、歳を取ったせいだろうか。
 暑い日でも、昔ほど汗を掻かなくなった。

 もう五十に近い。
 年齢による衰えは、隠せなくなってきた。

 いずれは果てる。
 生あるものは皆そうだ。
 永劫留まりつづけるものなどありはしない。

 自分もジョルジュも、いつかは消え行くのだ。
 抗うことなど、できないのだ。

 そして今、そのときが、オオカミに迫っているようだった。
 それも、自然の流れなのかも知れない、と思った。
60 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:56:31.31 ID:T4wa73SK0
――オオカミ城とミーナ城の中間地点――

(´・ω・`)「敵に自由を与えるな! 行動を制限していくぞ!」

 ショボンの大声が飛ばされていた。
 干戈の音に掻き消されることなく。

 モララーが一万を率いてオオカミ城へ向かった。
 それをミルナが三万で追いかけた。

 ここに残ったのはリレント率いる二万。
 ヴィップ軍は、五万。

 早めに潰走させて、ミルナを追わなければならない。

( ^ω^)「ちょっとだけ移動するお! 徐々に包囲を狭めるんだお!」

 歩兵を動かした。
 H隊。破壊力はある。
 敵兵を押し潰すこともできる。

 オオカミは小さく固まっていた。
 乱されまいと必死だ。
 普通に攻めればなかなか打ち破れないだろう。

 しかし、同時に包囲しやすくもある形だった。

( ^ω^)(このまま徐々に押し潰すお)
64 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 02:59:10.19 ID:T4wa73SK0
 それでいいはずだ。
 相手は二万。こちらは五万。
 これでいい。これでいい。

 はずだった。

(;^ω^)「ッ!!」

 オオカミが、一気に動き出した。
 陣を星型に広げていく。

 先鋭な攻撃。
 完全に、不意を突かれた。

(;^ω^)「堪えるんだお!」

 包囲を破られてはならない。
 持ち堪えろ。我慢しろ。
 ここは、踏ん張りどころだ。

(;^ω^)「くっ……!」

 必死でアルファベットを振るった。
 Uの刃が左右に舞い、敵兵の勢いを削ぐ。
 しかし、削ぎきれない。

 オオカミは、最後の力を振り絞っているのだ。
 この攻撃に賭けている。何がなんでも、打ち破ろうとしている。
 逆に言えば、この攻撃さえ防げばオオカミを潰せる。
69 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:01:10.47 ID:T4wa73SK0
(#≠Å≠)「うらぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 アルファベットLを持った男が向かってきた。
 見覚えがある。確か、イスト=シエンタ中尉。
 しかし、以前見た男と同じに思えないほど、形相は変貌していた。

 鬼の如しだった。

(#≠Å≠)「うるぁぁ!! うるぁぁぁぁ!!」

(;^ω^)「おっ、おっ、おっ!」

 鋭い振り。
 視界に留まることを知らない。

 慌ててはならない。
 冷静に、受け止めていかなければ。
 オオカミにとっては、絶対に負けられない戦だ。だからこそだ。

 一撃、そして二撃。
 まだ、持ち堪えている。

 三撃目。
 アルファベットLが、砕けた。

(#^ω^)「おおおおぉぉぉッ!!」

 イストの胴を裂いた。
 一撃のもとに。
74 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:03:04.83 ID:T4wa73SK0
 何故か、少し笑っていた。
 それを見て、悪寒が駆け巡った。

(;^ω^)「ッ!!」

 崩れ落ちるイストの体。
 そして、後ろから現れた男。

 リレント=ターフル。
 こちらの不意を、突いてきた。

(;^ω^)「ぐっ!!」

 アルファベットNの刃が首筋を掠める。
 危なかった。反応が遅れていたら、首を持っていかれていた。
 リレントは、イストと同じような形相でアルファベットを振るっていた。

(ゝ#○_○)「死ねッ!!」

 分離されたアルファベットN。
 小刻みな攻撃。

 受け止める。
 Nなら、よほどのことがない限りは勝てる。
 それほど、互いのアルファベットに開きがある。

 しかし、思えない。
 リレントの顔を見ると、そう思えなかった。
 思わせてくれなかった。
77 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:05:49.41 ID:T4wa73SK0
 何度も何度もアルファベットを向けてくる。
 素早い。これほどの腕があったとは、知らなかった。
 それとも、死力を尽くしているからこそだろうか。

(#^ω^)「うおおおぉぉぉッ!!」

 リレントの攻撃を、思い切り弾く。
 それでもリレントは怯まない。

 連続攻撃。
 その勢いが衰えることはない。

 ひたすら防ぎつづけた。
 そして、隙を見て攻撃した。
 リレントは辛うじてUを受け止めている。

 長くはもたない。
 それはリレントも分かっているはずだ。
 抗いようがないことも。

 決死の覚悟。
 リレントは、ここで果てるつもりでアルファベットを振るっている。
 少しでも時間を稼ごうとしている。

 これが、滅亡の危機に直面した男の力か。
 あまりに重い。重すぎる。
 心が、苦しくなるほどに。
82 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:08:40.41 ID:T4wa73SK0
 それでも、打ち勝たなければならない。
 戦は、互いの潰しあいだ。どちらかが生き残り、どちらかが潰れるのだ。
 最初から、分かっていたことだ。

 しかし、胸が締めつけられる思いだった。

(ゝ;○_○)「ハァ、ハァ……」

 リレントの動きが鈍りつつある。
 当然だ。限界を超えて動きつづけていたのだ。
 本当ならとっくに倒れていてもおかしくない。

 それでも、国を想う気持ちだけで動き続けている。
 オオカミを、守りたい一心で。

 だからこそ自分は、全力で立ち向かわなければならないのだ。

(ゝ;○_○)「お……お前ら……なんかに……」

 リレントの目は、虚ろだった。

(ゝ#○_○)「お前らなんかにオオカミを渡してたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 振り下ろされる一撃。
 あまりに鈍すぎる、一撃。

 腕ごと弾いた。

 そして、リレントの体を貫いた。
89 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:11:07.15 ID:T4wa73SK0
(ゝ;○_○)「……く……そォ……ッ!!」

 崩れ行く、リレント。
 無情な光景。

 仕方がない。
 仕方がないことなのだ。
 分かっている。

 なのに、何故か視界が滲む。
 心が痛む。

 お互いに、痛みを伴う。
 知らなかった。こんなにも苦しいとは。
 国を想う気持ちに、直面してしまった。

 それでも自分はヴィップの兵士だ。
 躊躇いなく、戦わなければならないのだ。

(  ω )「……掃討したら、すぐにオオカミ城に向かうお」

 しかし、大声を出す気分にはなれなかった。



――オオカミ城付近――

 景色が線の集合になっていく。
 速度を増せば増すほどに。
102 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:13:14.88 ID:T4wa73SK0
 疲労困憊。
 全身が、重い。
 それでも、死に物狂いで駆けて来た。

(;゚д゚)「ハァ、ハァ……」

 そして、ようやく追いついた。
 先行していたヴィップ軍一万に。

 三万を率いている。
 対するヴィップ軍は僅か一万。
 いかにモララーが率いているとは言え、容易い数だ。

 ここでヴィップを打ち破れば、当分オオカミ城は安泰だ。
 いざとなったら篭ればいい。
 兵糧がなくなるまで粘ればいい。

 フィラッドがそれを認めるとは思えないが、無理にでも通すしかなかった。

(#゚д゚)「ハァァァァァッ!!!」

 敵陣に向かって行った。
 完全に背後を取っている。ヴィップは、苦しい体勢。
 このまま突き破れる。

 そう思った。

(;゚д゚)「なっ……!?」
110 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:15:22.27 ID:T4wa73SK0
 オオカミ軍の側面を突く一撃。
 バカな、もうラウンジが来たというのか。
 ありえない、そんなはずはない。

 実際、ラウンジはまだ来ていなかった。
 横からの攻めは、ヴィップ軍だった。

(;゚д゚)(オリンシス城からの援軍か……!!)

 オリンシス城には一万か二万の兵が入っていたはずだ。
 その兵が救援に来てしまったのだろう。
 これでオオカミ城付近のヴィップ軍は二万になった。

 ただの二万なら何とかなったかも知れないが、率いているのはモララーだ。
 これは、苦しい戦いになる。

(#゚д゚)「くぉっ!!」

 必死で反撃した。
 入り乱れる互いの兵。互いの攻撃。
 互いの思惑。

 こんなところで留まるわけにはいかない。
 自分には、オオカミを守る使命があるのだから。

(#゚д゚)「ふんッ!!」

 オオカミという国で生きてきた。
 そして、守り抜いてきた。
115 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:17:18.47 ID:T4wa73SK0
 これからも変わらない。
 こんなところで、終わるわけにはいかない。

 何万という兵の犠牲の上に立っているのだ。
 国が滅んでしまえば、犠牲を全て無駄にすることになってしまうのだ。

 これまでの戦いが、無駄になってしまうのだ。

(#゚д゚)「終わらせてたまるか!!」

 生きたい。
 これからも、この国で、生きてゆきたい。
 そう強く思っていた。

 アルファベットUを振って敵陣を断ち割る。
 道を抉じ開ける。
 ヴィップ軍の怯みが見て取れた。

 しかし、素直すぎる。
 これほど簡単に道を開けるとは。
 精強なヴィップ軍らしくない。

 そう思ったときには、既に遅かった。

(;゚д゚)「くっ!!」

 敵軍を抜けた先に待ち構えるD隊。
 一斉にFを放ってくる。
123 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:19:10.70 ID:T4wa73SK0
 次々と馬が倒されていく。
 オオカミ軍が、倒れていく。

 あまりに、無慈悲。

(;゚д゚)「クソォ!!」

 Fで射られた馬から飛び降り、D隊の首をいくつも刎ね飛ばした。
 D隊は完全に萎縮し、Fを放てないでいる。
 接近されれば弱いのがD隊だ。当然だった。

 次々に追い討ちをかけ、D隊を打ち破った。
 無我夢中の攻撃だった。

 それが、まずかった。

(;゚д゚)「なっ……!!」

 颯爽と駆けていく、騎馬隊。
 自分や、オオカミ軍を、視界にも入れずに。

 ヴィップ軍だ。
 あのまま、オオカミ城に直行する気だ。

 食い止めなければ。
 しかし、まだモララーがいる。
 モララー率いる二万弱の兵がいる。

( ・∀・)「さっきの一騎打ちは、受けれなくて悪かったな。
     さぁ、今度こそ戦うとしようか」
132 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:21:09.17 ID:T4wa73SK0
 皮肉っぽく笑うモララー。
 何とも最悪のタイミングで現れてくれたものだ。

 ここはやはり、受けられない。
 モララーとの一騎打ちは回避するしかない。

( ・∀・)「逃がすかよ」

 当然だった。
 敵軍の大将をみすみす見逃すわけがない。
 八卦の陣の時とは状況が違いすぎるのだ。

(#゚д゚)「くっ!!」

 モララーと、ぶつかった。
 Uのリーチを活かしてモララーを近づけないよう戦う。
 アルファベットVは上位だが、リーチに大きな差があるのだ。

 しかし、モララーは巧い。
 攻撃を的確に防ぎつつ、着実に間合いを詰めてくる。
 このままでは、Vのリーチ内に入ってしまう。

 どちらかが果てるような一騎打ちに、突入するわけにはいかない。
 もし負けるようなことがあれば、オオカミは滅んでしまうのだ。

 リレントが、大将こそ国なのだと言ってくれたように。
 自分は、生きなければならないのだ。
 戦わなければならないのだ。

(#;゚д゚)「……ッ……!?」
138 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:22:58.47 ID:T4wa73SK0
 どうやって、一騎打ちを回避するか。
 そればかりを考えていた。

 しかし、モララーの気が一瞬逸れた。
 自ら、一騎打ちを放棄してくれた。

 すぐにその場から離脱した。
 モララーは、追って来れないようだった。

 何が起きたのか、すぐには分からなかった。
 ただ必死で駆けているうちに、次第に掴めたのだ。
 本当ならもっと早く分かっているはずのことだった。

 北西にいたオオカミ軍が、こちらまで戻ってきたのだ。
 ラウンジに敗れ、多くは討ち取られたというが、生き残った兵が戻ってきてくれた。

 そのオオカミ軍が、モララーの部隊にぶつかってくれた。
 数は分からない。恐らく、一万には満たない。
 しかし、これからもまだ援軍は増えてくれるかも知れない。

 とにかく、モララーとの戦いからは抜け出せた。
 一刻も早くオオカミ城に向かうべく、馬を拾って駆け出す。

 その頃、血塗れの伝令から報告が入った。
 後背地に位置していたウタワレ城がラウンジの手に落ちたという。

 これでオオカミの持つ城は、オオカミ城のみとなってしまった。

(;゚д゚)(くそっ……!!)
145 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:24:56.20 ID:T4wa73SK0
 もはや悔やむ段階にはない。
 今は国を生き延びらせることだけを考えなければならない。

 やがて、オオカミ城の片影が見えてきた。
 まだオオカミという国は生きている。それを、実感できる。

 しかし。

 もっと、早く気付くべきだった。
 伝令がここまで来たということは、即ち。

 ラウンジも、ここまで迫っているということだ。

(;゚д゚)「ぐっ……!!」

 城を取り囲むヴィップ軍、ラウンジ軍。
 どれほどの兵がいるのか、数え切れない。
 しかし、間違いなく十万は超えている。

 打ち破れない。
 もはや、城に篭るしかない。

 時間を稼げばまだ活路はある。
 ジョルジュがいる。きっと寝返ってくれる。
 オオカミを、助けてくれる。

 だから、篭城しなければならない。
 残された兵糧はさほど多くないが、数ヶ月は耐えられるはずだ。
 マリミテ城戦のドクオのように、上手く防衛戦を行えば、きっと。
155 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:27:34.61 ID:T4wa73SK0
 城にはディアッドがいる。
 才気に満ちた次期国王がいる。
 きっと適切な判断を下してくれる。フィラッドを、説得してくれる。

 そう信じていた自分の眼に、信じられない光景が映った。

(;゚д゚)「そんな……バカな……!!」

 掲げられた旗。
 純白に、染まっている。

 フィラッド=ウルフは、白旗を振っていた。
 敵に、降伏していた。

 バカな、バカな、バカな。
 そんなはずはない。

 ここは篭城に決まっている。
 敵に降る道など、あるはずがない。

 何をやっているのだ、あの豚は。
 全身隈なく無能で、いつも動きが鈍重なくせに。
 こんなときだけは、決断が早すぎる。

 開かれる城門。
 雪崩れ込む敵軍。

 まだだ、まだオオカミは生きている。
 自分がいる。ディアッドがいる。
 そして、ジョルジュがいる。
167 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:29:20.29 ID:T4wa73SK0
 頼む、ジョルジュ。助けてくれ。
 オオカミを、救ってくれ。

 心の中の呟きが、敵軍の喚声に掻き消されていく。

(`・ι・´)「ミルナがいるぞ!! 逃がすな!!」

 アルタイムの声が聞こえた。
 はっとして、すぐに手綱を引いた。

 生きなければ。
 自分が死んでしまっては、国が終わってしまう。

 ――――いや、違う。

 もはや、帰るところもないのだ。
 寄って立つ城もないのだ。

 戦う兵はまだいる。
 しかし、戦える場所がないのだ。

 それこそが、滅――――

(#;゚д゚)「違う!!」

 まだ、オオカミは滅亡していない。
 オオカミは、生きているのだ。
176 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:31:01.15 ID:T4wa73SK0
 ジョルジュ、ジョルジュ。
 頼む、頼む。

 しかし、思った。

 こんな風に、初めから他人を当てにしていた。
 その時点で、既に負けていたのではないか、と。

 自分の力で勝とうとしなかった。
 それこそが、敗因なのではないかと。

 滅亡の、原因なのではないかと。

(; д )「……くそ……」

 先代国王。アテナット。
 リレント、フィル、ガシュー、ドラル。

 皆で創り上げてきた、オオカミは――――オオカミは――――


 ――――もう、息をしていないのだ。

 既に、終わっているのだ。
189 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:32:39.56 ID:T4wa73SK0
 それに気付いたとき。


 初めて、涙が流れた。







( ;д;)「クソオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!!!!!!!!!!」






192 :第68話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/29(水) 03:33:03.22 ID:T4wa73SK0
――526年の夏――


――南西に位置した強国・オオカミが――


――その42年の歴史に、幕を下ろした――



――大将の、悲痛な叫びと共に――
















 第68話 終わり

     〜to be continued

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