- 5 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月)
04:20:01.03 ID:+RVM0Kb90
- 〜東塔の兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
30歳 少将
使用可能アルファベット:U
現在地:ミーナ城付近
●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
40歳 大将
使用可能アルファベット:Y
現在地:ミーナ城付近
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
35歳 中将
使用可能アルファベット:W
現在地:ミーナ城付近
●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
38歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:ミーナ城付近
●( ^Д^) プギャー=アリスト
36歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:ミーナ城付近
- 8 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月)
04:21:10.88 ID:+RVM0Kb90
- ●( ><) ビロード=フィラデルフィア
33歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ミーナ城付近
●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
29歳 中尉
使用可能アルファベット:R
現在地:ミーナ城付近
●( ФωФ) ロマネスク=リティット
23歳 少尉
使用可能アルファベット:K
現在地:ミーナ城付近
●(´・_ゝ・`) デミタス=コーフィー
28歳 少尉
使用可能アルファベット:N
現在地:フェイト城
●\(^o^)/ オワタ=ライフ
26歳 少尉
使用可能アルファベット:L
現在地:オリンシス城
- 11 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:21:58.43 ID:+RVM0Kb90
- 〜東塔〜
大将:ショボン
中将:モララー/ギコ
少将:ブーン/プギャー
大尉:ビロード
中尉:ベルベット
少尉:ロマネスク/デミタス/オワタ
〜西塔〜
大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー
大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:
少尉:
(佐官級は存在しません)
- 14 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE
:2007/08/27(月) 04:22:50.29 ID:+RVM0Kb90
- A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:ロマネスク
L:オワタ
M:
N:デミタス
O:ヒッキー
P:アニジャ/オトジャ
Q:
R:ギコ/プギャー/ベルベット
S:ニダー
T:アルタイム
U:ブーン/ミルナ
V:ジョルジュ
W:モララー
X:
Y:ショボン
Z:
- 15 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE
:2007/08/27(月) 04:23:54.21 ID:+RVM0Kb90
- 一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml
(現実で現在使われているものとは異なります)
---------------------------------------------------
・ヴィップ 対 オオカミ
(フェイト城〜ミーナ城)
・ラウンジ 対 オオカミ
(アリア城〜ヒダマリ城)
- 21 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:25:24.24 ID:+RVM0Kb90
- 【第67話 : Gate】
――ミーナ城付近――
(#^ω^)「おおおおおおぉぉぉぉぉッ!!」
一振りでいくつも首が舞い上がる。
敵兵を薙ぎ倒していく。
( ^ω^)「小さく固まるんだお!」
大声を飛ばして、身を低くした。
アルファベットUを前に突き出しながら駆ける。
将校の姿は確認できない。
アルファベットIが林立しているように見える程度だ。
恐怖はない敵軍だった。
左右に振って、道をこじ開けた。
慄いた敵兵が、震えながらアルファベットを突き出してくる。
一撃で破壊して、胴を両断した。
しかし、さすがに敵は固い。
国の危機とあって、いつも以上の力を発揮しているようだ。
なかなか崩れてくれない。
小さく固まって突撃するだけでは、敵陣を乱せない。
ここは、一気に打通すべきだ、と思った。
- 25 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:26:53.16 ID:+RVM0Kb90
- 一本の槍のようになって敵陣を断ち割りに行く。
鋭く攻め立てる。敵は、受け切れていない。
抗い虚しく、崩れていく。
敵陣を断ち割った。
二つに別れて、守りが薄くなったオオカミ軍。
さらに反転してもう一撃。敵陣に被害を与える。
崩れかかったところをモララーが乱した。
そしてプギャーとギコが追撃。
それで敵は潰走した。
あまり厳しく追撃はせず、城の確保を優先した。
わずか百程度しか城内に残っておらず、降伏も一瞬だった。
城内に残された物資はほとんどない。
ミーナ城を奪取した。
オオカミの抵抗は決して手緩くなかったが、上回ることができた。
( ・∀・)「やっぱり放棄だったな。二万の兵がいるはずだったが、いつの間にか五千以下になっていた。
ミルナとリレントも居るって話だったが、結局この戦には加わってなかったしな。
偽の情報を掴ませてヴィップの消耗を誘ったってことか」
( ^ω^)「でも、オオカミの守りは固かったですお」
( ・∀・)「だな。数のわりに苦戦しちまった。さすがに必死か」
- 28 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:28:34.11 ID:+RVM0Kb90
- しかし、最終防衛ラインは近づいてきた。
こことオオカミ城の中間地点。
もう、さほど遠くない。
(´・ω・`)「みんな、よくやってくれた。見事な勝利だった」
ショボンはずっと、後方でのみ戦を指揮していた。
アルファベットは振るっていない。
最近、疲れているように見えた。
これほどの作戦の実行。そしてジョルジュからの手紙。
疲労があって当然なのだ。
だから今回のミーナ城戦は休ませたい、というのが将校たちの思いだったのだ。
そして実際、ショボンはアルファベットを振るわずに済んだ。
( ・∀・)「しかし、次からが本番ですね」
モララーが南を見ながら言った。
およそ百里ほど先に、オオカミは五万以上の兵を置いて待っている。
こちらの兵数は六万。
ほぼ同数に近い。
しかも、ミルナがいる。リレントもいる。
さすがに次は、ショボンを休ませながら戦うわけにはいかないだろう。
こちらも死力を尽くす必要がある。
(´・ω・`)「軍議室に行こう。作戦を練らんとな」
- 31 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:30:24.86 ID:+RVM0Kb90
- そう言ったショボンの表情は、やはりまだ疲れているように見えた。
ジョルジュからの伝令は、自分が知っているだけでも三回来ている。
その全てにショボンは丁寧な対応をしているようだった。
しかしショボンは、何も話してくれなかった。
一人で全てを抱え込まれていた。
少しでも分けて欲しい、と思う。
だが、できない。ショボンが、望んでいない。
だからせめて、戦ではショボンの負担を軽減させてやりたいのだ。
次の戦はショボンもアルファベットを振るう。しかし、機会を減らしてやることはできる。
自分たち将校が頑張れば、必ず。
将校全員で軍議室に向かった。
先頭を、ショボンと並び歩く。
それぞれの将校は、それぞれの会話を交わしている。
(´・ω・`)「実はな、ブーン」
他の将校たちと、同じように。
ショボンも何気なく、自分に話しかけてきた。
しかし、声のトーンは低かった。
( ^ω^)「なんですかお?」
- 34 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:32:13.99 ID:+RVM0Kb90
- (´・ω・`)「ジョルジュ大将が、また病を得たらしい」
(;^ω^)「ッ!?」
ジョルジュが、病。
以前、療養のため一時的に東塔の中に入っていたのは記憶に新しい。
あのとき以来だ。
(;^ω^)「手紙に書かれてたんですかお?」
(´・ω・`)「いや、噂で聞いた。突然倒れたそうだ。
今は意識を取り戻しているらしいが」
(;^ω^)「ご無事なんですかお?」
(´・ω・`)「命に別状はないらしい。だが、とても戦に出れる状態ではないようだ」
元より、今の西塔には攻める場所がない。
ヴィップはラウンジと不可侵条約を結んでいるからだ。
ちゃんとアラマキ皇帝の認可も受けている。
しかし、このタイミングで病に倒れてしまうとは。
心労だろうか。過労だろうか。
オオカミのことを憂えたのだろうか。
ジョルジュはヴィップの大将だ。
ヴィップのことを想っているはずだ。
しかし、元オオカミの将であることを思い出さずにはいられない。
- 37 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:34:06.12 ID:+RVM0Kb90
- (´・ω・`)「あまりこういう言い方をしたくはないが――――攻めるなら、今のうちだ」
そしてやはりショボンも、同じ不安を抱えている。
同じことを思い出している。
それは、ジョルジュの手紙を受けていることもあるのだろう。
あの手紙には、戦をやめるよう書かれているはずだからだ。
(´・ω・`)「早めに決着をつけたい。少しでも早いほうがいい」
( ^ω^)「……はいですお」
(´・ω・`)「お前たちにはもう少しの間、頑張ってもらわねばならんな」
( ^ω^)「どれだけでも頑張りますお。ショボン大将の命なら」
(´・ω・`)「ありがとう。さぁ、軍議といこうか」
軍議室、と書かれた部屋の扉を開く。
中には窓がなく、テーブルも暗い色のため、ほとんど何も見えない状態だ。
すぐに明かりを持ってくるよう、ショボンの指示が下った。
――ヒダマリ城付近――
〔;´_y`〕(くっ……)
はるかに遠い。
遠すぎる。
- 44 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:36:03.08 ID:+RVM0Kb90
- 想定していないわけではなかったのに。
油断していた。裏をかかれた。
〔;´_y`〕(まさかコードギアス城からとは……)
唇を噛んだ。
ラウンジは、アリア城に大軍を集めていた。
船も同じく。どう見ても、ヒダマリ城狙いだった。
間者からもそう報告が入っていた。
しかし、ラウンジはコードギアス城から攻め込んできた。
一気に川を渡り、ネギマ城を落としてきたのだ。
|;`゚ -゚|「ヒトヒラ城へ行くしかありません」
いつも冷静なフィルさえ、焦燥感を隠せないようだった。
確かにこの位置はまずい。
南のネギマ城が落とされ、ヒダマリ城は完全に孤立している。
ラウンジが包囲体勢を整える前に、逃げるべきだった。
〔;´_y`〕「水軍にもすぐ引き返すよう指示するんだ」
| `゚ -゚|「はい」
ヒトヒラ城に行き、野戦を行うしかない。
篭城するだけの兵糧はない。
- 47 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:38:04.08 ID:+RVM0Kb90
- 元より、ヒダマリ城とネギマ城は放棄するつもりだった。
維持できるほどの兵糧がないからだ。
しかし、せめて水軍で苦しめ、敵の体力を少しでも削ろう、と思っていた。
コードギアス城のことを、警戒していなかったわけではない。
ないのだが、自然とアリア城に目が向いていた。
いや、向けさせられていた。
ラウンジに、やられてしまったのだ。
兵数ではラウンジが優位に立っている。だからこそ、堂々と戦ってくると思っていた。
油断していた。
〔;´_y`〕(申し訳ありません、ミルナ大将……)
すぐに二万の兵を進発させた。
水軍の一万五千も入っている。しかし、馬が足りない。
ラウンジに先回りされれば、進路を塞がれるのは避けられない。
必死で駆けた。
ヒトヒラ城は決して近くない。数日はかかる。
素早く放棄を決断したことで、ラウンジがヒダマリ城の確保を優先してくれればいいが、どうなるかは分からない。
〔;´_y`〕(カルリナの策だろうな……さすがに鋭い……)
コードギアス城に入っている兵は、さほど多くなかったはずだ。
水軍の数も。
しかし、それ以上にネギマ城の兵は少なかった。
- 50 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:40:14.85 ID:+RVM0Kb90
- 突然攻められたネギマ城は、降伏するしかなかっただろう。
それは仕方のないことだ。
問題は、その作戦の対策を考えられなかった中将にある。
〔´_y`〕「……フィル、コードギアス城からの攻めを予測できていたか?」
| `゚ -゚|「まったく考えなかったわけではありませんが……油断していました」
並走しているフィルが俯いた。
やはりフィルも、同じだったようだ。
油断があったのだ。
| `゚ -゚|「コードギアス城からならフェイト城を攻めるのが普通です。
しかし、フェイト城は既にヴィップの手に落ちました。
だからコードギアス城からは何の攻めもないだろう、と思っていたのです」
〔´_y`〕「……同じだ」
| `゚ -゚|「間者の情報を信じすぎてしまいましたね……」
複数紛れ込ませた間者は、いずれもヒダマリ城攻めだと言って来た。
コードギアス城など存在しないかのごとく、話題に出なかったのだ。
ラウンジに上手く情報操作されてしまったのだろう。
〔´_y`〕「……とにかくヒトヒラ城を守り抜かねばな……」
| `゚ -゚|「はい。そこで野戦を行うよりほかありません」
野戦好きのフィルでなくても、そう思う状況だった。
城には篭れない。野戦で打ち勝つしかない。
- 54 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:42:10.32 ID:+RVM0Kb90
- しかし、ラウンジ軍は十四万。
対するオオカミ軍、六万。
抗いようがない数だ。
〔´_y`〕(……ミルナ大将……)
ミルナには、策があるらしい。
自分たち中将にさえ教えてくれなかったが、ミルナはその策に賭けているようだった。
よほどの策なのだろう、と思った。
〔´_y`〕(……ジョルジュ=ラダビノードだろうか……)
ミルナとジョルジュは、オオカミで同期だったという。
入軍する前から親しく、共に過ごした仲だったと以前教えてくれた。
ジョルジュがオオカミを捨てヴィップに寝返ったのは周知の事実だ。
しかし、ミルナは一度もジョルジュのことを悪く言っていない。
それには昔から違和感を持っていた。
ジョルジュが、オオカミに再び寝返ってくる可能性。
ないとは言い切れない。ジョルジュは、ヴィップで一度もオオカミと戦っていないからだ。
考えようによっては、再びオオカミに寝返るその日のためにヴィップに伏しているとも取れる。
そして、何より。
自分には、ジョルジュがオオカミに通じていると思える出来事があった。
今でもよく覚えている。
シャッフル城戦。大事な兵糧が、多く燃やされたとき。
フィルが、中将のなかに裏切り者がいるかも知れないと言った。
- 58 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:44:48.77 ID:+RVM0Kb90
- 心当たりがあった。
しかし、誰にも言い出せなかった。
だからジョルジュに手紙を送ったのだ。
他の誰も信頼できなくなってしまったからだ。
愚かしいことだった、と思う。
もしジョルジュが完全にヴィップに染まっていたら、手紙を公開されていたかも知れないのだ。
切羽詰っていたため、浅はかな行動に出てしまった。
しかし、ジョルジュは手紙を返してくれた。
ミルナに全て話せ、と言ってくれた。
そんなものは、オオカミと通じている証拠にはならない。
ジョルジュはただ、全て話せと言っただけだ。
だが、もしかしたらと思うには充分だった。
結局、ミルナには言えなかった。
ドラルが途中で話しかけてきて、言えなくなってしまったのだ。
ドラルは裏切り者ではない。あのタイミングで話しかけてきたことに理由はなかっただろう。
いつも通り、ただ何となくミルナに話しかけただけだ。
だがそれによって、自分はミルナに話すタイミングを完全に失ってしまった。
やはり、言うのが怖かったからだ。
何故黙っていたんだ、と怒られたくなかったからだ。
"裏切り者"は、フィルでもリレントでも、自分でもない。
無論、ミルナでもない。
裏切り者は、裏切り者は――――。
- 65 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:47:12.95 ID:+RVM0Kb90
- | `゚ -゚|「ガシュー中将、泥濘があります。ご留意を」
〔´_y`〕「……あぁ、すまない……」
手綱を引いて馬体を操り、泥濘を回避した。
そしてフィルの声で我に返り、過去へと思考が逸れてしまったことを自覚した。
今はこの戦のことを心配すべきだ。
ミルナの策は、ジョルジュの裏切りだろうか。
そうだとしたら、ヴィップ方面は安泰だ。間違いなく勝てる。
しかし、それ以外オオカミには何もない。
特にラウンジ方面は、本当に打つ手がないのだ。
十四万もの兵を相手にして、勝てるとは思えない。
せいぜい時間を稼ぐくらいしかできないのだ。
いずれはオオカミ城に迫られる。
ミルナの策は、間に合うのだろうか。
信頼している。あの人のことは、心から。
自分が知る限りでは、最高の大将だ。
ミルナの策が成ると信じて、戦うしかないのだ。
〔´_y`〕「……フィル……」
| `゚ -゚|「はい」
- 75 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:50:24.45 ID:+RVM0Kb90
- フィルとは長い付き合いだが、あまり会話をする間柄ではなかった。
戦で組むことこそ多かったが、決して仲が良かったわけではない。
義務的な言葉が二人の間にあることがほとんどだった。
フィルは、よく分からないやつだった。
間違いなく自分より戦は上手い。特に野戦ではミルナに比肩する。
時に嗜虐性を見せるが、それでも軍人としては申し分なかった。
しかし、掴みどころがないように思える性格なのだ。
淡々としている。常に勝利を考えている。
その程度しか、自分には分からない。
ただ、この戦を何とか切り抜けようとしている。
オオカミを、守ろうとしている。
それだけは分かっていた。
〔´_y`〕「何とかして、ラウンジを退けよう。
オオカミをこんなところで終わらせるわけにはいかない。
これから繁栄させなければならない国だからだ」
| `゚ -゚|「無論です」
フィルの返答は力強く、また、頼もしかった。
――ミーナ城とオオカミ城の中間地点――
準備万端。
陣構えを見るだけでそう思えた。
- 81 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:52:19.55 ID:+RVM0Kb90
- オオカミが、複雑な陣を敷いてきたからだ。
(´・ω・`)「八卦の陣か……なるほど」
何も知らなければ、何と下手な陣立てだ、と思うだろう。
一見した限りでは、ただのいびつな陣なのだ。
しかし、さすがに兵たちも感じている。
ただの下手な陣ではない、と。
オオカミは何かをやろうとしている、と。
攻め込みがたい空気を、陣全体が持っているのだ。
(;^ω^)(……あれを破るのは難しいお……)
八卦の陣は、休・生・傷・杜・景・死・驚・開の八門からなる陣だ。
敵陣に入り込み、門を攻めることによって、打ち勝つことができる。
そのうち、生・景・開を攻めれば陣を破ることができる、とされている。
しかし傷・休・驚だと攻め込ませた部隊は痛手を負う。
杜・死に至っては部隊が全滅する、と言われているのだ。
実際にこの陣での戦いを見たことがないため、あくまで本で得た知識だ。
それにしても見事な陣だった。
若干の寡兵であるオオカミが、陣立てだけでヴィップを圧倒しているのだ。
それだけの威圧感があるのだ。
恐らく、ミルナとリレントが上手く力を合わせたからだろう。
奇策を用いるリレント、戦に関しては全土でも屈指の力を持つミルナ。
二人が協力すれば、これほどの陣を構えることも可能になるのだろう。
- 87 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:54:35.28 ID:+RVM0Kb90
- (;^ω^)(やっぱり、オオカミは必死だお……)
簡単には打ち破れそうもない。
果たして、どのような方策を取るべきか。
(´・ω・`)「モララー、どう見る?」
( ・∀・)「そーですねぇ……難しいところです」
(´・ω・`)「どれが生・景・開か、だいたいの予測はつくんだがな」
( ・∀・)「同じです。ただ、安易に攻め込めない怖さがあります」
やはり、モララーも同じことを感じているようだった。
ショボンが唸りながら敵陣を見つめている。
口を開けてヴィップの攻撃を待つ敵陣を。
(´・ω・`)「……とりあえず攻めてみるか。敵は、四万五千を八卦の陣に使っているな」
( ・∀・)「だったらこっちは三万くらいですか」
(´・ω・`)「俺は生門から景門へ抜ける。モララー、お前は開門から生門へ」
( ・∀・)「見立てが当たってりゃ打ち破れますね」
(´・ω・`)「絶対に躊躇うなよ。迷わず進め」
( ・∀・)「もちろんです」
- 93 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:57:07.08 ID:+RVM0Kb90
- (´・ω・`)「ギコ、ブーン。お前たち二人が残りを指揮するんだ。
状況を見て適切な判断を下してくれ」
ギコと同時に頷く。
ショボンとモララーはすぐに編成を整えた。
機動力のある騎馬隊が主だ。
広大な原野での戦いだが、敵を避けてオオカミ城に向かうわけにはいかない。
必ず背後を突かれてしまう。
ここはやはり、八卦の陣を打ち破ってオオカミ城に進軍するしかないのだ。
(´・ω・`)「いくぞ」
( ・∀・)「はい」
馬に跨って、颯爽とアルファベットを掲げるショボン。
モララーは別地点から敵陣に接近する。
二人の率いる騎馬隊が、駆け出した。
揺れる大地、鳴り響く重低音。
双眸を光らせる、八卦の陣。
(;^ω^)「ッ……!!」
消えた。
ショボンとモララーが、中に入り込んでいった。
あのまま飲み込まれてしまえば負け。
しかし、内部から打ち崩せば勝ち。
- 100 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 04:59:04.01 ID:+RVM0Kb90
- 難しい陣だ。
しかし、攻め込んだのは東塔が誇る猛将、ショボン=ルージアルとモララー=アブレイユ。
きっとやってくれる。敵陣を、打ち砕いてくれる。
声が聞こえる。
オオカミ軍が、必死に怒号を飛ばしている。
入り込んでいったヴィップ軍の動きは、ほとんど掴めなかった。
(,,゚Д゚)「ブーン、お前はこの八卦の陣、どこが活路だと思う?」
遠くを見るような目のまま、ギコは言った。
必死で戦況を把握しようとしているのだろう。
( ^ω^)「……難しいですお……でも多分、あれとあれとあれかなと……」
三点を指差した。
馬上からでは上手く示しにくいが、ギコは頷いている。
同じ考えだったようだ。
(,,゚Д゚)「しかし、見てるだけでイヤになる陣だな……よくこんな陣を、大事な局面で……」
( ^ω^)「きっと大事な局面だからこそですお……」
(,,゚Д゚)「あぁ……しかし、まさか八卦の陣とは……」
敵の陣を打ち崩し、抜け出すことができたら、オオカミ戦の勝利が一気に近づく。
八卦の陣は複雑であるがゆえに、立て直すのが難しい。
オオカミ軍を崩壊させることも可能なはずだ。
- 106 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 05:01:02.85 ID:+RVM0Kb90
- ( ^ω^)(……ん……?)
不意に、眠りから醒めた。
動き出した。
そんな気がした。
(;^ω^)(……八卦の陣が……)
身を捩じらせるようにして、少しずつ、形を変えていた。
その口から、大量の涎を垂らしたままに。
――八卦の陣・中――
( ・∀・)(誘ってんのか……? 乗るわけにはいかねーな)
どうぞお通りください、と言わんばかりに道が開いている。
杜や死の門へ導くつもりだろう。
ならば、強引に突っ切るしかない。
( ・∀・)「どけ」
アルファベットVを振るった。
敵兵を薙ぎ倒す。首を飛ばしていく。
しかし、抵抗は激しい。
この抵抗は、すなわち破られたくないということでもあるのだろう。
自分の見立て通り、生の門はこの先にあるようだ。
- 110 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 05:03:01.14 ID:+RVM0Kb90
- ( ・∀・)(よし……)
騎馬隊を左右に振った。
敵を惑わす。掻き乱す。
崩していく。
しかし、やはりオオカミは必死だった。
( ゚д゚)「手合わせ願おうか」
ミルナ=クォッチ。
こちらに、向かってくる。
ミルナを討ち取れれば、実質オオカミに勝ったも同然だ。
ここはミルナを討ち取ることに集中すべきだろう。
だろう、と、思うのだが。
何か、違和感がある。
( ・∀・)(……ッ……?)
敵陣が、変化を見せている。
動いている。
門の位置を変えるつもりか。
( ・∀・)(なるほど……ミルナは自ら囮になったってわけか……)
ミルナが攻撃を引きつけている間に、陣を動かし、ヴィップ軍を壊滅させる気だろう。
上手い戦い方だ。
- 116 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 05:05:17.49 ID:+RVM0Kb90
- 八卦の陣のような特殊なものを、用いてきた。
これは恐らくリレントの提案だろう。
いかにも奇策好きらしい陣だ。
ただし、いつもの無鉄砲さはない。
適した位置に、適した陣を敷いてきた、という形だ。
今更ながら、成長が伺えた。
陣立てさえ完璧なら、あとは戦巧者のミルナがいる。
常に適切な判断を下し、戦を操ることのできるミルナが。
二人の力が、上手く合致したということだろう。
(#゚д゚)「どこへゆく気だ、モララー」
ミルナの誘いを、受けるわけにはいかなかった。
一騎打ちでミルナに勝てないとは思わない。しかし、確証もない。
ここはやはり、八卦の陣を破ることに専念すべきだろう。
( ・∀・)(しかしまずいな……このまま放置すると門の位置が分からなくなる……)
どうにかして、敵の動きを食い止める必要がある。
しかし、内部からでは難しい。
( ・∀・)(……ブーン、ギコ中将……)
あの二人が上手くやってくれれば。
それを願うしかなかった。
- 121 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 05:07:24.36 ID:+RVM0Kb90
- ――八卦の陣・外――
(;^ω^)「ギコ中将!」
(,,゚Д゚)「分かってる、行こう」
歩兵隊を率いて、すぐに動き出した。
オオカミは、八卦の陣を動かすつもりだ。
それを、阻止しなければならない。
(,,゚Д゚)「俺は西に向かう。お前は東に」
(;^ω^)「南からの動きに注意してくださいお。八卦の陣に加わっていない遊軍がいますお」
(,,゚Д゚)「あぁ、もちろんだ」
ギコと二手に別れた。
八卦の陣の東へ進む。
しかし、いったいどうすればいいのか。
中に入り込むことはできない。意味がない。
だが外から攻撃しても陣の動きを止めることはできない。
もたもたしていると遊軍に迫られる。
指揮官には迅速な判断が求められるのだ。
- 131 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 05:10:00.19 ID:+RVM0Kb90
- 急げ。
動きを、止めるために。
何が必要か。
この戦に、勝つために。
( ^ω^)「――――ッ!!」
そうだ、何も難しく考える必要はない。
八卦の陣といえど、所詮は兵の塊だ。
いつも通りやればいい。
( ^ω^)「ベルベット! 兵を先導して北に向かうんだお!
ブーンは南に行くお!」
( <●><●>)「どうなさるおつもりですか?」
( ^ω^)「押し包むようにして圧力をかけるんだお!」
いつもの無表情さを保ったまま、しかし力強く頷き、ベルベットは背を向けた。
自分もすぐに駆け出す。
歩兵隊を広げ、敵を包囲する。
どうやらギコも向こうで同じ手段に出たようだ。
八卦の陣は、例え押し包まれても動けない。
動いてはならないのだ。陣が、崩れてしまうから。
だからこうやって圧力をかけてやればいい。
- 136 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 05:12:03.62 ID:+RVM0Kb90
- 相手が動きを止めれば、こちらも動きを止める。
動けば押し潰される。
オオカミがそう思ってくれればいい。
やがて、オオカミの動きは止まった。
圧力に耐え切れなくなったようだ。
だが、長くはもたない。
オオカミの遊軍が迫っているからだ。
早く、八卦の陣を破ってくれ。
そう願った。
(;^ω^)(うっ……!)
遊軍の動きが早い。
今にも攻撃せんとして迫ってくる。
ヴィップもオオカミも、お互いに苦しい状況になっていた。
――八卦の陣・中――
(;゚д゚)(圧力をかけられたか……これでは動けんな……)
かなり際どくなってきた。
恐らく遊軍は包囲陣を攻撃しているだろう。
しかし、ヴィップはしばらく持ち堪えるはずだ。
- 144 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 05:14:24.38 ID:+RVM0Kb90
- それまでに、ショボンとモララーを潰したい。
上手く杜か死の門に導きたい。
だが、相手が手強すぎる。
東塔のショボンとモララーといえば、どの国でも大将になれる武人だ。
どこがどの門かくらい、既に見抜いているはずだった。
包囲陣を除去すれば、八卦の陣を動かせる。
圧力を受けているうちは無理だが、包囲さえ乱れれば。
遊軍が上手く攻めてくれることを願うしかなかった。
(;゚д゚)「くっ……」
どうやら外はギコとブーンにやられているようだ。
ショボンとモララーに次ぐ将たち。うらやましい限りだ。
あれほどの人材が、オオカミにもいれば。
今更ないものねだりをしたところで、どうしようもなかった。
(;゚д゚)「ッ!!」
不意に、八卦の陣が大きく揺れた。
いや、揺れたどころではない。崩れていく。
八卦の陣が、内部から。
ショボンが景の門を攻め、打ち破ったようだ。
外に抜け出している。
- 151 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 05:17:32.67 ID:+RVM0Kb90
- やがてモララーも生の門を破った。
二人とも、生き延びた。
生き延びられてしまった。
(;゚д゚)「陣を立て直すぞ! すぐに固まるんだ!」
八卦の陣は複雑な構成になっているため、普通の陣に戻るのは難しい。
その間に行われるヴィップの動きを、食い止めることはできない。
ヴィップは、ここでもう一度打撃を与えていくつもりのようだ。
何度も動かした軍を再編しようとしている。
いや、一部はオオカミ城に向かうつもりだ。
本城を、攻めようとしている。
そして、最悪の報せが舞い込んできた。
(;゚д゚)「バカな……!! もう落とされたのか……!?」
ヒトヒラ城、陥落。
抵抗虚しく、城内の兵は降伏してしまったという。
ラウンジは瞬く間に三つの城を落としてきた。
あと一ヶ月は持ち堪えてくれると思っていた。
そう計算していた。
しかし、野戦で大軍に抗い切れず、打ち破られたという。
カルリナの先鋭な戦術と、ファルロの猛攻。
それをアルタイムが上手く纏め上げた攻めだったらしい。
- 157 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 05:19:36.12 ID:+RVM0Kb90
- フィルとガシューの生死は、不明だった。
(;゚д゚)(くそッ……!!)
ラウンジは二手に別れた。
一万をヒトヒラ城に残し、六万をウタワレ城へ。
そして七万を、オオカミ城へ向けたというのだ。
もはや一刻の猶予もない。
早くオオカミ城に向かって、攻撃を阻止しなければ。
(ゝ○_○)「ミルナ大将、ここはお任せください」
汗と血に塗れたリレントが、手綱を絞っていた。
具足は返り血に濡れ、泥と混じって汚れている。
ヴィップも一万ほどをオオカミ城に向かわせている。
そしてラウンジの七万。合計、八万。
しかもこれは、今後まだまだ増えていく。
早めに手を打たなければならない。
分かっている。しかし、しかし――――。
(;゚д゚)「……ここに残るということは……全滅を覚悟する必要があるぞ」
自分が三万を率いていった場合、ここに残るオオカミ軍は二万。
しかしヴィップは五万を残している。
- 163 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 05:21:29.13 ID:+RVM0Kb90
- 恐らく、ヴィップ軍もまだ増える。
ラウンジの救援も来ることだろう。
死を、覚悟しなければならないのだ。
(;゚д゚)「リレント、ここは俺が」
(ゝ○_○)「あなたを失うことこそ、オオカミの滅亡です」
オオカミの陣は、立ち直っている。
しかしそれ以上に、ヴィップの陣は万全だ。
(ゝ○_○)「ミルナ大将さえいれば、オオカミは戦えます。
あなたこそがオオカミなのです。国なのです。
私はやっと、それに気付けました」
リレントは、笑っていた。
今までのような不快な笑みではない。自然と出たであろう、笑顔。
心が、締め付けられるような。
(ゝ○_○)「行ってください。命にかえても、ヴィップ軍を食い止めてみせます」
(;゚д゚)「リレント……!!」
(ゝ○_○)「どうか、お元気で」
最後まで、笑っていた。
何もかも、覚悟の上で。
- 168 :第67話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/27(月) 05:23:29.24 ID:+RVM0Kb90
- すまない。
そう呟いた。
声になったかどうか、分からなかった。
振り向かずに、駆けた。
もう時間はない。滅亡が、そこまで迫っている。
このままでは、どうしようもない。
ジョルジュ。
頼む、動いてくれ。
もうお前しかいない。オオカミを救えるのは、お前しかいないんだ。
頼む。
何度も何度も、呟いた。
第67話 終わり
〜to be continued
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