2 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:06:35.45 ID:UiYaAe9r0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
30歳 少将
使用可能アルファベット:U
現在地:フェイト城付近

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
40歳 大将
使用可能アルファベット:Y
現在地:フェイト城付近

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
35歳 中将
使用可能アルファベット:W
現在地:フェイト城付近

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
38歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:フェイト城付近

●( ^Д^) プギャー=アリスト
36歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:フェイト城付近
7 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:08:32.67 ID:UiYaAe9r0
●( ><) ビロード=フィラデルフィア
33歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:フェイト城付近

●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
29歳 中尉
使用可能アルファベット:R
現在地:フェイト城付近

●( ФωФ) ロマネスク=リティット
23歳 少尉
使用可能アルファベット:K
現在地:フェイト城付近

●(´・_ゝ・`) デミタス=コーフィー
28歳 少尉
使用可能アルファベット:N
現在地:シャッフル城

●\(^o^)/ オワタ=ライフ
26歳 少尉
使用可能アルファベット:L
現在地:オリンシス城
9 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:09:01.63 ID:UiYaAe9r0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/ギコ
少将:ブーン/プギャー

大尉:ビロード
中尉:ベルベット
少尉:ロマネスク/デミタス/オワタ


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:
少尉:

(佐官級は存在しません)
12 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:09:48.89 ID:UiYaAe9r0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:ロマネスク
L:オワタ
M:
N:デミタス
O:ヒッキー
P:アニジャ/オトジャ
Q:
R:ギコ/プギャー/ベルベット
S:ニダー
T:アルタイム
U:ブーン/ミルナ
V:ジョルジュ
W:モララー
X:
Y:ショボン
Z:
15 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:10:42.29 ID:UiYaAe9r0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

---------------------------------------------------

・ヴィップ 対 オオカミ
(シャッフル城〜フェイト城)

・ラウンジ 対 オオカミ
(アリア城〜ヒダマリ城)

 

22 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:12:19.13 ID:UiYaAe9r0
【第66話 : Fate】


――フェイト城付近――

 攻め込めなかった。

 シャッフル城からの六万の軍。
 フェイト城を狙うために進軍した。

 しかし、どう見てもフェイト城は、蛻の殻だった。

(´・ω・`)「どうしたものかな……」

 ショボンが唸っていた。
 合流し、攻撃軍に加わったモララーも首を捻っている。

( ・∀・)「順当に考えれば放棄でしょうが、空城の計の可能性もありますね」

(´・ω・`)「占拠した途端、罠にかけられるかも知れんな」

 オオカミは兵糧に苦しんでいるはずだ。
 モララーの言う通り、普通に考えればフェイト城を放棄しているのだろう。
 だが、高を括って城内に入り込んでしまうと、放棄でなかったときの被害が大きい。

 オオカミはかなり逼迫した状態だ。
 少しでもヴィップの力を削ごうとしてくるはずだった。

( ^ω^)(……うーん……)
28 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:14:10.02 ID:UiYaAe9r0
 フェイト城内に、恐らく大軍はいない。
 いてもせいぜい一万。まともに戦えば圧勝できる数だ。
 しかし、どんな形で待ち構えているか分からない。

 もしかしたら一兵もいないかも知れない。
 しかし、城門を開けっ放しにしてある、という事実がヴィップを惑わしているのだ。
 あえて開けている、ということが。

( ^ω^)「……やっぱり、少しずつ兵を入れて、敵の罠に備えるべきだと思いますお」

 顎に手を当てているショボンに言った。
 モララーは櫓から城内を見るために移動している。

( ^ω^)「門を閉ざされないように警戒しながら城内に入り、壁際を伝って慎重に進む……。
      火計に備えて水を持たせておけば、ほとんどの事態には対応できると思いますお」

(´・ω・`)「……そうだな……そうしようか」

 櫓からモララーが戻ってきたが、やはり城内に人影は見えないという。
 人がいる気配は全く感じない、というのだ。やはりオオカミ兵は居ないのだろうか。
 しかし、警戒して城内に入る必要がある。

 水を背負わせた兵が、慎重に城門を潜った。
 城門周りに敵兵がいないことは分かっている。それでも、慎重にだ。
 常に最悪の事態を想定する必要があるのだ。

( ^ω^)「……行ってきますお」
35 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:16:01.58 ID:UiYaAe9r0
 数百の兵が中に入ったところで、将校としては最初に自分がフェイト城に入城した。
 不思議な模様のついた城門を潜り、アルファベットを構えながら進む。
 やはり、人がいる気配はない。

 辺りを見回してみたが、火のつきそうなものも特になかった。
 というよりは、物がほとんどない。全て持ち出された、という感じだ。
 隣城に移したのだろうか。

 ここまで見る限りでは、やはり放棄だと思える。
 フェイト城まで兵站を維持するのは難しいため、放棄したのだ、と。

 ――――しかし――――。

( ^ω^)(……それこそがオオカミの狙いなのかも知れないお……)

 放棄だと思わせ、中に進ませ、一網打尽にするつもりなのかも知れない。
 油断はできない。

 疑いすぎるくらいでちょうどいいのだ。
 相手は存亡の危機に瀕しているオオカミ。一筋縄でいくはずがない。
 生き残るために、ありとあらゆる手を打ってくるはずだ。

 庭を通り抜けて、いよいよ屋内への扉の前に辿り着いた。
 普通に歩けばすぐの距離だが、慎重に進んだため時間がかかった。
 しかし、それでいいはずだった。

 先行させた数百の兵には、屋内への扉の前で待機するよう命じてあった。
 周りを見張りながら扉を固め、自分の到着を待ってくれていた。
 礼を言って、扉に近づく。
43 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:18:20.66 ID:UiYaAe9r0
( ^ω^)(……ん……?)

 扉の取っ手に、手をかけようとした。
 いや、かけた。そのときは、何の違和感もなかった。

 おかしい、と感じたのは、手ではなかった。
 耳だった。

(;^ω^)「…………」

 耳を欹てた。
 扉にくっつけ、中からの音を確かめる。

 何かが這いずり回るような音。
 悪寒が全身を駆け巡った。

(;^ω^)「……ショボン大将に伝令」

 一番近くにいた兵に、言った。
 きょとんとした顔をしていた。

 何故伝令なのか、分からなかったのだろう。
 当然だった。このタイミングで伝令することなど、普通はない。

 しかし、このまま城には入れないのだ。

(;^ω^)「中に兵はいないお。一人もいないはずだお。
      だから、火とか石とか、とにかく色々いっぱい必要だお」
49 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:20:24.15 ID:UiYaAe9r0
 何故ですか、と声が返ってくる。
 しかし、あまり答えたくない理由だった。
 今後のことを思うと、憂鬱だった。

(;^ω^)「多分、中にいっぱい虫がいるお……」

 伝令を頼んだ兵が、鳥肌を立てていた。



――三日後――

――フェイト城――

(´・ω・`)「まったく……地味なことをするもんだ」

 城外で、ミーナ城攻めの準備を整えていた。
 兵たちが慌しく動き、城内と城外を行き来している。

 城内の虫の除去に、三日も時間をかけさせられた。
 小規模に燃やしたり、石を落として潰したり。
 アルファベットで地味に殺したりもした。

 三日かけてようやく、普通に生活できるレベルになった。
 誰もいないと思ったら、まさかこんな地味な抵抗を見せてくるとは。
 少しでも抵抗しようと必死なのだろう。
56 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:22:24.10 ID:UiYaAe9r0
(;^ω^)「ほんと、大変でしたお……」

(´・ω・`)「少しでも時間を稼ごうとしているな。
      遠征している俺たちは長引けば長引くほど体力が失われる、と見たんだろう」

 確かにそうだ。
 ヴィップ城から遠く離れ、敵地で戦を行っている。
 兵站は伸びに伸びている。

 兵糧の消耗は激しい。
 兵站を維持するのも難しくなってくる。

( ^ω^)(……でも……)

 オオカミが時間を稼ぐ理由は、果たしてそれだけなのだろうか。

 ヴィップは兵糧に不安があるとは言え、あと一年ほどなら、よほどのことがない限りは保つ。
 だが、今のオオカミに一年を戦う力はない、と言われている。

 オオカミに兵糧の当てがある、という可能性もある。
 あえて秘匿し、ヴィップの油断を誘い、兵糧を潰すという作戦。
 しかし、もし本当に兵糧があるなら、オオカミはフェイト城を放棄しなくても良かったはずなのだ。

 恐らくオオカミに兵糧はない。
 となると、ヴィップの兵糧面を潰す意味もない。
 本気で兵站を乱しに来れば、その隙にオオカミ城を落とすくらいの余裕はあるのだ。

 つまり、オオカミは何か別の狙いを持っている可能性がある。
 それが何かは分からない。見当もつかない。
59 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:24:40.11 ID:UiYaAe9r0
 フェイト城に虫を放っておいたのは、少しでも準備を整えるため、という簡単な理由もありえる。
 時間は稼いでおくに越したことはないのだ。
 だから、オオカミの行動は、ごく自然なのだ。

 筋道立てて考えるとそうなるが、どうにも引っかかってしまう。
 相手はミルナ=クォッチだ。無策で戦に臨むはずがない。
 この危機的状況を覆す策を用意していても不思議ではないのだ。

 しかし、それはいったい何なのか。
 分かりそうで、分からない。

|伝=_=|「ショボン大将」

(´・ω・`)「ん?」

 伝令章を示した騎馬兵。
 ショボン大将に駆け寄り、手紙を手渡した。

 どうやら西塔の兵のようだった。

(´・ω・`)「……あぁ、なるほどな……」

 ショボンがすぐに開封して手紙を読み始めた。
 誰からのものか、は聞かずとも分かる。
 間違いなくジョルジュだ。

(´・ω・`)「返書をしたためる。少しだけ待っていてくれ」

|伝=_=|「分かりました」
63 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:26:55.47 ID:UiYaAe9r0
(´・ω・`)「ブーン、お前は引き続きミーナ城攻めの準備を」

(;^ω^)「了解ですお」

 朴訥とした伝令兵が、頭を下げて馬首を返した。
 フェイト城から少し離れたところで待つようだ。

 ショボンはその伝令兵の位置を確認してから、城内に入っていった。

(,,゚Д゚)「ジョルジュ大将からか?」

(;^ω^)「のわ! ギコさん!?」

(,,;゚Д゚)「変な声出すなよ」

(;^ω^)「いきなりでびっくりしたんですお」

(,,゚Д゚)「そうか、悪いな」

 薄着で、その衣服を手ではためかせていた。
 今日は風がないためいつもより暑いのだ。

 準備に追われた兵たちが慌しく駆けている。
 大きな粒の汗を垂らしながら。

 ギコが指で木陰を指した。
 ちょっと涼もう、という意味だろう。
 頷いて移動した。

(,,゚Д゚)「ま、ちょっとくらい離れてても平気だろ」
70 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:28:46.78 ID:UiYaAe9r0
 袖で汗を拭いながら、ギコは木に凭れかかった。
 茹だるような暑さ、余計に体力が奪われる日中。

 一日でも早くミーナ城を攻めるために、少しでも働きたいところだが、休みを取らずにはいられない。
 立っているギコの隣に座った。

 風もほとんどない日だが、陽光を浴びているよりはずいぶんマシだった。

(,,゚Д゚)「あの伝令、恐らく西塔のやつだろうな。ジョルジュ大将からか」

( ^ω^)「そうだと思いますお」

(,,゚Д゚)「ま、黙ってるはずはねぇと思ってたが……やっぱり、ってとこか」

( ^ω^)「攻めるのをやめろ、とか言ってこないか……ちょっと不安ですお」

(,,゚Д゚)「同じようなことを書いてるだろうな。遠まわしに」

( ^ω^)「もうちょっと様子を見たほうがいい、とかですかお?」

(,,゚Д゚)「そんな感じだろ。多分な」

 ギコの顔を見上げた。
 額の汗を拭う腕。それでも顎から汗が垂れ落ちている。
 だが、何故かそれが格好良く見えてしまうのだ。

 顔がいい男は何もかも似合う。
 そんなものだろう、と思っていた。
75 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:30:43.69 ID:UiYaAe9r0
(,,゚Д゚)「ミーナ城には二万の兵が入っているらしい。もし篭城されたら厳しい数だな」

( ^ω^)「篭城するだけの兵糧がオオカミになくて、良かったですお」

(,,゚Д゚)「城外で戦うしかないってのは、オオカミにとっちゃ辛いとこだろうな」

( ^ω^)「こっちは六万ですかお?」

(,,゚Д゚)「どうかな。シャッフル城の一万をほとんどフェイト城に移せば、六万で攻められるが……。
    フェイト城をあんまり疎かにできねーからな」

( ^ω^)「でも数千で充分だと思いますお。門を閉ざしておけば、数万で攻められても防げますお」

(,,゚Д゚)「ま、それもそうだ。五千くらい入れておけば充分か」

( ^ω^)「オオカミは防衛線をミーナ城に置いてると思いますかお?」

(,,゚Д゚)「どうだろうな。オオカミはヴィップ方面に六万を割いてるのに、二万しか城に入れてない。
    残りの四万はオオカミ城とミーナ城の中間地点に留まってるって話だ」

( ^ω^)「むしろ、その四万の位置が防衛線ですかお?」

(,,゚Д゚)「と、俺は思う。もしミーナ城の付近で戦って退却せざるを得ない場合、
    ミーナ城からじゃオオカミ城までかなり遠い。
    オオカミにとっちゃ危険なパターンだ」

( ^ω^)「いざというときにはオオカミ城まですぐ駆けつけられるよう、
     オオカミ城になるべく近い位置に陣取ってる、ってことですかお……」

(,,゚Д゚)「そういうことだろうな」
83 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:33:04.90 ID:UiYaAe9r0
 ギコが腰から竹筒を取り外し、口に当てた。
 水を入れてあるのだろう。喉を鳴らしている。
 自分も鉄製の容器に水を入れてきたが、とっくに空になってしまっていた。

(,,゚Д゚)「しかし、ミルナとリレントは両方ミーナ城に入ってるって話だ。
    気の抜けねー戦いになるぞ」

( ^ω^)「オオカミは必死だから、何をしてくるのか分かんない怖さがありますお」

(,,゚Д゚)「あぁ。色んな事態を想定して戦う必要があるな……っと、今更だがお前」

( ^ω^)「なんですかお?」

(,,゚Д゚)「Uに上がってたのか。気付かんかった」

 木に立てかけられたUを見て、ギコが言った。
 何気なく触ろうとし、慌てて手を引っ込めるギコ。
 その背で、Rの刃が木漏れ日を受けていた。

( ^ω^)「ここに来る前に上がったんですお。ローゼン城のとき既にUでしたお」

(,,゚Д゚)「そうだったか。しかし、早いな」

( ^ω^)「ショボン大将やモララー中将には劣りますお……」

(,,゚Д゚)「いや、充分さ。俺なんか未だにSの壁で躓いてる」

( ^ω^)「何年くらいですかお?」
91 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:35:05.89 ID:UiYaAe9r0
(,,゚Д゚)「もう忘れちまった。そんくらい長い付き合いだ。
    壁の突破を目指してたけど、もう無理かも知れねぇな……」

( ^ω^)「そんなこと……」

(,,゚Д゚)「もちろん、まだ諦めちゃいねーさ。ラウンジのアルタイムだって、四十になる手前で突破したって話だ。
    まだ越えられる可能性はあると見てる。訓練だって怠る気はねーよ」

( ^ω^)「……はいですお」

(,,゚Д゚)「よろしければブーン少将に、アルファベットの扱い方などをお教えいただければ、と思っておりますが」

(;^ω^)「ちょ、そんな言い方やめてくださいお」

(,,゚Д゚)「はは、わりぃわりぃ。でもまぁ、暇があったら訓練の相手でもしてくれ。
    やっぱ上位者と戦わねーと何も掴めない気がするんだ」

( ^ω^)「ブーンでよければ、いつでも」

(,,゚Д゚)「すまんな。じゃあ、今度頼むよ。
    ……お、ショボン大将戻ってきたな」

 城門をくぐったショボンは、真っ先に西塔からの伝令の許へ向かった。
 真っ白な封筒を差し出し、それを受け取った伝令がすぐに馬を走らせ去る。
 その背中を見ながら、ショボンは嘆息を吐いていた。

(´・ω・`)「気疲れしてしまうな。自分のせいとは言え」

 同じように木陰に入ってきたショボンが、また息を吐きながらそう言った。
 疲れきった表情は、やはり暑さのせいではないようだった。
97 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:37:04.25 ID:UiYaAe9r0
(,,゚Д゚)「ジョルジュ大将からですよね? なんと書いてありました?」

(´・ω・`)「まぁ、だいたい想像がつくだろう」

 ショボンの苦笑いを見ると、心が痛んだ。
 全てをショボンに負わせてしまっている、と感じるからだ。

 ショボンがそれを望んでいる。
 自分の行動によって他人に迷惑をかけたくない、と思っている。
 そして、思うように力になれない自分。

 悲しく、そして悔しかった。

(´・ω・`)「しっかり言葉を考えて手紙を返したが、ジョルジュ大将は納得しないだろうな。
      またすぐに伝令が手紙を持ってくるだろう」

(,,゚Д゚)「しかし、もうすぐ戦です」

(´・ω・`)「分かってるさ。だからこそ、ジョルジュ大将はすぐ返してくるだろう。
      まぁ、お前たちは何も気にしなくていい。ジョルジュ大将に黙ってたのは俺だ。
      ジョルジュ大将からの話は全て俺が受ける。お前たちに迷惑はかけない」

(;^ω^)「でも……」

(´・ω・`)「お前たちが心配してくれるだけで、充分さ」

 長大なYを杖のようにしながら休むショボン。
 その姿を見てまた、心が痛んだ。
108 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:39:12.97 ID:UiYaAe9r0
 ショボンにばかり負担はかけられない。
 自分たち将校が頑張って負担を軽くしなければ。
 依存していてはいつまで経っても成長できないのだから。

( ^ω^)「……ブーンたちは、戦で頑張りますお。ショボン大将が何もしなくてもいいくらいに」

 強く言った。
 ショボンは、少しだけ嬉しそうに笑った。

(´・ω・`)「ありがとう。そうしてくれると、助かる」

(,,゚Д゚)「お任せください。完勝を収めてみせます」

(´・ω・`)「期待している」

 今度は、いたずらっぽい笑い。
 色んな笑みをショボンは浮かべていた。
 それもやはり、疲れているからなのだろうか。

( ・∀・)「ショボン大将、ちょっといいですか?」

(´・ω・`)「ん? モララーか、どうした?」

 茶色い袋を両手に持ったモララーが、木陰に入ってきた。
 四人の将官が入ると、大きめの木による陰もずいぶん狭く感じる。

( ・∀・)「大型の秤を探してるんですけど、どこにありましたっけ?」

(´・ω・`)「六番幕舎だ」
116 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:42:03.87 ID:UiYaAe9r0
( ・∀・)「あぁ、そうでしたね。ありがとうございます」

(´・ω・`)「待て。ちょうどあっちにいるプギャーに調練を頼もうと思ってたんだ。
      俺が行って来る。少し遅くなるかも知れんが」

( ・∀・)「いやいや、それくらい僕が」

(´・ω・`)「まぁ、少し休んでいけ。お前はずっと動きつづけてるだろう。
      大事な戦の前に倒れられても困るんだ」

( ・∀・)「じゃあ……お言葉に甘えますか」

 よろしくお願いします、とモララーが言うと、ショボンはすぐに木陰から日なたへと踏み出した。
 次第に遠ざかっていっても、アルファベットYだけはいつまでも大きく見えた。

( ・∀・)「ショボン大将、疲れてるみたいだったな」

 アルファベットVを地面に置いてモララーは座り込んだ。
 あまり汗は掻いていないようだ。

( ・∀・)「まぁ、こんな大掛かりな作戦を実行中だし、無理もないが……」

( ^ω^)「ブーンたちが頑張って、負担を軽くさせなきゃですお」

( ・∀・)「まったくだな。ショボン大将にばっか負担はかけられねー」

(,,゚Д゚)「ずっと健康だが、突然病に罹る可能性だってあるしな」

( ・∀・)「あまり考えたくない可能性ですね。
     ま、それを未然に防ぐためにも、俺たちは努力する必要がありますが」
125 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:43:52.14 ID:UiYaAe9r0
( ^ω^)「ですおですお。頑張らなきゃですお」

( ・∀・)「ショボン大将が居ることで東塔は成り立ってんだ。
     あくまで俺たちはそれを支えるだけさ」

 何となく、以前のショボンの言葉を思い出した。
 モララーはあくまで中将であり、大将に向いた人材ではない、という言葉だ。

 それはもしかしたら、モララーの性格や考え方にあるのかも知れない。
 モララーはあくまでショボンを支えることを考えている。ショボンを信頼し、自らを託している。
 上に担ぐ者がいるからこそ、その力を発揮する。そんな気がしたのだ。

 上官としてモララーを見ていたショボンだからこそ、そんなモララーの性格に気付いたのだろうか。

( ・∀・)「さてと、そろそろ行くか」

( ^ω^)「ショボン大将を待たないんですかお?」

( ・∀・)「六番幕舎に向かえば途中で会うだろ。休息は充分取った」

(,,゚Д゚)「俺たちもそろそろ行くか。ちょっと休みすぎたかな」

(;^ω^)「かもですお」

 三人がそれぞれアルファベットを手に取り、木陰と色を違える日なたへ向かった。
 少し陽の光を浴びただけで一気に汗が噴き出す。強烈な暑さだった。

( ・∀・)「次のミーナ城戦は、あまりショボン大将に負担をかけたくないところだな」

 自分が思っているのと同じことをモララーは言い、遠ざかっていった。
132 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:46:05.99 ID:UiYaAe9r0
――アリア城――

 渺茫たる大海原。
 両手を広げてもとても収まりきらない。

 壮大な景観だった。

( ’ t ’ )(眼下に広大な海、か……いい城だ……)

 大陸の西端に位置するアリア城。
 丘の上に立てられており、城塔からははるか彼方が見渡せる。
 だが、海上はどこまでも同じ景色が続いているのだ。

 水面の輝きも、決して絶えることはない。
 いつまでも同じように揺らめき、煌き、光を揺蕩わせるのだ。
 未来永劫に。

 果てしなく続く海は、時さえも併呑していくのだ。

( ’ t ’ )(……ん……?)

 沖合いに、船が見えた。
 漁船だ。
 網を擲っている。

 川に比べると、海は波の動きが不規則で、また荒れやすい。
 どうしても船の造りが複雑になり、大型のものを造船するのは難しくなるのだ。

 川用の船は多く存在するが、海用の船があまり存在しない理由は、そこにあった。
145 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:48:45.80 ID:UiYaAe9r0
( ’ t ’ )(安易に大型のものが造れればいいんだろうが……)

 海からなら、敵の後背地まで攻められる。
 陸で攻められない地点はどうしても手薄になる。だからこそ、海から襲撃できれば効果的だ。
 ただ、この大陸に海から攻められるような技術はまだなかった。

 いずれは船の技術が上がっていき、海での戦も行われるようになるだろう。
 しかし、それよりも早くこの地での戦は終わりそうだった。

( ’ t ’ )(……オオカミの最後……か……)

 ヴィップとの共同戦線。
 ラウンジとヴィップの二国が同時に、オオカミを攻め始めた。

 協力しあうわけではなく、ただ同時に攻め込むというだけだ。
 同盟ではない。共同歩調、というやつだ。
 しかし、オオカミにとっては同じことだろう。

 オオカミは何とか十二万を絞り出したという。
 兵糧に苦しんでおり、兵数も減少している中、よくぞ十二万を出したものだ、と思った。
 ただし、長くはもたないだろう。

 だからオオカミは、いくつかの城を放棄しているのだ。
 オオカミ城から遠く離れた地に、兵糧を蓄えておけないからだ。
 オオカミ領ヒダマリ城、そしてネギマ城。この二城にはほとんど兵もいないという。

 ただし、オオカミはその代わりに、トーエー川の水軍を補強している。
 兵数自体は僅か一万五千だが、精強と謳われるオオカミの水軍だ。
 最初から楽ではない戦になる。
148 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:50:40.14 ID:UiYaAe9r0
 しかし、今回ラウンジは十四万の兵を率いてきた。
 対するオオカミは六万。ラウンジの半数以下だ。
 この数で、負けるほうが難しい。

 だが、オオカミもそれは分かっているはずだ。
 つまり、この兵数差を埋めるための策を用いてきておかしくない。
 警戒を強めていく必要がありそうだった。

(`・ι・´)「カルリナ、軍議の時間だ。行くぞ」

 アルタイムに、肩を指で叩かれた。
 わざわざ呼びに来てくれたようだ。

( ’ t ’ )「はい」

 アルタイムの声に従い、軍議室へ向かった。
 最後に一度だけ、振り返って。



――アリア城・軍議室――

 白砂が張り付けられたような壁の色。
 海を映し出したような長机。
 外と中を繋ぐ窓に移る青空。

 何度か入った軍議室だが、来るたびに美しさを再認する。
 シンプルな色の秀美さがあるのだ。

(`・ι・´)「まず、オオカミの水軍だが」
152 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:52:40.57 ID:UiYaAe9r0
 広げられた地図にはトーエー川の地形が描かれていた。
 全土最長の川、トーエー川。地図も必然的に大きくなっている。

 見飽きた地図だ。
 アリア城に入る前から、何度もこの地図を見ている。
 目を閉じれば思い出せるくらいに。

 そして、ラウンジが取るべきだと思う策も、既に頭の中にある。

(`・ι・´)「幅広く展開している。オオカミは寡兵だが、よほど水戦に自信があるんだろう」

( ’ t ’ )「そうですね。こちらは水戦に七万を使う、というのを分かっていての布陣でしょうし」

(`・ι・´)「まぁ、数で押せば打ち破れるとは思うが……可能な限り、被害は抑えたい」

( ̄⊥ ̄)「幅広く展開しているのなら、こちらは鋭く突いて破れば充分では?」

(`・ι・´)「だが、オオカミがそう誘っている可能性もある」

( ̄⊥ ̄)「いずれにせよ、水軍を破られればオオカミに抗う術はないはずです」

(`・ι・´)「それもそうだがな、優位だからこそ慎重に戦いたいんだ」

( ’ t ’ )「アルタイム大将」

 議論を白熱させていた二人の間に、あえて割って入った。
 決着がつきそうになかった、というのもある。

 だが、ここは自分の意見を通したい、と思った。
158 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:54:32.26 ID:UiYaAe9r0
( ’ t ’ )「オオカミは水軍を展開させています。これは当然のことです。
    水軍に力を持っている以上、水上で戦おうとしてくるでしょうし、避けられません」

(`・ι・´)「その通りだが……」

( ’ t ’ )「しかし、いずれにせよこのまま戦っては、オオカミにとって予定通りの展開でしょう」

 オオカミは滅亡の危機に瀕している。
 そして、何がなんでもそれを避けようとしている。

 どんな策を取ってくるか分からない。
 だからこそ慎重に。それも分かる。

 しかし、ここはあえて、大胆に攻めたかった。

(`・ι・´)「どうするつもりだ、カルリナ」

( ’ t ’ )「敵に合わせてやる必要はない、ということです」

 地図に手を置いて、指で線を引いた。
 オオカミ戦は長引かないだろう。オオカミに体力がない。
 短期決戦を望んでいるはずだ。

 ならば、それを更に上回ってやりたい。
 こちらとしても、長引いて無駄に兵糧を失いたくないのだ。

 オオカミ戦のあとの、ヴィップ戦も見据える必要があるからだ。

( ’ t ’ )「オオカミの意表をついて、戦を短期で終わらせましょう」
161 :第66話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/24(金) 02:56:38.77 ID:UiYaAe9r0
 自分の考えを、淡々を話し始めた。

 ヴィップは既にフェイト城を奪っている。
 ラウンジももうすぐ、動き始める。

 戦は長引かない。
 すぐに、終わらせる。

 ラウンジの天下を、一気に引き寄せるためにも。


















 第66話 終わり

     〜to be continued

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