- 3
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
02:56:07.22 ID:L6PwF5Ls0
- 〜東塔の兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
29歳 少将
使用可能アルファベット:T
現在地:ヴィップ城
●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
39歳 大将
使用可能アルファベット:X
現在地:ヴィップ城
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
34歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:オリンシス城
●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
37歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:ヴィップ城
●( ^Д^) プギャー=アリスト
35歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:シャッフル城
- 12
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
02:57:07.20 ID:L6PwF5Ls0
- ●( ><) ビロード=フィラデルフィア
32歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:シャッフル城
●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
28歳 中尉
使用可能アルファベット:R
現在地:ヴィップ城
●( ФωФ) ロマネスク=リティット
22歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
●(´・_ゝ・`) デミタス=コーフィー
27歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
●\(^o^)/ オワタ=ライフ
25歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
- 15
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
02:57:44.83 ID:L6PwF5Ls0
- 〜西塔の兵〜
●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
44歳 大将
使用可能アルファベット:V
現在地:ヴィップ城
●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
45歳 中将
使用可能アルファベット:S
現在地:パニポニ城
●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
48歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:ヴィップ城
●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
41歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
- 20
名前:登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
02:58:31.60 ID:L6PwF5Ls0
- ●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
43歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:ヴィップ城
●(´<_` ) オトジャ=サスガ
43歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:ヴィップ城
- 23
名前:階級表
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
02:59:29.04 ID:L6PwF5Ls0
- 〜東塔〜
大将:ショボン
中将:モララー/ギコ
少将:ブーン/プギャー
大尉:ビロード
中尉:ベルベット
少尉:ロマネスク/デミタス/オワタ
〜西塔〜
大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー
大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:
少尉:
(佐官級は存在しません)
- 25
名前:使用アルファベット一覧
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:00:20.13 ID:L6PwF5Ls0
- A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:
M:
N:
O:ヒッキー
P:アニジャ/オトジャ
Q:
R:ギコ/プギャー/ベルベット
S:ニダー
T:ブーン/アルタイム
U:ミルナ
V:ジョルジュ/モララー
W:
X:ショボン
Y:
Z:
- 30
名前:この世界の単位&現在の対立表
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:00:57.59 ID:L6PwF5Ls0
- 一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml
(現実で現在使われているものとは異なります)
---------------------------------------------------
・現在対立はありません
- 35
名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:02:06.94 ID:L6PwF5Ls0
- 【第63話 : Train】
――ヴィップ城――
風景に春が彩られた。
木々が柔らかに色づいている。
桜の木に囲まれたヴィップ城。
ヴィップの領内でも、図抜けて大きな城だ。
そこに、東と西の将校が久方ぶりに揃っていた。
一度は、両方の軍が戦の報告をするために、軍議が行われた。
何人か欠けているものの、ほぼ全員が揃った状態だ。
これほど大人数で軍議を行うのは初めてだった。
両軍とも、戦に負けたあとだった。
そのせいもあったのか、軍議は終始、緊迫状態だった。
特にショボンとジョルジュは、目も合わそうとしなかった。
ジョルジュが東塔に混じって療養していたころ以来の再会だった。
かなりの時間が空いている。もしかしたら、と思った。
普通に、話してくれるのではないか、と。
だが、どうやら時間的な解決、というものはないようだ。
氷解のときも遠そうだった。
- 43
名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:04:09.44 ID:L6PwF5Ls0
- 同じように、ギコとフサギコも全く口は利かなかった。
何故か席が向かい合いの位置で、普通にしていれば嫌でも目が合う。
それでも互いの視線が絡むことは全くなかった。
( ^ω^)(よいしょ……っと)
アルファベットを抱えて部屋から出た。
長尺のT。つい先日、Sから上がったのだ。
背に負って、訓練室へと駆けた。
十一尺ほどあるTは、リーチと威力が抜群で、使い勝手もいいが、振り回しにくい。
重量、そして利点でもあるリーチのせいだ。
Iよりは若干短いが、アルファベットの中でも屈指の長さを持っていることは間違いない。
真っ暗な道に、等間隔で四角い光が当たっている。
夜のヴィップ城廊下。
小さな蝋燭では少し心許ない暗さだった。
将校たちがいる階はあまり人が行き来しないため、明かりを暗めにしてある。
だがひとつ階層を下がると随所に蝋燭が並べられていて、夜でも人の顔が判別できた。
向かいから歩いてくる、将校の顔も。
( ^ω^)「ヒッキーさん!」
二冊ほどの本を抱えたヒッキーが、前から歩いてきた。
いつも眠たげで、やる気のなさそうな顔をしている。
話してみると頭のいい人なのだが、外見からはとてもそう見えなかった。
- 49
名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:06:07.75 ID:L6PwF5Ls0
- ( ^ω^)「何の本ですかお?」
(-_-)「……他愛もない物語本さ……」
真っ赤な表紙の本と、真っ黒な表紙の本。
どうやら上下巻のようだ。
タイトルが二つとも一緒だった。
(-_-)「寝る前に読もうかと思ってな……」
(;^ω^)「今晩中に読めちゃうんですかお?
この量を」
(-_-)「……これくらいなら、四刻もあれば読める……」
ヒッキーの本は、親指と人差し指を軽く広げたくらいの分厚さがある。
しかも、それが二冊だ。これを、四刻で読めてしまうのか。
自分なら十刻かけても一冊すら読みきれないだろう。
( ^ω^)「凄いですお……」
(-_-)「……ブーン少将は……アルファベットの訓練か……?」
( ^ω^)「はいですお!」
(-_-)「Tか……さすがだな……まだ三十にもなっていないというのに……」
少しだけ、ヒッキーの口端が動いた。
笑ったのだろうか。それさえ分からなかった。
- 56
名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:08:14.25 ID:L6PwF5Ls0
- (-_-)「……俺はどうやら……Oより上にはなれそうもない……」
(;^ω^)「……そうなんですかお?」
(-_-)「何となく、限界を感じるのさ……無理だろうな、と……」
ヒッキーはもう五十に近かったはずだ。
モナーがいなくなった今、将校の中では最年長だった。
もともと、それほど才能があったわけではないという。
加えて、高齢化による衰え。上がらなくなったとしても不思議はない。
(-_-)「……まぁ……ろくに訓練もしなかったのに、よくOまで上がってくれたものだ……とも思うが……」
( ^ω^)「ヒッキー少将は……部隊の調練をやる時間のほうが多かったって聞いてますお」
(-_-)「……よくジョルジュ大将に頼まれたんだ……お前が調練してくれると、兵の動きが良くなるから……と……」
( ^ω^)「ジョルジュ大将の信頼が厚いってことですかお?
さすがですお」
(-_-)「……いや、さぁな……正直、俺にも分からん……」
ヒッキーが一度、視線を動かした。
どこを見たのかは、分からなかった。
(-_-)「……信頼されている……とも思うが……ジョルジュ大将は、自分のことは話してくれないからな……」
(;^ω^)「そうなんですかお?」
- 62
名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:10:14.78 ID:L6PwF5Ls0
- (-_-)「……常に何かを考えているように見えるが……何を考えているのかは、分からん……。
それを思うと……信頼されているとは言いがたい……」
(;^ω^)「…………」
(-_-)「無理に聞こうとは思わんが……話してくれてもいいのではないか、と感じることもあるな……」
いつもの、無気力そうな顔。
それがどこか、寂しげなものに見えた。
あるいは、切なげなものに。
(-_-)「……ブーン少将、東塔は今後、どうするつもりなんだ……?」
(;^ω^)「ほぇ? あ、とりあえず今年中は攻め込まないつもりですお」
いきなり話題が変わったので、思わず間抜けな声を出してしまった。
ヒッキーはまた、少しだけ口角を上げた。
(-_-)「西塔もしばらくは大人しくするつもりだ……となると……
……もしかしたら……ラウンジとオオカミの戦が始まるかも知れんな……」
( ^ω^)「あっ……なるほどですお」
(-_-)「オオカミはアリア城の奪還、もしくはコードギアス城の奪取を狙っているはずだ……。
……そしてラウンジは、恐らくヒダマリ城を奪おうと考えている……」
( ^ω^)「戦になってもおかしくないですお……」
(-_-)「……あぁ……恐らく、アリア城とヒダマリ城の間で、戦が起きるだろう……」
- 68
名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:12:37.84 ID:L6PwF5Ls0
- ( ^ω^)「となると、ヴィップは当分ゆっくりできそうですお」
(-_-)「そうだな……戦をやれん状況ではないが、たまにはのんびり力を蓄えるのもいいだろう……。
……俺としては、ヴィップ城に引きこもっていられるのはありがたいことだ……」
ヒッキーが後ろに振り向き、そのまま手を振った。
やはり最後も、少しだけ笑っているように見えた。
ヒッキーと別れたあと、しばらく呆然と窓の外を眺めていた。
何もすることがないな、などと思いながら。
しかし不意に、アルファベットの訓練に向かおうとしていたことを思い出す。
また歩き出して、訓練室への道を進んだ。
第一訓練室の扉を開く。
飛び込んでくる金属音と、兵の声。
中から、熱気が漏れた。
ショボンがいた。
(´・ω・`)「ブーンか」
汗を拭いながら、ショボンが言った。
息が大きく乱れている。
どうやら、激しい訓練を行っていたようだ。
第一訓練室は、二十以上ある訓練室の中でも最も広い。
いつもは人で溢れかえっていて、早い時間だとまともに訓練できないことが多かった。
この時間はさすがに少ないものの、まだ数百の兵がいる。
- 76
名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:14:36.99 ID:L6PwF5Ls0
- (´・ω・`)「そういえばTに上がったんだったな。おめでとう」
( ^ω^)「ありがとうございますお」
(´・ω・`)「難しいだろう、Tは。槌と刃の使い分けが特にな」
( ^ω^)「確かにですお……リーチがあるから振るいにくいってのもありますお……」
(´・ω・`)「俺はリーチは気にならなかったが、お前はあまり体が大きくないからな。
まぁ、早めに通過してUを使ったほうがいい。あれは扱いやすいからな。
俺はTのほうが好きだったが」
( ^ω^)「やっぱリーチがあるからですかお?」
(´・ω・`)「あぁ。慣れれば槌と刃が使い分けられるのも便利なもんだった」
( ^ω^)「頑張って訓練して、Tに慣れますお」
(´・ω・`)「頑張れ。早く、上に来い」
ショボンは、笑っていた。
ヒッキーとは違って、笑っているのだということがはっきり分かる。
俺は、待っているぞ。
その言葉が、表情から伝わってくるようだった。
(´・ω・`)「ところでブーン、お前、訓練の時間はどれぐらい取るつもりだ?」
( ^ω^)「ほぇ? いや、はっきりとは決めてないですお」
- 81
名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:16:37.11 ID:L6PwF5Ls0
- (´・ω・`)「そうか。もし二刻ほどなら、あとで俺と一緒に行かないか?」
( ^ω^)「どこにですかお?」
(´・ω・`)「ツンさんのところへ、Yを受け取りに、さ」
心臓が跳ね上がったような感覚だった。
アルファベットY。確かに、近いうちに頼んでみるつもりでいると言っていた。
もう既に依頼を済ませていたのか。
未知のアルファベット。
Xもそうだったが、Yなど、自分にはまだはるか遠いアルファベットだ。
見てみたい。心の底から、そう思った。
(´・ω・`)「まぁ、ツンさんもちゃんとアルファベットとして機能するかどうか、自信がないらしいんだが」
( ^ω^)「いきますお! 是非お供させてくださいお!」
(´・ω・`)「そうか。じゃあ、一刻ほどしたら俺の部屋に来い。俺はその間に準備を済ませておくから」
( ^ω^)「分かりましたお!」
(´・ω・`)「じゃ……」
ショボンは、振り返ろうとした。
じゃあな、と言おうとした。
扉の向こうから現れた人物。
ジョルジュ=ラダビノードの姿を見て、動きを静止させるまでは。
- 87
名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:18:32.70 ID:L6PwF5Ls0
- ( ゚∀゚)「……部下に手ほどきか。お優しいこって」
(´・ω・`)「たまたま会っただけですよ」
ジョルジュが後ろ手で扉を閉めた。
Vを右手に握った状態で歩みを進めてくる。
ジョルジュの声には、微かな苛立ちがこもっているように感じた。
対するショボンの声は、平静だった。
(´・ω・`)「Vになっていたんですね。気付きませんでした」
( ゚∀゚)「現役最強のショボン様にとっちゃカスみたいなもんだろ?」
空気が、張り詰めていく。
訓練室内は静謐に満ちていた。
(´・ω・`)「そんなことはありませんよ。歴史上、まだVに到達したのは四人だけでしょう」
( ゚∀゚)「モララーにまで抜かれた俺にとっちゃ苦々しい事実だな」
(´・ω・`)「モララーもまだVですから」
( ゚∀゚)「いずれは届かねーとこまでいっちまうだろうよ。
あいつがこれからも無事に成長できれば、だが」
(´・ω・`)「……どういう意味ですか?」
( ゚∀゚)「何が起きるか分かんねーってことさ。戦ではな」
- 98
名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:20:42.19 ID:L6PwF5Ls0
- (´・ω・`)「……それは、もちろんそうです」
全く身動きできなかった。
完全に固まってしまって、体が言うことを聞かない。
ただ、二人をじっと見ていることしかできない。
( ゚∀゚)「ま、俺はモララーに負けねぇよう頑張るとするぜ。
ショボン大将殿ははるか高みにいらっしゃるからな」
(´・ω・`)「……これからYを取りに行くところですよ。握れるかどうかは、分かりませんが」
( ゚∀゚)「……ツン=デレートの小屋に行く気か?」
何故か、ジョルジュはアルファベットに力を込めた。
そして、焦燥に似た色を顔に浮かべている。
理由が分からなかった。
(´・ω・`)「そうです。それが、どうかしたのですか?」
( ゚∀゚)「……いや……何でもねぇさ。それよりよ、ショボン」
右手のアルファベットを、ゆっくり突き出した。
ショボンの、喉元に向かって。
ショボンは、微動だにせずジョルジュを見据えていた。
睨んでいるようにも見えた。
_
( ゚∀゚)「俺の訓練に付き合ってくれねぇか?
ちょっと相手してくれるだけでいいんだがよ」
不意に、アルファベットが鋭く振られた。
- 106 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:23:00.50 ID:L6PwF5Ls0
- 右に、左に。上に下に。
そして再び突き出される。
やはりショボンは、全く動じない。
_
( ゚∀゚)「Xを使う相手なら不足はねぇ。最高の訓練相手だ」
(´・ω・`)「……申し訳ありませんが……」
_
( ゚∀゚)「固いこと言うなよ。ツンの小屋に行くのは明日だっていいだろ?
年長者の頼みは素直に聞いとくもんだぜ、ショボン=ルージアル」
ジョルジュのVが、少しずつ、ショボンに近づいていく。
顔に、眼球に。
全身に汗を感じた。
ショボンは、それでも全く動かないのだ。
ただ、Vの奥にいるジョルジュだけを見ているのだ。
悠久に似た時が流れた気がした。
睨み合う、二人の大将の間に。
( ゚∀゚)「……ちっ……」
舌打ちして、ジョルジュは静かにVを下ろした。
その口から、嘆息を大きく漏らしながら。
そして向けられる、ジョルジュの睨み。
鋭い眼光がショボンを貫かんとする。
- 114 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:25:29.59 ID:L6PwF5Ls0
- それでもショボンは、寸分たりとも動じていないようだった。
(´・ω・`)「今晩行く、と約束してあるのです。申し訳ありませんが……」
( ゚∀゚)「あーもういい。さっさと行け」
(´・ω・`)「失礼します」
ショボンが頭を下げ、ジョルジュの横を通り過ぎた。
視線をやることもなく。
無言のまま、訓練室から退出していった。
扉の開閉音が響いたあと、訓練室は再び静寂に包まれた。
誰も動かず、声も出さない。
ジョルジュのすぐ側にいる自分さえ。
頭を掻き毟るジョルジュ。
二度ほど舌打ちしながら下を向いていた。
( ゚∀゚)「ブーン」
(;^ω^)「はいっ!?」
突然、頭を上げて名を呼ばれた。
驚きで、右手のアルファベットを落としそうになった。
( ゚∀゚)「お前でいい。お前が付き合え」
- 123 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:27:16.25 ID:L6PwF5Ls0
- 再びジョルジュはVを上げた。
その切っ先を、自分に向けてくる。
訓練に、付き合えということなのか。
( ゚∀゚)「TならVとは二つしか離れてねーしな。ちょうどいいだろ、お前にとっても」
(;^ω^)「で、でもブーンはまだ未熟者で」
( ゚∀゚)「未熟ならなおさら訓練すべきだろ?」
不敵な笑みを浮かべていた。
そして、ジョルジュの言っていることは、正しかった。
訓練を断る理由はない。
元々、二刻ほどは訓練するつもりだったのだから。
だが、何故か体が拒んでいた。
頭が、拒んでいた。
ジョルジュと、アルファベットを交えてはならない、と告げていた。
( ゚∀゚)「構えろ。手合いだ」
(;^ω^)「ジョルジュ大将、ちょっ」
_
( ゚∀゚)「いくぞ!」
踏み込み。
想像以上に、大きい。
- 136 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:29:44.61 ID:L6PwF5Ls0
- そして打ち込み。
訓練室が揺れるような、重く、鋭い一撃。
(;^ω^)「ぐっ……!!」
Tの槌で受け止めた。
何とか、だ。
両腕を震えさせながら。
あの細身のどこにこんな力があるのか。
そう思ってしまうような、ジョルジュの一撃。
Tを逸らしてVを弾いた。
右手で柄の真ん中あたりを持ち、Tを引き寄せる。
アルファベットを小さく振るった。
だが、やはり威力が殺されている。
ジョルジュにたやすく受け止められる。
_
( ゚∀゚)「どんどん行くぞ!!」
連続の突き。
Vが何度も眼前に迫る。
防ぐので精一杯だ。
何とか反撃に出なければ。
主導権を握り続けられたままではいられない。
- 150 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:31:35.96 ID:L6PwF5Ls0
- ジョルジュが、突きから横の振りに切り替えてきた。
好機。身を屈めてVを躱す。
低い位置からTを振るった。
それを、ジョルジュは跳躍で躱した。
そのままアルファベットを振り下ろしてくる。
渾身の力でTを振るい、ジョルジュの一撃を弾いた。
ジョルジュが、崩れた体勢のまま着地する。
一気呵成に攻め立てる機だ。
間合いを詰めさせないようにしながら、リーチを活かしてTを振るった。
突くことはできない。小刻みに振り続けるしかない。
ジョルジュは、ひたすらVで攻撃を凌いでいる。
一度、振り上げた。
重量のあるT。そして槌。
力任せに、振り下ろす。
ジョルジュは、受け止めずに回避した。
かなり力を込めていた。隙が、ある。
ジョルジュが、迫ってくる。
だが、狙い通りだった。
( `ω´)「うおおおおおっ!!!」
Tを一気に引き寄せた。
刃部分が、ジョルジュの背中に向かう。
ジョルジュは明らかに反応が遅れている。
- 157 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:33:33.20 ID:L6PwF5Ls0
- それでも、瞬時にVを向けてきた。
弾かれる。手に、痺れが走る。
しかし、ジョルジュの体勢も良くはない。
先に構えたほうが。
決定的な一打を、放てる。
( `ω´)「おおおおおぉぉぉぉっ!!」
_
(#゚∀゚)「はぁっ!!!」
ジョルジュの、打ち込み。
Vはリーチが短い。そのぶん、構えるのも早い。
遅れたのは、自分だ。
ジョルジュの瞳が、怪しく光っていた。
思わず寒気が走るほどに。
身が竦むほどに。
はっきりと、恐怖を感じた。
(;`ω´)「ッ!?」
迫り来る。
ジョルジュ、そしてアルファベット。
Vの刃が、光っていた。
そして、狙っていた。
自分の、首を。
- 159 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:34:59.47 ID:L6PwF5Ls0
- そんな、まさか。
こんな訓練で、首を狙うなんて。
ありえるはずがない。
フェイクだ。そういうふりをするだけだ。
そう思い込もうとした。
思い込めなかった。
(;`ω´)「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!」
Tを、引く。
ジョルジュの攻撃を、防ごうとする。
間に合え。
祈るように、心の中で呟いた。
そして、流れ出す鮮血。
Tは、間に合った。
何とかジョルジュの攻撃を、逸らした。
Vの刃は、首筋を微かに掠っただけだった。
( ゚∀゚)「……悪ぃな。当てるつもりはなかったんだが」
ジョルジュがVを下げた。
呼吸は、ほとんど乱れていなかった。
自分の荒ぶる吐息とは正反対なほどに。
- 168 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:36:35.24 ID:L6PwF5Ls0
- 首に手を当てた。
小さな傷だ。放っておけばそのうち瘡蓋になる。
この程度なら、普段の訓練でもよく受ける傷だ。
だが、先ほどのジョルジュの一撃。
最後の、一撃。
自分の首を狙っているように思えた。
あの勢い、あの鋭さ。
あの、怖さ。
ジョルジュなら、あそこからでも寸止めできたかも知れない。
いや、間違いなく可能だっただろう。そうするつもりだった、とも思える。
だが、もしTで防いでいなかったら――――果たして――――。
そこで、考えるのをやめた。
国軍の大将が、部下に向けて、そんなことをするはずがない。
何の利点もないのだから。
きっと、寸止めするつもりだったのだろう。
そう思い込むことにした。
( ゚∀゚)「仕切り直しといくか?」
( ^ω^)「……いえ、そろそろ訓練は終わりにしますお。
お付き合いしていただいて、ありがとうございましたお」
( ゚∀゚)「……そうか。じゃあまぁ、終わりにするか」
- 180 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:38:34.27 ID:L6PwF5Ls0
- ジョルジュがアルファベットを下ろして、部屋の片隅へ向かった。
飲料水や果実が置かれている一角があるのだ。
ジョルジュは恐らく、そこで休むつもりだろう。
その背中に向かって、軽く頭を下げ、訓練室から退出した。
色んな汗を掻いた体を、廊下を吹き抜ける風が冷やす。
思わず息が漏れた。
結局、訓練の時間は一刻にも満たなかった。
それでも、二刻以上動き続けたような疲労感が体にある。
ジョルジュとの、初めての手合い。
やはりアルファベットの扱いは抜群に上手かった。
あれでもう四十四に達しているというのだから恐ろしい。
これからもまだ上達していくのだろう、と感じた。
アルファベットでは二つしか離れていないが、それ以上の距離があるように思った。
追いつくにはまだ努力を重ねなければならない。精進しなければならない。
新たにひとつ、目標ができた。
一度自室に戻って、着替えてから東塔の最上階に向かった。
屋上に出ると、吹き続ける風をよりいっそう強く感じる。
火照った体にはちょうどよかった。
( ^ω^)「……お?」
外の風景を眺めながら階段へ向かう途中、人影を発見した。
二つ並んでいる。同じような風体。
酒を飲んでいるようだった。
- 187 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:40:37.01 ID:L6PwF5Ls0
- あれは、サスガ兄弟だ。
(´<_` )「おや、ブーン少将ではないですか。どうしたのですか?」
(;^ω^)「敬語なんてやめてくださいお。ブーンのほうがいくつも年下ですお」
(´<_` )「いやいや、上官ですからね」
( ^ω^)「じゃあ、上官命令ということで……」
(´<_`;)「これは参った。じゃあ、普通に喋らせてもらいます」
腰の低い、人当たりのいい将だ、と聞いていた。
オトジャについてだ。
どうやら風評に違いはないようだった。
(*´_ゝ`)「うほほほほ! ブーンはいいやつだな!
謙遜ってもんを知ってるよ!」
(´<_`;)「お前も知れ、アニジャ」
(*´_ゝ`)「俺はアニジャ=サスガだ! 初めましてだな!」
(´<_`;)「初めましてなわけないだろう……何度か顔合わせてるじゃないか……」
(;^ω^)「おっおっおっ」
アニジャのほうは、少し間が抜けていて、よく分からない発言をしたりもするという。
その噂も、まったく間違っていないようだ。
- 195 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:42:42.60 ID:L6PwF5Ls0
- だが、戦では果敢な攻めで敵に反撃の隙を与えず、一方的に打ち勝つことも多いという。
特にオトジャとコンビを組めば連戦連勝、ほとんど負けはない、とのことだ。
間の抜けた兄と、しっかり者の弟。
上手くバランスが取れているのだろう、と思った。
(´<_` )「それで、どうしたんだ?
ショボン大将のところへ行くのか?」
( ^ω^)「ですお。それで通りがかったんですお」
(´<_` )「そうか。引き止めて悪かったな」
( ^ω^)「いえ、まだ時間まで少しあるから、のんびりしようと思ってたんですお」
(´<_` )「それならいいんだが……しかし、長居は危険だ」
(;^ω^)「え? どうしてですかお?」
(´<_`;)「アニジャが絡んでくるからだ」
オトジャがそう言った直後、背後に熱を感じた。
それが瞬時にして背中全体に広がる。
やがて、首にも。
アニジャが、後ろから自分に抱きついていた。
- 210 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:45:34.07 ID:L6PwF5Ls0
- (;^ω^)「おぉっ!?」
(*´_ゝ`)「ぐはははは、ブーン少将討ち取ったりぃー」
(´<_`;)「ぶち殺されるぞアニジャ」
(*´_ゝ`)「これで壁突破者を討ち取ったのは俺が二人目だ」
(´<_`;)「アニジャ如きがブーンに並ぼうなんて、おこがましいにも程がある」
(#´_ゝ`)「なにー!! それは言いすぎだぞオトジャ!!」
(*´_ゝ`)「……で、"おこがましい"ってどういう意味だ?」
(´<_`;)「分からないのに怒ってたのか……」
この二人がジョルジュに気に入られているらしい理由が、分かった気がした。
側で眺めているだけでも、楽しい気分になれる。笑えてくる。
戦場には、こんな武将も必要なのかも知れない、と思った。
しばらく会話を聞いていたら、いつの間にかショボンとの約束の時間が迫っていた。
二人に断って、その場を立ち去る。
東塔最上階への階段を昇る。
扉を二度叩くと、中からすぐにショボンが対応してくれた。
どうやら待たせてしまったようだ。
- 221 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:48:03.51 ID:L6PwF5Ls0
- (;^ω^)「すみませんお」
(´・ω・`)「いや、いいさ。じゃあ行こうか」
具足に身を包んだショボンと共に、東塔の寮塔の中を通って下まで向かった。
城門まで直接行くのなら、寮塔を通過するのが一番早いのだ。
馬を曳いて城外に出る。
鮮やかな色のついた桜が、立ち並ぶ城外へ。
(´・ω・`)「綺麗だな」
ショボンが呟いた。
微かな笑みを浮かべながら。
( ^ω^)「綺麗ですお」
同じ言葉を返して、馬に跨った。
手綱を引いて駆け出す。森へ向かう。
馬があれば、さほど遠くはない距離だった。
アルファベットを携えた門兵に断って、森の中に入った。
――帰らずの森・ツンの小屋――
そろそろ日付が変わろうかという時間だった。
ツンの小屋には当然、まだ明かりが灯っていた。
- 226 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:49:57.94 ID:L6PwF5Ls0
- ξ゚听)ξ「こんばんは」
扉を叩くと、中からツンが現れ、屋内に招き入れてくれた。
礼を言って、ショボンと共に中へ入る。
いつもツンと共にお茶を飲んでいる机には、既に箱が置かれていた。
息を呑んで、その箱を見つめた。
手に、汗が生じていた。
(;^ω^)「……これが、Yですかお……?」
ξ゚听)ξ「そうよ」
蓋は、閉じられた状態。
まだ形状は確認できていない。
だが、はっきりと分かる。
今までのものとは、違う。
明らかに特異だ。
(´・ω・`)「さぁ……果たして、俺はYに達しているか……」
さすがのショボンも、少し緊張しているようだった。
誰だってそうだ。新しいアルファベットに触れる前は、緊張してしまう。
本当に触れられるかどうか、分からないのだから。
ξ゚听)ξ「ショボン様ならきっと、と私は思います」
(´・ω・`)「ありがとう。蓋を、開けてくれ」
- 237 名前:第63話
◆azwd/t2EpE :2007/08/15(水)
03:52:29.03 ID:L6PwF5Ls0
- ツンが、頷いた。
ゆっくりと箱に近づいていく。
一歩、二歩と。
自然と自分の体も、箱に近づいていた。
まるで、吸い寄せられるように。
引き寄せられるように。
ξ゚听)ξ「これが、アルファベットYです」
ツンの両手が、蓋にかかった。
そして、箱は開かれた。
第63話 終わり
〜to be continued
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