4 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:00:02.65 ID:F4HL/kIo0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
29歳 少将
使用可能アルファベット:S
現在地:ヴィップ城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
39歳 大将
使用可能アルファベット:X
現在地:ヴィップ城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
34歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:オリンシス城

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
37歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:ヴィップ城

●( ^Д^) プギャー=アリスト
35歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:シャッフル城
13 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:02:38.93 ID:F4HL/kIo0
●( ><) ビロード=フィラデルフィア
32歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:シャッフル城

●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
28歳 中尉
使用可能アルファベット:R
現在地:ヴィップ城

●( ФωФ) ロマネスク=リティット
22歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城

●(´・_ゝ・`) デミタス=コーフィー
27歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城

●\(^o^)/ オワタ=ライフ
25歳 少尉
使用可能アルファベット:?
現在地:ヴィップ城
15 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:03:14.62 ID:F4HL/kIo0
〜西塔の兵〜

●( ゚∀゚) ジョルジュ=ラダビノード
44歳 大将
使用可能アルファベット:V
現在地:ギフト城

●<ヽ`∀´> ニダー=ラングラー
45歳 中将
使用可能アルファベット:S
現在地:ギフト城

●(-_-) ヒッキー=ヘンダーソン
48歳 少将
使用可能アルファベット:O
現在地:ギフト城

●ミ,,゚Д゚彡 フサギコ=エヴィス
41歳 少将
使用可能アルファベット:?
現在地:ギフト城
19 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:04:07.27 ID:F4HL/kIo0
●( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ
43歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:ギフト城

●(´<_` ) オトジャ=サスガ
43歳 大尉
使用可能アルファベット:P
現在地:ギフト城


〜ラウンジの兵〜

●(`・ι・´) アルタイム=フェイクファー
47歳 大将
使用可能アルファベット:T
現在地:リリカル城

●( ’ t ’ ) カルリナ=ラーラス
33歳 少将
使用可能アルファベット:P
現在地:リリカル城

●( ̄⊥ ̄) ファルロ=リミナリー
31歳 大尉
使用可能アルファベット:R
現在地:リリカル城
21 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:04:38.18 ID:F4HL/kIo0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー/ギコ
少将:ブーン/プギャー

大尉:ビロード
中尉:ベルベット
少尉:ロマネスク/デミタス/オワタ


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:
少尉:

(佐官級は存在しません)
24 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:05:16.94 ID:F4HL/kIo0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:
M:
N:
O:ヒッキー
P:アニジャ/オトジャ
Q:
R:ギコ/プギャー/ベルベット
S:ブーン/ニダー
T:アルタイム
U:ミルナ
V:ジョルジュ/モララー
W:
X:ショボン
Y:
Z:

25 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:06:05.13 ID:F4HL/kIo0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

---------------------------------------------------

・ヴィップ 対 ラウンジ
(ギフト城〜リリカル城)

 

27 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:06:58.21 ID:F4HL/kIo0
【第62話 : bracing】


――リリカル城・軍議室――

 この城の軍議室は、いつも肌寒い。
 やけに広々としているためだ。
 おまけに暖炉もない。

 今日は曇天のため、尚更だった。

(`・ι・´)「十五日後、大攻勢を仕掛ける」

 一人だけ、椅子に腰掛けないままのアルタイムが言った。
 長尺のアルファベットTが背から伸びている。
 アルタイムは、もう何年もTを使っていた。

(`・ι・´)「もしこれでダメなら、ギフト城はいったん諦める。兵糧的にも苦しい。
      これが最後だ、という覚悟でみな臨んでくれ」

 アルタイムが筆を握った。
 地図に手を置き、線を描き入れていく。

(`・ι・´)「配置はいつも通りだ。あえて、な」

( ’ t ’ )「ということは、展開を変えるおつもりですか?」

(`・ι・´)「あぁ。ここまで、配置を変えずに来た。展開を変えればヴィップの意表を突ける」

( ’ t ’ )「しかし問題は、その展開でどう欺くかです」
35 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:09:07.14 ID:F4HL/kIo0
(`・ι・´)「考えはあるさ。まず、ギルバード中将に左翼から中央へ回ってもらう。
      これは戦が始まってすぐだ。そして、中央のファルロとカルリナを両翼へ。
      最後に右翼のリディアルを中央へ。これを迅速に行う」

( ’ t ’ )「中央にあえて歩兵を持ってくるわけですか」

(`・ι・´)「あぁ。そして両翼は騎馬隊で固めて、ヴィップ軍を押し包む。
      今までは全て中央を押しだした形で攻めていた。最後の最後で、逆にする」

 ギルバードやリディアルが深く頷いていた。
 以前より役割が大きくなったため、納得しているのだろう。
 それに、アルタイムの立てた作戦自体も悪くない。

 だが、自分は素直に頷けなかった。
 配置に不満があるわけではない。むしろ望むところだ。
 しかし、引っかかってしまう。作戦に、だ。

 アルタイムの作戦は、確かに悪くないが、決定打に欠ける。
 ヴィップの陣を潰走させることはできても、城を奪うまでには至れないのではないか。
 そう思ってしまったのだ。

 周りで細かい部分についての意見が交わされている間、ずっと考えた。
 あともう少しだけ、押しが欲しい。
 細々したものではない。ヴィップ軍がひっくり返るような、何か。

 必ずあるはずだ。
 考えろ、見出せ。
 この戦に勝利するために。
43 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:10:53.56 ID:F4HL/kIo0
( ̄⊥ ̄)「両翼からの進軍は、最初少し遅らせ、あとで一気に出たほうがいいと思います。
     そのほうが先手を取れるかと。カルリナ少将はどう思いますか?」

( ’ t ’ )「ん? あ、あぁ……そうだな」

 突然声が耳に入ってきた、という感じだった。
 思考に集中しすぎていた。

(`・ι・´)「しかし、下手をすれば中央が破られる。両翼とて安全ではないぞ」

( ̄⊥ ̄)「危険の先にしか見えない勝利もある、と思います」

(`・ι・´)「ふむ……なるほど……」

( ’ t ’ )(……ん……?)

 危険の、先。
 そこに見える、勝利。

 ――――そうか。
 あえて危険な道を進めばいい。
 それでこそ、ヴィップの不意を突ける。

 次々と戦の展開が頭に浮かんできた。
 まるで、ヴィップ軍のビコーズを目論見通りに討ち取ったときのように。

 いける。きっと、勝てる。
 この通りに戦を進められれば。
 ギフト城を、奪取できるはずだ。
50 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:12:38.01 ID:F4HL/kIo0
( ’ t ’ )「アルタイム大将、提案が」

(`・ι・´)「ん?」

( ’ t ’ )「左翼に回ったあと、僕はこう移動して――――この道を行きます」

 地図の上、指を滑らせる。
 左翼から自分が進む道を、描いていく。

 アルタイムが、目を見開いた。

(`・ι・´)「本気か、カルリナ」

( ’ t ’ )「もちろんです」

(`・ι・´)「……いい作戦だとは思うが、危険が過ぎるぞ」

( ’ t ’ )「その先にこそ見える勝利、でしょう」

 軽く笑って見せた。
 ファルロも、少しだけ口元が綻んでいた。

 アルタイムは、しばらく唸り続けていた。
 この作戦を取るか取らないか、悩んでいるのだろう。
 周りの将校は、アルタイムの言葉をただじっと待った。

 やがてアルタイムは、不意に頬を緩ませた。

(`・ι・´)「大したやつだ、お前は。これを考えただけでなく、自ら実行しようというのだから」
55 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:14:24.78 ID:F4HL/kIo0
 アルタイムが、再び筆を握った。
 自分がさっき指で引いた線の上を、なぞるようにして筆を動かしていく。

(`・ι・´)「それでいこう。ギフト城を、奪還しよう」

 大きく頷いた。
 周りの将校から、気合いを入れる声が上がる。

 作戦は固まった。
 あと五日。準備を整え、万端の状態で挑む必要がある。
 更に念入りな打ち合わせも必要だろう。

 自分の力を、見せてやる。
 そして、勝ってやる。
 待っていろジョルジュ。

 心の中の熱いものを感じながら、戦の日を待った。



――二日後――

――ギフト城・軍議室――

 年が明けてから、およそ一ヶ月が経った。
 その間、ラウンジといえば実に静かなものだった。

 静か、ということは、準備を整えている、ということでもある。
 それも半端な攻撃ではない。大攻勢を仕掛けてくるつもりだろう。
 この読みは、ジョルジュと一致していた。
61 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:16:05.44 ID:F4HL/kIo0
( ゚∀゚)「ラウンジは間違いなく近々のうちに攻め込んでくる」

 ジョルジュが腕と足を組みながら背凭れに体重をかけていた。
 不遜な態度に見えるが、それがジョルジュは楽な姿勢なのだという。

( ゚∀゚)「多分、これが最後だろう。春にはラウンジ城に帰るはずだ」

ミ,,゚Д゚彡「つまり、ここを防げばギフト城は守れるわけですね」

( ゚∀゚)「あぁ。当分は攻め込んでこねーだろうな」

<ヽ`∀´>「じっくり守りましょうニダ。慌てずに守れば、城は大丈夫ですニダ」

( ゚∀゚)「だろうな。今のラウンジに力押しで城を奪う力はねぇ」

(-_-)「……しかし、これが最後ということは……何かを仕掛けてくる可能性もあります……」

( ゚∀゚)「あぁ、その通りだ。警戒を強めなきゃいけねぇ」

 軍議室の机上には地図が広げられていた。
 リリカル城とギフト城の間の地図。
 詳細な地形が描きこまれている。

( ゚∀゚)「ラウンジはギフト城まで二十里くらいの位置に構えてくるだろう。
     こっちはギフト城まで十五里。五里を挟んで相対することになるはずだ」

( ´_ゝ`)「つまり、両軍の間には五里の距離があるわけですね」

(´<_`;)「おい、それはもうジョルジュ大将が仰ったことだぞアニジャ」
67 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:18:37.10 ID:F4HL/kIo0
ミ,,゚Д゚彡「五里ですか……ラウンジは詰めてくるでしょうね」

( ゚∀゚)「あぁ、そうだろうな。こっちはどっしり構えてりゃいい」

<ヽ`∀´>「盤石の守りの体勢で、ラウンジを退けて終わり、ですニカ?」

( ゚∀゚)「……いや、実はちょっとだけ悩んでんだよ」

 ジョルジュが地図に視線を落とした。
 将校たちの目線も、同じところに向く。
 どうやらリリカル城を見据えているようだ。

( ゚∀゚)「ラウンジはここで最大限、力を発揮してくる。攻めに全力を注いでくる。
     ……つまり、相対的に守りは疎かになる」

(-_-)「……リリカル城狙い……ですか……?」

( ゚∀゚)「それも考えるべきか、と思うわけだ」

 ジョルジュの考えは、分かる。
 いまラウンジは兵糧的に苦しい。軍を本城まで帰す必要が出てきている。
 遠征地まで兵站を繋ぎ続けるのは難しいからだ。

 つまり、ここでリリカル城を奪ってしまえば。
 ラウンジは、カウンターに出ることができない。

 リリカル城を奪取すれば、ラウンジの領土に楔を打てる。
 ダカーポ城、ヴァイアラス城、カレイドスコープ城などが狙える位置なのだ。
 戦略的な価値は、非常に大きい。
70 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:20:21.30 ID:F4HL/kIo0
 ラウンジがカウンターに出れない。
 奪ってしまえば、今後の戦で優位に立てる。
 それなら、リリカル城を狙うのは自然なことと言えた。

 だが、ジョルジュは悩ましげな表情を崩さなかった。

(-_-)「……リリカル城を狙いに行って……逆に、ギフト城を落とされることを……懸念しているわけですか……?」

 ジョルジュが、口に手を当てながら小さく頷いた。
 その視線は依然、地図の一点に向けられたままだ。

<ヽ`∀´>「確かに危険ですニダ。ラウンジのほうが兵数は多いですニダ」

( ´_ゝ`)「攻めに行った結果、守りが疎かになった、では元も子もありませんからね」

(´<_` )「たまにはまともなことも言うんだな、アニジャ」

ミ,,゚Д゚彡「しかしここで奪ってしまえば大きいでしょう。
     広大な領土を持つラウンジ相手なら、それくらいでいい、とも思いますが」

( ゚∀゚)「難しいとこだ。あからさまなリリカル城狙いじゃラウンジに必ず隙を突かれる。
     カルリナはそんなに甘い武将じゃねぇ」

ミ,,゚Д゚彡「守りに専念すると見せかけて、攻めにいきますか?」

( ゚∀゚)「上手く欺けりゃいいがな。自信がねーわけじゃねーが、カルリナは侮れん」

(-_-)「……成長著しい男ですからね……」

( ゚∀゚)「あぁ。アルタイムやファルロだってそれなりにやる。隙は見せれねぇ」
74 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:22:14.75 ID:F4HL/kIo0
<ヽ`∀´>「……やっぱりここは、守りを重視すべきだと思いますニダ」

ミ,,゚Д゚彡「僕はリリカル城を狙ってもいいと思います。城には五千を置いておけば大丈夫でしょう」

 ジョルジュはしばらく何も喋らなかった。
 ただじっと地図を見ながら、小さく唸っていた。

 いま西塔には九人の将校がいる。
 気が引けているのか、一人の中尉と二人の少尉は発言しないままだ。
 ただ、それぞれで何かを小さく囁き合っている。

 ジョルジュは、他を寄せ付けない空気を持っている。
 一般兵から話しかけられるようなことはまずないのだ。
 将校でさえこの有り様なのだから、兵卒が声をかけられるはずはなかった。

 自分は、ジョルジュがヴィップに投降する前から、西塔にいた。
 年もいくつか上だ。気兼ねなく喋ることができる。
 ニダーも恐らく同じ理由だろう。

 フサギコも最初は恐る恐るだったが、時が経つにつれ普通に喋れるようになったらしい。
 サスガ兄弟は最初から全く気にせず喋りかけていた。特にアニジャのほうだ。
 素っ頓狂なことばかりを言うが、それがジョルジュには気に入られたらしかった。

( ゚∀゚)「やはり守りが第一だな」

 ジョルジュが、小さく呟いた。
 しかし、ジョルジュが口に出せば、それは決定事項となる。
78 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:24:00.79 ID:F4HL/kIo0
ミ,,゚Д゚彡「やはりギフト城の守りが最優先、ですか」

( ゚∀゚)「とは言っても、リリカル城を諦めるわけじゃねぇ。隙あらば奪うつもりだ。
     相手に隙を作らせる戦い方もするさ。完全に守りに入るわけじゃねぇ。俺の趣味でもねーしな」

 確かにそうだ。
 ジョルジュは、常に攻めのことを考える。
 防衛戦でも隙あらば敵城を奪おうと考えている。

 そのジョルジュにしては、珍しい決断だった。
 もっと強引な攻めに出るか、とも思っていたのだ。
 ただ、この判断は恐らく正しいだろう、と感じた。

( ゚∀゚)「三日後には陣を完全な形にして備えるぞ。次の戦は難しいが、みんなよろしく頼む」

 全将校から呼応の声が上がって、席を立った。
 続々と軍議室から退出していく。

 ラウンジの攻めは、恐らく十日以上先だろう。
 奇襲に備える意味でも、三日後なら万全だ。

 自分は守りを任されることになるだろう。
 攻めの機会を窺うのはフサギコ。そしてサスガ兄弟。
 城には二人の少尉が残るはずだ。

 戦の準備を淡々と整えているうちに、すぐ三日は過ぎた。
 そして、ラウンジが攻め込んでくる日も、すぐにやってきた。
81 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:25:47.55 ID:F4HL/kIo0
――十日後――

 ラウンジの配置は、いつも通りだった。

(-_-)(鶴翼に近いな……)

 ジョルジュなら馬鹿の一つ覚え、と言うかも知れない。
 ラウンジの力が最も発揮される陣形だが、ワンパターンなのだ。

 しかし、ラウンジはこれが最後だ、というつもりで臨んでいるはずだ。
 最後くらい陣形を変えてきても良さそうだが、相変わらず真横に兵を並べただけだ。
 逆に不審なくらいだった。

( ゚∀゚)「なーんか、怪しいよな」

 馬上から敵陣を見つめるジョルジュが、こちらを見ないままに言った。
 陽の光を遮るために、眉のあたりに手を当てている。

(-_-)「……何か仕掛けてくるかも知れませんね……」

( ゚∀゚)「あぁ、動きを見たほうが良さそうだ」

 敵軍からの攻めを待った。
 こちらは守りの陣を敷いている。動かせない。
 ラウンジもそれは分かっているはずだ。攻め込んでくるしかない。

 二刻ほど経ち、ラウンジ軍の後方から鉦が鳴った。
 甲高く響く音色。同時に唸る、重低音。
 ラウンジ軍が、動き始めた。
88 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:27:49.57 ID:F4HL/kIo0
 そのラウンジが、何故か陣を組み替えた。
 いや、違う。あれは、配置を入れ替えているのだ。
 中央が両翼へ。そして、両翼が中央へ。

 今までは中央に騎馬隊を持ってきていた。
 だが、今回は両翼に騎馬隊を回している。

( ゚∀゚)「押し包む気か……?」

 軍内に微かな動揺が走った。
 動いたと思ったら陣を組み替えた、ラウンジの奇怪な行動のせいだ。
 惑わすためなのだろうか。

( ゚∀゚)「……気になるのはカルリナだ」

 ジョルジュは、左翼を見つめていた。
 カルリナの騎馬隊がそこに回っている。

 両翼に騎馬隊を回したということは、鶴翼のような陣形で攻め込んでくるのだろう。
 だが、それにしては騎馬隊の動きが遅い。
 まだほとんど横並びだ。

 機動力を活かして押し包むために、騎馬隊を両翼に回したのではないのか。
 あまりに始動が遅すぎる。
 これでは、中央の歩兵が危険なだけだ。

 奇々怪々。
 ラウンジの意図が、読めない。

( ゚∀゚)「……そうか……もしかしたら、カルリナは……」
92 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:30:11.02 ID:F4HL/kIo0
 首を捻りかけたときだった。
 ジョルジュの、声。

 何かを、感じ取ったような。

( ゚∀゚)「ヒッキー、陣を動かすぞ」

(-_-)「どういうことですか……? ラウンジの狙いは……?」

( ゚∀゚)「恐らく、カルリナはビコーズを討ち取ったときの再現を狙ってる」

 鉦が鳴った。
 方円陣形だったヴィップ軍が動き、陣を広げていく。
 ラウンジと同じような、鶴翼だった。

( ゚∀゚)「左翼から、あるいはラウンジ軍の後ろを通って大回りしながら右翼から、素早く迫ってくるはずだ」

(-_-)「……ッ……!」

( ゚∀゚)「多分右翼だ。ファルロを囮にして、森を使って密かに移動しヴィップの側面を突くつもりだ」

(-_-)「……だから、こちらの陣を鶴翼に組み替えたのですね……」

( ゚∀゚)「あぁ、鶴翼は横にも強い。方円のままだったら、前からの攻撃を受け止めながら横まで防ぐのは辛いからな」

 ラウンジが進軍してくる。
 さほど早くはない。むしろ遅いほうだ。
 カルリナの動きのためだろうか。

( ゚∀゚)「見ろ」
99 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:32:15.50 ID:F4HL/kIo0
 ジョルジュが指差した。
 左翼方向。
 カルリナの軍が、少しずつ後方に移動している。

 やはり後ろから右翼に回って、ヴィップの意表を突くつもりか。
 だがまだ安心はできない。読み切れていない可能性もある。

( ゚∀゚)「どちらにせよカルリナに時間を与えてやる必要はねぇ。
     ヒッキー、攻め込むぞ。準備しろ」

(-_-)「陣は……」

( ゚∀゚)「変えねぇ。このままでいい。こっちから迫ってやるだけでいいさ。
     隙があれば突き抜けてリリカル城まで到達したいが、後ろにカルリナがいるうちは無理だ。
     万一のことを考え、森の付近に一万の兵を向けておく。もし森からギフト城を狙ってきたとしても、それで防げるからな」

 手で了解を伝えて、手綱を引いた。
 馬が前足を上げて勢いよく駆け出す。

 中央近くの歩兵を率いる。
 両翼はサスガ兄弟が固めているはずだ。
 攻めだと分かった瞬間に二人が張り切ったのが、ここからでも分かった。

 陣を動かしていく。
 敵陣も、迫ってくる。
 間にある距離は、僅か一里。

 両軍から気勢が上がる。
 進軍の音が、交錯する。
109 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:34:14.46 ID:F4HL/kIo0
 ぶつかった。

(;-_-)「くっ……」

 ラウンジの攻撃は凄まじい。
 この戦に必ず勝つ、という気概が肌で感じ取れる。
 ラウンジ兵の眼がぎらついている。

 だが、ヴィップもここは負けられない。
 破らせるわけにはいかないのだ。

 アルファベットOを左右に振るって敵兵を討ち取る。
 防御型のアルファベットだが、攻撃面も悪くない。
 重量に任せて上から振り下ろせば、容易く胴を断ち割ることもできる。

 敵兵を蹂躙して突き進んだ。
 とにかく崩さなければならない。小さく固まられると厄介だ。
 敵の統率を奪ってしまうのが最善だった。

 両翼のサスガ兄弟が奮闘していた。
 敵の両翼を圧倒し、徐々に引き剥がしている。
 中央を孤立させようとしている。

 中央は、自分とフサギコ、そしてジョルジュがメインとなって攻め込んでいる。
 いずれは包囲できるよう、徐々に陣を広げながら。
 満月の横に三日月。例えるなら、そんな形だ。

 やがて、両翼は完全に離れた。
 あとは中央を押し潰してしまえばいい。更に包囲を広げていく。
 この中央にはアルタイムがいるはずだ。大将を封じてしまえば後は怖くない。
117 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:36:28.60 ID:F4HL/kIo0
 カルリナも、今頃は自陣を助けるのに躍起になっていることだろう。

(-_-)(……ん……?)

 カルリナは、自陣を助けるしかないはずだ。
 右翼から回ってヴィップを攻撃することはもうできない。
 森からギフト城への道も塞いである。

 なのに、カルリナの部隊がどこにもいない。
 ここからは見えないだけだろうか。両翼に回っているのだろうか。
 しかし、そんな気配も感じられない。

 嫌な予感がした。

(-_-)(……ジョルジュ大将に……)

 伝令を、送ろうとした。
 一度下がって様子を見たほうがいいのではないか、と。

 だが、遅すぎた。

 ラウンジは、いきなり陣を縦にしてヴィップ軍を突き破ったのだ。
 そしてそのまま二つに別れた。

 ヴィップの中央軍が、二つに分断された。
 ラウンジが二つに割れたことによって。

 故に、できたものがある。

 中央の、両軍のど真ん中の、道だ。
122 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:38:31.17 ID:F4HL/kIo0
(;-_-)「しまっ……!!」

 カルリナの軽騎兵。
 疾風の如き騎馬隊。

 ヴィップ軍の旗を掲げながら。
 両軍の中央を、堂々と疾駆していった。
 誰も、手出しできなかった。

 横から回ってくるのだと思っていた。
 そのために、後ろに下がったのだろうと。

 まさか、真ん中を突き進んでくるとは。
 全く想定していなかった。

 鉦が鳴っていた。
 ヴィップ軍からだ。
 後退しろ、という鉦。

 しかしラウンジが、そうさせてくれない。
 怒涛の攻め。猛烈な攻勢。
 反転、できない。

 ギフト城への伝令が慌てて駆け出していった。
 鉦を持っている。音で伝える気だ。
 複雑に音色が絡み合う。

(;-_-)「ッ……!!」
131 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:40:27.70 ID:F4HL/kIo0
 その、鉦の音。
 まさか、と思った。

 ジョルジュは、ギフト城の放棄を決断していた。
 誰もが、信じられない、と驚くほど早期に。

 確かに守り抜くのは難しい。
 カルリナは、ヴィップ軍の旗を掲げていた。
 薄汚れたもの。近くまで行けば、あの騎馬隊がヴィップ軍でないと気付く。

 だが、近くなってからでは遅いのだ。
 城門は開かれている。近くまで来てからでは、城内に侵入されてしまう。
 もし東門と西門の両方から侵入されれば、中のヴィップ軍は全滅するだろう。

 ギフト城に残っている兵はわずかに五千だ。
 対するカルリナは、およそ一万五千を率いていた。
 抗える数ではない。

 駄目だ、やはり守り抜けない。
 ギフト城を素早く放棄し、中の兵には上手く逃げてもらうしかない。

 そしていま重要なのは、すぐにでもパニポニ城まで戻ることだ。

 何度も何度も後退の鉦が打ち鳴らされていた。
 両翼の騎馬隊も慌てて反転している。
 自分も、すぐに後方へ向かわなければならない。

 何とかラウンジ軍から離れた。
 すぐに後退する。パニポニ城への道を行く。
 途中、森の側に置いていたヴィップ軍と合流した。
138 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:42:59.28 ID:F4HL/kIo0
 この森部隊を、城の近くに置いていれば。
 そうすればギフト城を放棄せずに済んだかも知れない。
 しかしもう、過ぎたことだ。

(  ∀ )「……俺の読み違えだ……すまん」

 後ろからジョルジュが追いついてきて、そう言った。
 何か言葉を返そうかとも思ったが、それは後でいくらでも言える。
 今はとにかくパニポニ城へ逃げ帰ることだ。

 ラウンジはギフト城の確保に躍起になるはずだ。
 恐らく深追いはしてこないだろう。
 だが、油断はできない。

 空が赤くなり、黒くなり、やがて月も輝きだした。
 時折休息を挟みながら、道を急いだ。
 ジョルジュの騎馬隊はかなり先行している。

 ラウンジからの追撃は振り切った。
 やはり、あまり激しくは追ってこなかった。
 ラウンジにそれほどの余力がないことは分かっていたが、安心できた。

 二度太陽の昇降を見たころ、ようやくパニポニ城に帰ることができた。
 兵たちの顔を見る。どう見ても、敗残者の顔つきだ。
 疲弊も相俟って、いっそう悲壮なものに見えた。

 戦に、負けたのだ。
 それも、あっという間に。

 皆の表情も、自然なものだった。
144 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:44:47.09 ID:F4HL/kIo0
( ゚∀゚)「みんな、すまん……俺のせいだ。全部、俺の読み違えだ」

 ジョルジュが、全軍の前で、声を発していた。
 いつもと変わらないように聞こえる。
 表情さえ、普段通り。

 だが、分かってしまう。
 恐らく、自分とニダーとフサギコとサスガ兄弟だけが。
 ジョルジュの、内に秘めた悔しさを。

 鮮やかだった。
 後ろで待っていたカルリナは、装備を軽くして真ん中を駆け抜けた。
 ヴィップ軍が驚き、目を丸くしている中で、堂々と。

 真ん中から駆ければ、ギフト城に最短距離で到達できる。
 しかもヴィップ軍の旗を掲げていた。あれでは、ギフト城の兵が門を閉める時間はない。

 ジョルジュの決断は素早かった。おかげで、ギフト城内の兵はほとんどが逃げ出せた。
 迅速な判断が多くの命を救ったのだ。
 もしギフト城に固執しても、いたずらに犠牲を増やしていただけだろう。

 だが、敗戦は敗戦だ。
 将校には、そして大将には、責任がある。

( ゚∀゚)「将校全員、責任は取る。みんな、すまなかった。
     だが、俺はラウンジと戦うことはやめない。しばらく休んだら、また城を奪いに行く。
     いくら責めてくれてもいい。だが、俺は必ず次の戦で、この負けを取り返す」

 不満の声は、全く上がっていなかった。
 兵たちは深く頷いている。
153 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:47:23.23 ID:F4HL/kIo0
 勝ち続けてきた。
 ヒグラシ城、カノン城、そしてギフト城を立て続けに奪った。
 あまりに好調すぎた。

 負けることだってある。
 当然だ。それが、戦だからだ。
 永劫勝ち続けることなどできない。

 次でまた勝てばいいのだ。
 ギフト城を、奪い返せばいいのだ。

 それを成し得る力が、ヴィップにはあるのだから。

( ゚∀゚)「しばらく休んで、力を蓄えよう。だが、気持ちだけは切らすな」

 ジョルジュが馬から下りて、徒歩で城へと向かった。

 兵たちは、誰が号令をかけたわけでもないのに、一斉にアルファベットを突き上げた。
 歪曲して尖った、三日月に向けて。



――ギフト城――

 まだ興奮が収まらなかった。
 ギフト城の城塔に立って夜景を眺めていても。

 ジョルジュに、勝った。
 初めて勝った。
162 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:49:59.47 ID:F4HL/kIo0
 完勝だった。

( ’ t ’ )(……よな……?)

 本当に、勝ったんだよな。
 誰かに聞いてみたい気分だった。

 アルタイムから、何度も何度も褒められた。
 そして、喜ばれた。
 即座に中将への昇格も決まった。

 それでもまだ実感が湧かない。
 自分の狙い通りに展開された戦を制したのに。

 ジョルジュは、あえて城を渡したのではないか。
 城内に何か罠を仕掛けているのではないか。
 そんな不安が常に付き纏ってきた。

 もちろん城内は調べさせた。
 城の奪還は急だったが、最低限の調査は忘れなかった。

 火のつきそうなものはない。穴もない。
 そして、ヴィップ軍は見る見るうちに遠ざかっていく。

 本当に、勝てたのだ。
 あのジョルジュに。ヴィップ軍に。

 勝つ道は必ず残されている、と思った。
 自分の実力を出し切れれば勝てる、と信じていた。
 それでも、不安でしょうがなかった。
172 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:52:36.46 ID:F4HL/kIo0
 断ち割れたヴィップ軍の真ん中を、駆け抜けたとき。
 全身に汗を感じた。手綱が汗で湿っていた。
 本当は、怖くて堪らなかった。

 だが、駆け続けていたときに、感じた風。
 汗に濡れた体を、心地よく冷やしていった。
 快感だった。

 ギフト城まではあっという間だったが、このままどこまでも駆けたい、と思えるほど爽快だった。

( ’ t ’ )(……浮かれてばかりはいられないな……)

 酒がこれほど美味く感じられる夜もなかった。
 だが、気を緩めるわけにはいかない。
 あのヴィップならすぐにでもカウンターを仕掛けてくる可能性がある。

 まずは、この城を守り抜くことだ。
 確固たるものとし、勝利を確定させる。
 それができて、初めてこの戦に勝てたと言えるのだ。

( ’ t ’ )(……ベル大将……見てくださっていますか……?)

 空に向けて、小さく呟いた。
 無数の星々。微かな輝き。
 その中で、一番輝いている星を見つめながら。

( ’ t ’ )(あなたはまだ遠い存在です……あまりに偉大な大将でした……。
    ですが、私はいつか、あなたを越えるべく……ベル=リミナリー以上の武将になるべく、これからも精進します)

 右手を、空に伸ばした。
178 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:55:04.80 ID:F4HL/kIo0
 この小さな手に、収まりそうなほど小さく見える。
 だが、近づけば近づくほど、あの星は大きく見えてくるのだ。

( ’ t ’ )(ずっと、見守り続けていてください。
    あなたのラウンジを、天下に導いてみせます。
    そしていつか、あなたを越えてみせます)

 伸ばしたままの手を、固く握り締めた。
 少しだけ星に笑いかけて、屋内に戻るべく振り返った。

 そのとき、足音が聞こえた。
 近づいてくる。音が、大きい。
 走っているようだ。

 やがて音は静止した。
 同時に、荒い息遣いが聞こえてきた。

(`・ι・´)「ここにいたか……」

 アルタイムだった。
 冬の極まる時期だというのに、ほとんど服を着込んでいない。
 かなり慌てているようだった。

( ’ t ’ )「どうなさったのですか?」

 軽く息を切らせている。
 これほど急いで自分のところまで来たというのは、ただごとではない。
 しかも、誰かに伝令を頼むのではなく、自分の足で来たのだ。

 何かが、あったのだ。
189 :第62話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/14(火) 02:57:45.53 ID:F4HL/kIo0
(`・ι・´)「……ヴィップから使者が来た」

 アルタイムの言葉を聞いてすぐ、また振り返った。
 城外に視線を向けた。

 西門の前で、数名のヴィップ兵が、直立不動の状態で待っていた。





















 第62話 終わり

     〜to be continued

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