- 2 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火)
12:01:10.40 ID:tkC5Yg6w0
- 〜東塔の兵〜
●( ^ω^) ブーン=トロッソ
28歳 少将
使用可能アルファベット:S
現在地:フェイト城付近
●('A`) ドクオ=オルルッド
28歳 中尉
使用可能アルファベット:P
現在地:オリンシス城
●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
38歳 大将
使用可能アルファベット:X
現在地:フェイト城付近
●( ・∀・) モララー=アブレイユ
33歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:フェイト城付近
●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
36歳 中将
使用可能アルファベット:R
現在地:フェイト城付近
- 4 :登場人物
◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火)
12:02:17.48 ID:tkC5Yg6w0
- ●( ^Д^) プギャー=アリスト
34歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:フェイト城付近
●( ><) ビロード=フィラデルフィア
31歳 大尉
使用可能アルファベット:?
現在地:フェイト城付近
●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
27歳 中尉
使用可能アルファベット:Q
現在地:フェイト城付近
- 8 :階級表
◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火)
12:03:28.26 ID:tkC5Yg6w0
- 〜東塔〜
大将:ショボン
中将:モララー/ギコ
少将:ブーン/プギャー
大尉:ビロード
中尉:ドクオ/ベルベット
少尉:
〜西塔〜
大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー
大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:
少尉:
(佐官級は存在しません)
- 11 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE
:2007/08/07(火) 12:04:23.05 ID:tkC5Yg6w0
- A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:
M:
N:
O:ヒッキー
P:ドクオ/アニジャ/オトジャ
Q:ベルベット
R:ギコ/プギャー
S:ブーン/ニダー
T:アルタイム
U:ミルナ
V:ジョルジュ/モララー
W:
X:ショボン
Y:
Z:
- 14 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE
:2007/08/07(火) 12:05:10.89 ID:tkC5Yg6w0
- 一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml
(現実で現在使われているものとは異なります)
---------------------------------------------------
・ヴィップ 対 オオカミ
(シャッフル城〜フェイト城)
・ヴィップ 対 ラウンジ
(ギフト城〜リリカル城)
- 20 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:06:08.84 ID:tkC5Yg6w0
- 【第58話 : Letter】
――シャッフル城とフェイト城の中間地点――
ドクオからの献策が届いたのは、夏の猛々しさが少しだけおさまりつつある頃だった。
すぐに軍議の召集がかかり、将校全員が集められた。
ショボンが手紙を差し出す。
開封されて、皆の眼前に晒された。
ただ黙してそれを読む。
最初にモララーが読み終わり、席についた。
軽く息を吐きながら。
それから徐々に皆が席に座っていく。
最後まで読み続け、そして考えこんでいたのは、ショボンだった。
( ・∀・)「なるほど……ってとこですか」
いつもなら真っ先に茶を飲み干すモララーが、今日は手もつけていない。
普段より真剣味が増しているように感じる。
( ・∀・)「確かにドクオの見通しは納得できます」
(,,゚Д゚)「そうですね……ミルナらしいと言えば、ミルナらしい作戦かと」
ショボンがやっと席についた。
それでもまだ、考えこんでいる表情は崩れない。
- 27 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:08:30.55 ID:tkC5Yg6w0
- ( ^Д^)「もしミルナがドクオの言う通りの作戦を取ろうとしているのなら、危険ですね」
(;><)「このまま同じように攻めてると危ないんです」
(,,゚Д゚)「それを潰す意味でも、やはり……」
ギコが手紙の一部を指差した。
そこに書かれているのは、ドクオ自身の行動について。
今後、どうするべきか、という内容だ。
( ^ω^)(ドクオは……)
南から一万を率いてフェイト城を攻めたい、と書いてあった。
正確には、敵軍をだ。
南から急襲し、ミルナの目論見を潰すという。
確かに、それならオオカミの陣は崩れる。
上手くいけば、そのままフェイト城を奪うことだって可能かも知れない。
オリンシス城からの攻めは当初より考えられていた。
いざというときには攻められるよう、準備しておけとショボンも言っていた。
何も問題はないはずだ。
(´・ω・`)「……ドクオに、攻めか……」
ショボンが力なく呟いた。
やはりまだ、何かを考えるような仕草を見せている。
- 32 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:10:44.02 ID:tkC5Yg6w0
- ( ・∀・)「不安ですか?」
(´・ω・`)「……多少な……」
(,,゚Д゚)「確かにドクオは守り型の武将ですが、攻めも問題なくこなせると思います」
( ・∀・)「でしょうね。たかが一万を率いて南から急行することくらい、できないほうがおかしい」
(´・ω・`)「……それは分かっているんだが……」
ショボンが腕を組んで背凭れを軋ませた。
やや伏し目がちのままで。
(´・ω・`)「あいつの言っていることは間違っていないと思う。筋も通っている。
ドクオの言う通りにやれば、勝てるというような気もする」
( ^Д^)「でしたら……」
(´・ω・`)「だが……俺の勘が、頷いてくれない」
それからしばらく、長い沈黙が続いた。
モララーさえ何も言わずにショボンを見つめている。
大将の言葉を待っているようだった。
蝉の鳴き声が透き通って幕舎の中にまで聞こえてくる。
風通しを良くするために開けられた穴から、涼風が吹きこんだ。
今日は抜けるような青空が広がっている。
- 38 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:13:10.89 ID:tkC5Yg6w0
- 白い雲は仰々しく、しかし音もなく流れていく。
大きな大きな、入道雲。
全て、覆い隠すような。
(´・ω・`)「……やはり、ドクオにはオリンシス城に留まってもらう」
不意にショボンが声を出した。
驚くべき内容を表現して。
( ・∀・)「それは、ドクオの攻めを疑っているからですか?」
(´・ω・`)「不安がないとは言わん。言わんが、他にも理由はある。
俺は、この作戦に挑ませることさえミルナの仕掛けた罠だという気がしてならないんだ」
( ・∀・)「ッ……」
(´・ω・`)「俺はドクオのことを信頼している。が、それとはまた話が別だ。
ミルナは全てを見越して作戦を考えているかも知れない。
その可能性がある限り、俺はあいつを攻めに使うことはできない」
( ・∀・)「……しかし、ドクオの考え通りだった場合のことも考慮する必要があります」
(´・ω・`)「そうだな……とりあえず、また様子見だ。
ドクオの読み通り、オオカミがこれからも陣を伸ばしてくるようなら」
( ・∀・)「こっちも兵をバラけさせて、敵軍に対応したほうが良さそうですね」
(´・ω・`)「あぁ。とりあえず、その方向でいってみよう」
- 42 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:15:33.32 ID:tkC5Yg6w0
- 軍議が、終わった。
皆が幕舎から退出していく。
しかし、どうしても皆と同じように、外に出る気になれない。
(´・ω・`)「……どうした、ブーン」
ショボンの表情は、平静に戻っていた。
今日初めて湯呑みに手を付け、口まで持っていく。
(;^ω^)「……ショボン大将……ドクオは、きっと攻めも上手くやってくれますお」
ショボンが口から湯呑みを離した。
小さな音を立てて机に置かれる。
また、ショボンは腕を組んだ。
そして額に手を移す。
(´・ω・`)「……俺だって、そう思ってる……いや、そう思いたい。
だが、今までドクオにはほとんど攻めさせたことがないんだ。
あいつの守りが優れているが故に、守りばかりを任せてしまった」
(;^ω^)「でも、オリンシス城戦じゃミルナ相手に上手く攻めましたお」
(´・ω・`)「それも守りを念頭に置いていたからだ、と俺は思っている。
実際、あいつは攻めも不得手ではないと思う。堅実な攻めを見せてくれるだろう。
だが、それは何も今じゃなくていい。また次の戦でいい。
今回はあまり博打に出たくないんだ。確実な戦い方で、確実に勝ちたいんだ」
- 44 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:17:56.29 ID:tkC5Yg6w0
- ショボンが、これほどまでに勝利への渇望を顕わにするのは、珍しかった。
ヴィップが勢いに乗っており、オオカミは確実に衰退している。
ここで勝てば今後のオオカミ戦も優位に立てるからこそだろう。
(´・ω・`)「きっとドクオも分かってくれるさ。大丈夫だ。
さぁ、俺は今からドクオに手紙を書く。出て行ってくれ」
少しだけ苛立ちが感じ取れる言葉だった。
頭を下げ、すぐに幕舎から退出する。
果てなく広がる青空。
君臨する入道雲。
その下で、少しだけぼんやりしていた。
ショボンの言うことは、分かる。
相手がミルナだということを考えれば、疑い過ぎるくらいでちょうどいいのだ。
でなければ、不意を突かれる恐れがある。
しかし、もしドクオの見通しが正しかった場合。
ドクオが南から攻めれば、オオカミに完勝できる。
立ち直れないほどの被害を与えることができる。
ショボンはあくまで慎重に戦おうとしている。
確かに、それでもいずれは勝てるかも知れない。
だが、オオカミに痛打を与えることはできない。
難しい局面だった。
( ^ω^)(……ドクオ……)
- 49 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:20:15.26 ID:tkC5Yg6w0
- 果たしてドクオは納得するだろうか。
指示を受け入れるだろうか。
いくらショボンの言葉とは言え。
ドクオは、昔から攻めの戦が好きだった。
紙の上で戦をやったり、"旗地"という盤上のゲームをやったりすると、いつも怒涛の攻めを見せるのだ。
そのあまりの勢いに、いつも抗えず負けていた。
ドクオは攻めたがっている。
そして、ミルナと戦いたがっている。
大人しくショボンの言うことを聞くとは限らない、と思った。
――オリンシス城――
思わず机を叩いてしまった。
驚き、そして落胆。
献策は、受け入れてもらえなかった。
(;'A`)「…………」
仕方のないことだ。
ショボンがそう決めたのだから。
攻めずに守れ、と言ったのだから。
- 56 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:22:47.81 ID:tkC5Yg6w0
- ショボンの言うことには、ある程度納得できる。
自分の献策に不備があったのかも知れない、と考えることもできる。
いずれにせよ、受け入れてもらえなかったのは事実なのだ。
仕方がない。
そう思い込もうとした。
(;V-V)「……ドクオ中尉」
('A`)「……ん……?」
(;V-V)「その……調練にあまり身が入っていないようでしたが……」
調練を終えて城に戻ろうとしたときだった。
スメアが、恐る恐るそう言ってきた。
('A`)「……すまない……」
調練の記憶すらない。
ただ呆然としていただけだ。
将校としてあるまじきことだった。
分かっているが、失意から立ち直れない。
調子に乗っていたのだろうか。
マリミテ城を守り切ったことで、自分の考えは通用すると思ってしまったのだろうか。
だから、これほどまでに気落ちしているのだろうか。
- 60 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:25:13.59 ID:tkC5Yg6w0
- (;V-V)「……やはり、ショボン大将の指示が……」
('A`)「あぁ……ちょっとショックだった、ってのが正直なところだ……」
(;V-V)「ショボン大将の言い分も、確かに分かりますが……」
オオカミの狙い。
それは、ヴィップ軍を引き込んでの一気打通。
あるいは、隙を突いてのシャッフル城奪取。
恐らく、それだろう、と思った。
陣の拡大は、敵陣を惑わすことで隙を見出そうとしている。
そのために時間も稼いでいる。
何より陣を拡大しておけば、少しでもシャッフル城に到達しやすくなる。
北か南か。
いずれかからヴィップ軍を躱し、シャッフル城に向かうつもりだ。
そうとしか思えなかった。
それに、北に向かえばトーエー川がある。
もし船が用意されていれば、遡上してシャッフル城を攻めることも可能なはずだ。
いずれにせよ、オオカミの狙いはシャッフル城にある。
もしシャッフル城が陥落すれば、ヴィップ軍は逃げ場を失ってしまう。
何とか南に逃げられたとしても、被害は甚大。
当分立ち直れないダメージを負ってしまうだろう。
そのためにミルナは敵の攻撃を受け止め、隙を作ろうとしているのだ。
あえて真正面から受け止めることでヴィップ軍の動揺も誘っている。
- 62 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:27:15.54 ID:tkC5Yg6w0
- あの広い草原では、軍を隠すことができない。
だからあえて全てを曝け出している。
ヴィップ軍の攻撃を受け止めることしか考えていない、と言わんばかりに。
だからこその、シャッフル城狙いだ。
今ヴィップが滞陣している箇所を躱せば、あとは無人の荒野を駆けるだけ。
あまり警戒してないシャッフル城を落とすことも可能だろう。
守りの戦で、シャッフル城を狙ってくるとは普通考えないはずだ。
マリミテ城防衛戦でも、ミルナは自分の命が狙われているとは恐らく考えていなかった。
敵の虚を突いたのだ。
('A`)「ミルナの作戦の怖いところは……あらゆる状況に対応できるってことだ」
( V-V)「臨機応変……ですか?」
山の陰に夕日が沈み、夜空に星が姿を現す。
今日は月がないため、星の輝きが強かった。
('A`)「シャッフル城狙いがまず第一。それは多分間違いない。
ヴィップがもし隙を見せれば即座に狙ってくる」
( V-V)「そうですね……」
('A`)「だが、ヴィップがオオカミ側の攻撃に怯えて守りに入ったりすれば、今度はフェイト城を守られる。
いや、多分もうショボン大将は後ろに兵を回してる。いざというときにシャッフル城を狙われないように」
( V-V)「となると……今度は攻めに問題が出てきますね」
- 70 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:29:31.46 ID:tkC5Yg6w0
- ('A`)「あぁ。それもミルナの狙いだろう。
戦いでは依然オオカミ不利だが、ヴィップが守りを考えているぶん、オオカミは楽になる。
するともしフェイト城を落とされたとしても、被害はかなり軽減される」
( V-V)「オオカミの被害が少ないと、カウンターを喰らう恐れがありますね」
('A`)「それもミルナは考えていると思う。あるいは、あえて城を渡してカウンターでヴィップに被害を与える可能性も」
( V-V)「城に仕掛けを施しておけば、可能ですね……」
('A`)「あぁ。オオカミの演技次第じゃ、仕掛けがあるかどうかも分からないまま城に多くの兵が入ることになる。
そこでもし仕掛けを発動されたら、大打撃を受けるのはヴィップのほうだ」
(;V-V)「……あらゆる状況に、対応できる作戦、ですか……」
('A`)「ヴィップはただでさえオオカミの行動が読めなくて、戸惑っている状態だからな……」
だから、ショボンにはこう献策した。
あえてオオカミにシャッフル城を狙わせたあと、オオカミ軍を南から突いて潰走させる、と。
ショボンには隙を作ってもらい、オオカミが東に進むよう仕向けてもらう。
そこで自分が南から攻撃し、オオカミを打ち破るのだ。
オオカミはシャッフル城が狙えるとなったら躍起になるだろう。
南の動向を確認している暇はないはずだ。
そこでの攻撃。オオカミは、防ぎようがない。
隙を見せてなおオオカミがシャッフル城を狙わないとしたら。
それでもいい。そのときこそ、堂々と南から姿を現せばいい。
いずれにせよ、軍を急派させればオオカミに南への対策を打つ時間はない。
- 75 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:31:45.41 ID:tkC5Yg6w0
- オオカミに籠城する体力はないはずだ。
野戦でヴィップ軍と相対するしかないのだ。
ショボン率いる本隊が東から攻めている間に、南からも攻撃を受ければ、陣は崩れるだけだろう。
いずれにせよ南から攻める効果はある。
オオカミ軍に大きな被害を与えられる可能性は高い。
だが、ショボンは認めてくれなかった。
城を守ってくれ、と言うだけだった。
もちろん理由は添えられていた。
端的に言えば、ここは無難に勝ちにいきたい、ということだ。
多少の博打味がある作戦をショボンは嫌ったのだ。
確かに、作戦は複雑になればなるほど綻びが出やすい。
些細なことで瓦解してしまう恐れもある。
だが、ここでオオカミに致命傷を与えるなら、南から攻めるべきなのだ。
でなければ、オオカミはまた復活してしまう。
ここで数万の兵を討ち取れば。あるいはミルナを討ち取れば。
オオカミは、立ち直れなくなるだろう。
だが、ショボンは安全に勝ちに行こうとしている。
それが悪いこととは思わないが、時間がかかりすぎてしまう。
今回の戦だけではなく、全体的なことも見通しての話だ。
南から攻め、決定打を与えるべきだ、と思う。
しかし――――。
- 81 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:34:00.78 ID:tkC5Yg6w0
- ( V-V)「……ドクオ中尉……」
スメアが小さな口から小さな声を出した。
城内の廊下、ただ歩く音だけが響いていた状況の中で。
( V-V)「もし納得がいかないのであれば、徹底的にショボン大将と論ずるべきだと私は思います。
でなければ後悔が残りますし、議論を深めるうちにまた見えてくるものもある、と」
窓がかたかたと揺れる。
風に、揺らされている。
小刻みに音を立てて。
('A`)「……なるほど……」
( V-V)「このままでは今後も調練に身が入らないことが予想されますし」
(;'A`)「すまん。でも、確かにそうだな……」
( V-V)「とりあえず今晩、ショボン大将への手紙をしたためて、気持ちをすっきりさせるのがよろしいかと」
('A`)「そうするよ。ありがとう、スメア」
スメアがにこりと笑った。
一日の九割以上を無表情で過ごすスメアだが、不思議と笑顔の似合う男だ。
仏頂面で、何を考えているのか分からないと兵からは言われるそうだが、素直な男だった。
いずれ東塔は将校の数が増える。
そのときには、スメアの名を少尉候補として出してみるつもりでいた。
- 86 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:36:28.04 ID:tkC5Yg6w0
- 夜、寝る前にショボンへの手紙を書き、すぐ届けてもらうよう兵に頼んだ。
夜に駆けさせ、毎回ルートを変えればオオカミに狙われる可能性も低い。
念のため、複数の兵を無作為に選んで駆けさせている。
言わば保険だった。
これなら裏切り者が出る恐れもなく、安心できる。
それからショボンの手紙が帰ってくるまで、調練に没頭した。
熱を入れて指揮を執ることができた。
スメアのおかげで心が晴れたのだ。
若干の期待と若干の不安を抱きながら日々を過ごした。
そして、手紙を送ってからおよそ半月ほどが経った。
ショボンから、手紙が帰ってきた。
(;'A`)「…………」
その内容。
半月前と同じ感情が襲いかかる。
やはり、攻撃は認められない、とはっきり書いてあった。
危険を伴うからだ、と。
ショボンは丁寧に自分の意見に対する言葉を返してくれた。
ひとつたりとも漏らさずに。
- 88 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:38:35.02 ID:tkC5Yg6w0
- だが、それでも納得はいかなかった。
オオカミに打撃を与えるなら、南からの攻撃が有効である事実は揺るがないのだ。
ショボンもそれは認めているのだ。
再び手紙を送り返した。
徹底的にやる。納得するまで、何度でも。
でなければ、きっと悔いが残ってしまう。
草原を芒が埋める頃、ショボンから再び手紙が届いた。
しかし、やはり城を守ってくれとの内容。
ショボンは「危険性がある」の一点張りだった。
一度、とにかくやらせてほしい。
上手くやれる自信はある。勝てる自信はある。
オオカミを、攻めたいのだ。戦いたいのだ。
すぐに手紙を書いてもう一度送った。
今度こそと。これで承諾いただけないなら諦めます、と添えて。
必死だった。
ヴィップの勝利が最優先だ。
それは分かっている。個人的な感情ばかりを先走らせるわけにはいかない。
だが、長期的な眼で見れば、ここでオオカミに痛打を与えておいたほうがいいに決まっているのだ。
確信だった。
間違いない、と思っていた。
やがて秋が深まり始めた。
木々が色を濃くし、心地よさそうに風に揺れている。
その側で、もう何度調練を繰り返しただろうか。
- 94 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:41:56.08 ID:tkC5Yg6w0
- 日々に飽いたわけではない。
自分では、そう思っている。
だが、馬に跨るときに何となく気分が重くなってしまう自分がいるのは事実だった。
これが長駆するための騎乗だったらどれほど嬉しいか。どれほど気分が躍るか。
そう考えてしまうこともあった。
戦いたい、と思っている自分がいることは、次第に隠せなくなっていった。
そして、ショボンからの手紙が届けられた。
北からやってきた兵が伝令章を示し、手紙を渡してくれる。
礼を言って受け取った。
これが最後。今回も否定されたら、諦めなければならない。
覚悟はできていた。
慎重に封を開けた。
瞬間、部屋から飛び出してしまった。
部屋の外で待っていたスメアが驚いている。
すぐに言葉を出そうと思ったが、興奮で上手く声にならない。
(*V-V)「も、もしや」
スメアは、気づいてくれたようだった。
(*'A`)「あぁ! 攻撃許可が出たぞ!」
- 104 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:44:05.63 ID:tkC5Yg6w0
- すぐにオオカミを攻める。
オオカミを目いっぱい引き付けるから、そのときに後ろから攻撃して、オオカミを壊滅させてやってくれ。
走り書きでそう書いてあった。
粘り勝ちだった。
ショボンも遂には受け入れてくれた。
やっと戦ができる。攻められる。
ミルナと、戦える。
('A`)「すぐに戦の準備をしろ! 一万を率いてフェイト城を攻めるぞ!」
オリンシス城には一万を残す。
この数なら、例えオオカミ城から八万の兵が来てもしばらく耐えられるはずだ。
そして、今のオオカミに八万の兵を出す余裕はない。
恐らく、この収穫前の季節だからこそ、ショボンは決断してくれたのだろう。
まだ兵糧が上がっていないため、オオカミは戦を継続できるかどうかがかなり際どい。
焦っている状況では冷静さや判断力が失われ、戦でも不利となる。
それに、オオカミ城から兵が来る心配もない。
安心して北に向かえる。
二日で全ての準備を終えた。
一万。全て騎馬兵。
疾駆し、一日でも早く北へ向かう必要がある。
急行すれば、オオカミに気付かれる前にフェイト城周辺へ到達できるはずだ。
とにかく、早く駆けつける必要があった。
- 109 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:46:39.02 ID:tkC5Yg6w0
- ('A`)「行くぞ! オオカミを滅するための戦へ!」
さっとアルファベットを振り上げ、手綱を引いて駆け出した。
再戦への道に、勝利への道に、馬蹄を刻みつけながら。
――フェイト城とシャッフル城の中間地点――
それは、あまりに不意で。
そして、誰もが混乱する報せだった。
ドクオの、出撃。
ドクオが、一万の兵を率いてオリンシス城を発ったというのだ。
何も聞かされていなかった。
混乱してしまうのも、当然だった。
(;^ω^)「ショボン大将!!
どういうことですかお!?」
( ・∀・)「あれだけ認めないと言ってたのに、土壇場でこれですか!?」
将校全員がショボンの許へ詰めかけた。
わけが分からなかったからだ。
ドクオの攻めは認めないと再三言っていた。
はっきりと、何度も何度も。
だが、ドクオは出撃したのだ。
- 116 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:48:37.96 ID:tkC5Yg6w0
- ショボンが認めたというのか。
皆が驚いた。唖然とした。
まさか、と思った。
そして、何故か。
(;^ω^)「……ショボン大将……?」
何故かショボンまでもが、その報せに、驚いていたのだ。
(´・ω・`)「どういうことだ……!?」
ショボンが大きな拳を振り下ろした。
一撃で机が断ち割れる。
無残な木片へと姿を変える。
(,,;゚Д゚)「どういうことだ……って……」
(´・ω・`)「認めていない。俺は認めないとずっとドクオに言っていた。
最後までその姿勢は変えなかった」
(;^ω^)「じゃ、じゃあどうしてドクオは!!」
(;><)「どういうことですか!? 分かんないんです!!」
(´・ω・`)「……勝手に出撃したのか……?
いや、違うな……」
ショボンはドクオからの手紙を握り締めていた。
いや、握り潰していた。
- 132 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:50:40.33 ID:tkC5Yg6w0
- ドクオから、手紙の返事があったのだ。
攻撃許可を喜び、礼を伝える手紙が。
ドクオは、攻撃の許可を得たつもりで出陣した。
ショボンは許可を出していないのに。
その二つの間に、はっきりと食い違いが出ている。
――――となれば――――答えは――――。
(´・ω・`)「……手紙が、すり替えられたのか……?」
そんな、バカな。
手紙は盗まれないよう細心の注意を払っていた。
いくつもの防衛策を立てていた。
それなのに、すり替えられてしまったのか。
いったい、どうやって。
( ・∀・)「仮にすり替えたとしても文字で気付くはずです。普通なら」
( <●><●>)「普通でなかった可能性があります」
ベルベットの声は、異彩を放っていた。
皆が落ち着きを失っている中でも、冷静さに満ちていたのだ。
- 138 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:52:57.87 ID:tkC5Yg6w0
- ( <●><●>)「何度も攻撃の許可を求め、却下され……やっと認められたのだとしたら。
喜びで、文字など何も気にしなかったのではないでしょうか」
(;^Д^)「……わざと雑に書いてごまかしたって可能性も……急いで書いたと見せかけて……」
(´・ω・`)「……クソッ!!」
ショボンがアルファベットを握った。
幕舎を切り裂いて外に出ていく。
(´・ω・`)「今すぐ南に向かうぞ。ドクオは、オオカミに嵌められたんだ」
全身に、寒気が走った。
オオカミの、思いもよらなかった作戦に。
ドクオの、かつてない危機に。
戦に負けてしまうかも知れない、友を失ってしまうかも知れない。
その、恐怖に。
脅かされ、体が震えた。
- 146 :第58話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/07(火) 12:55:12.34 ID:tkC5Yg6w0
- ヴィップ軍が、慌ただしく動き出した。
誰もが動揺を隠せないままに。
第58話 終わり
〜to be continued
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