3 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 16:42:41.75 ID:83V4qJmK0
〜東塔の兵〜

●( ^ω^) ブーン=トロッソ
27歳 大尉
使用可能アルファベット:S
現在地:オリンシス城

●('A`) ドクオ=オルルッド
27歳 中尉
使用可能アルファベット:P
現在地:オリンシス城

●(´・ω・`) ショボン=ルージアル
37歳 大将
使用可能アルファベット:W
現在地:オリンシス城

●( ・∀・) モララー=アブレイユ
32歳 中将
使用可能アルファベット:V
現在地:オリンシス城

●(,,゚Д゚) ギコ=ロワード
35歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城
9 :登場人物 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 16:44:08.17 ID:83V4qJmK0
●( ^Д^) プギャー=アリスト
33歳 少将
使用可能アルファベット:R
現在地:オリンシス城

●( ><) ビロード=フィラデルフィア
30歳 中尉
使用可能アルファベット:?
現在地:シャッフル城

●( <●><●>) ベルベット=ワカッテマス
26歳 少尉
使用可能アルファベット:P
現在地:オリンシス城
13 :階級表 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 16:44:52.28 ID:83V4qJmK0
〜東塔〜

大将:ショボン
中将:モララー
少将:ギコ/プギャー

大尉:ブーン
中尉:ビロード/ドクオ
少尉:ベルベット


〜西塔〜

大将:ジョルジュ
中将:ニダー
少将:フサギコ/ヒッキー

大尉:アニジャ/オトジャ
中尉:ビコーズ
少尉:

(佐官級は存在しません)
15 :使用アルファベット一覧 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 16:45:38.19 ID:83V4qJmK0
A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:
M:
N:
O:ヒッキー
P:ドクオ/ベルベット/アニジャ/オトジャ
Q:
R:ギコ/プギャー
S:ブーン/ニダー
T:アルタイム
U:ジョルジュ/ミルナ
V:モララー
W:ショボン
X:
Y:
Z:
18 :この世界の単位&現在の対立表 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 16:46:19.31 ID:83V4qJmK0
一里=400m
一刻=30分
一尺=24cm
一合=200ml

(現実で現在使われているものとは異なります)

---------------------------------------------------

・ヴィップ 対 ラウンジ
(パニポニ城〜ギフト城)

 

21 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 16:47:06.25 ID:83V4qJmK0
【第56話 : Confer】


――523年・秋――

――オリンシス城――

 戦後処理もようやく終わった。
 新しく城を手に入れた後はいつも任務に忙殺される。
 しかし、それは楽しさすら感じるものだった。

( ^ω^)(新しい城はいいもんだお……)

 オオカミが全てを残していってくれたため、マリミテ城のときよりは楽だった。
 あのときは処分しうるもの全てを処分されたため、煩雑な作業が多かったのだ。
 今回は睡眠も充分に取ることができている。

 昼過ぎになってから、軍議の召集がかかった。
 昨日ドクオがマリミテ城から移ってきたためだろう。
 久しぶりの軍議だった。

('A`)「お、ブーン」

( ^ω^)「ドクオ、軍議室に行くのかお?」

('A`)「おぉ。遅刻しちゃマズイしな」

 昨日の夜はドクオと二人で飲み明かした。
 互いの戦功を讃え合った。
29 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 16:49:41.77 ID:83V4qJmK0
 ドラル=オクボーンの討ち取りは、自分が今まで得た中でも最高の武勲だ。
 しかし、それもドクオの成し遂げたことと比べれば霞んでしまう。
 ミルナ率いる五万の兵を相手に、完勝したのだ。

 結局は、ドクオの目論見通りに戦が展開された。
 無論、ドクオの処罰は帳消しになり、昇格さえ噂されている状態だった。

 オリンシス城戦が終わったあとすぐ、キョーアニ川からミルナの軍が現れた。
 城塔のヴィップ軍旗を見てミルナは全てを察したらしく、城を素通りしてオオカミ城に向かった。
 あのオオカミ軍の背中は何故か印象に残っていた。

 二人揃って軍議室に入ると、中には既にショボンがいた。
 頭を下げて着座する。

(´・ω・`)「今日の軍議は長くなるぞ。色々と話すことがある」

( ^ω^)「了解ですお」

(´・ω・`)「ドクオ、もちろんお前のことについてもだ」

('A`)「はい」

 ドクオの表情は平静のままだった。
 不安げでもなく、何かを期待している風でもない。
 それも当然か、と思った。

 続々と将校が集まり、最後にモララーが入ってきて、全員が椅子に座った。
 モララーは早速湯呑と茶菓子に手をつけ、口に放り込んでいる。

(´・ω・`)「まずはドクオ、よくやってくれた」
37 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 16:52:14.32 ID:83V4qJmK0
 ショボンが声を発し、軍議が始まった。
 ショボンの背には、清々しいほどの青空が見える。
 空の全てを捉えられるような、大きな窓があるのだ。

 その窓の側を白い鳥が翔けていき、そこに羽根が舞った。

('A`)「ありがとうございます」

(´・ω・`)「お前への処罰はなしとする。当然のことだが」

('A`)「寛大な措置に感謝致します」

(´・ω・`)「それと関連して、昇格について発表しようと思う。
      既にアラマキ皇帝から書簡で許可を得ている」

 ショボンが懐から封筒を取り出した。
 純白のそれは、厳重な保護の下で運ばれてきたのだと一目で分かる。
 それほどに美しい状態を保っていた。

(´・ω・`)「まずはギコ=ロワードを中将に」

(,,゚Д゚)「ありがとうございます」

(´・ω・`)「ブーン=トロッソを少将に」

( ^ω^)「謹んでお受けしますお」

(´・ω・`)「そして、ドクオ=オルルッドを大尉に」
45 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 16:54:52.25 ID:83V4qJmK0
 しかし、そこで何故か、場が静まった。
 驚きを隠せなかった。

 同じように。
 自分やギコと同じように、喜びの声を発すると思った。
 しかし、ドクオは一瞬考えたような素振りを見せたあと、否定の声を出した。

('A`)「ありがたいお話ですが、今回は失敗を取り戻したに過ぎません。
   本来なら死罪となっていたのです。昇格は、納得できません」

(´・ω・`)「失敗を取り戻す以上の活躍だったさ」

('A`)「そう言って下さるのは嬉しいことですが、過ぎた処遇かと存じます。
   ミルナ=クォッチを討ち取っていればそれも納得できたかと思いますが、私はミルナを討ちそびれました」

(´・ω・`)「……だから昇格は固辞させてほしい、ということか?」

('A`)「はい。此度は何の処罰もなかったというだけで充分、ありがたいことです」

(´・ω・`)「分かった。そこまで言うなら中尉に留め置こう」

 ショボンが筆を取り出して、紙を横切らせた。
 ドクオの部分に線を入れたようだった。

(´・ω・`)「それと、ベルベット=ワカッテマスを中尉とする」

( <●><●>)「はい」

 ベルベットの反応は短かった。
 らしいといえば、ベルベットらしい。
54 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 16:58:14.53 ID:83V4qJmK0
(´・ω・`)「あと、ここにはいないがビロードも大尉とする。半ば繰り上がりだが」

( ・∀・)「しかし、将校は一気に減ってしまいましたね」

(´・ω・`)「あぁ。いずれ何人か少尉に引き上げる必要があるな。
      それと、将校を失ったことに関してだが、前にも言ったとおり俺に責任がある。
      大将が責任を取るというのは難しいことだが、やはり無給処分が妥当かと思う」

(,,゚Д゚)「ショボン大将のせいではないと思いますが……」

(´・ω・`)「俺のせいさ。特にシラネーヨに関してはな。心を繋ぎ留めておけなかった」

( ・∀・)「ありゃーどうしようもなかったですよ。無能なくせに何故か自信だけは持ってる扱いにくい奴でした」

(´・ω・`)「確かに扱いにくい男だったがな……そこを上手くやっていれれば、イヨウは死なずに済んだのかと思うと……」

( ・∀・)「言い出したらキリがないですよ。それに、みんな死ぬ覚悟でやってるんですから。
     シラネーヨをあれ以上の処遇にすると邪魔くさいだけだったでしょう」

(´・ω・`)「……まぁ……そうなんだが……」

( ・∀・)「ショボン大将が責任を取るというのは自分も間違ってると思いますが、決めたことなら仕方ないです。
     人手不足ってな理由だけでモナー中将が将校に引き上げた人材ですし、何も責任はないと思いますけど」

(´・ω・`)「……とにかく処罰は受けるさ。全てのミスは大将に繋がっているんだ」

 ショボンが紙を再び封筒に収めた。
 懐には入れず、そのまま机に置く。
 湯呑を一度傾け、一息ついてから再び喋り出した。
59 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:00:56.60 ID:83V4qJmK0
(´・ω・`)「西塔がラウンジ相手に勝利を収めた。
      ギフト城を奪取したそうだ」

(,,゚Д゚)「……犠牲はなかったのですか?」

(´・ω・`)「ビコーズ中尉がカルリナに討ち取られてしまったらしい。
      しかし他には将校を失うこともなく、犠牲もさほど多くはなかったそうだ」

 ギコは、無表情を装っていた。
 だが、心の底では安堵しているのだ、とすぐに分かった。

( ・∀・)「アルタイムとカルリナのコンビは連敗続きですね」

(´・ω・`)「悪くないコンビだと思うがな。まぁ、さすがにジョルジュ大将は戦が上手い」

( ^ω^)「戦はどんな感じだったんですかお?」

(´・ω・`)「報告を聞く限りでは、正面からのぶつかり合いはそれほど多くなかったようだ。
      不意を突いた攻撃を何度も繰り返し、ラウンジ軍を疲弊させ、空隙を突いて城を奪ったらしい」

( ・∀・)「ジョルジュ大将らしいとも言える戦ですね」

(´・ω・`)「まぁ、そうだな」

( ・∀・)「カルリナはまだ経験を積んでいる段階ですか。しかし、その犠牲は大きい」

( ^Д^)「若い将だから、失敗も許されるんじゃないですか?」

( ・∀・)「そろそろ反発も出てくる頃だと思うけどな」
71 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:03:43.07 ID:83V4qJmK0
 カルリナの才気は、ベルが認め、直々に伸ばしていたものだ。
 初めて全体の指揮を任された戦では完勝したものの、その後、目覚ましい活躍はない。
 本人にも焦燥や落胆があることだろう。

(´・ω・`)「まぁ、カルリナはいずれ成長することと思うがな。伸び悩んでいる感はあるが」

( ・∀・)「ヴィップの覇道に立ちはだかってきますか」

(´・ω・`)「そうなるだろう。アルタイムもそれを分かっているから、
      勝てなくても指揮官として起用しているのだと思う」

(,,゚Д゚)「若い人材を育てるのは大変ですからね。特にラウンジは、もうベル=リミナリーがいないわけですし」

(´・ω・`)「思ったよりアルタイムが頑張っているようだが、苦しい状況であることに変わりはないだろうな」

( ^Д^)「カルリナの活躍をじっと待っているわけですね」

(´・ω・`)「そういうことだろう」

 ショボンが湯呑の茶を飲み干した。
 ベルベットが立ち上がり、ショボンの湯呑に茶を注ぐ。
 軽く礼を言ってショボンは再び喋り出した。

(´・ω・`)「今後についても話しておこう。まず、次に狙う城のことだ」

 ショボンが地図を広げた。
 局所的なものではなく、全体的なものだ。
77 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:06:35.58 ID:83V4qJmK0
(´・ω・`)「オリンシス城から狙える城は二つ。フェイト城、そして、オオカミ城だ」

( ・∀・)「遂に敵の牙城に迫りましたね」

(,,゚Д゚)「感慨深いものがあります」

(*^ω^)「おっおっおっ」

('A`)「最終決戦、ですか?」

(´・ω・`)「いや、そうしたいところだが、まだオオカミ城は攻められない。
      この状況、中々に難しいと言わざるを得ないだろう」

 ショボンが筆で線を引いていく。
 オリンシス城から、オオカミ城を繋ぐ線。
 そして、フェイト城から南へ、真っすぐ引かれる線。

(´・ω・`)「オリンシス城からオオカミ城を攻める際、必ずフェイト城から圧力を受けることになる」

( ・∀・)「多少離れていますが、そのへんはひたすら草原が続いていますからね。騎馬隊なら一瞬でしょう」

(´・ω・`)「あぁ。下手したらオリンシス城も攻められかねん」

(,,゚Д゚)「ミーナ城も決して遠くはありませんし、まだオオカミ城を攻めるのは時期尚早ですか」

(´・ω・`)「危険が多すぎる、ということだ。ここはやはり、先にフェイト城を落とそうと思う」

 そして、ショボンはオリンシス城とシャッフル城から、フェイト城への線を引く。
 二つの線の長さは、ほぼ同等だった。
81 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:09:17.91 ID:83V4qJmK0
(´・ω・`)「いまオオカミはドラルを失って軍の中枢が揺らいでいる状態だ。
      敗戦のダメージからも立ち直れていない。早めに攻め込むべきだと思う」

( ・∀・)「そろそろ収穫が終わるでしょうし、兵糧的には問題ありませんね」

(´・ω・`)「連戦だから兵の疲れが心配だがな。しかし、ここは休めん」

(,,゚Д゚)「年明けくらいに戦ですか?」

(´・ω・`)「そうなるな。冬の間に、三万の兵をシャッフル城に移す」

( ・∀・)「シャッフル城からの攻めですか? オリンシス城ではなくて」

(´・ω・`)「そのほうがいいだろう。オリンシス城はオオカミ城から睨まれている。安心して攻め込めん」

( ・∀・)「ま、いざというときにはオリンシス城からの攻めも考えつつ、基本的にはシャッフル城から、ということですか」

(´・ω・`)「そうだ。だからこの戦ではオリンシス城が大事になる」

( ^Д^)「的確な判断ができ、戦を見通す力に長けてて、尚且つ守りに優れた武将、ですか?」

(´・ω・`)「あぁ。だからここは、ドクオに任せようと思う」

 ショボンの視線がドクオに向いた。
 ドクオはじっと地図を見つめている。
 皆の視線が集まり、しばらくしてからようやく、ショボンの言葉に気づいたようだった。
88 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:12:18.90 ID:83V4qJmK0
(´・ω・`)「ドクオ、お前の守りの力はもはや誰もが認めるところだ。
      お前ならこの難しい状況でも上手くやっていけると思う。
      いま俺の構想では、お前以外の全員をシャッフル城に向かわせるつもりでいる。
      またお前には孤独な戦を強いてすまないが、やってくれるか?」

('A`)「もちろんです。大役を任せていただき、ありがたく思います」

 ドクオが軽く頭を下げた。
 長い前髪が机に触れそうな位置にまで垂れ下がる。

(´・ω・`)「三人の将を失った。埋めがたい穴が開いてしまった。
      皆が奮起して補うしかない。共に頑張ってくれ。
      必ずや、オオカミを討ち果たそう」

 皆が頷いた。
 心に期するものを感じながら。
 ショボンに熱い視線を送りながら。

(´・ω・`)「じゃあ、今日の軍議は終わりだ。散会」

( ・∀・)「ちょっと待って下さい」

(´・ω・`)「ん?」

 モララーが立ち上がって、何かを指差した。
 部屋の片隅。
 何かが、ある。

 ショボンがそれを見て、思い出したように手を叩いた。
95 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:15:51.35 ID:83V4qJmK0
(´・ω・`)「あぁ、忘れていた。お前たちを驚かせてやろうと思って持ってきたんだが」

( ・∀・)「もしや……」

(,,;゚Д゚)「そ、それは……」

(´・ω・`)「あぁ、アルファベットXだ」

 皆が一斉に机から身を乗り出した。
 自分やドクオの身長と同じくらいの大きさの箱。
 漆黒色に染められている。

(´・ω・`)「オリンシス城戦が終わったあと、ツンさんに勝利を報告するついでに、お願いしてみたんだ。
      まぁ、もしかしたら扱えるようになっているかも知れないな……くらいの軽い気持ちで。
      まさか本当に扱えるようになっているとは思わなかった」

 ショボンが箱を持ち上げ、机に置いた。
 皆の視線が注がれる。
 緊張が走る。

 モララーは誰よりも箱に近づいている。
 普段あまり物事に興味を示さないベルベットさえ、立ち上がっていた。

(´・ω・`)「実際に何度か振るってみたが、いいアルファベットだ。
      強いぞ、Xは」

 ショボンが、蓋を開けた。
 アルファベットが、窓からの光を照り返して、眩しく輝いていた。
116 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:19:36.77 ID:83V4qJmK0
 三本の刃と、一本の柄。
 十字剣だ。

 全長はおよそ六尺半、といったところだろう。
 PやUと同じくらいのリーチがある。

 力任せに振るえば、いとも容易く敵兵を討ち取れそうだった。

( ・∀・)「これは……片手だとどうですか?」

(´・ω・`)「多少辛いが、振るえんことはない」

( ^ω^)「Wからどれくらいかかりましたお?」

(´・ω・`)「二年足らずだな。一年半くらいか。やはり弓系は突破が早い」

(,,゚Д゚)「これで、ベルを越えましたね」

(´・ω・`)「それが何より嬉しい」

('A`)「史上最高位ですか……さすがショボン大将です」

( <●><●>)「ショボン大将なら当然だと分かっていました」

(´・ω・`)「大将として、他者の目標となれるような力は持っていたい。
      お前たちも早くここまで来い。俺はずっと待っているぞ」

 ショボンが笑みを浮かべながらXを握って、席を立った。
 軍議が終わって皆が外に出る。
128 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:23:03.06 ID:83V4qJmK0
('A`)「いやーしかし……ん?」

(;^ω^)「お?」

 自室に向かおうとしたら、何故かショボンがいた。
 皆が驚いて立ち止まる。
 軍議が終わったのに、皆が出てくるのを待っていたということは、何かがあるのだ。

 ショボンが言いにくそうにしながら、躊躇いながら、口を開く。

(´・ω・`)「……すまん、言い忘れていた。今晩祝勝会を開くぞ」

(;^ω^)「……おっ、それだけですかお?」

(´・ω・`)「あぁ。完全に忘れていた。もう準備は進めさせているんだがな。
      ささやかなものだが、勝利を味わっておくのも悪くない」

( ・∀・)「そうですね。楽しみましょう」

(*^ω^)「おっおっおっ」


 そして夜になった。
 大広間に兵が入り、酒を飲み交わす。
 ささやかだとショボンが言っていた通り、あまり量は多くなかった。

 料理も少なめだったが、敵の本城に接している状態なら、これで充分だろう。
 あまり大規模にやって浮かれ過ぎるのもよくない、とショボンは思っているようだ。
138 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:26:18.34 ID:83V4qJmK0
(´・ω・`)「まずは皆、ミルナを相手に完勝を収めたドクオに乾杯だ!」

('∀`*)「いぇぇぇーい!!!」

 ドクオは完全に酔っぱらっていた。
 相変わらず、酒には弱い。

(´・ω・`)「そしてドラルを討ち取ったブーンにも乾杯!」

(*^ω^)「おっおっおっ、恐縮ですお」

 皆の杯が掲げられていた。
 一斉に飲み干し、歓声が上がる。

 その後も飲み食いは続いた。
 涼秋を感じる季節だというのに、大広間は熱気に満ちている。
 体が火照ってきたため、その場を抜け出して一度屋上へ向かった。

 階段を昇って屋上への扉を開けると、汗を掻いていたためか、風を感じた。
 心地よい涼しさが身を包む。
 壁際に腰かけるべく、奥へと歩いて行った。

 するとそこには、ギコがいた。

( ^ω^)「ギコさん」

(,,゚Д゚)「ブーンか、どうした?」
150 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:29:10.98 ID:83V4qJmK0
( ^ω^)「熱くなってきたので、体を冷やしに来ましたお」

(,,゚Д゚)「そうか、まぁ座れ」

 ギコが手招きした。
 頷いて、隣に座る。酒瓶が何本か置いてあった。

(,,゚Д゚)「今回の戦は、お前たちがよく頑張ったな」

( ^ω^)「恐縮ですお」

(,,゚Д゚)「ドクオもよくやったし、お前もよくやった……。
    知ってるか? Sの壁突破者を討ち取ったのは、お前が初めてなんだぜ」

( ^ω^)「あっ……そういえば、そういうことになるんですかお?」

(,,゚Д゚)「あぁ。ベルやハンナバル総大将は病に倒れたからな。
    ベルは最後、ショボン大将と戦ったが、ショボン大将が討ち取ったわけじゃねぇ。
    お前が歴史を作ったってわけさ」

( ^ω^)「嬉しいですお」

(,,゚Д゚)「しかも壁まで突破して……先に越されちまったのは残念だが、俺も嬉しいよ。
    お前が入軍テストで異彩を放っていたことなんて、つい最近の出来事のように思えるけどな」

( ^ω^)「もう九年が経ちましたお……」

(,,゚Д゚)「九年か……早いもんだ。この九年で、東塔は躍進したな」

( ^ω^)「エヴァ城と、シャッフル城と、マリミテ城と、オリンシス城と……四つも城を奪いましたお」
164 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:33:16.87 ID:83V4qJmK0
(,,゚Д゚)「快進撃だな、本当に。お前が入ってきてからだ」

( ^ω^)「ブーンは関係ないですお……皆さんが凄いからですお」

(,,゚Д゚)「お前やドクオの力に背中を押されたからさ。若いやつには負けらんねーしな」

( ^ω^)「上の皆さんが凄いからこそ、それに追い付こうと必死になるんですお」

(,,゚Д゚)「はは、互いに刺激しあってるわけか。そりゃいいことだ」

 ギコが酒を呷った。
 酒瓶の底を月に向け、喉を鳴らす。

(,,゚Д゚)「しかし、今回のドクオは凄かったな」

( ^ω^)「昔から鋭いやつでしたお。ブーンにとっては納得の結果ですお」

(,,゚Д゚)「そうなのか。しかし、あいつの守備は凄い。東塔の誰より優れている」

( ^ω^)「でも本人は攻めのほうが好きみたいですお」

(,,゚Д゚)「だからこそ、だろうな。守りの中で攻めを考えるから、上手くバランスが取れるんだ」

( ^ω^)「おっおっおっ、なるほどですお」

 再びギコが酒を呷る。
 しかし空になっていたらしく、それを放り投げて新しい酒瓶を手に取った。
 中の液体が揺れている。
179 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:36:02.46 ID:83V4qJmK0
(,,゚Д゚)「モナー中将がいなくなった……イヨウ中尉もいなくなった……。
    この二人の穴をしっかり埋めていかなきゃな……」

( ^ω^)「はいですお……」

(,,゚Д゚)「モナー中将はどちらかと言えば守りの武将だった。ドクオならきっと穴を埋められる。
    イヨウ中尉は攻めの武将だった。その穴はお前が埋められるだろう、ブーン。
    ……シラネーヨなんて知らねーよ。あいつはどうでもいい」

(;^ω^)「おっおっおっ」

(,,゚Д゚)「オオカミはドラルを欠いたが、ミルナは健在だ。
    それに今回の戦じゃリレントが手強かった。
    まだまだ辛い戦が続くぞ」

( ^ω^)「……はいですお」

(,,゚Д゚)「俺も頑張らなきゃな。お前たちに負けてらんねぇ」

( ^ω^)「一緒に頑張りましょうお」

(,,゚Д゚)「あぁ。じゃあそろそろ戻るか……ん?」

 立ち上がりかけたギコが、何かを見つけたようだった。
 振り返る。

 物ではなく、人だった。
 プギャーだ。

(*^Д^)「うぃー……おろろ? なぁーにやってんだ?」
197 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:38:49.33 ID:83V4qJmK0
(,,;゚Д゚)「酒くせぇ……酔いすぎだろ……」

(*^Д^)「たまにゃーいいじゃないっすか! ギコ中将! 一緒に飲みましょーよ!」

(,,゚Д゚)「プギャー、お前も活躍を見せなきゃいけねー時期だぞ。将官として」

(*^Д^)「わぁーってますって! それはともかく飲みましょーって!」

(,,;゚Д゚)「ホントに分かってんのか……? 不安だな……」

(*^Д^)「だーいじょうぶですって! 次の戦こそ……ん?」

 プギャーの背中を、指でつついた。
 微笑みながら、優しく。

 今日は月が美しい夜だ。
 屋上にはいくつもの月影ができている。

 自分の背後にも。
 そして、プギャーの背後にも、影がある。

(;^Д^)「な、なんだぁ? どうしたんだぁ?」

( ^ω^)「プギャーさん……忘れたとは言わせませんお」

(;^Д^)「ふぁ?」

( ^ω^)「Sの壁突破……遅かったほうが全裸で城塔から国旗ダンスですお」
218 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:41:22.82 ID:83V4qJmK0
 プギャーの酔いが醒めていくのが、はっきりと分かった。
 青ざめ、うろたえ、言葉が出ないでいる。
 ギコが腹を抱えて笑っていた。

( ^ω^)「あぁ、偶然にもこんなところに国旗が」

(;^Д^)「ちょ、ちょっと待て! あ、あれはただの冗談で」

( ^ω^)「男らしくないですお!! 言い訳なんて見苦しいですお!!」

(,,゚Д゚)「そうだぞプギャー!! 男なら約束は守れ!!」

(;^Д^)「い、いや……でも……!!」

( ^ω^)「さぁ!」

 国旗を押しつけた。
 プギャーは拒む。押し返そうとしてくる。

 しかし、ドラルとの押し合いにも負けなかった自分だ。
 一気に力をこめ、無理やり国旗を持たせた。

( ^ω^)「さぁ!」

(,,゚Д゚)「さぁさぁ!」

 二人に迫られ、たじろぐプギャー。
 川ができそうなほどの量の汗を流している。

 後ずさりし、プギャーは壁に接した。
237 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:43:56.82 ID:83V4qJmK0
(;^Д^)「うっ……ぐっ……」


( ;Д;)「ち、ちくしょぉぉぉぉぉぉ―――――――――!!!」


 ――――その日、プギャーは伝説となった。



――オオカミ城――

 芒野原は風で表情を変える。
 靡き、揺らめき、やがて落ち着く。

 夕刻になると、穂が赤く染まり、何とも言えない味わい深さを醸し出す。
 それを城塔から眺めていると、心が安らいだ。

(ゝ○_○)「こんなところで考え事ですか? ミルナ大将」

 アルファベットを携えたリレントが近づいてきた。
 どうやら訓練をしていたらしい。
 汗で髪が濡れている。

( ゚д゚)「あぁ、まぁな」

(ゝ○_○)「オリンシス城を失ったこと、あまり気に病まれませんよう。
     あれはドラルがブーンに討ち取られてしまったための結果です」

( ゚д゚)「統率する者としての責任はあるさ。敗戦はいつだってそうだ」
253 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:46:55.46 ID:83V4qJmK0
 自分に責任はない、と言いたげなリレントに、今さら腹も立たなかった。
 リレントの性格などとうに熟知している。

 ただし、ここ最近のリレントは、以前に比べればいくらかマシになっていた。
 奇策を用いることしか考えない将だったのが、まともな戦術も考えられるようになったのだ。
 これは大きな進歩だった。

 元々、頭はいい男だ。
 使う方向がおかしかっただけで、その道を正してやれば、有能な将になることは分かっていた。
 ただ、リレントのねじ曲がった性格が、他者から道を正されることを是としなかったのだ。

 自ら気付いてくれることを願っていた。
 だからこそリレントを戦で重用しつづけたのだ。
 どうやら、願いは叶いつつあるようだった。

(ゝ○_○)「責任をお取りになるつもりですか?」

( ゚д゚)「無論だ。どういった処分を与えるかが難しいがな」

 五千率いるドクオ相手に、何もできなかった。
 およそ六千の被害を受け、惨めに逃げ帰ってきただけだ。
 国軍を率いる大将としては、あまりに不甲斐ない結果だった。

 ただ、それによる軍内の反発は、思ったより少なかった。
 ドクオと戦った兵たちが口にするのは、ドクオの作戦の緻密さと大胆さについてだ。
 あんな守り方をしてくるとは思わなかった、あれでは敗戦も仕方ない、など。

 それを言い訳にするつもりはなかった。
 しかし、大将の降格を要求された場合のことは案じていたのだ。
 その場合、必然的に他の誰かが大将に昇格してしまうからだ。
261 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:49:55.97 ID:83V4qJmK0
 今のところ、そういった声は上がっていなかった。

 不遜ではない。自惚れでもない。
 いまオオカミ軍で、大将を務められるのは、自分以外にはいない。
 それはもう、確信だった。

( ゚д゚)「降格とするのは難しい。こういったときは、無給処分くらいしか大将には与えられんが」

(ゝ○_○)「……そうですね」

 心の中の舌打ちが聞こえてきそうだった。
 リレントは先の戦、指揮執って敗れはしたものの、善戦した。
 ヴィップ軍の本隊を相手に互角の戦いを繰り広げたのだ。

 あわよくば大将、と思っていただろう。
 ただ、ここで厳しくそれを迫ることはできないようだった。

(ゝ○_○)「大将ほどの激務者が無給で働くのは厳しいことです。妥当な処分かと存じます」

 とりあえずはそれで納得しておこう、といったところか。
 リレントはいつも通り爽やかな笑顔を見せている。

(ゝ○_○)「しかし、オリンシス城戦は残念でした。あと一歩でヴィップを撃退できたのですが」

( ゚д゚)「シラネーヨの裏切りは上手く嵌ったな。モナーとイヨウを討ち取れたのは大きい」

(ゝ○_○)「シラネーヨは思ったとおり、頭の悪い男でした。あれでは重用されなかったのも頷けます。
     どうやら自分を過信していたらしく、モララーやショボン相手に真っ向から戦いに行っていましたからね」

( ゚д゚)「もう少し利用したいところだったが、ヴィップの怒りに触れたか」
272 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:52:53.83 ID:83V4qJmK0
(ゝ○_○)「まぁ、イヨウを討ち取ってくれただけでも良しと致しましょう」

( ゚д゚)「ヴィップがフェイト城を攻める構えを見せている。少しでも戦力を削いでおけたのは助かるな」

(ゝ○_○)「しかし、こちらもドラルを失ってしまいました。壁の突破者が討ち取られるというのは、手痛いことです」

( ゚д゚)「さすがに軍内の衝撃も大きかったようだな。撤退せざるを得なかっただろう」

(ゝ○_○)「えぇ。とても戦いを継続できる状況ではありませんでした。まさか格下相手に討ち取られるとは」

( ゚д゚)「ブーン=トロッソ……やはりSの壁を越えてきたか」

 史上十人目。
 そして、ヴィップ軍の現役では五人目となる、壁の突破者。
 ブーン=トロッソ。

 入軍時点からショボンの期待を受け、着実に成長してきた。
 モララーのように壁で躓くことなく突破し、ドラルを討ち取ったのだ。
 今までも怖い武将だったが、今後はそれが更に増していくこととなる。

 そして、ドクオ=オルルッド。
 生涯忘れ得ぬ名だ。
 十倍の兵を率いて臨んだマリミテ城戦で、無残な敗北を受けた。

( ゚д゚)「来年の初めにはフェイト城防衛戦が始まるだろうな」

(ゝ○_○)「苦しい戦です。ヴィップは勢いに乗っていますし」

( ゚д゚)「兵糧的にはとりあえず問題ないにしろ……攻め寄せるヴィップ軍は、恐らく五万を超えてくる」
278 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:55:46.10 ID:83V4qJmK0
(ゝ○_○)「こちらが出せる兵も、五万程度が限界ですか……」

( ゚д゚)「リレント、お前ならどう防ぐ?」

(ゝ○_○)「正面より打ち破るほかないでしょう」

 思わず腰を抜かしてしまいそうな発言だった。
 あのリレントが、正面からぶつかるなどとは。
 奇策はどうした、と言いたくなってしまう。

 しかし、確かにここはまともにぶつかるしかない。
 城を上手く使いつつ、敵軍の攻撃を防ぎ、疲弊させるしかないのだ。

( ゚д゚)「……何か策を考えていたりはしないのか?」

(ゝ○_○)「多少はありますが……これを使えば勝てる、といった確信の持てるものは、何も……」

( ゚д゚)「まぁ……確かに、難しい。シラネーヨのような裏切り者はもう、恐らくおるまい」

(ゝ○_○)「謀反には期待を持てません。やはりここは、自軍の力のみで打ち破るしかないでしょう」

( ゚д゚)「そうだな……細かい部分については、次の軍議で考えよう。とにかく今は編成を整えなければならん」

(ゝ○_○)「それはフィルとガシューにやらせておけばよろしいでしょう」

( ゚д゚)「あぁ。リレント、お前はヴィップ軍の情報を集めてくれ」

(ゝ○_○)「分かりました」

( ゚д゚)「俺は兵の調練に励む。防衛戦を見据えてな」
289 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 17:58:42.89 ID:83V4qJmK0
 マリミテ城戦。
 あのときは、ドクオの徹底した守りに攻めを防がれた。
 何年も前から防衛戦を想定して調練を重ねていたのだという。

 ならば今度はこちらの番だ。
 完璧な守りを見せてやる。ドクオのように。
 フェイト城を守りきってみせる。

 そしてできれば、再びドクオと相見えたい。
 戦いたい。アルファベットを、交えたい。
 果たしてそれは叶うだろうか。


 冬になってからヴィップ軍は動き始めた。
 およそ三万の兵を率いての行軍だ。
 これでオリンシス城に残った兵は二万となった。

 そして、驚くべき情報が入った。
 オリンシス城には、ドクオが一人で残るというのだ。
 またもドクオを守りに使うつもりらしい。

 確かにドクオの守りの力は抜きんでている。
 オリンシス城はどうあっても守らなければならない城だ。
 その二つを考えれば、自然かつ妥当な配置だった。

( ゚д゚)(…………)

 落胆はあった。
 ドクオはフェイト城に来ないのか、と。
 再び戦うことはできないのか、と。
302 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 18:01:41.80 ID:83V4qJmK0
( ゚д゚)(それはそれで仕方のないことだがな……)

 個人的な感情のために、全体を軽視することはできない。
 あくまでフェイト城を守り抜くことが大事なのだ。

 勢い盛んなドクオが攻めに使われないのなら、ありがたいことでもある。
 全体から見れば、これは喜ぶべき情報なのだ。

 しかし――――。

( ゚д゚)「……軍議を開くと中将たちに伝えろ」

 従者にそう伝え、走らせた。
 多くのことを考える必要がある。
 自分の一存で決めるわけにもいかない。

 戦が近い。
 何がなんでも勝たなければならない、戦が。
 すぐそこまで迫っている。
306 :第56話 ◆azwd/t2EpE :2007/08/03(金) 18:02:26.88 ID:83V4qJmK0
 吹き荒れる木枯らしの音を聞き、軍議室に入った。
 戦の接近を、肌で感じながら。
 自分の中の士気を、無理やりに高めながら。

















 第56話 終わり

     〜to be continued

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